太陽電池モジュールの断面模式図である。
以下、本発明について実施形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、これらの内容に限定されない。
以下、太陽電池モジュールについて説明する。
<1.太陽電池モジュール>
本発明に係る太陽電池モジュールは、少なくとも素子基板と、太陽電池素子と、封止層と、バリアフィルムと、をこの順に有する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールは、バリアフィルム10と、封止層3と、素子基板4と、太陽電池素子5と、封止層6と、バリアフィルム11と、をこの順に有する。また、バリアフィルム10は、樹脂基材1にバリア材層2が形成されており、同様に、バリアフィルム11も樹脂基材8にバリア材層7が形成されている。さらに、太陽電池素子5が発電した電気を取り出すための集電線9が太陽電池素子4に設置されている。以下、太陽電池モジュールを構成する各部材、層について説明する。
<1−1.バリアフィルム(10、11)>
通常、有機半導体化合物又はペロブスカイト化合物を含有する活性層を備えた太陽電池素子5は、水及び酸素に弱いために、水や酸素により太陽電池モジュールの発電性能が低下する傾向がある。そこで、バリアフィルム10、11を設けることにより、太陽電池モジュール外部から該太陽電池素子5に水や酸素が侵入することを防ぎ、発電性能が低下するのを防ぐことができる。
バリアフィルムは、上述の通り、樹脂基材に、防湿性及び/又は酸素侵入防止性を備えたバリア材層が形成された構造を有する。すなわち、バリア材層2、7がバリア性を付与する層であり、樹脂基材1、8は、それぞれ、バリア材層2、7を形成するための支持基材である。このように、樹脂基材にバリア材層が形成されたバリアフィルムと、封止層との積層体により太陽電池素子を封止することができる。
バリアフィルム10、11の水蒸気透過率は、限定されるわけではないが、40℃、90%RHの環境下における水蒸気透過率が1×10-1g/m2/day以下であることが好ましく、1×10-2g/m2/day以下であることがより好ましく、1×10-3g/m2/day以下であることが更に好ましく、1×10-4g/m2/day以下であることが中でも好ましく、1×10-5g/m2/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10-6g/m2/day以下であることが特に好ましい。水蒸気の透過を抑制するほど、太陽電池素子5を構成する活性層等と、水分との反応に起因する劣化が抑えられるので、長期間にわたって、発電効率の低下を防ぐことができる。なお、バリアフィルム10、11の水蒸気透過率は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
バリアフィルム10、11の酸素透過率は、限定されるわけではないが、40℃、湿度0%の環境下における酸素透過率が、10cc/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、1cc/(m2・day・atm)以下であることがさらに好ましく、1x10-1cc/(m2・day・atm)以下であることが特に好ましい。酸素透過を抑制するほど、太陽電池素子5を構成する活性層等と、酸素との反応に起因する劣化が抑えられるので、長期間にわたって、発電効率の低下を防ぐことができる。なお、バリアフィルム10、11の酸素透過率はそれぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
バリアフィルム10、11のうち少なくとも一方のバリアフィルムは、太陽電池素子5の光吸収を妨げないように可視光を透過させるものが好ましい。具体的には、少なくとも太陽電池モジュールの受光面側に位置するバリアフィルムは可視光を透過することが好ましい。具体的に、少なくとも一方のバリアフィルムの可視光線透過率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。なお、太陽電池モジュールを透過型の太陽電池モジュール、すなわち、シースルー型の太陽電池モジュールとする場合、他方のバリアフィルムも上述のような可視光線透過率を有することが好ましい。なお、可視光線透過率は、分光光度計により測定することができ、例えば、製紫外可視近赤外分光光度計UV−3600(島津製作所製)とフィルムサンプルホルダーを用いて測定することができる。測定結果は、JIS R 3106:1998に従って、波長380nm〜780nmまでの透過率が算出され、これらの波長領域の透過率の平均を算出すればよい。
バリアフィルム10、11の各層の厚さは特段の制限はないが、太陽電池モジュールの機械的強度を高めるために、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることが特に好ましく、一方、素子基板3に樹脂基材を用いて、フレキシブルな太陽電池とする場合、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがさらに好ましく、125μm以下であることが特に好ましい。
上述の通り、バリアフィルム10は、樹脂基材1にバリア材層2が形成された構造を有し、同様に、バリアフィルム11は、樹脂基材8にバリア材層7が形成された構造を有する。
樹脂基材1、8を形成する材料は特段の制限はないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、生分解性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、耐熱性や透明性等のフィルム物性の観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。なお、樹脂基材1、8は、1種の樹脂材料により形成されていてもよいし、2種以上の樹脂材料により形成されていてもよい。また、樹脂基材1、8はそれぞれ、同じ樹脂材料により形成されていてもよいし、異なる樹脂材料により形成されていてもよい。
樹脂基材1、8は太陽電池モジュールの耐久性を向上させるために、無機フィラー等、他の材料を含んでいてもよい。無機フィラーは、特段の制限はないが、例えば、シリカ、マイカ、タルク、クレー、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリナイト、ワラストナイト、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維などが挙げられる。なお、樹脂基材中に混合される無機フィラーは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
バリアフィルム10、11はそれぞれ2以上の樹脂基材を含んで構成されていてもよい。この場合、同じバリアフィルムを構成する樹脂基材同士を接着剤等により接着させればよい。
バリア材層2、7を構成する材料は、特段の制限はないが、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、あるいは、これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、酸化炭化窒化物、ダイヤモンドライクカーボン又はこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでも、太陽電池モジュールに適用した場合に、電流のリークを防ぐために、バリア材層2、7を構成する材料は、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン並びにこれらの混合物が好ましい。これらのなかでも、バリア材層2、7を構成する材料は高い防湿性が安定に維持できるために、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム及びこれらの混合物が特に好ましい。なお、バリア材層2、7は複数の無機材料により構成されていてもよい。また、複数の無機層及び/又は有機層及び/又は有機・無機複合層を有していてもよい。有機・無機複合層とは、層を構成する各単層の成分として有機物と無機物とが混在している層を指す。混在している状態は、混合物であっても化合物であってもよい。この場合も、複数の各層は互いに同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。太陽電池モジュールの意匠性の観点から、光学物性はより透明であることが良いことから、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素が好ましい。
