JP5206167B2 - 硬質皮膜被覆切削工具 - Google Patents

硬質皮膜被覆切削工具 Download PDF

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Description

本願発明は、金属部品や金型の加工に用いられる切削工具に対し、耐摩耗性や耐欠損性の向上が要求される切削工具表面に硬質皮膜が被覆された硬質皮膜被覆切削工具に関する。
特許文献1から3には、(AlCr)N系皮膜に関する技術、特許文献4には、(TiAl)N系皮膜の厚膜化技術やX線回折パターンの比に関する開示があり、特許文献5には、物理的蒸着による皮膜の厚膜化に関する技術が開示されている。
特許第3027502号公報 特許第3039381号公報 特開2005−126736号 特開2003−136303号公報 特開2008−75178号公報
本願発明の課題は、物理的蒸着によって成膜して5μm以上に厚膜化した硬質皮膜における高硬度を維持しつつ残留圧縮応力の低減化を図り、また2層構造を有する硬質皮膜層1、2の密着強度を改善して硬質皮膜被覆切削工具の長寿命化を図ることである。
本願発明は、超硬合金を基材とする切削工具に硬質皮膜を被覆した硬質皮膜被覆切削工具において、該硬質皮膜は物理的蒸着によって成膜された2層構造を有し、該2層構造は表面側に硬質皮膜層1、基材側に硬質皮膜層2が被覆された2層構造であり、該硬質皮膜層1の組成は(AlCr1−a)Nで表され、但し、夫々の元素の含有量は原子比であり、0.50≦a≦0.75、0.90≦x≦1.1であり、該硬質皮膜層1のX線回折における(200)面の半価幅をW(度)としたとき、0.5≦W≦0.9であり、
(111)面のピーク強度Ir、(200)面のピーク強度Is、(220)面のピーク強度Itとしたとき、1<Is/Ir≦3、0.2≦It/Ir≦1、であり、該硬質皮膜層2の組成は、(TiAl1−b)Nで表され、但し、夫々の元素の含有量は原子比であり、0.4≦b≦0.6、0.9≦y≦1.1であり、該硬質皮膜層2のX線回折における(200)面の半価幅W(度)としたとき、0.4≦W≦0.6であり、(111)面のピーク強度Iu、(200)面のピーク強度Iv、(220)面のピーク強度Iwとしたとき、5≦Iv/Iu≦15、2≦Iw/Iu≦4、であり、X線回折における該硬質皮膜層1の(200)面の格子定数をα1(nm)としたとき、0.411≦α1≦0.415、該硬質皮膜層2の(200)面の格子定数をα2(nm)としたとき、0.413≦α2≦0.418、であり、該硬質皮膜全体の膜厚をTA(μm)、該硬質皮膜層1の膜厚をT1(μm)、該硬質皮膜層2の膜厚をT2(μm)としたとき、5≦TA≦12、0.1≦T1≦2、4≦T2≦10、TA=T1+T2、であることを特徴とする硬質皮膜被覆切削工具である。上記の構成を採用することによって、物理的蒸着によって成膜して5μm以上に厚膜化した硬質皮膜における高硬度を維持しつつ残留圧縮応力の低減化を図り、また2層構造を有する硬質皮膜層1、2の密着強度を改善して硬質皮膜被覆切削工具の長寿命化を図ることができる。
本願発明の硬質皮膜被覆切削工具は、該硬質皮膜層1のAl、Crのうち、夫々10原子%以下の範囲でSi、B、V、Nb、Wのうちから選択される1種以上の元素で置換すること、また、該硬質皮膜層2のTi、Alのうち、夫々10原子%以下の範囲でSi、B、V、Nb、Wのうちから選択される1種以上の元素で置換することが好ましい。
本願発明は、物理的蒸着によって成膜して5μm以上に厚膜化した硬質皮膜における高硬度を維持しつつ残留圧縮応力の低減化を図り、また2層構造を有する硬質皮膜層1、2の密着性を改善して硬質皮膜被覆切削工具の長寿命化を達成することができた。
硬質皮膜被覆切削工具において硬質皮膜の耐摩耗性は重要な要素であり、更なる向上が望まれている。硬質皮膜の耐摩耗性を向上させる手段として、概略2通りの手段が考えられ、1つは硬質皮膜の高硬度化、他の1つは厚膜化である。高硬度化は硬質皮膜の構成元素に依存する。一方、厚膜化は構成元素に関わらず耐摩耗性を向上することが可能であるが、残留圧縮応力を低減する必要がある。そこで本願発明では、物理的蒸着(以下、PVDと記す。)法による硬質皮膜の厚膜化に伴う残留圧縮応力の低減化を検討した。硬質皮膜は残留圧縮応力が2GPaを超えると硬質皮膜の自己破壊を発生し易くなる事から、厚膜化した際の残留圧縮応力を2GPa以下に低減化することを検討した。また、2層構造を有する硬質皮膜層間の密着性の改善についても検討した。
