JP4869282B2 - 硬質被膜およびそれを用いた硬質被膜部材 - Google Patents

硬質被膜およびそれを用いた硬質被膜部材 Download PDF

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Description

本発明は、金属製の部材の表面にスパッタリング法等により成膜するターゲットを用いて形成された硬質被膜に関するものである。
自動車部品、機械部品、家電製品用部品等の鉄等の金属部品を、冷間、温間、もしくは熱間で鍛造する際に使用される金型は、使用中に、金型表面が高温になるために、成形用金型等表面の酸化による損傷、繰り返し熱応力による疲労亀裂の発生等が生じ、成形面に“肌荒れ”(表面粗度の増大)現象が生じる。この“肌荒れ”は、成形加工数(ショット)の増大によって進行し、寸法精度の維持が困難になる。
このような金型の損傷を少しでも遅らせ、寿命を伸ばすために、鍛造用金型等には、タフトライド処理(塩浴窒化処理)、ガス窒化処理、イオン窒化処理、浸硫窒化処理等の窒化処理が幅広く行われている。これらの窒化処理の特徴は、鋼からなる金型等母材表面に窒素を主成分とする元素を拡散浸透させ、表面硬度の増大、表面圧縮応力の導入等を図り、熱衝撃に対する金型表面の耐久性を向上させている。
しかし、窒化処理では、金型表面の耐酸化性を向上させることはできない。このため、金型等の表面が酸化され、この酸化層が成長、剥離し、再度酸化が生じる。このようなサイクルにより、金型等の表面が酸化により損傷する。
窒化処理以外の表面処理法としては、化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)等により窒化クロム、炭化チタン、窒化チタン等の硬質被膜を形成する方法があげられる。
特開2000−199055号公報 特開2002−212707号公報
硬質被膜による被覆を必要とする部材としては、上記の鍛造用金型の他、例えば切削工具や刃物、自動車部品等が挙げられる。これらの被膜が表面に形成された部材は、従来より耐久性のさらなる向上が求められている。
金属部材に被膜を形成する方法としてスパッタリングが採用され、スパッタリングターゲットが使用される。こうしたスパッタリングターゲットとしては、特開平9−95751号公報に記載されたものがあり、Crを主成分として、AlとSiとを含むスパッタリングターゲットを高周波溶解炉で製造したものが開示されている。
このスパッタリングにおいて、部材表面に形成される被膜の特性には、スパッタリングターゲットの特性が影響し、特にスパッタリングターゲットを構成する金属元素の均一な分散性が要求される。金属元素の偏析を生じているターゲットを用いてスパッタリングを行うと、部分的な被膜特性の劣化が生じる。
しかしながら、従来のターゲットは、要求特性を十分に満足しているとは言えなかった。例えば、Cr−Al−Si合金を溶解法で作製する場合、それぞれ融点の異なる材料(Cr融点:1860℃、Al融点:660℃、Si融点:1410℃、理化学辞典参照)同士を均一に溶解混合せねばならず、工程管理が複雑になりコストアップにつながる。また、溶解法であっても均一な組織は必ずしも得られていなかった。Crの偏析部が多くなる(または大きくなる)とその部分をスパッタリングした際にCrリッチな膜が出来てしまい膜の均一性が保たれなくなると言った不具合が発生しやすいことが判明した。
本発明は、上記課題を考慮してなされたもので、金属部材に成膜する際に、均質で耐食性に優れた被膜特性が得られ、成膜効率および再現性に優れた蒸着材料としてのターゲットを用いて形成される長寿命の硬質被膜および硬質被膜部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する方法について研究し、特にターゲットの構成金属であるCr、SiまたはAlの分散性に着目した。その結果、Cr偏析部のサイズを規定することにより上記課題を効果的に解決することが可能であるとの知見を得て本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る硬質被膜は、AlおよびSiの少なくとも一方を含有しその合計含有量が5〜20原子%であり、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,W,Mo,Bの少なくとも1種の元素を含有しその合計含有量が1〜50原子%であるCr合金から成る蒸着材料としてのターゲットであって、このターゲットの、200μm四方の組織領域をX線マイクロアナライザーにより加速電圧15kVでCr元素のマッピングを実施したときに、カウント数が600以上であるCrの偏析部の直径が50μm以下であるターゲットを用いると共に雰囲気ガスとして窒素ガス,メタンガスの窒素または炭素含有雰囲気を使用することにより、窒化膜,炭化膜または窒炭化膜として成膜されたことを特徴とする。