樹脂基材1、8に、それぞれバリア材層2、7を形成する方法としては、特段の制限はなく、使用する材料に合わせて任意の方法で形成すればよい。具体的には、蒸着法、コーティング法等の方法がいずれも使用できる。なかでも、バリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、化学気相蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)等の方法が含まれる。物理気相蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられ、化学気相蒸着法としては、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
なお、バリアフィルム10、11を構成する、樹脂基材1、8及びバリア材層2、7の各層の厚さは、バリアフィルム層全体の厚さを考慮して適宜調整すればよい。
<1−2.封止層(3、6)>
封止層3、6は、素子基板4及び太陽電池素子5と、バリアフィルム10、11とを密着させて封止するための層である。また、素子基板4及び太陽電池素子5と、バリアフィルム10、11とを密着性を高めるだけでなく、当該隙間を埋める役割を担うため、図1の太陽電池モジュールにおいて横方向からの水分や酸素の侵入量を抑制することもできる。
封止層3、6を構成する材料は、バリアフィルムと太陽電池素子、又はバリアフィルムと素子基板との密着性を高めることができる限りにおいて特段の制限はなく、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリイソブチレン(PIB)樹脂、ポリイミド樹脂(PI)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、マレイン酸またはシラン等で変性した変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、又はポリアミド(PA)樹脂が挙げられる。なかでも、特段の制限はないが、重合反応の容易さ、材料の取扱い安さ、コスト等の観点から、アクリレート系樹脂やウレタン系樹脂が挙げられ、中でも、透明性、硬化後残留物の除去のし易さ等の理由によりアクリル樹脂やウレタン樹脂が好ましく、アクリル樹脂であることが特に好ましい。
また、封止層3、6を形成する樹脂材料は、架橋された樹脂であることが好ましい。封止層が架橋された樹脂を含有して形成されることで、水蒸気を透過しにくく、さらにはバリアフィルムと、太陽電池素子及び素子基板との密着性を向上させることができる。架橋された樹脂を構成する樹脂材料は、特段の制限はなく、上記の樹脂材料が挙げられる。
封止層3、6の形成方法は、特段の制限はないが、該樹脂を含有する組成物又は前駆体となる化合物を、活性エネルギー線により硬化させる方法等により形成することができる。
ここで、活性エネルギー線とは、化合物の化学結合に対してエネルギーを与え、結合そのもの、又は化合物の高次構造に対して変化を与えうるエネルギー線である。活性エネルギーの例としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線、電子線、イオン線、中性原子線、又は他の素粒子線が挙げられる。他の素粒子線としては、例えば、陽子線、中性子線、陽電子線等が挙げられる。
活性エネルギー線の発生方法や照射方法は各種存在する。
活性エネルギー線の発生源としては、例えば、マグネトロン、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ、LED光源、レーザ光源、等の紫外・可視・赤外光源、金属ターゲットに高速電子線を照射するX線源、放射性同位元素の崩壊によるガンマ線源、シンクロトロン(放射光)、熱電子を高電圧で加速して得る高圧電子線源、FIB(収束イオンビーム)等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射方法としては、例えば、光源から直接照射する方法、狭い領域に収束させた活性エネルギー線を走査して広い領域に照射する方法、活性エネルギー線を広い領域に拡大して同時に照射する方法等が挙げられる。より、具体的には、前述の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、又は前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法が挙げられる。光以外の電磁エネルギー照射の方法としては、例えば、電子レンジのようなマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置を用いて照射する方法が挙げられる。
活性エネルギー線の照射方法の条件は、特段の制限は無く、被照射物の材料、構造、膜厚等を考慮して、照射エネルギー密度、照射領域、照射時間等を適宜選択すればよい。
なかでも、本発明においては、封止層1、6の形成方法は、プロセス性等を考慮して、産業上最も利用されやすい活性エネルギー線である紫外線を用いて紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させる方法、熱硬化性樹脂組成物を熱により硬化させる方法、又は熱可塑性樹脂組成物を用いて熱により可塑性を増加させて冷却により硬化する方法が好ましい。
本発明において、封止層は、140℃で1時間加熱処理した後の質量減少率が2%以下となるような封止層である。
通常、封止層は、主成分として上述のような樹脂材料により形成されるが、封止層は樹脂材料以外にも、封止層を形成するための樹脂組成物由来の残留成分が含まれている。
例えば、紫外線照射により紫外線硬化樹脂組成物を硬化させて封止層を形成する場合、通常、紫外線硬化樹脂組成物には、主成分となる高分子樹脂以外に、モノマー、オリゴマー等の低分子成分及び光重合反応開始剤が含まれている。また、熱により熱硬化樹脂組成物を硬化させて封止層を形成する場合、通常、熱硬化樹脂組成物には、主成分となる高分子樹脂以外に、モノマー、オリゴマー等の低分子成分及び熱重合反応開始剤が含まれている。さらに、熱により熱可塑性樹脂組成物を溶融し、その後の冷却により熱可塑性樹脂組成物を硬化させて封止層を形成する場合、通常、熱可塑性樹脂組成物には、主成分となる高分子樹脂以外に低分子樹脂、酸化防止剤等が含まれている。
従って、これらの成分を含有する樹脂組成物を用いて形成された封止層には、モノマー、オリゴマー等の低分子成分や重合開始剤、酸化防止剤等に由来する成分が残留成分として残存することになる。なお、上述の樹脂組成物の組成を考慮すると、封止層中のこれらの残留成分の沸点は、通常、100℃程度であると考えられる。そのため、このような残留成分は100℃以上の温度で加熱すると揮発することになる。従って、本発明において、140℃で1時間加熱処理した後の質量減少率が2%以下となるような封止層とは、加熱しても残留成分の揮発量が小さい、すなわち、太陽電池モジュールが作製された段階において、もともと封止層中の残留成分が極めて少ないことを意味している。
そして、本発明者らの検討によると、封止層中にこのような残留成分が存在すると、これらの成分が封止層から太陽電池素子内部に入り込み、励起子及び/又はキャリアがトラップされることで太陽電池素子が高抵抗化したり、また、励起子及び/又はキャリアの非発光再結合センター等が形成されるために、その影響により太陽電池素子5にダークスポットが発生してしまうことが判明した。
