JP5995091B2 - 付着強度と耐チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具 - Google Patents

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本発明は、硬質被覆層がすぐれた付着強度と耐チッピング性を備えた表面被覆切削工具に関し、さらに詳しくは、炭素鋼、合金鋼などの高硬度鋼の高速断続旋削加工に用いた場合においても、長期に亘ってすぐれた切削性能を示す表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関する。
一般に、表面被覆切削工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるインサート、被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、またインサートを着脱自在に取り付けてソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うインサート式エンドミルなどが知られている。
従来、被覆工具の一つとして、AlTi(ここで、62at%≦a≦85at%、15at%≦b≦38at%、但し、a+b=100at%)又はAlTa(ここで、60at%≦c≦80at%、20at%≦d≦40at%、但し、c+d=100at%)の組成を有する蒸発源材料を用い、窒素系反応ガスの供給量を連続的又は段階的に変化させながら、スパッタ法又はイオンプレーティング法により不活性ガス雰囲気中で基材上に成膜を行い、前記組成の実質的に非晶質の金属から膜表面に向って(Al,Ti)N系又は(Al,Ta)N系結晶質セラミックス相に組成及び構造が傾斜的に変化した耐摩耗性硬質膜が、コーティングに先立ち基材を予熱することなく膜を形成しても、基材上に形成する膜がそれら界面でのクラックや剥離発生を招くことなく、良好に密着することが知られている(特許文献1参照)。
また、他の被覆工具としては、アークイオンプレーティング表面処理で、表面から1〜50nmの範囲内の平均深さに亘って非晶質化層を形成してなる炭化タングステン基超硬合金基体の表面に、(a)窒化チタン層からなり、かつ0.1〜5μmの平均層厚を有する下地靭性層、(b)組成式:(Ti1−xAl)Nおよび同(Ti1−xAl)C1−y(但し、原子比で、xは0.15〜0.65、yは0.5〜0.99を示す)を満足するTiとAlの複合窒化物層およびTiとAlの複合炭窒化物層のうちのいずれかの単層、または両方の複層からなり、かつ0.5〜15μmの平均層厚を有する表面硬質層、以上(a)および(b)で構成された耐摩耗被覆層を物理蒸着してなるすぐれた密着性および耐チッピング性を有する被覆工具が知られている(特許文献2参照)。
特開平6−122959号公報 特開2003−80406号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、例えば、硬質被覆層として、(Ti,Al)N層等を蒸着形成した従来被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄の通常条件での切削に用いた場合には格別問題はないが、特に、切削時に高熱発生を伴う軟鋼、ステンレス鋼、合金鋼などの高硬度鋼の高速断続旋削加工に用いた場合には、硬質被覆層の付着強度および耐チッピング性が不足するために、硬質被覆層に剥離、欠損、亀裂進展、チッピング等が発生しやすいため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、特にステンレス鋼、合金鋼などの断続旋削加工で、硬質被覆層がすぐれた付着強度、耐チッピング性を備えるとともに、すぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を開発すべく、前記従来被覆工具の硬質被覆層に着目し、研究を行った結果、以下の知見を得た。
(a)硬質被覆層が、少なくともAlとTiの複合窒化物層を含む層で構成された従来被覆工具において、複合窒化物層の構成成分であるAlは高温硬さと耐熱性を向上させ、Tiは高温強度を向上させると共に、AlとTiが共存含有した状態で高温耐酸化性を向上させる作用がある。
(b)工具基体表面に所定の凹凸を形成させた上に、蒸着初期には所定のエネルギー状態で微粒硬質被覆層を形成させると、主として高結晶性の硬質被覆層が形成されるが、窪み部にのみ選択的に低結晶領域が形成され、蒸着後期には初期よりも高い、所定のエネルギー状態で微粒硬質被覆層を形成させると、全体が高結晶性の硬質被覆層が形成される。
(c)窪み部に形成された低結晶領域は、付着力、耐衝撃性の向上に寄与し、突出部に形成された高結晶領域は、耐摩耗性の向上に寄与する。
(d)前述した工具基体表面の凹凸は、ボンバードプロセスによって形成することができる。