本願発明の硬質皮膜における硬質皮膜層1は、AlとCrを金属成分とする窒化物皮膜であり、潤滑性に優れ、溶着に起因する脱落やチッピングを抑制する効果を発揮する。そこで硬質皮膜層1を高硬度に維持するために組成(AlCr1−a)Nを次のように規定した。Alの含有量はa>0.75である場合、六方最密構造(以下、hcp構造と記す。)のAlNが生成しやすくなり、密着強度が劣化するだけでなく硬度低下が生じる。また、Al含有量よりCr含有量が多い場合も、残留圧縮応力が増大して密着強度が低下する傾向にある。以上より、0.5≦a≦0.75と規定した。より好ましくは、0.60≦a≦0.7である。
次に、硬質皮膜層1の金属成分と非金属成分の組成比に関しては、0.9≦x≦1.1の範囲に制御することにより、残留圧縮応力を0.5〜2GPaの範囲に制御することができる。一方、x<0.9の場合は、結晶格子中において(AlCr1−a)元素同士が結合する確率が増えて結晶格子の歪が大きくなり、硬質皮膜層1の断面組織が微細化して粒界欠陥が増大し、残留圧縮応力が増大して密着性が劣化してしまう。例えば、切削工具用の硬質皮膜では、粒界欠陥が密度低下や被加工物を構成する元素の内向拡散を招き機械的特性、硬度や耐欠損性を低下させる。従って、粒界欠陥の低減のためにx値を0.9以上に制御しなければならない。一方、x>1.1の場合、硬質皮膜層1の結晶組織形態は柱状組織を有するが、粒界部に不純物が取り込まれやすくなる。この不純物は成膜処理装置の内部残留物に由来する。その結果、結晶粒の接合強度が劣化し、外部衝撃によって容易に硬質皮膜層1が破壊されてしまう。x値を最適制御した残留圧縮応力は、0.5〜2GPaである。また産業的にはx値による管理が可能である。0.9≦x≦1.1の範囲に制御するには、成膜時の反応ガス圧力を3.2Pa以上、7Pa以下に設定すれば実現できる。3.2Pa未満では、x値が0.9未満となり、8Paを超えると1.1を超える。
硬質皮膜層1のW値が、0.5≦W≦0.9の範囲において、結晶組織が微細柱状を形成し、適度な残留圧縮応力が付与され密着強度に優れる。W<0.5の場合、結晶組織は粗大な柱状結晶を形成し、切削加工時の亀裂が粒界を伝播することにより硬質皮膜の破壊をもたらし、切削工具の欠損を生じる可能性が高い。また、W>0.9の場合、皮膜組織が非晶質化して皮膜硬度の低下に繋がる。W値の制御には、成膜温度を最適化する必要があり、バイアス電圧印加条件、反応ガス圧力条件と400〜650℃の範囲で成膜する必要がある。400℃未満では、W値が0.9を超え、650℃を超えると0.5未満となる。
硬質皮膜層1の残留圧縮応力は、Is/Ir値、It/Ir値と相関性があるので、残留圧縮応力値を低減化するためには、Is/Ir値、It/Ir値を制御すれば可能である。最強ピーク面は(200)面であるのが好ましく、(111)面への配向が強くなると残留圧縮応力が増大し密着性が低下する傾向にある。従って、1≦Is/Ir≦3、0.2≦It/Ir≦1とすることにより残留圧縮応力を最適な範囲に制御して高い密着強度を有する厚膜の硬質皮膜が実現できる。一方、Is/Ir<1の場合、またIt/Ir<0.2の場合は、硬質皮膜層1の断面組織が微細化して結晶粒界が多くなり、残留圧縮応力が増大により、密着性が低下する。更に、Is/Ir>3の場合、またIt/Ir>1の場合は、組織が非晶質に近く皮膜硬度が低下する。残留圧縮応力は低減されるが断面組織における粒界の密着強度が低下し、外部衝撃に対して硬質皮膜表面が容易に破壊したり、剥離したりする。Is/Ir値、It/Ir値の制御には、成膜時の反応ガス圧力を3.5Pa以上、7Pa以下に設定すれば実現できる。3.5Pa未満、7Paを超えると結晶配向を制御することが困難となる。
本願発明の硬質皮膜における硬質皮膜層2は、TiとAlを金属成分とする窒化物皮膜であり、耐摩耗性や密着強度に優れ、切削工具としての寿命向上に効果を発揮する。そこで硬質皮膜層2を高硬度に維持するために組成(TiAl1−b)Nについて、Tiの含有量は、0.4≦b≦0.6に規定した。b>0.6の場合、十分な耐摩耗性や耐酸化性が得られない。b<0.4のる場合、結晶構造が面心立方晶の(TiAl)Nにhcp構造のAlNが含まれるようになり皮膜硬度が低下し耐摩耗性が劣化する。より好ましくは、0.45≦b≦0.55である。
