JP2015191965A - 光電変換素子及びその製造方法、太陽電池、及び太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】長時間光が照射される環境下において、光劣化の少ない耐光性の高い光電変換素子を提供する。
【解決手段】光電変換素子を構成する基材上に、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された活性層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と前記活性層との間に配置された正孔取り出し層と、を有し、前記正孔取り出し層が、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する。
【選択図】図1
【解決手段】光電変換素子を構成する基材上に、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された活性層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と前記活性層との間に配置された正孔取り出し層と、を有し、前記正孔取り出し層が、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する。
【選択図】図1
Description
本発明は光電変換素子及びその製造方法、並びに前記光電変換素子を含む太陽電池及び太陽電池モジュールに関する。
近年、有機半導体を用いた電子デバイス、なかでも有機薄膜太陽電池(OPV)が、盛んに開発されている。OPVは、通常、一対の電極で活性層を挟んだ構成を有するが、正孔輸送効率を向上させるために、一対の電極の一方の電極と活性層との間に正孔輸送層を用いることが検討されている。例えば、特許文献1及び非特許文献1には、(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)を含有する正孔取り出し層を用いた光電変換素子の例が記載されている。
Solar Energy Materials & Solar Cells 2011,95,731−734
OPVの実用化のためには、変換効率の向上と同時に、耐光性の向上が求められる。特に、OPVは、室外で使用されることも想定されるために、自然環境下における耐光性の向上は極めて重要な課題である。しかしながら、本発明者等の検討によると、特許文献1及び非特許文献1に記載される(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)のような導電性高分子を含有する正孔取り出し層を用いた光電変換素子を製造する場合、その製造プロセスにおいて、活性層が光曝露された際に、活性層の一部が酸化されてしまい、製造される素子の変換効率が低下してしまう可能性があることが判明した。また、製造された光電変換素子を太陽電池として使用する際にも、長時間光が照射されると変換効率が低下する可能性があることが判明した。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、長時間光が照射される環境下において、光劣化の少ない耐光性の高い光電変換素子及びその製造方法、並びに前記光電変換素子を含む太陽電池及び太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
本発明者等は上記実情に鑑み、耐光性の高い光電変換素子を製造するために鋭意検討した結果、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する正孔取り出し層を用いることで、上記課題を解決し、本発明を達成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 基材上に、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された活性層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と前記活性層との間に配置された正孔取り出し層と、を有する光電変換素子であって、前記正孔取り出し層が、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有することを特徴とする光電変換素子。
[2] 前記導電性化合物に対する前記ポリビニルアルコール系化合物の占める質量比率が、0.05以上1以下であることを特徴とする[1]に記載の光電変換素子。
[3] 前記ポリビニルアルコール系化合物が下記式(1)で表される構成単位を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の光電変換素子。
[1] 基材上に、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された活性層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と前記活性層との間に配置された正孔取り出し層と、を有する光電変換素子であって、前記正孔取り出し層が、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有することを特徴とする光電変換素子。
[2] 前記導電性化合物に対する前記ポリビニルアルコール系化合物の占める質量比率が、0.05以上1以下であることを特徴とする[1]に記載の光電変換素子。
[3] 前記ポリビニルアルコール系化合物が下記式(1)で表される構成単位を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の光電変換素子。
[4] 前記式(1)中、R1、R2及びR3がそれぞれ水素原子であることを特徴とする[3]に記載の光電変換素子。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の光電変換素子を有する太陽電池。
[6] [5]に記載の太陽電池を有する太陽電池モジュール。
[7] [1]〜[4]のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法であって、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する塗布液を、前記活性層上に塗布することにより、前記正孔取り出し層を形成する工程を含むことを特徴とする光電変換素子の製造方法。
本発明によれば、長時間光が照射される環境下において、光劣化の少ない耐光性の高い光電変換素子を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分、又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
<1.光電変換素子>
本発明に係る光電変換素子は、基材上に、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された活性層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と前記活性層との間に配置された正孔取り出し層と、を有する。
本発明に係る光電変換素子は、基材上に、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された活性層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と前記活性層との間に配置された正孔取り出し層と、を有する。
図1に示すように、本発明に係る光電変換素子の一実施形態は、基材106上に、カソード101と、活性層103と、正孔取り出し層104と、アノード105と、がこの順に配置された構造を有する。なお、光電変換素子は、カソード101と活性層103との間に、さらに電子取り出し層102を有していてもよい。
また、光電変換素子の構成は図1の構成に限定されない。例えば、光電変換素子は、基材106上に、アノード105と、正孔取り出し層104と、活性層103と、カソード101と、がこの順に配置された構造を有していてもよい。なお、この構成の場合、光電変換素子はカソード101と活性層103との間に電子取り出し層102を有していてもよい。
また、本発明において、カソード101及びアノード105を合わせて、一対の電極と称する場合がある。また、カソード101及びアノード105のうち、基材106側に積層される電極を下部電極、基材106をボトムとした際に、下部電極よりも上部に積層される電極を上部電極と称する場合がある。以下、光電変換素子を構成する各層について詳細に説明する。
<1−1.正孔取り出し層104>
上述の通り、正孔取り出し層104は一対の電極のうち一方の電極、好ましくはアノードと、活性層との間に配置され、該電極と活性層との間で正孔輸送性を高める機能を有する層である。
上述の通り、正孔取り出し層104は一対の電極のうち一方の電極、好ましくはアノードと、活性層との間に配置され、該電極と活性層との間で正孔輸送性を高める機能を有する層である。
正孔取り出し層104は、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する。
導電性化合物とは、バンドギャップが5eV以下の化合物であり、導電性化合物のバンドギャップは4eV以下であることが好ましく、下限はない。なお、バンドギャップは、通常の分光光度計で透過スペクトルを測定して算出することができる。また、導電性化合物の電気導電率は、1.0×10-3S/cm以上であることが好ましく、1.0×10-3S/cmであることが特に好ましい。なお、導電性化合物の電気導電率は、JIS−K7194準拠の低抵抗率計器を用いて、四探針法を用いて測定することができる。具体的には、ロレスタGP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて測定することができる。
導電性化合物は、特段の制限はないが、導電性高分子化合物と導電性無機化合物が挙げられる。
導電性高分子化合物は、特段の制限はないが、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミンポリピロール又はポリアニリン等にスルホン酸及び/又はヨウ素等をドーピングした導電性ポリマースルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物等が挙げられる。その中でも、好ましくは、導電性及び化学的な安定性からスルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。
導電性無機化合物は、特段の制限はないが、金属酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物が挙げられるが、中でも金属酸化物が好ましい。
金属酸化物は、特段の制限はないが、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化銅、酸化銀、一酸化スズ、CuAlO2、CuInO2、CuGaO2、CuBi2O4、LaMnO3、LaFeO3、LaCoO3、CuMn2O4等が挙げられる。中でも、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウムが好ましく、より好ましくは酸化モリブデンである。
金属酸化物は、特段の制限はないが、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化銅、酸化銀、一酸化スズ、CuAlO2、CuInO2、CuGaO2、CuBi2O4、LaMnO3、LaFeO3、LaCoO3、CuMn2O4等が挙げられる。中でも、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウムが好ましく、より好ましくは酸化モリブデンである。
上記の中でも、活性層との密着性を向上させるために正孔取り出し層は導電性高分子化合物を含有することが好ましい。また、導電性高分子化合物は、正孔取り出し層を形成するための塗布液において、後述するポリビニルアルコール系化合物と均一に混ざりやすいために、形成される正孔取り出し層は、導電性高分子化合物とポリビニルアルコール系化合物とが均一に混ざり合った層となりやすい。そのため、後述する正孔取り出し層の酸素透過防止機能が向上し、結果的に活性層の光酸化を抑えることができ、素子の耐光性がより向上するために好ましい。
導電性化合物のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.5eV以上である。一方、通常−1.5eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。当該化合物のLUMOエネルギー準位が−3.5eV以上であることは、電子が移動してくることを阻止し得る点で好ましい。
導電性化合物のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−6.5eV以上、好ましくは−6.0eV以上である。一方、通常−4.0eV未満、好ましくは−4.5eV以下である。当該化合物のHOMOエネルギー準位が−6.0eV以上であることは、活性層103からの正孔取り出し効率が向上し得る点で好ましい。
導電性化合物のHOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法が挙げられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法又はサイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。その中でも好ましくはサイクリックボルタモグラム測定法であり、本明細書においてサイクリックボルタモグラム測定法を用いるものとする。具体的には、例えば公知文献(国際公開第2011/016430号パンフレット)に記載の方法で測定することができる。
導電性化合物のHOMOエネルギー準位は、活性層中のp型半導体化合物のHOMOエネルギー準位よりも高いことが好ましい。
正孔取り出し層は、上記に挙げる複数の化合物を含有していてもよい。
正孔取り出し層中に含有される導電性化合物の濃度に特段の制限はないが、正孔取り出しの効率向上のために、正孔取り出し層の全質量に対して、導電性化合物の占める質量比率は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることが特に好ましい。一方で、本発明においては、耐光性向上のために、正孔取り出し層104は、ポリビニルアルコール系化合物を含有するために、0.95以下であることが好ましく、0.85以下であることが特に好ましい。
正孔取り出し層104は、導電性化合物に加えて、ポリビニルアルコール系化合物を含有する。なお、本発明において、ポリビニルアルコール系化合物とは、置換基を有していてもよい、ビニルアルコール単位の重合体を意味する。具体的には、下記式(1)で表わされる構成単位を有するポリビニルアルコール系化合物が挙げられる。
式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
アルキル基は、直鎖状のアルキル基、分岐状のアルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。なかでも、アルキル基は、特段の制限はないが、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が挙げられる。
アリール基は、炭素数6以上8以下のものが好ましい。具体的には、フェニル基、又はトシル基が挙げられる。
特段の制限はないが、アルキル基が有していてもよい置換基としては、アリール基が挙げられる。また、アリール基が有していてもよい置換基としてはアルキル基が挙げられる。