本発明は、前記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金焼結体からなる工具基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が、組成式:(AlTi1−x)N(x=0.5〜0.7)(但し、xは原子比)の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの複合窒化物層を少なくとも含み、
前記複合窒化物層を断面方向から観察した場合に、粒子幅が10nm以上の結晶粒が50面積%以上存在し、且つ、工具基体の界面の平均界面を示す線分よりも工具基体側に凹んだ深さ100nm以上、幅50nm以上の窪み部が存在するとともに該窪み部において前記工具基体の平均界面を中心にして高さ200nm×窪みの幅で規定される複合窒化物領域が、硬質被覆層領域の面積に対して粒子幅10nm以上の結晶粒の存在割合が5面積%以下である低結晶質領域であることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記工具基体の界面の平均界面を示す線分よりも複合窒化物層側に突出している前記平均界面からの高さ100nm以上、幅50nm以上の突出部が存在するとともに該突出部において前記工具基体の平均界面から高さ200nm×突出部の幅で規定される領域中のうち複合窒化物領域が、前記結晶粒の存在割合が60面積%以上である高結晶質領域であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
なお、本発明における平均界面とは、複合窒化物層と工具基体を断面から観察した場合に界面付近に存在する1つの直線であって、観察像上で、硬質被覆層と工具基体が接する曲線がこの線より複合窒化物層側に突出している部分の面積と、この面より凹んでいる部分の面積が等しくなるような面を意味している。
つぎに、本発明の表面被覆切削工具の硬質被覆層に関し、より詳細に説明する。
本発明の表面被覆切削工具の硬質被覆層は、炭化タングステン基超硬合金焼結体からなる工具基体の表面に蒸着形成された(AlTi1−x)N(x=0.5〜0.7)(但し、xは原子比)の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの複合窒化物層を少なくとも含んでいる。
ここで、硬質被覆層を構成する複合窒化物層の組成式(AlTi1−x)NにおけるAlは、TiNに対して耐酸化性および耐摩耗性を高めるという効果を奏するが、その機械的性質は逆に劣化するという問題が指摘されている。すなわち、Alの含有割合xが0.5未満であると耐酸化性および耐摩耗性を向上させるという効果が十分に発揮されず、一方、0.7を超えると複合窒化物層を構成する結晶粒の靭性が低下するため、特に、高速切削に用いた場合には、工具の刃先温度が著しく高温になり、皮膜の酸化、急激な摩耗の進行、熱衝撃性による劣化および被削材との溶着により短寿命になるという問題がある。そこで、AlとTiとの合量に対するAlの含有割合xは、0.5〜0.7(但し、原子比)と定めた。また、硬質被覆層の平均層厚が0.5μmを下回ると硬質被覆層が持つ耐摩耗性が十分でなく、7.0μmを超えると皮膜中の圧縮応力によるチッピングが多くなり、所望の耐摩耗性を発揮することが出来ない。そのため、本発明の表面被覆切削工具の硬質被覆層の平均層厚は、0.5〜7.0μmと定めた。
その上で、硬質被覆層を構成する複合窒化物層が、図2に模式的に示し、次に説明するような構造をとるとき、きわめてすぐれた切削性能を示すことを見出した。なお、図2において硬質被覆層領域に描写した六角図形は、粒子幅が10nm以上の微細結晶粒を示しているが、この図はあくまで模式図であって、その存在割合等は、実際の構造とは、対応していない。
(a)複合窒化物層全体における微細結晶粒の存在割合:
前述のような複合窒化物層において、粒子幅が10nm以上の微細結晶粒が存在しているとき、皮膜の硬度が向上し、複合窒化物層の耐摩耗性が向上する。しかしながら、微粒結晶粒の存在割合が50面積%未満であると、微粒結晶粒の皮膜の硬度向上に対する寄与度が十分でないためこのましくない。そのため微細結晶粒の存在割合は50面積%以上と定めた。
ここで、本発明における粒子幅とは、結晶粒の面積と同じ面積をもつ真円の直径をいう。
(b)窪み部と低結晶質領域の存在:
本発明における硬質被覆層は、工具基体へ前処理として行うボンバード工程を、圧力勾配型プラズマガンにより形成した活性の高いTiおよびArの混合プラズマ中で処理することによって工具基体に窪み部を設け、更にその後の皮膜の形成条件のうち、蒸着初期10分間の形成条件を、例えば、−30〜−20Vのバイアス電圧と300度の工具基体温度という条件のもとで形成することにより、皮膜の結晶化がされづらくなり、結果としてその窪み部にのみ粒子幅が10nm以上の結晶粒の存在割合が5面積%以下の低結晶質領域を形成することが出来る。その結果、窪み部に発生しやすい引っ張りの熱応力を緩和することが出来、工具として用いた場合に、すぐれた付着強度と耐チッピング性を発揮する。本発明においては、通常、引張応力が集中する原因になりがちな工具基体表面の窪み部上に、低結晶質領域を選択的に形成させるという新規な着想により、付着強度と耐チッピング性を向上させることに成功した。なお、窪み部に存在する粒子幅が10nm以上の結晶粒の存在割合が5面積%を超えると、窪み部に発生する引っ張りの熱応力の緩和が十分になされないため、好ましくない。