図1にターゲットのEPMAによるマッピング結果を模式的に示す。図1において、スパッタリングターゲットの観察面は、カウント数が600以上であるCrの偏析部1と、カウント数が600未満であるCr−Al溶融相2とから構成される。ここでCr偏析部1の直径は、Cr偏析部1の長径(最長対角線の長さ)と短径(長径の中点と直交する対角線長さ)との算術平均として定義する。
図1のように、本発明で使用するターゲットにおいてCr偏析部1の最大径は50μm以下である。
こうしたCr偏析部が多数存在すると、ターゲットを使用して成膜する際に均一な膜特性が得られにくい。偏析部の直径を50μm以下と規定した理由としては、偏析部が50μmを超える場合は、得られる被膜の特性が低下するためである。
また、本発明に係る硬質被膜は、AlおよびSiの少なくとも一方を含有しその合計含有量が5〜20原子%であり、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,W,Mo,Bの少なくとも1種の元素を含有しその合計含有量が1〜50原子%であるCr合金から成る蒸着材料としてのターゲットであって、このターゲットの、200μm四方の組織領域をX線マイクロアナライザーにより加速電圧15kVでCr元素のマッピングを実施したときに、カウント数が600以上であるCrの偏析部の面積比率のばらつきが30%以内であるターゲットを用いると共に雰囲気ガスとして窒素ガス,メタンガスの窒素または炭素含有雰囲気を使用することにより、窒化膜,炭化膜または窒炭化膜として成膜されたことを特徴とする。
Cr偏析部の面積比率のばらつきは、図2に示すターゲットの測定ポイント、すなわち中心部(位置1)と、中心部を通り円周を均等に分割した4本の直線状の外周近傍位置(位置2〜9)およびその半径方向の1/2の距離の位置(位置10〜17)についてサンプリングし、これらサンプリング試料のCr偏析部の面積比率を測定して比較したものである。
ばらつきはサンプリング資料の最大値と最小値をもとに、[(最大値−最小値)/(最大値+最小値)×100(%)]の式で算出した。このCr偏析部の面積比率のばらつきの値が30%以下であることが好ましい。ばらつきが30%を超えると、成膜時に均一な膜特性を得ることが出来なくなり、製品歩留まりが低下する。ばらつきは、15%以下とすることがさらに好ましい。
また、本発明者らの知見によれば、ーゲットはCrを主成分とし、AlおよびSiから選択される少なくとも一方の金属元素を含有することが好ましい。またSiおよびAlの少なくとも一方の含有量は、5〜30原子%の範囲が好ましい。
さらに、ーゲットは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、B、Mo、B及びWからなる群から選択された少なくとも1種の金属元素を1〜50原子%含有するように構成してもよい。
ーゲットに含有される金属元素のうち、AlおよびSiは、主として形成された膜の耐酸化性を向上させる成分である。従って、AlおよびSiの少なくとも一方の金属元素がターゲットに含有されることが好ましい。
Ti、Zr、Hf、Mo、W、Bは、スパッタ条件において存在する窒素ガスと結合して窒化物を生成し、主として膜の耐摩耗性を高める成分である。V、NbおよびTaは、膜の潤滑性を高めるために有効な成分である。
これら各元素のどれを選択するか、その組み合わせおよび各元素の存在比率等は、ーゲットの具体的な目的ないし用途、それから形成される膜の特性等に応じて適宜決定することができる。
また、本発明で使用するターゲットは、任意の断面において観察される欠陥の径が0.6mm以下であることが好ましい。
本発明者らによれば、ーゲットの欠陥は、任意の断面において観察される直径が0.6mm以下とし、直径が0.6mmを超える気孔等の欠陥が存在しないように構成することにより、成膜時の被膜特性の低下を防止することが可能である。
さらに、本発明で使用するターゲットは、ガス雰囲気でスパッタリングを行い、ビッカース硬度Hv0.05が500以上の硬質被膜を形成するターゲットとして使用される。雰囲気ガスとして窒素ガス,メタンガス等の窒素または炭素含有雰囲気を使用することにより、均質で硬質な窒化膜,炭化膜または窒炭化膜を形成することが可能である。