そこで、本発明のように、封止層の残留成分の量を極力少なくした封止層を使用することにより、太陽電池素子5に発生するダークスポットを低減させ、さらには時間経過に伴う変換効率の低下が少ない高い耐久性を備えた太陽電池モジュールを提供できるものと考えられる。
なお、有機電界発光素子においては、封止部材からの脱ガス等が悪影響を及した例も知られているが、これは、電子と正孔の再結合によって生じた励起子により有機電界発光素子が発光する際に、当該ガス等が存在することで有機電界発光素子の内部で電子と正孔のキャリア密度が変化し、電極から注入されたキャリアバランスの崩れが生じ、その結果、有機電界発行素子の発光効率が徐々に低下してしまうためであると考えられる。一方、太陽電池素子は、上記メカニズムを使用するものではなく、電荷分離により電子と正孔を発生させることで電気を発生するものであり、有機発光素子のメカニズムとは異とするメカニズムにより機能するものである。従って、本発明のように、封止層の残留成分が太陽電子素子に悪影響を及ぼすという課題はこれまで認識されていたものではなく、本発明者らの検討により明らかになった課題である。
なかでも、封止層を140℃で1時間加熱処理した後の質量減少率は1.5%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましく、一方、封止層の質量減少率を0%にすることは実質的には困難であり、通常、0.1%程度の変化率を有する。
封止層の質量減少率は、下記の方法により算出することができる。通常、封止層は、太陽電池モジュールの一方のバリア材層と、他方のバリア材層との間に挟持された部分の内、素子基板、太陽電池素子及び集電線を除いた部分に存在する樹脂含有層である。樹脂含有層は、例えば、太陽電池モジュールの断面解析からバリア材層の位置を特定し、該バリア材層間の内、素子基板及び太陽電池素子を除いて取り出せばよい。なお、太陽電池モジュールの一方、又は他方の側に複数のバリア材層が存在する場合、太陽電池素子又は素子基板に最も近いバリア材層間に存在する樹脂含有層を、封止層とみなして取り出せよい。
バリア材層を特定するための断面解析方法としては、顕微蛍光X線法、ToF−SIMS法、AFM法、STM法、その他、ミクロスコピック元素分析法等があり、それら分析法を用いて無機層が主体のバリア材層の位置を特定することができる。
分析試料調整のための封止層の取り出し方法としては、例えば、徐々に研磨する機械的研磨法やイオンボンバードメント法などの物理的方法によって太陽電池モジュールを外側から削り、上記の断面解析方法により特定した封止層に到達するまで、バリア材層を含むバリアフィルム等の太陽電池モジュール構成部材を除去した後に取り出せばよい。
封止層の質量減少率は、示差熱及び熱重量測定(サーモグラビメトリー:TG法)法によって測定することができる。TG法は、一定の質量を持つ試料を、設定した雰囲気の中で加熱し、該試料の質量変化量を高感度に測定する方法である。
試料の調製の際、試料が酸素や水分、或いは二酸化炭素等と特に反応したり吸収、吸着したりし易いものである場合は、不活性ガスで満たしたグローブボックス中で調製することが好ましい。一方、酸素や水分、或いは二酸化炭素等と特に反応したり、吸収、吸着したりし易い試料でなければ、室温、大気下において試料を調製してもよい。
TG法の測定方法について説明する。調製した試料、及びリファレンスとして試料を入れたものと同じ質量の空のアルミニウム製容器を、TG法測定が可能な装置の精密天秤に載せ、装置の密閉チャンバーを閉じる。その後、雰囲気ガスでチャンバー内を満たし、所定の昇温レートで140℃まで昇温し、1時間保持した後、室温まで降温して試料を取り出す。上記条件で保持した直後の質量変化をデータとして測定し、その値を初期質量で除して質量減少率とする。雰囲気ガスは不活性ガス、例えば窒素を用いればよいが、試料によっては希ガス又は空気であってもよい。
さらに、化合物の分子量が小さい程、薄膜太陽電池素子の各層の界面に顕在しやすくなり、電荷バランスが変化することで電気特性に影響を及ぼすことになる。そのため、なかでも、封止層中の残留成分として、分子量が5000以下の化合物を含有していないことが好ましく、3000以下の化合物を含有していないことがさらに好ましく、1000以下の化合物を含有していないことが特に好ましい。また、封止層中の残留成分である化合物の極性基によっては、薄膜太陽電池素子に用いられるバッファ層材料との親和性が高く、電荷のクエンチャーとして悪影響を及ぼす可能性がある。そのために、封止層は、残留成分として、特に、酸類、アルコール類又はケトン類の化合物を含有していないことが好ましく、なかでも、酸類又はアルコール類の化合物を含有していないことが好ましい。酸類としては、カルボン酸が挙げられる。アルコール類としては、飽和アルコールが挙げられる。なお、封止層中の残留成分の分子種の特定方法には、種々の方法が存在するが、具体例としては、加熱発生ガス質量分析(TPD−MS)法が挙げられる。従って、封止層を140℃、1時間の加熱処理した際に、加熱発生ガス質量分析(TPD−MS)法により、上記の化合物が検出されないことが好ましい。
封止層を紫外線硬化性樹脂組成物により形成する場合、紫外線硬化性樹脂組成物は、主成分となる高分子樹脂と、モノマー、オリゴマー等の低分子成分、及び光重合反応開始剤を含有することが好ましい。これらの固形成分に対する各成分の割合は特段の制限はないが、通常、主成分となる高分子樹脂が20質量%以上80質量%以下であり、架橋剤としての役割となるモノマー、オリゴマー等が20質量%以上80質量%以下であり、光重合反応開始剤が1質量%以上10質量%以下である。このような範囲で適宜各成分の含有量を調整することが好ましい。
封止層を熱硬化性樹脂組成物により形成する場合、熱硬化性樹脂組成物、主成分となる高分子樹脂と、モノマー、オリゴマー等の低分子成分、及び熱重合反応開始剤を含有する。これらの固形成分に対する各成分の割合は特段の制限はないが、通常、高分子樹脂が20質量%以上80質量%以下であり、架橋剤としての役割となるモノマー、オリゴマー等が20質量%以上、80質量%以下であり、熱重合反応開始剤が1質量%以上10質量%程度である。このような範囲で適宜各成分の含有量を調整することが好ましい。
封止層を熱可塑性樹脂組成物により形成する場合、熱可塑性樹脂組成物は、主成分となる高分子樹脂と、低分子量の樹脂、及び酸化防止剤を含有する。これらの固形成分に対する各成分の割合は、特段の制限はないが、通常、主成分となる高分子樹脂が20質量%以上80質量%以下であり、低分子量の樹脂が20質量%以上80質量%以下であり、酸化防止剤が1質量%以上10質量%以下である。このような範囲で適宜各成分の含有量を調整することが好ましい。なお、低分子量の樹脂を含まない場合もある。
なお、上述の紫外線硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、及び熱可塑性樹脂組成物は、得られる封止層3、6が本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の成分を含有していてもよい。すなわち、封止層3、6に、ヘイズ作用、酸素や水分のゲッター作用、剛性等を付与するために、上記組成物は、例えば、無機フィラー、水分ゲッター材、酸素ゲッター材、剛性付与剤等を含有していてもよい。なお、該組成物が、これらの成分を含有する場合、その量は適宜調整すればよい。
