JP2018073804A - 固体酸化物形燃料電池用アノードおよびその製造方法ならびに固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

固体酸化物形燃料電池用アノードおよびその製造方法ならびに固体酸化物形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】アノード強度を確保することができ、アノード内の金属材料の熱凝集を抑制することができる、固体酸化物形燃料電池用アノード、また、十分な構造体強度を確保することができ、発電耐久性を有する、固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】アノード1は、アノード1の本体をなすアノード本体部11と、アノード本体部11の外周面を覆うアノード外周部12とを有する。アノード外周部12は、V、Mnを除く第1金属101と、第1金属101と異なる第2金属102と、酸素イオン伝導体103とを含む。アノード本体部11は、第1金属101と、酸素イオン伝導体103とを含み、第2金属102を含んでいない。固体酸化物形燃料電池5は、アノード1を有する。アノード1は、第2金属102の酸化物が外周部に存在する未焼成体6を焼成、還元することにより得られる。第2金属102の酸化物は、焼成時に物質拡散する。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池用アノードおよびその製造方法ならびに固体酸化物形燃料電池に関する。
従来、例えば、特許文献1には、酸化鉄(Fe)、酸化銅(CuO)のうち少なくとも1つを含む酸化金属添加剤と、酸化ニッケル(NiO)と、ジルコニア系酸化物とを含み、上記酸化金属添加剤が、酸化アルミニウム(Al)をさらに含むアノード形成用材料を焼成してなる固体酸化物形燃料電池用アノードが記載されている。
特許第5596594号公報
しかしながら、従来技術は以下の点で課題がある。すなわち、アノード形成用材料に酸化鉄や酸化アルミニウムを添加すると、Ni等、アノード内の金属材料の熱凝集が抑制され、長時間発電時の電気抵抗を維持できる可能性がある。ところが、上記の金属酸化物をアノード形成用材料に添加し、アノードを作製すると、アノード形成用材料の焼結時に焼結阻害を引き起こし、十分なアノード強度を得ることが困難になる。その結果、十分な構造体強度を有する固体酸化物形燃料電池を実現することが難しくなる。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、アノード強度を確保することができ、アノード内の金属材料の熱凝集を抑制することができる、固体酸化物形燃料電池用アノード、また、十分な構造体強度を確保することができ、発電耐久性を有する、固体酸化物形燃料電池を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、アノードの本体をなすアノード本体部(11)と、上記アノード本体部の外周面を覆うアノード外周部(12)とを有しており、
上記アノード外周部は、
V、Mnを除く第1金属(101)と、上記第1金属と異なる第2金属(102)と、酸素イオン伝導体(103)とを含んでおり、
上記アノード本体部は、
上記第1金属と、上記酸素イオン伝導体とを含み、上記第2金属を含んでいない、固体酸化物形燃料電池用アノード(1)にある。
本発明の他の態様は、上記第1金属の酸化物と、上記第2金属の酸化物と、上記酸素イオン伝導体とを含み、上記第2金属の酸化物が外周部に存在する未焼成体(6)を形成し、
上記未焼成体を酸化雰囲気中で焼成することにより、上記第2金属の酸化物を物質拡散させた酸化物焼結体(7)を形成し、
上記酸化物焼結体を還元することにより、上記固体酸化物形燃料電池用アノードを形成する、固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法にある。
本発明のさらに他の態様は、上記固体酸化物形燃料電池用アノードを有する、固体酸化物形燃料電池(5)にある。
上記固体酸化物形燃料電池用アノードでは、アノード外周部が、V、Mnを除く第1金属と、第1金属とは異なる第2金属と、酸素イオン伝導体とを含んでいる一方、アノード本体部は、第1金属と、酸素イオン伝導体とを含み、第2金属を含んでいない。つまり、上記固体酸化物形燃料電池用アノードは、外部から供給される燃料ガスに含まれうる不純物や水蒸気、アノード反応により発生する熱や水蒸気などに曝されやすいアノード外周部にだけ第2金属が局在している。そのため、上記固体酸化物形燃料電池用アノードは、第2金属がアノード全体に存在する従来の固体酸化物形燃料電池用アノードに比べ、焼結時に焼結阻害を引き起こし難く、アノード強度を確保することができる。また、上記固体酸化物形燃料電池用アノードは、アノード外周部における第2金属により、長時間発電した場合でも、アノード外周部における第1金属の熱凝集を抑制することが可能となる。
上記固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法によれば、上記固体酸化物形燃料電池用アノードの製造を確実なものとすることができる。
上記固体酸化物形燃料電池は、上記固体酸化物形燃料電池用アノードを有している。そのため、上記固体酸化物形燃料電池は、十分な構造体強度を確保することができ、発電耐久性を有する。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池の模式的な断面図である。 実施形態1の固体酸化物形燃料電池用アノードにおけるアノード外周部の微構造を模式的に示した図である。 実施形態1の固体酸化物形燃料電池用アノードにおけるアノード本体部の微構造を模式的に示した図である。 実施形態2の固体酸化物形燃料電池用アノードの模式的な断面図である。 実施形態3の固体酸化物形燃料電池用アノードの模式的な断面図である。 実施形態6の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池を説明するための説明図であって、(a)は、模式的な断面図、(b)は、A−A’線およびB−B’線におけるアノードの第2金属濃度を模式的に示した図である。 実施形態7の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池を説明するための説明図であって、(a)は、模式的な断面図、(b)は、A−A’線およびB−B’線におけるアノードの第2金属濃度を模式的に示した図である。 実施形態8の固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法の流れを模式的に示した説明図であって、(a)は、未焼成体の一例を示す断面図、(b)は、酸化物焼結体の一例を示す断面図、(c)は、アノードの一例を示す断面図である。 実験例1における強度試験の結果を示した図である。 実験例2における発電耐久試験の結果を示した図である。 実験例3にて作製した圧着体の模式的な断面図である。 実験例3にて作製した焼結体の断面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。 実験例3におけるFeの拡散距離の測定結果を示した説明図である。
(実施形態1)
実施形態1の固体酸化物形燃料電池用アノード(以下、単に「アノード」と称することがある。)について、図1〜図3を用いて説明する。図1〜図3に例示されるように、本実施形態のアノード1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)5に用いられる。固体酸化物形燃料電池5は、固体電解質層2を構成する固体電解質として、酸素イオン導電性を示す固体酸化物セラミックスを用いる燃料電池である。
アノード1は、アノード本体部11と、アノード外周部12とを有している。アノード本体部11は、アノードの本体をなす部分である。アノード外周部12は、アノード本体部11の外周面を覆う部分である。なお、アノード本体部11およびアノード外周部12は、いずれも空隙110、120を含んでいる。
アノード外周部12は、アノード本体部11の外周面の全面を覆っていてもよいし、アノード本体部11の外周面を部分的に覆っていてもよい。アノード外周部12は、具体的には、アノード本体部11の外周面のうち、固体酸化物形燃料電池5に用いられた際に固体電解質層2側となる面111、および、固体電解質層2側とは反対側の面112の少なくとも1つを覆っている構成とすることができる。この構成に加え、アノード外周部12は、さらに、アノード本体部11の外周面のうち、アノード本体部11の側面113を覆っている構成とすることもできる。アノード外周部12が、アノード本体部11の外周面の全面を覆っている場合には、上記作用効果を確実なものとすることができる。