これらの中でも、立体構造を抑えて、ガスバリア性を向上させるために、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、R1、R2及びR3はそれぞれ水素原子であることが好ましい。
なお、ポリビニルアルコール系化合物は式(1)で表される構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。ポリビニルアルコール系化合物が有する全構成単位に対する式(1)で表されるポリビニルモノマー単位のモル比率は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがさらに好ましく、0.7以上であることが特に好ましい。一方で、上限は1以下である。
ポリビニルアルコール系化合物が有していてもよい、式(1)で表されるビニルアルコール単位以外の構成単位としては、本発明に係る効果を損なわない限りにおいて、特段の制限はないが、例えば、酢酸ビニルモノマー単位が挙げられる。具体的には、以下式(2A)で表されるビニルアルコール単位、及び以下式(2B)で表される酢酸ビニル単位を有するポリビニルアルコール系化合物が挙げられる。
式(2A)中、R1、R2及びR3は、式(1)中のR1、R2及びR3と同義である。式(2B)中、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、耐光性を向上させるためには、R1、R2及びR3は水素原子であることが特に好ましい。
式(2A)及び式(2B)中、m及びnは、ポリビニルアルコール系化合物を構成するそれぞれの単位のモル比率を表す。
式(2A)で表されるビニルアルコール単位及び式(2B)で表される酢酸ビニル単位に対する、(2A)で表されるビニルアルコール単位のモル比率(m/(m+n))は、0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがさらに好ましく、一方で、1以下であることが好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値で、通常2000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上が特に好ましく、一方、200000以下が好ましく、100000以下であることがより好ましく、50000以下が特に好ましい。重量平均分子量が小さすぎる場合、塗布液の安定性が不良となる可能性があり、大きすぎる場合、塗布液の粘度が高すぎることにより塗布不能となる可能性がある。
また、本発明のポリビニルアルコール系化合物の数平均分子量(Mn)も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、MwをMnで除した値(Mw/Mn)で、通常1.5以上、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、また、その上限は、通常5以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下であることが望ましい。Mw/Mnが小さすぎる場合、正孔取り出し層や電子取り出し層との接着性が不足する可能性があり、大きすぎる場合、塗布液の粘度が不安定になる可能性がある。なお、Mnも、Mwと同様の方法により、測定することができる。
正孔取り出し層104中の導電性化合物に対するポリビニルアルコール系化合物の占める質量比率は、正孔取り出し層104の機能を損なわない限り制限はないが、耐光性の向上のために、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがさらに好ましく、0.15以上であることが特に好ましい。一方で、変換効率の低下を防止するために、1以下であることが好ましく、0.9以下であることがさらに好ましく、0.6以下であることが特に好ましい。なお、正孔取り出し層104中の導電性化合物に対するポリビニルアルコール系化合物の濃度は、公知文献(「有機質量分析」(山口健太郎著、(社)日本分析化学会)又は「有機化合物のスペクトルによる同定法」(シルバーシュタイン著、東京化学同人))等に記載の方法で測定することができる。
正孔取り出し層104は単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造を有していてもよい。
正孔取り出し層104は、導電性化合物及びポリビニルアルコール系化合物以外の化合物を含んでいてもよい。例えば、後述するように、正孔取り出し層形成用の塗布液に界面活性剤を含有する場合、その残留成分が含まれていてもよい。
正孔取り出し層104の膜厚は特に限定はないが、通常0.2nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1.0nm以上である。一方、通常400nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは70nm以下である。正孔取り出し層104の膜厚が0.2nm以上であることで正孔取り出し層としての機能がよく発揮され、正孔取り出し層104の膜厚が400nm以下であることで、正孔の取り出し効率が向上し、光電変換効率が向上し得る。
なお、本発明において、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する正孔取り出し層を用いることで光電変換素子の耐光性を向上させることができるが、この理由としては、ポリビニルアルコール系化合物の酸素透過性によるものと考えられる。すなわち、ポリビニルアルコール系化合物は、酸素透過係数が小さいために、ガスバリア性が高く、ポリビニルアルコール系化合物を含有する正孔取り出し層を用いることにより、活性層の光酸化を防ぐことができ、その結果、素子の耐光性が向上するものと考えられる。
なお、ポリビニルアルコール樹脂を電子写真感光体又は有機太陽電池の構成層に用いることは知られている。例えば、公知の特開昭58−105155号公報又は特開平01−92755号公報には、電子写真感光体の下引き層(接着層)にポリビニルアルコール樹脂を用いることが記載されている。また、公知の特開2012−84889号公報には、有機太陽電池の電子抽出層にポリビニルアルコール樹脂を用いることが記載されている。しかしながら、下引き層は、ホールをブロッキングする役割を担っている絶縁層であり、また、電子抽出層は、電子の輸送を向上させるためのものであり、ポリビニルアルコール樹脂は、正孔取り出し層には適さないと考えられていた。しかしながら、本発明者等の検討によると、本発明に係る導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を組み合わせて正孔取り出し層材料として使用することにより、正孔輸送機能に優れ、耐光性の高い光電変換素子に使用することができることが判明した。
(正孔取り出し層104の形成方法)
正孔取り出し層104の形成方法は、特段の制限はないが、成膜が容易な点で塗布法を用いることが好ましい。具体的には、正孔取り出し層形成用の塗布液を塗布することに正孔取り出し層104を形成することができる。なお、図1に示す光電変換素子の場合、正孔取り出し層104は活性層103上に形成されるため、この塗布液を活性層103上に塗布する工程により、正孔取り出し層104を形成することができる。なお、上述の通り、正孔取り出し層104は、下部電極と活性層103との間に配置されていてもよいし、上部電極と活性層103との間に配置されていてもよいが、光電変換素子の製造プロセスという観点からは、以下の理由により、活性層103上に正孔取り出し層104が配置される構成であることが好ましい。通常、光電変換素子の製造プロセスにおいて、活性層103を形成した段階で、活性層103の下方には、比較的に酸素の透過性が低い下部電極が存在しているために、下部電極側から活性層103へ酸素は侵入しにくい。一方で、通常、活性層103の上部には、上部電極が形成されるまでは、酸素透過率の比較的高い正孔取り出し層が存在するだけであるため、活性層103の上部側から活性層103へ酸素は侵入しやすくなる。そのため、本発明のように、ポリビニルアルコール系化合物を含有する、酸素透過性の低い正孔取り出し層が活性層103上に形成される構造であれば、光電変換素子の製造プロセス中に、活性層の上部側から、活性層に酸素が侵入するのを防ぐことができるため、活性層103が光酸化により劣化するのを防ぐことができる。
正孔取り出し層104の形成方法は、特段の制限はないが、成膜が容易な点で塗布法を用いることが好ましい。具体的には、正孔取り出し層形成用の塗布液を塗布することに正孔取り出し層104を形成することができる。なお、図1に示す光電変換素子の場合、正孔取り出し層104は活性層103上に形成されるため、この塗布液を活性層103上に塗布する工程により、正孔取り出し層104を形成することができる。なお、上述の通り、正孔取り出し層104は、下部電極と活性層103との間に配置されていてもよいし、上部電極と活性層103との間に配置されていてもよいが、光電変換素子の製造プロセスという観点からは、以下の理由により、活性層103上に正孔取り出し層104が配置される構成であることが好ましい。通常、光電変換素子の製造プロセスにおいて、活性層103を形成した段階で、活性層103の下方には、比較的に酸素の透過性が低い下部電極が存在しているために、下部電極側から活性層103へ酸素は侵入しにくい。一方で、通常、活性層103の上部には、上部電極が形成されるまでは、酸素透過率の比較的高い正孔取り出し層が存在するだけであるため、活性層103の上部側から活性層103へ酸素は侵入しやすくなる。そのため、本発明のように、ポリビニルアルコール系化合物を含有する、酸素透過性の低い正孔取り出し層が活性層103上に形成される構造であれば、光電変換素子の製造プロセス中に、活性層の上部側から、活性層に酸素が侵入するのを防ぐことができるため、活性層103が光酸化により劣化するのを防ぐことができる。
塗布法は、特に制限されないが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、グラビア法が好ましい。なかでも、インクジェット法、ドクターブレード法、スプレーコート法、グラビア法が大面積の塗布が可能である点で好ましく、塗布速度が速く低コスト化が可能である点で、グラビア法が特に好ましい。塗布液の塗布後に、加熱等による乾燥処理を行ってもよい。
正孔取り出し層形成用の塗布液は、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する。また、通常、正孔取り出し層形成用の塗布液は、塗布を容易とするために溶媒を含有する。
溶媒としては特段の制限はないが、水系溶媒若しくはアルコール系溶媒等の極性溶媒、又はジオキサン等の非極性溶媒が挙げられる。なかでも、活性層103を侵食又は溶解させにくい点で、極性溶媒、特に水系溶媒又はアルコール系溶媒を用いることが好ましい。
水系溶媒としては、水等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール又は1−エトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。その他の極性溶媒としては、アセトニトリル又はN,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。非極性溶媒としては、ジオキサン又は四塩化炭素等が挙げられる。これらの溶媒のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正孔取り出し層形成用の塗布液は、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物以外に、他の化合物を含んでいてもよい。例えば、濡れ性を向上するために、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤)を含有していてもよい。
正孔取り出し層形成用の塗布液は、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を溶媒に溶解させることにより作製することができる。なお、これらの組成比は、形成する正孔取り出し層103の組成に合わせて任意で選択すればよい。
正孔取り出し層形成用の塗布液は、塗布性を考慮して、液粘度が2以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましく、10以上であることが特に好ましく、200以下であることが好ましく、50以下であることがさらに好ましく、30以下であることが特に好ましい。
ポリビニルアルコール系化合物の製造方法に特段の制限はなく、公知の方法により製造すればよい。例えば、公知文献「基礎高分子科学」(妹尾学著、共立出版)に記載の方法に従って、酢酸ビニルをけん化させることにより製造することができる。また、例えば、市販のJL−05E(日本酢ビ・ポバール社製)等を用いることもできる。
<1−2.電子取り出し層102>
電子取り出し層102は一対の電極の一方の電極(カソード)と、活性層との間に配置され、該電極と活性層との間で電子輸送性を高める機能を有する層である。
電子取り出し層102は一対の電極の一方の電極(カソード)と、活性層との間に配置され、該電極と活性層との間で電子輸送性を高める機能を有する層である。
電子取り出し層102の材料は、活性層103からカソード101へ電子の取り出し効率を向上させる材料であれば特段の制限はないが、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の材料の好ましい例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはセシウム等のアルカリ金属の塩、又は金属酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム又はフッ化セシウムのようなフッ化物塩が好ましく、金属酸化物としては、酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体特性を有する金属酸化物が好ましい。無機化合物の材料として特に好ましくは、酸化亜鉛(ZnO)のような、n型半導体特性を有する金属酸化物である。このような材料の動作機構は不明であるが、カソード101と組み合わされた際に、仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物又はベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)又はペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.9eV以上である。一方、通常−1.9eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位が−1.9eV以下であることは、電荷移動が促進され得る点で好ましい。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位が−4.0eV以上であることは、n型半導体材料への逆電子移動が防がれ得る点で好ましい。
電子取り出し層102の材料のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−9.0eV以上、好ましくは−8.0eV以上である。一方、通常−4.0eV未満、好ましくは−5.5eV以下である。電子取り出し層102の材料のHOMOエネルギー準位が−4.0eV未満であることは、正孔が移動してくることを阻止し得る点で好ましい。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位及びHOMOエネルギー準位の算出方法としては、上述のサイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。
