本発明の一態様によると、下記式(1):
式(1)中、Ar1は、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の3価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の3価の芳香族複素環基を表し、
Ar2及びAr3は、それぞれ独立して、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の1価の芳香族複素環基を表し、
L1及びL2は、それぞれ独立して、単結合、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の2価の芳香族複素環基を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換された若しくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換された若しくは非置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の1価の芳香族複素環基を表し、
R1及びR2は、互いに結合して環を形成してもよく、
aは、0以上4以下の整数を表し、
bは、0以上3以下の整数を表し、
Zは、それぞれ独立して、窒素原子又は−CH=を表す;
で表される構成単位(1)、並びに
下記式(2):
式(2)中、Ar4は、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の(2+p)価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の(2+p)価の芳香族複素環基を表し、
L3は、それぞれ独立して、単結合、置換された若しくは非置換の炭素数1以上24以下のアルキレン基、又は置換された若しくは非置換のフェニレン基を表し、
Q1は、それぞれ独立して、1価の架橋性基を示し、
pは、1以上の整数を表す;
で表される構成単位(2)を含む、高分子化合物が提供される。
本明細書において、上記式(1)で表される構成単位(1)、上記式(2)で表される構成単位(2)及び後述する式(3)で表される構成単位(3)を、それぞれ、単に「構成単位(1)」、「構成単位(2)」、及び「構成単位(3)」と、称する。
本発明の一態様に係る高分子化合物は、少なくとも1種の構成単位(1)及び少なくとも1種の構成単位(2)を含む共重合体であることを特徴とし、さらに、構成単位(3)を1種以上含んでいてもよい。
上記式(1)の構成単位(1)は、アミノ基で置換された窒素含有芳香族環(例えば、カルバゾール骨格)を有する。ゆえに、構成単位(1)を有することで正孔輸送性を向上できる。また、上記式(2)の構成単位(2)は、架橋性基(上記式(2)中の「Q1」)を有する。ゆえに、本発明の一態様に係る高分子化合物を含有する薄膜は、高分子化合物が架橋された後、上層の湿式(塗布)法による積層が可能になる。さらに、上記式(3)の構成単位(3)は、溶媒(特に、有機溶媒)への溶解性を向上できる。ゆえに、本発明の一態様に係る高分子化合物が構成単位(3)を有する場合には、湿式(塗布)法による成膜化をより容易にできる。
したがって、本発明の一態様に係る高分子化合物は、高い三重項エネルギー準位、正孔輸送性を有する。ゆえに、本発明の一態様に係る高分子化合物を(特に、正孔輸送材料として)有機エレクトロルミネッセンス素子に適用して作製される有機エレクトロルミネッセンス素子は、高い電流効率、長い駆動寿命、低い駆動電圧を発揮できる。また、本発明の一態様に係る高分子化合物は、成膜性及び溶媒溶解性に優れるため、湿式(塗布)法による成膜が可能である。ゆえに、本発明の一態様に係る高分子化合物を用いることによって、有機エレクトロルミネッセンス素子の大面積化、高生産性が可能となる。
なお、上記メカニズムは、推測によるものであり、本発明の一態様は、上記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみに限定されない。また、特記しない限り、操作及び物性等の測定は、室温(20℃以上25℃以下)、相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
[高分子化合物]
本実施形態に係る高分子化合物は、構成単位(1)及び構成単位(2)を有する。
(構成単位(1))
ここで、構成単位(1)は、下記式(1)で示される。本実施形態に係る高分子化合物は、1種の構成単位(1)を含むものであってもよいし、2種以上の構成単位(1)を含むものであってもよい。
下記式(1):
上記構成単位(1)は、高分子化合物の主鎖に芳香族基(式(1)中のAr1)、側鎖に窒素含有芳香族環及びこれに結合するアリールアミン(−N(Ar2)(Ar3))を有することを特徴とする。このような構成単位(1)を導入することによって、高分子化合物は、高い三重項エネルギー準位を示し、電流効率を向上できる。
上記式(1)中、Ar1は、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の3価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の3価の芳香族複素環基を表す。
ここで、芳香族炭化水素基は、一つ以上の芳香族環を含む炭素環を有する炭化水素(芳香族炭化水素)由来の基である。この際の芳香族炭化水素は、一つ以上の芳香族環を含む炭素環を有する炭化水素を意味する。また、芳香族炭化水素基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに縮合していてもよい。また、これら芳香族炭化水素基に存在する1以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。
芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素としては、以下に制限されないが、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ヘプタレン、アセナフタレン、フェナレン、フルオレン、アントラキノン、フェナントレン、ビフェニル、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン等を挙げることができる。
また、芳香族複素環基は、1個以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S))を有し、残りの環原子が炭素原子(C)である1以上の芳香族環を含む環(芳香族複素環)由来の基である。この際の芳香族複素環は、1個以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S))を有し、残りの環原子が炭素原子(C)である1以上の芳香族環を含む環を意味する。また、芳香族複素環基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに縮合していてもよい。また、これら芳香族複素環基に存在する1以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。
芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、以下に制限されないが、ピラゾリン、イミダゾリン、オキサゾリン、チアゾリン、トリアゾリン、テトラゾリン、オキサジアゾリン、ピリジン、ピリダジニン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾリン、インドリン、キノリニン、イソキノリン、ベンゾイミダゾリン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン等を挙げることができる。
3価の芳香族炭化水素基としては、上記芳香族炭化水素の水素原子のうち、任意の3つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。また、3価の芳香族複素環基としては、上記芳香族複素環の水素原子のうち、任意の3つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。
これらのうち、三重項エネルギー準位のさらなる向上の観点から、Ar1は、下記に示す基であることが好ましい。下記において、*は、他の構成単位との結合部位である。
Ar1としての炭素数6以上30以下の3価の芳香族炭化水素基、又は環形成原子数3以上30以下の3価の芳香族複素環基が置換基を有する場合に存在し得る置換基は、特に制限されない。具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基、並びにこれらの組み合わせなどが挙げられる。
ここで、上記3価の芳香族炭化水素基又は3価の芳香族複素環基に導入されてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記3価の芳香族炭化水素基又は3価の芳香族複素環基に導入されてもよいアルキル基は、特に制限されないが、炭素数1以上24以下の直鎖又は分岐状のアルキル基でありうる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−tert−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1以上8以下の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましい。
上記3価の芳香族炭化水素基又は3価の芳香族複素環基に導入されてもよいアルコキシ基は、特に制限されないが、炭素数1以上24以下の直鎖又は分岐状のアルコキシ基でありうる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3−エチルペンチルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1以上8以下の直鎖若しくは分岐状のアルコキシ基が好ましい。
上記3価の芳香族炭化水素基(又は3価の芳香族複素環基)に導入されてもよい芳香族複素環基(又は芳香族炭化水素基)については、それぞれ、上記芳香族複素環(又は芳香族炭化水素)から水素原子を1つを取り除いた1価の基である。
上記式(1)において、Ar2及びAr3は、それぞれ独立して、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の1価の芳香族複素環基を表す。
ここで、1価の芳香族炭化水素基及び1価の芳香族複素環基は、上記式(1)中のAr1における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基(3価の基)を1価とする以外は、同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。同様にして、1価の芳香族炭化水素基又は1価の芳香族複素環基に存在し得る置換基は、上記式(1)中のAr1における置換基と同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。
三重項エネルギー準位や、正孔輸送性、正孔注入性のさらなる向上などの観点から、1価の芳香族炭化水素基は、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、ターフェニル基、トリル基、t−ブチルフェニル基、(フェニルプロピル)フェニル基であることが好ましく、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基、ターフェニル基、トリル基であることがより好ましい。また、三重項エネルギー準位や、正孔輸送性、正孔注入性のさらなる向上などの観点から、1価の芳香族複素環基は、ピリジル基、ビピリジル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、ピリミジル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、キノリル基、キノキサニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、チオフェニル基、イソチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基であることが好ましく、ピリジル基、ピロリル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ビピリジル基であることがより好ましい。また、三重項エネルギー準位や、正孔輸送性、正孔注入性、溶解性、塗布性の向上などの観点から、1価の芳香族炭化水素基又は1価の芳香族複素環基に存在し得る置換基は、炭素数1以上8以下のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基及びニトロ基から選ばれるものであることが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。
Ar2及びAr3の具体例を以下に示す。下記において、*は、他の構成単位との結合部位である。また、下記において、「Alkyl」は、「無置換又はアルキル基で置換された」ことを意味する。
上記式(1)において、L1及びL2は、それぞれ独立して、単結合、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の2価の芳香族複素環基を表す。
ここで、2価の芳香族炭化水素基及び2価の芳香族複素環基は、上記式(1)中のAr1における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基(3価の基)を2価とする以外は、同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。同様にして、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基に存在し得る置換基は、上記式(1)中のAr1における置換基と同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。
