JP5560513B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
特にAlおよびCrなどの窒化物の結晶構造に着目した技術として、特許文献1に示される文献では、超硬合金、サーメット、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体表面に、組成式(Al1−x Crx )N(ただし、原子比で、xは0.30〜0.60)を満足するAlとCrの複合窒化物層からなり、かつ、該複合窒化物層について電子線後方散乱回折装置(EBSD)による結晶方位解析を行った場合、表面研磨面の法線方向から0〜15度の範囲内に結晶方位<100>を有する結晶粒の面積割合が50%以上、また、表面研磨面の法線と直交する任意の方位に対して0〜54度の範囲内に存在する最高ピークを中心とした15度の範囲内に結晶方位<100>を有する結晶粒の面積割合が50%以上であるような、2軸結晶配向性を示す改質(Al,Cr)N層で硬質被覆層を構成することで、表面被覆切削工具の耐欠損性を向上させる技術が提案されている。
装置内加熱温度:300〜500℃、
工具基体に印加する直流バイアス電圧:−50〜−100V、
カソード電極:Cr-Al合金
スパッタリング電力:3〜6kW、
装置内ガス流量:窒素(N2)ガス+アルゴン(Ar)ガス、
装置内ガス圧力:0.3〜1.5Pa、
の条件で、Cr1-xAlxN層(以下、従来Cr1-xAlxN層という)を形成することにより製造されている。
工具基体温度:300〜400℃、
蒸発源:金属Cr、金属Al
プラズマガン放電電力 金属Crに対して:9〜10 kW、
プラズマガン放電電力 金属Alに対して:7〜12 kW、
反応ガス流量:窒素(N2)ガス 100〜130 sccm、
放電ガス:アルゴン(Ar)ガス 40〜60 sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧: 0 V、
蒸着速度: 0.04〜0.11 nm/秒
という条件下で蒸着を行うと、このCr1-xAlxN層(以下、改質Cr1-xAlxN層という)は、前記従来Cr1-xAlxN層に比して、切刃に対して高負荷がかかる高送り、高切り込みの重切削加工において、すぐれた耐摩耗性と耐欠損性を示すことを見出したのである。
「炭化タングステン基超硬合金焼結体からなる工具基体の表面に、0.2〜2μmの平均層厚を有するCr1-xAlxN膜からなる硬質被覆層を物理蒸着した表面被覆切削工具において、xが 0.1≦x≦0.6を満たし、さらに、
前記Cr1-xAlxN層は前記平均層厚と等しい高さを有する柱状晶組織からなり、さらに、電子線後方散乱回折装置で表面の結晶粒の結晶方位を測定した場合、隣り合う測定点との結晶方位の方位差が15度以上となる結晶界面によって囲まれた区分径0.2〜4μmの区分が、測定された全体の面積のうち20%以上を占有し、かつ、前記Cr 1-x Al x N層の表面から100nmの深さの水平断面における結晶粒組織を観察した場合、粒径が10〜100nmの結晶粒が測定面積のうち90%以上を占有することを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
工具基体温度:300〜400℃、
蒸発源:金属Cr、金属Al
プラズマガン放電電力 金属Crに対して:9〜10 kW、
プラズマガン放電電力 金属Alに対して:7〜12 kW、
反応ガス流量:窒素(N2)ガス 100〜130 sccm、
放電ガス:アルゴン(Ar)ガス 40〜60 sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧: 0 V、
蒸着速度: 0.04〜0.11 nm/秒、
という条件下で成膜を行うものである。従来Cr1-xAlxN層の構成成分であるCr成分が高温強度を向上させ、Al成分が耐摩耗性を向上させ、また、Nが層の強度を向上させる作用があることはすでによく知られているが、これに加えて、この発明の改質Cr1-xAlxN層は高速断続切削加工条件という厳しい使用条件下でも、すぐれた靭性と耐欠損性を発揮する。
そしてその理由は以下に述べるように、改質Cr1-xAlxN層の特異な結晶粒形態と強い関連性を有する。
なお、前記方位差を記述する上での回転角度とは、向きの異なる2つの結晶の一方に対して、1回の回転操作で2つの結晶が完全に同じ向きとなる場合の回転角度を指し、また、ここでいう区分径とは、その区分領域と同じ面積をもつ真円の直径を指すものであると定義する。
なお、ここでいう直径とは、その結晶粒と同じ面積をもつ真円の直径を指すものであると定義する。
したがって、面積割合で前記区分内に存在する少なくとも50%以上の結晶粒は近傍に存在する結晶粒、特に同一の区分内に存在する結晶粒と、結晶方位の方位差が回転角度で15度未満となるような二軸配向性を示していることから、前記区分内に存在する結晶粒同士の界面整合性が高く、あたかも単結晶のような優れた靭性を具備するとともに、さらに、直径10〜100nmという微細組織をもち優れた耐欠損性を維持できることから、皮膜中に亀裂や欠損が生じやすい断続重切削加工においても、工具の長寿命化がはかられるものである。
また、結晶粒の大きさが10nm未満であると、結晶粒自体の強度が得られず所望の強度を得られなくなり、また100nmを超えると結晶粒が粗大になりチッピングの原因となることから、面積割合で皮膜の90%以上を占める結晶粒の大きさを10nm〜100nmと定めた。
