以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
<1.太陽電池モジュール>
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールは、発電部1と、発電部1の周辺領域2と、を有し、当該周辺領域には積層体3が配置されている。なお、発電部1は、複数の有機太陽電池素子が直列に接続された、複数の太陽電池セルユニットから構成されており、該太陽電池セルユニットは集電線4を介して互いに並列に接続されている。
なお、直列接続された端部の有機太陽電池素子を構成する下部電極又は上部電極に、集電線4を設置することにより、太陽電池モジュールにおいて発電した電気を取り出すことができる。
以下、太陽電池モジュールを構成する各部材について説明する。
<1−1.集電線4>
集電線4の材料としては、金属や合金などが挙げられ、中でも抵抗率の低い銅やアルミ、銀、金、ニッケルなどを用いることが好ましく、銅やアルミが安価であることから、特に好ましい。また、錆防止のため、集電線の周囲をスズや銀などでメッキしたり、表面を樹脂などでコートしてあったり、フィルムをラミネートしてあってもよい。集電線の形状としては、例えば、平角線、箔、平板、ワイヤ状等が挙げられるが、接着面積の確保などの理由から、平角線や、箔、平板状のものを用いることが好ましい。また、集電線を電気取出端子として使用することができるため、平板状であることがより好ましい。
なお、本明細書において「箔」は厚みが100μm未満のものをいい、「板」は厚みが
100μm以上のものをいう。また「平角線」とは、断面が円形のワイヤを圧延して、断面の形状を四角形にしたものをいう。
また、集電線4は、導電性を有する限り特段の限定はされないが、接続する上部電極や下部電極よりも抵抗値が低いものが好ましく、特に、上部電極や下部電極より厚さを厚くすることによって、抵抗値を低減させることが好ましい。集電線の厚さとしては、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、2mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。集電線の厚さが上記下限以上であることで、集電線の抵抗値の上昇を抑制し、発電した電力を効率よく外部に取り出すことができる。また、上記上限以下であることで、有機太陽電池モジュールの重量が増加するとともに可撓性が減少したり、薄膜太陽電池モジュール表面に凹凸が発生しやすくなったり、生産コストが増加するなどの問題が生じる恐れがある。
また、集電線4の幅は、通用0.5mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、通常50mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である。集電線の幅が上記下限以上であることで、集電線の抵抗値の上昇を抑制し、発電した電力を効率よく取り出すことができる。また、集電線の機械強度を維持し、破断等を抑制することができる。上記上限以下であることで、モジュール全体における開口率を維持し、モジュールの発電量の低下を抑制することができる。
なお、集電線4を太陽電池素子の電極と接続する方法は特段の制限はなく、公知の方法により接続させればよい。例えば、導電性接着剤、導電性テープ、はんだ等により接続することができ、なかでも導電性接着剤により接続させることが好ましい。導電性接着剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、熱可塑性、熱硬化性等の導電性接着剤を使用することができる。
図2は、図1の太陽電池モジュールのX−X’断面を示しており、図3は、図1の太陽電池モジュールにおけるY−Y’の断面を示す。なお、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールは、一例として、3直列の有機太陽電池素子から構成される、3つの太陽電池セルユニットが集電線4を介して互いに並列に接続された構成を示しているが、本発明に係る太陽電池モジュールの直列化した有機太陽電池素子の数、及び太陽電池セルユニットの数はこれに限定されるものではない。例えば、太陽電池モジュールは1つの有機太陽電池素子から構成されていてもよい。また、複数の有機太陽電池が直列に接続された1つの太陽電池セルユニットにより構成されていてもよい。なお、本発明において、太陽電池セルユニットとは、有機太陽電池素子が複数直列化して構成されるユニットを意味するものとする。
具体的に本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの発電領域は、少なくとも下部電極13、有機活性層14及び上部電極15により構成される有機太陽電池素子を有する構造である。また、発電部1の周辺領域2には有機太陽電池素子と同一の層構造を有し、かつ有機太陽電池素子と分離されている積層体3が配置されている。また、周辺領域2において積層体3が配置されていない領域において封止層12は素子基板11と接触している。
<1−2.素子基板11>
素子基板11は、有機太陽電池素子を支持する部材である。素子基板11の材料としては、本発明を適用できる限り特に限定されず、無機材料、有機材料、紙材料および複合材料等の公知の材料を使用することができる。