次に、硬質皮膜層2の金属成分と非金属成分の組成比に関しては、硬質皮膜層1の場合と同様に、0.9≦y≦1.1の範囲に制御することにより、残留圧縮応力を0.5〜2GPaの範囲に制御することができる。数値範囲の規定理由は硬質皮膜層1の場合と同様である。y値を0.9≦y≦1.1の範囲に制御するには、成膜時の反応ガス圧力を3.2Pa以上、7Pa以下に設定すれば実現できる。3.2Pa未満では、y値は0.9未満となり、8Paを超えると1.1を超える。
硬質皮膜層2のW値は、0.4≦W≦0.6の範囲に規定した。これにより硬質皮膜層2は結晶粒界のける結合強度と靭性が確保され、切削時の耐摩耗性が発揮されるからである。一方、W<0.4の場合、結晶組織は柱状組織の結晶性が高まるが、硬度が低下してしまう。また、W>0.6の場合、結晶組織は微細化組織を形成して高硬度化する一方、皮膜靭性が不足して切削時のチッピングを誘発する。また、残留圧縮応力が増大するため、密着強度が劣化する。W値の制御には、成膜温度を最適化する必要があり、バイアス電圧印加条件、反応ガス圧力条件と400〜650℃の範囲で成膜する必要がある。400℃未満ではW値が0.6を超え、650℃を超えると0.4未満となる。
硬質皮膜層2の残留圧縮応力は、Iv/Iu値、Iw/Iu値と相関性があるので、残留圧縮応力値を低減化するためには、Iv/Iu値、Iw/Iu値を制御すれば可能である。最強ピーク面は(200)面であるのが好ましく、(111)面への配向が強くなると残留圧縮応力が増大し密着性が低下する傾向にある。そこで、5≦Iv/Iu≦15、2≦Iw/Iu≦4に規定することにより、残留圧縮応力が最適範囲に制御され、高い密着強度を有する厚膜の硬質皮膜が実現できる。一方、Iv/Iu<5の場合、Iw/Iu<2の場合は、原子密度の高い(111)面への配向が強い状態であるため、残留圧縮応力が高くなる。また硬質皮膜層2の断面組織が微細化し、結晶粒界が多くなり欠陥が多く含まれる状態となって残留圧縮応力が増大する。また、Iv/Iu>15の場合、Iw/Iu>4の場合は、残留圧縮応力は低減するが、皮膜硬度が減少し、耐摩耗性を阻害する。断面組織における粒界の密着強度が低下し、外部衝撃に対して硬質皮膜表面が容易に破壊したり、剥離したりする。Iv/Iu値、Iw/Iu値の制御には、成膜時の反応ガス圧力を3.5Pa以上、7Pa以下に設定すれば実現できる。3.5Pa未満、7Paを超えると結晶配向を制御することが困難となる。
本願発明は硬質皮膜層1、2の界面における格子定数を整合させることによって、両者の密着強度を改善した。硬質皮膜層1、2は共に面心立方構造を有し、(200)面が強く配向する成膜条件を選定する。組成の異なる硬質皮膜を多層化する場合、夫々の密着強度を高めるために両皮膜を(200)面に強く配向させ、ヘテロエピタキシャル成長を促すことが重要となる。更に両皮膜間の密着強度を高めるために結晶配向面を制御だけでなく、(200)面の格子定数を近似させる必要がある。つまり、最も強く配向させる結晶面の格子定数を近似させることで、硬質皮膜1、2の界面における結晶成長に連続性を持たせることができる。両皮膜の界面における格子縞を連続させることで歪が低減して密着性が高まる。本願発明においては硬質皮膜1、2の組成が異なるため、両者の格子定数を一致させることは困難である。この理由は、硬質皮膜層1がCrを含み、硬質皮膜層2がTiを含む硬質皮膜であり、夫々のイオン半径が異なることによる。例えば、本発明例の硬質皮膜1、2が含有するAlを、何れも70%を超えて多くすれば、両者の格子定数を完全に一致させることは可能であるが。しかし、Al含有量が70%を超えると、hcp構造のAlN結晶が含まれるため硬度低下をもたらし、耐摩耗性が極度に劣化する。そこで、0.411≦α1≦0.415、0.413≦α2≦0.418、に制御することで、硬質皮膜層1、2の密着強度を高めた。硬質皮膜層1、2の格子定数は、成膜条件によって接近させることが可能である。例えば、直流バイアス電圧印加とパルス化されたバイアス電圧印加を組み合わせて、成膜初期は直流バイアス電圧を印加して緻密な硬質皮膜を形成させ、その後バイアス電圧をパルス化して印加するのが好ましい。すると皮膜の界面は格子縞が連続して密着強度は優れる。