JP6233708B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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この発明は、炭素鋼、ステンレス鋼などの切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種のステンレス鋼や合金工具鋼などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
そして、従来から、被覆工具の被膜特性を改善すべく、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1は、被覆工具基体の表面に、0.997(0.412x+0.424173(1−x))〜1.005(0.412x+0.424173(1−x))nmの格子定数を有し、膜厚が0.01〜50μmである(Al,Ti)N膜をアークイオンプレーティング等の気相合成法で形成することによって、高硬度で耐摩耗性にすぐれた耐久性の硬質被膜を提供することが提案されている。
また、例えば、特許文献2には、基体の表面に物理蒸着法で被覆形成した(Al,Ti)N層について、AlTiNの結晶構造が面心立方晶構造であり、X線回折による(Al,Ti)N(200)面のピーク強度を(Al,Ti)N(111)面のピーク強度より大きくすることによって、耐酸化性、耐摩耗性、耐食性にすぐれた(Al,Ti)N被覆層が提案されている。
さらに、例えば、特許文献3には、切削工具、金型または、機械部品で耐摩耗性が要求される基板の表面に、格子定数または配向性を変化させた2層以上の積層コーティング膜で形成された膜厚が0.1ミクロン以上20ミクロン以下の被膜を形成し、基板表面に形成されたTiN膜の配向性が前記基板表面と平行な(200)面と(111)面からのX線回折線強度比I(200)/I(111)が5以上であって、且つ、前記TiN膜の格子定数が0.4231nmから0.4252nmまでとすることによって、被膜の耐摩耗性、耐久性を改善することが提案されている。
特開平11−335813号公報 特開2013−221215号公報 特許第4174841号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と厳しい切削条件下で行われるようになってきている。
上記従来の被覆工具においては、ある程度の耐摩耗性の改善は図り得るものの、これをステンレス鋼、合金工具鋼などの高速ミーリング加工に用いた場合には、摩耗損傷が大きくなり、これを原因として、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、ステンレス鋼、合金工具鋼等の高速ミーリング加工に用いた場合であっても、耐摩耗性にすぐれ、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する被覆工具を提供すべく、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
従来の被覆工具では、(Al,Ti)Nからなる硬質被覆層について、その格子定数(特許文献1参照)、あるいは、(200)面と(111)面のX線回折強度比(特許文献2参照)を夫々単独で規定していたが、格子定数と(200)面と(111)面のX線回折強度比を、両者関連付けて規定した場合には、従来の(Al,Ti)N硬質被覆層に比して、格段に高硬度となり、その結果として、すぐれた耐摩耗性を長期にわたり発揮することを見出したのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、平均層厚が2〜10μmの硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、AlとTiの複合窒化物層からなり、かつ、該層においてAlとTiの合量に占めるAlの含有割合xは、0.40≦x≦0.75(但し、原子比)であり、
(b)前記硬質被覆層を構成するAlとTiの複合窒化物層の格子定数は、−0.057x+4.18(Å)〜−0.057x+4.24(Å)の範囲内の値をとり、
(c)X線回折による前記AlとTiの複合窒化物層の(111)面の回折ピーク強度I(111)に対する(200)面の回折ピーク強度I(200)の比の値I(200)/I(111)が20以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具について詳細に説明する。
(a)硬質被覆層の種別、平均層厚:
この発明の硬質被覆層は、AlとTiの複合窒化物(以下、「(Al,Ti)N」で示す)層からなる。
上記(Al,Ti)N層は、Al成分が高温硬さと耐熱性を向上させ、Ti成分が高温靭性、高温強度を向上させる作用があることから、高温硬さ、耐熱性、高温強度にすぐれた硬質被覆層として既によく知られている。
本発明では、Tiとの合量に占めるAlの含有割合x(原子比、以下同じ)が0.75を超えると、六方晶結晶構造の割合が増加するため硬さが低下し、一方、Tiとの合量に占めるAlの含有割合(原子比)が0.40未満となると、相対的にAlの含有割合が少なくなり、耐熱性の低下を招き、その結果、偏摩耗の発生、熱塑性変形の発生等により耐摩耗性が劣化するようになることから、Tiとの合量に占めるAlの含有割合x(原子比)は、0.40〜0.75であることが必要である。