無機材料としては、例えば、石英、ガラス、サファイア、チタニア等が挙げられる。
有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、セルロース、アセチルセルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリノルボルネン等が挙げられる。
複合材料としては、ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたものが挙げられる。
これらのなかでも、素子基板11は、可撓性を有する(フレキシブル)基板であることが好ましい。
また、プロセス性を考えた場合、素子基板11に使用される樹脂材料のガラス転移温度は100℃以上であることが好ましい。
なお、素子基板11の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、素子基板11はこれらの樹脂材料に炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維を含ませ、機械的強度を補強させても良い。
素子基板11の厚さは、上記の透光性を有する限りにおいて特段の制限はないが、取り扱いの容易さの観点からは、通常20μm以上、好ましくは50μm以上であり、一方、通常1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下である。
なお、有機太陽電池素子は水や酸素により劣化しやすい傾向があるため、素子基板11として、特に、PEN、PEN等の樹脂基材を用いる場合、素子基板11の表面上に酸化ケイ素膜等の無機層を積層させることによりバリア性を向上することができる。
<1−3.有機太陽電池素子>
有機太陽電池素子は、少なくとも一対の電極と、該一対の電極間に活性層を有し、活性層は有機半導体化合物を含有する。
<1−3−1.一対の電極(14、16)>
一対の電極は、下部電極14及び上部電極16により構成され、一対の電極のうち一方の電極は活性層15が光を吸収することにより発生する正孔を捕集する機能を有する電極(以下、アノードと称す)であり、他方の電極は、活性層が光を吸収することにより発生する電子を捕集する機能を有する電極である(以下、カソードと称す)。下部電極14をアノードとする場合、上部電極16をカソードとし、下部電極14をカソードとする場合、上部電極16をアノードとすることが好ましい。なお、活性層15が光を吸収するために一対の電極のうち少なくとも一方の電極は透光性を有することが好ましく、一対の電極がともに透光性を有していてもよい。一対の電極がともに透光性を有していれば、シースルー型の太陽電池モジュールとすることができる。なお、本発明において、透光性を有するとは、太陽光のうち波長360〜830nmの波長の光が透過する割合が40%以上であることを意味する。なお、該波長の光が透過する割合は、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが特に好ましい。これらの透過率は、JIS7375:2008に準拠して測定した値である。特に、太
陽電池モジュールにおいてシースルー型の太陽電池の場合に、有機活性層が存在する領域と、有機活性層が存在しない領域における色調が目立つ傾向がある。そのため、シースルー型の太陽電池、すなわち、一対の電極が透光性を有する太陽電池の場合に、本発明は特に有効である。
下部電極14及び上部電極16としては、導電性を有する材料により形成することが可能であり、例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金;酸化ニッケル、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、あるいはインジウ−スズ酸化物(ITO)、インジウム−酸化亜鉛(ZnO)、インジウム−タングステン酸化物(IWO)等の複合酸化物;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。なお、これらの材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の材料を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、下部電極14及び上部電極16は、それぞれ、単層であってもよいし、積層構造であってもよい。
上記のなかでも、アノードとする電極は、比較的仕事関数の大きい材料により形成することが好ましく、カソードとする電極は、比較的仕事関数の小さい材料により形成することが好ましい。なお、上述の通り、太陽電池モジュールの受光面側の電極は、透光性を有する必要があるが、透光性を有する電極は、上述の金属酸化物又は複合酸化物により形成することが好ましい。なお、これらの酸化物により形成した酸化物層と、薄い金属層を積層させた構成であってもよい。
下部電極14及び上部電極16の形成方法は特段の制限はなく、使用する材料に合わせて公知の方法により形成することができる。例えば、真空蒸着、スパッタ等のドライプロセス;又は導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することができる。なお、下部電極14及び上部電極16は、表面処理を行うことにより電気特性及び/又は濡れ性を改善することができる。