そこで、硬質皮膜1では55≦a≦70の範囲とし、印加する直流バイアス電圧を70〜100V、硬質皮膜2では50≦b≦65範囲とし、パルス化したバイアス電圧を30〜60Vに制御することが好ましい。必要によっては、パルス振動数を20〜25kHzの範囲に制御して成膜を行うと、より効果的である。この理由は、成膜初期よりパルス化したバイアス電圧を印加すると、低残留圧縮応力を有する硬質皮膜が得られるものの、運動エネルギーが著しく低いイオンが多く基体表面に到達するため、硬質皮膜と基体界面に欠陥が発生しやすくなるからである。直流バイアス電圧を印加して初期に形成される硬質皮膜は、全膜厚の50%以内に制御するのが好ましい。50%を超えると厚膜化するほど残留圧縮応力が増大し、密着強度が劣化するためである。直流バイアス電圧印加とパルスバイアス電圧印加とで得られる硬質皮膜は、金属成分とガス成分の組成が若干異なるため、硬質皮膜断面を光学顕微鏡又は透過電子顕微鏡で観察し識別することができる。
T1値を0.1≦T1≦2とする理由は、硬質皮膜層1の残留圧縮応力が高い傾向にあるからである。T1値が2μmを超えて厚い場合は、工具の刃先稜線部において皮膜の自己破壊を起こしてしまう。また、硬質皮膜層1の潤滑性を得るには、0.1μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.3≦T1≦1である。T2値を4≦T2≦10とする理由は、T2<4の場合、耐摩耗性が発揮されないからである。T2値の増加に伴って残留圧縮応力は徐々に上昇する傾向にある。T2>10の場合、残留圧縮応力が過大となり密着強度が低下する。より好ましくは、5≦T2≦7である。
硬質皮膜層1、2において、夫々の金属成分を10%以下の範囲で置換を行うことによって硬質皮膜の機能を十分に発揮させることに有効である。Si、B、V、Nb、Wのうちから選択される1種以上の元素の添加に伴い、残留圧縮応力は増大する傾向にあるため、その置換比率は10%以下にすることが好ましい。Si元素を添加した場合には、皮膜の高硬度化、耐酸化性の改善に効果がある。同様に、Nb、Wも耐熱性向上に効果的である。更にV、Bの添加は、皮膜の潤滑性向上に有効であり好ましい。高速、高送りといった過酷な切削条件に耐えることが可能となる。
本願発明は、成膜時のバイアス電圧、反応圧力及び成膜温度を最適化させることによって、硬質皮膜の結晶構造を前記の範囲に制御でき、厚膜化された硬質皮膜の最適な残留圧縮応力値が得られた。例えば、バイアス電圧値が大きい程残留圧縮応力は増大傾向にある。2μm/時間以下の比較的遅い成膜速度で、皮膜を結晶成長させることが重要である。このとき、最適化された残留圧縮応力値の範囲は0.5〜2GPaである。残留圧縮応力値が0.5GPa未満であると耐摩耗性は確保できるものの耐欠損性が不十分であり、2GPaを超えて大きいと硬質皮膜のチッピングを生じやすくなる。また、バイアス電圧を20〜100Vに制御することにより、Is/Ir値を1以上、Iv/Iu値を5以上に制御できる。バイアス電圧が100V以下の範囲で低いほどIs/Ir値、Iv/Iu値は大きくなるが、20Vよりも低い電圧では、残留圧縮応力は低減され密着性は高まるが硬度は低下し耐摩耗性が劣化する。面心立方構造を有する硬質皮膜においては、(111)面に配向するよりも(200)面に強く配向した方が、せん断方向からの力に対する耐久度が格段に優れる。更に、成膜時のバイアス電圧をパルス化して印加する方法により、It/Ir値を制御することができる。パルス化したバイアス電圧を印加することにより、成膜時にプラズマ中でイオン化された元素が被処理物に到達する際の運動エネルギーを低く制御することが可能となる。イオンは被処理物に到達し運動が可能となるため、結晶は柱状化しやすくなり柱状成長した結晶粒を含む皮膜は粒界欠陥が少なく、機械的な衝撃に対する強度、即ち耐欠損性が高まり機械的強度を有する柱状組織化が促進される。バイアス電圧をパルス化することにより、(111)面の結晶成長を抑制し残留圧縮応力値を制御できると同時に(220)面のピーク強度も変化する。本願発明において、特に硬質皮膜層2の残留圧縮応力値の制御には、バイアス電圧をパルス化しパルス周波数を制御することが重要である。本願発明ではパルス周波数を20kHzに設定した。これにより、2≦Iw/Iu≦4となり、残留圧縮応力値を0.5〜2GPaの最適な範囲に制御できた。パルス周波数が5kHz未満の場合は、Iw/Iu値は4を超える。