電子取り出し層102の材料が有機化合物である場合、DSC法により測定した場合のこの化合物のガラス転移温度(以下、Tgと記載する場合もある)は、特段の制限はないが、観測されないか、又は55℃以上であることが好ましい。DSC法によりガラス転移温度が観測されないとは、ガラス転移温度がないことを意味する。具体的には400℃以下のガラス転移温度の有無により判別する。DSC法によるガラス転移温度が観測されない材料は、熱的に高い安定性を有している点で好ましい。
また、DSC法により測定した場合のガラス転移温度が55℃以上である化合物の中でも、ガラス転移温度が、好ましくは65℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である化合物が望ましい。一方、ガラス転移温度の上限は特に限定はないが、通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。また、電子取り出し層102の材料は、DSC法によるガラス転移温度が30℃以上55℃未満に観測されないものであることが好ましい。
本明細書におけるガラス転移温度とは、アモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。Tgよりさらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体状態に変化することが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、これらの相転移が見られないこともある。
DSC法とは、JIS K−0129“熱分析通則”に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。ガラス転移温度をより明確に決める為には、一度ガラス転移点以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法により、測定を実施することができる。
電子取り出し層102がガラス転移温度が55℃以上の有機化合物を含有する場合、この化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、化合物の薄膜の結晶化が進みにくい傾向も有すことから、使用温度範囲においてこの化合物がアモルファス状態と結晶状態との間で変化しにくくなることにより、電子取り出し層としての安定性が良くなるため、耐久性の面で好ましい。この効果は、材料のガラス転移温度が高ければ高いほど、より顕著に表れる。
電子取り出し層102の膜厚は特に限定はないが、通常0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1.0nm以上である。一方、通常100nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは40nm以下、特に好ましくは20nm以下である。電子取り出し層102の膜厚が0.1nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、電子取り出し層102の膜厚が100nm以下であることで、電子が取り出しやすくなり、光電変換効率が向上し得る。
なお、電子取り出し層102は、上述以外の化合物を含有していてもよい。例えば、正孔取り出し層103と同様、電子取り出し層102も、ポリビニルアルコール系化合物を含有していてもよい。電子取り出し層102がポリビニルアルコール系化合物を含有していれば、光電変換素子の耐光性をより向上させることができる。
電子取り出し層102の形成方法に特段の制限はなく、使用する材料に合わせて、真空蒸着法又は塗布法により形成することができ、生産性を向上させるためには、塗布法を用いることが好ましい。塗布法としては、<1−1.正孔取り出し層103>の項目に記載した方法が挙げられる。
<1−3.活性層103>
活性層103は光電変換が行われる層を指し、通常、p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含有する。p型半導体化合物とはp型半導体材料として働く化合物のことを指し、n型半導体化合物とはn型半導体材料として働く化合物のことを指す。光電変換素子107が光を受けると、光が活性層103に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気がカソード101及びアノード105から取り出される。
活性層103は光電変換が行われる層を指し、通常、p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含有する。p型半導体化合物とはp型半導体材料として働く化合物のことを指し、n型半導体化合物とはn型半導体材料として働く化合物のことを指す。光電変換素子107が光を受けると、光が活性層103に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気がカソード101及びアノード105から取り出される。
活性層103の材料としては無機化合物と有機化合物とのいずれを用いてもよいが、簡易な塗布プロセスにより形成し得る層であることが好ましい。より好ましくは、活性層103は有機化合物からなる有機活性層である。以下では、活性層103が有機活性層であるものとして説明する。
<1−3−1.活性層103の層構成>
活性層103の層構成としては、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが積層された薄膜積層型、又はp型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型等が挙げられる。なかでも、光電変換効率がより向上し得る点で、バルクヘテロ接合型の活性層が好ましい。
活性層103の層構成としては、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが積層された薄膜積層型、又はp型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型等が挙げられる。なかでも、光電変換効率がより向上し得る点で、バルクヘテロ接合型の活性層が好ましい。
(薄膜積層型の活性層)
薄膜積層型の活性層は、p型半導体化合物を含むp型半導体層と、n型半導体化合物を含むn型半導体層とが積層された構造を有する。薄膜積層型の活性層は、p型半導体層と、n型半導体層とをそれぞれ形成することにより作製することができる。p型半導体層とn型半導体層とが別の方法によって形成されてもよい。
薄膜積層型の活性層は、p型半導体化合物を含むp型半導体層と、n型半導体化合物を含むn型半導体層とが積層された構造を有する。薄膜積層型の活性層は、p型半導体層と、n型半導体層とをそれぞれ形成することにより作製することができる。p型半導体層とn型半導体層とが別の方法によって形成されてもよい。
(p型半導体層)
p型半導体層は、p型半導体化合物を含む層である。p型半導体層の膜厚に制限はなく、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、一方、通常500nm以下、好ましくは200nm以下である。p型半導体層の膜厚が500nm以下であることは、直列抵抗が低くなる点で好ましい。p型半導体層の膜厚が5nm以上であることは、より多くの光を吸収できる点で好ましい。
p型半導体層は、p型半導体化合物を含む層である。p型半導体層の膜厚に制限はなく、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、一方、通常500nm以下、好ましくは200nm以下である。p型半導体層の膜厚が500nm以下であることは、直列抵抗が低くなる点で好ましい。p型半導体層の膜厚が5nm以上であることは、より多くの光を吸収できる点で好ましい。
p型半導体層は、塗布法及び蒸着法を含む任意の方法により形成することができるが、塗布法、好ましくは湿式塗布法を用いることが、より簡単にp型半導体層を形成できる点で好ましい。
塗布法によりp型半導体層を作製する場合、p型半導体化合物を含む塗布液を調製し、この塗布液を塗布すればよい。塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。塗布液の塗布後に、加熱等による乾燥処理を行ってもよい。
(n型半導体層)
n型半導体層は、後述するn型半導体化合物を含む層である。n型半導体層の膜厚に特段の制限はなく、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、一方、通常500nm以下、好ましくは200nm以下である。n型半導体層の膜厚が500nm以下であることは、直列抵抗が低くなる点で好ましい。n型半導体層の膜厚が5nm以上であることは、より多くの光を吸収できる点で好ましい。
n型半導体層は、後述するn型半導体化合物を含む層である。n型半導体層の膜厚に特段の制限はなく、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、一方、通常500nm以下、好ましくは200nm以下である。n型半導体層の膜厚が500nm以下であることは、直列抵抗が低くなる点で好ましい。n型半導体層の膜厚が5nm以上であることは、より多くの光を吸収できる点で好ましい。
n型半導体層は、塗布法及び蒸着法を含む任意の方法により形成することができるが、塗布法を用いることはより簡単にn型半導体層を形成できることから好ましい。塗布法によりn型半導体層を作製する場合、n型半導体化合物を含む塗布液を調製し、この塗布液を塗布すればよい。塗布方法としては任意の方法を用いることができ、例えばp型半導体層を形成する方法として挙げた方法を用いることができる。塗布液の塗布後に、加熱等による乾燥処理を行ってもよい。
(バルクヘテロ接合型の活性層)
バルクヘテロ接合型の活性層は、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合された層(i層)を有する。i層はp型半導体化合物とn型半導体化合物とが相分離した構造を有し、相界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔及び電子)が電極まで輸送される。
バルクヘテロ接合型の活性層は、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合された層(i層)を有する。i層はp型半導体化合物とn型半導体化合物とが相分離した構造を有し、相界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔及び電子)が電極まで輸送される。
i層の膜厚に制限はなく、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、一方、通常500nm以下、好ましくは300nm以下である。i層の膜厚が500nm以下であることは、直列抵抗が低くなる点で好ましい。i層の膜厚が5nm以上であることは、より多くの光を吸収できる点で好ましい。
i層は、塗布法及び蒸着法(例えば共蒸着法)を含む任意の方法により形成することができるが、塗布法を用いることは、より簡単にi層を形成できるため好ましい。塗布法によりi層を作製する場合、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含む塗布液を調製し、この塗布液を塗布すればよい。p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含む塗布液は、p型半導体化合物を含む溶液とn型半導体化合物を含む溶液をそれぞれ調製後混合して作製してもよく、後述する溶媒にp型半導体化合物及びn型半導体化合物を溶解して作製してもよい。また後述するように、半導体化合物前駆体を含む塗布液を作製して、この塗布液を塗布した後、半導体化合物前駆体を半導体化合物へと変換することにより、i層を形成してもよい。塗布方法としては任意の方法を用いることができ、例えばp型半導体層を形成する方法として挙げた方法を用いることができる。塗布液の塗布後に、加熱等による乾燥処理を行ってもよい。
バルクヘテロ接合型の活性層を塗布法によって形成する場合、p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む塗布液に、さらに添加剤を加えてもよい。バルクヘテロ接合型の活性層におけるp型半導体化合物とn型半導体化合物との相分離構造は、光吸収過程、励起子の拡散過程、励起子の乖離(キャリア分離)過程、キャリア輸送過程等に対する影響がある。したがって、相分離構造を最適化することにより、良好な光電変換効率を実現することができるものと考えられる。塗布液が、溶媒とは異なる揮発性を有する添加剤を含有することにより、好ましい相分離構造を有する活性層が得られ、光電変換効率が向上し得る。
添加剤の例としては、例えば国際公開第2008/066933号パンフレットに記載されている化合物等が挙げられる。添加剤のより具体的な例としては、置換基を有する脂肪族炭化水素、又は置換基を有するナフタレンのような芳香族化合物等が挙げられる。置換基としては、アルデヒド基、オキソ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、チオアルキル基、カルボキシル基、エステル基、アミン基、アミド基、ハロゲン原子、ニトリル基、エポキシ基、芳香族基又はアリールアルキル基等が挙げられる。置換基は1つでもよいし、複数、例えば2つでもよい。アルカンが有する置換基として好ましくは、チオール基又はヨウ素原子である。また、ナフタレンのような芳香族化合物が有する置換基として好ましくは、臭素原子又は塩素原子である。
添加剤は沸点が高いことが好ましいため、添加剤として用いられる脂肪族炭化水素の炭素数は6以上が好ましく、8以上がさらに好ましい。また添加剤は常温で液体であることが好ましいため、脂肪族炭化水素の炭素数は14以下が好ましく、12以下がさらに好ましい。同様の理由により、添加剤として用いられる芳香族炭化水素の炭素数は、通常6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、一方、通常50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。同様に、添加剤として用いられる芳香族複素環化合物の炭素数は、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは6以上であり、一方、通常50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。添加剤の沸点は、常圧(1気圧)において通常100℃以上、好ましくは、200℃以上であり、一方、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。
p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む塗布液に含まれる添加剤の量は、塗布液全体に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、塗布液全体に対して10質量%以下が好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。添加剤の量がこの範囲にあることにより、活性層内に残留する添加剤を減らしながら、好ましい相分離構造を得ることができる。以上のように、p型半導体化合物とn型半導体化合物と、必要により添加剤とを含む塗布液を塗布することによって、バルクヘテロ接合型の活性層を形成することができる。