(c)突出部と高結晶質領域の存在:
本発明における硬質被覆層は、前記の構成に加えて、工具基体に突出部を設け、−30Vのバイアス電圧と300度の工具基体温度という条件のもとで形成することにより、窪み部には低結晶質領域を形成したまま、その突出部に粒子幅が10nm以上の結晶粒の存在割合が60面積%以上の高結晶質領域を選択的に形成させることができ、その結果、耐摩耗性を一層向上させることが出来る。しかしながら、粒子幅が10nm以上の結晶粒の存在割合が60面積%未満では、結晶性が十分でなく、耐摩耗性を一層向上させるという効果が十分に発揮されないため好ましくない。
(d)TiN、(Ti,Al)N、Ti(C,N)、(Al,Cr)N、CrNからなる1層または2層以上の上部層:
本発明における硬質被覆層は、前記の構成に加えて、TiN、(Ti,Al)N、Ti(C,N)、(Al,Cr)N、CrNからなる1層または2層以上の上部層を形成することにより、切削初期での耐酸化性を向上させるとともに、被削材に対する耐溶着性も向上し、切削における更なる長寿命化を図ることが出来る。
本発明の被覆工具は、炭化タングステン基超硬合金焼結体からなる工具基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、硬質被覆層が、組成式:(AlTi1−x)N(x=0.5〜0.7)(但し、xは原子比)の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの複合窒化物層を少なくとも含み該複合窒化物層を断面方向から観察した場合に、平均粒径が10nm以上の結晶粒が50面積%以上存在し、且つ、工具基体の界面の平均界面を示す線分よりも工具基体側に凹んだ深さ50nm以上、幅50nm以上の窪み部が存在するとともに該窪み部において工具基体の平均界面を中心にして高さ200nm×窪みの幅で規定される複合窒化物領域が、硬質被覆層領域の面積に対して粒子幅10nm以上の結晶粒の存在割合が5面積%以下である低結晶質領域であることにより、窪んだ部分に発生しやすい引張応力を緩和し、切削工具に要求されるすぐれた付着強度と耐チッピング性を備えるものである。
さらに、前記構成に加えて、工具基体の界面に平均界面を示す線分よりも複合窒化物層側に突出している平均界面からの高さ100nm以上、幅50nm以上の突出部が存在するとともに該突出部において工具基体の平均界面から高さ200nm×突出部の幅で規定される領域中のうち複合窒化物領域が、粒子幅10nm以上の結晶粒の存在割合が60面積%以上である高結晶質領域であることにより、耐摩耗性が飛躍的に向上する。
しかも、前述のように工具基体表面に窪み部と突出部が存在していることにより、いわゆるアンカー効果と呼ばれる作用が奏され、工具基体表面の凹凸と複合窒化物層の凹凸がうまく噛み合い、くさびのように働くことと、両者の接触面積が増加することの相乗効果により、工具基体と複合窒化物層との付着効果が向上する。
本発明の表面被覆工具の硬質被覆層を蒸着形成するための圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置の概略図を示す。 本発明の表面被覆工具の硬質被覆層の断面模式図を示す。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Eを形成した。
ついで、前記工具基体A〜Eのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1の概略図に示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置に工具基体を装着し、下記の条件でボンバード処理を行った。
工具基体温度:400〜430℃、
蒸発源1:金属Ti、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:10kW、
アシストプラズマガン放電電力:2kW、
放電ガス流量割合:アルゴン(Ar)ガス 35vol%、
工具基体に印加するバイアス電圧:1kV、
処理時間:15min.、
前記ボンバード処理に引き続き、一度、工具基体温度を300℃まで下げたのち、
工具基体温度:380〜430℃、
蒸発源1:金属Ti、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:8〜9kW、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:9〜11kW、