このときの皮膜断面組織は、低残留圧縮応力を有する柱状組織が得られるが、柱状組織内における粒界間の密着強度が低く耐欠損性が高まらない。一方、30kHzを超えて大きい場合は、イオンが被処理物に到達する際の運動エネルギーが低減できないためIw/Iu値は2未満となる。Iv/Iu値が5以上であっても、(111)面の結晶成長が抑制されず、残留圧縮応力が2GPaを超える様になり密着性が著しく低下する。より好ましくは、10〜25kHzである。一方、直流のバイアス電圧値を20〜100Vに設定しても、(111)面のピークは比較的大きく出現する。特に、5μm以上の膜厚を有する硬質皮膜を得る場合、直流のバイアス電圧値の最適化だけでは(111)面への配向を十分に制御することができない。本願発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
本発明例1の作成方法について述べる。被覆に使用した装置は、アークイオンプレーティング(以下、AIPと記す。)装置であり、AIP装置内にはアークカソード1、2の2機を装備している。そこで、アークカソード1は、組成が原子%で、Al:60%、Cr:40%のターゲットを、アークカソード2は、Ti:50%、Al:50%のターゲットを装着した。装置内の基材装着用回転冶具には、切削評価用として超硬合金製インサート工具を装着した。
被覆プロセスは、まずAIP装置内を7×10−3Pa以下の真空状態にし、続いて5×10−2Pa程度の真空に保ちながら、基材を600℃まで加熱した。次に、基材に300Vのバイアス電圧を印加しながら、Arイオンによるエッチング処理を行った。次に、窒素ガスを導入して圧力を3Paとし、基材にパルスバイアス電圧を印加しながら、アークカソード2に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、T2値が5.3μmとなるまで成膜した。アークカソード2の電流を止め、引き続きパルスバイアス電圧を印加しながらアークカソード1に100Aの電流を流してT1値が0.9μmとなるまで成膜した。本願発明ではパルス化したバイアス電圧を採用することによって硬質皮膜の残留圧縮応力の低減化を図った。使用したパルスバイアス電圧は、電圧設定値とゼロとの周期であるユニポーラーバイアス電圧である。即ち、本発明例1の硬質皮膜層2の電圧設定値は50V、硬質皮膜層1は80V、パルス波周波数を20kHzとした。上記の被覆プロセスによって、本発明例1を作成した。また、本発明例2から26、比較例27から50は、各アークカソード1、2のターゲット組成、各バイアス電圧値の設定値以外の条件は、本発明例1の被覆プロセスに準拠した。成膜条件を表1に示す。
得られた硬質皮膜の硬質皮膜層1、2の組成、X線回折ピーク強度比、(200)面の格子定数、皮膜硬度、残留圧縮応力値を評価した。以下に評価方法を述べる。硬質皮膜の組成測定は、各試料の切削用テストピースの膜断面を平面に研削・研磨し、その研磨部をEPMA(例えば日本電子(株)製JXA−8500R型)を用いて、加速電圧10kV、試料電流1μAで分析した。膜厚は、各試料の切削用テストピースを垂直方向に破断して、電解放射走査型電子顕微鏡(例えば日立製作所製S−4200型)で観察し、測定した。硬質皮膜のX線回折ピーク強度比、(200)面の格子定数の測定は、X線回折装置(理学電気(株)製RU−200BH型)を用いて、薄膜測定法では角度を1度に固定した薄膜設定(θ=5度を標準とし、必要に応じてθ=1度でも測定を行った)により2θを30〜70度の範囲で測定した。X線源にはλが0.1541nmのCuKα線を用い、バックグランドノイズは装置に内蔵されたソフトにより除去した。本願発明1から26の(200)面の格子定数の測定結果において、α1値は、0.411≦α1≦0.415であり、α2値は、0.413≦α2≦0.418、の範囲内であった。硬質皮膜の硬度測定は、超微小押し込み硬さ試験機((株)エリオニクス製超微小押込み硬さ試験機、ENT−1100型)を用いた。押し込み荷重は9.8mNとし、各試料につき10箇所測定し、その平均値を求めた。硬質皮膜の残留圧縮応力の測定は、曲率測定法により行い、残留応力測定用のテストピースを用いた。これは、縦10mm、横25mm、厚さ1mmの微粒超硬合金製の基材上下面を鏡面研磨することにより作製し、鏡面部の反り量(δ)を測定した。このテストピースの片面にのみ硬質皮膜が被覆されるように、成膜装置に装着し成膜した。成膜後、同様に反り量(δ)を測定し、テストピース厚さ(D)、破断面膜厚(d)を測定した。これらの数値から、(化1)によって残留応力値を算出した。(化1)において、Es値は基板のヤング率として518GPa、νs値は基板のポアッソン比として0.238、l値は最大たわみ量までの基板長さを12.5mmとした。測定結果を表2に示す。