また、(Al,Ti)N層からなる硬質被覆層の平均層厚は、2μm未満では、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮することができず、工具寿命短命の原因となり、一方、その平均層厚が10μmを越えると、硬質被覆層が自己破壊し易くなることから、その平均層厚は2〜10μmとすることが必要である。
(b)(Al,Ti)N層の格子定数:
本発明では、硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層について、その格子定数が、
−0.057x+4.18(Å)〜−0.057x+4.24(Å)
の範囲内の値となるように成膜する。
本発明で、硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層の格子定数を上記の如く定めたのは、以下の理由による。
即ち、立方晶TiNの格子定数理論値は4.24(Å)であり、また、準安定相である立方晶AlNの格子定数理論値は4.12(Å)であるところ、本発明の硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層の格子定数が−0.057x+4.24(Å)を超えると、固溶体硬化による影響が少なくなり、硬質被覆層の硬さが小さくなり、その結果、すぐれた耐摩耗性を長期にわたって確保することができなくなり、一方、格子定数が−0.057x+4.18(Å)未満になると、固溶体硬化による影響で硬質被覆層の硬さが大きくなるが、その反面、刃先稜線部の鋭角な領域で切削加工時、硬質被覆層中にクラックが発生し、チッピングが発生し易くなることから、硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層の格子定数は、
−0.057x+4.18(Å)〜−0.057x+4.24(Å)
の範囲内の値となるように定めた。
より好ましくは、−0.057x+4.20(Å)〜−0.057x+4.23(Å)の範囲内の値である。
なお、上記の格子定数を定める数式における「x」は、Tiとの合量に占めるAlの含有割合x(原子比、以下同じ)である。
上記で定めた所定数値範囲内の格子定数の(Al,Ti)N層は、例えば、図1に示すアークイオンプレーティング(以下、「AIP」という)装置を用いて成膜するに際し、AIP装置におけるターゲットとして、70原子%Al−30原子%Ti〜50原子%Al−50原子%Tiの成分組成のAl−Ti合金を用い、成膜時のターゲット表面の最大磁束密度、バイアス電圧を制御することによって、(Al,Ti)N層の格子定数を規定数値範囲内にすることができる。
より具体的に言えば、ターゲット表面の最大磁束密度を大にすることによって格子定数が小さくなり、また、バイアス電圧の絶対値を大きくすることによって格子定数が小さくなる。
(c)(Al,Ti)N層のX線回折ピーク強度比I(200)/I(111):
本発明では、硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層について、(111)面の回折ピーク強度I(111)に対する(200)面の回折ピーク強度I(200)の比の値I(200)/I(111)を20以上としているが、その理由は以下のとおりである。
本発明の硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層は立方晶構造を有するが、立方晶結晶格子の(111)面はすべり面であるため、強い配向を示す場合には、例えば、切削加工時せん断方向の外力が加わることで硬質被覆層の強度を保てないため、耐摩耗性を確保することができない。
一方、立方晶結晶格子の(200)面は、最密面であるために硬質被覆層の硬さ向上における効果が大きい。
つまり、回折ピーク強度比I(200)/I(111)が3未満である場合には、すべり面である(111)面の配向度が、硬さの大きい(200)面に比して相対的に高いため、すべりが発生し易く、しかも、硬さが十分とはいえないことから、切削加工時における耐摩耗性が十分であるとはいえない。
したがって、上記結晶格子面が備える特徴の観点から、本発明の硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層について、耐摩耗性の向上を図るため、(111)面の回折ピーク強度I(111)に対する(200)面の回折ピーク強度I(200)の比の値I(200)/I(111)を3以上とするが、好ましくは20以上であることから、本発明では、I(200)/I(111)を20以上と定めた
上記で定めた所定の数値範囲内の回折ピーク強度比I(200)/I(111)は、例えば、図1に示すAIP装置を用いて、以下のとおり作製することができる。
例えば、AIP装置における成膜時のバイアス電圧、雰囲気ガス中のN分圧を制御することによって、回折ピーク強度比I(200)/I(111)を3以上とした(Al,Ti)N層を形成することができる。
より具体的に言えば、バイアス電圧の絶対値を小さくすることによって、また、雰囲気ガス中のN分圧を高めることによって、回折ピーク強度比I(200)/I(111)の値が小さくなる。
