本発明の一実施形態としてのバリアフィルムの断面模式図である。
本発明の一実施形態としての太陽電池モジュールの断面模式図である。
以下、本発明について実施形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、これらの内容に限定されない。
<1.バリアフィルム>
通常、半導体デバイスは、水及び酸素に弱いために、水や酸素の影響を受けて、性能が低下する傾向がある。そこで、半導体デバイスに、バリアフィルムを設けることにより、半導体バイスの性能が低下するのを防ぐことができる。
本発明の一実施形態に係るバリアフィルムは、図1に示すように、基材フィルム1の片面に無機酸化膜2を有する第1のフィルム6と、エポキシ系樹脂含有層3と、基材フィルム4の片面に無機酸化膜5を有する第2のフィルム7と、を有し、該第1のフィルム6の無機酸化膜2と、前記第2のフィルム7の無機酸化膜5とが、それぞれ、エポキシ系樹脂含有層5と隣接して積層された構成を有する。より具体的には、基材フィルム1と、無機酸化膜2と、エポキシ系樹脂含有層3と、無機酸化膜4と、基材フィルム5と、がこの順に積層された構成を有する。このように、図1に示されるバリアフィルムは、使用する無機酸化膜及び基材フィルムにもよるが、エポキシ系樹脂含有層3を介して対称構造とすることができるために、反りが少なく高耐性のバリアフィルムの達成が可能となる。
後述するように、エポキシ系樹脂含有層3は、第1のフィルム6と第2のフィルム7とを接着させる接着剤層として機能する。通常、エポキシ系樹脂接着剤は、熱硬化型の接着剤として使用されることが好ましく、第1のフィルムと第2のフィルムとを接着させる際に、フィルム表面上に、当該接着剤の前駆体組成物を塗布、又は接着シートを貼り付けて、熱硬化させることで、第1のフィルムと第2のフィルムとを接着させる。
本発明に係るバリアフィルムが当該構成を備えることで、高いバリア性能を付与することができる。この理由は明らかではないが、下記の理由が考えられる。
通常、バリアフィルムは、樹脂基材上にバリア性能を備えた無機膜等を成膜して形成される。なかでも、高透明であり、かつ防湿性が高い傾向があり、さらには高速製膜にも適しているために、無機膜のなかでも無機酸化膜を用いることが好ましい。
一方、無機酸化膜は、緻密な構造にすることが困難であるために、形成された無機酸化膜には、多数のピンホールを含む膜欠陥が形成される場合がある。このように膜欠陥が多数発生すると、バリアフィルムのバリア性能は低くなってしまう。しかしながら、熱硬化の際のエポキシ系樹脂含有層の硬化収縮率は、例えば、ウレタン系樹脂接着剤等の他の接着剤と比較して大きい傾向があるため、本発明のように、第1のフィルムと第2のフィルムの接着剤層として、エポキシ系樹脂含有層を用いれば、熱硬化の際に、エポキシ系樹脂含有層がこれらの無機酸化膜に形成されたピンホール等の膜欠陥を埋め、無機酸化膜の欠陥を補うことができる。その結果、バリアフィルムのバリア性能を向上させることができると考えられる。
第1のフィルム6の基材フィルム1及び第2のフィルム7の基材フィルム5のフィルム材料は、特段の制限はなく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、生分解性樹脂等が挙げられる。なかでも、無機酸化膜を形成する際の耐熱性の観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)が特にが好ましい。
基材フィルム1、2の厚さは特段の制限は無いが、耐久性の観点から5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、フレキシブル性を担保するためには、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。
基材フィルム1及び5に、それぞれ無機酸化膜2、4を設けることで、水分や酸素の侵入防止の機能を付与することができる。無機酸化膜の形成材料は、特段の制限はないが、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等が挙げられる。なお、無機酸化膜2、4はそれぞれ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。この場合、各無機酸化膜層は、同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。なお、バリアフィルムをシースルーの太陽電池モジュールに用いる場合、意匠性の観点からバリアフィルムは透明であることが好ましいために、無機酸化膜2、4の形成材料は、酸化珪素又は酸化窒化珪素が好ましい。
無機酸化膜2、5の厚さは特段の制限はないが、バリア性の向上のために、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがさらに好ましく、一方、割れ等を防ぐために、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
無機酸化膜2、4を基材フィルムに形成する方法は特段の制限はなく、使用する材料に合わせて任意の方法で形成すればよい。具体的には、蒸着法、コーティング法等の方法がいずれも使用できる。なかでも、バリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、化学気相蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)等の方法が含まれる。物理気相蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられ、化学気相蒸着法としては、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。なかでも、無機酸化膜は高速で均一な製膜が可能になることから、真空蒸着法により形成される真空蒸着膜であることが好ましい。
バリアフィルムは、第1のフィルム6と第2のフィルム7の間にエポキシ系樹脂含有層3を有し、エポキシ系樹脂含有層3は、第1のバリアフィルム6と第2のバリアフィルム7とを接着する接着剤層として機能する。
エポキシ系樹脂含有層3は、特段の制限はないが、上述の通り、熱により硬化される熱硬化型接着剤であることが好ましい。すなわち、後述するが、バリアフィルムは、第1のフィルム6と、第2のフィルム7と、をエポキシ系樹脂含有層の前駆体組成物により熱硬化させて、バリアフィルムを形成することが好ましい。
エポキシ系樹脂含有層3の前駆体組成物は、特段の制限はないが、主剤として、末端にエポキシ基を有するプレポリマーであるポリエポキシ樹脂と、硬化剤を含有することが好ましい。
このようなポリエポキシ樹脂としては、特段の制限はないが、プレポリマー鎖が芳香族系であるものが好ましい。このような例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1、3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/またはグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。これらのなかでも、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
