JP2001315006A - 被覆硬質工具 - Google Patents
被覆硬質工具Info
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Abstract
靭性を有する被覆硬質工具を提供する。 【解決手段】 本発明の被覆硬質工具は、母材2と、そ
の母材2上に形成された被覆膜1とを備えている。被覆
膜1は、たとえばTiCNを含む材質よりなっており、
かつ−10GPa以上0GPa以下の内部応力を有し、
かつ表面側と裏面側である母材側とで1GPa以上の応
力差を有している。
Description
し、具体的には、耐摩耗性の要求される切削工具やその
他の耐摩工具として利用される被覆硬質合金工具の中で
耐摩耗性および靭性に優れる被覆硬質合金工具に関する
ものである。
(WC−Co合金にTi(チタン)やTa(タンタ
ル)、Nb(ニオブ)の炭窒化物を添加した合金)が用
いられてきた。しかし、近年の切削の高速化に伴い、超
硬合金、サーメット、あるいはアルミナ系や窒化珪素系
のセラミックを母材として、その表面にPVD(Physic
al Vapor Deposition)法で元素周期律表のIVa、V
a、VIa族金属やAl(アルミニウム)などの炭化
物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化物、酸化物からなる膜
を3〜20μmの厚さに被覆した硬質合金工具の使用割
合が増大している。
化を招かずに耐摩耗性を高め得るということから、ドリ
ル、エンドミル、フライス用スローアウェイチップなど
の強度の要求される切削工具に多用されている。
向上させるため、切削速度がより高速になってきてお
り、そのことに伴い工具には一層の耐摩耗性が要求され
るようになってきている。しかし、高い耐摩耗性を要求
すると靭性が低下するということから、高い耐摩耗性お
よび高い靭性の双方を両立させることが求められてい
る。
いても良好な耐摩耗性および靭性を有する被覆硬質工具
を提供することである。
の耐摩耗性の向上と靭性の向上との両立を実現するた
め、被覆膜中の内部応力について研究した。一般に、イ
オンプレーティング法により形成された被覆膜中には、
圧縮応力が発生する。このような残留圧縮応力は被覆膜
の耐摩耗性に悪影響を及ぼすことが問題であるが、残留
圧縮応力を低下させると靭性が低下するということが判
明した。さらに、種々検討した結果、被覆膜中の圧縮応
力を膜内で変化させることにより、耐摩耗性および靭性
の双方が向上することがわかった。
中の圧縮応力を母材側から表面側に向かって連続的ある
いは段階的に増加させることが効果的であり、耐摩耗性
を必要とする場合には被覆膜中の圧縮応力を母材側から
表面側に向けて連続的あるいは段階的に低下させること
が効果的であることが判明した。
と、その母材上に形成された被覆膜とを備え、被覆膜
は、IVa、Va、VIa族元素、AlおよびGe(ゲ
ルマニウム)よりなる群から選ばれる少なくとも1種以
上の窒化物、炭化物、炭窒化物および酸化物のいずれか
を含む材質を有し、かつ−10GPa以上0GPa以下
の内部応力を有し、かつ表面側と裏面側である母材側と
で1GPa以上の応力差を有している。なお、内部応力
において「−」の記号は圧縮応力であることを示してい
る。
GPa以上の応力差を有するよう内部応力を変化させた
ことにより、耐摩耗性および靭性の双方に優れた被覆硬
質工具を得ることができる。なお、応力差が1GPa未
満では、被覆膜中で内部応力を変化させる効果が十分に
得られない。
覆膜の膜厚は0.5μm以上10μm以下である。これ
は被覆膜の厚みが0.5μm未満では被覆の効果が少な
く、10μmを超えると被覆膜が剥離しやすくなるから
である。
被覆膜の内部応力は、母材側から表面側へ向けて連続的
あるいは段階的に圧縮応力が増加するよう変化してい
る。これにより、靭性が顕著に向上する。これは、表面
側ほど高い内部圧縮応力が導入されることにより、表面
に入った微小クラックの進展が抑えられるため、チッピ
ングなどの欠けを防ぐことができるためと考えられる。
被覆膜の内部応力は、表面側から母材側へ向けて連続的