三重項エネルギー準位や、正孔輸送性、正孔注入性のさらなる向上などの観点から、2価の芳香族炭化水素基は、フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ナフタセニレン基、ピレニレン基、ターフェニレン基、トリレン基、t−ブチルフェニレン基、(フェニルプロピル)フェニレン基であることが好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ターフェニレン基、トリレン基であることがより好ましい。また、三重項エネルギー準位や、正孔輸送性、正孔注入性のさらなる向上などの観点から、2価の芳香族複素環基は、ピリジル基、ビピリジル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、ピリミジル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、キノリル基、キノキサニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、チオフェニル基、イソチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基であることが好ましく、ピリジル基、ピロリル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ビピリジル基であることがより好ましい。また、三重項エネルギー準位や、正孔輸送性、正孔注入性、溶解性、塗布性のさらなる向上などの観点から、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基に存在し得る置換基は、炭素数1以上50以下のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基及びニトロ基から選ばれるものであることが好ましく、炭素数1以上50以下のアルキル基であることがより好ましい。
これらのうち、L1及びL2は、単結合、フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ナフタセニレン基、ピレニレン基、ターフェニレン基、トリレン基、t−ブチルフェニレン基、(フェニルプロピル)フェニレン基が好ましく、単結合、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、フルオレニレン基がより好ましい。
上記式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換された若しくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換された若しくは非置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の1価の芳香族複素環基を表す。この際、R1及びR2は、互いに結合して環を形成してもよい。なお、R1及びR2は、同一であってもよいし、相互に異なっていてもよい。また、R1が複数存在する(即ち、aが2以上4以下である)場合、R1は、互いに同一でも異なってもよい。同様にして、R2が複数存在する(即ち、bが2又は3である)場合、R2は、互いに同一でも異なってもよい。
ここで、炭素数1以上20以下のアルキル基は、特に制限されず、炭素数1以上20以下の直鎖又は分岐状のアルキル基でありうる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−tert−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1以上8以下の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましい。
炭素数1以上20以下のアルコキシ基は、特に制限されず、炭素数1以上20以下の直鎖又は分岐状のアルコキシ基でありうる。具体的には、メトキシ基、エチキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、tert−ペントキシ基、ネオペントキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、1−イソプロピルプロポキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、3−エチルペンチルオキシ基、2−メチル−1−イソプロピルプロポキシ基、1−エチル−3−メチルブトキシ基、n−オクチル基オキシ、2−エチルヘキシルオキシ基、3−メチル−1−イソプロピルブトキシ基、2−メチル−1−イソプロポキシ基、1−tert−ブチル−2−メチルプロポキシ基、n−ノニルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、1−メチルデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1以上8以下の直鎖若しくは分岐状のアルコキシ基が好ましい。
炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基及び環形成原子数3以上30以下の1価の芳香族複素環基は、上記式(1)中のAr1における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基(3価の基)を1価とする以外は、同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。これらのうち、フェニル基、フルオレニル基が好ましい。
上記炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、又は環形成原子数3以上30以下の1価の芳香族複素環基に存在し得る置換基は、上記式(1)中のAr1における置換基と同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。
aは、置換基「R1」が側鎖に位置する窒素含有芳香族環に結合する数を表し、0以上4以下の整数である。aは、好ましくは0以上2以下の整数であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である(置換基「R1」が存在しない)。
bは、置換基「R2」が側鎖に位置する窒素含有芳香族環に結合する数を表し、0以上3以下の整数である。bは、好ましくは0以上2以下の整数であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である(置換基「R2」が存在しない)。
上記式(1)において、窒素含有芳香族環を構成するZは、それぞれ独立して、窒素原子又は−CH=を表す。
以下に、窒素含有芳香族環の好ましい構造を示す。
即ち、構成単位(1)は、下記いずれかの構造を有することが好ましい。下記において、*は、他の構成単位との結合部位である。また、下記において、「Alkyl」は、「無置換又はアルキル基で置換された」ことを意味する。
本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(1)の割合は、特に限定されない。得られる高分子化合物を用いて形成した層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層)の三重項エネルギー準位(ゆえに、電流効率)のさらなる向上効果などを考慮すると、構成単位(1)の割合は、高分子化合物を構成する全構成単位数に対して、好ましくは0.1%以上99.9%以下であり、より好ましくは20%以上95%以下であり、さらに好ましくは40%以上90%以下である。なお、高分子化合物が2種以上の構成単位(1)を含む場合には、上記構成単位(1)の含有量は、構成単位(1)の合計量を意味する。
ここで、本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(1)の割合が大きい場合には、正孔輸送能が向上し、駆動電圧が低下することになり、電流効率の向上に寄与する。一方、本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(1)の割合が小さい場合には、発光層内でのキャリアバランスが良好となり、再結合に寄与しないキャリア数が減少し、電流効率の向上に寄与する。
(構成単位(2))
また、本実施形態に係る高分子化合物は、下記式(2)で表される構成単位(2)を有する。構成単位(2)は架橋性基を有しているため、構成単位(2)を有する高分子化合物は、成膜を容易に行うことができる。なお、本実施形態に係る高分子化合物は、構成単位(2)1種を含むものであってもよいし、2種以上の構成単位(2)を含むものであってもよい。好ましくは、本実施形態に係る高分子化合物は、2種以上(より好ましくは2種又は3種、特に好ましくは2種)の構成単位(2)を含む。
上記式(2)中、Ar4は、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の(2+p)価の芳香族炭化水素基又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の(2+p)価の芳香族複素環基を表す。
ここで、(2+p)価の芳香族炭化水素基及び(2+p)価の芳香族複素環基は、上記式(1)中のAr1における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基(3価の基)を(2+p)価とする以外は、同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。
これらのうち、得られる高分子化合物による成膜容易性、被膜強度のさらなる向上効果などを考慮すると、Ar4は、下記式のいずれかであることが好ましい。下記において、Z及びZ'は、式:−L3−Q1で示される基を表し、これらは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
これらのうち、Ar4は、下記構造を有することが好ましい。
また、Ar4の規定において、(2+p)価の芳香族炭化水素基又は(2+p)価の芳香族複素環基に存在し得る置換基は、上記式(1)中のAr1における置換基と同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。
また、上記式(2)中、L3は、それぞれ独立して、単結合、置換された若しくは非置換の炭素数1以上24以下のアルキレン基、又は置換された若しくは非置換のフェニレン基を表す。ここで、L3が複数存在する(pが2以上の整数である)場合、それらは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。ここで、アルキレン基は、特に制限されないが、炭素数1以上24以下の直鎖又は分岐状のアルキレン基でありうる。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の、上記アルキル基の例示からいずれかの水素原子を1個除いた基が挙げられる。これらのうち、L3は、炭素数1以上8以下の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基であることがより好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。また、L3の規定において、炭素数1以上24以下のアルキレン基又はフェニレン基に存在し得る置換基は、上記式(1)中のAr1における置換基と同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。
得られる高分子化合物による成膜容易性、被膜強度のさらなる向上効果などを考慮すると、L3は、単結合又は炭素数1以上8以下の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基であることが好ましく、単結合又はメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基であることがより好ましく、単結合又はエチレン基であることが特に好ましい。
上記式(2)において、Q1は、1価の架橋性基を表す。ここで、Q1が複数存在する(pが2以上の整数である)場合、それらは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
架橋性基は、熱や活性エネルギー線による架橋反応を誘導できる基であれば、特に制限されないが、得られる高分子化合物による成膜容易性、被膜強度のさらなる向上効果などを考慮すると、下記構造が好ましく挙げられる。即ち、本実施形態の好ましい態様によると、前記式(2)中、Q1は、下記群:
から選択される。上記架橋性基を表す式において、R10〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換された若しくは非置換の炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。pは、それぞれ独立して、1以上10以下の整数を表す。
ここで、炭素数1以上10以下のアルキル基は、特に制限されないが、炭素数1以上10以下の直鎖又は分岐状のアルキル基でありうる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−tert−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基などが挙げられる。これらのうち、R10〜R16は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上5以下の直鎖若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1以上3以下の直鎖若しくは分岐状のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。また、炭素数1以上10以下のアルキル基に存在し得る置換基は、上記式(1)中のAr1における置換基と同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。