(塗布液の溶媒)
上述の、p型半導体化合物を含む塗布液、n型半導体化合物を含む塗布液、及びp型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む塗布液の溶媒としては、p型半導体化合物及び/又はn型半導体化合物を均一に溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、テトラリン、キシレン、メシチレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。
上述の、p型半導体化合物を含む塗布液、n型半導体化合物を含む塗布液、及びp型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む塗布液の溶媒としては、p型半導体化合物及び/又はn型半導体化合物を均一に溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、テトラリン、キシレン、メシチレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。
溶媒としては1種の溶媒を単独で用いてもよいし、任意の2種以上の溶媒を任意の比率で併用してもよい。2種以上の溶媒を併用する場合、沸点が60℃以上150℃以下である低沸点溶媒と、沸点が180℃以上250℃以下である高沸点溶媒とを組み合わせることが好ましい。低沸点溶媒と高沸点溶媒との組み合わせの例としては、非ハロゲン芳香族炭化水素類と脂環式炭化水素類、非ハロゲン芳香族炭化水素類と芳香族ケトン類、エーテル類と脂環式炭化水素類、エーテル類と芳香族ケトン類、脂肪族ケトン類と脂環式炭化水素類、又は脂肪族ケトン類と芳香族ケトン類、等が挙げられる。好ましい組み合わせの具体例としては、トルエンとテトラリン、キシレンとテトラリン、トルエンとアセトフェノン、キシレンとアセトフェノン、テトラヒドロフランとテトラリン、テトラヒドロフランとアセトフェノン、メチルエチルケトンとテトラリン、メチルエチルケトンとアセトフェノン、等が挙げられる。
<1−3−2.p型半導体化合物>
活性層103が含有するp型半導体化合物は、特段の制限はないが、p型半導体ポリマー又はp型半導体低分子化合物が挙げられる。なかでも、以下の理由により、活性層103が含有するp型半導体化合物は、p型半導体ポリマーであることが好ましい。p型半導体ポリマーを含有する活性層は、塗布法により容易に形成することができる一方で、光酸化に対する耐性が低く、光電変換素子の製造プロセス又は光電変換素子の使用環境下において、活性層の一部は酸化されやすく、変換効率が低下しやすい傾向がある。しかしながら、本発明においては、酸素透過性の低い正孔取り出し層を用いているために、p型半導体ポリマーを含有していても、活性層が酸化されにくい。そのため、容易に、耐候性の高い光電変換素子を製造することができる。
活性層103が含有するp型半導体化合物は、特段の制限はないが、p型半導体ポリマー又はp型半導体低分子化合物が挙げられる。なかでも、以下の理由により、活性層103が含有するp型半導体化合物は、p型半導体ポリマーであることが好ましい。p型半導体ポリマーを含有する活性層は、塗布法により容易に形成することができる一方で、光酸化に対する耐性が低く、光電変換素子の製造プロセス又は光電変換素子の使用環境下において、活性層の一部は酸化されやすく、変換効率が低下しやすい傾向がある。しかしながら、本発明においては、酸素透過性の低い正孔取り出し層を用いているために、p型半導体ポリマーを含有していても、活性層が酸化されにくい。そのため、容易に、耐候性の高い光電変換素子を製造することができる。
p型半導体ポリマーは、特段の制限はないが、下記式(3A)で表される繰り返し単位と式(3B)で表される繰り返し単位とを含むコポリマー(以下、コポリマー3と呼ぶ)が好ましい例として挙げられる。コポリマー3は、溶解性と結晶性を両方バランスよく有する点で好ましい。また、より長波長の光を吸収し、かつ光吸収性が高い点で好ましい。
式(3A)中、Aは周期表第16族元素から選ばれる原子を表し、R5はヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。
式(3B)中、Qは周期表第14族元素から選ばれる原子を表し、R6及びR7は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し、R6及びR7は互いに結合して環を形成していてもよい。
まず、式(3A)で表される繰り返し単位について説明する。Aは周期表第16族元素から選ばれる原子を表す。本明細書において周期表とは、IUPAC2005年推奨版をいう。具体的には、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子等である。なかでも、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。酸素原子は、開放電圧(Voc)が向上し得る点で好ましく、硫黄原子は、コポリマー同士の分子間相互作用が向上し得る点で好ましい。
R5はヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。R5の具体的な例としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよい芳香族基(アリール基)が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数は、通常1以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、特に好ましくは6以上であり、一方、通常30以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下である。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基、ラウリル基、シクロラウリル基、又は1−(2−エチル)ヘキシル−3−エチルへプチル基等が挙げられる。なかでも、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基、ラウリル基、シクロラウリル基、又は1−(2−エチル)ヘキシル−3−エチルへプチル基が好ましく、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、又は1−(2−エチル)ヘキシル−3−エチルへプチル基がより好ましい。
アルケニル基としては、炭素数が、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、一方、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。このようなアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基又はゲラニル基等である。好ましくは、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基又はドデセニル基であり、より好ましくは、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、又はデセニル基である。
芳香族基としては、炭素原子数が、通常2以上、一方、通常60以下、好ましくは20以下、より好ましくは14以下である。このような芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダニル基、インデニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、又はアズレニル基等の芳香族炭化水素基;チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、又はベンゾトリアゾリル基等の芳香族複素環基等が挙げられる。なかでも、フェニル基、ナフチル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、チアゾリル基、又はオキサゾリル基が好ましい。
R5をこれらの基とすることは、コポリマーIIの有機溶媒への溶解性が優れたものとなりやすく、塗布成膜プロセスにおいて有利となり得るために好ましい。さらに好ましくは、R5は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。直鎖状のアルキル基はポリマーの結晶性が向上し得るためにキャリア移動度が大きくなり得る点で好ましく、分岐状のアルキル基はポリマーの溶解性が向上し得る点で好ましい。また、R5が置換基を有していてもよい芳香族基であることは、コポリマーがより長波長の光を吸収し得る点、及び、ポリマーの結晶性が向上し得るために移動度が大きくなり得る点で好ましい。
次に、式(3B)で表される繰り返し単位について説明する。Qは周期表第14族元素から選ばれる原子を表す。具体的には、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はスズ原子が挙げられる。なかでも、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子が好ましい。より好ましくは炭素原子又はケイ素原子である。炭素原子は、結晶性が向上し得る点で好ましく、ケイ素原子は、溶解性が向上し得る点で好ましい。
R6及びR7は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基の例としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよい芳香族基(アリール基)が挙げられる。アルキル基、アルケニル基、及び芳香族基は、R5について挙げたものと同様のものであり得る。また、アルキル基、アルケニル基、及び芳香族基が有していてもよい置換基は、R5について挙げたものと同様のものであり得る。R6及びR7は互いに結合して環を形成していてもよい。
なかでも、R6及びR7の少なくともひとつが置換基を有していてもよいアルキル基又は芳香族基であることが好ましく、R6とR7との双方が置換基を有していてもよいアルキル基又は芳香族基であることがさらに好ましい。直鎖状のアルキル基は、ポリマーの結晶性が向上することにより移動度が大きくなり得る点で好ましく、分岐状のアルキル基は、ポリマーの溶解性が向上することにより塗布プロセスによる成膜が容易となり得る点で好ましい。R6及びR7の少なくともひとつがアルキル基であることは、コポリマー3がより長波長の光を吸収し得るという観点からも好ましい。これらの観点からは、R6及びR7の少なくともひとつが炭素数1以上20以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数6以上20以下のアルキル基であることが特に好ましい。芳香族基は、π電子間の相互作用により分子間の相互作用が向上するために移動度が大きくなる傾向がある点で好ましい。芳香族基はまた、式(3B)で表される縮合環骨格の安定性を向上させる傾向がある点で好ましい。
周期表第14族元素から選ばれる原子であるQ周辺の立体障害を大きくすることによりコポリマー3の耐久性を向上させるという観点からは、R6及びR7が、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基であることが好ましい。
また、R6及びR7の少なくともひとつがハロゲン原子であることも好ましい。このことは、コポリマー3の耐熱性、耐候性、耐化学薬品性又は撥水・撥油性等が向上する点で好ましい。
コポリマー3中の式(3A)で表される繰り返し単位の比率は、特段の制限は無いが、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。一方、通常99モル%以下、好ましくは95モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
コポリマー3中の式(3B)で表される繰り返し単位の比率は、特段の制限は無いが、通常1モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。一方、通常99モル%以下、好ましくは95モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
コポリマーII中の式(3A)で表される繰り返し単位に対する式(3B)で表される繰り返し単位の比は、特段の制限は無いが、通常0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上である。一方、通常100以下、好ましくは10以下、より好ましくは2以下である。
コポリマー3における、繰り返し単位(3A)及び(3B)の配列状態は、交互、ブロック及びランダムのいずれでもよい。すなわち、コポリマー3は、交互コポリマー、ブロックコポリマー、及びランダムコポリマーのいずれでもよい。好ましくは交互に配列しているものである。
式(3A)で表される繰り返し単位と式(3B)で表される繰り返し単位とを含むコポリマーの中でも、p型半導体化合物としてさらに好ましくは、下記式(4)で表される繰り返し単位を含むコポリマー(以下、コポリマー4と称す)である。式(4)で表される繰り返し単位を含むことにより、電荷分離状態の維持がより容易となり得る。
式(4)中、Aは周期表第16族元素から選ばれる原子を表し、R5はヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し、Qは周期表第14族元素から選ばれる原子を表し、R6及びR7は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し、R6及びR7は互いに結合して環を形成していてもよい。
式(4)中、A、Q、R5〜R7の具体例としては、式(3A)及び(3B)について説明したものと同様のものが挙げられる。溶解性及び光吸収性の観点から、Qがケイ素原子であり、Aが硫黄原子であることはより好ましい。
式(4)で表される繰り返し単位の比率は、特段の制限は無いが、通常10モル%以上、好ましくは25モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。上限は特になく、100モル%以下である。
また、コポリマー3又はコポリマー4は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。他の繰り返し単位としては、例えばチオフェンジイル基やチアゾールジイル基等の芳香族複素環等が挙げられる。
コポリマー3は、式(3A)及び(3B)で表される繰り返し単位のうちそれぞれ1種のみを含んでいてもよい。また、式(3A)で表される繰り返し単位を2種以上含んでいてもよいし、また、式(3B)で表される繰り返し単位を2種以上含んでいてもよい。コポリマー3が含む繰り返し単位の種類に制限はないが、通常8以下、好ましくは5以下である。同様に、コポリマー4は、式(4)で表される繰り返し単位のうち1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
コポリマー3の好ましい具体例を以下に示す。しかしながら、コポリマー3は以下の例示に限られない。以下の具体例において、C4H9及びC8H17は、直鎖のアルキル基を表す。また、Bu、Hex及びOctはそれぞれn−ブチル基、n−ヘキシル基及びn−オクチル基を表す。コポリマー3が複数の繰り返し単位を含む場合は、各繰り返し単位の数の比率は任意である。
コポリマー3は、長波長領域(600nm以上)に吸収を持つ。また、コポリマー3を用いた光電変換素子は、高い開放電圧(Voc)を示し、高い光電変換特性を示す。コポリマー3は、特にフラーレン化合物と組み合わせると、高い光電変換特性を示す。またコポリマー3は、HOMOエネルギー準位が低く酸化されにくい利点もある。
