JP2015053161A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】支持基板と燃料極との境界部分に介挿された中間層でのクラックの発生を抑制できる燃料電池を提供すること。【解決手段】この燃料電池では、支持基板10が、酸化マグネシウムMgOと第1酸化物セラミックスとを含んで構成される。燃料極20が、ニッケルNiと第2酸化物セラミックスとを含んで構成される。支持基板10と燃料極20との境界部分に中間層15が介在する。この中間層15は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ニッケル(NiO)との固溶体である(Mg,Ni)Oと、第1酸化物セラミックスと、第2酸化物セラミックスと、を含む。常温にて、中間層15における支持基板10との界面近傍にて前記界面に沿って圧縮応力が作用する場合、中間層15の厚さは3.0〜75μmであり、前記界面に沿って引張応力が作用する場合、中間層15の厚さは3.0〜100μmである。【選択図】図16
Description
本発明は、燃料電池に関する。
従来より、「ガス流路が内部に形成されるとともに、酸化マグネシウム(MgO)と第1酸化物セラミックスとを含んで構成された支持基板」と、「前記支持基板に設けられるとともに、ニッケル(Ni)と第2酸化物セラミックスとを含んで構成された燃料極と、固体電解質と、空気極とがこの順に積層されてなる発電素子部」と、を備えた固体酸化物形燃料電池が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
一般に、上述した燃料電池の各構成部材は、酸素含有雰囲気での焼成によって形成される。この酸素含有雰囲気での焼成によって、燃料極に含まれるNi成分は、NiOとなっている。NiOは電子伝導性を有さない。従って、燃料極の電子伝導性を獲得するため、燃料極(燃料電池)の焼成後、燃料極に対して「還元処理」がなされる。「還元処理」とは、還元雰囲気で行われる熱処理であり、具体的には、例えば、支持基板側から還元性の燃料ガスを流しながら、燃料極中のNiOを800〜1000℃程度の高温下にて還元する処理である。
上述した燃料電池では、焼成後の上記還元処理の際、支持基板と燃料極との境界部分にクラックが発生する場合があった。これは、還元処理の際、燃料極中のNiOがNiに還元されることによって燃料極が収縮(還元収縮)、又は膨張(還元膨張)する一方で、内部に還元される物質を含まない支持基板は収縮も膨張もしないことに基づく。この結果、支持基板と燃料極との境界部分に過大な応力が作用し、前記境界部分にクラックが発生すると考えられる。
この問題に対処するため、本発明者は、支持基板と燃料極との境界部分に中間層を介挿することによって、上述した「支持基板と燃料極との境界部分に作用する過大な応力」を緩和することを考えている。この中間層は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ニッケル(NiO)との固溶体である(Mg,Ni)Oと、前記第1酸化物セラミックスと、前記第2酸化物セラミックスと、を含む。
一般に、この中間層の熱膨張係数は、支持基板及び燃料極の熱膨張係数より大きい。加えて、燃料電池の各構成部材の焼成は、燃料電池の作動温度より高い温度で行われる。従って、支持基板、中間層、及び燃料極の積層体が共焼成された後、上記還元処理前では、常温から燃料電池の作動温度までの温度範囲に亘って、中間層における支持基板及び燃料極とのそれぞれの界面近傍では引張応力が作用し、支持基板における中間層との界面近傍では圧縮応力が作用し、燃料極における中間層との界面近傍では圧縮応力が作用する。この状態で、上記還元処理が行われると、上述した「支持基板と燃料極との境界部分に作用する過大な応力」を緩和することができる。この点については、後に詳述する。
ところで、このように中間層が介挿された燃料電池が熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、中間層にクラックが発生する場合があった。このような中間層でのクラックの発生を抑制することが望まれてきたところである。
以上より、本発明は、支持基板と燃料極との境界部分に介挿された中間層でのクラックの発生を抑制できる燃料電池を提供することを目的とする。
本発明に係る燃料電池は、上述と同じ支持基板と、上述と同じ発電素子部と、を備える前記支持基板は、平板状であっても、円筒状であってもよい。
本発明に係る燃料電池では、前記支持基板と前記燃料極との境界部分に中間層が介在し、前記中間層が、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ニッケル(NiO)との固溶体である(Mg,Ni)Oと、前記第1酸化物セラミックスと、前記第2酸化物セラミックスと、を含む。前記第1、第2酸化物セラミックスは、同じであっても異なっていてもよい。
本発明に係る燃料電池の特徴は、前記燃料電池が還元雰囲気で熱処理が施された還元体である状態において、常温にて、前記燃料極における前記中間層との界面近傍にて前記界面に沿った圧縮応力が作用している場合、前記中間層の厚さが3.0〜75μmであることにある。この場合、前記中間層の気孔率は10〜40%であると、好適である。
同様に、本発明に係る燃料電池の特徴は、前記燃料電池が還元雰囲気で熱処理が施された還元体である状態において、常温にて、前記燃料極における前記中間層との界面近傍にて前記界面に沿った引張応力が作用している場合、前記中間層の厚さが3.0〜100μmであることにある。この場合、前記中間層の気孔率は10〜40%であると、好適である。これらの点については後に詳述する。
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造体を示す。このSOFCは、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造体を示す。このSOFCは、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
このSOFCの全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが50〜500mmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さが10〜100mmの長方形である。このSOFCの全体の厚さは、1〜5mmである。このSOFCの全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、図1に加えて、このSOFCの図1に示す2−2線に対応する部分断面図である図2を参照しながら、このSOFCの詳細について説明する。図2は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図2に示す構成と同様である。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。後述する図6に示すように、支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。本例では、支持基板10の上下面における複数の発電素子部Aに対応する位置に、凹部12がそれぞれ形成されている。各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。各凹部12の長さ(x軸方向の寸法)は5〜50mmであり、幅(y軸方向の寸法)は2〜95mmであり、深さ(z軸方向の寸法)は0.03〜1.5mmである。