また、本発明で使用するターゲットは、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法等の各種ドライプロセス蒸着に用いられるものである。このうち、アークイオンプレーティング法に適用した場合には、膜の付着力が強く、気孔率も低くなり、機械的強度も良好になることから、最も効果的である。
本発明で使用するターゲットは任意の方法によって製造することができる。例えば、混合粉末を用いて、常圧焼結、ホットプレス(HP)法、熱間静水圧(HIP)法などを実施する粉末冶金法(焼結法)や、予め合金化した粉末を用いる上記の粉末冶金法や溶解法などである。特に混合粉末を用いる粉末冶金法の場合、混合する金属原料粉末の粒径、ボールミル等による混合時間、焼結温度、焼結時間等を適切に調整する必要がある。粉末冶金法の場合、原料粉末同士を均一に混合することが可能なので焼結後のCrの偏析部の分散状態を均一に保ちやすい。また、Cr合金粉末を用いて焼結することも効果的である。
また、これらの金属粉末を例えばホットプレス法などによって焼結する場合には、真空中(例えば真空度5×10−2Pa以下)で所定時間加熱して脱ガス処理を行うことが好ましい。この脱ガス処理は、300〜500℃の温度で、2〜10時間実施すれば十分である。脱ガス処理を行うことにより窒素、水素、酸素等のガス成分を除去できるので空孔等の欠陥の最大径を0.6mm以下にし易くなる。
また、真空溶解法により、ターゲットを作製する場合について説明する。真空溶解法には、アーク溶解法、EB溶解法等の様々な溶解法があるが、Cr偏析部のばらつきを抑えるという観点からするとアーク溶解法の方が好ましい。
また、焼結後(溶解後)、必要に応じ、機械加工を行いターゲットの形状を整えてよいことは言うまでもない。
一方、本発明で使用するターゲットを用いて成膜された硬質被膜は、均質で硬質の被膜であり、また、この硬質被膜を基材表面に設けた硬質被膜部材は、耐久性および耐食性に優れた部材とすることができる。なお、硬質被膜を設ける基材表面とは、硬質被覆部材を構成する基材(ベース材)表面のみならず、基材表面に中間層を設け中間層上に硬質皮膜を設ける形態をも含むものとする。
上記構成に係る硬質被膜および硬質被膜部材によれば、金属等の基材に成膜した場合に、均質で耐食性に優れた被膜特性が得られ、また成膜効率および再現性に優れたスパッタリングターゲットであるので長寿命の硬質被膜および硬質被膜部材を提供することが可能である。
また、本発明で使用するターゲットは粉末冶金法(焼結法)によっても作製可能であることから従来の溶解法と比べて安価に作製することも可能である。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記実施形態用のターゲットにおいて、実施例および比較例の試料番号に付されたA,Bの記号は、それぞれの製法の差異を表す。すなわち、Aは金属材料を真空溶解法により溶解し、これをガスアトマイズ法により合金粉末とした材料によりターゲットを製作し、Bは各金属粉末をボールミルにより混合した材料を用いてターゲットを製作したことを示す。
<実施例A>
表1に示す組成の電解材料を真空溶解し、ガスアトマイズ法により合金粉末を作製した。その後、得られた粉末を篩分けし、粒度選別を行った。表1に示す粒径の合金粉末をカーボン型にセットし、真空度2×10−2Pa、昇温速度5℃/分、途中、500℃で5時間保持することにより脱ガス処理を行い、焼結温度1300℃で5時間、焼結圧力24.5MPaでホットプレスを行った。
得られた焼結体を機械加工し、直径5インチ×厚さ10mmの蒸着材料としてのターゲットを作製した。
また、これらのターゲットを用い、アークイオンプレーティング法によりCo含有のハイス鋼製の熱間用金型に被膜を形成した。
イオンプレーティングは、基板温度400℃で反応Nガス圧1Pa、−150Vのバイアス電圧を印加し、膜厚10μmになるまで処理した。合計100個の熱間用金型パンチに被膜を作製した。使用後のターゲットより、サンプルを切りだし、解析条件を加速電圧15kV,照射電流2×10A,時間30msecとして200μm四方を対象にしてEPMA解析を行い、得られたCrマッピング図においてカウント数が600以上であるCr偏析部の直径を測定した。また、図2に示す17箇所の測定ポイントについてCr偏析部の直径を測定し、前記算式によりCr偏析部の面積比率のばらつきを測定した。