また、コポリマー3は高溶解性を示すために、塗布成膜が容易であるという利点がある。また、塗布成膜を行う際に溶媒の選択の幅が広がるために、成膜により適した溶媒を選択でき、形成された活性層の膜質を向上させることができる。このことも、コポリマー3を用いた光電変換素子が高い光電変換特性を示す一因であると考えられる。
コポリマー3のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常2.0×103以上、好ましくは5.0×103以上、より好ましくは1.0×104以上、さらに好ましくは3.0×104以上、よりさらに好ましくは5.0×104以上、特に好ましくは1.0×105以上である。一方、好ましくは1.0×107以下、より好ましくは5.0×106以下、さらにより好ましくは3.0×106以下、さらに好ましくは2.0×106以下、よりさらに好ましくは1.0×106以下、殊更に好ましくは7.0×105以下、特に好ましくは5.0×105以下である。光吸収波長を長波長化する観点、高い吸光度を実現する観点、及び相分離構造が最適化され得るという観点から、重量平均分子量がこの範囲にあることが好ましい。
コポリマー3のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。具体的には、カラムとして、PolymerLaboratories GPC用カラム(PLgel MIXED−B 10μm,内径7.5mm,長さ30cm)を2本直列に接続して使用し、ポンプとしてLC−10AT(島津製作所社製)、オーブンとしてCTO−10A(島津製作所社製)、検出器として示差屈折率検出器(島津製作所製:RID−10A)、及びUV−vis検出器(島津製作所製:SPD−10A)を用いることにより測定できる。測定対象のコポリマー(1mg)をクロロホルム(200mg)に溶解させ、得られた溶液1μLをカラムに注入する。移動相としてクロロホルムを用い、1.0mL/minの流速で測定を行う。解析にはLC−Solution(島津製作所)を用いる。
コポリマー3の数平均分子量(Mn)は、通常1.0×103以上、好ましくは3.0×103以上、より好ましくは5.0×103以上、さらに好ましくは1.0×104以上、よりさらに好ましくは1.5×104以上、殊更に好ましくは2.0×104以上、特に好ましくは2.5×104以上である。一方、好ましくは1.0×106以下、より好ましくは5.0×105以下、さらにより好ましくは2.0×105以下、特に好ましくは1.0×105以下である。光吸収波長を長波長化するという観点、高い吸光度を実現する観点、及び相分離構造が最適化され得るという観点から、数平均分子量がこの範囲にあることが好ましい。コポリマー3の数平均分子量は、重量平均分子量と同様の方法で測定することができる。
コポリマー3の分子量分布(PDI,(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)))は、通常1.0以上、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上である。一方、好ましくは20.0以下、より好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下である。コポリマーの溶解度が塗布に適した範囲になり得るという点で、分子量分布がこの範囲にあることが好ましい。コポリマー3の分子量分布は、重量平均分子量と同様の方法で測定することができる。
コポリマー3は、好ましくは光吸収極大波長(λmax)が470nm以上、より好ましくは480nm以上にあり、一方、通常1200nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下にある。また、半値幅が通常10nm以上、好ましくは20nm以上であり、一方、通常300nm以下である。また、コポリマー3の吸収波長領域は太陽光の吸収波長領域に近いほど望ましい。
コポリマー3の溶解度は、特に限定は無いが、好ましくは25℃におけるクロロベンゼンに対する溶解度が通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、一方、通常30質量%以下、好ましくは20質量%である。溶解性が高いことは、より厚い活性層を成膜することが可能となる点で好ましい。
コポリマー3は分子間で相互作用するものであることが好ましい。本明細書において、分子間で相互作用するということは、分子間でのπ−πスタッキングの相互作用等によってポリマー鎖間の距離が短くなることを意味する。相互作用が強いほど、コポリマーが高い移動度及び/又は結晶性を示す傾向がある。すなわち、分子間で相互作用するコポリマーにおいては分子間での電荷移動が起こりやすいため、活性層103内のコポリマー3とn型半導体化合物との界面で生成した正孔(ホール)を効率よく正孔取り出し層104及びアノード105へ輸送できると考えられる。
結晶性の測定方法としてはX線回折法(XRD)が挙げられる。本明細書において結晶性を有するとは、コポリマーの回折ピークがX線回折スペクトルに示されることを意味し、特に2θ=4.8°近傍に回折ピークを示すことが好ましい。結晶性を有することは、分子同士が配列した積層構造を有することを意味すると考えられ、より厚い活性層を得ることが容易となる傾向がある点で好ましい。X線回折法(XRD)は公知文献(X線結晶解析の手引き(応用物理学選書4))に記載の方法に基づいて行うことができる。
コポリマー3の正孔移動度は、通常1.0×10-7cm2/Vs以上、好ましくは1.0×10-6cm2/Vs以上、より好ましくは1.0×10-5cm2/Vs以上、特に好ましくは1.0×10-4cm2/Vs以上である。一方、コポリマー3の正孔移動度は通常1.0×104cm2/Vs以下であり、好ましくは1.0×103cm2/Vs以下であり、より好ましくは1.0×102cm2/Vs以下である。高い変換効率を得るためには、n型半導体化合物の移動度と、コポリマー3の移動度とのバランスが重要である。p型半導体化合物として用いられるコポリマー3の移動度と、n型半導体化合物の移動度とを近づける観点から、コポリマー3の正孔移動度がこの範囲にあることが好ましい。正孔移動度の測定方法としてはFET法が挙げられる。FET法は公知文献(特開2010−045186号公報)に記載の方法により行うことができる。
コポリマー3中の不純物は極力少ないほうが好ましい。特に、パラジウム、銅等の遷移金属触媒が残っていると、遷移金属の重原子効果による励起子トラップが生じるために電荷移動を阻害され、結果として光電変換素子の光電変換効率を低下させるおそれがある。具体的には、コポリマー3中の遷移金属触媒の濃度は、通常1000ppm以下、好ましくは500pm以下、より好ましくは100ppm以下である。一方、通常0ppmより大きく、1ppm以上であってもよく、3ppm以上であってもよい。
コポリマー3における末端残基(後述の式(IVA)及び式(IVB)でのX1及びX2)の残存量は、特段の制限は無いが、通常6000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、さらに好ましくは2000ppm以下、よりさらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは200ppm以下である。一方、通常0ppmより大きく、1ppm以上であってもよく、3ppm以上であってもよい。
特に、コポリマー3中のスズ原子の残存量は、通常5000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは2500ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、よりさらに好ましくは750ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下である。一方、通常0ppmより大きく、1ppm以上であってもよく、3ppm以上でであってもよい。スズ原子の残存量を5000ppm以下にすることは、熱分解しやすいアルキルスタニル基中のスズ原子の残存量が少なくなり、より高い安定性を得ることができるために、好ましい。
また、コポリマー3中のハロゲン原子の残存量は、通常5000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは2500ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、よりさらに好ましくは750ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下である。一方、通常0ppmより大きく、1ppm以上であってもよく、3ppm以上であってもよい。ハロゲン原子の残存量を5000ppm以下にすることは、光電変換素子の光電変換特性及び耐久性等が向上する傾向にあることから好ましい。
コポリマーの末端残基(後述のX1及びX2)の残存量は、炭素、水素及び窒素以外の元素量により測定することができる。測定手法として、得られたコポリマーの元素分析は、臭素イオン(Br-)及びヨウ素イオン(I-)についてはイオンクロマトグラフィー法又はICP質量分析法で実施することができ、パラジウム及びスズについてはICP質量分析法で実施することができる。
イオンクロマトグラフィー法は、公知文献(「イオンクロマトグラフィー」:共立出版株式会社)に記載されている方法により実施できる。例えば、イオンクロマトグラフ分析装置(Dionex社製 イオンクロマト分析装置 DX120型又はDX500型)により実施することができる。
ICP質量分析法は、公知文献(「プラズマイオン源質量分析」(学会出版センター))に記載されている方法により実施できる。具体的には、Pd及びSnについて、試料を湿式分解後、分解液中のPd,SnをICP質量分析装置(Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型)を用いて検量線法により定量することができる。又、Br-及びI-について、試料を試料燃焼装置(三菱化学アナリテック社製 試料燃焼装置 QF−02型)にて燃焼し、燃焼ガスを還元剤入りのアルカリ吸収液に吸収し、吸収液中のBr-及びI-をICP質量分析装置(Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型)を用いて検量線法により定量することができる。
コポリマー3の製造方法には特に限定はない。例えば、下記一般式(5A)で表される化合物と、下記一般式(5B)で表される化合物とを用いて公知の方法で製造することができる。好ましい方法としては、下記一般式(5A)で表される化合物と、下記一般式(5B)で表される化合物とを、必要であれば適当な触媒の存在下で、重合する方法が挙げられる。
式(5A)中、A及びR5は、式(3A)と同義である。式(5B)中、Q、R6及びR7は式(3B)と同義である。
X1及びX2は各々独立して、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、ホルミル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
コポリマー3の重合に用いる反応方法としては、Suzuki−Miyauraクロスカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、Yamamotoカップリング反応方法、Grignard反応方法、ヘック反応方法、薗頭反応方法、FeCl3等の酸化剤を用いる反応方法、電気化学的な酸化反応を用いる方法、又は適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による反応方法等が挙げられる。これらの中でも、Suzuki−Miyauraカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、Yamamotoカップリング反応方法、又はGrignard反応方法が、構造制御がしやすい点で好ましい。特に、Suzuki−Miyauraクロスカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、又はGrignard反応方法が、材料の入手しやすさ、反応操作の簡便さの点からも好ましい。これらの反応は、「クロスカップリング−基礎と産業応用−(CMC出版)」、「有機合成のための遷移金属触媒反応(辻二郎著:有機合成化学協会編)」、「有機合成のための触媒反応103(檜山為次郎著:東京化学同人)」等の公知文献の記載の方法に従って行うことができる。より具体的には、公知の特開2012−167241号公報に記載の方法を参照すればよい。
(他のp型半導体ポリマー)
コポリマー3又はコポリマー4以外に、p型半導体ポリマーとして使用し得る高分子有機半導体ポリマーは、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役コポリマー半導体化合物;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のコポリマー半導体化合物等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させたコポリマー半導体化合物も挙げられる。共役コポリマーは、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl.Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009、Solar Energy Materials & Solar Cells 96(2012) 155−159、国際公開第2011/016430号パンフレット又は日本国特開2012−191194号公報等の公知文献に記載されたコポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るコポリマーを用いることができる。なお、p型半導体化合物として使用される高分子有機半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
コポリマー3又はコポリマー4以外に、p型半導体ポリマーとして使用し得る高分子有機半導体ポリマーは、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役コポリマー半導体化合物;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のコポリマー半導体化合物等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させたコポリマー半導体化合物も挙げられる。共役コポリマーは、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl.Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009、Solar Energy Materials & Solar Cells 96(2012) 155−159、国際公開第2011/016430号パンフレット又は日本国特開2012−191194号公報等の公知文献に記載されたコポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るコポリマーを用いることができる。なお、p型半導体化合物として使用される高分子有機半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
<1−3−3.n型半導体化合物>
