JP5099586B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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この発明は、硬質被覆層が2軸配向性を有することによってすぐれた耐欠損性を示し、したがって、切刃に対して大きな機械的負荷がかかる鋼や鋳鉄などの重切削加工という厳しい切削条件下で用いられた場合にも、切削工具の長寿命化が可能となる表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるインサートや、前記インサートを着脱自在に取り付けて、面削加工や溝加工、さらに肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うインサート式エンドミルなどが知られている。
また、被覆工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金あるいは立方晶窒化ほう素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結材料で構成された工具基体の表面に、Ti(C1−X )(ただし、原子比で、Xは0.40〜0.98)を満足し、かつ、(111)面配向性の高いTiの炭窒化物[以下、(Ti(C,N)で示す]層からなる硬質被覆層を蒸着形成した被覆工具が提案されており、この被覆工具は、硬質被覆層の密着性にすぐれ、また、耐摩耗性にもすぐれていることが知られている。
特開平4−103754号公報 特開2002−346811号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、加えて切削加工に対する省力化、省エネ化、低コスト化さらに効率化の要求も強く、これに伴い、高送り、高切り込みなどの重切削加工が要求される傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、各種の鋼や鋳鉄を通常条件下で切削加工した場合に特段の問題は生じないが、切刃に対して大きな負荷がかかる重切削加工に用いた場合には、切刃部に欠損を生じやすく、これが原因で、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来被覆工具のさらに一段の使用寿命の延命化を図るべく、これの硬質被覆層であるTi(C,N)層に着目し、研究を行った結果、
(a)上記の従来被覆工具は、例えば図3に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング(AIP)装置に上記の工具基体を装着し、
装置内加熱温度:300〜500℃、
超硬基体に印加する直流バイアス電圧:−50〜−300V、
カソード電極:金属Ti、
上記カソード電極とアノード電極間のアーク放電電流:60〜100A、
装置内ガス流量:窒素(N)ガス 300〜500sccm,メタン(CH)ガス 100〜300sccm、
装置内ガス圧力:1.3〜4Pa、
の条件(以下、通常条件という)で、硬質被覆層として上記の組成式:Ti(C1−X )(ただし、原子比で、Xは0.40〜0.96)を満足Ti(C,N)層[以下、従来Ti(C,N)層という]を形成することにより製造される。
しかし、前記Ti(C,N)層の形成を、例えば図2に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置に上記の工具基体を装着し、
工具基体温度: 350〜500 ℃、
蒸発源:金属Ti、
プラズマガン放電電力: 10〜15 kW、
装置内ガス流量:窒素(N)ガス 50〜150sccm,メタン(CH)ガス 20〜80sccm、
装置内ガス圧力:0.04〜0.08 Pa、
工具基体に印加する直流バイアス電圧: −5〜−30 V
の条件で蒸着を行うと、この結果形成されたTi(C,N)層[以下、改質Ti(C,N)層という]は、前記従来Ti(C,N)層に比し、高切り込み、高送りという厳しい切削条件の重切削加工において、すぐれた耐欠損性を示すこと。
(b)上記(a)の改質Ti(C,N)層と上記従来Ti(C,N)層について、電子線後方散乱回折装置(以下、EBSDという)を用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析したところ、図1に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶方位<111>がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、前記法線方向となす角度が0〜55度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し、また、各結晶粒界を構成する隣り合う結晶粒の結晶方位<111>同士のなす角θを測定し、集計した時、前記従来Ti(C,N)層は、表面研磨面の法線に対する結晶粒の結晶方位<111>がなす傾斜角の分布は、法線方向に対して0〜15度の範囲内の傾斜角区分にピークを有することがあったとしても、結晶粒界の角度分布は、小角粒界(0<θ≦15゜)の割合が10%程度と小さいのに対して、前記(a)の改質Ti(C,N)層の結晶方位<111>の測定傾斜角の分布は、図4に例示される通り、法線方向に対して0〜15度の範囲内の傾斜角区分に結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合が結晶粒全面積の50%以上である結晶配向を示し、さらに、結晶粒界の角度分布図において、小角粒界(0<θ≦15゜)の割合が50%以上である(図4)こと。
さらに、前記表面研磨面の法線方向に対して0〜15度の範囲内に、結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合、また、結晶粒界の角度分布における小角粒界の割合は、基体の温度、バイアス電圧、窒素ガス流量、メタンガス流量によって変化すること。
(c)多くの試験結果によれば、上記の通り工具基体に改質Ti(C,N)層をRPD装置によって物理蒸着する条件、例えば、
基体の温度: 350〜500 ℃
バイアス電圧: −5〜−30 V
窒素ガス流量: 50〜150 sccm
メタンガス流量: 20〜80 sccm
のように調整すると、表面研磨面の法線に対して0〜15度の範囲内に結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合が結晶粒全面積の50%以上を占め、また、結晶粒界の角度分布において、0<θ≦15°の割合が全粒界の50%以上を占めるという結晶配列を示すようになり、このような結晶配列を示す改質Ti(C,N)層を硬質被覆層として形成してなる被覆工具は、重切削加工において長期に亘ってすぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「 超硬合金、サーメットあるいは立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体の表面に、1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:Ti(C1−X