下部電極14及び上部電極16の厚さは特段の制限はないが、シート抵抗を抑えるために、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが特に好ましく、一方、柔軟性を維持するために400μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。なお、下部電極101及び上部電極105のシート抵抗は特段の制限はないが、通常1Ω/□以上であり、1000Ω/□以下であることが好ましく、500Ω/□以下であることがさらに好ましく、100Ω/□以下であることが特に好ましい。
<1−3−2.活性層15>
本発明に係る活性層15は有機半導体化合物を含有して形成される。具体的に、活性層15は、p型の有機半導体化合物とn型の半導体化合物を含有し、太陽電池素子が光を受けると光が活性層に吸収されてp型の有機半導体化合物とn型の半導体化合物との界面において電気が発生し、発生した電気が電極から取り出される。
活性層の層構成としては、p型の有機半導体化合物を含有する層とn型の半導体化合物を含有する層とが積層された薄膜積層型、又はp型の有機半導体化合物とn型の半導体化合物が混合した層(混合層)であるバルクヘテロ型接合型が挙げられる。なお、バルクヘテロ接合型の活性層は、該混合層の他にp型の半導体化合物を含有する層及び/又はn型の半導体化合物を含有する層がさらに積層された構造であってもよい。これらのなかでも、積層数が少なく活性層内の光環境効果の小さくできることから、活性層はバルクヘテロ
接合型であることが好ましい。
p型の有機半導体化合物は、特段の制限はなく、p型の低分子有機半導体化合物、p型の有機半導体オリゴマー、及びp型の有機半導体ポリマーが挙げられる。
p型の低分子有機半導体化合物は、特段の制限はないが、テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;ナフタロシアニン化合物;テトラセンやペンタセンのポリアセン等が挙げられる。
p型の有機半導体オリゴマーは特段の制限はないが、セキシチオフェン等のオリゴチオフェン又はこれら化合物を骨格として含む誘導体等が挙げられる。
p型の有機半導体ポリマーは、特段の制限はないが、ポリ(3−アルキルチオフェン)などを含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリトリアリルアミン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、チオフェン環又はチオフェン縮合環を含むポリマー等が挙げられる。より具体的には、国際公開第2011/016430号、国際公開第2013/180243号、日本国特開2012−191194号公報等に記載される公知のp型半導体ポリマーが挙げられる。
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、フラーレン;フラーレン誘導体;8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体;アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ、n型ポリマー(n型高分子半導体材料)等が挙げられる。これらのなかでも、フラーレン化合物が特に好ましい。フラーレン化合物としては、特段の制限はないが、例えば、国際公開第2011/016430号又は日本国特開2012−191194号公報等の公知文献に記載のものが挙げられる。なお、上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
活性層の膜厚は、特段の制限はないが、通常50nm以上、好ましくは100nm以上であり、一方、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。活性層103の膜厚が50nm以上であることは、膜の均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、活性層103の厚さが1000nm以下であることは、内部抵抗が小さくなる点、及び電極間が離れすぎず電荷の拡散が良好となる点で、好ましい。
活性層103の形成方法は、特段の制限はく、使用する材料を考慮して、公知の方法により形成することができる。具体的には、蒸着法、スパッタ法等の真空成膜法又は該p型半導体化合物及び/又はn型半導体化合物と、溶媒を含有するインクを用いた湿式成膜法により形成することができる。
湿式成膜法としては、特段の制限はなく、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコ
ート法等が挙げられる。
溶媒は、特段の制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、テトラリン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なお、溶媒は1種の溶媒を単独で用いてもよいし、任意の2種以上の溶媒を任意の比率で併用してもよい。
活性層をp型の有機半導体化合物を含む層とn型の半導体化合物とを含む層の薄膜積層型とする場合、特段の制限はないが、上述のような方法により各層を成膜することにより形成すればよい。また、活性層をバルクヘテロ接合型とする場合、特段の制限はないが、p型の有機半導体化合物と、n型の半導体化合物と、溶媒とを含むインクを作製しておき、該インクを用いて湿式成膜法により形成することが好ましい。