これらのうち、架橋反応性(架橋容易性、成膜容易性)、架橋構造の安定性、電解化学的安定性などを考慮すると、下記構造のベンゾシクロブテン環由来の基(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエニル基)やビニル基(−CH=CH2)が好ましい。また、架橋反応性(架橋容易性)などの観点から、エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基が好ましい。
上記式(2)において、pは、1以上の整数であり、Ar4によって一義的に規定される。即ち、pは、1以上3以下の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
即ち、構成単位(2)は、下記いずれかの構造を有することが好ましい。
本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(2)の割合は、特に限定されない。得られる高分子化合物による成膜容易性、被膜強度のさらなる向上効果などを考慮すると、構成単位(2)の割合は、高分子化合物を構成する全構成単位数に対して、好ましくは0.1%以上99.9%以下であり、より好ましくは1%以上50%以下であり、さらに好ましくは3%以上30%以下である。なお、高分子化合物が2種以上の構成単位(2)を含む場合には、上記構成単位(2)の含有量は、構成単位(2)の合計量を意味する。
ここで、本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(2)の割合が大きい場合には、架橋性基の反応による不溶化が十分となり、塗布による積層が容易になる。一方、本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(2)の割合が小さい場合には、正孔輸送能が良好になり、電流効率の向上に寄与する。
(構成単位(3))
本実施形態に係る高分子化合物は、下記式(3)で表される構成単位(3)をさらに有してもよい。構成単位(3)を有する高分子化合物は、溶媒溶解性に優れる。このため、このような構成単位(3)を有する高分子化合物を用いることにより、塗布法によって成膜をさらに容易に行うことができる。なお、本実施形態に係る高分子化合物は、構成単位(3)1種を含むものであってもよいし、2種以上の構成単位(3)を含むものであってもよい。
上記式(3)において、Ar5は、置換された若しくは非置換の炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基、又は置換された若しくは非置換の環形成原子数3以上30以下の2価の芳香族複素環基を表す。
ここで、2価の芳香族炭化水素基及び2価の芳香族複素環基は、上記式(1)中のAr1における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基(3価の基)を2価とする以外は、同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。これらのうち、溶剤溶解性のさらなる向上を考慮すると、Ar5は、フェニレン基、フルオレンジイル基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ナフタセニレン基、ピレニレン基、ターフェニレン基、トリレン基、t−ブチルフェニレン基、(フェニルプロピル)フェニレン基であることが好ましく、フェニレン基、フルオレンジイル基であることがより好ましい。
また、Ar5の規定において、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基に存在し得る置換基は、上記式(1)中のAr1における置換基と同様の定義であるため、ここでは、説明を省略する。これらのうち、得られる高分子化合物の溶媒溶解性のさらなる向上効果などを考慮すると、置換基は、炭素数1以上20以下の直鎖若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、炭素数3以上10以下の直鎖若しくは分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数6以上8以下の直鎖のアルキル基であることが特に好ましい。
即ち、構成単位(3)は、下記いずれかの構造を有することが好ましい。なお、下記において、「Alkyl」は、「アルキル基で置換された」ことを意味する。
本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(3)の割合は、特に制限されない。得られる高分子化合物の溶媒溶解性のさらなる向上効果などを考慮すると、構成単位(3)の割合は、高分子化合物を構成する全構成単位数に対して、好ましくは0%以上99.9%以下であり、より好ましくは0%以上90%以下であり、さらに好ましくは0%以上60%以下である。なお、高分子化合物が2種以上の構成単位(3)を含む場合には、上記構成単位(3)の含有量は、構成単位(3)の合計量を意味する。
ここで、本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(3)の割合が大きい場合には、溶媒への溶解度が十分となり、塗布法による薄膜形成が容易となる。本実施形態に係る高分子化合物に含まれる構成単位(3)の割合が小さい場合には、薄膜のガラス転移温度が高くなり、エレクトロルミネッセンス素子の性能の向上に寄与する。
本実施形態に係る高分子化合物は、少なくとも1種の構成単位(1)及び少なくとも1種の構成単位(2)を含む共重合体であることを特徴とし、さらに、構成単位(3)を1種以上含んでいてもよい。即ち、本実施形態の好ましい態様では、構成単位(1)及び構成単位(2)に加えて、構成単位(3)をさらに含む高分子化合物が提供される。ここで、高分子化合物の構造は、特に制限されず、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
本実施形態に係る高分子化合物の数平均分子量(Mn)は、本発明の一態様の目的効果が得られる限りにおいて、特に制限されるものではないが、例えば、10,000以上500,000以下であることが好ましく、30,000以上200,000以下であることがより好ましい。このような数平均分子量であれば、高分子化合物を用いて層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層)を形成するための塗布液の粘度を適切に調節して、均一な厚さの層を形成することが可能である。また、本実施形態に係る高分子化合物の重量平均分子量(Mw)も、また、本発明の一態様の目的効果が得られる限りにおいて、特に制限されるものではないが、例えば、10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましい。このような重量平均分子量であれば、高分子化合物を用いて層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層)を形成するための塗布液の粘度を適切に調節して、均一な厚さの層を形成することが可能である。
ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、特に制限されず、公知の方法を用いて、又は、公知の方法を適宜修正して測定できる。本明細書では、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、下記方法により測定される値を採用するものとする。
(数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法)
高分子化合物の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質として用いて、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatography)により、下記条件で測定する。
・分析装置(GPC):株式会社島津製作所製、Prominence
・カラム:ポリマーラボラトリーズ株式会社製、PLgel MIXED−B
・カラム温度:40℃
・流量:1.0mL/min
・試料溶液の注入量:20μL(濃度:約0.05質量%)
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・検出器(UV−VIS検出器):株式会社島津製作所製、SPD−10AV
・標準試料:ポリスチレン
本実施形態に係る高分子化合物の主鎖の末端は、特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。
本実施形態に係る高分子化合物は、公知の有機合成方法を用いることで合成することが可能である。本実施形態に係る高分子化合物の具体的な合成方法は、後述する実施例を参照した当業者であれば、容易に理解することが可能である。具体的には、本実施形態に係る高分子化合物は、下記式(4)で示される1種以上の単量体(1)及び下記式(5)で示される1種以上の単量体(2)を用いた共重合反応により製造することができる。本実施形態に係る高分子化合物が構成単位(3)を含む場合は、1種以上の単量体(1)及び1種以上の単量体(2)に加えて、下記式(6)で示される1種以上の単量体(3)を用いた共重合反応により高分子化合物を製造することができる。なお、高分子化合物の重合に用いられる上記単量体は、公知の合成反応を適宜組み合わせて合成することができ、その構造も、公知の方法(例えば、NMRやLC−MS等)により確認できる。
上記式(4)〜(6)中、Ar1、Ar2、Ar3、L1、L2、R1、R2、a、b、Z、Ar4、L3、Q1、p、及びAr5は、上記式(1)〜(3)におけるのと同様の定義である。Y1〜Y6は、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、特に臭素原子)又は下記構造の基(構造中、RA〜RDは、それぞれ独立して、炭素数1以上3以下のアルキル基である)である。
本実施形態に係る高分子化合物は、構成単位(1)を有するため、高い三重項エネルギー準位を有する。このため、特に、本実施形態に係る高分子化合物を正孔注入材料又は正孔輸送材料(特に正孔輸送材料)として使用する場合には、電流密度を向上できる。また、本実施形態に係る高分子化合物を有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる場合には、高い電荷移動度が達成される。このため、特に本実施形態に係る高分子化合物を正孔輸送材料として使用する場合には、電子に対しての劣化影響を小さくして、素子寿命(駆動寿命)を向上できる。ゆえに、本実施形態に係る高分子化合物が適用された有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光効率及び耐久性に優れる。さらに、本実施形態に係る高分子化合物は、架橋性基を有する構成単位(2)を有するため、塗布膜安定性を向上できる。本実施形態に係る高分子化合物が構成単位(3)を有する場合には、溶媒溶解性をさらに向上できる。このため、有機エレクトロルミネッセンス素子を積層構造で形成した場合の発光特性及び安定性を向上させることができる。
<有機エレクトロルミネッセンス素子用材料>
本実施形態に係る高分子化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として、好適に用いられる。本実施形態に係る高分子化合物によれば、高い三重項エネルギー準位(ゆえに電流効率)、さらには高い電荷移動度(耐久性)を有する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。また、本実施形態に係る高分子化合物は、架橋性基を有する構成単位(2)を含むため、高分子化合物が架橋された後、上層の湿式(塗布)法による成膜性を向上できる。
したがって、本実施形態によれば、本実施形態に係る高分子化合物の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料としての使用が提供される。即ち、本実施形態は、本実施形態に係る高分子化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料をも提供する。また、一対の電極と、一対の電極間に配置された、本実施形態に係る高分子化合物の架橋物又は非架橋物を含む1層以上の有機層とを備える、有機エレクトロルミネッセンス素子をも提供する。本実施形態の好ましい態様としては、有機エレクトロルミネッセンス素子は、一対の電極間に配置され、三重項励起子からの発光が可能な発光材料を含む発光層をさらに備える。さらに、本実施形態の好ましい態様は、1層以上の有機層のうち、少なくとも1層が、塗布法により形成されている。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機溶媒に対する溶解性に優れるため、塗布法(ウェットプロセス)による素子(特に、薄膜)の製造に、特に好適に用いられる。このため、本実施形態は、本実施形態に係る高分子化合物と、溶媒又は分散媒とを含有する液状組成物をも提供する。また、本実施形態は、本実施形態に係る高分子化合物を含有する薄膜をも提供する。
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、電荷移動度に優れるため、正孔注入材料、正孔輸送材料、及び/又は発光層材料(ホスト)等のいずれの有機膜の形成においても、好適に利用され得る。本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、正孔の輸送性の観点から、正孔注入材料及び/又は正孔輸送材料として好適に用いられ、正孔輸送材料として特に好適に用いられる。即ち、本実施形態は、本実施形態に係る高分子化合物と、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有する組成物をも提供する。ここで、発光材料は、特に制限されないが、発光性有機金属錯体化合物を含有することが好ましい。
