JP2019118997A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】Ti基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、潤滑性、耐溶着性、耐チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、立方晶窒化硼素焼結体および高速度工具鋼のいずれかからなる工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、前記硬質被覆層は、少なくとも、AlとTiとCrとBとWとGeの複合窒化物層を含み、前記複合窒化物を、組成式:(AlaTibCr(1-(a+b+c+d+e))BcWdGee)Nで表したとき、0.40≦a≦0.85、0.05≦b≦0.30、0.005≦c≦0.100、0<d≦0.100、0.005≦e≦0.050(ただし、a、b、c、d、eは、いずれも原子比を示す)を満足する表面被覆切削工具であって、切削加工時に硬質被覆層表面に形成される酸化物によって、潤滑性を高め、その結果として、耐溶着性、耐チッピング性を高める。【選択図】 なし

Description

この発明は、Ti基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、硬質被覆層がすぐれた潤滑性を備え、溶着、チッピング、欠損等の発生を抑制するとともに、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具として、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるエンドミル、前記被削材の歯形の歯切加工などに用いられるソリッドホブ、ピニオンカッタなどが知られている。
そして、被覆工具の切削性能改善を目的として、従来から、数多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1に示すように、合金工具鋼の焼入れ材等の高硬度鋼を、高熱発生を伴い、断続的・衝撃的な負荷が作用する高速断続切削条件に供した場合の耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性、耐摩耗性の改善を目的として、工具基体の表面に、組成式:(Cr1−X−Y−ZAlTi)Nで表される(但し、X、Y、Zはいずれも原子比であって、0.40≦X≦0.65、0.01≦Y≦0.20、0.005≦Z≦0.08を満足する)CrとAlとTiとBの複合窒化物からなる硬質被覆層を蒸着形成し、該硬質被覆層を、粒状晶組織の薄層Aと柱状晶組織の薄層Bとの交互積層構造として構成した表面被覆切削工具が提案されている。
特許文献2には、合金鋼等の切削加工に用いる切削工具の耐摩耗性、耐酸化性、高温潤滑性を向上させることのできる硬質皮膜として、組成式:(Ti,Cr,Al,Si,B,M1−a−b−c−d−e)(C1−f)で表される硬質皮膜(但し、MはW及び/又はMoであって、0<a≦0.7、0<b≦0.7、0.25≦c≦0.75、0≦d+e≦0.2、0.03≦(1−a−b−c−d−e)≦0.35、0.5≦f≦1)が提案されている。
特許文献3には、合金鋼等の切削加工において、すぐれた耐酸化性、高硬度、耐摩耗性を示す硬質皮膜として、組成式:(TiαCr1-α1-a-cGeaAlc(C1-xx)からなる組成(ただし、各元素の原子比が、0≦α≦1、0.010≦a≦0.15、0.40≦c≦0.70、および0.5≦x≦1)を有する硬質皮膜が提案されている。
特開2011−224671号公報 特開2011−94241号公報 特開2015−101736号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工はますます高速化・高能率化する傾向にあるとともに、できるだけ多くの材種の被削材の切削加工が可能となるような汎用性のある切削工具が求められる傾向にある。
前記特許文献1〜3で提案されている従来被覆工具においては、これを、炭素鋼や合金鋼などの通常の切削条件での切削加工に用いた場合には、特段の問題は生じない。
しかし、Ti基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工に用いた場合には、切削時の発熱によって、溶着、チッピング、欠損が発生しやすく、また、硬質被覆層の高温硬さの低下に伴って、摩耗損傷が進行しやすく、これが原因となって比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明は、高熱発生をともなうTi基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、耐溶着性を高めてチッピング、欠損の発生を抑制するとともに、硬質被覆層の高温硬さの低下を防止することによって、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者等は、上述の観点から、Ti基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工条件で、硬質被覆層がすぐれた潤滑性を備え、これにより、すぐれた耐溶着性を発揮する被覆工具を開発すべく、硬質被覆層を構成する成分系に着目し鋭意研究を行った結果、次のような知見を得た。
炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、立方晶窒化硼素焼結体あるいは高速度工具鋼等からなる工具基体の表面に、AlとTiとCrを含む複合窒化物(以下、「(Al,Ti,Cr)N」で示す)層からなる硬質被覆層を設けた前記被覆工具は、高温硬さと耐酸化性を備えることから耐摩耗性にすぐれる被覆工具としてよく知られている(前記特許文献1〜3参照)。
そして、本発明者らは、前記(Al,Ti,Cr)N層からなる硬質被覆層を被覆した被覆工具において、切削加工時の硬質被覆層の潤滑性を高めると同時に、切削加工時の高熱によって硬質被覆層の高温硬さの低下を防止することで、Ti基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、溶着、チッピング、欠損等の発生を防止することができるとともに、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を得られることを見出した。