<1−3−3.バッファ層>
有機太陽電池素子は、特段の制限はないが、バッファ層を有していてもよい。例えば、下部電極14と活性層15との間及び/又は上部電極16と活性層15との間にバッファ層を有することが好ましい。
バッファ層は活性層15からカソードへの電子取り出し効率を向上させる電子取り出し層又は活性層15からアノードへの正孔取り出し効率を向上させる正孔取り出し層に分類される。そのため、下部電極14をアノードとし、上部電極16をカソードとする場合、下部電極14と活性層15との間に正孔取り出し層を設け、上部電極16と活性層15との間に電子取り出し層を設けることが好ましい。一方、下部電極14をカソードとし、上部電極16をアノードとする場合、下部電極14と活性層15との間に電子取り出し層を設け、上部電極16と活性層15との間に正孔取り出し層を設けることが好ましい。なお、正孔取り出し層及び電子取り出し層の一方の層のみを設ける構成としてもよい。
電子取り出し層の材料は、活性層15からカソードへの電子取り出し効率を向上させることができる材料であれば特段の制限はなく、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の例としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が好ましく、n型半導体酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等で構成されるカソードと組み合わされた際にカソードの仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホ
ウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物又はベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)又はペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
正孔取り出し層の材料としては、活性層15からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば、特段の制限はないが、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物等の導電性化合物;酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物半導体、ナフィオン、後述のp型半導体等の半導体化合物;が挙げられる。好ましくは、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。
バッファ層の膜厚は、特段の制限はないが、バッファ層材料として半導体化合物を用いる場合、電子又は正孔取り出し効率を向上させるために、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが特に好ましく、一方、光電変換素子の内部抵抗を低く保ち、光電変換素子の変換効率を向上させるために、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。一方、バッファ層材料として導電性化合物を用いる場合、電子又は正孔取り出し効率を向上させるために、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、100nm以上であることが特に好ましく、一方、光電変換素子の内部抵抗を低く保ち、光電変換素子の変換効率を向上させるために1000nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。
電子取り出し層及び正孔取り出し層の形成方法は特段の制限は無く、使用する材料に合わせて公知の方法により形成することができる。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は蒸着法、スパッタ法等の真空蒸着法により形成することができる。また、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。また、半導体材料を用いる場合は、活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
<1−4.封止層12>
封止層12は、有機太陽電池素子を封止するための層である。一般的に有機太陽電池は、水分や酸素等により劣化しやすい傾向があるために、封止層12及び後述のバリア層13により有機太陽電池素子を封止することが好ましい。なお、封止層12により有機太陽電池素子の補強や耐衝撃性も向上させることができる。
封止層12を構成する材料は特段の制限はない。例えば、架橋剤を含む酢酸ビニル−エチレン共重合体組成物、ポリウレタン、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、アイオノマーなどの熱可塑性樹脂、ブチルゴム、シリコーンゴム等のエラストマー系樹脂が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、アイオノマー等の熱可塑性樹脂が特に好ましい。
なお、封止層12は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、封止層12は単層により形成されていても良いが、2層以上を備えた積層であってもよい。