あるいは段階的に圧縮応力が増加するよう変化してい
る。これにより、耐摩耗性が顕著に向上する。これは、
表面側ほど低い内部圧縮応力を導入することで膜表面が
柔らかくなり、切削時の溶着が剥がれるときに膜全体が
剥がれなくなる(膜の表面近傍のみ剥がれる)ため耐摩
耗性が向上するものと考えられる。
母材と被覆膜との間に、IVa族元素の窒化物、炭化
物、炭窒化物および酸化物のいずれかの材質を有する薄
膜がさらに備えている。これにより、被覆膜と母材との
付着強度が向上するため、より高性能が期待される。
被覆膜の表面上に、IVa族元素の窒化物、炭化物、炭
窒化物および酸化物のいずれかの材質を有する薄膜がさ
らに備えられている。これにより、より高性能が期待さ
れる。
母材の材質は、WC基超硬合金、サーメット、セラミッ
ク、および鉄系合金よりなる群から選ばれる1種以上を
含む。これにより、被覆膜の材質に適した母材の材質を
選択することができる。
母材の材質は、WC基超硬合金であって、Co(コバル
ト)を8質量%以上12質量%以下含んでいる。
量を適切に選択することにより、耐摩耗性が著しく向上
する。Coの含有量が8質量%未満であると、超硬合金
自体の耐摩耗性がよいため、被覆の効果があまり発揮さ
れない。一方、Coの含有量が12質量%を超えると、
母材自体が柔らかくなりすぎ、本発明のような硬い被覆
膜とのヤング率が違いすぎることから膜剥離が発生し、
被覆の効果が発揮されない。
て図に基づいて説明する。
覆硬質工具の部分断面図である。図1を参照して、本実
施の形態の被覆硬質工具は、母材2と、その母材2の表
面上に形成された被覆膜1とを有している。被覆膜1
は、IVa、Va、VIa族元素、AlおよびGeおよ
びこれらの任意の組合せの合金の窒化物、炭化物、炭窒
化物および酸化物から選ばれた1種以上を含む化合物よ
りなり、かつ−10GPa以上0GPa以下の内部応力
を有し、かつ表面側と裏面側である母材側とで1GPa
以上の応力差を有している。
線回折法または基板の変形から求める方法により測定さ
れる。これらの測定方法の詳細は、たとえば「PVD・
CVD皮膜の基礎と応用」、(社)表面技術協会編、山
本恒雄発行、pp.156−164に記載されている。
0μm以下であることが好ましい。被覆膜1の内部応力
は、母材側から表面側へ向けて図2に示すように連続的
に、または図3に示すように段階的に圧縮応力が増加す
るように変化していてもよい。これにより、被覆硬質工
具の靭性の向上が著しくなる。また被覆膜1の内部応力
は、母材側から表面側に向けて図4に示すように連続的
に、または図5に示すように段階的に圧縮応力が減少す
るように変化していてもよい。これにより、被覆硬質工
具の耐摩耗性の向上が顕著となる。
族元素の窒化物、炭化物、炭窒化物および酸化物のいず
れかの材質を有する付着強化層3aが設けられているこ
とが好ましい。また図7に示すように被覆膜1の表面上
に、IVa族元素の窒化物、炭化物、炭窒化物および酸
化物のいずれかの材質を有する薄膜3bが形成されてい
てもよい。
サーメット、セラミックおよび鉄系合金のいずれか、ま
たはこれらの任意の組合せよりなっていることが好まし
い。また母材2の材質がWC基超硬合金の場合には、C
oを8質量%以上12質量%以下含んでいることが好ま
しい。
化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化硼素、ガラ
スなどが用いられ得る。また鉄系合金としては、高速度
鋼、ダイス鋼、ステンレス鋼などの鋼が用いられ得る。
O P30超硬母材(Coを11%含有し、残部がWC
よりなる)に、表2に示すような内部残留応力を有する
3.5μmの厚みの各種のTiCNの被覆を施した。こ
れらのサンプルを用いて合金鋼のブロックを、表1に示
す条件で切削し、各サンプルの摩耗量を測定した。その
摩耗量を表2に併せて示す。
を変化させた本発明例のサンプル1〜4では、内部応力
の変化のないサンプル5〜7よりも逃げ面摩耗量が少な
く、高い耐摩耗性が得られていることがわかる。特に、
TiCN層内の圧縮応力が母材側から表面側にかけて連
続的に低下するサンプル3および4においては、著しく