ここで、アノード外周部12は、構成金属として、第1金属101と、第1金属101とは異なる第2金属102とを含んでいる。また、アノード外周部12は、酸素イオン伝導体103を含んでいる。
第1金属101は、V、Mnを除く金属から選択される一つの金属であり、アノード1の電子導電経路を構成する導電材料である。なお、第1金属101としてV、Mnを除くのは、V、Mnはいずれも電気伝導率が6000S/cm未満であり、これをアノード1の主たる導電材料に用いると、アノード1の電気抵抗が高くなるためである。
第2金属102は、第1金属101とは異なる金属から選択される少なくとも一つの金属である。但し、第2金属102は、V、Mnを含むことができる。第2金属102としては、具体的には、第1金属101の酸化物である第1金属酸化物より低い融点を有する第2金属酸化物を形成可能な金属などを好適に用いることができる。
この構成によれば、アノード1の製造時に、アノード1を形成するための未焼成体6(実施形態8で後述する)を酸化雰囲気中で焼成して酸化物焼結体7(実施形態8で後述する)とした際に、第1金属酸化物よりも先に第2金属酸化物が溶け、第2金属酸化物が第1金属酸化物の表面を覆いやすくなる。そして、この状態の酸化物焼結体7を還元することにより、第1金属101の表面を、第1金属101と第2金属102との結合体100で覆うことが可能となる。そのため、この構成によれば、アノード1が酸化・還元雰囲気に曝された場合に、結合体100に覆われる第1金属101が熱凝集し難い上、アノード1が酸化雰囲気に曝された場合に、結合体100の第1金属101、第2金属102は酸化されることがあるものの、結合体100で覆われる第1金属101は、酸化され難い。それ故、上記構成によれば、第1金属101の熱凝集および第1金属101の酸化反応による劣化を抑制しやすいアノード1が得られる。
第1金属101としては、例えば、Ni、Fe、Co、貴金属(Pt、Pd等)、Cu、Zn、Cr、Ti、Al、W、Mo等を例示することができる。これらのうち、第1金属101としては、電気伝導率、触媒活性などの観点から、Ni、Cu、Co、貴金属(Pt、Pd等)などを好適に用いることができる。一方、第1金属101と組み合わせ可能な第2金属102としては、例えば、Fe、Co、Ti、Cu、Ni、Mg、Ca、Mn、Cr、Zn、Al、W、Mo等を例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。第2金属102としては、電気伝導率、触媒活性、高温形状安定性などの観点から、Fe、Co、Cu、Ni、Cr、Mn、Tiなどを好適に用いることができる。
より具体的には、第1金属101がNiの場合、第2金属102は、Fe、Co、および、Tiからなる群より選択される少なくとも1種とすることができる。この構成によれば、上述した作用効果を確実なものとしやすい。また、第1金属101がCuの場合、第2金属102は、Sn、Mo、および、Pbからなる群より選択される少なくとも1種とすることもできる。なお、例えば、NiOの融点は1984℃、FeOの融点は1377℃、Feの融点は1565℃、Feの融点は1597℃、Coの融点は1900℃、TiOの融点は1843℃、CuOの融点は1326℃、SnOの融点は1080℃、MoOの融点は795℃、PbOの融点は886℃である。
なお、アノード外周部12において、第1金属101および第2金属102を含むとは、アノード外周部12をEDXにより元素分析した場合に、アノード外周部12を構成する金属成分元素として第1金属101と第2金属102とが検出されることを意味する。
酸素イオン伝導体103としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、酸化サマリウム安定化ジルコニア等の酸化ジルコニウム系酸化物;CeO、CeOにGd、Sm、Y、La、Nd、Yb、Ca、および、Hoから選択される1種または2種以上の元素等がドープされたセリア系固溶体等の酸化セリウム系酸化物;ランタンガレート系酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。なお、安定化には部分安定化も含まれる。酸素イオン伝導体103としては、酸素イオン伝導性、酸化雰囲気から還元雰囲気まで化学的に安定である等の観点から、イットリア安定化ジルコニア等の酸化ジルコニウム系酸化物が好適である。
アノード外周部12は、第1金属101と、第1金属101の表面を覆う、第1金属101と第2金属102との結合体100とを有する構成とすることができる。この構成によれば、アノード1が酸化・還元雰囲気に曝された場合に、結合体100に覆われる第1金属101が熱凝集し難い上、アノード1が酸化雰囲気に曝された場合に、結合体100の第1金属101、第2金属102は酸化されることがあるものの、結合体100で覆われる第1金属101は、酸化され難い。それ故、上記構成によれば、第1金属101の熱凝集および第1金属101の酸化反応による劣化を抑制しやすいアノード1が得られる。
結合体100に覆われる第1金属101は、具体的には、例えば、第1金属粒子、第1金属粒子同士が結合した連続粒子、これらの組み合わせなどより構成することができる。なお、図2では、結合体100に覆われる第1金属101は、第1金属粒子同士が結合した連続粒子より構成されている例が示されている。また、第1金属101の表面は、第1金属101の熱凝集抑制および酸化反応抑制などの観点から、結合体100によって全体が覆われていることが望ましい(以下、この形を第1形という。)。もっとも、製造性などの観点から、第1金属101の表面は、その大部分が結合体100により覆われており、一部が第2金属102により覆われていてもよい(以下、この形を第2形という。)。また、第1金属101の表面は、結合体100によって完全に覆われておらず、一部の第1金属101が露出していてもよい(以下、この形を第3形という。)。また、第1金属101の表面は、これらの組み合わせより構成されていてもよい(以下、この形を複合形という。)。なお、図2では、第2形、第3形を含む例が示されている。
上記を例えば、第1金属101がNiであり、第2金属102がFeである場合を用いてより具体的に説明する。この場合、結合体100は、Ni−Fe膜などより構成することができる。Niの表面は、Ni−Fe膜により全表面が覆われていてよい(第1形)。また、Niの表面は、大部分がNi−Fe膜に覆われており、一部がFeにより覆われていてもよい(第2形)。また、Niの表面は、Ni−Fe膜によって完全に覆われておらず、一部のNiが露出していてもよい(第3形)。また、Niの表面は、これらの組み合わせより構成されていてもよい(複合形)。
アノード外周部12が結合体100を有する場合、アノード1は、S1<S2の関係を満たす構成とすることができる。但し、S1は、アノード外周部12に含まれる空隙120に、結合体100に覆われる第1金属101の表面が接している割合である。S2は、アノード外周部12に含まれる空隙120に、結合体100の表面および第2金属102の表面が接している割合である。この構成によれば、結合体100、あるいは、結合体100および第2金属102による第1金属101の表面被覆が確実なものとなるので、第1金属101の熱凝集および第1金属101の酸化反応による劣化を抑制しやすいアノード1が得られる。
アノード外周部12の厚みは、例えば、10μm〜100μmとすることができる。この構成によれば、アノード強度の確保と、長時間発電時におけるアノード外周部12の第1金属101の熱凝集抑制とを確実なものとすることができる。アノード外周部12の厚みは、第1金属101の熱凝集抑制等の観点から、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、30μm以上とすることができる。アノード外周部12の厚みは、アノード強度の確保を確実なものとしやすい等の観点から、好ましくは、80μm以下、より好ましくは、50μm以下とすることができる。なお、アノード外周部12の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察およびエネルギー分散型X線(EDX)分析によって検出される元素分析結果により測定される厚み相当部分の平均値である。厚み相当部分は、アノード外周部12に含まれる第2金属102の分布範囲より決定される。