で表した場合、Xは0.40〜0.96(ただし、原子比)を満足するTiの炭窒化物層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
上記Tiの炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析した場合、
(a)表面研磨面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶方位<111>がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、法線方向に対して0〜55度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、0〜15度の範囲内の傾斜角区分に結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合が結晶粒全面積の50%以上である結晶配向を示し、
(b)結晶粒界を構成する隣り合う結晶粒の結晶方位<111>同士のなす角を測定した場合、前記なす角が0度を超え15度以下である小角粒界の割合が全粒界の50%以上を示し、
上記(a)、(b)を同時に満たすTiの炭窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成したことを特徴とする表面被覆切削工具(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
この発明の被覆工具の硬質被覆層を構成する改質Ti(C,N)層において、Ti成分は高温強度を向上させ、C成分には層の硬さを向上させ、また、N成分には層の強度を向上させる作用があり、これらの各成分を共存含有することにより高い硬さとすぐれた強度を具備するようになるものであるが、層中のN成分の含有割合(X値)がC成分との合量に占める原子比で0.4未満では所望の強度向上効果を期待することはできず、一方その含有割合(X値)が同じく0.96を越えると、相対的にC成分の含有割合が少なくなり過ぎて、所望の高硬度が得られなくなることから、X値を原子比で0.4〜0.96と定めた。
また、硬質被覆層の平均層厚が1μm未満では、所望の耐摩耗性を確保するのに不十分であり、一方その平均層厚が10μmを越えると、皮膜の剥離やチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜10μmと定めた。
また、上記の通り、改質Ti(C,N)層の表面研磨面の法線に対して0〜15度の範囲内に結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合、結晶粒界を構成する隣り合う結晶粒の結晶方位<111>がなす角が0°<θ≦15°である小角粒界の割合は、RPDによる蒸着条件、例えば、基体の温度、バイアス電圧、窒素ガス流量およびアセチレンガス流量によって変化するが、多くの試験結果によれば、圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティングによる蒸着条件を
基体の温度: 350〜500 ℃
バイアス電圧: −5〜−30 V
窒素ガス流量: 50〜150 sccm
メタンガス流量: 20〜80 sccm
とすることによって、改質Ti(C,N)層の表面研磨面の法線に対して0〜15度の範囲内に結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合が結晶粒全面積の50%以上を占め、また、結晶粒界の角度分布において、0°<θ≦15°の割合が全粒界の50%以上を占めるという結晶配列を示す改質Ti(C,N)層を得られる、という結論に達したものであり、したがって、法線に対して0〜15度の範囲内に結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合が50%未満、あるいは、結晶粒界の角度分布において、0°<θ≦15°の割合が全粒界の50%未満となった場合には、Ti(C,N)層に前記の結晶配列を付与することはできず、その結果、被覆工具にすぐれた耐欠損性を期待することはできない。
この発明の被覆工具は、これの硬質被覆層を構成する改質Ti(C,N)層が特別な結晶配列を示し、鋼や鋳鉄などの重切削加工において、すぐれた耐欠損性を発揮し、使用寿命の延命化に寄与するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A−1〜A−10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体B−1〜B−6を形成した。
ついで、上記の工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図2に示される蒸着装置に装着し、蒸発源として、金属Tiを装着し、まず、装置内を排気して1×10−2Pa以下の真空に保持しながら、工具基体を400℃に加熱した後、Arガスを導入して2.0Paとしたのち、工具基体に−1000Vのバイアス電圧を印加することによって、前記工具基体を20分間Arボンバード処理し、ついで、装置内を一旦1×10−3Pa程度の真空にした後、圧力勾配型Arプラズマガンの放電電力を12kW、工具基体に−20Vのバイアス電圧を印加し、窒素ガスを80sccm、メタンガスを40sccmを流しながら、炉内の圧力を0.06Paに保ち、蒸発源にプラズマビームを入射し金属Tiの蒸気を発生させるとともにプラズマビームでイオン化して、工具基体表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の2軸配向性を有する改質Ti(C,N)層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆インサート(以下、本発明被覆インサートと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