逃げ面摩耗量が少なくなり、耐摩耗性向上の効果が著し
いことがわかる。
プル1〜7と同じサンプルを用いて靭性試験を行なっ
た。その靭性試験は、S50C素材に50の貫通穴を設
けたブロックを表3に示す条件で切削することにより行
なった。ここでは送りを徐々に上げ、チップ欠損時の送
り(最大送りとする)を測定することにより靭性の評価
とした。その結果を表4に示す。
を変化させた本発明例のサンプル1〜4では、内部応力
が変化しないサンプル5〜7と同等もしくはそれ以上の
最大送りが得られており、優れた靭性が得られることが
わかる。特に、TiCN層内の圧縮応力が母材側から表
面側にかけて連続的に増加するサンプル1および2にお
いては、最大送りが著しく大きくなっており、靭性が大
幅に向上することがわかる。
に付着強化層としてTiN薄膜を配したことの効果を確
認するため、実施例1のサンプル1〜4と同じTiCN
層と母材との界面の間に、0.5μmの厚みのTiN層
を配したサンプルを作製し、実施例1と同じ条件で切削
試験を行なった。その結果を表5に示す。
により、各サンプルにおいて実施例1の逃げ面摩耗量よ
りも摩耗量が少なくなり、耐摩耗性が向上することがわ
かる。
合の切削性能を確認するため、TiCN層は実施例1の
サンプル1および3と同じとし、母材のCo含有量を表
6に示すように変化させた場合の逃げ面摩耗量を測定し
た。その結果を表6に併せて示す。なお、切削条件は実
施例1と同じとした。
が母材側から表面側にかけて増加あるいは低下し、かつ
母材のCo含有量が8質量%以上12質量%以下の範囲
内にあるサンプル1bおよび3bが、特に切削性能にお
いて優れていることがわかる。
覆膜としてTiCN層を用いた場合について説明した
が、本発明はこれに限定されず、IVa、Va、VIa
族元素、Al、Geよりなる群から選ばれる少なくとも
1種以上の窒化物、炭化物、炭窒化物および酸化物のい
ずれかを含む材質であれば同じように内部応力を変える
ことで、靭性および耐摩耗性の双方が向上することを確
認した。
場合について説明したが、本発明の付着強化層はこの材
質に限定されず、IVa族元素の窒化物、炭化物、炭窒
化物および酸化物のいずれかの材質であれば同様の結果
が得られることも確認した。
を用いた場合について説明したが、本発明における母材
の材質はこれに限定されず、サーメット、セラミック
(炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、
炭化硼素、ガラスなど)、鉄系合金(高速度鋼、ダイス
鋼、ステンレス鋼などの鋼)を用いても同様の結果が得
られることを確認した。
すべての点で例示であって制限的なものではないと考え
られるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではな
くて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と
均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれるこ
とが意図される。
具では、被覆膜の表面側と母材側とで1GPa以上の応
力差を有するよう内部応力を変化させたことにより、耐
摩耗性および靭性の双方に優れた被覆硬質工具を得るこ
とができる。これにより、本発明の被覆硬質工具は、ド
リル、エンドミル、フライス用スローアウェイチップ、
切削用刃先交換型チップ、メタルソー、刃切り工具、リ
ーマー、タップなどの切削工具、その表面に耐摩耗性被
覆膜を形成した金属プレス加工用、金属鍛造用、ダイキ
ャスト用、プラスチック成形用金型などに良好に適用す
ることが可能である。
の部分断面図である。
す図である。
す図である。
す図である。
す図である。
成の部分断面図である。
示す部分断面図である。
膜。
Claims (10)
- 【請求項1】 母材と、 前記母材上に形成された被覆膜とを備え、 前記被覆膜は、IVa、Va、VIa族元素、Alおよ
びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の窒
化物、炭化物、炭窒化物および酸化物のいずれかを含む