封止層12の厚さは、特段の制限はないが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。一方、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。封止層12の厚さを上記範囲とすることで、適度な耐衝撃性を得ることができると共に、耐電圧特性、耐久性、コストおよび重量の観点からも好ましく、発電特性も十分に発揮することができる。
封止層12の水蒸気透過率は、特段の制限はないが、それぞれの40℃90%RH環境下で100μmにおける水蒸気透過率は、通常10−1g/m2/day以下、好ましくは10−2g/m2/day以下、より好ましくは10−3g/m2/day以下、さらに好ましくは10−4g/m2/day以下である。水蒸気透過率は、JIS K7129に準じた感湿センサ、赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置による測定、カップ法(JIS Z0208)により、40℃90%RH環境で測定することができる。
封止層12の100μmにおける酸素透過性は、25℃環境下で、通常1cc/m2/day/atm以下であり、1×10−1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m2/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m2/day/atm以下であることがさらに好ましく、1×10−4cc/m2/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−5cc/m2/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、有機太陽電池素子の酸化による劣化が抑えられる利点がある。なお、酸素透過率は、JIS K7126Aに準じた差圧法に基づく装置、あるいはJIS K7126Bに準じた等圧法に基づく赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置で測定することができる。
<1−5.バリア層13>
バリア層13は、水及び酸素の透過を防止する層である。有機太陽電池素子は湿気及び酸素に弱い傾向があり、特に、有機太陽電池素子を構成するZnO:Al等の透明電極や活性層が水分及び酸素により劣化することがある。そのため、封止層12とバリア層13により、有機太陽電池素子を水及び酸素から保護し、発電性能を高く維持することができる。
バリア層13の水蒸気透過率は、特段の制限はないが、それぞれ単位面積(1m2)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m2/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m2/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m2/day以下であることが更に好ましく、1×10−5g/m2/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m2/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m2/day以下であることが特に好ましい。水蒸気の透過を抑制するほど、有機太陽電池素子及び当該素子のZnO:Al等の透明電極の水分との反応に起因する劣化が抑えられるので、発電効率が維持されることにより寿命が延びる。このようなバリア層を適用することにより有機太陽電池素子の優れた性質を活かした太陽電池モジュールの実施が容易となる。
また、バリア層13の可視光線透過率は、特段の制限はないが、有機太陽電池素子の光吸収を妨げない観点から可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上
、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、太陽電池モジュールは光を受けて熱せられることが多いため、バリア層13は、熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、バリア層13の構成材料の融点は、それぞれ、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで太陽電池モジュールの使用時にガスバリア層が融解・劣化する可能性を低減できる。
バリア層13の具体的な構成は、有機太陽電池素子3を水から保護できる限り任意である。ただし、バリア層13を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできる構成ほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
バリア層13は、樹脂材料を含んで構成される。具体的には、樹脂基材に無機層を積層させた構成とすることが好ましい。