比較の目的で、上記の工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図3に示されるアークイオンプレーティング装置に装着し、カソード電極(蒸発源)として、金属Tiおよび工具基体表面ボンバード洗浄用金属Tiを装着し、まず、装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−800Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記ボンバード洗浄用金属Tiとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させて、前記工具基体表面を5分間Tiボンバード処理し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスおよびアセチレンガスの混合ガスを導入して、1〜6Paの範囲内の所定の雰囲気とすると共に、前記工具基体に印加する直流バイアス電圧を−60〜−100Vの範囲内の所定の電圧とし、前記カソード電極である金属Tiとアノード電極との間に80Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表4に示される目標組成および目標層厚の従来Ti(C,N)層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、従来被覆工具としての従来被覆インサート1〜16をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆インサート1〜10および従来被覆インサート1〜10について、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 230 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 3 分、
の条件(切削条件A1という)での合金鋼の乾式高速断続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、150m/min、1.2mm、0.18mm/rev.)、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 300 m/min.、
切り込み: 1.6 mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 3 分、
の条件(切削条件A2という)での炭素鋼の乾式高速断続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、150m/min、1.2mm、0.18mm/rev.)、
被削材:JIS・SUS304の丸棒、
切削速度: 250 m/min.、
切り込み: 2.2 mm、
送り: 0.24 mm/rev.、
切削時間: 8 分、
の条件(切削条件A3という)でのステンレス鋼の乾式高速連続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、180m/min、1.2mm、0.15mm/rev.)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
また、上記本発明被覆インサート11〜16および従来被覆インサート11〜16について、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 280 m/min.、
切り込み: 1.2 mm、
送り: 0.18 mm/rev.、
切削時間: 3 分、
の条件(切削条件A4という)での合金鋼の乾式高速断続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、180m/min、1.0mm、0.10mm/rev.)、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 350 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.15 mm/rev.、
切削時間: 3 分、
の条件(切削条件A5という)での炭素鋼の乾式高速断続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、200m/min、1.0mm、0.12mm/rev.)、
被削材:JIS・SUS304の丸棒、
切削速度: 300 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.2 mm/rev.、
切削時間: 6 分、
の条件(切削条件A6という)でのステンレス鋼の乾式高速連続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、200m/min、1.0mm、0.12mm/rev.)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
上記切削加工試験A1〜A6の測定結果を表5に示した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有する立方晶窒化硼素(cBN)粉末、窒化チタン(TiN)粉末、Al粉末、酸化アルミニウム(Al)粉末を用意し、これら原料粉末を表6に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:5GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置にて一辺3mmの正三角形状に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびCIS規格SNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×一辺長さ:12.7mmの正方形)をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ni:2.5%、Ag:残りからなる組成を有するAg合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格SNGA120412のインサート形状をもった工具基体C1〜C10をそれぞれ製造した。
ついで、上記の工具基体C−1〜C−10をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図2に示される蒸着装置に装着し、蒸発源として、金属Tiを装着し、まず、装置内を排気して1×10−2Pa以下の真空に保持しながら、工具基体を400℃に加熱した後、Arガスを導入して2.0Paとしたのち、工具基体に−200Vのバイアス電圧を印加することによって、前記工具基体を20分間Arボンバード処理し、ついで、装置内を一旦1×10−3Pa程度の真空にした後、圧力勾配型Arプラズマガンの放電電力を12kWとし、工具基体に−15Vのバイアス電圧を印加し、蒸発源にプラズマビームを入射し金属Tiの蒸気を発生させるとともにプラズマビームでイオン化して、工具基体表面に、表7に示される目標組成および目標層厚の改質Ti(C,N)層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆cBN基インサート(以下、本発明被覆インサートと云う)21〜30をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の工具基体C−1〜C−10のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図3に示される通常のアークイオンプレーティング装置に装入し、カソード電極(蒸発源)として、それぞれ表3に示される目標組成に対応した金属Tiを装着し、まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを導入して、0.7Paの雰囲気とすると共に、前記テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−200Vの直流バイアス電圧を印加し、もって工具基体表面をアルゴンイオンによってボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスおよびアセチレンガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記工具基体に印加するバイアス電圧を−30Vに下げて、前記金属Tiのカソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記工具基体A〜Jのそれぞれの表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の従来Ti(C,N)層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、従来被覆工具としての従来表面被覆cBN基焼結インサート(以下、従来被覆インサートという)21〜30をそれぞれ製造した。
つぎに、上記の各種の被覆インサートを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆インサート21〜30および従来被覆インサート21〜30のうち、本発明被覆インサート21〜25および従来被覆インサート21〜25については、以下に示す切削条件B1〜B3で切削加工試験を行い、また、本発明被覆インサート26〜30および従来被覆インサート26〜30については、同じく以下に示す切削条件C1〜C3で切削加工試験を実施した。
[切削条件B1]
被削材:JIS・SCM415の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 240 m/min.、
切り込み: 0.15 mm、
送り: 0.15 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件での合金鋼の焼入れ材の乾式高速断続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、150 m/min、0.1mm、0.1mm/rev.)、
[切削条件B2]
被削材:JIS・SCr420の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 200 m/min.、
切り込み: 0.20 mm、
送り: 0.21 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件でのクロム鋼の焼入れ材の乾式高速断続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、150 m/min、0.1mm、0.1mm/rev.)、
[切削条件B3]
被削材:JIS・SKD61の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 200 m/min.、
切り込み: 0.25 mm、
送り: 0.21 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件でのダイス鋼の焼入れ材の乾式高速断続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、120 m/min、0.15mm、0.1mm/rev.)、
[切削条件C1]
被削材:JIS・SCr420の丸棒、
切削速度: 280 m/min.、
切り込み: 0.25 mm、
送り: 0.18 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件でのクロム鋼の焼入れ材の乾式高速連続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、200 m/min、0.2mm、0.1mm/rev.)、
[切削条件C2]
被削材:JIS・SUJ2の丸棒、
切削速度: 220 m/min.、
切り込み: 0.2 mm、
送り: 0.23 mm/rev.、
切削時間: 6 分、
の条件での軸受鋼の焼入れ材の乾式高速連続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、150 m/min、0.15mm、0.15mm/rev.)、
[切削条件C3]
被削材:JIS・SKD61の丸棒、
切削速度: 240 m/min.、
切り込み: 0.24 mm、
送り: 0.23 mm/rev.、
切削時間: 6 分、
の条件でのダイス鋼の焼入れ材の乾式高速連続高速重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、140 m/min、0.2mm、0.1mm/rev.)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅(mm)を測定した。この測定結果を表9に示した。
表5、9に示される結果から、本発明被覆インサート1〜16、21〜30は、いずれも硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を備えているので、切刃に対して大きな機械的負荷がかかる重切削加工に用いられた場合であっても硬質被覆層に欠損の発生はなく、長期に亘って、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層が従来Ti(C,N)層からなる従来被覆インサート1〜16、21〜30は、硬質被覆層に欠損が発生し、短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr32粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表10に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表6に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角:30度の4枚刃スクエアの形状をもったエンドミル用超硬基体D−1〜D−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらのエンドミル用超硬基体D−1〜D−8および試験片を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