また、紫外線硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、及び熱可塑性樹脂組成物は溶剤を含んでいてもよい。前記樹脂組成物に用いられる溶剤のうち少なくとも1種は、組成物材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。溶剤の沸点は、特段の制限はないが、通常−80℃以上であり、好ましくは0℃以上であり、特に好ましくは50℃以上であり、一方、通常150℃以下であり、120℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥が速くなり過ぎることで膜質が悪化する傾向がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥後も残留することがあり、太陽電池素子に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、乾燥温度を高くする必要があるが、高温での乾燥工程は太陽電池モジュールを構成する他の部材や機能層に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、等が挙げられる。
溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。なお、2種以上の溶剤を用いる場合、任意の比率とすればよい。
封止層6の140℃で1時間加熱処理した後の質量減少率を2%以下とする方法、すなわち、封止層中の上記残留成分の量を極力小さくする方法に特段の制限はないが、例えば、下記の方法が挙げられる。
紫外線硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、又は熱可塑性樹脂組成物を使用して封止層を形成する場合、該樹脂組成物を硬化して得られた封止層中の残留成分量が極力小さくなるように樹脂組成物の成分量を調整する方法が挙げられる。
また、太陽電池モジュールを封止する場合、通常、バリアフィルムに樹脂組成物を塗布する、又は、シート状の該樹脂組成物を積層する、第1の工程と、第1工程により得られた樹脂組成物が塗布された又はシート状の樹脂組成物が積層されたバリアフィルムと、素子基板及び太陽電池素子とを積層させて貼合する第2の工程と、該樹脂組成物を硬化させる第3の工程と、を含むが、第1の工程と、貼合する第2の工程との間に、下記のような前処理工程を実施することで、得られる封止層中の残留成分の量を低減することができる。
前処理工程としては、例えば、少なくとも一部を硬化させる半硬化工程、及び/又は、加熱処理工程が挙げられる。なお、半硬化工程は、封止可能な密着力を保持できる程度迄に硬化してもよい。
前処理工程は、後述のように、紫外線照射又は加熱処理により実施されるために、いずれも樹脂組成物が高温化することになる。上述の通り、封止層中の残留成分は、熱により揮発するために、樹脂組成物が高温化することで、封止層中において残留成分となりうる成分を封止層形成前に除去することができる。なお、封止層の形成において、前処理工程を行わない場合も、通常、貼合後に紫外線照射又は熱により樹脂組成物を硬化させるために、樹脂組成物が高温化するが、この場合、バリア材層が存在しているために、残留成分を除去することができない。そのため、このような前処理工程は、封止層中の残留成分を低減するために重要である。
例えば、紫外線硬化性樹脂組成物を使用して封止層を形成する場合、前処理工程としては、紫外線照射による半硬化工程が挙げられる。なお、紫外線照射量は、特段の制限はなく、使用する紫外線硬化性樹脂組成物により適宜選択すればよいが、使用するバリアフィルム等の樹脂基材の耐熱性の観点から、5000mJ/cm2以下が好ましく、3000mJ/cm2以下がより好ましく、2000mJ/cm2以下がさらに好ましく、1500mJ/cm2以下が特に好ましい。一方で、残留成分量を出来るだけ少なくするために、1mJ/cm2以上が好ましく、10mJ/cm2以上がより好ましく、50mJ/cm2以上が特に好ましい。
また、前処理工程として加熱処理工程を行う場合、加熱条件は、特段の制限はないが、該樹脂組成物からの脱気が十分に行われる条件が好ましい。加熱条件は、バリアフィルムを構成する樹脂基材の耐熱性も考慮し、加熱温度や時間を調整することが好ましい。加熱温度の下限は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、一方、好ましくは190℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下である。
加熱時間は、加熱温度にも依存するが、140℃程度で加熱する場合、加熱時間は15分以上であることが好ましく、30分以上であることが好ましく、45分以上であることがさらに好ましく、1時間以上であることが特に好ましい。なお、上限に特に制限はない。また、上記の加熱温度よりも低温で加熱する場合は、加熱時間を長くすることが好ましく、上記の加熱温度よりも高温の場合は、加熱時間を短くすることが好ましい。加熱時間の目安としては、加熱温度を10℃下げる場合は加熱時間を倍にし、加熱温度を10℃上げる場合は加熱時間を半分にすることが好ましい。
なお、前処理工程として、上述の半硬化工程及び加熱工程の両方を実施してもよい。
熱硬化性樹脂組成物を用いた場合の前処理工程としては、加熱による半硬化工程を実施することが好ましい。なお、加熱処理の条件は、熱硬化性樹脂が完全に硬化しない程度に、上述の紫外線硬化性樹脂組成物を使用する場合の加熱処理工程における範囲内で適宜選択することが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物を用いた場合の前処理工程としては、加熱処理工程を行うことが好ましい。なお、加熱処理の条件は、上述の紫外線硬化性樹脂組成物を使用する場合の加熱処理工程における範囲内で適宜選択すればよい。
なお、上述の通り、通常、樹脂組成物を完全に硬化させるための第3の工程が必要になるが、前処理工程である半硬化工程において、充分に樹脂組成物を硬化させてしまっても、貼合する第2工程後にバリアフィルと素子基板、又はバリアフィルムと太陽電池素子の密着性を担保出来る場合は、第3の工程を実施しなくてもよい。
また、太陽電池モジュールを施工する際や曲げが生じた場合に、太陽電池モジュール内部での剥離を防止するために、封止層3、6と素子基板1とのT字型剥離試験で測定される層間密着強度は5N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限は特にない。
封止層3、6は、太陽電池モジュールの強度保持の観点から曲げ強度が高いことが好ましい。封止層3、6以外の層の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、太陽電池モジュール全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような曲げ強度を有するのが望ましい。具体的には、施工する際に太陽電池モジュール内部に生じる応力を緩和する観点から、封止層3、6の25℃における曲げ強度は1.0×105Pa以上、1.0×107Pa以下であることが好ましい。
また、封止層3、6は、太陽電池モジュールを施工する際に太陽電池モジュールに加わる外的応力を緩和する観点から25℃における縦弾性率が高い方が好ましい。特にフィルム型の太陽電池モジュールにおいては重要な実用性能である。縦弾性率の測定方法としては、封止層3、6を溶融した後に試験片に加工し、得られた試験片から従来公知の引張試験機で測定される応力−歪曲線において、フックの法則が成立する弾性範囲での同軸方向の応力と歪の比例定数から求められる。なお、硬化が必要な場合は硬化処理も行うことが好ましい。
封止層3、6の25℃における縦弾性率は、1.0×108Pa以上、好ましくは5.0×108Pa以上、より好ましくは1.0×109Pa以上である。縦弾性率がこの範囲にあることで、太陽電池モジュールへのダメージを最小限とし施工することができ、仕上がり後の太陽電池モジュールの意匠性が良好である。さらに、太陽電池モジュールとしてのコシも付与できるため、施工時や加工時の太陽電池モジュールの折れ、シワの防止、および太陽電池モジュール取扱いの際のハンドリング性を向上させることができる。