即ち、前記(Al,Ti,Cr)N層からなる硬質被覆層の構成成分として、特定量のB成分、W成分およびGe成分を共に含有させた場合には、切削加工時の高熱発生により、いずれも酸化物が形成され、この酸化物が硬質被覆層の潤滑性向上に寄与する。
例えば、B成分については、切削加工時に、融点が約450℃の酸化硼素を形成し、これが液化することで切削加工初期の比較的低温領域における硬質被覆層表面の潤滑性向上に寄与する。
また、W成分については、550℃以上で潤滑性を有するマグネリ相W3n−1が生成し、さらにマグネリ相は融点が680℃であるため(G.Gassner et al.「Surface & Coatings Technology」201 (2006) 3335 - 3341参照)、これらが切削加工時の発熱によって液化することで硬質被覆層表面の潤滑性が向上する。
さらに、Ge成分については、切削加工時の比較的高温領域において、融点が約1100℃の酸化ゲルマニウムを生成し、高温領域における潤滑性の向上に寄与する。
このように、硬質被覆層表面で、融点がそれぞれ異なる酸化物が比較的低温領域から高温領域までの幅広い温度領域で液化することにより、硬質被覆層表面に潤滑性を付与し、溶着の発生を抑制することができ、これによって摩耗進行が抑制される。
つまり、本発明の被覆工具は、前記(Al,Ti,Cr)N層からなる硬質被覆層において、硬質被覆層構成成分として、BとWとGeの三成分を共存させることによって、高熱発生を伴うTi基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、潤滑性を向上させ、これによって、溶着、チッピングの発生を抑制すると同時に、摩耗進行を抑制することができるので、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮することができるのである。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、立方晶窒化硼素焼結体および高速度工具鋼のいずれかからなる工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層は、少なくとも、AlとTiとCrとBとWとGeの複合窒化物層を含み、
前記複合窒化物を、
組成式:(AlTiCr(1-(a+b+c+d+e))Ge)N
で表したとき、0.40≦a≦0.85、0.05≦b≦0.30、0.005≦c≦0.100、0<d≦0.100、0.005≦e≦0.050(ただし、a、b、c、d、eは、いずれも原子比を示す)を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記組成式:(AlTiCr(1-(a+b+c+d+e))Ge)NにおけるAlの含有割合aは、0.55≦a≦0.68を満足することを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細を説明する。
AlとTiとCrとBとWとGeの複合窒化物層の平均層厚:
本発明の硬質被覆層は、少なくとも、AlとTiとCrとBとWとGeの複合窒化物(以下、「(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N」で示す場合がある)層を含むが、(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の平均層厚が0.5μm未満の場合には、長期の使用にわたって十分な耐摩耗性を発揮することができず、一方、平均層厚が10μmを超えると、チッピング、欠損等の異常損傷を発生する恐れがあるので、(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の平均層厚は、0.5〜10μmとすることが望ましい。
(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の成分組成:
(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層を構成する成分の組成を、
組成式:(AlTiCr(1-(a+b+c+d+e))Ge)N
で表したとき、0.40≦a≦0.85、0.05≦b≦0.30、0.005≦c≦0.100、0<d≦0.100、0.005≦e≦0.050(ただし、a、b、c、d、eは、いずれも原子比を示す)を満足することが必要であるが、これは次の理由による。
(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の構成成分であるAl成分には、硬質被覆層における高温硬さを向上させる作用があり、また、Ti成分には高温強度を向上させる作用がある。Cr成分も高温強度を向上させる作用があるが、特に、Cr成分とAl成分が共存含有されることによって耐熱性、高温耐酸化性が向上する。
しかし、Al成分の含有割合aが0.40未満の場合、あるいは、Ti成分の含有割合bが0.30を超える場合には、所望のすぐれた高温硬さおよび耐熱性を確保することができず、一方、Al成分の含有割合aが0.85を超える場合、あるいは、Ti成分の含有割合bが0.05未満の場合には、Ti成分、Cr成分が少なくなりすぎることにより高温強度が低下し、切刃にチッピング(微小欠け)などが発生し易くなるとともに、六方晶構造の相が生成され高温硬さも低下することから、Al成分の含有割合aは、0.40≦a≦0.85、Ti成分の含有割合bは0.05≦b≦0.30とそれぞれと定める。
なお、耐溶着性、耐チッピング性を維持しつつ、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮するためには、Al成分の含有割合aは、0.55≦a≦0.68を満足することが好ましい。
(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層中のB成分、W成分およびGe成分は、切削加工時の高熱発生により、いずれも酸化物を形成し、この酸化物が液化することにより硬質被覆層の潤滑性が向上し、溶着、チッピング、欠損の発生を抑制する。