(d)硬質被覆層の蒸着形成:
図1(a)、(b)に、本発明の硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層を成膜するに好適なAIP装置を示す。
本発明の硬質被覆層は、例えば、図1(a)、(b)に示すAIP装置において、工具基体の温度を370〜450℃に維持しつつ、工具基体をAIP装置内で自公転させ、ターゲット表面に所定の最大磁束密度に制御しながら蒸着することによって形成することができる。
例えば、AIP装置の一方には基体洗浄用のTi電極からなるカソード電極、他方には所定組成のAl−Ti合金からなるターゲット(カソード電極)を設け、
まず、炭化タングステン(WC)基超硬合金からなる工具基体を洗浄・乾燥し、AIP装置内の回転テーブル上に装着し、真空中で基体洗浄用のTi電極とアノード電極との間に100Aのアーク放電を発生させて、工具基体に−1000Vのバイアス電圧を印加しつつ工具基体表面をボンバード洗浄し、
ついで、Al−Ti合金ターゲットの表面に最大磁束密度2.5〜15mT(ミリテスラ)に制御し、
ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入し4〜8Paの雰囲気圧力とし、工具基体の温度を370〜450℃に維持し、工具基体に―25〜−100Vのバイアス電圧を印加しつつ、Al−Ti合金ターゲット(カソード電極)とアノード電極との間に100Aのアーク放電を発生させ、工具基体を自公転させつつ蒸着することによって、本発明で定めた格子定数及び回折ピーク強度比を有する(Al,Ti)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することができる。
なお、上記のAl−Ti合金ターゲット表面の最大磁束密度の制御方法は、例えば、カソード周辺に磁場発生源である電磁コイル又は永久磁石を設置する等、任意の手段で制御することができる。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層を構成する所定組成の(Al,Ti)N層が、−0.057x+4.18(Å)〜−0.057x+4.24(Å)という格子定数を備え、さらに、X線回折ピーク強度比I(200)/I(111)の値が20以上であることから、ステンレス鋼、合金工具鋼などの高速ミーリング加工において、すぐれた耐摩耗性を示し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものである。
本発明の被覆工具を作製するための、AIP装置の概略説明図を示し、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
つぎに、この発明を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表5に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体に押出しプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が10mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記丸棒焼結体から、研削加工にて、切刃部の直径×長さが6mm×13mmの寸法で、ねじれ角30度の2枚刃ボール形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)1〜5をそれぞれ製造した。
(a)上記の工具基体1〜5のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示すAIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、AIP装置の一方にボンバード洗浄用のTiカソード電極を、他方側に所定組成のAl−Ti合金からなるターゲット(カソード電極)を配置し、
(b)まず、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒータで工具基体を400℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)ついで、上記Al−Ti合金ターゲットの表面に表2に示す種々の最大磁束密度に制御し、
(d)ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2に示す窒素分圧とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体の温度を370〜450℃の範囲内に維持するとともに表2に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Al−Ti合金ターゲットとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表2に示される組成および目標平均層厚の(Al,Ti)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、
表2に示す本発明被覆工具としての表面被覆エンドミル1〜(以下、本発明1〜という)をそれぞれ製造した。