樹脂基材を形成する材料は、特段の制限はなく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、生分解性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、フィルム物性の点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。なお、樹脂層は複数の材料により形成されていてもよい。また、積層構造であってもよい。
無機層を形成する材料は、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、あるいは、これらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、酸化炭化窒化物、ダイヤモンドライクカーボン又はこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでも、太陽電池モジュール中における電流のリークを防ぐために、無機材料はとして、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン並びにこれらの混合物が好ましい。これらのなかでも、高い防湿性が安定に維持できるために、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム及びこれらの混合物が特に好ましい。なお、無機層は複数の無機材料により構成されていてもよい。
バリア層13の厚みは特段の制限はないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは180μm以下、特に好ましくは150μm以下である。バリア層13を厚くすることでバリア性が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まり、さらには可視光の透過率が向上する傾向にある。
また、水分又は酸素による劣化を防止し、長期にわたって有機太陽電池素子の性能を維持するためには、封止層12の端部と発電部1の端部との間隔は2mm以上であることが好ましく、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが特に好ましく、一方、太陽電池モジュールの色調を調整するために、30mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがさらに好ましく、5mm以下であることが特に好ましい。
<1−6.積層体3>
本発明に係る太陽電池モジュールは、意匠性を向上させるために周辺領域2において、発電部1を構成する有機太陽電池素子と分離された積層体3が設けられることが好ましい。なお、積層体が発電部を構成する有機太陽電池素子と分離されるとは、積層体3が、発電部1の有機太陽電池素子を構成するいずれの層とも直接接続していない構造を意味するものとする。すなわち、集電線4を介して発電部1の有機太陽電池素子と積層体3が接続されている場合も、積層体3が発電部1の有機太陽電池素子を構成するいずれの層とも直接、接続されていない限りにおいて、発電部を構成する有機太陽電池と積層体は分離されているとみなすものとする。
積層体は特段の制限はないが、発電部1と同様の色調を有していることが好ましく、なかでも、有機太陽電池素子を構成する活性層と同一の活性層を有することが好ましく、発電部1と周辺領域との色調を完全に合わせるために、該光電変換素子と同一の層構成を有することが好ましい。積層体3を形成する方法は特段の制限はないが、積層体を効率良く作製するためには、後述するように、有機太陽電池素子を製造する際の工程により、積層体3を形成することができる。
本発明において、以下の通り、積層体3を設けることにより、太陽電池モジュールの意匠性を向上することができる。また、太陽電池モジュールの耐久性を向上させることができる。
一般的に光を吸収する必要があるために有機太陽電池素子を構成する活性層は着色されている。そのため、基板全体に有機太陽電池素子を形成するようにして発電部を設ければ、素子基板全体に渡り同じ色調を有する太陽電池モジュールとすることができる。
しかしながら、発電部の端部が素子基板の端部に位置していると、発電部を構成する有機太陽電池素子を十分に封止することができなくなる。特に、有機太陽電池素子は、水分や酸素等の環境成分に対して影響を受けやすい傾向があり、さらには、封止が不十分であると有機太陽電池素子を構成する有機活性層が剥離する場合がある。
そのため、敢えて、発電部1の端部と素子基板11の端部とを揃えることなく、素子基板11上に発電部を設け、周辺領域に発電部を構成する有機太陽電池素子と同じ層構造を有する積層体3を設けることにより、発電部の周辺領域においても発電部と同様の色調とすることができる。さらに、発電部1の端部と、素子基板11の端部は揃っておらず、素子基板11の一部に発電部1が設けられるために、素子基板11と封止層12との接着面積を増やすことができるために、封止強度を向上させることができる。さらには、仮に封止層12の端部から水分や酸素等が浸入したとしても、発電部1は素子基板11の端部から離れた箇所に位置するために発電部は水分や酸素等の影響を受けるのを防ぐことができる。この結果、高い意匠性とともに、高い耐久性を備えた太陽電池モジュールの提供が可能になる。
積層体3は、周辺部に1つのみ設けてもよいし、複数設けてもよいが、封止層11と素子基板11との接触面積を向上させるために、積層体3は複数に分割されて形成されてい
ることが好ましい。