硬化剤としては、特段の制限はないが、アミン系化合物であることが好ましく、なかでも、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンが好ましい。
該前駆体組成物は、上述の樹脂及び硬化剤以外に、他の化合物を含有していてもよい。具体的には、エポキシ系樹脂含有層3のガスバリア性、耐衝撃性、耐熱性等の諸性能を向上させるために、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤を含有していても良い。そのため、エポキシ系樹脂含有層3の前駆体組成物は、このような充填剤を含有していてもよい。また、エポキシ系樹脂含有層3の透明性を考慮した場合には、このような無機充填剤が平板状であることが好ましい。
また、エポキシ系樹脂含有層3は、必要に応じて、酸素捕捉機能を有する化合物等を含有していてもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。すなわち、前駆体組成物に、あらかじめ、このような化合物を含有させておいてもよい。
また、エポキシ系樹脂含有層3の前駆体組成物は有機溶剤を含有していてもよい。このような溶剤としては、特段の制限はなく、例えば、メタノール、酢酸エチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
エポキシ系樹脂含有層前駆体組成物中の全固形成分に対するポリエポキシ樹脂の割合は、特段の制限はないが、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、一方、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましい。なお、ポリエポキシ樹脂を2種以上併用する場合、それらの合計量の割合が上記の範囲内であることが好ましい。なお、ポリエポキシ樹脂を2種以上併用する場合、それらの合計量の割合が上記の範囲内であることが好ましい。
エポキシ系樹脂含有層前駆体組成物中の全固形成分に対する硬化剤の割合は、特段の制限はなく、上記ポリエポキシ樹脂及び他の成分等の量を考慮して選択する必要があるが、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、一方、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下である。
エポキシ系樹脂含有層前駆体組成物中の全固形成分に対するポリエポキシ樹脂及び硬化剤以外の固形成分の割合は、特段の制限はないが、0.01質量部以上であることが好ましく、10質量部以下であることが好ましい。
エポキシ系樹脂含有層3の厚さは特段の制限はないが、十分な密着力を保持するために、4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、7μm以上であることが特に好ましく、一方、該エポキシ系樹脂含有層3の側面から水分や酸素の侵入量を低減するために、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、35μm以下であることが特に好ましい。
バリアフィルムの水蒸気透過率は、限定されるわけではないが、40℃90%RHの環境下における水蒸気透過率が1×10-1g/m2/day以下であることが好ましく、1×10-2g/m2/day以下であることがより好ましく、1×10-3g/m2/day以下であることが更に好ましく、1×10-4g/m2/day以下であることが中でも好ましく、1×10-5g/m2/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10-6g/m2/day以下であることが特に好ましい。水蒸気の透過を抑制するほど、光デバイスの劣化が抑えられるので、長期にわたって、性能劣化の少ない高耐久性を備えた光デバイスを提供することができる。水蒸気透過率は、JIS K7129に準じた感湿センサ、赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置による測定、カップ法(JIS Z0208)により、40℃90%RH環境で測定することができる。
バリアフィルムの酸素透過率は、限定されるわけではないが、温度23℃、湿度0%の環境下における酸素透過率が、5×10-1g/m2/day/atm以下であることが好ましく、1×10-1g/m2/day/atm以下であることがさらに好ましく、1×10-2g/m2/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素の透過を抑制するほど、光デバイスの酸化劣化が抑えられるので、長期にわたって、性能劣化の少ない高耐久性を備えた光デバイスを提供することができる。なお、酸素透過率は、JIS K7126−1に準じた差圧法に基づく装置、あるいはJIS K7126−2に準じた等圧法に基づく赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置で測定することができる。
バリアフィルムの厚さは特段の制限はないが、ハンドリング時の折れ、シワを防止するために、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、35μm以上であることが特に好ましく、一方、フレキシブル性や生産性の観点から、150μm以下であることが好ましく、125μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。
バリアフィルムの形成方法は、特段の制限はないが、公知の方法を利用でき、例えば、ドライラミネート加工、Bステージ化したエポキシ系樹脂含有層をサーマルラミネートする方法、等により作製することができる。ドライラミネート加工を例に挙げると、まず、基材フィルム1、5上に、それぞれ上述の方法により無機酸化膜2、4をそれぞれ形成した第1のフィルム6及び第2のフィルム7を用意する。次に、該無機酸化膜2、4の少なくとも一方の表面に、溶剤を含有するエポキシ系樹脂含有層前駆体組成物を所定の厚みになるように塗布した後に、乾燥により溶媒を除去し、その後、エポキシ系樹脂含有層3を介して、無機酸化膜2、4が向かい合うように第1のフィルム6と第2のフィルム7を貼合し、所定の温度で養生することにより作製することができる。
なお、溶媒を除去する際の乾燥温度に特段の制限はないが、乾燥温度が低すぎると貼り合わせ後のバリアフィルム内に溶剤が残留してしまう場合があり、一方、乾燥温度が高すぎると貼り合わせ前にエポキシ系樹脂層前駆体組成物が硬化してしまい貼り合わせ時に第1のフィルム6と第2のフィルム7との接着性が不十分になる場合がある。そのため、乾燥時の温度は、60℃以上、140℃以下であることが好ましい。