<有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)>
以下では、図1を参照して、本実施形態に係る有機EL素子について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の一例を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る有機EL素子100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層140と、正孔輸送層140上に配置された発光層150と、発光層150上に配置された電子輸送層160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層170と、電子注入層170上に配置された第2電極180とを備える。
ここで、本実施形態に係る高分子化合物の架橋物又は非架橋物は、例えば、第1電極120と第2電極180との間に配置されたいずれかの有機層中に含まれる。具体的には、高分子化合物の架橋物又は非架橋物は、正孔注入材料として、正孔注入層130に含まれる、正孔輸送材料として、正孔輸送層140に含まれる、又は、発光材料(ホスト)として、発光層150に含まれることが好ましい。また、高分子化合物の架橋物又は非架橋物は、正孔注入材料として、正孔注入層130に含まれる、又は、正孔輸送材料として、正孔輸送層140に含まれることがより好ましい。さらに、高分子化合物の架橋物又は非架橋物は、正孔輸送材料として、正孔輸送層140に含まれることが特に好ましい。
また、本実施形態に係る高分子化合物の架橋物又は非架橋物を含む有機層は、塗布法(溶液塗布法)によって形成される。具体的には、高分子化合物を含む有機層は、スピンコート(spin coat)法、キャスティング(casting)法、マイクログラビアコート(micro gravure coat)法、グラビアコート(gravure coat)法、バーコート(bar coat)法、ロールコート(roll coat)法、ワイアーバーコード(wire bar coat)法、ディップコート(dip coat)法、スプレーコート(spry coat)法、スクリーン(screen)印刷法、フレキソ(flexographic)印刷法、オフセット(offset)印刷法、インクジェット(ink jet)印刷法等の溶液塗布法により成膜される。なお、溶液塗布法に使用する溶媒は、高分子化合物を溶解することができるものであれば、どのような溶媒でも使用することができ、使用する高分子化合物の種類によって適宜選択できる。例えば、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アニソール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジオキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、N−メチル−2−ピロリドン等が例示できる。ここで、溶媒の使用量は、特に制限されないが、塗布容易性などを考慮すると、高分子化合物の濃度が、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下程度、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下程度となるような量である。
なお、高分子化合物を含む有機層以外の層の成膜方法については、特に限定されない。本実施形態に係る高分子化合物を含む有機層以外の層は、例えば、真空蒸着法により成膜されてもよく、溶液塗布法により成膜されてもよい。
基板110は、一般的な有機EL素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板などの半導体基板、又は透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
基板110上には、第1電極120が形成される。第1電極120は、具体的には、陽極であり、金属、合金、又は導電性化合物等のうち、仕事関数が大きいものを用いて形成される。例えば、第1電極120は、透明性及び導電性に優れる酸化インジウムスズ(In2O3−SnO2:ITO)、酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等によって、透過型電極として形成されてもよい。また、第1電極120は、上記透明導電膜に対して、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを積層することによって、反射型電極として形成されてもよい。
第1電極120上には、正孔注入層130が形成される。正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする層である。具体的には、約10nm以上約1000nm以下、より具体的には、約10nm以上約100nm以下の厚さで、正孔注入層130が形成されてもよい。
正孔注入層130は、公知の正孔注入材料を用いて形成することができる。正孔注入層130を形成する公知の正孔注入材料としては、例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(poly(ether ketone)−containg triphenylamine:TPAPEK)、4−イソプロピル−4'−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(4−isopropyl−4'−methyldiphenyliodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate:PPBI)、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス−[4−(フェニル−m−トリル−アミノ)−フェニル]−ビフェニル−4,4'−ジアミン(N,N'−diphenyl−N,N'−bis−[4−(phenyl−mtolyl−amino)−phenyl]−biphenyl−4,4'−diamine:DNTPD)、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)、4,4',4"−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4',4"−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine:m−MTDATA)、N,N'−ジ(1−ナフチル)−N,N'−ジフェニルベンジジン(N,N'−di(1−naphthyl)−N,N'−diphenylbenzidine:NPB)、4,4',4"−トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4',4"−tris(diphenylamino)triphenylamine:TDATA)、4,4',4"−トリス(N,N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4',4"−tris(N,N−2−naphthylphenylamino)triphenylamine:2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(polyaniline/dodecylbenzenesulphonic acid)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/poly(4−styrenesulfonate))、及びポリアニリン/10−カンファースルホン酸(polyaniline/10−camphorsulfonic acid)等を挙げることができる。
正孔注入層130上には、正孔輸送層140が形成される。正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を備えた層であり、例えば、約10nm以上約150nm以下の厚さで形成されてもよい。正孔輸送層140は、本実施形態に係る高分子化合物を用い、溶液塗布法によって成膜されることが好ましい。この方法によれば、有機EL素子100の電流効率(さらには駆動寿命)を向上させることが可能な高分子化合物を効率的に大面積で成膜することができる。
ただし、有機EL素子100のいずれかの他の有機層が本実施形態に係る高分子化合物を含む場合、正孔輸送層140は、公知の正孔輸送材料を用いて形成されてもよい。公知の正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1−bis[(di−4−tolylamino)phenyl]cyclohexane:TAPC)、N−フェニルカルバゾール(N−phenylcarbazole)及びポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)などのカルバゾール(carbazole)誘導体、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジアミン(N,N'−bis(3−methylphenyl)−N,N'−diphenyl−[1,1−biphenyl]−4,4'−diamine:TPD)、4,4',4"−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4',4"−tris(N−carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、並びにN,N'−ジ(1−ナフチル)−N,N'−ジフェニルベンジジン(N,N'−di(1−naphthyl)−N,N'−diphenylbenzidine:NPB)等を挙げることができる。
正孔輸送層140上には、発光層150が形成される。発光層150は、蛍光、燐光等によって光を発する層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などにより形成される。発光層150は、例えば、約10nm以上約60nm以下の厚さで形成されてもよい。発光層150の発光材料としては、公知の発光材料を用いることができる。ただし、発光層150に含まれる発光材料は、三重項励起子からの発光(即ち、燐光発光)が可能な発光材料であることが好ましい。このような場合、有機EL素子100の駆動寿命をさらに向上させることができる。
発光層150は、ホスト材料として、本技術分野で使用される化合物全般を使用することが可能であり、特に限定されないが、例えば、カルバゾール化合物、ジカルバゾール化合物、ビスカルバゾール化合物、ジベンゾフラン化合物、スピロビフルオレン化合物、トリアジン化合物、アミン化合物、及びそれらを部分構造として含有するポリマーなどが挙げられる。具体的には、9,9'−ジフェニル−3,3'−ビス[9H−カルバゾール]、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−quinolinato)aluminium:Alq3)、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(4,4'−bis(carbazol−9−yl)biphenyl:CBP)、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(poly(n−vinyl carbazole):PVK)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(9,10−di(naphthalene)anthracene:ADN)、4,4',4"−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4',4"−tris(N−carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(1,3,5−tris(N−phenyl−benzimidazol−2−yl)benzene:TPBI)、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(3−tert−butyl−9,10−di(naphth−2−yl)anthracene:TBADN)、ジスチリルアリーレン(distyrylarylene:DSA)、4,4'−ビス(9−カルバゾール)−2,2'−ジメチル−ビフェニル(4,4'−bis(9−carbazole)2,2'−dimethyl−bipheny:dmCBP)などを含んでもよい。
また、発光層150は、ドーパント材料として、蛍光発光及び燐光発光が可能な化合物であれば、特に限定はなく、例えば、色素化合物、イリジウム錯体、白金錯体等が挙げられる。具体的には、ペリレン(perylene)及びその誘導体、ルブレン(rubrene)及びその誘導体、クマリン(coumarin)及びその誘導体、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(4−dicyanomethylene−2−(pdimethylaminostyryl)−6−methyl−4H−pyran:DCM)及びその誘導体、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(bis[2−(4,6−difluorophenyl)pyridinate]picolinate iridium(III):FIrpic)、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(bis(1−phenylisoquinoline)(acetylacetonate)iridium(III):Ir(piq)2(acac))、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2−phenylpyridine)iridium(III):Ir(ppy)3)、トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)などイリジウム(Ir)錯体、オスミウム(Os)錯体、白金錯体などを含んでもよい。これらのうち、発光材料が発光性有機金属錯体化合物であることが好ましい。