なかでも、以下の理由により、積層体3を構成する上部電極と下部電極とは、互いに導通していることが好ましい。特に、積層体3が複数存在する場合、それぞれの積層体を構成する上部電極と下部電極とが互いに導通していることが好ましい。
積層体3は、発電部1における有機太陽電池素子と同一の層構造を有するために、少なくとも下部電極と、有機活性層と、上部電極とを有する構成となっている。ここで、下部電極及び上部電極が導通していない場合、光起電力により下部電極及び上部電極間に発生した開放電圧同等の電界により、上部電極の金属イオンがマイグレーション現象を起こしてしまい、その結果、時間が経過するにつれて積層体3の色調が変化してしまう場合がある。一方、積層体3を構成する下部電極及び上部電極が導通している場合、上部電極及び下部電極間に電界が発生することがなくなるために金属イオンのマイグレーションが起こらなくなる。そのため、時間が経過に伴い積層体3の色調の変化を抑えることができる。なお、発電部1における有機太陽電池素子においても、同様のマイグレーション現象は発生しうるが、発電部1は外部負荷と接続されているため、下部電極および上部電極に発生する電界は開放電圧より低くなるため、有機太陽電池素子の色調の変化はほとんど起きない。
なお、積層体の形状は特段の制限はなく、図1に示すように、太陽電池モジュールを上面から観た場合に、矩形、円状又はその他の任意の形状であってもよい。但し、意匠性の向上とともに、封止層12と素子基板11との密着性を向上させるために積層体の形状は矩形であることが好まく、長方形であることが特に好ましい。
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、素子基板11の四辺に沿って、それぞれに周辺領域が存在しているが、積層体3は各周辺領域にそれぞれ存在することが好ましい。特に、積層体3が長方形である場合、外観性の向上のために、積層体3の短辺は、300μm以上であることが好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。また、積層体3は素子基板11の辺に対して概略平行に位置することが好ましい。なお、本発明において、概略平行とは、基準となる辺に対して、160°以上200°以上であることを意味する。
また、複数の積層体3が長方形である場合、各積層体の間隔は、特段の制限はないが、素子基板11と封止層12との接着強度の向上のために100μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがさらに好ましく、一方、意匠性の向上のために1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。
また、太陽電池モジュールの各周辺領域において、積層体3のなかで最も素子基板11の端部に位置する積層体と素子基板11の端部との距離は、特段の制限はないが、発電部11と積層体3との絶縁性確保のために20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、200μm以上であることが特に好ましく、一方、発電面積低下による発電量低下の影響を最小限に抑えるために1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。
後述するように、本発明に係る太陽電池モジュールは、周辺領域において、積層体3が形成されるが、周辺領域の積層体が形成されていない部分において、封止層12は、素子基板11と直接接触していることが好ましい。このように、封止層12と素子基板11の上面が直接接触することにより素子基板11から封止層12が剥離しにくくなるために、
太陽電池モジュールの意匠性と耐久性を両立させることができる。なお、封止層12が、素子基板11から剥離しにくくするために、封止層12と素子基板11が接触する面積は、素子基板11の面積の10%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましく、一方、太陽電池モジュールの意匠性を向上させるために、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
なお、封止層12の端部が素子基板11の端部よりも外側に位置すると、当該部分の封止層12と発電部1の色調と統一感がなくなる。その結果、太陽電池モジュールの意匠性が低下してしまう。そのため、封止層12及び素子基板11の端部は略揃っていることが好ましい。なかでも、封止層12の四辺端部と、素子基板11の四辺端部がそれぞれ略揃っていることが好ましい。なお、本発明において封止層の端部と素子基板の端部が略揃うとは、完全に各端部が揃っていることに限定されるものではなく、±1cmのズレを含むものとする。
<2.太陽電池モジュールの製造方法>
図1に示す太陽電池モジュールの製造方法は、特段の制限はなく任意の方法により製造すればよい。代表例として、図4を用いて説明する。なお、図4は図1におけるX−X’断面を示す。
図4(a)に示すように、素子基板11上に下部電極層14’を成膜する。下部電極層14’の形成材料、成膜方法、膜厚等は特段の制限はないが、上述の<1−3−1.一対の電極(14、16)>で説明した内容を参照して適宜選択すればよい。