さらに、太陽電池モジュールは光を受けて熱せられることが多いため、封止層3、6も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止層3、6を形成する材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで太陽電池モジュールの使用時に封止材が融解・劣化するのを防ぐことができる。
封止層3、6の膜厚は特段の制限はないが、太陽電池モジュール表層側からの外圧や衝撃により太陽電池素子がダメージを受けることを防止するために、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、30μm以上であることが特に好ましく、一方、可視光線透過率が大幅に低下するのを防ぐために、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることが特に好ましい。
なお、封止層3、6に、紫外線遮断、熱線遮断、導電性、反射防止、防眩性、光拡散、光散乱、波長変換、ガスバリア性等の機能を付与してもよい。特に、有機半導体化合物又はペロブスカイト半導体化合物を用いた太陽電池素子は、水や酸素により劣化しやすい傾向があり、また、太陽光の紫外線により劣化する場合があるため、ガスバリア性や紫外線遮断機能を持つことが好ましい。このような機能を付与する方法としては、機能を有する層を塗布成膜等により封止層3、6上に積層してもよいし、このような機能を有する材料を溶解・分散させるなどして封止層3、6に含有させてもよい。なお、本発明においては、このように付加した層も封止層の一部とみなすものとする。
封止層3、6の100μmにおける水蒸気透過率は、40℃、90%RH環境下で、通常10g/m-2/day以下、好ましくは10-1g/m2/day以下、より好ましくは10-2g/m2/day以下、さらに好ましくは10-3g/m2/day以下である。水蒸気透過率は、JIS K7129に準じた感湿センサ、赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置による測定、カップ法(JIS Z0208)により、40℃、90%RH環境で測定することができる。
封止層3、6の100μmにおける酸素透過性は、40℃、湿度0%環境下で、通常1cc/m2/day/atm以下であり、1×10-1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、1×10-2cc/m2/day/atm以下であることがより好ましく、1×10-3cc/m2/day/atm以下であることがさらに好ましく、1×10-4cc/m2/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10-5cc/m2/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、薄膜太陽電池素子の酸化による劣化が抑えられる利点がある。なお、酸素透過率は、JIS K7126−1に準じた差圧法に基づく装置、あるいはJIS K7126−2に準じた等圧法に基づく赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置で測定することができる。
<1−3.素子基板4>
素子基板4は太陽電池素子5を支持する支持部材である。なお、本発明において、素子基板4は、特段の制限はないが、バリアフィルム10側を太陽電池モジュールの受光面とする場合、素子基板4の可視光線透過率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
素子基板4は特段の制限はなく、ガラス基板、樹脂基材、又は絶縁性が付与された金属基材等が挙げられる。なかでも、太陽電池モジュールの軽量化が可能となり、太陽電池モジュールの設置自由度を上げる観点から、素子基板4は樹脂基材であることが好ましい。
樹脂基材4の材料としては、特段の制限はないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、セルロース、アセチルセルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料などが挙げられる。これらのなかでも、太陽電池素子5の形成のし易さからポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂が好ましく、特に、上述の通り、太陽電池モジュールの周辺領域を溶融する場合、素子基板4の材料は、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートを用いることが好ましい。
素子基板4の厚さは特段の制限はないが、太陽電池素子5を製造する際の張力や加熱に対する耐性を向上させるために、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、30μm以上であることが特に好ましく、一方、フレキシブルな太陽電池モジュールとする場合、素子基板4の厚さが大きすぎると、太陽電池モジュールのフレキシブル性が低下するために500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。
<1−4.太陽電池素子5>
太陽電池素子5は、少なくとも、一対の電極と、該一対の電極間に活性層と、を有して形成される。なお、太陽電池素子5の厚さは、特段の制限はないが、フレキシブルな太陽電池モジュールとする場合、太陽電池素子5の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがさらに好ましく、2μm以下であることが特に好ましい。
<1−4−1.一対の電極>
一対の電極は、下部電極及び上部電極により構成され、一対の電極のうち一方の電極は活性層が光を吸収することにより発生する正孔を捕集する機能を有する電極(以下、アノードと称す)であり、他方の電極は、活性層が光を吸収することにより発生する電子を捕集する機能を有する電極である(以下、カソードと称す)。下部電極をアノードとする場合、上部電極をカソードとし、下部電極をカソードとする場合、上部電極をアノードとすることが好ましい。
なお、一対の電極のうち、一方の電極は透明電極であれば、他方の電極は透明電極であってもよいし、非透明電極であってもよい。但し、太陽電池モジュールを透過型の太陽電池モジュール、所謂、シースルー型の太陽電池モジュールとする場合、一対の電極はともに透明電極であることが好ましい。なお、本発明において、透明電極とは、通常60%以上の可視光線透過率を有する電極を意味するが、変換効率を向上させるためには、透明電極の可視光線透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。一方、上限は特段限定されないが、通常90%以下である。なお、該電極の可視光線透過率は、上述の素子基板4の可視光線透過率の測定方法と同様の方法により測定することができる。
透明電極は、単層の透明導電層で形成されていてもよいし、透明導電層及び金属層との積層により形成されていてもよく、例えば、透明導電層、金属薄層及び透明導電層が順次形成された積層構造であってもよい。
透明電極層に用いられる材料としては、特段の制限はないが、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、亜鉛をドープしたインジウム酸化物(IZO)、タングステンをドープしたインジウム酸化物(IWO)、亜鉛とアルミニウムとの酸化物(AZO)、酸酸化インジウム(In2O3)等である。これらの中でも、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、亜鉛をドープしたインジウム酸化物(IZO)、タングステンをドープしたインジウム酸化物(IWO)等の非晶質性酸化物を用いることが好ましい。