そして、前記酸化物は、それぞれが異なる温度で液化し(酸化硼素は約450℃、酸化ゲルマニウムは約1100℃、酸化タングステンは約680℃でそれぞれ液化する)、また、550℃以上でWの酸化物は潤滑性を有するマグネリ相を生成するため、切削加工に際して、低温から高温までの幅広い温度領域において、硬質被覆層表面に潤滑性を付与することができる。
ただ、B成分の含有割合c及びGe成分の含有割合eが0.005未満では、十分な酸化物が形成されないため潤滑性向上効果が十分ではない。
一方、B成分の含有割合cが0.100を超える場合には、脆化するため、チッピングが発生しやすくなり、また、Ge成分の含有割合eが0.050を超える場合には、脆化するため、チッピングが発生しやすくなる。
よって、B成分の含有割合c及びGe成分の含有割合eは、それぞれ、0.005≦c≦0.100、0.005≦e≦0.050とする。
また、(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の構成成分であるW成分は、タングステン酸化物が潤滑性を有するマグネリ相を生成し、さらに、その液化による前述した硬質被覆層の潤滑性向上効果があるが、W成分が含まれない場合にはこの効果は少ない。
ただ、W成分の含有割合dが0.100を超えると、硬質被覆層の硬さは低下し、耐摩耗性が低下することから、W成分の含有割合eは、0<d≦0.100とする。
前記(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層において、該層を構成する成分の総量に占めるN成分の含有割合(原子比)は、化学量論比である0.50には限定されず、これと同等な効果が得られる範囲、例えば、0.40以上0.60以下の範囲であればよい。
前記した本発明の(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層は、例えば、物理蒸着法の一種である図1に示すアークイオンプレーティング(以下、「AIP」で示す。)装置を用いて成膜することができる。
(a)まず、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、立方晶窒化硼素焼結体または高速度工具鋼のいずれかで構成された工具基体を洗浄・乾燥した状態で、AIP装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着する。
(b)装置内を排気して10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、0.5〜2.0PaのArガス雰囲気に設定し、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−200〜−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、もって工具基体表面をアルゴンイオンによって5〜30分間ボンバード処理する。
(c)ついで、装置内を10−2Pa以下の真空に保持しながら、また、ヒーターで装置内を、620℃〜650℃の温度に維持する。次いで、装置内に配置した所定組成のAl−Ti−Cr−B−W−Ge合金からなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極の間に、例えば、電流:100Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば、4Paの反応雰囲気とし、一方、前記工具基体には、例えば、−100Vのバイアス電圧を印加した条件で蒸着することにより、前記工具基体の表面に、目標組成、目標平均層厚の(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層を形成する。
上記工程(a)〜(c)により、本発明の被覆工具を作製することができる。
本発明の被覆工具は、高熱発生を伴うTi基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工に供した場合、硬質被覆層の(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層が、低温から高温までの幅広い温度領域において、すぐれた潤滑性を有することから、溶着、チッピング、欠損等の発生を抑制することができるので、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
本発明被覆工具の硬質被覆層を成膜するアークイオンプレーティング装置の概略説明図を示し、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
以下の実施例では、本発明の被覆工具をフライス加工で使用した場合について説明するが、旋削加工、ドリル加工等で用いることを何ら排除するものではない。
また、工具基体としては、WC基超硬合金を用いた場合について説明するが、TiCN基サーメット、立方晶窒化硼素焼結体、高速度工具鋼を工具基体として用いた場合であっても同様の効果が得られる。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、Cr32粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFENのインサート形状をもったWC基超硬合金工具基体を製造した。
(a)これらの工具基体を、AIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、AIP装置内に所定組成のAl−Ti−Cr−B−W−Ge合金からなるターゲット(カソード電極)を配置し、
(b)まず、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒーターで工具基体を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加して、工具基体表面をアルゴンイオンによって5〜30分間ボンバード洗浄し、