発光層150上には、電子輸送層160が形成される。電子輸送層160は、電子を輸送する機能を備えた層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて形成される。電子輸送層160は、例えば、約15nm以上約50nm以下の厚さで形成されてもよい。
電子輸送層160は、公知の電子輸送材料を用いて形成されてもよい。公知の電子輸送材料としては、例えば、(8−キノリノラト)リチウム(Liq)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−quinolinato)aluminium:Alq3)、及び含窒素芳香環を有する化合物等を挙げることができる。含窒素芳香環を有する化合物の具体例としては、例えば、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(1,3,5−tri[(3−pyridyl)−phen−3−yl]benzene)のようなピリジン(pyridine)環を含む化合物、2,4,6−トリス(3'−(ピリジン−3−イル)ビフェニル−3−イル)−1,3,5−トリアジン(2,4,6−tris(3'−(pyridin−3−yl)biphenyl−3−yl)−1,3,5−triazine)のようなトリアジン(triazine)環を含む化合物、2−(4−(N−フェニルベンゾイニダゾリル−1−イル−フェニル)−9,10−ジナフチルアントラセン(2−(4−(N−phenylbenzoimidazolyl−1−yl−phenyl)−9,10−dinaphthylanthracene)のようなイミダゾール(imidazole)環を含む化合物等を挙げることができる。
電子輸送層160上には、電子注入層170が形成される。電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層であり、真空蒸着法などにより形成される。電子注入層170は、約0.3nm以上約9nm以下の厚さで形成されてもよい。電子注入層170は、電子注入層170を形成する材料として、公知の材料であれば、いずれも使用することができる。例えば、電子注入層170は、(8−キノリノラト)リチウム((8−quinolinato)lithium:Liq)及びフッ化リチウム(LiF)等のリチウム(lithium)化合物、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)、又は酸化バリウム(BaO)等を用いて形成されてもよい。
電子注入層170上には、第2電極180が形成される。第2電極180は、具体的には、陰極であり、金属、合金、又は導電性化合物等のうち、仕事関数が小さいものを用いて形成される。例えば、第2電極180は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の金属、又はアルミニウム−リチウム(Al−Li)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)等の合金で、反射型電極として形成されてもよい。また、第2電極180は、上記金属材料の20nm以下の薄膜、酸化インジウムスズ(In2O3−SnO2)及び酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO)などの透明導電膜によって透過型電極として形成されてもよい。
以上、本実施形態に係る有機EL素子100の一例について説明した。本実施形態に係る有機EL素子100は、高分子化合物を含む有機層を有することにより、電流密度(さらには駆動寿命)をより向上させることができる。
なお、本実施形態に係る有機EL素子100の積層構造は、上記例示に限定されない。本実施形態に係る有機EL素子100は、他の公知の積層構造で形成されてもよい。例えば、有機EL素子100は、正孔注入層130、正孔輸送層140、電子輸送層160及び電子注入層170のうちの1層以上が省略されてもよい。また、有機EL素子100は、追加で他の層を備えていてもよい。また、有機EL素子100の各層は、それぞれ単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
例えば、有機EL素子100は、励起子又は正孔が電子輸送層160に拡散することを防止するために、正孔輸送層140と発光層150との間に正孔阻止層をさらに備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、又は、フェナントロリン(phenanthroline)誘導体等を用いて形成することができる。
なお、本実施形態に係る高分子化合物は、有機EL素子以外のエレクトロルミネッセンス素子に適用することができる。
<有機EL素子以外のエレクトロルミネッセンス素子>
本実施形態に係る高分子化合物を適用することが可能な有機EL素子以外のエレクトロルミネッセンス素子としては、特に限定されないが、量子ドット発光素子(例えば、特開2010−199067号公報参照)、有機無機ペロブスカイト発光素子等が挙げられる。
以下、一例として、量子ドット発光素子について説明する。
量子ドット発光素子は、有機EL素子100の発光層150の代わりに、量子ドット発光層を形成することにより、作製することができる。
量子ドット発光層は、多数の量子ドット(無機ナノ粒子)が単一層または複数層に配列されたものである。ここで、量子ドットは、量子拘束効果を持つ所定サイズの粒子をいう。量子ドットの直径は、1nmないし10nm程度である。
量子ドット発光層に配列される量子ドットは、ウェット化学工程、有機金属化学蒸着工程、分子線エピタキシー工程または他の類似した工程により合成されうる。ウェット化学工程は、有機溶媒に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。結晶が成長する時、有機溶媒が自然に量子ドット結晶の表面に配位されて、分散剤の役割を行って結晶の成長を調節するので、有機金属化学蒸着(MOCVD、Metal Organic Chemical Vapor Deposition)や、分子線エピタキシー(MBE、Molecular Beam Epitaxy)などの気相蒸着法よりさらに容易かつ低コストの工程を通じて、無機ナノ粒子の成長を制御できる。量子ドットのサイズを調節することによって、エネルギーバンドギャップを調節できるようになり、量子ドット発光層で多様な波長帯の光を得ることができる。したがって、複数の異なるサイズの量子ドットを使用することは、複数波長の光を出射するディスプレイを可能にする。量子ドットのサイズは、カラーディスプレイを構成できるように、赤色、緑色、青色光が出射されるように選択できる。また、量子ドットのサイズは、多様なカラー光が白色光を出射するように組み合わせられる。さらに、具体的に、量子ドットとしては、II−VI族半導体化合物;III−V族半導体化合物;IV−VI族半導体化合物;IV族元素または化合物;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される半導体物質を使用できる。
II−VI族半導体化合物は、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択される。
III−V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択される。
IV−VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されることができる。
IV族元素または化合物は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群から選択される一元素化合物;及びSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物からなる群から選択される。
量子ドットは、均質な単一構造またはコア・シェルの二重構造を持つことができる。コア・シェルは相異なる物質を含むことができる。それぞれのコアとシェルとをなす物質は、相異なる半導体化合物からなりうる。ただし、シェル物質のエネルギーバンドギャップは、コア物質のエネルギーバンドギャップより大きい。
例えば、コア(CdSe)・シェル(ZnS)構造を持つ量子ドットを作製する場合を説明する。まず、界面活性剤として、TOPO(trioctylphosphine oxide)を使用した有機溶媒に、(CH3)2Cd(dimethylcadmium)、TOPSe(trioctylphosphine selenide)などのコア(CdSe)の前駆体物質を注入して結晶を生成させる。このとき、結晶が一定のサイズに成長するように高温で一定時間維持した後、シェル(ZnS)の前駆体物質を注入して、既に生成されたコアの表面にシェルを形成させる。これによって、TOPOでキャッピングされたCdSe/ZnSの量子ドットを作製することができる。
本発明の一態様の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
合成例1:化合物1の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物1を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、1,4−ジヘキシル−2,5−ジブロモベンゼン(8.08g、20.0mmol)、ビス(ピナコレートジボロン)(12.19g、48.0mmol)、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)(0.98g、1.2mmol)、酢酸カリウム(11.78g、120.0mmol)、及びジオキサン(100ml)を混合し、加熱還流下で6時間攪拌した。トルエン及び水を加え、分液し、水で洗浄した。硫酸ナトリウム及び活性炭を加え、撹拌した後、セライト(Celite:登録商標)で濾過した。ろ液を濃縮し、粗生成物(11.94g)を得た。ヘキサンで再結晶し、メタノールで結晶を洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥させることにより、化合物1(4.23g)を得た。
得られた化合物1の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
合成例2:化合物2の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物2を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、2,7−ジブロモフルオレン(22.7g、70.0mmol)、5−ブロモ−1−ペンテン(21.9g、147.0mmol)、水酸化カリウム(16.7g、297.6mmol)、ヨウ化カリウム(1.2g、7.2mmol)及びジメチルスルホキシド(170ml)を混合した。混合物を4時間で80℃に加温し、反応が終了した後、室温まで冷却し、そこに、水(300ml)とトルエン(300ml)を混合し、分液した。得られた有機層を飽和食塩水(300ml)で5回洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、固体を濾過した。濾液を濃縮した後、カラムクロマトグラフィー及び再結晶により精製し、化合物2(24.1g)を得た。
得られた化合物2の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
合成例3:化合物3の合成
3−1.化合物3−1の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物3−1を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、3−ブロモベンゾシクロブタン(4.1g、22.4mmol)、テトラヒドロフラン(69ml)を仕込み、ドライアイス−メタノールバスで−78℃まで冷却した。n−BuLi(16.9ml)を加えて2時間攪拌した後、メチル4,4'−ジブロモ−[1,1'−ビフェニル]−2−カルボン酸エステル(4.1g)をテトラヒドロフラン(12ml)に溶かした溶液を滴下した。−78℃で2時間攪拌した後、さらに室温で4時間攪拌した。氷浴で冷やしながら、水(50ml)をゆっくりと加えた後、分液ロートに移して洗浄し、さらに水30mlで二回洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、固体を濾過した後、濾液を濃縮し、化合物3−1(8.1g)を得た。
3−2.化合物3の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物3を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物3−1(4.1g、7.51mmol)、クロロホルム(120ml)を加え、氷浴で0℃に冷却した後、BF3Et2O(1.0ml)を、滴下漏斗を用いて滴下した。1時間攪拌した後、さらにBF3Et2O(1.0ml)を加えて1時間攪拌し、室温で5時間攪拌した。水(100ml)を加えて攪拌した後、分液ロートへ移し、クロロホルム(50ml)で3回抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、固体を濾過した後、濾液を濃縮し、クロロホルム(30ml)を加えた。加熱還流しながら、メタノール(300ml)を加えて結晶化を行い、得られた結晶を濾過した。この結晶をクロロホルム(20ml)に加えて加熱し、メタノール(200ml)を加えて室温で2時間攪拌した。生じた結晶を濾過して乾燥させ、化合物3(2.0g)を得た。
得られた化合物3の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
合成例4:化合物4の合成