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全弗化物;単層カーボンナノチューブ、n型ポリマー等が挙げられる。
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全弗化物;単層カーボンナノチューブ、n型ポリマー等が挙げられる。
その中でも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はn型ポリマーがより好ましく、フラーレン化合物が特に好ましい。これらの化合物を一種又は二種以上含んでもよく、n型ポリマーを一種又は二種以上含んでもよい。
以下、好ましいフラーレン化合物について説明する。
(フラーレン化合物)
本発明のフラーレン化合物としては、一般式(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)で表される部分構造を有することが好ましい。
本発明のフラーレン化合物としては、一般式(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)で表される部分構造を有することが好ましい。
式中、FLNとは、閉殻構造を有する炭素クラスターであるフラーレンを表わす。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数であれば何でも良い。フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスターなどが挙げられる。その中でも、C60又はC70が好ましい。フラーレンとしては、一部のフラーレン環上の炭素―炭素結合が切れていても良い。又、一部の炭素原子が、他の原子に置き換えられていても良い。さらに、金属原子、非金属原子あるいはこれらから構成される原子団をフラーレンケージ内に内包していても良い。
a、b、c及びdは整数であり、a、b、c及びdの合計が通常1以上であり、一方、通常5以下であり、好ましくは3以下である。(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)中の部分構造は、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環に付加される。一般式(n1)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−R6と−(CH2)Lとがそれぞれ付加している。一般式(n2)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R10)(R11)−N(R12)−C(R13)(R14)が付加し5員環を形成してなる。一般式(n3)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R15)(R16)−C−C−C(R17)(R18)が付加し6員環を形成してなる。一般式(n4)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して−C(R19)(R20)が付加し3員環を形成してなる。Lは1〜8の整数である。Lとして好ましくは1以上4以下の整数であり、さらに好ましくは1以上2以下の整数である。
一般式(n1)中のR6は置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。
上記アルキル基、アルコキシ基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子又はシリル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。シリル基としては、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基又はトリアルキルシリル基が好ましく、ジアルキルアリールシリル基がより好ましく、ジメチルアリールシリル基がさらに好ましい。
一般式(n1)中のR7〜R9は各々独立して置換基を表し、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基は、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基又は炭素数3〜10の芳香族基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1〜14のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が更に好ましい。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n2)中のR10〜R14は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。アルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基又はオクチル基であり、より好ましくはメチル基である。芳香族基は、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に限定は無いが、好ましくはフッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基である。アルキル基にはフッ素原子が置換されていてもよい。さらに好ましくは炭素数1〜14のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても良いが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のAr1は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基又はキノキサリル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基又はフリル基である。有していても良い置換基として限定は無いが、有していてもよい置換基として限定は無いが、フッ素原子、塩素原子、水酸基、シアノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基で置換してもよいアミノ基、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基、炭素数1〜14のアルキルカルボニル基、炭素数1〜14のアルキルチオ基、炭素数1〜14のアルケニル基、炭素数1〜14のアルキニル基、エステル基、アリールカルボニル基、アリールチオ基、アリールオキシ基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の複素環基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基、エステル基、炭素数1〜14のアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基がより好ましい。炭素数1〜14のアルキル基にはフッ素が置換されていても良い。
炭素数1〜14のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。炭素数1〜14のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシル基が好ましい。炭素数1〜14のアルキルカルボニル基としては、アセチル基が好ましい。
エステル基としては、メチルエステル基又はn−ブチルエステル基が好ましい。アリールカルボニル基としては、ベンゾイル基が好ましい。
置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。置換基が複数の場合、その種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のR15〜R18は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基または置換基を有していてもよいアルキルチオ基である。R15またはR16は、R17またはR18との間のいずれか一方と環を形成してもよい。環を形成する場合における構造は、例えば、芳香族基が縮合したビシクロ構造である下記一般式(n5)で示すことができる。
一般式(n5)中におけるfはcと同様であり、Xは、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、アルキレン基又はアリーレン基である。アルキレン基としては炭素数1〜2が好ましい。アリーレン基としては炭素数5〜12が好ましく、例えばフェニレン基である。アミノ基は、メチル基やエチル基等の炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
アルキレン基は、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
アリーレン基は、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
一般式(n4)中のR19〜R20は各々独立して、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数1〜12のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数1〜12のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基には特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基のアルコキシ基としては、炭素数1〜14のアルコキシ基又はフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜14の炭化水素基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又はn−ブトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基又は炭素数1〜14のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜14のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が特に好ましい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でもよく、好ましくは同一である。
一般式(n4)の構造として好ましくは、R19、R20が共にアルコキシカルボニル基であるか、R19、R20が共に芳香族基であるか又はR19が芳香族基でかつR20が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基である。
なお、本発明に用いられるn型半導体化合物は一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
なお、本発明に用いられるn型半導体化合物は一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
フラーレン化合物は、塗布法に適用できるようにするためには、当該フラーレン化合物自体が液状で塗布可能であるか、当該フラーレン化合物が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲をあげると、25℃でのトルエンに対する溶解度が、通常0.1質量%以上、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上である。フラーレン化合物の溶解度が0.1質量%以上であることで、フラーレン化合物の分散安定性が増加し、凝集、沈降、分離等を起こりにくくなるため好ましい。
本発明のフラーレン化合物の溶媒は、非極性有機溶媒であれば、特段に制限はないが、非ハロゲン系溶媒が好ましい。ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒でも可能であるが、環境負荷の面等から代替が求められている。
非ハロゲン系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類が挙げられる。その中でも好ましくはトルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼンなどである。
非ハロゲン系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類が挙げられる。その中でも好ましくはトルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼンなどである。
<1−4. 一対の電極(101,105)>
上述の通り、本発明に係る光電変換素子は、カソード101とアノード105からなる一対の電極を有する。カソード101は、光吸収により生じた電子を捕集する機能を有する。アノード105は、光吸収により生じた正孔を捕集する機能を有する。なお、一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透光性を有する透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層103に光を到達させるために好ましい。光の透過率は、通常の分光光度計で測定できる。
上述の通り、本発明に係る光電変換素子は、カソード101とアノード105からなる一対の電極を有する。カソード101は、光吸収により生じた電子を捕集する機能を有する。アノード105は、光吸収により生じた正孔を捕集する機能を有する。なお、一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透光性を有する透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層103に光を到達させるために好ましい。光の透過率は、通常の分光光度計で測定できる。
カソード101は、一般には仕事関数がアノードよりも小さい値を有する導電性材料で構成され、活性層103で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
カソード101の材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は小さい仕事関数を有する材料であるため、好ましい。また、後述するように、電子取り出し層102の材料として酸化亜鉛のようなn型半導体材料で導電性を有するものを用いる場合、ITOのような、アノードに適した大きい仕事関数を有する材料を、カソード101の材料として用いることもできる。電極保護の観点から、カソード101の材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、カルシウム又はインジウム等の金属及びこれらの金属を用いた合金である。
カソード101の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。カソード101の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソード101の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。カソード101を透明電極として用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
カソード101のシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソード101の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等がある。