実際に熱間鍛造時の金型寿命評価を行った。金型寿命の判定は、金型表面に形成した硬質被膜が損傷して被加工材(被成形品)の寸法精度が規定の範囲を外れた時点までの連続成形回数(ショット)とした。
<実施例B>
表1に示す組成、粒径の金属粉末をAr雰囲気で表1に示す時間ボールミル混合を行った。次にこの混合粉末をカーボン型にセットし、真空度2×10−4Pa、昇温速度5℃/分、途中、500℃で5時間保持することにより脱ガス処理を行い、焼結温度1300℃で5時間、焼結圧力24.5MPaでホットプレスを行い、ターゲット用焼結体を調整した。
得られた焼結体を機械加工し、直径5インチ×厚さ10mmの蒸着材料としてのターゲットを作製した。
実施例Aと同じ方法で、成膜、EPMA解析、金型寿命評価を行った。
<実施例C>
実施例A−1と同じ組成のターゲットをアーク溶解法により作製した。
実施例Aと同じ方法で、成膜、EPMA解析、金型寿命評価を行った。
<比較例B>
表1に示す組成および粒径を有する金属粉末をAr雰囲気で表1に示す時間をかけてボールミル混合を行った。次にこの混合粉末をカーボン型に充填し、真空度2×10−2Pa、昇温速度5℃/分、途中、500℃で5時間保持することにより脱ガス処理を行い、焼結温度1300℃で5時間、焼結圧力24.5MPaでホットプレスを行った。
得られた焼結体を機械加工し、直径5インチ×厚さ10mmの蒸着材料としてのターゲットを作成した。
実施例Aと同じ方法で、成膜、EPMA解析、金型寿命評価を行った。
<比較例C>
実施例A−1と同じ組成のターゲットをEB溶解法により作製した。
実施例Aと同じ方法で、成膜、EPMA解析、金型寿命評価を行った。
実施例A,実施例B,実施例C,比較例Bおよび比較例Cの試験の結果を表1に示す。
Figure 0004869282
表1に示すように、実施例A−1〜実施例A−9から明らかなように、合金粉末を焼結して製作した蒸着材料としてのターゲットにより成膜した金型は、Cr偏析サイズが全ての実施例において10μm以下であった。
また、ばらつきも実施例A−3において2%と最小に抑制され、最大のばらつきを示した実施例A−9においても13%と、非常に良好な結果を示した。金型寿命評価についても全ての実施例Aについて12000ショット以上であり、強固で均質な金属膜の形成が可能であることが判明した。すなわち被膜の寿命が長く、結果として成形用金型の寿命を伸ばすことが可能である。
また、真空溶解法とガスアトマイズ法により合金粉末を製造し、ーゲットを作製した実施例Aにおいて、実施例A−1と実施例A−7との比較により、同一の金属組成で粒径の異なる金属粉末により製造したターゲットは、その特性に大きな差異を生じないことが判明した。これは、真空溶解法により各金属元素が均質に分散するためと考察された。
一方、実施例B−1〜実施例B−17は、各金属粉末材料をボールミルにより24時間混合して製造したターゲットを用いて金型に成膜し、性能評価したものである。これによると、まず、実施例Aの組成と同一の組成を有する実施例Bとを性能比較した場合、例えば、実施例A−1と実施例B−1との比較において、実施例B−1はCr偏析部の面積比率のばらつきが10%と、実施例A−1の3%に比較してやや大きい傾向であるものの、ーゲットとして良好な品質を保持しており、その他の同一組成の実施例Aと実施例Bとの比較においても、ガスアトマイズ法とボールミルを使用した方法との製造方法の差によるターゲットの品質および金型の品質に与える影響は少ないことが判明した。
また、偏析サイズの比較によっても、実施例B−1〜実施例B−17において、ほぼ10μm以下に抑制され、最大でも20μm程度であり、ーゲットとしての品質上の問題を生じない。
すなわち、実施例Bのように合金粉末をボールミルにより24時間以上混合することにより、真空溶解法により製造されたターゲットと同等の品質のターゲットを得ることができると判断された。
実施例Aと実施例Bとを合わせて検討した結果、金属組成を実施例AおよびBの範囲で変化させた場合、ーゲットの品質および金型の被膜特性において大きな差を生じないことが判明した。
従って、実施例Aおよび実施例Bの結果より、本発明者らは、Crを主成分としたターゲットの組成として、AlおよびSiの少なくとも一方の添加量は、5〜30原子%に規定した。また、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,W,Mo,Bの組成範囲として、1〜50原子%に規定した。