4−1.化合物4−1の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物4−1を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、2−アミノ−N−[(1,1'−ビフェニル)−4−イル]−N−(4−ブロモフェニル)−9,9−ジメチルフルオレン(15.00g、29.04mmol)、3−(4,4,5,5,−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)カルバゾール(7.66g、26.14mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(0.41g、0.58mmol)、炭酸ナトリウム(7.70g、72.61mmol)、ジオキサン(290ml)、水(145ml)を加え、混合した。混合物を85℃で4時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物4−1(12.7g)を得た。
得られた化合物4−1の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
4−2.化合物4の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物4を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物4−1(7.00g、11.6mmol)、1,3−ジブロモ−5−ヨードベンゼン(4.62g、12.77mmol)、ヨウ化銅(I)(0.11g、0.58mmol)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン(0.29g、2.55mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(2.23g、23.23mmol)、ジオキサン(35ml)を加え、混合した。混合物を90℃で6時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物4(6g)を得た。
得られた化合物4の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
合成例5:化合物5の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物5を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物4(4.00g、4.78mmol)、ビスピナコレートジボロン(3.64g、14.34mmol)、酢酸カリウム(2.82g、28.69mmol)、[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(0.11g、0.13mmol)ジオキサン(50ml)を加え、混合した。混合物を90℃で6時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物5(3g)を得た。
得られた化合物5の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
合成例6:化合物6の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物6を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(11.00g、20.0mmol)、ビス(ピナコレートジボロン)(12.19g、48.0mmol)、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)(0.98g、1.2mmol)、酢酸カリウム(11.78g、120.0mmol)、及びジオキサン(100ml)を混合し、加熱還流下で6時間攪拌した。トルエン及び水を加えた後、分液し、水で洗浄した。硫酸ナトリウム及び活性炭を加え、撹拌した後、セライト(Celite:登録商標)を用いて濾過した。ろ液を濃縮し、粗生成物(11.94g)を得た。ヘキサンで再結晶し、エタノールで結晶を洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥させることにより、化合物6(9.8g)を得た。
得られた化合物6の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
合成例7:化合物7の合成
7−1.化合物7−1の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物7−1を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、N−フェニル−[1,1'−ビフェニル]−4−アミン(15.00g、61.19mmol)、tert−ブチル3−ブロモ−9H−カルバゾール−9−カルボン酸エステル(21.19g、61.19mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(2.8g、3.06mmol)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(0.53g、1.84mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(7.06g、73.43mmol)、トルエン(400ml)を加え、混合した。混合物を110℃で6時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物7−1(25g)を得た。
得られた化合物7−1の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
7−2.化合物7−2の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物7−2を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物7−1(10.2g,20mmol)を1,4−ジオキサン100mlに加え、濃塩酸10mlを滴下した後、80℃で2時間攪拌した。この反応液を濃縮してトルエン300mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウムで中和した後、分液した。有機層を濃縮した後、濃縮物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物7−2(6.5g)を得た。
得られた化合物7−2の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
7−3.化合物7−3の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物7−3を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物7−2(8.00g、19.49mmol)、2−ブロモ−7−ヨード−9,9−ジオクチルフルオレン(12.76g、21.44mmol)、ヨウ化銅(I)(0.19g、0.97mmol)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン(0.49g、4.29mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(3.75g、38.97mmol)、ジオキサン(60ml)を加え、混合した。混合物を90℃で6時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物7−3(8g)を得た。
得られた化合物7−3の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
7−4.化合物7−4の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物7−4を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物7−3(8.00g、9.11mmol)、ビスピナコレートジボロン(3.47g、13.67mmol)、酢酸カリウム(2.68g、27.33mmol)、[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(0.1g、0.13mmol)ジオキサン(90ml)を加え、混合した。混合物を90℃で6時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物7−4(6g)を得た。
得られた化合物7−4の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
7−5.化合物7の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物7を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物7−4(6.00g、6.49mmol)、1,3−ジブロモ−5−ヨードベンゼン(2.82g、7.78mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.23g、0.19mmol)、炭酸ナトリウム(2.06g、19.46mmol)、ジオキサン(78ml)、水(39ml)を加え、混合した。混合物を85℃で4時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物7(4g)を得た。
得られた化合物7の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
合成例8:化合物8の合成
8−1.化合物8−1の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物8−1を合成した。
詳細には、300ml三口フラスコに、9−(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1(6),2,4−トリエン−3−イル)−9−(ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イル)−2−ブロモ−9H−フルオレン(12.00g、26.70mmol)、ピナコールジボラン(10.17g、40.05mmol)、PdCl2(dppf)・CH2Cl2(0.31g、0.37mmol)、酢酸カリウム(7.86g、80.11mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内に脱水1,4−ジオキサン(267ml)を加え、混合した。混合物を100℃で1時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。ろ液に活性炭(10g)を加え、100℃で1時間攪拌した後、セライトを用いて、活性炭を除去し、ろ液を濃縮した。ろ液を濃縮することにより得られた固体を、室温下、アセトニトリル(30ml)で洗浄することにより、化合物8−1(10g)を得た。
得られた化合物8−1の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
8−2.化合物8の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物8を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物8−1(10.00g、20.14mmol)、1,3−ジブロモ−5−ヨードベンゼン(7.29g、20.14mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.70g、0.60mmol)、炭酸ナトリウム(6.41g、60.43mmol)、ジオキサン(240ml)、水(120ml)を加え、混合した。混合物を85℃で4時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷した。次に、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物8(7g)を得た。
得られた化合物8の構造は、核磁気共鳴装置(1H−NMR)によって同定した。
合成例9:化合物9の合成
下記の反応式に従って、下記構造を有する化合物9を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物4−1(7.00g、11.6mmol)、1,4−ジブロモ−2−フルオロベンゼン(3.04g、12.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100mlを加えて、室温で撹拌した。次に、水素化ナトリウム(含有量60%、0.478g、12.0mmol)を投入し、混合した。混合物を180℃で5時間撹拌し、反応が終了した後、反応混合物を室温まで放冷した。トルエン100mlを加えた後、分液ロートに移し、水100mlを用いて3回洗浄した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物9(6.08g)を得た。
合成例10:化合物10の合成
10−1.化合物10−1の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物10−1を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、2−(2−ビフェニルイル)アミノ―9,9−ジメチルフルオレン(東京化成工業株式会社製)(7.04g、19.49mmol)、1−ブロモ―4−ヨードベンゼン(6.06g、21.44mmol)、ヨウ化銅(I)(0.19g、0.97mmol)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン(0.49g、4.29mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(3.75g、38.97mmol)、ジオキサン(60ml)を加え、混合した。混合物を90℃で6時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷した。次に、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物10−1(7.24g)を得た。