なお、図1に示すAIP装置では、工具基体がAl−Ti合金ターゲットに最接近する際に、逃げ面の一部又は全部とAl−Ti合金ターゲットの上記工具基体側の面が水平となるように装着支持されている。
比較例:
比較の目的で、上記実施例における(c)の工程を表3に示す条件(即ち、Al−Ti合金ターゲットの表面の最大磁束密度を変更)で行い、また、(d)の工程を同じく表3に示す条件(即ち、窒素分圧、直流バイアス電圧の変更)で行い、その他は実施例と同一の条件で、表3に示す比較例被覆工具としての表面被覆エンドミル1〜10(以下、比較例1〜10という)をそれぞれ製造した。
さらに、上記で作製した本発明1〜および比較例1〜10の硬質被覆層について、その組成を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてのエネルギー分散型X線分析法(EDS)により測定した。また、その平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定し、5ヶ所の平均値より算出した。
表2、表3に、測定・算出したしたそれぞれの値を示す。
上記で作製した本発明1〜および比較例1〜10について、硬質被覆層の縦断面の(Al,Ti)N層について、X線回折により、(111)面、(200)面及び(220)面のX線回折ピーク強度I(111),I(200)及びI(220)を求めた。
なお、X線回折は、測定条件:Cu管球、測定範囲(2θ):30〜80度、スキャンステップ:0.013度、1ステップ辺り測定時間:0.48sec/stepという条件で測定した。
また、格子定数については、当業者によく知られている
ブラッグの式:2d=λ/sinθ,
=d×(h+k+l
を用い、上記で測定した(111)面,(200)面及び(220)面についてそれぞれ算出し、その平均値を求め、これを格子定数とした。
なお、上記ブラッグの式におけるd:面間隔、λ:測定波長、θ:測定角度、a:格子定数、h,k,l:面指数を表す。
表2、表3に、上記で測定・算出したそれぞれの値を示す。


つぎに、上記本発明1〜および比較例1〜10のエンドミルについて、下記の条件(切削条件Aという)での合金工具鋼の側面切削加工試験を実施した。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD61(52HRC)の板材、
回転速度: 17000 min.−1
縦方向切り込み: 2 mm、
横方向切り込み: 0.3 mm
送り速度(1刃当り): 0.05 mm/tooth、
切削長:340m、
さらに、下記の条件(切削条件Bという)でのステンレス鋼の側面切削加工試験を実施した。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS304 (35HRC)の板材、
回転速度: 5600 min.−1
縦方向切り込み: 2 mm、
横方向切り込み: 0.3 mm
送り速度(1刃当り): 0.06 mm/tooth、
切削長:140 m、
いずれの側面切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表4に示した。
表4に示される結果から、本発明被覆工具は、硬質被覆層を構成する所定組成の(Al,Ti)N層が、−0.057x+4.18(Å)〜−0.057x+4.24(Å)という格子定数を備え、さらに、X線回折ピーク強度比I(200)/I(111)の値が20以上であることから、ステンレス鋼、合金工具鋼などの高速ミーリング加工において、すぐれた耐摩耗性を示し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものである。
これに対して、硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層の組成、格子定数、X線回折ピーク強度比、平均層厚が本発明で規定する範囲を外れる比較例被覆工具では、耐摩耗性の低下によって、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、ステンレス鋼、合金工具鋼などの高速ミーリング加工に供した場合に長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。








Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、平均層厚が2〜10μmの硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、AlとTiの複合窒化物層からなり、かつ、該層においてAlとTiの合量に占めるAlの含有割合xは、0.40≦x≦0.75(但し、原子比)であり、
    (b)前記硬質被覆層を構成するAlとTiの複合窒化物層の格子定数は、−0.057x+4.18(Å)〜−0.057x+4.24(Å)の範囲内の値をとり、
    (c)X線回折による前記AlとTiの複合窒化物層の(111)面の回折ピーク強度I(111)に対する(200)面の回折ピーク強度I(200)の比の値I(200)/I(111)が20以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。
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