透明電極を、透明導電層及び金属層の積層構造とする場合、金属層の材料は、特段の制限はなく、例えば、金、白金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム、クロム、銅、コバルトの等の金属又はその合金が挙げられる。これらのなかでも、金属層を形成する材料は、高い電気伝導性を示すとともに、薄膜における可視光線透過率の高い銀又は銀の合金であることが好ましい。なお、銀の合金としては、硫化又は塩素化の影響を受けにくく薄膜としての安定性を向上させるために、銀と金の合金、銀と銅の合金、銀とパラジウムの合金、銀と銅とパラジウムの合金、銀と白金の合金等が挙げられる。
金属層の膜厚は、透明電極として70%以上の可視光線透過率を維持できる限りにおいて、特段の制限はなく、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、一方、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。この理由は、金属層が薄すぎると、高い導電性を得ることが困難となる場合があり、また、金属層が厚すぎると光透過率が低下して有機太陽電池素子に入射する光量が低下してしまい、変換効率が低下してしまうためである。
非透明電極を用いる場合、特段の制限はないが、例えば、上述したような金属層を厚膜化して形成することにより、非透明電極を形成することができる。
下部電極及び上部電極のそれぞれの厚さは、特段の制限はなく、光学特性及び電気特性を考慮して任意で選択すればよい。なかでも、シート抵抗を抑えるために、下部電極及び上部電極のそれぞれの厚さは、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、一方、高い透過率を維持するために、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。
下部電極をアノードとし、上部電極をカソードとする場合、下部電極は上部電極よりも仕事関数の大きい材料を使用することが好ましい。一方、下部電極をカソードとして、上部電極をアノードとする場合、下部電極は上部電極よりも仕事関数の小さい材料により形成することが好ましい。なお、有機太陽電池素子に、後述するような下部バッファ層及び/又は上部バッファ層を設けて仕事関数を調整することにより、下部電極及び上部電極は同じ仕事関数を有する材料により形成することもできる。
下部電極及び上部電極の形成方法は、特段の制限はなく、使用する材料に合わせて公知の方法により形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式成膜法等が挙げられる。
<1−4−2.活性層>
活性層の形成材料は特段の制限はないが、本発明は、特に、水や酸素に対して劣化しやすい有機半導体化合物又はペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層の場合に特に有効な発明である。
活性層の構成としては、特段の制限はないが、p型の有機半導体化合物を含有する層とn型の半導体化合物を含有する層とが積層された薄膜積層型、p型の有機半導体化合物とn型の半導体化合物が混合した層(混合層)であるバルクヘテロ型接合型、又はペロブスカイト半導体化合物を含有する層が挙げられる。なお、バルクヘテロ接合型の活性層又はペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層は、他にp型の半導体化合物を含有する層及び/又はn型の半導体化合物を含有する層がさらに積層された構造であってもよい。
p型の有機半導体化合物は、特段の制限はなく、p型の低分子有機半導体化合物、p型の有機半導体オリゴマー、及びp型の有機半導体ポリマーが挙げられる。
p型の低分子有機半導体化合物は、特段の制限はないが、テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;ナフタロシアニン化合物;テトラセンやペンタセンのポリアセン等が挙げられる。
p型の有機半導体オリゴマーは特段の制限はないが、セキシチオフェン等のオリゴチオフェン又はこれら化合物を骨格として含む誘導体等が挙げられる。
p型の有機半導体ポリマーは、特段の制限はない。例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)などを含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリトリアリルアミン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、チオフェン環又はチオフェン縮合環を含むポリマー等が挙げられる。より具体的には、国際公開第2011/016430号パンフレット、国際公開第2013/180243号パンフレット、日本国特開2012−191194号公報等に記載されるような公知のp型半導体ポリマーが挙げられる。
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、フラーレン;フラーレン誘導体;8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体;アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ、n型ポリマー(n型高分子半導体材料)等が挙げられる。これらのなかでも、フラーレン化合物が特に好ましい。フラーレン化合物としては、特段の制限はないが、例えば、国際公開第2011/016430号又は日本国特開2012−191194号公報等の公知文献に記載のものが挙げられる。なお、上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
ペロブスカイト半導体化合物は、特段の制限はないが、下記式(1)で表わされる化合物であることが好ましい。
AnMX(n+2) ・・・(1)
式(1)中、nは1又は2の整数を表わす。
式(1)中、Aは1価の有機分子を表す。
1価の有機分子は特段の制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミンジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾール、イミダゾリン、カルバゾール及びこれらのイオン(例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3)等)やフェネチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン及びこれらのイオンやフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びこれらのイオンがより好ましい。
式(1)中、Mは2価の金属原子を表す。2価の金属原子は特段の制限はないが、鉛、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、ユーロピウム等が挙げられる。これらの元素は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
式(1)中、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子を表す。ハロゲン原子は、特段の制限はないが、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄が挙げられる。また、カルコゲン原子は特段の制限はないが、セレンが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2014/045021号、日本国特開2014−49596号公報、日本国特開2016−82003号公報等に記載のペロブスカイト半導体化合物が挙げられる。
また、活性層がペロブスカイト半導体化合物により形成されている場合、当該化合物を含む層の下に、TiO2、Al2O3等の多孔質膜が形成されていてもよい。