10−2.化合物10−2の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物10−2を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物10−1(15.00g、29.04mmol)、3−(4,4,5,5,−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)カルバゾール(7.66g、26.14mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(0.41g、0.58mmol)、炭酸ナトリウム(7.70g、72.61mmol)、ジオキサン(290ml)、水(145ml)を加え、混合した。混合物を85℃で4時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷した。次に、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物10−2(10.7g)を得た。
10−3.化合物10の合成
下記反応式に従って、下記構造を有する化合物10を合成した。
詳細には、アルゴン下において、反応容器中に、化合物10−2(7.00g、11.6mmol)、1,3−ジブロモ−5−ヨードベンゼン(4.62g、12.77mmol)、ヨウ化銅(I)(0.11g、0.58mmol)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン(0.29g、2.55mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(2.23g、23.23mmol)、ジオキサン(35ml)を加え、混合した。混合物を90℃で6時間攪拌し、反応が終了した後、反応混合液を室温まで放冷した。次に、セライト(Celite:登録商標)を用いて、不純物をろ別した。溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物10(5.2g)を得た。
実施例1:高分子化合物A−1の合成
上記合成例1で合成した化合物1、上記合成例2で合成した化合物2、上記合成例3で合成した化合物3、及び上記合成例4で合成した化合物4を用いて、下記構成単位を下記組成で有する高分子化合物A−1を合成した。
詳細には、アルゴン雰囲気下、化合物1(1.96g)、化合物2(0.184g)、化合物3(0.211g)、化合物4(2.576g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、トルエン(55mL)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、8時間還流した。次に、フェニルボロン酸(0.023g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、7時間加熱還流した。その後、水層を除き、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.4g)、及びイオン交換水(50mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下して高分子化合物を沈殿させ、ろ取した後、乾燥させることで、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させて、シリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通した後、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をろ別した後、乾燥させて、高分子化合物A−1(0.79g)を得た。
このようにして得られた高分子化合物A−1は、単量体の仕込み比から、上記組成(化合物1由来の構成単位:化合物5由来の構成単位:化合物3由来の構成単位:化合物2由来の構成単位=50:40:5:5(モル比))で、化合物1由来の構成単位と、化合物5、化合物3及び化合物2由来の構成単位とが交互に重合した高分子化合物であると推定される。また、この高分子化合物A−1の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で見積もったところ、Mn=42,000、Mw=80,000、Mw/Mn=1.85であった。
実施例2:高分子化合物A−2の合成
上記合成例6で合成した化合物6、上記合成例7で合成した化合物7、及び上記合成例8で合成した化合物8を用いて、下記構成単位を下記組成で有する高分子化合物A−2を合成した。
詳細には、アルゴン雰囲気下、化合物6(2.53g)、化合物7(3.30g)、化合物8(0.48g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、トルエン(55mL)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、8時間還流した。次に、フェニルボロン酸(0.023g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、7時間加熱還流した。その後、水層を除き、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.4g)、及びイオン交換水(50mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下して高分子化合物を沈殿させ、ろ取した後、乾燥させることで、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させて、シリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通した後、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をろ別した後、乾燥させて、高分子化合物A−2(0.8g)を得た。
このようにして得られた高分子化合物A−2は、単量体の仕込み比から、上記組成(化合物6由来の構成単位:化合物7由来の構成単位:化合物8由来の構成単位=50:40:10(モル比))で、化合物6由来の構成単位と、化合物7及び化合物8由来の構成単位とが交互に重合した高分子化合物であると推定される。また、この高分子化合物A−2の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で見積もったところ、Mn=110,000、Mw=252,000、Mw/Mn=2.30であった。
実施例3:高分子化合物A−3の合成
上記合成例2で合成した化合物2、上記合成例3で合成した化合物3、上記合成例4で合成した化合物4、及び上記合成例5で合成した化合物5を用いて、下記構成単位を下記組成で有する高分子化合物A−3を合成した。
詳細には、アルゴン雰囲気下、化合物2(0.16g)、化合物3(0.19g)、化合物4(2.25g)、化合物5(3.21g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、トルエン(55mL)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、8時間還流した。次に、フェニルボロン酸(0.023g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、7時間加熱還流した。その後、水層を除き、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.4g)、及びイオン交換水(50mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下して高分子化合物を沈殿させ、ろ取した後、乾燥させることで、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させて、シリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通した後、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をろ別した後、乾燥させて、高分子化合物A−3(0.85g)を得た。
このようにして得られた高分子化合物A−3は、単量体の仕込み比から、上記組成(化合物4及び化合物5由来の構成単位:化合物3由来の構成単位:化合物2由来の構成単位=90:5:5(モル比))で、3種の構成単位がランダムに重合した高分子化合物であると推定される。また、この高分子化合物A−3の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で見積もったところ、Mn=27,000、Mw=60,000、Mw/Mn=2.23であった。
実施例4:高分子化合物A−4の合成
上記合成例3で合成した化合物3、上記合成例4で合成した化合物4、及び上記合成例5で合成した化合物5を用いて、下記構成単位を下記組成で有する高分子化合物A−4を合成した。
詳細には、アルゴン雰囲気下、化合物3(0.19g)、化合物4(2.64g)、化合物5(3.21g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、トルエン(55mL)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、8時間還流した。次に、フェニルボロン酸(0.023g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、7時間加熱還流した。その後、水層を除き、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.4g)、及びイオン交換水(50mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下して高分子化合物を沈殿させ、ろ取した後、乾燥させることで、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させて、シリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通した後、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をろ別した後、乾燥させて、高分子化合物A−4(0.85g、Mn=25,000、Mw=59,000)を得た。
このようにして得られた高分子化合物A−4は、単量体の仕込み比から、上記組成(化合物4及び化合物5由来の構成単位:化合物3由来の構成単位=95:5(モル比))で、2種の構成単位がランダムに重合した高分子化合物であると推定される。
実施例5:高分子化合物A−5の合成
上記合成例1で合成した化合物1、上記合成例2で合成した化合物2、上記合成例3で合成した化合物3、及び上記合成例9で合成した化合物9を用いて、下記構成単位を下記組成で有する高分子化合物A−5を合成した。
詳細には、アルゴン雰囲気下、化合物1(1.96g)、化合物2(0.184g)、化合物3(0.211g)、化合物9(2.576g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、トルエン(55mL)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、8時間還流した。次に、フェニルボロン酸(0.023g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、7時間加熱還流した。その後、水層を除き、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.4g)、及びイオン交換水(50mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下して高分子化合物を沈殿させ、ろ取した後、乾燥させることで、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させて、シリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通した後、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をろ別した後、乾燥させて、高分子化合物A−1(0.85g)を得た。
このようにして得られた高分子化合物A−5は、単量体の仕込み比から、上記組成(化合物1由来の構成単位:化合物9由来の構成単位:化合物3由来の構成単位:化合物2由来の構成単位=50:40:5:5(モル比))で、化合物1由来の構成単位と、化合物2、化合物3及び化合物9由来の構成単位とが交互に重合した高分子化合物であると推定される。また、この高分子化合物A−1の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で見積もったところ、Mn=62,000、Mw=138,200、Mw/Mn=2.23であった。
実施例6:高分子化合物A−6の合成
上記合成例6で合成した化合物6、上記合成例10で合成した化合物10、及び上記合成例8で合成した化合物8を用いて、下記構成単位を下記組成で有する高分子化合物A−6を合成した。