支持基板10は、MgO(酸化マグネシウム)と、第1酸化物セラミックスと、を含んで構成される。なお、支持基板10が第1酸化物セラミックスを含んでいるのは、MgO単独の熱膨張係数(約14ppm/K)が、通常の電極材料の熱膨張係数(10〜13ppm/K)と比べて大きいことに起因して、支持基板10の等価熱膨張係数を通常の電極材料の熱膨張係数に近づけるため、である。従って、第1酸化物セラミックスとしては、熱膨張係数が通常の電極材料の熱膨張係数(10〜13ppm/K)と比べて小さいものが好適である。具体的には、「第1酸化物セラミックス」としては、Y2O3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等が好適である。支持基板10は、「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含んでいてもよい。「遷移金属酸化物又は遷移金属」としては、NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)が好適である。遷移金属は、燃料ガスの改質反応を促す触媒(炭化水素系のガスの改質触媒)として機能し得る。
このように、支持基板10が「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含むことによって、改質前の残存ガス成分を含んだガスが多孔質の支持基板10の内部の多数の気孔を介して燃料ガス流路11から燃料極に供給される過程において、上記触媒作用によって改質前の残存ガス成分の改質を促すことができる。加えて、支持基板10が絶縁性の酸化物セラミックスを含むことによって、支持基板10の絶縁性を確保することができる。この結果、隣り合う燃料極間における絶縁性が確保され得る。
支持基板10の厚さは、1〜5mmである。以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
図2及び図3に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)に形成された各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。なお、後述するように、支持基板10と各燃料極集電部21との境界部分(即ち、各凹部12の底壁及び側壁に対応する部分)には、多孔質の焼成体である中間層15が介装されている。
各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
燃料極集電部21は、NiO(酸化ニッケル)と、第2酸化物セラミックスと、を含んで構成される。なお、燃料極集電部21が第2酸化物セラミックスを含んでいるのは、NiO単独の熱膨張係数(約14ppm/K)が、通常の電極材料の熱膨張係数(10〜13ppm/K)と比べて大きいことに起因して、燃料極集電部21の等価熱膨張係数を通常の電極材料の熱膨張係数に近づけるため、である。従って、第2酸化物セラミックスとしては、熱膨張係数が通常の電極材料の熱膨張係数(10〜13ppm/K)と比べて小さいものが好適である。具体的には、「第2酸化物セラミックス」としては、Y2O3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等が好適である。燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。燃料極集電部21の気孔率は、還元処理後において20〜55%である。なお、他の気孔率の値も、還元処理後の値である。
なお、気孔率の測定は,樹脂埋めしたサンプル(還元処理後)の断面を研磨し、同断面についてのSEM(走査型電子顕微鏡)による画像(2次電子像)を解析することによって行われた。SEMの加速電圧は5kV、SEMの倍率は5000倍、又は7500倍に設定された。気孔率の測定は、サンプルの任意の10箇所の断面について行われ、それらの平均値が気孔率の値として採用された。
燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と、酸素イオン伝導性を有する物質と、を含んで構成される。「電子伝導性を有する物質」としては、NiO(酸化ニッケル)が好適である。「酸素イオン伝導性を有する物質」としては、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)等が好適である。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmである。燃料極活性部22の気孔率は、還元処理後において20〜55%である。
なお、燃料極集電部21内、並びに、燃料極活性部22内のNiOは、後述する還元処理によってNiに変化して、電子伝導性を獲得する。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
燃料極20及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。なお、本願において「緻密」とは、「ガスが通過しない程度に高密度であること」を指し、具体的には、「気孔率が10%以下であること」を指す。
なお、図2に示すように、本例では、固体電解質膜40が、燃料極20の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との境界部分に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、「電気的接続部」に対応する。
なお、インターコネクタ30は、前記「電気的接続部」における「緻密な材料で構成された第1部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、前記「電気的接続部」における「多孔質の材料で構成された第2部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
以上、説明した「横縞型」のSOFCに対して、図4に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に改質後の燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O2+2e−→O2− (於:空気極60) …(1)
H2+O2−→H2O+2e− (於:燃料極20) …(2)
(1/2)・O2+2e−→O2− (於:空気極60) …(1)