一方、アノード本体部11は、第1金属101と、酸素イオン伝導体103とを含み、第2金属102を含んでいない。第1金属101、酸素イオン伝導体103、第2金属102については、アノード外周部12の説明と同様である。なお、アノード本体部11において、第1金属101を含み、第2金属102を含まないとは、アノード本体部11をEDXにより元素分析した場合に、アノード本体部11を構成する金属成分元素として第1金属101が検出され、第2金属102がほとんど検出されないことを意味する。つまり、アノード1は、通常、その製造時に、形成されるアノード本体部11に第2金属を積極的に含まないように製造される。もっとも、アノード1の製造工程上の影響等により、アノード本体部11に第2金属102がわずかに混入してしまうこともありうる。しかし、第2金属102の混入量がアノード1の作用効果が得られる範囲内であれば問題は生じないため、このような場合は第2金属を含まないものとみなすことができる。典型的には、例えば、第2金属102が不可避不純物として検出される場合、第2金属102を含まないものとみなすことができる。また、第2金属102の任意な初期添加の有る無しに関わらず、第1金属101に対して第2金属102が0.1質量%未満である場合には、EDXによる元素分析の検出限界であり、アノード強度の低下が生じないため、第2金属102を含まないとみなすことができる。なお、上述したアノード外周部12の元素分析、アノード本体部11の元素分析には、還元後のサンプルが用いられる。このように、アノード本体部11は、第1金属101と酸素イオン伝導体103とから構成されることができる。
アノード1において、アノード外周部12は、具体的には、第2金属102の含有量が第1金属101の含有量よりも少ない構成とすることができる。より具体的には、アノード外周部12の第1金属101に対する第2金属102の含有量は、0.1質量%以上とすることができる。この構成によれば、第1金属101の熱凝集および第1金属101の酸化反応による劣化を抑制しやすいアノード1が得られる。
アノード外周部12に含まれる第2金属102の含有量は、上記効果を確実なものとするなどの観点から、好ましくは、0.15質量%以上、より好ましくは、0.2質量%以上、さらに好ましくは、0.4質量%以上、さらにより好ましくは、0.5質量%以上とすることができる。なお、触媒活性、導電率、熱膨張率、セル強度などの観点から、アノード外周部12に含まれる第2金属102の含有量は、好ましくは、2質量%以下、より好ましくは、1.5質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以下とすることができる。
アノード1の厚みは、アノード強度の確保等の観点から、好ましくは、100μm以上、より好ましくは、200μm以上、さらに好ましくは、300μm以上とすることができる。アノード1の厚みは、ガス拡散性の向上等の観点から、好ましくは、800μm以下、より好ましくは、700μm以下、さらに好ましくは、600μm以下とすることができる。
本実施形態のアノード1では、アノード外周部12が、V、Mnを除く第1金属101と、第1金属101とは異なる第2金属102と、酸素イオン伝導体103とを含んでいる一方、アノード本体部11は、第1金属101と、酸素イオン伝導体103とを含み、第2金属102を含んでいない。つまり、アノード1は、外部から供給される燃料ガスFに含まれうる不純物や水蒸気、アノード反応により発生する熱や水蒸気などに曝されやすいアノード外周部12にだけ第2金属102が局在している。そのため、アノード1は、第2金属102がアノード全体に存在する従来のアノードに比べ、焼結時に焼結阻害を引き起こし難く、アノード強度を確保することができる。また、アノード1は、アノード外周部12における第2金属102により、長時間発電した場合でも、アノード外周部12における第1金属101の熱凝集を抑制することが可能となる。
実施形態1の固体酸化物形燃料電池について、図1を用いて説明する。本実施形態の固体酸化物形燃料電池5は、実施形態1の固体酸化物形燃料電池用アノード1を有している。
本実施形態では、固体酸化物形燃料電池5は、具体的には、アノード1と固体電解質層2とカソード3とを有している。固体酸化物形燃料電池5は、図1に例示されるように、固体電解質層2とカソード3との間に中間層4をさらに備えることができる。中間層4は、主に、固体電解質層材料とカソード材料との反応を抑制するための層である。本実施形態では、固体酸化物形燃料電池5は、具体的には、アノード1、固体電解質層2、中間層4、および、カソード3がこの順に積層され、互いに接合されている。固体酸化物形燃料電池5は、電極であるアノード1を支持体とするアノード支持型である。そのため、固体酸化物形燃料電池5は、他の層に比べてアノード1の厚みが十分に厚く形成されている。なお、図1では、固体酸化物形燃料電池5の外形が四角形状である例が示されている。固体酸化物形燃料電池5の外形は、他にも、円形状等の形状とすることもできる。また、固体酸化物形燃料電池5は、アノード1における固体電解質層2側とは反対側の面に、外部から燃料ガスFが供給される。
固体電解質層2の材料としては、強度、熱的安定性に優れる等の観点から、イットリア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア等の酸化ジルコニウム系酸化物を好適に用いることができる。固体電解質層2の材料としては、酸素イオン伝導性、機械的安定性、他の材料との両立、酸化雰囲気から還元雰囲気まで化学的に安定である等の観点から、イットリア安定化ジルコニアが好適である。本実施形態では、固体電解質層2の材料として、具体的には、イットリア安定化ジルコニアを用いることができる。
固体電解質層2の厚みは、オーミック抵抗の低減などの観点から、好ましくは3〜20μm、より好ましくは4〜15μm、さらに好ましくは5〜10μmとすることができる。
カソード3は、固体電解質層2におけるアノード1側とは反対側に配置されている。本実施形態では、カソード3の外形が、アノード1の外形よりも小さく形成されている。なお、各図では、アノード1、固体電解質層2および中間層4の外形は、いずれもほぼ同じ大きさとされている。
カソード3の材料としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物などを例示することができる。遷移金属ペロブスカイト型酸化物としては、具体的には、例えば、LaSr1−xCoO系酸化物、LaSr1−xCoFe1−y系酸化物、SmSr1−xCoO系酸化物(但し、上記において、0≦x≦1、0≦y≦1)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。本実施形態では、カソード3の材料として、具体的には、LaSr1−xCoFe1−y系酸化物(0≦x≦1、0≦y≦1)を用いることができる。
カソード3の厚みは、ガス拡散性、電極反応抵抗、集電性などの観点から、好ましくは20〜100μm、より好ましくは30〜80μmとすることができる。
中間層4の材料としては、例えば、CeO、または、CeOにGd、Sm、Y、La、Nd、Yb、Ca、および、Hoから選択される1種または2種以上の元素等がドープされたセリア系固溶体等の酸化セリウム系酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。本実施形態では、中間層4の材料として、具体的には、CeOにGdがドープされたセリア系固溶体を用いることができる。
また、中間層4の厚みは、オーミック抵抗の低減、カソードからの元素拡散の抑制等の観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜5μmとすることができる。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池5は、本実施形態のアノード1を有している。そのため、固体酸化物形燃料電池5は、十分な構造体強度を確保することができ、発電耐久性を有する。
(実施形態2)
実施形態2の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池について、図4を用いて説明する。なお、実施形態2以降において用いられる符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