(c)ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2に示す窒素圧とし、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体の温度を表2に示す温度範囲内に維持するとともに表2に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Al−Ti−Cr−B−W−Ge合金ターゲットとアノード電極との間に表2に示すアーク電流を流してアーク放電を発生させて(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層を蒸着形成することにより、表3に示す硬質被覆層を備えた本発明被覆工具(以下、本発明工具という)1〜7を作製した。
前記本発明工具1〜7の(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層について、工具基体表面に垂直な各層断面の組成分析を、透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光分析(TEM−EDS)を用いて行った。
即ち、本発明工具1〜7の(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層について、工具基体表面と平行方向に20μmの観察範囲において、上部層縦断面に対して0.01μm以下の空間分解能の元素マッピングを行い、被覆した(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の組成を測定した。
さらに、(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の平均層厚を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
表3に、これらの測定値をそれぞれ示す。
次に、比較の目的で、前記AIP装置を用いて、工具基体の表面に、実施例1の前記工程(a)〜(c)と同様にして、表4に示す条件で蒸着形成することにより、表5に示す組成および目標平均層厚の(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層を備えた比較被覆工具(以下、比較工具という)1〜7を作製した。
また、参考のために、前記特許文献1に示される成分組成を満足する硬質被覆層(具体的には、(Al,Ti,Cr,B)N層)を有する従来被覆工具1(以下、従来工具1という)、前記特許文献2に示される成分組成を満足する硬質被覆層(具体的には、(Al,Ti,Cr,B,W)N層)を有する従来被覆工具2(以下、従来工具2という)及び前記特許文献3に示される成分組成を満足する硬質被覆層(具体的には、(Al,Ti,Cr,Ge)N層)を有する従来被覆工具3(以下、従来工具3という)を表4に示す条件のアークイオンプレーティング法で作製した。
比較工具1〜7について、実施例1の場合と同様な方法で、(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の組成分析を行うとともに、(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層の平均層厚を測定した。
また、従来工具1〜3についても、硬質被覆層の組成分析、平均層厚の測定を行った。
表5に、これらの値をそれぞれ示す。
ついで、前記本発明工具1〜7、比較工具1〜7および従来工具1〜3を、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、以下の条件で切削加工試験を行い、切れ刃の損傷状況を観察した。
[切削試験]
切削試験:湿式正面フライス、センターカット切削加工、
被削材:JIS・Ti−6Al−4V合金(60種) ブロック材
幅60mm、長さ250mm、
切削速度:85m/min.、
切り込み:3mm、
送り:0.35mm/rev.、
切削時間:9分、
表6に、前記切削試験の結果を示す。
表6に示される結果から、本発明工具1〜7は、(Al,Ti,Cr,B,W,Ge)N層からなる硬質被覆層がすぐれた潤滑性を備え、かつ、高温硬さを維持することができるため、高熱発生を伴うTi基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削において、すぐれた耐溶着性、耐チッピング性を示すとともに、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較工具1〜7は、硬質被覆層の潤滑性が十分でないため、溶着あるいはチッピング発生によって、工具寿命が短命であった。
また、従来工具1〜3は、硬質被覆層の潤滑性が不十分であること、あるいは、高温硬さの低下により、溶着、チッピングが発生し、あるいは、硬質被覆層の摩耗進行によって、工具寿命が短命であった。
本発明の被覆工具は、Ti基合金、ステンレス鋼等の難削材の高速切削加工において、すぐれた耐溶着性、耐チッピング性を発揮し、使用寿命の延命化を可能とするものであるが、他の被削材の切削加工、他の条件での切削加工で使用することも勿論可能である。


Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、立方晶窒化硼素焼結体および高速度工具鋼のいずれかからなる工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
    前記硬質被覆層は、少なくとも、AlとTiとCrとBとWとGeの複合窒化物層を含み、
    前記複合窒化物を、
    組成式:(AlTiCr(1-(a+b+c+d+e))Ge)N
    で表したとき、0.40≦a≦0.85、0.05≦b≦0.30、0.005≦c≦0.100、0<d≦0.100、0.005≦e≦0.050(ただし、a、b、c、d、eは、いずれも原子比を示す)を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記組成式:(AlTiCr(1-(a+b+c+d+e))Ge)NにおけるAlの含有割合aは、0.55≦a≦0.68を満足することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。


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