H2+O2−→H2O+2e− (於:燃料極20) …(2)
発電状態においては、図5に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図4に示すように、このSOFC全体から(具体的には、図4において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
(製造方法)
次に、図1に示した「横縞型」のSOFCの製造方法の一例について図6〜図15を参照しながら簡単に説明する。図6〜図15において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
次に、図1に示した「横縞型」のSOFCの製造方法の一例について図6〜図15を参照しながら簡単に説明する。図6〜図15において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
先ず、図6に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、MgOとY2O3)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図6に示す7−7線に対応する部分断面を表す図7〜図15を参照しながら説明を続ける。
図7に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図8に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された各凹部12の底面及び側面に、中間層の成形膜15gがそれぞれ形成される。この中間層の成形膜15gの形成については後述する。
次に、図9に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された「中間層の成形膜15gが形成された各凹部12」に、燃料極集電部の成形体21gがそれぞれ埋設・形成される。次いで、図10に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された各凹部に、燃料極活性部の成形体22gがそれぞれ埋設・形成される。各燃料極集電部の成形体21g、及び各燃料極活性部22gは、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとY2O3)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
続いて、図11に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面における「燃料極活性部の成形体22gが埋設された部分を除いた部分」に形成された各凹部に、インターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成される。各インターコネクタの成形体30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO3)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
次に、図12に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)及び複数のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタの成形体30gが形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
次に、図13に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCにおいて空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
次に、図14に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図15に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCが得られる。なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、燃料極20(集電部21+活性部22)中のNi成分が、NiOとなっている。従って、燃料極20(集電部21+活性部22)の電子伝導性を獲得するため、その後、支持基板10側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。以上、図1に示したSOFCの製造方法の一例について説明した。
(中間層の介在)
上記実施形態では、図16に示すように、支持基板10と各燃料極20(集電部21)との境界部分(即ち、各凹部12の底壁及び側壁に対応する部分)に、中間層15が介在している。この中間層15は、支持基板10と各燃料極集電部21との境界部分の全域(即ち、各凹部12の底壁及び側壁に対応する部分の全域)に亘って設けられていても、前記境界部分の一部のみに設けられていてもよい。中間層15の厚さ、及び気孔率については後述する。また、支持基板10と中間層15との境界の定義、並びに、中間層15と燃料極集電部21との境界の定義については後述する。
上記実施形態では、図16に示すように、支持基板10と各燃料極20(集電部21)との境界部分(即ち、各凹部12の底壁及び側壁に対応する部分)に、中間層15が介在している。この中間層15は、支持基板10と各燃料極集電部21との境界部分の全域(即ち、各凹部12の底壁及び側壁に対応する部分の全域)に亘って設けられていても、前記境界部分の一部のみに設けられていてもよい。中間層15の厚さ、及び気孔率については後述する。また、支持基板10と中間層15との境界の定義、並びに、中間層15と燃料極集電部21との境界の定義については後述する。
図17に示すように、この中間層15は、「MgOを含む粒子」(第1粒子。典型的には、固溶体(Mg,Ni)Oの粒子)と、「第1酸化物セラミックスを含む粒子及び第2酸化物セラミックスを含む粒子」(第2粒子。典型的には、Y2O3粒子)と、「Niを含む金属微粒子」(第3粒子。典型的には、Ni粒子)と、を含む。この中間層15内では、第1粒子の表面に第3粒子が固着している。そして、隣接する第1粒子同士、及び、隣接する第1粒子及び第2粒子が、第3粒子を介して結合されている。なお、この第3粒子(固着したNi粒子)の存在によって、燃料ガスの「メタン(CH4)→水素(H2)の改質反応」が促進され得る。
換言すれば、この中間層15は、MgOとNiOとの固溶体である(Mg,Ni)Oと、「第1酸化物セラミックス」と、「第2酸化物セラミックス」と、Niと、を含む。加えて、上記還元処理後において、常温にて(より正確には、常温から前記燃料電池の作動温度までの温度範囲に亘って)、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍では、前記界面に沿った引張応力又は圧縮応力が作用している。換言すれば、中間層15における燃料極集電部21との界面近傍では、前記界面に沿った圧縮応力又は引張応力が作用している。以下、中間層15が介挿される理由、及び、このような応力関係が発生する理由について簡単に説明する。