養生条件は、特段の制限はないが、30℃以上80℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。また、養生時間が短すぎると、第1のフィルム6と第2のフィルム7との密着性が十分でない場合があり、養生時間が長すぎると、バリアフィルムをロールにより巻き取った場合にシワが発生したりする場合がある。従って、養生時間は、30分以上2日以下であることが好ましい。
<2.半導体デバイス>
本発明に係るバリアフィルムは、半導体デバイスに適用することにより、耐久性の高い半導体デバイスを提供することができる。なお、半導体デバイスは、デバイス内に半導体を使用するものであれば、特段の制限はないが、特に、水分や酸素による影響が受けやすい、有機半導体化合物又はペロブスカイト半導体化合物、微細結晶からなる量子ドットなどを用いた太陽電池、ディスプレイ、照明等の半導体デバイスに本発明に係るバリアフィルムを適用することが好ましい。例えば、液晶ディスプレイへのバリアフィルムの適用例としては、導光板の上に量子ドットを載せる際の量子ドットフィルムに用いられ、樹脂中に量子ドットを分散させた樹脂シートを挟みこむ保護フィルムとして用いられる。この保護フィルムを本発明に係るバリアフィルムとすることにより、量子ドットが水や酸素で劣化することを抑制することができる。
さらに、本発明に係るバリアフィルムを用いることにより、曲げる、もしくは曲面を有する半導体デバイスに有用である。加えて、実使用の観点から見れば、施工プロセスを有し、使用時の外的負荷の高い半導体デバイスには特に有用である。
以下、本発明に係るバリアフィルムを備えた半導体デバイスの中で、太陽電池モジュールにバリアフィルムを適用した例について説明する。
<2−1.太陽電池モジュール>
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールは、バリアフィルム11と、封止材層12と、素子基板13と、太陽電池素子14と、封止材層15と、バリアフィルム16とをこの順に有する。
<2−1−1.バリアフィルム(11、16)>
バリアフィルムは、上述の<1.バリアフィルム>で説明したものを使用することができる。
バリアフィルム11、16は、太陽電池素子4の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。具体的には、太陽電池モジュールの受光面側に位置するバリアフィルムが可視光を透過することが好ましい。具体的に、上記少なくとも受光面側に位置する一方のバリアフィルムの可視光線透過率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、太陽電池モジュールを透過型の太陽電池モジュール、所謂、シースルー型の太陽電池モジュールとする場合、他方のバリアフィルムも上述のような可視光線透過率を有することが好ましい。なお、可視光線透過率は、分光光度計により測定することができ、例えば、紫外可視近赤外分光光度計UV−3600(島津製作所製)とフィルムサンプルホルダーを用いて測定することができる。測定結果は、JIS R 3106:1998に従って、波長380nm〜780nmまでの透過率が算出され、これらの波長領域の透過率の平均を算出すればよい。
また、太陽電池モジュールを施工する際や曲げが生じた場合に、バリアフィルム内部での剥離を防止するために、第1のフィルム6、第2のフィルム7とエポキシ系樹脂含有層3とのT字型剥離試験で測定される層間密着強度は5N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限は特にない。
<1−2.封止層12、15>
封止層12、15は、太陽電池素子13と、バリアフィルム11、16との密着性を高めるために設けられる層である。
封止層12、15を形成する材料は特段の制限はないが、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリイソブチレン(PIB)樹脂、ポリイミド樹脂(PI)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、マレイン酸またはシラン等で変性した変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、又はポリアミド(PA)樹脂が挙げられる。
なお、封止層12、15はそれぞれ1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、封止層12、15はそれぞれ単層であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。積層構造の場合、封止層を形成する材料は同じであってもよいし異なっていてもよい。また、封止層12、15は、無機フィラー等を有していてもよい。
また、太陽電池モジュールを施工する際や曲げが生じた場合に、太陽電池モジュール内部での剥離を防止するために、封止層12、15と素子基板1とのT字型剥離試験で測定される層間密着強度は5N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限は特にない。
封止層12、15は、太陽電池モジュールの強度保持の観点から曲げ強度が高いことが好ましい。封止材以外の層の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、太陽電池モジュール全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような曲げ強度を有するのが望ましい。具体的には、施工する際に太陽電池モジュール内部に生じる応力を緩和する観点から、封止層2、5の25℃における曲げ強度は1.0×105Pa以上、1.0×107Pa以下であることが好ましい。
また、封止層12、15は、太陽電池モジュールを施工する際に太陽電池モジュールに加わる外的応力を緩和する観点から25℃における縦弾性率が高い方が好ましい。特にフィルム型の太陽電池モジュールにおいては重要な実用性能である。縦弾性率の測定方法としては、封止層を溶融した後に試験片に加工し(硬化が必要な場合は硬化処理を含む)、得られた試験片から従来公知の引張試験機で測定される応力−歪曲線において、フックの法則が成立する弾性範囲での同軸方向の応力と歪の比例定数から求められる。
封止層12、15の25℃における縦弾性率は、1.0×108Pa以上、好ましくは5.0×108Pa以上、より好ましくは1.0×109Pa以上である。縦弾性率がこの範囲にあることで、太陽電池モジュールへのダメージを最小限とし施工することができ、仕上がり後の太陽電池モジュールの意匠性が良好である。さらに、太陽電池モジュールとしてのコシも付与できるため、施工時や加工時の太陽電池モジュールの折れ、シワの防止、および太陽電池モジュール取扱いの際のハンドリング性を向上させることができる。