図4に例示されるように、本実施形態のアノード1は、アノード外周部12が、アノード反応が生じる領域である反応領域121を含んでいる。固体酸化物形燃料電池5では、通常、カソード3側から固体電解質層2中を移動してくる酸素イオン(O2−)が、固体電解質層2とアノード1との界面周辺で、燃料ガスFに含まれるHと反応して電子(e)を放出すると同時に、水蒸気(HO)を生成するといったアノード反応が生じる。アノード反応では、酸素イオンが不可欠である。アノード1内における酸素イオンの電気化学的ポテンシャルは、固体電解質層2との界面(アノード1における固体電解質層2側の層面)からアノード厚み方向内方に向かって漸次低減するように分布している。そして、酸素イオンの電気化学的ポテンシャルが存在しうる固体電解質層2との界面からの距離は、およそ数十μm程度である。例えば、「燃料電池9(4),97−102,2010,燃料電池開発情報センター発行」の文献によれば、上記距離は、25〜35μm程度とされている。
このような酸素イオンが伝導しうる反応領域121は、アノード反応により発生する熱や水蒸気などによって、金属の熱凝集が生じやすい。本実施形態では、第1金属101と第2金属102と酸素イオン伝導体103とを含むアノード外周部12が、上記反応領域121を含んでいる。そのため、この構成によれば、長時間発電した場合でも、反応領域121における第1金属101の熱凝集を抑制しやすいアノード1が得られる。なお、アノード外周部12は、反応領域121の全部を含んでいてもよいし、反応領域121の一部を含んでいてもよい。固体電解質層2との界面側に配されるアノード外周部12の部分が、反応領域121を多く含めば含むほど、上記効果を確実なものとすることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池5は、上述した本実施形態のアノード1を有している点で、実施形態1の固体酸化物形燃料電池5と異なっている。本実施形態の固体酸化物形燃料電池5によれば、効果的に発電耐久性を向上させることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。
(実施形態3)
実施形態3の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池について、図5を用いて説明する。
図5に例示されるように、本実施形態のアノード1は、アノード外周部12が、外部から供給される燃料ガスFに直接触れる燃料ガス接触領域122を含んでいる。固体酸化物形燃料電池5では、一般に、水素ガスや炭化水素ガスを改質した改質ガス等、Hを含む燃料ガスFが外部からアノード1に供給される。燃料ガスFには、H以外にも、不純物や水蒸気が含まれうる。
このような燃料ガスFに直接触れる燃料ガス接触領域122は、不純物や水蒸気などによって、金属の熱凝集が生じやすい。なお、燃料ガス接触領域122は、燃料ガスFが流入するアノード1の表面からアノード1の内方に深さ20μmまでの領域とされる。本実施形態では、燃料ガス接触領域122は、アノード1における固体電解質層2側とは反対側の層面からアノード厚み方向内方に深さ20μmまでの領域とされている。つまり、本実施形態は、アノード1における固体電解質層2側とは反対側の層面を含む燃料ガス接触領域122を有している例である。本実施形態では、第1金属101と第2金属102と酸素イオン伝導体103とを含むアノード外周部12が、上記燃料ガス接触領域122を含んでいる。そのため、この構成によれば、長時間発電した場合でも、燃料ガス接触領域122における第1金属101の熱凝集を抑制しやすいアノード1が得られる。また、アノード1内を燃料ガスFが拡散し始める初期の段階で、燃料ガスFに含まれていた不純物を捕捉することが可能となる。なお、アノード外周部12は、燃料ガス接触領域122の全部を含んでいてもよいし、燃料ガス接触領域122の一部を含んでいてもよい。アノード外周部12が、燃料ガス接触領域122を多く含めば含むほど、上記効果を確実なものとすることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池5は、上述した本実施形態のアノード1を有している点で、実施形態1の固体酸化物形燃料電池5と異なっている。本実施形態の固体酸化物形燃料電池5によれば、効果的に発電耐久性を向上させることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。
(実施形態4)
実施形態4の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池について説明する。なお、本実施形態では、図1を参照する。
本実施形態のアノード1は、アノード外周部12が、第2金属102の濃度分布を有している。この構成によれば、アノード外周部12内における第2金属102の濃度分布を制御することにより、外部から供給される燃料ガスFに含まれうる不純物や水蒸気、アノード反応により発生する熱や水蒸気などに曝されやすいアノード外周部12における部分に、第2金属102を積極的に存在させることが可能になる。そのため、この構成によれば、上述した作用効果を効果的に得ることが可能となる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池5は、上述した本実施形態のアノード1を有している。本実施形態の固体酸化物形燃料電池5によれば、より効果的に発電耐久性を向上させることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態1と同様である。
(実施形態5)
実施形態5の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池について説明する。なお、本実施形態では、図1および図4を参照する。
本実施形態は、基本的には、上述した実施形態2と実施形態4とを組み合わせたものである。すなわち、本実施形態のアノード1では、アノード外周部12は、アノード反応が生じる領域である反応領域121を含んでいる。また、アノード外周部12は、第2金属102の濃度分布を有している。
本実施形態では、具体的には、反応領域121に含まれる第2金属102の濃度をCaとし、アノード外周部12のうち、反応領域121を除いたその他の部分に含まれる第2金属102の濃度をCbとしたとき、Ca<Cbの関係を満たしている。この構成によれば、上述した作用効果をより大きくすることができる。これは、次の理由による。反応領域121には、発電反応が可能な第1金属101がなるべく多く存在することで、より高出力の発電反応を起こすことが可能となる。さらに、反応領域121にて発生した水蒸気は、セル外部への排出のため、反応領域121を除いた部分を通過することになる。反応領域121を除いた部分には、外部から供給される燃料ガスFに含まれる水蒸気にも曝されるため、水蒸気による第1金属101の熱凝集が生じやすい環境となる。そのため、アノード外周部12において、Ca<Cbの関係を満たすように、反応領域121と反応領域121を除いた部分との間で濃度差を設けることによって、上述した作用効果をより大きくすることが可能になる。その他の構成および作用効果は、実施形態2、4と同様である。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池5は、上述した本実施形態のアノード1を有している。本実施形態の固体酸化物形燃料電池5によれば、より効果的に発電耐久性を向上させることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態2、4と同様である。
(実施形態6)
実施形態6の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池について、図6を用いて説明する。
本実施形態は、基本的には、上述した実施形態3と実施形態4とを組み合わせたものである。すなわち、本実施形態のアノード1では、アノード外周部12は、外部から供給される燃料ガスFに直接触れる燃料ガス接触領域122を含んでいる。また、アノード外周部12は、第2金属102の濃度分布を有している。以下、詳説する。