図2に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1の本発明被覆インサート1〜16における改質Ti(C,N)層の形成条件と同じ条件で、表11に示される目標組成および目標層厚の改質Ti(C,N)層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、本発明被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記実施例1の従来被覆インサート1〜16における従来Ti(C,N)層の形成条件と同じ条件で、従来Ti(C,N)層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、同じく表11に示される通りの従来被覆工具としての従来表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、従来被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆エンドミル1〜8および従来被覆エンドミル1〜8のうち、
本発明被覆エンドミル1〜3および従来被覆エンドミル1〜3については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD61の板材、
切削速度: 138 m/min.、
溝深さ(切り込み): 2.0 mm、
テーブル送り: 1540 mm/min.、
の条件でのダイス鋼の乾式高速高送り溝切削加工試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、55m/min、2.0mm、330mm/min.)、
本発明被覆エンドミル4〜6および従来被覆エンドミル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS304の板材、
切削速度: 126 m/min.、
溝深さ(切り込み): 7.5 mm、
テーブル送り: 900 mm/min.、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速高送り溝切削加工試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、90m/min、4.0mm、270mm/min.)、
本発明被覆エンドミル7,8および従来被覆エンドミル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SNCM439の板材、
切削速度: 220 m/min.、
溝深さ(切り込み): 12 mm、
テーブル送り: 1200 mm/min.、
の条件での合金鋼の乾式高速高送り溝切削加工試験(通常の切削速度、切り込みおよび送りは、それぞれ、120m/min、8mm、360mm/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表11にそれぞれ示した。
上記の実施例3で製造した直径が8mm(エンドミル用超硬基体D−1〜D−3)、13mm(エンドミル用超硬基体D−4〜D−6)、および26mm(エンドミル用超硬基体D−7、D−8)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(ドリル用超硬基体E−1〜E−3)、8mm×22mm(ドリル用超硬基体E−4〜E−6)、および16mm×45mm(ドリル用超硬基体E−7、E−8)の寸法、並びにいずれもねじれ角:30度の2枚刃形状をもったドリル用超硬基体E−1〜E−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらのドリル用超硬基体E−1〜E−8の切刃に、ホーニングを施し、上記の試験片と共に、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図2に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1の本発明被覆インサート1〜16における改質Ti(C,N)層の形成条件と同じ条件で、かつ表12に示される目標組成および目標層厚の改質Ti(C,N)層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル(以下、本発明被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記実施例1の従来被覆インサート1〜16における従来Ti(C,N)層の形成条件と同じ条件で、従来Ti(C,N)層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、表12に示される通りの従来被覆工具としての従来表面被覆超硬合金製ドリル(以下、従来被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆ドリル1〜8および従来被覆ドリル1〜8のうち、本発明被覆ドリル1〜3および従来被覆ドリル1〜3については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD61の板材、
切削速度: 90 m/min.、
送り: 0.24 mm/rev.、
穴深さ: 15 mm
の条件でのダイス鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、40m/min、0.15mm/rev.)、
本発明被覆ドリル4〜6および従来被覆ドリル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・FCD400の板材、
切削速度: 135 m/min.、
送り: 0.3 mm/rev.、
穴深さ: 20 mm
の条件でのダクタイル鋳鉄の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、65m/min、0.25mm/rev.)、
本発明被覆ドリル7,8および従来被覆ドリル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S50Cの板材、
切削速度: 160 m/min.、
送り: 0.5 mm/rev、
穴深さ: 40 mm
の条件での炭素鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、80m/min、0.35mm/rev.)、
をそれぞれ行い、いずれの湿式穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表12に示した。