上述した還元処理の際、燃料極集電部21中のNiOがNiに還元されることによって、燃料極集電部21が収縮する場合(還元収縮)と、燃料極集電部21が膨張する場合(還元膨張)と、が発生し得る。還元収縮は、燃料極集電部21中のNiOの体積分率が大きい場合、或いは、燃料極集電部21を構成する材料の粒子間距離が大きい場合に発生し得る。還元膨張は、燃料極集電部21中のNiOの体積分率が小さい場合、或いは、燃料極集電部21を構成する材料の粒子間距離が小さい場合に発生し得る。
先ず、図18の上図に示すように、中間層15が介挿されない場合において、燃料極集電部21が還元収縮する場合について考える。支持基板10は、内部に還元される物質を含まないので、前記還元処理によってその体積が殆ど変化しない。従って、この場合、図18の下図に示すように、燃料極集電部21における支持基板10との界面近傍では前記界面に沿った過大な引張応力が作用し、支持基板10における燃料極集電部21との界面近傍では前記界面に沿った過大な圧縮応力が作用し得る。この結果、支持基板10と燃料極集電部21との境界部分(特に、引張応力が作用する、燃料極集電部21における支持基板10との界面近傍の部分)に、クラックが発生する場合があった。
次に、図19の上図に示すように、中間層15が介挿されない場合において、燃料極集電部21が還元膨張する場合について考える。支持基板10が前記還元処理によってその体積が殆ど変化しないことを考慮すると、この場合、図19の下図に示すように、燃料極集電部21における支持基板10との界面近傍では前記界面に沿った過大な圧縮応力が作用し、支持基板10における燃料極集電部21との界面近傍では前記界面に沿った過大な引張応力が作用し得る。この結果、支持基板10と燃料極集電部21との境界部分(特に、引張応力が作用する、支持基板10における燃料極集電部21との界面近傍の部分)に、クラックが発生する場合があった。
上述した「還元処理後において燃料極集電部21又は支持基板10に作用する過大な引張応力」を緩和するため、支持基板10と燃料極集電部21との境界部分に中間層15が介挿されている。
中間層15の熱膨張係数は、支持基板10及び燃料極集電部21の熱膨張係数(典型的には、約12ppm/K)より大きい。加えて、上述した各構成部材の焼成は、SOFCの作動温度(約800℃)より高い温度で行われる。従って、支持基板10、中間層15、及び燃料極集電部21の積層体が共焼成された後、上記還元処理前では、常温にて(より正確には、常温から燃料電池の作動温度までの温度範囲に亘って)、図20に示すように、中間層15における支持基板10及び燃料極集電部21とのそれぞれの界面近傍では引張応力が作用する。換言すれば、支持基板10における中間層15との界面近傍では圧縮応力が作用し、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍では圧縮応力が作用する。以下、燃料極集電部21が「還元収縮する場合」と「還元膨張する場合」とで分けて説明する。
<還元収縮>
燃料極集電部21が還元収縮する場合、図20に示す状態にて上記還元処理が行われると、上述のように支持基板10はその体積が変化しない一方で、燃料極集電部21は還元収縮する。加えて、中間層15も殆どその体積が変化しない。これは、中間層15に含まれる固溶体(Mg,Ni)Oの還元によってNiが析出してくる際(詳細は後述する)、収縮・膨張が殆ど生じないことに基づく。
燃料極集電部21が還元収縮する場合、図20に示す状態にて上記還元処理が行われると、上述のように支持基板10はその体積が変化しない一方で、燃料極集電部21は還元収縮する。加えて、中間層15も殆どその体積が変化しない。これは、中間層15に含まれる固溶体(Mg,Ni)Oの還元によってNiが析出してくる際(詳細は後述する)、収縮・膨張が殆ど生じないことに基づく。
従って、図21の上図に示すように、上記還元処理によって、燃料極集電部21のみが収縮しようとする。このことに起因して、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍では、前記界面近傍に沿って引張応力が新たに付加される。この結果、前記還元処理前にて前記界面近傍に作用していた圧縮応力より前記新たに付加された引張応力が小さい場合、上記還元処理後において、図21の下図に示すように、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍には、依然として圧縮応力が作用する。ただし、この圧縮応力の大きさは、前記還元処理前の圧縮応力の大きさに対して前記引張応力の大きさ分だけ小さい。これに伴い、図21の下図に示すように、中間層15における燃料極集電部21との界面近傍には、小さな引張応力が作用する。
一方、前記還元処理前にて前記界面近傍に作用していた圧縮応力より前記新たに付加された引張応力が大きい場合、上記還元処理後において、図22の下図に示すように、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍には、圧縮応力ではなく引張応力が作用する。ただし、この引張応力の大きさは、前記新たに付加された引張応力の大きさから前記還元処理前の圧縮応力の大きさを減じた値となり、小さい。これに伴い、図22の下図に示すように、中間層15における燃料極集電部21との界面近傍には、小さな圧縮応力が作用する。
以上、図21の下図、及び、図22の下図に示すように、燃料極集電部21が還元収縮する場合、前記還元処理後において、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍にて過大な引張応力が作用することはない。即ち、中間層15が介挿されることによって、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍にて、上述したクラックが発生し難くなる。
<還元膨張>
燃料極集電部21が還元膨張する場合、図20に示す状態にて上記還元処理が行われると、上述のように、支持基板10及び中間層15のそれぞれの体積が殆ど変化しないので、図23の上図に示すように、燃料極集電部21のみが膨張しようとする。このことに起因して、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍では、前記界面近傍に沿って圧縮応力が新たに付加される。この結果、上記還元処理後において、図23の下図に示すように、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍には、前記還元処理前の圧縮応力に前記新たに付加された圧縮応力を加えた、大きい圧縮応力が作用する。これに伴い、図23の下図に示すように、中間層15における燃料極集電部21との界面近傍には、大きな引張応力が作用する。しかしながら、支持基板10における中間層15との界面近傍には、依然として圧縮応力が作用しており、引張応力が作用することはない。