さらに、太陽電池モジュールは光を受けて熱せられることが多いため、封止層12、15も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止層12、15を形成する材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで太陽電池モジュールの使用時に封止材が融解・劣化するのを防ぐことができる。
封止層12、15の膜厚は特段の制限はないが、太陽電池モジュール表層側からの外圧や衝撃により有機薄膜太陽電池素子がダメージを受けることを防止するために、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、30μm以上であることが特に好ましく、一方、可視光線透過率が大幅に低下するのを防ぐために、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることが特に好ましい。
なお、封止層12、15に、紫外線遮断、熱線遮断、導電性、反射防止、防眩性、光拡散、光散乱、波長変換、ガスバリア性等の機能を付与してもよい。特に、有機薄膜太陽電池素子は、水や酸素により劣化しやすい傾向があり、また、太陽光の紫外線により劣化する場合があるため、ガスバリア性や紫外線遮断機能を持つことが好ましい。このような機能を付与する方法としては、機能を有する層を塗布成膜等により封止層12、15上に積層してもよいし、このような機能を有する材料を溶解・分散させるなどして封止層2、5に含有させてもよい。
封止層12、15の100μmにおける水蒸気透過率は、40℃90%RH環境下で、通常10-1g/m-2/day以下、好ましくは10-2g/m2/day以下、より好ましくは10-3g/m2/day以下、さらに好ましくは10-4g/m2/day以下である。水蒸気透過率は、JIS K7129に準じた感湿センサ、赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置による測定、カップ法(JIS Z0208)により、40℃90%RH環境で測定することができる。
封止層12、15の100μmにおける酸素透過率は、25℃、湿度0%環境下で、通常1cc/m2/day/atm以下であり、1×10-1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、1×10-2cc/m2/day/atm以下であることがより好ましく、1×10-3cc/m2/day/atm以下であることがさらに好ましく、1×10-4cc/m2/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10-5cc/m2/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、薄膜太陽電池素子の酸化による劣化が抑えられる利点がある。なお、酸素透過率は、JIS K7126−1に準じた差圧法に基づく装置、あるいはJIS K7126−2に準じた等圧法に基づく赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置で測定することができる。
<1−3.素子基板13>
素子基板13は太陽電池素子14を支持する支持部材である。なお、本発明において、素子基板13は、特段の制限はないが、バリアフィルム11側を太陽電池モジュールの受光面とする場合、素子基板13の可視光線透過率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
素子基板13は特段の制限はなく、ガラス基板、樹脂基材、又は絶縁性が付与された金属基材等が挙げられる。なかでも、太陽電池モジュールの軽量化が可能となり、太陽電池モジュールの設置自由度を上げる観点から、素子基板は樹脂基材であることが好ましい。
樹脂基材の材料としては、特段の制限はないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、セルロース、アセチルセルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料などが挙げられる。これらのなかでも、太陽電池素子13の形成のし易さからポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂が好ましく、特に、上述の通り、太陽電池モジュールの周辺領域を溶融する場合、素子基板4の材料は、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートを用いることが好ましい。
素子基板13の厚さは特段の制限はないが、太陽電池素子を製造する際の張力や加熱に対する耐性を向上させるために、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、30μm以上であることが特に好ましく、一方、フレキシブルな太陽電池モジュールとする場合、素子基板3の厚さが大きすぎると、太陽電池モジュールのフレキシブル性が低下するために500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。
<1−4.太陽電池素子14>
太陽電池素子14は、少なくとも、一対の電極と、該一対の電極間に活性層と、を有して形成される。なお、太陽電池素子の厚さは、特段の制限はないが、フレキシブルな太陽電池モジュールとする場合、太陽電池素子の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがさらに好ましく、2μm以下であることが特に好ましい。
<1−4−1.一対の電極>
一対の電極は、下部電極及び上部電極により構成され、一対の電極のうち一方の電極は活性層が光を吸収することにより発生する正孔を捕集する機能を有する電極(以下、アノードと称す)であり、他方の電極は、活性層が光を吸収することにより発生する電子を捕集する機能を有する電極である(以下、カソードと称す)。下部電極をアノードとする場合、上部電極をカソードとし、下部電極をカソードとする場合、上部電極をアノードとすることが好ましい。
なお、一対の電極のうち、一方の電極は透明電極であれば、他方の電極は透明電極であってもよいし、非透明電極であってもよい。但し、太陽電池モジュールを透過型の太陽電池モジュール、所謂、シースルー型の太陽電池モジュールとする場合、一対の電極はともに透明電極であることが好ましい。なお、本発明において、透明電極とは、通常60%以上の可視光線透過率を有する電極を意味するが、変換効率を向上させるためには、透明電極の可視光線透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。一方、上限は特段限定されないが、通常90%以下である。なお、該電極の可視光線透過率は、上述の素子基板4の可視光線透過率の測定方法と同様の方法により測定することができる。
透明電極は、単層の透明導電層で形成されていてもよいし、透明導電層及び金属層との積層により形成されていてもよく、例えば、透明導電層、金属薄層及び透明導電層が順次形成された積層構造であってもよい。