図6(a)に示されるように、本実施形態では、具体的には、アノード1は、固体酸化物形燃料電池5に用いられた際に、固体電解質層2側とは反対側の層面から燃料ガスFが供給される。具体的には、固体酸化物形燃料電池5では、電池側面が封止材6にて覆われている。そのため、本実施形態では、燃料ガスFは、アノード1の側面に直接流入することなく、アノード1における固体電解質層2側とは反対側の層面に直接流入するようになっている。したがって、本実施形態のアノード1は、アノード1における固体電解質層2側とは反対側の層面を含む燃料ガス接触領域122を有している。
本実施形態では、アノード外周部12のうち、アノード本体部11の固体電解質層2側とは反対側の面112を覆っている部分12aが、燃料ガス接触領域122を含んでいる。そして、このアノード外周部12の部分12aは、アノード1の層面に垂直な断面をアノード1の層面に沿う方向で見た際に(A−A’線)、図6(b)に示されるように、燃料ガスFの流入口側から燃料ガスFの流出口側に向かって第2金属102の濃度が小さくなるように濃度傾斜が設けられている。なお、本実施形態では、燃料ガスFの流入口(不図示)は、位置X1側にある。燃料ガスFの流出口(不図示)は、位置X2側にある。また、図6(b)では、アノード外周部12の部分12aにおける第2金属102の濃度分布として、燃料ガスFの流入口側から燃料ガスFの流出口側に向かって第2金属102の濃度が漸次小さくなる例が示されている。アノード外周部12の部分12aにおける第2金属102の濃度分布は、燃料ガスFの流入口側から燃料ガスFの流出口側に向かって第2金属102の濃度が段階的に小さくなるように構成されていてもよい。
燃料ガス接触領域122を含むアノード外周部12の部分12aにおいて、外部から供給される燃料ガスFに含まれうる不純物や水蒸気等に曝される率は、燃料ガスFの流出口側よりも、燃料ガスFの流入口側の方が高い。そのため、上記構成によれば、アノード外周部12の部分12aが、上述のような第2金属102の濃度傾斜を有することにより、上述した作用効果をより効率よく得ることが可能になる。つまり、本実施形態で示されるように、燃料ガス接触領域122を含むアノード外周部12の部分12aは、燃料ガスFの流出口側よりも燃料ガスFの流入口側の方において第2金属102の濃度が高くなるように構成されているとよい。
また、本実施形態では、アノード外周部12のうち、アノード本体部11の側面113を覆っている部分12bは、封止材6により覆われており、燃料ガスFに直接触れない。そのため、このアノード外周部12の部分12bは、アノード1の層面に垂直な断面をアノード1の層面に沿う方向で見た際に(B−B’線)、図6(b)に示されるように、第2金属102が含まれていない構成とすることができる。なお、アノード外周部12の部分12bが第2金属102を含まない点については、実施形態1で上述した、アノード本体部11が第2金属102を含まない点に関する説明を準用する。
上記構成をさらに有する場合には、アノード外周部12において、第2金属102による効果が少ない部分について第2金属102の使用量を削減することができる。その他にも、固体酸化物形燃料電池5に層状に第2金属102が配置されないことで、固体酸化物形燃料電池5の曲げ応力に対する強度を向上させることができるなどの利点がある。その他の構成および作用効果は、実施形態3、4と同様である。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池5は、上述した本実施形態のアノード1を有している。本実施形態の固体酸化物形燃料電池5によれば、より効果的に発電耐久性を向上させることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態3、4と同様である。
(実施形態7)
実施形態7の固体酸化物形燃料電池用アノードおよび固体酸化物形燃料電池について、図7を用いて説明する。
本実施形態は、基本的には、上述した実施形態3と実施形態4とを組み合わせたものである。すなわち、本実施形態のアノード1では、アノード外周部12は、外部から供給される燃料ガスFに直接触れる燃料ガス接触領域122を含んでいる。また、アノード外周部12は、第2金属102の濃度分布を有している。以下、詳説する。
図7(a)に示されるように、本実施形態では、具体的には、アノード1は、固体酸化物形燃料電池5に用いられた際に、固体電解質層2側とは反対側の層面から燃料ガスFが供給されるだけでなく、アノード1の側面からも燃料ガスFが供給される。具体的には、固体酸化物形燃料電池5では、中間層4表面の外周縁が封止材6によって封止されている。そのため、本実施形態では、燃料ガスFは、アノード1における固体電解質層2側とは反対側の層面およびアノード1の側面に直接流入するようになっている。したがって、本実施形態のアノード1は、アノード1における固体電解質層2側とは反対側の層面およびアノード1の側面を含む燃料ガス接触領域122を有している。なお、固体酸化物形燃料電池5が中間層4を有さない場合、固体電解質層2表面の外周縁を封止材6によって封止することにより、上記と同様の燃料ガスFの流れを構成することができる。
本実施形態では、アノード外周部12のうち、アノード本体部11の固体電解質層2側とは反対側の面112を覆っている部分12aが、燃料ガス接触領域122を含んでいる。さらに、アノード外周部12のうち、アノード本体部11の側面113を覆っている部分12bも、燃料ガス接触領域122を含んでいる。
そして、アノード外周部12の部分12aは、アノード1の層面に垂直な断面をアノード1の層面に沿う方向で見た際に(A−A’線)、図7(b)に示されるように、燃料ガスFの流入口側から燃料ガスFの流出口側に向かって第2金属102の濃度が小さくなるように濃度傾斜が設けられている。一方、アノード外周部12の部分12bは、アノード1の層面に垂直な断面をアノード1の層面に沿う方向で見た際に(B−B’線)、図7(b)に示されるように、燃料ガスFの流入口側では、燃料ガスFの流入口側から燃料ガスFの流出口側に向かって第2金属102の濃度が小さくなるように濃度傾斜が設けられている。また、アノード外周部12の部分12bは、燃料ガスFの流出口側では、燃料ガスFの流入口側から燃料ガスFの流出口側に向かって第2金属102の濃度が大きくなるように濃度傾斜が設けられている。燃料ガスFの流入口および燃料ガスFの流出口の配置や濃度傾斜等については、実施形態6で説明した通りである。
上記構成によれば、アノード外周部12の部分12aが上述のような第2金属102の濃度傾斜を有することにより、上述した作用効果をより効率よく得ることが可能になる。その他の構成および作用効果は、実施形態3、4と同様である。
なお、図7(b)では、燃料ガスFの流出口側におけるアノード外周部12の部分12bは、燃料ガスFの流入口側におけるアノード外周部12の部分12bに比べ、第2金属の濃度が小さくされている例が示されている。これ以外にも、燃料ガスFの流出口側におけるアノード外周部12の部分12bは、第2金属102を含まないように構成することもできる。燃料ガスFの流出口側におけるアノード外周部12の部分12bは、燃料ガスFの流入口側におけるアノード外周部12の部分12bに比べ、燃料ガスFに含まれうる不純物や水蒸気等に曝される率が低いからである。なお、アノード外周部12の部分12bが第2金属102を含まない点については、実施形態1で上述した、アノード本体部11が第2金属102を含まない点に関する説明を準用する。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池5は、上述した本実施形態のアノード1を有している。本実施形態の固体酸化物形燃料電池5によれば、より効果的に発電耐久性を向上させることができる。その他の構成および作用効果は、実施形態3、4と同様である。
(実施形態8)
実施形態8の固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法について、図8を用いて説明する。
図8に例示されるように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池用アノード1の製造方法(以下、単に「アノード製造方法」と称することがある。)は、未焼成体6を形成し、未焼成体6を酸化雰囲気中で焼成することにより酸化物焼結体7を形成し、酸化物焼結体7を還元することにより、上述したアノード1を形成する製法である。