詳細には、アルゴン雰囲気下、化合物6(2.53g)、化合物10(2.67g)、化合物8(0.48g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、トルエン(55mL)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、8時間還流した。次に、フェニルボロン酸(0.023g)、酢酸パラジウム(4.3mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)、及び20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.2g)を加え、7時間加熱還流した。その後、水層を除き、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.4g)、及びイオン交換水(50mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下して高分子化合物を沈殿させ、ろ取した後、乾燥させることで、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させて、シリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通した後、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をろ別した後、乾燥させて、高分子化合物A−6(1.0g)を得た。
このようにして得られた高分子化合物A−6は、単量体の仕込み比から、上記組成(化合物6由来の構成単位:化合物10由来の構成単位:化合物8由来の構成単位=50:40:10(モル比))で、化合物6由来の構成単位と、化合物10及び化合物8由来の構成単位とが交互に重合した高分子化合物であると推定される。また、この高分子化合物A−6の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で見積もったところ、Mn=140,000、Mw=352,000、Mw/Mn=2.51であった。
次に、上記実施例1〜3で得られた高分子化合物A−1〜A−3及び下記構成単位を有するポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−cо−(4,4'−(N−(4−sec−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)](TFB)(Luminescence Technology Corp.製)(比較例1の高分子化合物)の三重項エネルギー準位(eV)を、下記方法により測定した。
(三重項エネルギー準位の測定方法)
濃度が3.2質量%となるように、各高分子化合物をトルエンに溶解させ、コート液を調製した。このコート液を、スピンコート法により、1600rpmの回転速度で塗布した後、ホットプレート上で、250℃で60分間乾燥させた。このとき、高分子化合物A−1〜A−3は、架橋する。その結果、約70nmの厚さ(乾燥膜厚)の薄膜(サンプル)を得た。このサンプルを77K(−196℃)に冷却して、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルを測定した。このPLスペクトルの最も短波側のピーク値から、三重項エネルギー準位(eV)を算出した。その結果を下記表1に示す。
表1の結果から、実施例1〜3の高分子化合物A−1〜A−3は、従来使用されている比較例1のTFBに比して、三重項エネルギー準位が有意に高いことが示された。
実施例7:有機エレクトロルミネッセンス素子(Device−1)の作製
まず、あらかじめ第1電極(陽極)として、ストライプ(stripe)状の酸化インジウムスズ(ITO)が厚さ150nmで成膜されたITO付きガラス基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylene dioxythiophene)/poly(4−styrene sulfonate):PEDOT/PSS)(Sigma−Aldrich製)を、厚さ(乾燥膜厚)が30nmになるように、スピンコート法により塗布した。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔注入層がITO付きガラス基板上に形成された。
次に、実施例1で合成した高分子化合物A−1(正孔輸送材料A−1)を、濃度が1質量%となるように、キシレン(溶媒)に溶解させて、正孔輸送層形成用塗布液を調製した。上記で形成した正孔注入層上に、この正孔輸送層形成用塗布液を厚さ(乾燥膜厚)が30nmになるように、スピンコート法により塗布した後、230℃で1時間加熱して、高分子化合物を架橋した。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔輸送層が正孔注入層上に形成された。
さらに、上記で形成した正孔輸送層上に、ホスト(host)材料として、下記構造を有する化合物h−1(6,9−ジフェニル−9'−(5'−フェニル−[1,1':3',1"−ターフェニル]−3−イル)3,3'−ビ[9H−カルバゾール])、化合物h−2(3,9−ジフェニル−5−(3−(4−フェニル−6−(5'−フェニル−[1,1':3',1"−ターフェニル]−3−イル)−1,3,5,−トリアジン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾール)、ドーパント(dopant)材料として、トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)(tris(2−(3−p−xylyl)phenyl)pyridine iridium(III))を含むトルエン溶液を調製した。この際、化合物h−1の濃度を0.49g/ml、化合物h−2の濃度を0.05g/mlとなるように、トルエン溶液を調製した。また、ドーパント材料の含有量は、ドープ量が、発光層の総質量に対して、10質量%となるように調製した。正孔輸送層上に、上記で調製したトルエン溶液を、厚さ(乾燥膜厚)が30nmになるように、スピンコート法により塗布した。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの発光層が正孔輸送層上に形成された。
次に、上記で形成した発光層上に、(8−キノリノラト)リチウム(Liq)及びKLET−03(ケミプロ化成株式会社製)を、真空蒸着装置を用いて共蒸着させた。その結果、厚さ50nmの電子輸送層が発光層上に形成された。
また、上記で形成した電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を、真空蒸着装置を用いて蒸着させた。その結果、厚さ1nmの電子注入層が電子輸送層上に形成された。
さらに、上記で形成した電子注入層上に、アルミニウム(Al)を、真空蒸着装置を用いて蒸着させた。その結果、厚さ100nmの第2電極(陰極)が電子注入層上に形成された。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)(Device−1)を得た。
実施例8:有機エレクトロルミネッセンス素子(Device−2)の作製
実施例7において、高分子化合物A−1(正孔輸送材料A−1)の代わりに、実施例2で合成した高分子化合物A−2(正孔輸送材料A−2)を用いて正孔輸送層を形成した以外は、実施例7と同様の方法によって、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)(Device−2)を得た。
実施例9:有機エレクトロルミネッセンス素子(Device−3)の作製
実施例7において、高分子化合物A−1(正孔輸送材料A−1)の代わりに、実施例3で合成した高分子化合物A−3(正孔輸送材料A−3)を用いて正孔輸送層を形成した以外は、実施例7と同様の方法によって、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)(Device−3)を得た。
比較例2:有機エレクトロルミネッセンス素子(Device−4)の作製
実施例7において、高分子化合物A−1(正孔輸送材料A−1)の代わりに、比較例1の高分子化合物(TFB)を用いて正孔輸送層を形成した以外は、実施例7と同様の方法によって、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)(Device−4)を得た。この場合、比較例1の高分子化合物は、架橋性基を有しないため、架橋しない。
上記実施例7〜9で作製された有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)(Device−1〜3)及び比較例2で作製された有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)(Device−4)の電流効率、駆動寿命(耐久性)及び駆動電圧を、以下の方法により評価した。その結果を下記表2に示す。
[電流効率、駆動寿命、及び駆動電圧の評価方法]
まず、直流定電圧電源(KEYENCE製、ソースメータ(source meter))を用いて、各有機EL素子に対して電圧を加えると、ある一定の電圧で電流が流れ始め、有機EL素子が発光する。この際の電圧を駆動電圧(単位:V)とした。有機EL素子の発光を、輝度測定装置(Topcom製、SR−3)を用いて測定しつつ、徐々に電流を増加させ、輝度が6000cd/m2になったところで電流を一定にし、放置した。
ここで、有機EL素子の面積から単位面積あたりの電流値(電流密度)を計算し、輝度(cd/m2)を電流密度(A/m2)で除算することで、電流効率(cd/A)を算出した。また、輝度測定装置で測定した輝度の値が徐々に変動(低下)し、初期輝度の95%になるまでの時間(時間)を駆動寿命(時間)とした。なお、電流効率は、電流を発光エネルギーへ変換する効率(変換効率)を示し、電流効率が高い程、有機EL素子の性能が高いことを示す。
上記表2から、実施例1〜3の高分子化合物A−1〜A−3が正孔輸送材料として用いられている実施例7〜9の有機EL素子(Device−1〜3)は、比較例1のTFBが正孔輸送材料として用いられている有機EL素子(Device−4)に比して、電流効率、耐久性(駆動寿命)、及び駆動電圧の面で優れることが分かる。
実施例10:量子ドット発光素子(Device−5)の作製
まず、あらかじめ第1電極(陽極)として、ITOがパターニングされているITO付きガラス基板を、中性洗剤、脱イオン水、水及びイソプロピールアルコールを用いて順次洗浄した後、UV−オゾン処理を行った。ITO付きガラス基板上に、PEDOT/PSS(Sigma−Aldrich製)を、厚さ(乾燥膜厚)が30nmになるように、スピンコート法により塗布した後、乾燥させた。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔注入層がITO付きガラス基板上に形成された。
次に、この正孔注入層上に、実施例1で合成した高分子化合物A−1(正孔輸送材料A−1)の1.0質量%のトルエン溶液を、厚さ(乾燥膜厚)が25nmになるように、スピンコート法により塗布した後、150℃で30分間熱処理して、正孔輸送層を形成した。その結果、厚さ(乾燥膜厚)25nmの正孔輸送層が正孔注入層上に形成された。
次に、この正孔輸送層上に、正孔輸送層を溶解させないシクロヘキサン中に、ZnTeSe/ZnSe/ZnS(コア/シェル/シェル)の青色量子ドット(図2参照)を1.0質量%となるように分散させた分散液を、厚さ(乾燥膜厚)が25nmになるように、スピンコート法により塗布した後、乾燥させた。その結果、厚さ(乾燥膜厚)25nmの量子ドット発光層が正孔輸送層上に形成された。なお、青色量子ドットは、分散液中における発光波長中心が458nm、半値幅が29nmであった(図3、図4参照)。
この量子ドット発光層を完全に乾燥させた後、その上にリチウムキノレート(Liq)及び電子輸送材料TPBI(Sigma−Aldrich製)を、真空蒸着装置を用いて共蒸着させた。その結果、厚さが36nmの電子輸送層が量子ドット発光層上に形成された。
この電子輸送層上に、真空蒸着装置を用いて、Liqを蒸着させ、厚さ0.5nmの電子注入層を形成した。
この電子注入層上に、真空蒸着装置を用いて、アルミニウムを蒸着させ、厚さ100nmの第2電極(陰極)を形成し、量子ドット発光素子を得た。
実施例11:量子ドット発光素子(Device−6)の作製
実施例10において、高分子化合物A−1(正孔輸送材料A−1)の代わりに、実施例5で合成した高分子化合物A−5(正孔輸送材料A−5)を用いて正孔輸送層を形成した以外は、実施例10と同様の方法によって、量子ドット発光素子を得た。
比較例3:量子ドット発光素子(Device−7)の作製
実施例10において、高分子化合物A−1(正孔輸送材料A−1)の代わりに、比較例1の高分子化合物(TFB)を用いて正孔輸送層を形成した以外は、実施例10と同様の方法によって、量子ドット発光素子を得た。
上記実施例7、8で作製された量子ドット発光素子(Device−4、5)及び比較例3で作製された量子ドット発光素子(Device−6)の駆動電圧、発光効率EQE、色度及び発光波長を、以下の方法により評価した。その結果を下記表3に示す。
[駆動電圧、発光効率EQE、色度及び発光波長の評価方法]
まず、直流定電圧電源(KEYENCE製、ソースメータ(source meter))を用いて、各量子ドット発光素子に対して電圧を加えると、ある一定の電圧で電流が流れ始め、量子ドット発光素子が発光する。この際の、電流密度10mA/cm2での電圧を駆動電圧(単位:V)とした。
量子ドット発光素子の発光を、輝度測定装置(Topcom製、SR−3)を用いて測定しつつ、徐々に電流を増加させ、輝度が100cd/m2になったところで電流を一定にし、放置した。
色度は、輝度測定装置を用いて測定した。
量子効率EQE@100nitは、輝度測定装置で測定した分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定して算出した。
したがって、実施例1〜3、5の高分子化合物A−1〜A−3、A−5は、エレクトロルミネッセンス素子(特に、正孔輸送材料)などに好適に適用できると考察される。
また、実施例1〜3、5の高分子化合物A−1〜A−3、A−5を用いる場合には、塗布法により正孔輸送層を形成できるため、大量生産の観点から好ましい。