次に、得られた硬質皮膜被覆インサートの切削性能を、下記の試験条件を用い評価した。工具寿命の評価方法は、逃げ面における最大摩耗幅が0.3mmに達するまでの加工時間とした。切削評価において発生する損傷も確認した。注目すべき損傷を摩耗量(幅)、硬質皮膜剥離、硬質皮膜破壊、チッピングとした。
(試験条件)
切削方法:平面削り加工
被削材: SKD11、130mm×250mmの角材
切削速度: 180m/min
一刃送り量:0.36mm/刃
切り込み量:1.0mm
切削油:なし、乾式切削
まず、硬質皮膜の機械的特性と切削性能の関係を調査した。本発明例1〜26は、本願発明の規定する範囲内にあったため、硬質皮膜層1の結晶組織が微細柱状となり、硬質皮膜層2は柱状となった。本発明例1は、硬質皮膜層1、2の残留圧縮応力が1.3GPa低減され、密着強度が改善された。そのめ、切削加工時に適度な残留圧縮応力が付与され皮膜の亀裂伝播やチッピングが抑制されて工具寿命は長くなった。これに対し、本発明例1と比較例27〜29の比較を行った。比較例27〜29はパルスバイアスを適用せず、直流バイアス電圧条件下にて成膜を行い、残留圧縮応力が及ぼす切削性能への影響を調査した。切削評価結果より、残留圧縮応力が2GPaを超える比較例27〜29は、切削初期から硬質皮膜の剥離や工具切刃におけるチッピングが多数観察され、工具寿命が短かった。これより残留圧縮応力が工具寿命を大きく左右することが確認された。
本発明例2、比較例30、31は、硬質皮膜層1の組成を変化させた時の影響を見た。本発明例2の組成はAl、Cr含有量が適正であり残留圧縮応力が1.3GPaに低減され、工具寿命は長くなった。一方、比較例30の硬質皮膜層1はCr含有量が多く、高い残留圧縮応力値を示し、2.2GPaであり密着強度が低下し、切削初期に切刃近傍において皮膜剥離が発生し、その直後に工具が欠損した。比較例31の硬質皮膜層1はAl含有量が多く、hcp構造のAlNの存在が確認された。そのため、残留圧縮応力は抑制されていたが皮膜硬度が低下した。切削試験においては、低硬度のため急速に摩耗が進行して短寿命であった。
本発明例3、4、比較例32、33は、硬質皮膜層2の組成を変化させた時の影響を見た。本発明例3、4、の組成はTi、Al含有量が適正であり残留圧縮応力が1.2、1.4GPaに低減され、工具寿命は長くなった。一方、比較例32、33は残留圧縮応力が2GPa以下に抑制されたが、比較例32はAl含有量が多く低硬度化し耐摩耗性が劣った。比較例33は、Ti含有量が多く耐酸化性が劣化し、耐酸化性の優劣が影響される工具境界部で激しく損傷が発生して、境界部から欠損した。
本発明例5、6、比較例34は、T1値が及ぼす影響を、本発明例7、比較例35は、T2値が及ぼす影響を見た。本発明例5、6はT1値が適正であり、残留圧縮応力が1.0、1.8GPaに低減され、工具寿命は長くなった。一方、比較例34はT1値が2μmを超えたため残留圧縮応力が2.4GPaに増大し、切削初期から刃先において皮膜剥離や皮膜破壊が原因の微小なチッピングが多数観察された。切削時間5分のとき工具逃げ面側において大きな皮膜剥離が発生して欠損に至った。本発明例7はT2値が適正であり、残留圧縮応力が1.8GPaに低減され、工具寿命は長くなった。一方、比較例35はT2値が3.4μmと薄いため、残留圧縮応力が低減しても摩耗の進行を抑制できず、切削時間10分で寿命に至った。これは本発明例1の約半分の工具寿命であった。