アノード製造方法において、未焼成体6は、第1金属101の酸化物と、第2金属102の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含み、第2金属102の酸化物が外周部にだけ存在している。本実施形態では、具体的には、図8(a)に示されるように、未焼成体6は、未焼成体6の外周部に、第2金属102の酸化物を含む第2金属含有部62が部分的に配置されており、第2金属含有部62以外の部分は、第1金属101の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含み、第2金属102の酸化物を含んでいない第2金属非含有部61とされている。第2金属含有部62は、第2金属102の酸化物を含み、第1金属101の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含まずに構成されていてもよいし、第1金属101の酸化物と、第2金属102の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含んで構成されていてよい。また、これらの組み合わせより構成されていてもよい。なお、第1金属101、第2金属102、酸素イオン伝導体103等の材料などについては、実施形態1を参照することができる。
本実施形態では、より具体的には、第2金属含有部62が、未焼成体6の外周部のうち、未焼成体6の一方面側の部分全部と、未焼成体6の他方面側の部分の一部と、未焼成体6の側面側の部分の一部とに配置されている例が示されている。なお、図8(a)の未焼成体6は、例えば、次のように作製することができる。
第1金属101の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含み、第2金属102の酸化物を含んでいない未焼成の第2金属非含有シートと、第1金属101の酸化物と、第2金属102の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含む未焼成の第2金属含有シートと、第1金属101の酸化物と、第2金属102の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含む第2金属含有ペーストを準備する。次いで、第2金属非含有シートの一方面の外周縁を除いた内側部分に、スクリーン印刷法等を用いて第2金属含有ペーストを印刷し、内側印刷シートを形成する。また、別の第2金属非含有シートの一方面の外周縁に、枠状に第2金属含有ペーストを印刷し、外周縁印刷シートを形成する。次いで、印刷面を下側にした内側印刷シートの上に、印刷面を上側にした外周縁印刷シート、第2金属非含有シート、および、第2金属含有シートを順に積層した後、この積層体を圧着する。得られた圧着体は、必要に応じて脱脂することができる。なお、得られるアノード1の厚みを調節するため、例えば、内側印刷シートと外周縁印刷シートとの間、外周縁印刷シートと第2金属含有シートとの間などには、第2金属非含有シートを任意に1枚以上介在させることができる。以上により、未焼成体6を作製することができる。
未焼成体6は、大気中等の酸化雰囲気中で焼成される。焼成条件は、例えば、焼成温度1300〜1400℃程度、焼成時間1〜5時間程度とすることができる。これにより、図8(b)に例示されるように、外周部の全体に、第2金属102の酸化物が物質拡散した酸化物焼結体7が形成される。つまり、未焼成体6の焼成中に、未焼成体6の外周部に部分的に存在する第2金属102の酸化物が物質拡散し、焼成後には、その外周部の全体に第2金属102の酸化物が存在する酸化物焼結体7が形成される。酸化物焼結体7は、具体的には、酸化物焼結体7の本体をなす本体部71と、本体部71の外周を覆う外周部72とを有している。そして、外周部72は、第1金属101の酸化物と、第2金属102の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含んでおり、本体部71は、第1金属101の酸化物と、酸素イオン伝導体103とを含み、第2金属102の酸化物を含んでいない。
形成された酸化物焼結体7は、還元される。還元条件は、例えば、水素ガス等の還元雰囲気下、還元温度700〜900℃程度、還元時間2〜6時間程度とすることができる。
これにより、図8(c)に例示されるように、上述したアノード1を形成することができる。本実施形態のアノード製造方法によれば、上述したアノード1の製造を確実なものとすることができる。
本実施形態のアノード製造方法では、未焼成体6に含まれる第1金属101の酸化物と第2金属102の酸化物との含有比を調節することにより、焼成時に第2金属102の酸化物が物質拡散する際の拡散距離を制御することが好ましい。この構成によれば、アノード外周部12にだけ第2金属102を局在化させやすくなり、上述したアノード1の製造をより確実なものとすることができる。
未焼成体6に含まれる第1金属101の酸化物と第2金属102の酸化物との含有比は、具体的には、未焼成体6の形成材料に含まれる第1金属101の酸化物と第2金属102の酸化物との混合比を調節することにより調整することができる。
上記含有比は、例えば、質量比で、第1金属101の酸化物:第2金属102の酸化物=100:0.1〜100:10、好ましくは、100:0.2〜100:5、より好ましくは、100:0.5〜100:2などとすることができる。
(実験例)
<実験例1>
−材料準備−
NiO粉末(平均粒子径:0.5μm)と、8YSZ粉末(平均粒子径:0.2μm)と、カーボン(造孔剤)と、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミルおよび1−ブタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。NiO粉末と8YSZ粉末との質量比は、65:35である。ドクターブレード法を用いて、樹脂シート上に上記スラリーを層状に塗工し、乾燥させ後、樹脂シートを剥離することにより、厚み100μmの第2金属非含有シートを準備した。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した体積基準の累積度数分布が50%を示すときの粒子径(直径)d50である(以下、同様)。
第2金属非含有シートの作製において、スラリー調製時にFe粉末(平均粒子径:0.5μm)を添加した以外は同様にして、厚み100μmの第2金属含有シートを準備した。なお、NiO粉末に対するFe粉末の割合は、NiO:Fe=100:2(2質量%)とした。
Fe粉末(平均粒子径:0.5μm)、アクリル系樹脂(バインダー)、ジヒドロターピネオールアセテート(溶剤)、分散剤、レベリング剤、沈降防止剤をプラネタリーミキサーにて撹拌した後、三本ロールにて混練し、さらにジヒドロターピネオールアセテート(溶剤)を加え、プラネタリーミキサーにて撹拌することにより、第2金属含有ペーストを準備した。そして、第2金属非含有シートの一方表面に、第2金属含有ペーストをスクリーン印刷法にて塗布することにより、第2金属含有ペースト付き第2金属非含有シートを準備した。なお、第2金属含有ペーストの塗布厚は、後述する圧着後の厚みが10μmとなるように調節した。
8YSZ粉末(平均粒子径:0.2μm)と、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミルおよび1−ブタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。以降は、第2金属非含有シートの作製と同様にして、厚み5.0μmの固体電解質層形成用シートを準備した。
10mol%のGdがドープされたCeO(10GDC)粉末(平均粒子径:0.3μm)と、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。以降は、第2金属非含有シートの作製と同様にして、厚み4.0μmの中間層形成用シートを準備した。
−強度測定用試料の作製−
(試料1ox、試料1re)
第2金属非含有シート、第2金属非含有シート、第2金属含有ペースト付き第2金属非含有シート、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層し、圧着した。なお、第2金属含有ペーストによる印刷面は、固体電解質層形成用シート側に配置した。また、圧着には、WIP成形法を用いた。この際、WIP成形条件は、温度85℃、加圧力50MPa、加圧時間10分という条件とした。得られた圧着体は脱脂した。
上記圧着体を大気雰囲気中にて、1350℃で2時間一括焼成することにより、アノード、固体電解質層、中間層がこの順に積層された試料1oxの焼結体を得た。なお、試料1oxの焼結体は、NiOとYSZとを含むアノードの固体電解質層側の外周部に、物質拡散したFeが局在している。また、アノードと固体電解質層との界面からアノード内方へのFeの拡散距離は、約150μmである。