透明電極層に用いられる材料としては、特段の制限はないが、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、亜鉛をドープしたインジウム酸化物(IZO)、タングステンをドープしたインジウム酸化物(IWO)、カドミウムとスズとの酸化物(CTO)等である。これらの中でも、スズをドープしたインジウム酸化物(ITO)、亜鉛をドープしたインジウム酸化物(IZO)、タングステンをドープしたインジウム酸化物(IWO)等の非晶質性酸化物を用いることが好ましい。
透明電極を、透明導電層及び金属層の積層構造とする場合、金属層の材料は、特段の制限はなく、例えば、金、白金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム、クロム、銅、コバルトの等の金属又はその合金が挙げられる。これらのなかでも、金属層を形成する材料は、高い電気伝導性を示すとともに、薄膜における可視光線透過率の高い銀又は銀の合金であることが好ましい。なお、銀の合金としては、硫化又は塩素化の影響を受けにくく薄膜としての安定性を向上させるために、銀と金の合金、銀と銅の合金、銀とパラジウムの合金、銀と銅とパラジウムの合金、銀と白金の合金等が挙げられる。
金属層の膜厚は、透明電極として70%以上の可視光線透過率を維持できる限りにおいて、特段の制限はなく、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、一方、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。この理由は、金属層が薄すぎると、高い導電性を得ることが困難となる場合があり、また、金属層が厚すぎると光透過率が低下して有機太陽電池素子に入射する光量が低下してしまい、変換効率が低下してしまうためである。
非透明電極を用いる場合、特段の制限はないが、例えば、上述したような金属層を厚膜化して形成することにより、非透明電極を形成することができる。
下部電極及び上部電極のそれぞれの厚さは、特段の制限はなく、光学特性及び電気特性を考慮して任意で選択すればよい。なかでも、シート抵抗を抑えるために、下部電極及び上部電極のそれぞれの厚さは、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、一方、高い透過率を維持するために、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。
下部電極をアノードとし、上部電極をカソードとする場合、下部電極は上部電極よりも仕事関数の大きい材料を使用することが好ましい。一方、下部電極をカソードとして、上部電極をアノードとする場合、下部電極は上部電極よりも仕事関数の小さい材料により形成することが好ましい。なお、有機太陽電池素子に、後述するような下部バッファ層及び/又は上部バッファ層を設けて仕事関数を調整することにより、下部電極及び上部電極は同じ仕事関数を有する材料により形成することもできる。
下部電極及び上部電極の形成方法は、特段の制限はなく、使用する材料に合わせて公知の方法により形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式成膜法等が挙げられる。
<1−4−2.活性層>
活性層の形成材料は特段の制限はないが、本発明は、特に、水や酸素に対して劣化しやすい有機半導体化合物又はペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層の場合に特に有効な発明である。
活性層の構成としては、特段の制限はないが、p型の有機半導体化合物を含有する層とn型の半導体化合物を含有する層とが積層された薄膜積層型、p型の有機半導体化合物とn型の半導体化合物が混合した層(混合層)であるバルクヘテロ型接合型、又はペロブスカイト半導体化合物を含有する層が挙げられる。なお、バルクヘテロ接合型の活性層又はペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層は、他にp型の半導体化合物を含有する層及び/又はn型の半導体化合物を含有する層がさらに積層された構造であってもよい。
p型の有機半導体化合物は、特段の制限はなく、p型の低分子有機半導体化合物、p型の有機半導体オリゴマー、及びp型の有機半導体ポリマーが挙げられる。
p型の低分子有機半導体化合物は、特段の制限はないが、テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;ナフタロシアニン化合物;テトラセンやペンタセンのポリアセン等が挙げられる。
p型の有機半導体オリゴマーは特段の制限はないが、セキシチオフェン等のオリゴチオフェン又はこれら化合物を骨格として含む誘導体等が挙げられる。
p型の有機半導体ポリマーは、特段の制限はない。例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)などを含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリトリアリルアミン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、チオフェン環又はチオフェン縮合環を含むポリマー等が挙げられる。より具体的には、国際公開第2011/016430号パンフレット、国際公開第2013/180243号パンフレット、日本国特開2012−191194号公報等に記載されるような公知のp型半導体ポリマーが挙げられる。
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、フラーレン;フラーレン誘導体;8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体;アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ、n型ポリマー(n型高分子半導体材料)等が挙げられる。これらのなかでも、フラーレン化合物が特に好ましい。フラーレン化合物としては、特段の制限はないが、例えば、国際公開第2011/016430号又は日本国特開2012−191194号公報等の公知文献に記載のものが挙げられる。なお、上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
有機無機混成ペロブスカイト化合物は、特段の制限はないが、下記式(1)で表わされる化合物であることが好ましい。
AnMX(n+2) ・・・(1)
式(1)中、nは1又は2の整数を表わす。
式(1)中、Aは1価の有機分子を表す。