本発明例8〜13、比較例36〜42は、本発明例1の硬質皮膜層1を基準にして金属元素の添加を行い、その影響を見た。本発明例8〜13の残留圧縮応力値は、本発明例1に対して10〜30%程度大きくなった。しかし、結晶配向性や膜厚構造が本願発明の範囲であったため耐熱性、潤滑特性が改善され、長い工具寿命が得られた。特に本発明例8、9、12、13は、切削途中5分時の刃先の損傷を観察した結果、工具刃先の最も耐酸化性が要求される境界部逃げ面の摩耗が少なかった。最も寿命が長かった本発明例13の摩耗値は、0.048mmであり、本発明例1の0.102mmに対し半分であった。本発明例10、11は、V、Bの添加により、本発明例1と比較して10%程度寿命が長くなった。切削途中5分時の刃先の損傷を確認した結果、本発明例1は切刃エッジ部で被加工物の溶着が発生していたのに対し、本発明例10、11は溶着現象が確認されなかった。これより潤滑特性が改善されて溶着現象が抑制され、長寿命化を得ることができた。比較例36は硬質皮膜層1のSi含有量が16%であり、残留圧縮応力は1.6GPaであったが皮膜の組織がアモルファス状となり硬度が低く、切削加工時の逃げ面摩耗が急速に進行し、工具寿命が短かった。比較例37〜40は、硬質皮膜層1の置換比率が10%以上に達した。何れもIs/Ir<1の規定範囲外となり、残留圧縮応力も2GPa以上であった。比較例37〜40は、置換比率が高く、歪みエネルギーが増大したため残留圧縮応力が低減化せず、切削加工時の硬質皮膜のチッピングを生じて工具寿命が短かった。従って、添加する元素量が適正値を超えると、残留圧縮応力は大きくなる傾向にあり、工具寿命は短くなった。残留圧縮応力が大きい皮膜は切削途中での剥離現象や微小チッピングが多く見られ、突発的な欠損に至る事例が多かった。比較例41は硬質皮膜層1をTiNとしたが、残留圧縮応力は低減化したものの耐酸化性、潤滑性に劣った。切削加工時に被削材の溶着が激しく切削抵抗が増大し、工具境界部逃げ面の損傷が劣化し工具寿命も短かった。比較例42は硬質皮膜層2を(TiSi)Nとしたが、残留圧縮応力が増大した。(TiSi)Nは優れた耐酸化性と高硬度特性を有するが、切削加工時にチッピングを生じ工具寿命も短かった。
本発明例14〜18、比較例43〜47は、本発明例2の硬質皮膜層1を基準にして金属元素の添加を行いその影響を見た。本発明例14〜18は硬質皮膜1と同様の傾向を示し、長寿命であった。一方、比較例43〜47は、硬質皮膜層2の置換比率が10%以上に達した。何れもIv/Iu<5の規定範囲外となり、残留圧縮応力も2GPa以上であった。比較例43〜47は、置換比率が高く、歪みエネルギーが増大したため残留圧縮応力が低減化せず、切削加工時の硬質皮膜のチッピングを生じて工具寿命が短かった。
本発明例19〜22は、硬質皮膜層1のバイアス電圧条件を変えたときの影響を見た。成膜時のバイアス電圧条件を変えたとしてもパルス波を印加することにより残留圧縮応力は抑制され、何れも2GPa以下を示した。本発明例21、22は、残留圧縮応力が若干大きくなったが、類似組成の比較例27、28に対し、工具寿命は2倍以上であった。
本発明例23、24は、硬質皮膜層2のバイアス電圧条件を20V、80Vと変えたときの影響を見た。本発明例23、24の残留圧縮応力は本発明例1と同じ値を示し、工具寿命も同レベルであった。本願発明の皮膜物性を規定範囲内に制御することで、比較的高いバイアス電圧を選択して成膜を行っても、長い工具寿命を得た。
次に、硬質皮膜層1、2の密着強度の検討を行った。本発明例1、25、26、比較例48〜50を用いて切削評価を行った。本発明例25、26は、硬質皮膜層1、2の相互の(200)面の格子定数について検討を行った。格子定数の制御は、成膜のときに印加するバイアス電圧制御で行った。即ち、硬質皮膜1が直流バイアス電圧を100V、硬質皮膜2がパルスバイアス電圧を40V、パルス周波数20kHzの条件で格子定数を制御した。更に、本発明例26は、反応ガス圧力を5Paに制御した。例えばα1、α2値の測定の結果は、本発明例1のα1値は0.411nm、α2値は0.418nm、本発明例25のα1値は0.413nm、α2値は0.416nm、本発明例26のα1値は0.413nm、α2値は0.415nmであった。本発明例25の工具寿命は、本発明例1に対して、1.2倍優れた。α1、α2値を近づけることで、切削途中の刃先損傷状態は、微小なチッピングや皮膜剥離がほとんど確認されなかった。また、工具逃げ面摩耗の進行し難く、皮膜機能が十分に発揮された。本発明例26はα1、α2値がもっとも近く、工具寿命は、本発明例1に対して、1.22倍優れた。そこで、本発明例26の皮膜断面観察を行った。観察は、透過型電子顕微鏡を用いた。観察結果を図1に示す。図1より、硬質皮膜層1、2の格子縞が連続していることが確認され、硬質皮膜層2の(TiAl)Nと硬質皮膜1の(AlCr)Nの結晶が連続して成長しているため、密着強度が高まった。一方、比較例48は、硬質皮膜層1、2が含有するAl量が何れも70%を超えるものを作製した。