燃料極集電部21が還元膨張する場合、図20に示す状態にて上記還元処理が行われると、上述のように、支持基板10及び中間層15のそれぞれの体積が殆ど変化しないので、図23の上図に示すように、燃料極集電部21のみが膨張しようとする。このことに起因して、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍では、前記界面近傍に沿って圧縮応力が新たに付加される。この結果、上記還元処理後において、図23の下図に示すように、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍には、前記還元処理前の圧縮応力に前記新たに付加された圧縮応力を加えた、大きい圧縮応力が作用する。これに伴い、図23の下図に示すように、中間層15における燃料極集電部21との界面近傍には、大きな引張応力が作用する。しかしながら、支持基板10における中間層15との界面近傍には、依然として圧縮応力が作用しており、引張応力が作用することはない。
以上、図23の下図に示すように、燃料極集電部21が還元膨張する場合、前記還元処理後において、支持基板10における中間層15との界面近傍にて過大な引張応力が作用することはない。即ち、中間層15が介挿されることによって、支持基板10における中間層15との界面近傍にて、上述したクラックが発生し難くなる。
以上のように、中間層15が介挿される場合、上記還元処理後において、常温にて(より正確には、常温から前記燃料電池の作動温度までの温度範囲に亘って)、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍では、前記界面に沿った圧縮応力が作用する場合(図21の下図、及び、図23の下図を参照)と、前記界面に沿った引張応力が作用する場合(図22の下図を参照)と、が発生する。
以下、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が、圧縮応力であるか引張応力であるかを識別する手法について付言する。この識別手法として、以下の2種類の手法が考えられる。
≪識別手法1≫:(各構成部材の寸法変化の測定)
燃料極集電部、及び中間層の単独の試験片をそれぞれ作製し、それぞれの還元処理前の状態(酸化体)における熱膨張係数を測定する(常温〜焼成温度)。燃料極集電部の還元処理前後での歪を測定する(常温下)。以上の測定結果から、計算により、燃料極集電部の残留応力の向きを知ることができる。即ち、共焼成温度をT、燃料極集電部の酸化体の熱膨張係数をαa、中間層の酸化体の熱膨張係数をαI、燃料極集電部の還元処理前後での歪をε(膨張側が正の値)とする。「αa×T − ε > αI×T」という関係が成立する場合、燃料極集電部に引張応力が残留する。一方、「αa×T − ε < αI×T」という関係が成立する場合、燃料極集電部に圧縮応力が残留する。
なお、後述するように、焼成前に中間層を形成することなく、焼成時の反応によって中間層を形成する場合、中間層の組成が明確には判らないことに起因して、中間層の熱膨張係数の測定が困難となる。従って、この場合は、共焼成体(酸化体)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、画像解析を利用して中間層の気孔率を測定する。また、EDS(エネルギー分散型X線分析)を用いて中間層の元素定量分析を行うことによって、中間層の組成を決定する。これらの気孔率、及び組成に基づいて、中間層の単独の試験片を作製することによって、中間層の熱膨張係数を測定することができる。
燃料極集電部、及び中間層の単独の試験片をそれぞれ作製し、それぞれの還元処理前の状態(酸化体)における熱膨張係数を測定する(常温〜焼成温度)。燃料極集電部の還元処理前後での歪を測定する(常温下)。以上の測定結果から、計算により、燃料極集電部の残留応力の向きを知ることができる。即ち、共焼成温度をT、燃料極集電部の酸化体の熱膨張係数をαa、中間層の酸化体の熱膨張係数をαI、燃料極集電部の還元処理前後での歪をε(膨張側が正の値)とする。「αa×T − ε > αI×T」という関係が成立する場合、燃料極集電部に引張応力が残留する。一方、「αa×T − ε < αI×T」という関係が成立する場合、燃料極集電部に圧縮応力が残留する。
なお、後述するように、焼成前に中間層を形成することなく、焼成時の反応によって中間層を形成する場合、中間層の組成が明確には判らないことに起因して、中間層の熱膨張係数の測定が困難となる。従って、この場合は、共焼成体(酸化体)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、画像解析を利用して中間層の気孔率を測定する。また、EDS(エネルギー分散型X線分析)を用いて中間層の元素定量分析を行うことによって、中間層の組成を決定する。これらの気孔率、及び組成に基づいて、中間層の単独の試験片を作製することによって、中間層の熱膨張係数を測定することができる。
≪識別手法2≫:(共焼結体のXRDを用いた測定)
燃料極集電部及び中間層の共焼結体(還元処理後の状態、還元体)の断面における、燃料極集電部における燃料極と中間層との界面近傍について、XRD(X線回析法)を用いた測定を行う。この結果得られた「燃料極集電部に含まれる第2酸化物セラミックスのピークシフトの方向」から、燃料極集電部の残留応力の向きを把握することができる。具体的には、第2酸化物セラミックスのピークが本来の位置よりも高角側にシフトしている場合には圧縮応力が、低角側にシフトしている場合には引張応力が、燃料極集電部に残留している。
燃料極集電部及び中間層の共焼結体(還元処理後の状態、還元体)の断面における、燃料極集電部における燃料極と中間層との界面近傍について、XRD(X線回析法)を用いた測定を行う。この結果得られた「燃料極集電部に含まれる第2酸化物セラミックスのピークシフトの方向」から、燃料極集電部の残留応力の向きを把握することができる。具体的には、第2酸化物セラミックスのピークが本来の位置よりも高角側にシフトしている場合には圧縮応力が、低角側にシフトしている場合には引張応力が、燃料極集電部に残留している。