1価の有機分子は特段の制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミンジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾール、イミダゾリン、カルバゾール及びこれらのイオン(例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3)等)やフェネチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン及びこれらのイオンやフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びこれらのイオンがより好ましい。
式(1)中、Mは2価の金属原子を表す。2価の金属原子は特段の制限はないが、鉛、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、ユーロピウム等が挙げられる。これらの元素は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
式(1)中、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子を表す。ハロゲン原子は、特段の制限はないが、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、硫黄が挙げられる。また、カルコゲン原子は特段の制限はないが、セレンが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2014/045021号、日本国特開2014−49596号公報、日本国特開2016−82003号公報等に記載のペロブスカイト半導体化合物が挙げられる。
また、活性層がペロブスカイト半導体化合物により形成されている場合、当該化合物を含む層の下に、TiO2、Al2O3等の多孔質膜が形成されていてもよい。
活性層の膜厚は、特段の制限はないが、通常50nm以上、好ましくは100nm以上であり、一方、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。活性層の膜厚が50nm以上であることは、膜の均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、活性層の厚さが1000nm以下であることは、内部抵抗が小さくなる点、及び電極間が離れすぎず電荷の拡散が良好となる点で、好ましい。
活性層の形成方法は、特段の制限はく、使用する材料を考慮して、公知の方法により形成することができる。具体的には、蒸着法、スパッタ法等の真空成膜法又は該活性層を形成する化合物又はその前駆体化合物と、溶媒を含有するインクを用いた湿式成膜法により形成することができる。
湿式成膜法としては、特段の制限はなく、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
溶媒は、特段の制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、テトラリン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なお、溶媒は1種の溶媒を単独で用いてもよいし、任意の2種以上の溶媒を任意の比率で併用してもよい。
活性層をp型の有機半導体化合物を含む層とn型の半導体化合物とを含む層の薄膜積層型とする場合、特段の制限はないが、上述のような方法により各層を成膜することにより形成すればよい。また、活性層をバルクヘテロ接合型とする場合、特段の制限はないが、p型の有機半導体化合物と、n型の半導体化合物と、溶媒とを含むインクを作製しておき、該インクを用いて湿式成膜法により形成することが好ましい。
また、活性層をペロブスカイト半導体化合物により形成する場合、活性層の形成方法は特段の制限はないが、国際公開第2014/045021号、日本国特開2014−49596号公報、日本国特開2016−82003号公報等に記載されるように前駆体となる塗布液を塗布することにより、該活性層を形成することができる。
<1−4−3.バッファ層>
太陽電池素子4は上述以外の層を有していてもよく、例えば、一対の電極の少なくとも一方の電極と、活性層との間にバッファ層を有していてもよい。バッファ層とは、活性層からカソードへの電子取り出し効率を向上させる電子取り出し層又は活性層からアノードへの正孔取り出し効率を向上させる正孔取り出し層に分類される。なお、本発明において、便宜上、活性層と上部電極との間に設けるバッファ層を上部バッファ層と称し、活性層と下部電極との間に設けるバッファ層と称す場合がある。なお、下部電極をアノードとし、上部電極をカソードとする場合、下部バッファ層を正孔取り出し層とし、上部バッファ層を電子取り出し層とすればよい。一方、下部電極をカソードとし、上部電極をアノードとする場合、下部バッファ層を電子取り出し層とし、上部バッファ層を正孔取り出し層とすればよい。
電子取り出し層の材料は、活性層からカソードへの電子取り出し効率を向上させることができる材料であれば特段の制限はなく、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の例としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が好ましく、n型半導体酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等で構成されるカソードと組み合わされた際にカソードの仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物又はベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)又はペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
正孔取り出し層の材料としては、活性層からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば、特段の制限はないが、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物等の導電性化合物;酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物半導体、ナフィオン、後述のp型半導体等の半導体化合物;が挙げられる。好ましくは、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。
バッファ層の膜厚は特段の制限はないが、バッファ層材料として半導体化合物を用いる場合、電子又は正孔取り出し効率を向上させるために、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが特に好ましく、一方、有機太陽電池素子の内部抵抗を低く保ち、有機太陽電池素子の変換効率を向上させるために、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。一方、バッファ層材料として導電性化合物を用いる場合、電子又は正孔取り出し効率を向上させるために、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、100nm以上であることが特に好ましく、一方、有機太陽電池素子の内部抵抗を低く保ち、有機太陽電池素子の変換効率を向上させるために1000nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。