反応ガス流量割合:窒素(N)ガス 80vol%
放電ガス流量割合:アルゴン(Ar)ガス 20vol%、
蒸着初期10分間に工具基体に印加するバイアス電圧:−30〜−20V、
という表2に示される形成条件のもと10分間蒸着形成を行い、続いて
工具基体温度:380〜430℃、
蒸発源1:金属Ti、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:8〜9kW、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:9〜11kW、
反応ガス流量割合:窒素(N)ガス 80vol%
放電ガス流量割合:アルゴン(Ar)ガス 20vol%、
蒸着初期10分以降に工具基体に印加するバイアス電圧:−90V、
蒸着時間:40〜280min.、
という表2に示される形成条件のもと表3に示される所定の目標層厚および組成を有するTiとAlの複合窒化物層の形成を行い、本発明表面被覆切削工具としての本発明インサート1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、工具基体A〜Eを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、本発明と同様、図1の概略図に示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置に工具基体を装着し、
工具基体温度:380〜430℃、
蒸発源1:金属Ti、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:8〜9kW、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:9〜11kW、
反応ガス導入口1および2の反応ガス流量割合:窒素(N)ガス 100vol%
プラズマガン用放電ガスの流量割合:アルゴン(Ar)ガス 35vol%、
蒸着初期10分間に工具基体に印加するバイアス電圧:−90V〜−30V、
蒸着初期10分以降に工具基体に印加するバイアス電圧:−90V〜−30V、
という表4に示される形成条件のもと表5に示される所定の目標層厚および組成を有するTiとAlの複合窒化物層の形成を行い、比較表面被覆切削工具としての比較インサート1〜8をそれぞれ製造した。
また、前記複合窒化物層形成後に、通常の物理蒸着法を用いて、TiN、(Ti,Al)N、Ti(C,N)、(Al,Cr)N、CrNからなる1層または2層以上の合計平均層厚0.1〜0.5μmの上部層を形成することにより、表3および表5に示される本発明インサート9〜12、比較インサート9〜12をそれぞれ製造した。
つぎに、前記の各種のインサートを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明インサート1〜12および比較インサート1〜12について、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔8本縦溝入り丸棒、
切削速度: 220 m/min.、
切り込み: 1.5mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 4分、
の条件(切削条件A)での合金鋼の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は、200m/min.)、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔8本縦溝入り丸棒、
切削速度: 220m/min.、
切り込み: 1.5mm、
送り: 0.15mm/rev.、
切削時間: 5分、
の条件(切削条件B)での炭素鋼の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は、220m/min.)、
被削材:JIS・SCM415の長さ方向等間隔6本縦溝入り丸棒
切削速度: 230m/min.、
切り込み: 1.5mm、
送り: 0.25mm/rev.、
切削時間: 5分、
の条件(切削条件C)での合金鋼の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は、200m/min.)を行い、いずれの断続旋削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
この結果得られた本発明インサート1〜12および比較インサート1〜12の硬質被覆層を構成する各層の平均層厚を、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて断面測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