試料1oxの焼結体を、H雰囲気中、800℃にて還元することにより、試料1reの還元体を得た。なお、試料1reの還元体では、NiO、Feが還元され、Ni、Feに変化している。つまり、試料1reの還元体は、NiとYSZとを含むアノードの固体電解質層側の外周部に、Feが局在している。
(試料1Cox、試料1Cre)
試料1oxの焼結体の作製において、第2金属含有用ペースト付き第2金属非含有シートを用いず、第2金属非含有シート、第2金属非含有シート、第2金属非含有シート、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層し、圧着した点以外は、同様にして、試料1Coxの焼結体、試料1Creの還元体を得た。なお、試料1Coxの焼結体は、アノードがNiOとYSZとを含む。試料1Creの還元体は、アノードがNiとYSZとからなる。
(試料2Cox、試料2Cre)
試料1oxの焼結体の作製において、第2金属含有ペースト付き第2金属非含有シートおよび第2金属非含有シートを用いず、第2金属含有シート、第2金属含有シート、第2金属含有シート、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層し、圧着した点以外は、同様にして、試料2Coxの焼結体、試料2Creの還元体を得た。試料2Coxの焼結体は、アノードがNiOとFeとYSZとを含み、アノード全体にFeが分布している。試料2Creの還元体は、アノードがNiとFeとYSZとを含み、アノード全体にFeが分布している。
−強度測定−
作製した各試料につき、JIS R 1664 「ファインセラミックス多孔体の曲げ強さ試験方法」に準拠して、4点曲げ試験を実施し、4点曲げ強度を測定した。その結果を、図9にまとめて示す。なお、本実験例では、曲げ強度が100MPa以上であった場合を、必要なセル強度を有すると判断した。
−考察−
図9によれば、次のことがわかる。アノード全体にFeが分布する試料2Coxは、アノードにFeが含まれない試料1Coxに比べ、強度が著しく低下した。同様に、アノード全体にFeが分布する試料2Creは、アノードにFeが含まれない試料1Creに比べ、強度が著しく低下した。これは、アノードの焼結時にFeにより焼結阻害が引き起こされ、アノード強度が大きく低下したためである。また、試料2Creの結果によれば、アノードが還元雰囲気に曝された場合(電池運転時等)に、アノード強度の低下によって十分なセル強度が得られなくなることがわかる。
これらに対し、アノード外周部にFeが局在している試料1oxは、アノードにFeが含まれない試料1Coxに比べ、同等以上の強度を確保することができた。また、アノード外周部にFeが局在している試料1reは、アノードにFeが含まれない試料1Creと同等程度の強度を確保することができた。この結果から、アノード外周部にだけFe等の第2金属を局在させることで、アノードの焼結阻害が抑制され、十分なアノード強度を確保することが可能となり、このアノードを用いることにより、十分な構造体強度を有する固体酸化物形燃料電池を実現できることが確認された。
<実験例2>
−材料準備−
実験例1と同様にして、厚み100μmの第2金属非含有シート、厚み30μmの第2金属非含有シートを準備した。また、厚み30μmの第2金属含有シートを4種類準備した。なお、各第2金属含有シートにおけるNiO粉末に対するFe粉末の割合は、それぞれ、2質量%、0.4質量%、0.2質量%、0.1質量%とした。また、固体電解質層形成用シート、中間層形成用シートを準備した。
また、LSC(La0.6Sr0.4CoO)粉末(平均粒子径:2.0μm)と、エチルセルロースと、テルピネオールとを3本ロールにて混練することにより、カソード形成用ペーストを準備した。
−発電耐久試験用試料の作製−
(試料12%
第2金属非含有シート(厚み100μm)、第2金属非含有シート(厚み100μm)、第2金属非含有シート(厚み100μm)、第2金属非含有シート(厚み100μm)、第2金属含有シート(Fe:2質量%)、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層し、圧着した。
上記圧着体を大気雰囲気中にて1350℃で2時間一括焼成することにより、アノード、固体電解質層、中間層がこの順に積層された焼結体を得た。得られた焼結体は、NiOとYSZとを含むアノードの固体電解質層側の外周部に、物質拡散したFeが局在している。
上記焼結体における中間層の表面に、カソード形成用ペーストをスクリーン印刷法により塗布し、大気雰囲気中、950℃で2時間焼成(焼付)することによって層状のカソード(50μm)を形成した。なお、カソードの外形は、アノードの外形よりも小さく形成した。これにより、平板形のセルを得た。
上記セルのアノード部位を、H雰囲気中、800℃にて還元することにより、試料12%のセルを得た。なお、試料12%のセルでは、NiO、Feが還元され、Ni、Feに変化している。つまり、試料12%のセルは、NiとYSZとを含むアノードの固体電解質層側の外周部に、Feが局在している。
(試料10.4%
試料12%のセルの作製において、第2金属含有シート(Fe:2質量%)に代えて、第2金属含有シート(Fe:0.4質量%)を用いた以外は同様にして、試料10.4%のセルを得た。
(試料10.2%
試料12%のセルの作製において、第2金属含有シート(Fe:2質量%)に代えて、第2金属含有シート(Fe:0.2質量%)を用いた以外は同様にして、試料10.2%のセルを得た。
(試料10.1%
試料12%のセルの作製において、第2金属含有シート(Fe:2質量%)に代えて、第2金属含有シート(Fe:0.1質量%)を用いた以外は同様にして、試料10.1%のセルを得た。
(試料1C0%
試料12%のセルの作製において、第2金属含有シート(Fe:2質量%)に代えて、厚み30μmの第2金属非含有シートを用いた以外は同様にして、試料1C0%のセルを得た。
−発電耐久試験−
作製した各試料につき、700℃、電流密度0.5A/cmの初期発電条件における初期電圧を求めた。また、各試料につき、連続通電試験を、0.4Vを維持するよう制御した加速劣化条件にて実施し、20時間発電した後における初期特性に対するインピーダンスの変化量を求めた。そして、{標準試料の定格電流における耐久試験劣化率(%/kh)×各試料の本条件耐久試験劣化率(%/20h)}/{標準試料の本条件耐久試験劣化率(%/20h)}の計算式により、各試料の劣化率(%/kh)を求めた。その結果を、図10にまとめて示す。
−考察−
図10によれば、次のことがわかる。アノード外周部にFeが局在するアノードを有するセルによれば、劣化率を低減させることができることが確認された。これは、Niの熱凝集によるアノードの劣化が抑制され、長時間発電時でも電気抵抗を維持できたためである。この結果から、アノード外周部にFe等の第2金属を局在させることにより、長時間発電した場合でも、アノード外周部におけるNi等の第1金属の熱凝集を抑制可能であり、発電耐久性を有する固体酸化物形燃料電池を実現できることが確認された。
さらに、アノード外周部にFeが局在するアノードを有するセルでは、含有されるNiに対するFeの含有量が増加するにつれて、劣化率を低減させやすくなることがわかる。また、上記Feの含有量が0.1質量%以上であれば、劣化率の低減効果を確実なものとすることが可能であるといえる。これは、アノードにおけるNiの熱凝集およびNiの酸化反応による劣化が抑制されやすくなったことで、長時間発電時でも電気抵抗を維持しやすくなったためである。この結果から、アノード外周部にFe等の第2金属が局在するアノードにおいて、アノード外周部のNi等の第1金属に対するFe等の第2金属の含有量を0.1質量%以上とすることが有効であることが確認された。
<実験例3>
−材料準備−
実験例1と同様にして、第2金属非含有シート、固体電解質層形成用シート、中間層形成用シート、第2金属含有用ペーストを準備した。
−拡散距離測定用試料の作製−
第2金属非含有シート(1枚目)、第2金属非含有シート(2枚目)、第2金属非含有シート(3枚目)、第2金属非含有シート(4枚目)、第2金属非含有シート(5枚目)、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層し、圧着した。なお、4枚目の第2金属非含有シートと5枚目の第2金属非含有シートとの間には、第2金属含有用ペーストが線状に塗布されてなる塗布部601が形成されている。圧着条件は、実験例1と同様である。