アノード105とは、一般には仕事関数がカソードよりも大きい導電性材料で構成され、活性層103で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノード105の材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金等が挙げられる。これらの物質は大きい仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、この導電性高分子材料の仕事関数が大きいことから、上記のような大きい仕事関数の材料でなくとも、アルミニウムやマグネシウム等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。
ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性高分子材料を、アノードの材料として使用することもできる。
アノード105が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化錫等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOを用いることが好ましい。
アノード105の膜厚に特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノード105の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノード105の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。アノード105が透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。
アノード105のシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
アノード105の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法が挙げられる。
さらに、カソード101及びアノード105は、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、カソード101及びアノード105に対して表面処理を行うことにより、特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
<1−5. 基材(106)>
光電変換素子107は、通常は支持体となる基材106上に形成される。すなわち、基材上に、一対の電極101,105と、活性層103とが形成される。もっとも、本発明に係る光電変換素子は基材106を有さなくてもよい。
光電変換素子107は、通常は支持体となる基材106上に形成される。すなわち、基材上に、一対の電極101,105と、活性層103とが形成される。もっとも、本発明に係る光電変換素子は基材106を有さなくてもよい。
基材106の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材106の材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル若しくはポリエチレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン又はエポキシ樹脂等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;等が挙げられる。
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
基材106の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。また、基材106の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材の膜厚が5μm以上であることは、光電変換素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ重量が重くならないために好ましい。基材106の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基材106の膜厚が0.01mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、ガラス基材106の膜厚が0.5cm以下であることは、重量が重くならないために好ましい。
<1.6.光電変換素子の製造方法>
図1に示される構成を有する光電変換素子107は、各層について説明した上述の方法に従い、基材106上に、カソード101、電子取り出し層102、活性層103、正孔取り出し層104、及びアノード105を順次積層することにより作製することができる。また、基材106上に、アノード105と、正孔取り出し層104と、活性層103と、電子取り出し層102と、カソード101と、がこの順に配置された光電変換素子に関しても、この順に各層を形成することにより作製することができる。
図1に示される構成を有する光電変換素子107は、各層について説明した上述の方法に従い、基材106上に、カソード101、電子取り出し層102、活性層103、正孔取り出し層104、及びアノード105を順次積層することにより作製することができる。また、基材106上に、アノード105と、正孔取り出し層104と、活性層103と、電子取り出し層102と、カソード101と、がこの順に配置された光電変換素子に関しても、この順に各層を形成することにより作製することができる。
カソード101及びアノード105を積層した後に、光電変換素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する)。
アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことは、光電変換素子の各層間の密着性、例えば電子取り出し層102とカソード101及び/又は電子取り出し層102と活性層103の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上し得る。また、アニーリング処理工程により、活性層の自己組織化が促進され得る。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、活性層103内の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内で段階的な加熱を行ってもよい。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱する方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
アニーリング処理工程により光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上し得るものの、アニーリング処理工程中にフラーレン化合物が凝集し、相分離が促進されるために、光電変換効率が低下することがある。しかしながら活性層103は添加剤を含有しているため、添加剤によってアニーリング処理工程中のフラーレン化合物の凝集が抑制される。このように、活性層103に添加剤を含有させることにより、アニーリング処理工程を行った後での光電変換効率がより高い光電変換素子107が得られることができる。
本発明に係る光電変換素子を構成する各層は、特段の制限はなく、シート・ツー・シート(万葉)方式、又はロール・ツー・ロール方式で形成することができるが、下記の理由により、ロール・ツー・ロール方式で形成することが好ましい。
ロール・ツー・ロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロール・ツー・ロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、シート・ツー・シート方式に比べて量産化に適した生産方式である。
なお、ロール・ツー・ロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロール・ツー・ロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径は、通常5m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下であり、通常10cm以上、好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径は、通常4m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下であり、通常1cm以上、好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、更に好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であるとロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であると、以下の各工程で成膜される層が、曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅は、通常5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上であり、通常5m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であるとロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であると光電変換素子の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
<1−7.光電変換特性>
光電変換素子107の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子107にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
光電変換素子107の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子107にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
本発明に係る光電変換素子の光電変換効率は、特段の制限はないが、通常1%以上、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
また、光電変換素子の耐久性を測定する方法としては、光電変換素子を大気暴露する前後での、光電変換効率の維持率を求める方法が挙げられる。
(維持率)=(大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率)
(維持率)=(大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率)
光電変換素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、1週間大気暴露する前後での光電変換効率の維持率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。
<2.本発明に係る太陽電池>
上述の実施形態に係る光電変換素子は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。図2は、本発明の一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、光電変換素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、薄膜太陽電池は、通常、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、光電変換素子6が発電する。なお、薄膜太陽電池は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、各構成部材を任意で選択して設ければよい。
上述の実施形態に係る光電変換素子は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。図2は、本発明の一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、光電変換素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、薄膜太陽電池は、通常、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、光電変換素子6が発電する。なお、薄膜太陽電池は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、各構成部材を任意で選択して設ければよい。
薄膜太陽電池を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2011/016430号パンフレット又は日本国特開2012−191194号公報等の公知文献に記載のものを使用することができる。
本発明に係る太陽電池、特に上述した薄膜太陽電池14の用途に特段の制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等が挙げられる。
本発明に係る太陽電池、特に薄膜太陽電池はそのまま用いてもよいし、例えば基材上に太陽電池を設置して太陽電池モジュールとして用いてもよい。例えば、図3に示すように、基材12上に薄膜太陽電池14を備えた太陽電池モジュール13として、使用場所に設置して用いることができる。基材12については、周知技術を用いることができ、例えば、国際公開第2011/016430号パンフレット又は日本国特開2012−191194号公報等に記載のものを用いることができる。例えば、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けることにより、太陽電池モジュール13として太陽電池パネルを作製することができる。
以下に、実施例により本発明の実施形態を説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
<合成例1:コポリマーAの合成>
<合成例1:コポリマーAの合成>
モノマーとして、公知文献(J.Am.Chem.Soc.2011,133,10062)に記載の方法を参考にして得られた1,3−ジブロモ−5−オクチル−4H−チエノ[3,4−c]ピロール−4,6−(5H)−ジオン(化合物E1,86mg,0.204mmol)、公知文献(J.Am.Chem.Soc.2011,133,10062)に記載の方法を参考にして得られた4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−2,6−ビス(トリメチルスズ)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール(化合物E2,80mg,0.108mmol)、及び公知文献(Chem.Commun.,2011,47,4920−4922)に記載の方法を参考にして得られた4,4−ジ−n−オクチル−2,6−ビス(トリメチルスズ)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール(化合物E3,80mg,0.108mmol)を用いて、公知文献(J.Am.Chem.Soc.2011,133,10062)に記載の方法を参考にしてコポリマーAを合成した。