この中間層15は、以下のように形成される。先ず、中間層15の原料粉末としてのMgO粉末とNiO粉末がモル比で1:1になるように秤量された。次いで、これらの混合物が大気雰囲気1400℃で5時間焼成された。これにより、MgOとNiOの固溶体((Mg,Ni)O)が作製された。この固溶体は、還元雰囲気において非常に還元され難い性質を有する。なお、完全に固溶が完了していることは、粉末X線回折等によって確認された。この固溶体がポットミルで粉砕され、D50=0.52μmの粉末が得られた。得られた粉末に溶剤、バインダーを添加してスラリーが作製された。このスラリーがスプレーコート法によって、上述した支持基板の成形体10g(図6を参照)の各凹部にそれぞれ塗布されて、中間層の成形膜15gが形成された(図8を参照)。その後、上述のように、中間層の成形膜15gが、支持基板の成形体10g、及び燃料極集電層の成形体21gと、共焼成される(図13→図14を参照)。この共焼成の際、支持基板10内の「MgO、及び、第1酸化物セラミックス」、並びに、燃料極集電部21内の「NiO、及び、第2酸化物セラミックス」が、中間層15内に拡散により進入してくる。なお、拡散によって中間層15の内部に侵入してきたNiOとMgOとが反応して固溶体((Mg,Ni)O)が新たに形成され得る。その後、上述した還元処理等の実行により、固溶体(Mg,Ni)Oの還元が進行すると、図17に示すように、(Mg,Ni)Oの粒子の表面に、Niの微粒子が析出してくる。このNi微粒子の析出に伴い、隣接する(Mg,Ni)O粒子同士、及び、隣接する(Mg,Ni)O粒子及びY2O3粒子が、Niの微粒子を介して固着・結合される。この結果、図17に示す構造を有する中間層15が得られる。
なお、支持基板の成形体10gと燃料極集電部の成形体21gとの境界部分に上述した中間層の成形膜15gが介在しない状態で、支持基板の成形体10gと燃料極集電部の成形体21gとが共焼成された場合においても、支持基板10内のMgO、及び、燃料極集電部21内のNiOが中間層15内に拡散することに起因して、支持基板10と燃料極集電部21との境界部分に固溶体(Mg,Ni)Oが自然に生成され得る。このように自然に生成された固溶体(Mg,Ni)Oが、上述した還元処理等の実行により還元された場合においても、上述と同様、(Mg,Ni)Oの粒子の表面に、Niの微粒子が析出してくる。このNi微粒子の析出に伴い、隣接する(Mg,Ni)O粒子同士、及び、隣接する(Mg,Ni)O粒子及びY2O3粒子が、Niの微粒子を介して固着・結合される。即ち、この場合も、図17に示す構造を有する中間層15が得られる。
なお、図16に示す中間層15では、中間層15が1層で構成され、「中間層15における燃料極集電部21に近い側」と、「中間層15における支持基板10に近い側」との間では、明確な境界は存在しない。これに対し、図24に示すように、中間層15が2層(又は、3層以上)で構成され、「中間層15における支持基板10に近い側」の層15aと、「中間層15における燃料極集電部21に近い側」の層15bと、の間で明確な境界が存在していてもよい。層15aは、層15bと比べて、Mgの含有モル比率が相対的に大きく、且つ、Niの含有モル比率が相対的に小さい。図24に示す構成は、例えば、以下のように作製される。即ち、上述した支持基板の成形体10g(図6を参照)の各凹部に中間層の成形膜15gが形成される際、成形膜15gが、「支持基板10に近い側の膜」と、「燃料極集電部21に近い側の膜」、との2層で構成される。「支持基板10に近い側の膜」用のスラリー((Mg,Ni)Oを含む)では、「燃料極集電部21に近い側の膜」用のスラリー((Mg,Ni)Oを含む)と比べて、「Mgの含有モル比率」及び「第1酸化物セラミックスの含有モル比率」が相対的に大きく、且つ、「Niの含有モル比率」及び「第2酸化物セラミックスの含有モル比率」が相対的に小さい。この2層からなる「中間層の成形膜15g」が、支持基板の成形体10g、及び燃料極集電層の成形体21gと、共焼成される。その後、これらの焼成体が上述した還元処理に供される。この結果、図24に示した中間層15(=層15a+層15b)が得られる。層15a、及び層15b共に、図17に示す構造を有する。
(適正な中間層の厚さの範囲)
上記実施形態に係るSOFCでは、通常の環境下で稼働される場合には、中間層15にクラック(又は、剥離)が発生しない。しかしながら、このSOFCが熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、中間層15にクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、中間層15の厚さT(図16又は図24を参照)と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した種々の試験について説明する。これらの実験は、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力である場合」と「引張応力である場合」とに分けて実施された。
上記実施形態に係るSOFCでは、通常の環境下で稼働される場合には、中間層15にクラック(又は、剥離)が発生しない。しかしながら、このSOFCが熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、中間層15にクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、中間層15の厚さT(図16又は図24を参照)と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した種々の試験について説明する。これらの実験は、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力である場合」と「引張応力である場合」とに分けて実施された。
(試験A)
この試験Aは、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力である場合」(図21の下図、及び、図23の下図を参照))について実施された。前記界面近傍に作用する応力が「圧縮応力」であることは、上述した手法によって確認された。
この試験Aは、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力である場合」(図21の下図、及び、図23の下図を参照))について実施された。前記界面近傍に作用する応力が「圧縮応力」であることは、上述した手法によって確認された。
試験Aでは、図1に示したSOFCについて、中間層15の材質、中間層15の厚さT、及び、中間層15の気孔率の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、10種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。各サンプルについて、中間層15の境界は、以下のように定義された。先ず、サンプルの断面におけるEDS(エネルギー分散型X線分析)を用いたNiとMgについての元素定量分析(ライン分析)を、支持基板側から燃料極集電部側に向けて積層方向に関して連続的に行う。前記断面について、モル比で「Ni/(Ni+Mg)」の値が0.30を超えた位置を「中間層と支持基板との界面」と定義し、モル比で「Ni/(Ni+Mg)」の値が0.90を超えた位置を「中間層と燃料極集電部との界面」と定義する。中間層の厚さとしては、前記断面の任意の10箇所でそれぞれ測定された「両界面間の距離」の平均値を採用する。表1に記載された中間層15の厚さTの値、及び、気孔率の値は、上記還元処理後の値(N=10の平均値)である。試験Aでは、中間層15の気孔率は15〜25%の範囲内とされた。