この結果得られた本発明被覆工具としての本発明被覆インサート1〜16、21〜30、本発明被覆エンドミル1〜8、および本発明被覆ドリル1〜8の改質Ti(C,N)層、並びに従来被覆工具としての従来被覆インサート1〜16、21〜30、従来被覆エンドミル1〜8、および従来被覆ドリル1〜8の従来Ti(C,N)層の組成をオージェ分光分析装置を用いて測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、これらの本発明被覆工具および従来被覆工具の改質Ti(C,N)層および従来Ti(C,N)層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標値と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
さらに、上記の本発明被覆工具の改質Ti(C,N)層と従来被覆工具の従来Ti(C,N)層について、上記の両Ti(C,N)層の表面を研磨面とした状態で、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析した(すなわち、30×50μmの領域を、0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜55度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより、傾斜角度数分布グラフを作成し、また、同様の領域において、すべての結晶粒界について、それを構成する隣り合う結晶粒の結晶方位<111>同士のなす角を測定し、該なす角とそれぞれの割合を示すグラフを作成したところ、前記従来Ti(C,N)層は、表面研磨面の法線に対する結晶粒の結晶方位<111>がなす傾斜角の分布は、法線方向に対して0〜15度の範囲内の傾斜角区分にピークを有することがあったとしても、結晶粒界の角度分布は小角粒界(0°<θ≦15°)の割合が10%程度と小さい(図5)のに対して、前記(a)の改質Ti(C,N)層の結晶方位<111>の測定傾斜角の分布は、図4に例示される通り、法線方向に対して0〜15度の範囲内の傾斜角区分に結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合が結晶粒全面積の50%以上である結晶配向を示し、さらに、結晶粒界の角度分布において、0°<θ≦15°の割合が全粒界の50%以上である結晶配向を示し(図4)、改質Ti(C,N)層は上記のとおりの結晶配列を有するものであった。


図4に、本発明被覆工具3の改質Ti(C,N)層の表面研磨面の法線方向に対する結晶方位<111>の測定傾斜角分布と、結晶粒界の角度分布を示す。
また、図5には、従来被覆工具2の従来Ti(C,N)層の結晶粒界の角度分布を示す。
上記図4と図5との比較からも明らかなように、改質Ti(C,N)層では(111)面の高配向性と小角粒界比率の高い結晶組織を示すのに対して、従来Ti(C,N)層では、結晶粒界性格において、特段の特徴あるものとなっていない結晶組織を有していることが明らかである。
表3、4、7、8、11、12に示される結果から、本発明被覆工具は、いずれも硬質被覆層を構成する改質Ti(C,N)層が(111)面高配向かつ小角粒界比率高比率な結晶組織を示し、これによりすぐれた耐欠損性を具備するようになることから、上記各種の重切削加工試験で、すぐれた耐欠損性、耐摩耗性を示すのに対して、従来被覆工具においては、硬質被覆層の小角粒界の割合が低く、その結果として耐欠損性の向上が見られないことから、高切り込み、高送りなど大きな機械的負荷がかかる重切削加工では、比較的短時間で欠損を発生し使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削ですぐれ工具特性を示すのは勿論のことであり、さらに、高切り込み、高送りなど切刃に大きな機械的負荷がかかる重切削加工条件であっても、改質Ti(C,N)層からなる硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を備えるため、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮し、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層を構成する各種Ti(C,N)層における結晶粒の結晶面である{111}面の法線が表面研磨面の法線に対する傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。 本発明被覆工具の硬質被覆層を構成する得意な結晶配列を有する改質Ti(C,N)層の蒸着形成に用いたプラズマを利用したイオンプレーティング装置の概略説明図である。 従来被覆工具の硬質被覆層を構成する従来Ti(C,N)層の蒸着形成に用いたアークイオンプレーティング(AIP)装置の概略説明図である。 本発明被覆インサート1の硬質被覆層を構成する改質Ti(C,N)層をEBSDで測定し、表面研磨面の法線方向に対する結晶粒の結晶方位<111>がなす測定傾斜角と、結晶粒界の角度分布グラフである。 従来被覆インサート1の硬質被覆層を構成する従来Ti(C,N)層をEBSDで測定し、表面研磨面の法線方向に対する結晶粒の結晶方位<111>がなす測定傾斜角と、結晶粒界の角度分布グラフである。

Claims (1)

  1. 超硬合金、サーメットあるいは立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体の表面に、1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:Ti(C1−X
    で表した場合、Xは0.40〜0.96(ただし、原子比)を満足するTiの炭窒化物層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    上記Tiの炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて個々の結晶粒の結晶方位を解析した場合、
    (a)表面研磨面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶方位<111>がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、法線方向に対して0〜55度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、0〜15度の範囲内の傾斜角区分に結晶方位<111>が存在する結晶粒の面積割合が結晶粒全面積の50%以上である結晶配向を示し、
    (b)結晶粒界を構成する隣り合う結晶粒の結晶方位<111>同士のなす角を測定した場合、前記なす角が0度を超え15度以下である小角粒界の割合が全粒界の50%以上を示し、
    上記(a)、(b)を同時に満たすTiの炭窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成したことを特徴とする表面被覆切削工具。
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