なお、得られたコポリマーAの重量平均分子量Mw及び分子量分布PDIを、下記の条件で測定したところ、それぞれ、3.69×105及び9.4であった。
なお、得られたコポリマーAの重量平均分子量Mw及び分子量分布PDIを、下記の条件で測定したところ、それぞれ、3.69×105及び9.4であった。
(重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法)
ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。分子量分布(PDI)は、Mw/Mnを表す。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定は以下の条件で行った。
ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。分子量分布(PDI)は、Mw/Mnを表す。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定は以下の条件で行った。
カラム:PolymerLaboratories GPC用カラム(PLgel MIXED−B 10μm,内径7.5mm,長さ30cm)を2本直列に接続して使用
ポンプ:LC−10AT(島津製作所社製)
オーブン:CTO−10A(島津製作所社製)
検出器:示差屈折率検出器(島津製作所社製,RID−10A)及びUV−vis検出器(島津製作所社製,SPD−10A)
サンプル:試料1mgをクロロホルム(200mg)に溶解させた液1μL
移動相:クロロホルム
流速:1.0mL/min
解析:LC−Solution(島津製作所社製)
ポンプ:LC−10AT(島津製作所社製)
オーブン:CTO−10A(島津製作所社製)
検出器:示差屈折率検出器(島津製作所社製,RID−10A)及びUV−vis検出器(島津製作所社製,SPD−10A)
サンプル:試料1mgをクロロホルム(200mg)に溶解させた液1μL
移動相:クロロホルム
流速:1.0mL/min
解析:LC−Solution(島津製作所社製)
[活性層形成用塗布液の作製]
p型半導体化合物として合成例1で得られたコポリマーA、及びn型半導体化合物としてC60PCBMとC70PCBMの混合物(フロンティアカーボン社製 NanomSpectra−E123)を、質量比が1:4となるように混合し、混合物が6.00質量%の濃度となるように窒素雰囲気中でオルトキシレンとテトラリン(テトラヒドロナフタレン)との混合溶媒(質量比9:1)に溶解させた。この溶液をホットスターラー上で80℃、90分間撹拌混合した。撹拌混合後の溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過することにより、活性層形成用塗布液であるインクJ1を得た。
p型半導体化合物として合成例1で得られたコポリマーA、及びn型半導体化合物としてC60PCBMとC70PCBMの混合物(フロンティアカーボン社製 NanomSpectra−E123)を、質量比が1:4となるように混合し、混合物が6.00質量%の濃度となるように窒素雰囲気中でオルトキシレンとテトラリン(テトラヒドロナフタレン)との混合溶媒(質量比9:1)に溶解させた。この溶液をホットスターラー上で80℃、90分間撹拌混合した。撹拌混合後の溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過することにより、活性層形成用塗布液であるインクJ1を得た。
[正孔取り出し層形成用塗布液Q1の作製]
PEDOT:PSSの固形分が1.5質量%である水溶液(AI4083,ヘレウス社製)にアセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンEXP.4200(日信化学社製)を2質量%加えた。この溶液を室温で一時間撹拌し、撹拌混合後の溶液を孔径0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)製フィルターでろ過することにより、正孔取り出し層形成用塗布液をQ1を得た。
PEDOT:PSSの固形分が1.5質量%である水溶液(AI4083,ヘレウス社製)にアセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンEXP.4200(日信化学社製)を2質量%加えた。この溶液を室温で一時間撹拌し、撹拌混合後の溶液を孔径0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)製フィルターでろ過することにより、正孔取り出し層形成用塗布液をQ1を得た。
[正孔取り出し層形成用塗布液Q2の作製]
同様にPEDOT:PSS水溶液(AI4083,ヘレウス社製)にオルフィンEXP.4200(日信化学社製)を2質量%添加し、更に重合度500、ケン化度82のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 JL−05E)の10質量%水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、PEDOT:PSS/JL−05Eの質量比が5/1の正孔取り出し層形成用塗布液Q2を得た。
同様にPEDOT:PSS水溶液(AI4083,ヘレウス社製)にオルフィンEXP.4200(日信化学社製)を2質量%添加し、更に重合度500、ケン化度82のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 JL−05E)の10質量%水溶液を添加し、室温で1時間撹拌し、PEDOT:PSS/JL−05Eの質量比が5/1の正孔取り出し層形成用塗布液Q2を得た。
[正孔取り出し層形成用塗布液Q3の作製]
同様にPEDOT:PSS水溶液(AI4083,ヘレウス社製)にオルフィンEXP.4200(日信化学社製)を2質量%添加し、更に重合度500、ケン化度72のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 JR−05)の10質量%水溶液を添加し、室温で一時間撹拌することにより、PEDOT:PSS/JR−05の質量比が5/2の正孔取り出し層形成用塗布液Q3を得た。
同様にPEDOT:PSS水溶液(AI4083,ヘレウス社製)にオルフィンEXP.4200(日信化学社製)を2質量%添加し、更に重合度500、ケン化度72のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 JR−05)の10質量%水溶液を添加し、室温で一時間撹拌することにより、PEDOT:PSS/JR−05の質量比が5/2の正孔取り出し層形成用塗布液Q3を得た。
[電子取出し層成膜用塗布液E1の製造方法]
ジアクリル酸亜鉛(日本触媒社製,800mg,3.86mmol)及び酢酸リチウム二水和物(和光純薬工業社製,亜鉛原子に対して2原子%,7.9mg,0.078mmol)をエタノール(和光純薬工業社製,11.1mL)とエチレングリコール(和光純薬工業社製,0.4mL)に溶解することで、無色透明のインク(E1)を調製した。
ジアクリル酸亜鉛(日本触媒社製,800mg,3.86mmol)及び酢酸リチウム二水和物(和光純薬工業社製,亜鉛原子に対して2原子%,7.9mg,0.078mmol)をエタノール(和光純薬工業社製,11.1mL)とエチレングリコール(和光純薬工業社製,0.4mL)に溶解することで、無色透明のインク(E1)を調製した。
<実施例1>
厚さ125μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)基板に酸化インジウムスズ(ITO)と銀(Ag)とを下部電極として3層(ITO−Ag−ITO)積層させたPEN−下部電極積層体(透過率80%以上でシート抵抗15Ω/□以下)を、キーエンス社レーザーマーカー(MDV9920A)を用い、パターニングした。
次に、洗浄したPEN−下部電極積層体に、大気雰囲気下、電子取り出し層形成用塗布液であるインク(E1)をスピンコート塗布し、大気雰囲気下、150℃、10分間の加熱処理を行うことで、約40nmの酸化亜鉛含有層からなる電子取り出し層を形成した。
厚さ125μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)基板に酸化インジウムスズ(ITO)と銀(Ag)とを下部電極として3層(ITO−Ag−ITO)積層させたPEN−下部電極積層体(透過率80%以上でシート抵抗15Ω/□以下)を、キーエンス社レーザーマーカー(MDV9920A)を用い、パターニングした。
次に、洗浄したPEN−下部電極積層体に、大気雰囲気下、電子取り出し層形成用塗布液であるインク(E1)をスピンコート塗布し、大気雰囲気下、150℃、10分間の加熱処理を行うことで、約40nmの酸化亜鉛含有層からなる電子取り出し層を形成した。
続けて、電子取り出し層上に、活性層形成用塗布液であるインクJ1を、スピンコータで塗布し、風乾することで乾燥膜厚350nmの活性層を形成した。次に、正孔取り出し層形成用塗布液であるインクQ2を活性層上にスピンコータで塗布し、乾燥膜厚が300nmの正孔取り出し層を設けた。正孔取り出し層形成後、150℃で10分間加熱処理(アニール)を行った。アニール後、インジウム亜鉛酸化物(IZO)/銀/IZOを積層成膜し、上部電極層を形成し、光電変換素子A1を作製した。得られた光電変換素子A1の変換効率を以下の方法により測定した。得られた結果を表1に示す。
[変換効率の測定]
得られた光電変換素子を10分間光照射後、ソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、光電変換効率(PCE)を測定した。
得られた光電変換素子を10分間光照射後、ソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、光電変換効率(PCE)を測定した。
また、上部電極層を形成する前に、蛍光灯下で4時間の光曝露を行った以外は、光電変換素子A1と同様の方法で、光電変換素子A2を作製し、同様の方法で変換効率を測定した。得られた結果を表1に示す。また、PCE変化率(4時間光曝露有りの素子のPCE/光曝露無しの素子のPCE×100)を表1に示す。
<実施例2>
正孔取り出し層形成用塗布液Q2の代わりに正孔取り出し層形成用塗布液Q3を用いた以外は、実施例1の光電変換素子A1と同様の方法で光電変換素子B1を作製し、変換効率を測定した。また、正孔取り出し層形成用塗布液Q2の代わりに正孔取り出し層形成用塗布液Q3を用いた以外は、実施例1の光電変換素子A2と同様の方法で、光電変換素子B2を作製し、変換効率を測定した。得られた結果を表1に示す。
正孔取り出し層形成用塗布液Q2の代わりに正孔取り出し層形成用塗布液Q3を用いた以外は、実施例1の光電変換素子A1と同様の方法で光電変換素子B1を作製し、変換効率を測定した。また、正孔取り出し層形成用塗布液Q2の代わりに正孔取り出し層形成用塗布液Q3を用いた以外は、実施例1の光電変換素子A2と同様の方法で、光電変換素子B2を作製し、変換効率を測定した。得られた結果を表1に示す。
<比較例1>
正孔取り出し層形成用塗布液Q2の代わりに正孔取り出し層形成用塗布液Q1を用いた以外は、実施例1の光電変換素子A1と同様の方法で光電変換素子C1を作製し、変換効率を測定した。また、正孔取り出し層形成用塗布液Q2の代わりに正孔取り出し層形成用塗布液Q1を用いた以外は、実施例1の光電変換素子A2と同様の方法で、光電変換素子C2を作製し、変換効率を測定した。得られた結果を表1に示す。
正孔取り出し層形成用塗布液Q2の代わりに正孔取り出し層形成用塗布液Q1を用いた以外は、実施例1の光電変換素子A1と同様の方法で光電変換素子C1を作製し、変換効率を測定した。また、正孔取り出し層形成用塗布液Q2の代わりに正孔取り出し層形成用塗布液Q1を用いた以外は、実施例1の光電変換素子A2と同様の方法で、光電変換素子C2を作製し、変換効率を測定した。得られた結果を表1に示す。
比較例1の結果から従来の光電変換素子は、その製造プロセス中に、光曝露を行うと素子の変換効率が大幅に低下していることが分かる。一方で、導電性化合物とポリビニルアルコール系化合物を含有する正孔取り出し層を用いた実施例1及び実施例2の光電変換素子は、製造プロセス中に、光曝露を行っても、変換効率の低下は少なかった。この結果から、当該正孔取り出し層を用いることで、その製造プロセス中に、長時間、光が照射されても光劣化の少ない耐光性の高い光電変換素子を提供することができることが判明した。また、これらの結果から、製造された光電変換素子を太陽電池として用いても、その使用環境下において、長時間光が照射されても、光劣化の少ない高い耐光性が期待できる。
101 カソード
102 電子取り出し層
103 活性層
104 正孔取り出し層
105 アノード
106 基材
107 光電変換素子
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
102 電子取り出し層
103 活性層
104 正孔取り出し層
105 アノード
106 基材
107 光電変換素子
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
Claims (7)
- 基材上に、一対の電極と、前記一対の電極間に配置された活性層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と前記活性層との間に配置された正孔取り出し層と、を有する光電変換素子であって、
前記正孔取り出し層が、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有することを特徴とする光電変換素子。 - 前記導電性化合物に対する前記ポリビニルアルコール系化合物の占める質量比率が、0.05以上1以下であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
- 前記式(1)中、R1、R2及びR3がそれぞれ水素原子であることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子を有する太陽電池。
- 請求項5に記載の太陽電池を有する太陽電池モジュール。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、導電性化合物と、ポリビニルアルコール系化合物と、を含有する塗布液を、前記活性層上に塗布することにより、前記正孔取り出し層を形成する工程を含むことを特徴とする光電変換素子の製造方法。
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
CN115094458A (zh) * | 2021-05-26 | 2022-09-23 | 山东省科学院能源研究所 | 一种Cu掺杂NiO空穴传输层薄膜与制备方法及应用 |
WO2023132136A1 (ja) * | 2022-01-07 | 2023-07-13 | パナソニックホールディングス株式会社 | 光電変換モジュール |
-
2014
- 2014-03-27 JP JP2014066830A patent/JP2015191965A/ja active Pending
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WO2023132136A1 (ja) * | 2022-01-07 | 2023-07-13 | パナソニックホールディングス株式会社 | 光電変換モジュール |
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