各サンプル(図1に示すSOFC)にて、中間層15は、支持基板10と燃料極集電部21との境界部分の全域(即ち、各凹部12の底壁及び側壁の全域)に亘って形成された。中間層15は、「中間層の成形膜15g」が支持基板の成形体10g及び燃料極集電層の成形体21gと共焼成され、その後、その焼成体に対して還元処理が施されることよって形成された。中間層15の厚さの調整は、支持基板の成形体10gの各凹部に形成される「中間層の成形膜15g」(図8を参照)の厚さを調整することによってなされた。中間層15の気孔率の調整は、中間層15の原料粉末の粒径、及び、造孔剤の添加量を調整することによってなされた。
そして、上記還元処理後の各サンプルについて、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、中間層15におけるクラック(又は、剥離)の発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表1に示すとおりである。
表1から理解できるように、熱応力的に過酷な上記熱サイクル試験を行った後では、中間層15の厚さTが75μmより大きいと、中間層15にクラックが発生し易い。これは、以下の理由に基づく、と考えられる。即ち、一般に、「部材に作用する応力」は、「その部材のヤング率」と「その部材の歪」との積で表される。ここで、層状の部材のヤング率は、その層状部材の厚さが大きいほど大きくなる。以上より、中間層15の歪の大きさが同じ条件下では、中間層15の厚さTが大きいほど、中間層15に作用する応力が大きくなる。このことが、中間層15の厚さTが75μmより大きいときに中間層15にクラックが発生し易くなる理由である、と考えられる。
また、試験の都合等により、厚さTが3.0μmより小さい中間層15を有するサンプルは作製されなかった。以上より、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力」である場合、中間層15の厚さTが3.0〜75μmの範囲内であると、前記クラックが発生し難い、ということができる。
なお、本発明者は、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力」である場合、通常の条件・環境下(例えば、常温から750℃まで4時間で上げた後に750℃から常温まで12時間で下げるパターン)にて上記実施形態が使用される場合、中間層15の厚さTが3.0〜75μmの範囲外であっても、中間層15にクラックが発生しないことを別途確認している。
(試験B)
上記実施形態に係るSOFCにおいて、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力である場合」、中間層15の厚さTが3.0〜75μmの範囲内(より具体的には、10〜20μmの範囲内)であっても、このSOFCが試験Aより熱応力的に更に過酷な環境下で稼働されると、中間層15になおもクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、中間層15の気孔率と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験Bについて説明する。
上記実施形態に係るSOFCにおいて、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力である場合」、中間層15の厚さTが3.0〜75μmの範囲内(より具体的には、10〜20μmの範囲内)であっても、このSOFCが試験Aより熱応力的に更に過酷な環境下で稼働されると、中間層15になおもクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、中間層15の気孔率と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験Bについて説明する。
試験Bでは、試験Aと同様、図1に示したSOFCについて、中間層15の材質、中間層15の厚さT、及び、中間層15の気孔率の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表2に示すように、10種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。試験Bでは、中間層15の厚さTは10〜20μmの範囲内とされた。その他の試験条件、測定条件等は、試験Aと同じである。
そして、上記還元処理後の各サンプルについて、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から850℃まで1時間30分で上げた後に850℃から常温まで2時間で下げるパターン」(即ち、試験Aのときより熱応力的に更に過酷なパターン)を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、中間層15におけるクラック(又は、剥離)の発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表2に示すとおりである。
表2から理解できるように、熱応力的に更に過酷な上記熱サイクル試験を行った後では、中間層15の気孔率が10%より小さいと、中間層15にクラックが発生し易い。これは、以下の理由に基づく、と考えられる。即ち、一般に、層状の部材のヤング率は、その層状部材の気孔率が小さいほど大きくなる。従って、中間層15の歪の大きさが同じ条件下では、中間層15の気孔率が小さいほど、中間層15に作用する応力が大きくなる。このことが、中間層15の気孔率が10%より小さいときに中間層15にクラックが発生し易くなる理由である、と考えられる。
また、試験の都合等により、気孔率が40%より大きい中間層15を有するサンプルは作製されなかった。以上より、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「圧縮応力」である場合、中間層15の厚さTが3.0〜75μmの範囲内であり、且つ、中間層15の気孔率が10〜40%の範囲内であると、前記クラックがより一層発生し難い、ということができる。
(試験C)
上記実施形態に係るSOFCにおいて、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「引張応力である場合」、このSOFCが試験Aと同じ熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、試験Aと同様、中間層15にクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、中間層15の厚さTと強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験Cについて説明する。