図11に示されるように、得られた圧着体60は、固体電解質層形成用シート21から100μm程度離れた位置に、幅約100μm、厚み約50μmの第2金属含有部62を有している。なお、符号22は、中間層形成用シートである。
上記圧着体を大気雰囲気中にて、1350℃で2時間一括焼成することにより、アノード、固体電解質層、中間層がこの順に積層された焼結体を得た。
−考察−
図12によれば、上記圧着体を大気雰囲気中で焼成することにより、Feが100%添加された位置Pから外方に向かって、Feが物質拡散していることがわかる。また、その拡散距離は、およそ200μm程度であった。また、図12に示されるように、Feは、固体電解質層中にほぼ物質拡散していないことも確認された。なお、本例において、焼結体におけるNiOとYSZと空隙との比は、4.4:2.1:3.5であった。
また、EDXラインスキャン測定により、還元後のセル内構成元素の分析を行った。具体的には、上述したFeが100%が添加された位置Pを基準として、アノード層面と平行な方向に測定ラインLを設定し、Feの拡散距離とFeの検出割合との関係を求めた。その結果を図13に示す。なお、図13中、グラフの曲線は、測定データの近似曲線である。図13に示されるように、この結果からも、Feが100%添加された位置から外方に向かって、Feが物質拡散していることがわかる。また、Feの拡散距離は、およそ200μm程度であり、上記図12で示される結果とよく一致していた。また、上記結果から、還元工程によるFe元素の物質拡散が進行しないことも示唆された。
これらの結果から、未焼成体に含まれるNi等の第1金属の酸化物とFe等の第2金属の酸化物との含有比を調節することにより、焼成時に第2金属の酸化物が物質拡散する際の拡散距離を制御できることが確認された。
<実験例4>
−材料準備−
実験例1と同様にして、厚み100μmの第2金属非含有シートを準備した。また、第2金属非含有シートの一方面の外周縁(端部から300μm)を除いた内側部分に、スクリーン印刷法を用いて第2金属含有ペーストを印刷することにより、内側印刷シートを準備した。また、第2金属非含有シートの一方面の外周縁に、スクリーン印刷法を用いて枠状に第2金属含有ペーストを印刷することにより、外周縁印刷シートを準備した。なお、第2金属含有用ペーストの塗布厚は、後述する圧着後の厚みが10μmとなるように調節した。また、実験例2と同様にして、厚み30μmの第2金属含有シートを準備した。なお、第2金属含有シートにおけるNiO粉末に対するFe粉末の割合は、2質量%とした。また、実験例1と同様にして、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートを準備した。また、実験例2と同様にして、カソード形成用ペーストを準備した。
−未焼成体の形成−
内側印刷シート、外周縁印刷シート、第2金属非含有シート、第2金属含有シート、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層し、圧着した。なお、内側印刷シートにおける印刷面は、固体電解質層形成用シート側とは反対側に配置した。また、外周縁印刷シートにおける印刷面は、固体電解質層形成用シート側に配置した。圧着条件は、実験例1と同様である。これにより、図8(a)に示されるような未焼成体を形成した。
−酸化物焼結体の形成−
次に、上記未焼成体を大気雰囲気中にて、1350℃で2時間一括焼成することにより、アノード、固体電解質層、中間層がこの順に積層された酸化物焼結体を形成した。酸化物焼結体は、図8(b)に示されるように、焼成時に、第2金属の酸化物としてのFeが、外周部全体に物質拡散している。また、得られた酸化物焼結体における中間層の表面に、カソード形成用ペーストをスクリーン印刷法により塗布し、大気雰囲気中、950℃で2時間焼成(焼付)することによって層状のカソードを形成した。
−アノードの形成−
次に、上記酸化物焼結体におけるアノード部位を、H雰囲気中、800℃にて還元し、NiO、FeをNi、Feに変化させた。これにより、図8(c)に示されるような、NiとFeとYSZとを含むアノード外周部と、NiとYSZとを含み、Feを含まないアノード本体部とを有する試料1のアノード、これを有する試料1の単セルを得た。なお、本実験例は、形成されるアノード本体部にFeを積極的に含まないようにアノードを製造したものである。
本発明は、上記各実施形態、各実験例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、各実施形態、各実験例に示される各構成は、それぞれ任意に組み合わせることができる。例えば、実施形態2の構成に、さらに実施形態3の構成を組み合わせることができる。
1 固体酸化物形燃料電池用アノード
11 アノード本体部
12 アノード外周部
101 第1金属
102 第2金属
103 酸素イオン伝導体
5 固体酸化物形燃料電池
6 未焼成体
7 酸化物焼結体

Claims (11)

  1. アノードの本体をなすアノード本体部(11)と、上記アノード本体部の外周面を覆うアノード外周部(12)とを有しており、
    上記アノード外周部は、
    V、Mnを除く第1金属(101)と、上記第1金属と異なる第2金属(102)と、酸素イオン伝導体(103)とを含んでおり、
    上記アノード本体部は、
    上記第1金属と、上記酸素イオン伝導体とを含み、上記第2金属を含んでいない、固体酸化物形燃料電池用アノード(1)。
  2. 上記第2金属は、上記第1金属の酸化物である第1金属酸化物より低い融点を有する第2金属酸化物を形成可能な金属である、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
  3. 上記アノード外周部は、アノード反応が生じる領域である反応領域(121)を含む、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
  4. 上記アノード外周部は、外部から供給される燃料ガスに直接触れる燃料ガス接触領域(122)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
  5. 上記アノード外周部は、
    上記第1金属と、上記第1金属の表面を覆う、上記第1金属と上記第2金属との結合体(100)とを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
  6. S1<S2の関係を満たす、請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
    但し、上記S1は、上記アノード外周部に含まれる空隙(120)に上記結合体に覆われる上記第1金属の表面が接している割合であり、上記S2は、上記空隙に上記結合体の表面および上記第2金属の表面が接している割合である。
  7. 上記アノード外周部の上記第1金属に対する上記第2金属の含有量は、0.1質量%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
  8. 上記第1金属がNiであり、上記第2金属が、Fe、Co、および、Tiからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
  9. 上記第1金属の酸化物と、上記第2金属の酸化物と、上記酸素イオン伝導体とを含み、上記第2金属の酸化物が外周部に存在する未焼成体(6)を形成し、
    上記未焼成体を酸化雰囲気中で焼成することにより、上記第2金属の酸化物を物質拡散させた酸化物焼結体(7)を形成し、
    上記酸化物焼結体を還元することにより、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用アノードを形成する、固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法。
  10. 上記未焼成体に含まれる上記第1金属の酸化物と上記第2金属の酸化物との含有比を調節することにより、上記焼成時に上記第2金属の酸化物が物質拡散する際の拡散距離を制御する、請求項9に記載の固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノードを有する、固体酸化物形燃料電池(5)。
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