さらに比較例B−1〜比較例B−23は、金属材料粉末混合によりターゲットを製造する際に、ボールミルによる混合時間を変化させ、また合金粉末の粒径を変化させて比較したものである。この比較例によると、例えば比較例B−8と比較例B−10とのデータによれば、合金粉末の粒径の差により、ーゲットのCr偏析が増大する。
比較例B−1〜比較例B−23においては、概ねCr偏析部の直径およびその面積比率のばらつきが大きく、また金型寿命評価も6000ショット〜8000ショットと実施例の金型に比較して半分程度となっている。特に、比較例B−15や比較例B−18のように粒径150μm以上でボールミルによる混合時間を5時間とした場合は、Cr偏析サイズが100以上で、面積比率のばらつきも30%以上となり、要求される品質を満たさなかった。
すなわち、本発明で使用する蒸着材料としてのターゲットにおいて、合金粉末をボールミルにより混合する場合、十分な混合時間が必要であり、また粉末粒径はより小さいことが好ましいと判断された。また、実施例Cおよび比較例Cを比べると真空溶解法により作製する場合は、アーク溶解法の方が好ましいことが判明した。
本発明に係る硬質被膜および硬質被膜部材によれば、金属部材に成膜する際に、均質で耐食性に優れた被膜特性が得られ、また成膜効率および再現性に優れた蒸着材料としてのターゲットを使用して成膜しているため長寿命の硬質被膜および硬質被膜部材を提供することが可能である。
ーゲットのEPMAによるマッピング結果を模式的に示す図。 ーゲットにおけるCr偏析部の面積比率のばらつきの調査箇所を示す平面図。
1 Cr偏析部
2 Cr−Al溶融相

Claims (7)

  1. AlおよびSiの少なくとも一方を含有しその合計含有量が5〜20原子%であり、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,W,Mo,Bの少なくとも1種の元素を含有しその合計含有量が1〜50原子%であるCr合金から成る蒸着材料としてのターゲットであって、このターゲットの、200μm四方の組織領域をX線マイクロアナライザーにより加速電圧15kVでCr元素のマッピングを実施したときに、カウント数が600以上であるCrの偏析部の直径が50μm以下であるターゲットを用いると共に雰囲気ガスとして窒素ガス,メタンガスの窒素または炭素含有雰囲気を使用することにより、窒化膜,炭化膜または窒炭化膜として成膜されたことを特徴とする硬質被膜。
  2. AlおよびSiの少なくとも一方を含有しその合計含有量が5〜20原子%であり、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,W,Mo,Bの少なくとも1種の元素を含有しその合計含有量が1〜50原子%であるCr合金から成る蒸着材料としてのターゲットであって、このターゲットの、200μm四方の組織領域をX線マイクロアナライザーにより加速電圧15kVでCr元素のマッピングを実施したときに、カウント数が600以上であるCrの偏析部の面積比率のばらつきが30%以内であるターゲットを用いると共に雰囲気ガスとして窒素ガス,メタンガスの窒素または炭素含有雰囲気を使用することにより、窒化膜,炭化膜または窒炭化膜として成膜されたことを特徴とする硬質被膜。
  3. 前記ターゲットは粉末冶金法により作製されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の硬質被膜。
  4. 前記ターゲットは、脱ガス処理を施した原料粉末を用いて形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の硬質被膜。
  5. 前記硬質被膜はガス含有雰囲気中でスパッタリングを行い、金属部材の表面に形成されたものであり、この硬質被膜のビッカース硬度Hv0.05が500以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の硬質被膜。
  6. 前記ターゲットは、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法に用いられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の硬質被膜。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の硬質被膜を基材表面に設けたことを特徴とする硬質被膜部材。
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