また、Cr1-xAlxN層を構成する、結晶方位が15度以上の界面で囲まれる区分の面積割合が20%未満では、所望の靭性を得ることが出来ないため、該区分の面積割合を20%以上と定めた。
なお、ここでは被覆インサートを中心にして説明するが、被覆インサートに限らず、被覆エンドミルや被覆ドリル等の各種の被覆工具に適用できるものである。
表2に示す条件で、圧力勾配型Arプラズマガンの放電電力を12kWとし、Arガスを60sccm,窒素ガスを120sccm流しながら、炉内の圧力を3×10−2〜6×10−2Paに保ち、金属Cr蒸発源および金属Al蒸発源にプラズマビームを入射し金属Crおよび金属Alの蒸気を発生させるとともにプラズマビームでイオン化し、かつ、チャンバー内での改質Cr1-xAlxN層の成長速度を、水晶発振式膜厚コントローラを用いて測定しながら、前記成長速度が目的の速度(0.04〜0.11nm/sec)から±0.01nm/secの範囲となるようプラズマガンの出力を調整しながら、工具基体表面に、表4に示される所定目標層厚の改質Cr1-xAlxN層を蒸着形成させ、本発明被覆工具としての本発明被覆インサート(以下、本発明インサートという)1〜14を製造した。なお、表2に、本発明インサート1〜14の改質Cr1-xAlxN層の形成条件である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティングの各種条件を示す。
なお、表3には、従来インサート1〜14の従来Cr1-xAlxN層の形成されるスパッタリング条件を示す。
さらに、前記硬質被覆層を基板側から約1mmの厚さまで機械研磨したのち、Arイオン研磨装置を用いて厚さ100nmとなるまで研磨し薄片とした状態で、透過型電子顕微鏡を用いて層の表面から100nmの深さ近傍におけるCr1-xAlxN層の結晶粒径を観察し、図3(a)に例示されるように改質Cr1-xAlxN層の工具基体表面のうち、幅10〜100nmの微細粒が占有する面積割合αを求め、区分の全測定面積に対する面積割合とともに表4および表5に示した。
表4から、本発明インサート1〜14の改質Cr1-xAlxN層は、直径10〜100nmのCr1-xAlxN結晶粒が面積割合で90%を占め、かつ、電子線後方散乱回折装置で結晶方位を解析したときに、回転角度で15度以上の結晶方位の方位差をもつ界面によって囲まれる区分径0.2〜4μmの区分の面積割合が、全測定面積の20%以上となっており、二軸配向性を有する10〜100nmの微細結晶によって構成されている区分が面積割合で20%以上存在ことが分かる。
一方、表5から、従来インサート1〜14の従来Cr1-xAlxN層は、回転角度で15度以上の結晶方位の差をもつ界面によって区分される区分径0.2〜4μmの区分の面積割合が少なく(5%以下)、さらに、10〜100nmの微細結晶の存在割合は面積割合で90%以下となっており、すなわち、二軸配向性を有する10〜100nmの微細結晶によって構成される区分は十分な面積割合(20%以上)で存在していないことが分かる。
被削材:平面寸法 100mm×250mm 厚さ50mmの JIS規格・SCMN439の板材
切削速度: 200 m/min.、
切り込み: 3 mm、
1刃あたりのテーブル送り: 0.35 mm/刃、
切削時間: 2 分、
の条件(切削条件1という)での合金鋼の乾式高速高送り正面フライス加工試験(通常の切削速度及びテーブル送りは、それぞれ、150m/min、0.2mm/rev.)、
被削材:平面寸法 100mm×250mm 厚さ50mmの JIS・S35Cの板材
切削速度: 320 m/min.、
切り込み: 3 mm、
1刃あたりのテーブル送り: 0.4 mm/刃、
切削時間: 2 分、
の条件(切削条件2という)での炭素鋼の乾式高速正面フライス加工試験(通常の切削速度及びテーブル送りは、それぞれ、200m/min、0.3mm/rev.)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表6に示した。
これに対して、表5、表6から、従来インサート1〜14においては、従来Cr1-xAlxN層は、回転角度で15度以上の結晶方位の差をもつ界面によって区分される区分径0.2〜4μmの区分の面積割合が少なく(5%以下)、さらに、10〜100nmの結晶粒の占める面積割合が小さい、すなわち、微細な粒子の割合が低いことから、耐欠損性と靭性に劣り、乾式断続高速切削加工条件ではチッピングや欠損等により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金焼結体からなる工具基体の表面に、0.2〜2μmの平均層厚を有するCr1-xAlxN膜からなる硬質被覆層を物理蒸着した表面被覆切削工具において、xが0.1≦x≦0.6を満たし、さらに、
前記Cr1-xAlxN層は前記平均層厚と等しい高さを有する柱状晶組織からなり、さらに、電子線後方散乱回折装置で表面の結晶粒の結晶方位を測定した場合、隣り合う測定点との結晶方位の方位差が15度以上となる結晶界面によって囲まれた区分径0.2〜4μmの区分が、測定された全体の面積のうち20%以上を占有し、かつ、前記Cr1-xAlxN層の表面から100nmの深さの水平断面における結晶粒組織を観察した場合、粒径が10〜100nmの結晶粒が測定面積のうち90%以上を占有することを特徴とする表面被覆切削工具。
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