活性層の膜厚は、特段の制限はないが、通常50nm以上、好ましくは100nm以上であり、一方、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。活性層の膜厚が50nm以上であることは、膜の均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、活性層の厚さが1000nm以下であることは、内部抵抗が小さくなる点、及び電極間が離れすぎず電荷の拡散が良好となる点で、好ましい。
活性層の形成方法は、特段の制限はく、使用する材料を考慮して、公知の方法により形成することができる。具体的には、蒸着法、スパッタ法等の真空成膜法又は該活性層を形成する化合物又はその前駆体化合物と、溶媒を含有するインクを用いた湿式成膜法により形成することができる。
湿式成膜法としては、特段の制限はなく、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
溶媒は、特段の制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、テトラリン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なお、溶媒は1種の溶媒を単独で用いてもよいし、任意の2種以上の溶媒を任意の比率で併用してもよい。
活性層をp型の有機半導体化合物を含む層とn型の半導体化合物とを含む層の薄膜積層型とする場合、特段の制限はないが、上述のような方法により各層を成膜することにより形成すればよい。また、活性層をバルクヘテロ接合型とする場合、特段の制限はないが、p型の有機半導体化合物と、n型の半導体化合物と、溶媒とを含むインクを作製しておき、該インクを用いて湿式成膜法により形成することが好ましい。
また、活性層をペロブスカイト半導体化合物により形成する場合、活性層の形成方法は特段の制限はないが、国際公開第2014/045021号、日本国特開2014−49596号公報、日本国特開2016−82003号公報等に記載されるように前駆体となる塗布液を塗布することにより、該活性層を形成することができる。
<1−4−3.バッファ層>
太陽電池素子4は上述以外の層を有していてもよく、例えば、一対の電極の少なくとも一方の電極と、活性層との間にバッファ層を有していてもよい。バッファ層とは、活性層からカソードへの電子取り出し効率を向上させる電子取り出し層又は活性層からアノードへの正孔取り出し効率を向上させる正孔取り出し層に分類される。なお、本発明において、便宜上、活性層と上部電極との間に設けるバッファ層を上部バッファ層と称し、活性層と下部電極との間に設けるバッファ層を下部バッファ層と称す場合がある。なお、下部電極をアノードとし、上部電極をカソードとする場合、下部バッファ層を正孔取り出し層とし、上部バッファ層を電子取り出し層とすればよい。一方、下部電極をカソードとし、上部電極をアノードとする場合、下部バッファ層を電子取り出し層とし、上部バッファ層を正孔取り出し層とすればよい。
電子取り出し層の材料は、活性層からカソードへの電子取り出し効率を向上させることができる材料であれば特段の制限はなく、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の例としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が好ましく、n型半導体酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等で構成されるカソードと組み合わされた際にカソードの仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物又はベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)又はペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
正孔取り出し層の材料としては、活性層からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば、特段の制限はないが、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物等の導電性化合物;酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物半導体、ナフィオン、後述のp型半導体等の半導体化合物;が挙げられる。好ましくは、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。
バッファ層の膜厚は特段の制限はないが、バッファ層材料として半導体化合物を用いる場合、電子又は正孔取り出し効率を向上させるために、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが特に好ましく、一方、有機太陽電池素子の内部抵抗を低く保ち、有機太陽電池素子の変換効率を向上させるために、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。一方、バッファ層材料として導電性化合物を用いる場合、電子又は正孔取り出し効率を向上させるために、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、100nm以上であることが特に好ましく、一方、有機太陽電池素子の内部抵抗を低く保ち、有機太陽電池素子の変換効率を向上させるために1000nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。
電子取り出し層及び正孔取り出し層の形成方法は特段の制限は無く、使用する材料に合わせて公知の方法により形成することができる。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は蒸着法、スパッタ法等の真空蒸着法により形成することができる。また、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。また、半導体材料を用いる場合は、活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
<1−5.集電線9>
集電線9は、太陽電池素子5で発生した電気を外部に取り出すために配線である。具体的には、太陽電池素子5の上部電極及び/又は下部電極に接続することで、太陽電池素子5において発電した電気を取り出すことができる。
集電線9の材料としては、金属や合金などが挙げられ、中でも抵抗率の低い銅やアルミ、銀、金、ニッケルなどを用いることが好ましく、銅やアルミが安価であることから、特に好ましい。また、錆防止のため、集電線の周囲をスズや銀などでメッキしたり、表面を樹脂などでコートしてあったり、フィルムをラミネートしてあってもよい。集電線の形状としては、例えば、平角線、箔、平板、ワイヤ状等が挙げられるが、接着面積の確保などの理由から、平角線や、箔、平板状のものを用いることが好ましい。また、集電線9を電気取出端子として使用することができるため、平板状であることがより好ましい。
なお、本明細書において「箔」は厚みが100μm未満のものをいい、「板」は厚みが100μm以上のものをいう。また「平角線」とは、断面が円形のワイヤを圧延して、断面の形状を四角形にしたものをいう。
集電線9は、導電性を有する限り特段の限定はされないが、接続する上部電極や下部電極よりも抵抗値が低いものが好ましく、特に、上部電極や下部電極より厚さを厚くすることによって、抵抗値を低減させることが好ましい。集電線の厚さとしては、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、2mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。集電線9の厚さが上記下限以上であることで、集電線9の抵抗値の上昇を抑制し、発電した電力を効率よく外部に取り出すことができる。