電子取り出し層及び正孔取り出し層の形成方法は特段の制限は無く、使用する材料に合わせて公知の方法により形成することができる。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は蒸着法、スパッタ法等の真空蒸着法により形成することができる。また、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。また、半導体材料を用いる場合は、活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
なお、太陽電池モジュールは図1の構成に限定されず、太陽電池モジュールとして機能する限りにおいて、その構成に特段の制限はない。例えば、図2に示すようにバリアフィルム11及び封止層12を設けない構成であってもよい。
なお、図2のような構成の場合、素子基板13としてバリア性の低い樹脂基材を用いる場合、素子基板13の太陽電池素子14が形成されていない側に、無機層を積層させてバリア性能を高めることが好ましい。なお、無機層は特段の制限はないが、上述の<1−1.バリアフィルム(11、16)>に挙げた無機層を用いることができる。
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、上記以外に、他の構成部材又は層を有していてもよい。
例えば、太陽電池素子14から発生した電気を外部に取り出すために、任意の太陽電池素子に集電線を設置することが好ましい。集電線は、特段の制限はなく、公知の集電線を使用することができ、また、集電線の設置方法も公知の方法を用いればよい。
また、太陽電池モジュールが紫外線により劣化するのを防ぐために紫外線カットフィルムを設けてもよい。さらには、太陽電池モジュールの物理的損傷を防ぐために、ハードコート層を設けてもよい。これらの紫外線カットフィルムやハードコート層も公知の材料・形成方法により設けることができる。
<2.太陽電池モジュールの製造方法>
本実施態様に係る太陽電池モジュールの製造方法は、特段の制限はなく、上記構成が得られる限り、任意の方法で形成することができる。例えば、素子基板13上に太陽電池素子14を形成する工程、及び太陽電池素子14が形成された素子基板13を封止する封止工程により太陽電池モジュールを製造することができる。
<2−1.素子基板13上に太陽電池素子14を形成する工程>
素子基板13上に太陽電池素子14を形成する方法は特段の制限はない、上述の<1−4.太陽電池素子14>で説明したように、太陽電池素子14を構成する各層を順次積層させて形成することができる。
太陽電池素子14を構成する各層は、枚葉式で形成してもよいし、ロール・ツー・ロール方式で形成してもよい。但し、生産性を向上させるためには、ロール・ツー・ロール方式により各層又は少なくとも一部の層を形成することが好ましい。
なお、太陽電池モジュールは、1つの太陽電池素子により構成されていてもよいし、直列に接続された複数の太陽電池素子により構成されていてもよい。さらには、直列に接続された複数の太陽電池素子を複数有し、それらが互いに並列接続された構成であってもよい。太陽電池モジュールが、複数の太陽電池素子が直列に接続された構成とする場合、各層を成膜した後に、公知のレーザ―スクライブ法等を用いて直列化構造を形成すればよい。
<2−2.太陽電池素子14の封止工程>
太陽電池素子14及び素子基板13を封止するためには、バリアフィルム11、16それぞれに封止層を形成する樹脂組成物を塗布、又はシート状の樹脂組成物を重ねて積層体を形成し、該積層体の樹脂組成物が設けられた側が、太陽電池素子4及び素子基板3側になるように重ねて公知の方法により貼り合わせて封止すればよい。なお、封止方法は、特段の制限はなく、真空ラミネートやロールラミネートといった公知の方法により行えばよい。
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
なお、以下の実施例により作製したバリアフィルムの水蒸気透過率の測定、及び酸素透過率の測定、さらに、太陽電池モジュールの変換効率の測定は下記の方法により行った。
<バリアフィルムの水蒸気透過率の測定方法>
積層バリアフィルムを100mm各のサイズに切出し、温度40℃、湿度90%RHの条件で、Technolox社製の水蒸気透過率測定装置、DELTAPERMを使用して、差圧法に基づいて2回測定した平均値を算出した。また、無機酸化膜を順方向に積層した積層バリアフィルムを測定する場合には、水蒸気の検出側を無機酸化膜側としてセットし、測定した。
<積層バリアフィルムの酸素透過率の測定方法>
積層バリアフィルムを100mm各のサイズに切出し、温度23℃、湿度0%の条件で、MOCON社製の酸素透過率測定装置、OXTRANを使用して、JIS K 7126に記載のB法(等圧法)に基づいて2回測定した平均値を算出した。また、無機酸化膜を順方向に積層した積層バリアフィルムを測定する場合には、酸素の検出側を無機酸化膜側としてセットし、測定した。
<太陽電池モジュールの変換効率の測定方法>
太陽電池モジュールにソーラシュミレーター(分光計器社製)でAM1.5G条件の光を照射強度1000W/cm2を照射して、得られた電流・電圧曲線から、エネルギー変換効率(PCE)を求めた。
<実施例1:太陽電池モジュールの作製>
図2に示す層構成を有する太陽電池モジュールを以下の手順で作成した。
(バリアフィルムの作製)
以下の方法により図1に示される構成のバリアフィルムを作製した。まず、以下のポリエポキシ樹脂、硬化剤、及び有機溶剤を混合した後、20分間攪拌して、固形分濃度45%のエポキシ系樹脂含有層の前駆体組成物1を調製した。
[ポリエポキシ樹脂]
三菱ガス化学製マクシーブ、M−100(メタキシリレンジアミンとエピロルヒドリンとの共重合物でありグリシジルアミン部位を有するポリエポキシ樹脂(固形分濃度100%)):100質量部
[硬化剤]
芳香族系アミンである硬化剤C−93(固形分濃度65%):320質量部
[有機溶剤]
メタノール:226.4質量部
酢酸エチル:37.6質量部
次に、0.03μmの酸化珪素膜を真空蒸着した厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(水蒸気透過率7×10-2g/m2/day)からなる第1のフィルム及び第2のフィルムを用意し、第1のフィルムの酸化珪素膜面上に、上記で調製したエポキシ系樹脂含有層の前駆体組成物1をドライ膜厚が8μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃、1分間乾燥した。
次に、第1のフィルムの該前駆体組成物の塗布面と、第2のフィルムの酸化珪素膜面と、を重ね、ラミネーターを用いて温度80℃、速度2m/分で貼り合せた。この積層フィルムを80℃、3時間で熱処理を行ない、無機酸化膜面が向き合うように積層した図1に示されるバリアフィルムを作製した。