次に、図4(b)に示すように、発電部とする領域において、下部電極層14’に開溝21を設けることで、下部電極層14’を複数の下部電極14に分割する。下部電極層14’を複数の下部電極14に分割する方法は、特段の制限はなく、例えば、リフトオフ法、レーザースクライブ法、メカニカルスクライブ法等が挙げられ、中でもレーザースクライブ法が好ましく、例えば、公知の特開2014−60392号公報に記載の方法により行うことができる。なお、レーザースクライブ法により下部電極層14’を分割する際には、素子基板11側からレーザーを照射して行ってもよいし、下部電極層14’側からレーザーを照射してもよい。
次に、図4(c)に示すように、分割した下部電極層14’上に有機活性層15’を成膜する。有機活性層15’の形成材料、成膜方法、膜厚等は特段の制限はないが、上述の<1−3−2.有機活性層(15)>で説明した内容を参照して適宜選択すればよい。
次に、図4(d)に示すように、発電部とする領域において、有機活性層形成層15’に開溝22を設けて、有機活性層形成層15’を複数の有機活性層15に分割する。なお、開溝22は開溝21を重ならない位置に設けることが好ましい。有機活性層形成層15’の分割方法は特段の制限はなく、下部電極層14’の分割方法と同様の方法が挙げられる。
次に、図4(e)に示すように、分割された有機活性層形成層15’上に上部電極層16’を成膜する。上部電極層16’の形成材料、成膜方法、膜厚等は特段の制限はないが、上述の<1−3−1.一対の電極(14、16)>で説明した内容を参照して適宜選択すればよい。
次に、図4(f)に示すように、発電部とする領域において、上部電極層16’及び有機活性層15に開溝23を設けることにより、上部電極層16’及び有機活性層15を分
割する。なお、開溝23は、開溝21及び開溝22と重ならない位置に設けることが好ましい。また、上部電極層16’及び有機活性層15を分割する方法は特段の制限はなく、下部電極層14’の分割方法と同様の方法により分割することができる。
次に、図4(g)に示すように、周辺領域において、残存する下部電極層14’、有機活性層形成層15’及び上部電極層16’を、開溝24を設けることによって、発電部を構成する光電変換素子と分離するように分割することにより積層体3を形成する。なお、周辺領域における残存する下部電極層14’、有機活性層形成層15’及び上部電極層16’の分割方法は特段の制限はなく発電部における下部電極層14’の分割方法と同様の方法が挙げられる。なお、周辺領域において積層体3を複数設ける場合は、開溝25を設けるように、下部電極層14’、有機活性層形成層15’及び上部電極層16’を複数の積層体3が形成できるように分割すればよい。なお、開溝25において、必ずしも下部電極層14’、有機活性層形成層15’及び上部電極層16’の全てを除去する必要はなく、例えば、下部電極層16’のみ残してもよい。
なお、有機太陽電池素子が下部バッファ層及び上部バッファ層を有する場合も、各バッファ層形成層を成膜した後又は各層の成膜後に、分割すればよい。
なお、周辺領域に配置される積層体3の上部電極及び下部電極を導通させる場合は、当該積層体の製造方法に特段の制限はない。例えば、積層体3の有機活性層に開溝を設けておき、当該開溝を介して積層体3を構成する下部電極及び上部電極を導通させる方法が挙げられる。具体的には、図4(d)に示す工程時に、周辺領域の所望の位置に有機活性層形成層15’に開溝を形成するように分割しておくことで、積層体3の下部電極及び上部電極が導通した積層体を形成することができる。また、積層体3を形成する際に、下部電極にバリが発生するように形成しておき、当該バリを介して、積層体3の上部電極と導通させることができる。この場合は、積層体3を形成する際に、ガウシアンビーム形状のレーザーにより分割を行うことで積層体の下部電極に発生するバリにより、下部電極と上部電極とを導通させることができる。
次に、発電部を構成する任意の有機太陽電池素子に集電線4を設置し、その後、封止層12及びバリア層13の積層体により封止することにより太陽電池モジュールを作製することができる。なお、集電線4、封止層12、バリア層13は、それぞれ、上述の<1−1.集電線4>の項目、<1−4.封止層12>の項目、及び<1−5.バリア層13>の項目に記載のものを使用すればよい。また、集電線14の設置方法、並びに、封止層12及びバリア層13の積層体の封止方法は特段の制限はなく、公知の方法で行えばよい。
<他の実施形態に係る太陽電池モジュール>
なお、本発明に係る太陽電池モジュールは上記の構成に限定されない。上述の本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールは、素子基板11側にも封止層とバリア層とを有していてもよい。この場合も、封止層及びバリア層は上述の<1−4.封止層12>及び<1−5.バリア層>で挙げたものを用いることができる。
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の層を有していてもよい。例えば、ゲッター材層、表面保護層等を有していてもよい。
<3.用途>
本発明に係る太陽電池モジュールは、特段の制限はないが、建物や車両等の、窓、ドア、壁面、天井等のガラス、パーティション等のガラス等の被着体に貼り付けて使用することができる。この際、太陽光、室内の照明、室内の太陽光の散乱光等を利用して発電し、集電線から取り出した電力を、公知の電流電圧変換回路、蓄電池等を利用して充電、利用
することができる。特に、本発明に係る太陽電池モジュールは、複数の太陽電池モジュールを並べて配置した際に、外観色が統一されているために意匠性を向上することができるために好ましい。