集電線9の幅は、通用0.5mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、通常50mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である。集電線の幅が上記下限以上であることで、集電線の抵抗値の上昇を抑制し、発電した電力を効率よく取り出すことができる。また、集電線の機械強度を維持し、破断等を抑制することができる。上記上限以下であることで、モジュール全体における開口率を維持し、モジュールの発電量の低下を抑制することができる。
なお、集電線9を太陽電池素子5の電極と接続する方法は特段の制限はなく、公知の方法により接続させればよい。例えば、導電性接着剤、導電性テープ、はんだ等により接続することができ、なかでも導電性接着剤により接続させることが好ましい。導電性接着剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、熱可塑性、熱硬化性等の導電性接着剤を使用することができる。
太陽電池モジュールは図1の構成に限定されず、太陽電池モジュールとして機能する限りにおいて、その構成に特段の制限はない。素子基板4側のバリアフィルム10及び封止層3を設けない構成であってもよい。この場合、素子基板4としてバリア性の低い樹脂基材を用いる場合、素子基板4の太陽電池素子5が形成されていない側に、無機層を積層させてバリア性能を高めることが好ましい。なお、無機層は特段の制限はないが、上述の<1−1.バリアフィルム(10、11)>において挙げたバリア材層である無機層を用いることができる。
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、上記以外に、他の構成部材又は層を有していてもよい。例えば、太陽電池モジュールが紫外線により劣化するのを防ぐために紫外線カットフィルムを設けてもよい。さらには、太陽電池モジュールの物理的損傷を防ぐために、ハードコート層を設けてもよい。これらの紫外線カットフィルムやハードコート層も公知の材料・形成方法により設けることができる。
<2.太陽電池モジュールの製造方法>
本実施態様に係る太陽電池モジュールの製造方法は、特段の制限はなく、上記構成が得られる限り、任意の方法で形成することができる。例えば、素子基板4上に太陽電池素子5を形成する工程、及び太陽電池素子5が形成された素子基板4を封止する封止工程により太陽電池モジュールを製造することができる。
<2−1.素子基板4上に太陽電池素子5を形成する工程>
素子基板4上に太陽電池素子5を形成する方法は特段の制限はない、上述の<1−4.太陽電池素子5>で説明したように、太陽電池素子5を構成する各層を順次積層させて形成することができる。
太陽電池素子5を構成する各層は、枚葉式で形成してもよいし、ロール・ツー・ロール方式で形成してもよい。但し、生産性を向上させるためには、ロール・ツー・ロール方式により各層又は少なくとも一部の層を形成することが好ましい。
なお、太陽電池モジュールは、1つの太陽電池素子により構成されていてもよいし、直列に接続された複数の太陽電池素子により構成されていてもよい。さらには、直列に接続された複数の太陽電池素子を複数有し、それらが互いに並列接続された構成であってもよい。太陽電池モジュールが、複数の太陽電池素子が直列に接続された構成とする場合、各層を成膜した後に、公知のレーザ―スクライブ法等を用いて直列化構造を形成すればよい。
<2−2.太陽電池素子5の封止工程>
封止層及びバリアフィルムの積層体により太陽電池素子5を封止方法は、特段の制限はないが、バリアフィルムに樹脂組成物を塗布する、又は、シート状の該樹脂組成物を積層する、第1の工程と、第1工程により得られた樹脂組成物が塗布された又はシート状の樹脂組成物が積層されたバリアフィルムと、素子基板及び太陽電池素子とを積層させて貼合する第2の工程と、該樹脂組成物を硬化させる第3の工程と、により行うことができ、第1の工程と、貼合する第2の工程との間に、前処理工程を行うことが好ましい。なお、前処理工程は、<1−2.封止層(3、6)>の項目で挙げた通りである。
バリアフィルムに樹脂組成物を塗布する、又は、シート状の該樹脂組成物を積層する、第1の工程は、特段の制限はなく、公知の方法により実施することができる。
第2の工程は、特段の制限はなく、第1の工程により得られた樹脂組成物が塗布、又はシート状の樹脂組成物が積層された2つの積層体を、該積層体の樹脂組成物が設けられた側が、太陽電池素子5及び素子基板4側になるように重ねて公知の方法により貼り合わせて貼合すればよい。なお、貼合の方法は、特段の制限はなく、真空ラミネートやロールラミネートといった公知の方法により行えばよい。
第3の工程は、該樹脂組成物を硬化させる工程である。但し、前処理工程として半硬化工程を実施し、樹脂組成物が素子基板及び/又は太陽電池素子と十分な接着力を有している場合、必ずしも第3の工程は実施しなくてもよい。
紫外線硬化性樹脂組成物を使用する場合、第3の工程における紫外線照射量に特段の制限はないが、使用する樹脂基材の耐熱性も考慮して、5000mJ/cm2以下が好ましく、3000mJ/cm2以下がより好ましく、2000mJ/cm2以下が特に好ましく、1500mJ/cm2以下が特により好ましい。一方で、残留成分量を出来るだけ少なくするために、1mJ/cm2以上が好ましく、10mJ/cm2以上がより好ましく、50mJ/cm2以上が特に好ましい。
熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、第3の工程における加熱条件に特段の制限はなく、バリアフィルムを構成する樹脂基材の耐熱性も考慮し、加熱温度や時間を調整すればよい。具体的には、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、120℃以上であることが特に好ましく、一方、190℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましく、140℃以下であることが特に好ましい。なお、加熱時間は加熱温度に依存するが、概ね、140℃であれば、好ましくは15分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは45分以上、よりさらに好ましくは1時間以上である。このときの上限に特に制限はない。また、上記の加熱温度よりも低温の場合は、加熱時間を長くしなければならないが、上記の加熱温度よりも高温の場合は時間を短くすることができる。この長短の目安としては、加熱温度が10℃低い場合は加熱時間を倍にし、加熱温度が10℃高い場合は加熱時間を半分にする。
熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、熱可塑性樹脂組成物の溶融温度に特段の制限はないが、熱可塑性樹脂の融点以上であることが好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも10℃以上高い温度であることがより好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも20℃以上高い温度であることがさらに好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも30℃以上高い温度であることが特に好ましく、一方、バリアフィルムを構成する樹脂基材の変形温度を超えないことが好ましい。熱可塑性樹脂の融点は、予め、示差走査熱量(DSC)法やTG−DTA法によって決定されていることが好ましい。
溶融した熱可塑性樹脂組成物の冷却条件について、特段の制限はないが、可及的速やかに冷却することが好ましいが、熱収縮による外観上の不良発生等の制約により急速に冷却することが難しい場合は、できるだけ該樹脂温度の融点を下回るまで太陽電池モジュールが相対的に動かないように固定された状態を保ちながらゆっくりと冷却することが好ましい。