さらに、本発明インサート1〜12、比較インサート1〜12を集束イオンビーム加工装置により、層厚方向に
高さ:層厚の2倍相当 × 幅:50μm × 厚さ:100nm
の薄片に加工した後、透過型電子顕微鏡を用いて、観察加速電圧200kVの条件のもと、本発明インサート1〜12および比較インサート1〜12の複合窒化物層を観測し、さらに、直径が複合窒化物層の層厚相当の電子線を複合窒化物層に照射してエネルギー分散型分光分析装置を用いて、複合窒化物層の組成を求めたところ、その組成が表3、5に示す目標組成と実質的に同じ組成を有していることを確認した。
さらに、本発明インサート1〜12および比較インサート1〜12の硬質被覆層の工具基体に垂直な断面研磨面を1μm×1μmの範囲にわたって走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、窪み部における平均界面を中心にして高さ200nm×窪み部の幅相当の範囲における複合窒化物領域と突出部における平均界面から200nm×突出部の幅相当の範囲における複合窒化物領域について、その観察像から微細結晶粒の面積割合(%)を測定した。その結果を、同じく、表3、5に示した。
表3および表6に示される結果から、本発明インサートは、硬質被覆層を断面方向から観察した場合に、粒子幅が10nm以上の結晶粒が50面積%以上存在し、且つ、工具基体の界面の平均界面を示す線分よりも工具基体側に深さ50nm以上、幅50nm以上の窪み部が存在するとともに該窪み部において工具基体の平均界面を中心にして高さ200nm×窪みの幅で規定される複合窒化物領域が、粒子幅が10nm以上の結晶粒の存在割合が5面積%以下である低結晶質領域であることによって、硬質被覆層全体として、すぐれた付着強度および耐欠損性を有し、また、すぐれた耐摩耗性を示し、剥離、欠損、チッピングを発生することなくすぐれた工具特性を長期に亘って発揮することが明らかである。
また、本発明工具のより応用的な実施例として、表3に示すように、硬質被覆層の上部に、(Al,Ti)N、(Al,Cr)N、Ti(C,N)といった耐摩耗性にすぐれる硬質膜、あるいは、TiNやCrNなどの潤滑性にすぐれる膜を被覆しても、剥離、欠損、チッピングを発生することなくすぐれた工具特性を長期に亘って発揮することが明らかである。
一方、表5および表6に示される結果から、比較インサートは、硬質被覆層が、(Ti1−xAl)N(x=0.5〜0.7)(但し:xは原子比)の成分系からなる複合窒化物層を含むものの、工具基体の界面の平均界面を示す線分よりも工具基体側に深さ50nm以上、幅50nm以上の窪み部が存在しておらず、その結果、低結晶質領域も形成されないため、硬質被覆層全体として、付着強度および耐欠損性の面で劣り、剥離、欠損、チッピングを発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の表面被覆切削工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工は勿論のこと、特に高熱発生を伴うとともに、切刃部に対して大きな負荷がかかるステンレス鋼、合金鋼などの高硬度鋼の高速断続旋削加工においても、すぐれた付着強度および耐欠損性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金焼結体からなる工具基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
    前記硬質被覆層が、組成式:(AlTi1−x)N(x=0.5〜0.7)(但し:xは原子比)の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの複合窒化物層を少なくとも含み、
    前記複合窒化物層を断面方向から観察した場合に、粒子幅が10nm以上の結晶粒が層全体の平均値で50面積%以上存在し、且つ、前記工具基体の界面の平均界面を示す線分よりも工具基体側に凹んだ深さ50nm以上、幅50nm以上の窪み部が存在するとともに該窪み部において前記工具基体の平均界面を中心にして高さ200nm×窪みの幅で規定される領域中の硬質被覆層領域の面積に対して、粒子幅10nm以上の結晶粒の存在割合が5面積%以下である低結晶質領域であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記工具基体の界面の平均界面を示す線分よりも複合窒化物層側に突出している前記平均界面からの高さ100nm以上、幅50nm以上の突出部が存在するとともに該突出部において前記工具基体の平均界面から高さ200nm×突出部の幅で規定される領域中の硬質被覆層領域の面積に対して、前記結晶粒の存在割合が60面積%以上である高結晶質領域であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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