(バリアフィルムと封止層の積層体の作製)
上記の方法により、得られたバリアフィルムに、それぞれ封止層として厚さ50μmのオレフィン樹脂(クラボウ製、クランベター)を積層した積層体を作製した。なお、この積層体を2つ作製した。
(集電線が設置された太陽電池素子の作製)
素子基板として用意したポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製Q65、厚さ100μm)の片面に、スパッタリング法により、厚さ50nmの第1の酸化インジウム層、厚さ8nmの銀層、厚さ30nmの第2の酸化インジウム層をこの順に積層して、下部電極を形成した。
次に、下部電極の上に、日本国特開2015−127408号公報に記載された方法により、電子取り出し層として、厚さ50nmの酸化亜鉛層を形成した。
次に、酸化亜鉛層上に、厚さ320nmの活性層を形成した。具体的には、高分子有機半導体とフェニルC61フラーレン酪酸メチルエステル(PCBM)を重量比1:2.5で含む混合物を、6質量%となるように有機溶媒に溶解させた溶液を用いて塗布により形成した。
次に、活性層上に、正孔取り出し層として、厚さ400nmのPEDOT:PSS層を形成した。具体的には、PEDOT:PSS層は、PEDOT:PSS分散液を超音波分散した後、96時間放置し、その後、ドクターブレード法で活性層上に塗布し、窒素雰囲気化145℃、30分間乾燥して形成した。
次に、正孔取り出し層上に、スパッタリング法により厚さ8nmの銀層、及び厚さ40nmの酸化インジウム層をこの順に積層して、上部電極を形成した。こうして、太陽電池素子基板上に太陽電池素子を作製した。
次に、導電性熱硬化樹脂組成物付集電線(デグセリアルズ社製 DT101C4、(導電性粒子としてニッケル粒子を含むエポキシ系導電性硬化樹脂、硬化温度120℃)15μm+銅箔35μm厚、幅4mm)を設置した。
(太陽電池モジュールの作製)
ガラスクロスシート上に、バリアフィルム、封止層、素子基板、太陽電池素子、封止層、バリアフィルムの順になるように、太陽電池素子が形成された素子基板と、上記の方法により得られたバリアフィルムと封止層との積層体を重ねて、真空ラミネーター(NPC社製、NLM−270×400)に投入した。最初にラミネーター内部を減圧下で10分間保持した後、積層体を大気圧で圧着状態としつつ、105℃で10分間保持し、その後すぐに室温下まで冷却し、太陽電池モジュールを作製した。
得られた太陽電池モジュールの初期の変換効率を測定した。また、太陽電池モジュールの耐久性を検討するために、太陽電池モジュールを65℃、85%RH環境下に保持した恒温槽に静置し、600時間経過後の変換効率を測定し、下記の式により維持率を算出した。得られた結果を表1に示す。
変換効率の維持率=(65℃、85%RH、600時間経過後の変換効率)/(初期の変換効率)×100
<実施例2:太陽電池モジュールの作製>
エポキシ系樹脂含有層の前駆体組成物として、エポキシ系樹脂含有層の前駆体組成物1の代わりに、Bステージ化されたビスフェノールA型エポキシ樹脂系シール材(スリーボンド製TB1651D、厚さ30μm)に変更し、下記の方法によりバリアフィルムを作製した以外は実施例1と同様の方法により図2に示される太陽電池モジュールを作製し、同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
第1のフィルムおよび第2のフィルムの酸化珪素膜面どうしが向き合うように、TB1651Dを介して重ね、ラミネーターを用いて温度80℃、速度2m/分でラミネートし図1に示される構成のバリアフィルムを作製した。
<比較例1:太陽電池モジュールの作製>
バリアフィルムを以下の内容に変更した以外は、実施例1と同様の方法により図2に示される太陽電池モジュールを作製し、同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(バリアフィルムの作製)
以下の方法により図1に示される構成のバリアフィルムを作製した。まず、以下のウレタン樹脂、ポリイソシアネート硬化剤、及び有機溶剤を混合した後、20分間攪拌して、固形分濃度40%のウレタン系樹脂含有層の前駆体組成物1を調製した。
[ウレタン系樹脂]
東洋モートン製LIS−7059(固形分濃度50%)):100質量部
[ポリイソシアネート硬化剤]
東洋モートン製CR−085(固形分濃度70%):5質量部
[有機溶剤]
酢酸エチル:28.8質量部
次に、0.03μmの酸化珪素膜を真空蒸着した厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(水蒸気透過率7×10-2g/m2/day)からなる第1のフィルム及び第2のフィルムを用意し、第1のフィルムの酸化珪素膜面上に、上記で調製したウレタン系樹脂含有層の前駆体組成物2をドライ膜厚が8μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃、1分間乾燥した。
次に、第1のフィルムの該前駆体組成物の塗布面と、第2のフィルムの酸化珪素膜面と、を重ね、ラミネーターを用いて温度80℃、速度2m/分で貼り合せた。この積層フィルムを60℃、2日間で熱処理を行ない、無機酸化膜面が向き合うように積層した図1に示されるバリアフィルムを作製した。
<比較例2:太陽電池モジュールの作製>
エポキシ系樹脂含有層の代わりに、厚さ30μmのオレフィン系樹脂層(クラボウ製、クランベター)に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりバリアフィルム及び太陽電池モジュールを作製し、同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
<参考例1:太陽電池モジュールの作製>
素子基板及び太陽電池素子側から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、酸化珪素膜、エポキシ系樹脂含有層、ポリエチレンテレフタレートフィルム、酸化珪素膜となるようにバリアフィルムの構成を変更した以外は、実施例1と同様の方法により太陽電池モジュールを作製し、同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
実施例1、2で作製したバリアフィルムを用いた太陽電池モジュールは、65℃、85%RH環境下で600時間経過後も、高い変換効率を維持していたのに対して、比較例1及び参考例1の太陽電池でモジュールでは、大きく発電効率が低下していることが分かる。この結果から、本発明に係るバリアフィルムを用いることで、高い耐久性を備えた半導体デバイスを提供できることが分かる。この理由としては、実施例1、2のバリアフィルムは、基材フィルムと無機酸化膜からなる一対のバリアフィルムを無機酸化膜が向かい合うように積層したこと、及びエポキシ樹脂系含有層の硬化収縮の働きにより無機酸化膜の欠陥が改善されるためであると考えられる。