材質を有し、かつ−10GPa以上0GPa以下の内部
応力を有し、かつ表面側と裏面側である前記母材側とで
1GPa以上の応力差を有している、被覆硬質工具。 - 【請求項2】 前記被覆膜の膜厚は0.5μm以上10
μm以下である、請求項1に記載の被覆硬質工具。 - 【請求項3】 前記被覆膜の内部応力は、前記母材側か
ら前記表面側へ向けて連続的に圧縮応力が増加するよう
変化している、請求項1または2に記載の被覆硬質工
具。 - 【請求項4】 前記被覆膜の内部応力は、前記母材側か
ら前記表面側へ向けて段階的に圧縮応力が増加するよう
変化している、請求項1または2に記載の被覆硬質工
具。 - 【請求項5】 前記被覆膜の内部応力は、前記表面側か
ら前記母材側へ向けて連続的に圧縮応力が増加するよう
変化している、請求項1または2に記載の被覆硬質工
具。 - 【請求項6】 前記被覆膜の内部応力は、前記表面側か
ら前記母材側へ向けて段階的に圧縮応力が増加するよう
変化している、請求項1または2に記載の被覆硬質工
具。 - 【請求項7】 前記母材と前記被覆膜との間に、IVa
族元素の窒化物、炭化物、炭窒化物および酸化物のいず
れかの材質を有する第1の薄膜をさらに備えた、請求項
1〜6のいずれかに記載の被覆硬質工具。 - 【請求項8】 前記被覆膜の表面上に、IVa族元素の
窒化物、炭化物、炭窒化物および酸化物のいずれかの材
質を有する第2の薄膜をさらに備えた、請求項1〜7の
いずれかに記載の被覆硬質工具。 - 【請求項9】 前記母材の材質は、WC基超硬合金、サ
ーメット、セラミック、および鉄系合金よりなる群から
選ばれる1種以上を含む、請求項1〜8のいずれかに記
載の被覆硬質工具。 - 【請求項10】 前記母材の材質は、WC基超硬合金で
あって、Coを8質量%以上12質量%以下含んでい
る、請求項9に記載の被覆硬質工具。
Priority Applications (1)
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JP2000138407A JP2001315006A (ja) | 2000-05-11 | 2000-05-11 | 被覆硬質工具 |
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Cited By (7)
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WO2006009121A1 (ja) | 2004-07-23 | 2006-01-26 | Sumitomo Electric Hardmetal Corp. | 圧縮応力の強度分布を有する被膜を備えた表面被覆切削工具 |
JP2008188689A (ja) * | 2007-02-01 | 2008-08-21 | Sumitomo Electric Hardmetal Corp | 表面被覆切削工具 |
JP2008284624A (ja) * | 2007-05-15 | 2008-11-27 | Sumitomo Electric Hardmetal Corp | 表面被覆切削工具 |
JP2008302473A (ja) * | 2007-06-07 | 2008-12-18 | Sumitomo Electric Hardmetal Corp | 表面被覆切削工具 |
JP2009248238A (ja) * | 2008-04-04 | 2009-10-29 | Sumitomo Electric Hardmetal Corp | 表面被覆切削工具 |
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JP2019118997A (ja) * | 2018-01-04 | 2019-07-22 | 三菱マテリアル株式会社 | 表面被覆切削工具 |
-
2000
- 2000-05-11 JP JP2000138407A patent/JP2001315006A/ja active Pending
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