α1値が0.414nm、α2値が0.414nmとなり整合が実現できたが、硬質皮膜層1、2には、hcp構造を有するAlNが生成されていた。比較例48の皮膜硬度は本発明例1と比較して、硬質皮膜層1が約28%、硬質皮膜層2が約15%低下した。切削評価では皮膜剥離は観察されなかったが、切削初期より工具逃げ面の摩耗が大きく、切削時間5分時の逃げ面最大摩耗幅は、本発明例1が0.102mmに対し、比較例48は0.226mmであった。比較例48は、この観察の1.4分後に工具寿命に達した。比較例49は、皮膜組成が本発明例1と同じになるよう調整した。硬質皮膜層1のバイアス電圧を40V、パルス幅を30kHzに設定した。α1値が0.410nm、α2値が0.418nmであった。硬度低下はなかったが、残留圧縮応力が2.2GPaとなった。切削評価では、切削時間5分時の工具逃げ面最大摩耗幅が0.098mmであった。しかし、工具切刃部において皮膜破壊が多く観察され、更に詳しく観察を行った所、硬質皮膜層1、2の界面から皮膜剥離が観察された。その後切削評価を継続し、切削時間が8.9分のときに突発的に欠損した。比較例50は、硬質皮膜層2のバイアス電圧を80Vに設定した。α2値が0.420nmであった。硬質皮膜層2の皮膜硬度は28.9GPaであり、最も高硬度を示した。本発明例1の硬質皮膜層2と比較して、約10%高かったが、残留圧縮応力が2.5GPaとなった。切削評価では、切削時間5分時の工具逃げ面最大摩耗幅は0.096mmであり、本発明例1に比べて少ないことが確認されたが、比較例49と同様に硬質皮膜層1、2の界面から皮膜剥離が観察された。その後切削評価を継続し、切削時間が7.1分のときに突発的に欠損した。
従来例51、52は何れも直流バイアス電圧条件下にて成膜を行い、膜厚が3μm程度であったため、工具寿命は比較例とほぼ同レベルであった。膜厚は工具寿命に大きな影響を及ぼすが、硬質皮膜の物性を適正な範囲に制御できなければ、産業上の優位点は得られないことが確認された。
図1は、本発明例26の観察写真を示す。

Claims (3)

  1. 超硬合金を基材とする切削工具に硬質皮膜を被覆した硬質皮膜被覆切削工具において、該硬質皮膜は物理的蒸着によって成膜された2層構造を有し、該2層構造は表面側に硬質皮膜層1、基材側に硬質皮膜層2が被覆された2層構造であり、該硬質皮膜層1の組成は(AlCr1−a)Nで表され、但し、夫々の元素の含有量は原子比であり、0.50≦a≦0.75、0.90≦x≦1.1であり、該硬質皮膜層1のX線回折における(200)面の半価幅をW(度)としたとき、0.5≦W≦0.9であり、(111)面のピーク強度Ir、(200)面のピーク強度Is、(220)面のピーク強度Itとしたとき、1<Is/Ir≦3、0.2≦It/Ir≦1、であり、該硬質皮膜層2の組成は、(TiAl1−b)Nで表され、但し、夫々の元素の含有量は原子比であり、0.4≦b≦0.6、0.9≦y≦1.1であり、該硬質皮膜層2のX線回折における(200)面の半価幅W(度)としたとき、0.4≦W≦0.6であり、(111)面のピーク強度Iu、(200)面のピーク強度Iv、(220)面のピーク強度Iwとしたとき、5≦Iv/Iu≦15、2≦Iw/Iu≦4、であり、X線回折における該硬質皮膜層1の(200)面の格子定数をα1(nm)としたとき、0.411≦α1≦0.415、該硬質皮膜層2の(200)面の格子定数をα2(nm)としたとき、0.413≦α2≦0.418、であり、該硬質皮膜全体の膜厚をTA(μm)、該硬質皮膜層1の膜厚をT1(μm)、該硬質皮膜層2の膜厚をT2(μm)としたとき、5≦TA≦12、0.1≦T1≦2、4≦T2≦10、TA=T1+T2、であることを特徴とする硬質皮膜被覆切削工具。
  2. 請求項1に記載の硬質皮膜被覆切削工具において、該硬質皮膜層1のAl、Crのうち、夫々10原子%以下の範囲でSi、B、V、Nb、Wのうちから選択される1種以上の元素で置換したことを特徴とする硬質皮膜被覆切削工具。
  3. 請求項1に記載の硬質皮膜被覆切削工具において、該硬質皮膜層2のTi、Alのうち、夫々10原子%以下の範囲でSi、B、V、Nb、Wのうちから選択される1種以上の元素で置換したことを特徴とする硬質皮膜被覆切削工具。
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