上記実施形態に係るSOFCにおいて、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「引張応力である場合」、このSOFCが試験Aと同じ熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、試験Aと同様、中間層15にクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、中間層15の厚さTと強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験Cについて説明する。
試験Cでは、試験Aと同様、図1に示したSOFCについて、中間層15の材質、中間層15の厚さT、及び、中間層15の気孔率の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表3に示すように、10種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。試験Cでは、中間層15の気孔率は15〜25%の範囲内とされた。その他の試験条件、測定条件等は、試験Aと同じである。
そして、上記還元処理後の各サンプルについて、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」(即ち、試験Aのときと同じ熱応力的に過酷なパターン)を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、中間層15におけるクラック(又は、剥離)の発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表3に示すとおりである。
表3から理解できるように、熱応力的に過酷な上記熱サイクル試験を行った後では、中間層15の厚さTが100μmよりも大きいと、中間層15にクラックが発生し易い。これは、上述と同様、中間層15の厚さが大きいほど、中間層15のヤング率が大きくなることに基づく、と考えられる。
また、試験の都合等により、厚さTが3.0μmより小さい中間層15を有するサンプルは作製されなかった。以上より、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「引張応力」である場合、中間層15の厚さTが3.0〜100μmの範囲内であると、前記クラックが発生し難い、ということができる。なお、この試験Cの結果に基づいて得られた中間層15の厚さTの上限値(100μm)が、試験Aの結果に基づいて得られた中間層15の厚さTの上限値(75μm)より大きいのは、試験Aでは、中間層15における燃料極集電部21との界面近傍において引張応力が作用しているのに対し、試験Cでは、前記界面近傍において圧縮応力が作用していることに基づく、と考えられる。
(試験D)
上記実施形態に係るSOFCにおいて、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「引張応力である場合」、中間層15の厚さTが3.0〜100μmの範囲内(より具体的には、10〜20μmの範囲内)あっても、このSOFCが試験Cより熱応力的に更に過酷な環境下で稼働されると、中間層15になおもクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、中間層15の気孔率と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験Dについて説明する。
上記実施形態に係るSOFCにおいて、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「引張応力である場合」、中間層15の厚さTが3.0〜100μmの範囲内(より具体的には、10〜20μmの範囲内)あっても、このSOFCが試験Cより熱応力的に更に過酷な環境下で稼働されると、中間層15になおもクラックが発生する場合があった。本発明者は、係るクラックの発生が、中間層15の気孔率と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験Dについて説明する。
試験Dでは、試験Cと同様、図1に示したSOFCについて、中間層15の材質、中間層15の厚さT、及び、中間層15の気孔率の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表4に示すように、10種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。試験Dでは、中間層15の厚さTは10〜20μmの範囲内とされた。その他の試験条件、測定条件等は、試験Cと同じである。
そして、上記還元処理後の各サンプルについて、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から850℃まで1時間30分で上げた後に850℃から常温まで2時間で下げるパターン」(即ち、試験Bのときと同じ熱応力的に過酷なパターン)を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、中間層15におけるクラック(又は、剥離)の発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表4に示すとおりである。
表4から理解できるように、熱応力的に更に過酷な上記熱サイクル試験を行った後では、中間層15の気孔率が10%より小さいと、中間層15にクラックが発生し易い。これは、上述と同様、中間層15の気孔率が小さいほど、中間層15のヤング率が大きくなることに基づく、と考えられる。
また、試験の都合等により、気孔率が40%より大きい中間層15を有するサンプルは作製されなかった。以上より、燃料極集電部21における中間層15との界面近傍に作用する応力が「引張応力」である場合、中間層15の厚さTが3.0〜100μmの範囲内であり、且つ、中間層15の気孔率が10〜40%の範囲内であると、前記クラックがより一層発生し難い、ということができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、図6等に示すように、支持基板10に形成された凹部12の平面形状(支持基板10の主面に垂直の方向からみた場合の形状)が、長方形になっているが、例えば、正方形、円形、楕円形、長穴形状等であってもよい。また、支持基板10は平板状を呈しているが、円筒状であってもよい。
また、上記実施形態においては、各凹部12にはインターコネクタ30の全体が埋設されているが、インターコネクタ30の一部のみが各凹部12に埋設され、インターコネクタ30の残りの部分が凹部12の外に突出(即ち、支持基板10の主面から突出)していてもよい。
また、上記実施形態において、凹部12における底壁と側壁とのなす角度θが90°になっているが、図25に示すように、角度θが90〜135°となっていてもよい。また、上記実施形態においては、図26に示すように、凹部12における底壁と側壁とが交差する部分が半径Rの円弧状になっていて、凹部12の深さに対する半径Rの割合が0.01〜1となっていてもよい。
また、上記実施形態においては、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられているが、図27に示すように、支持基板10の片側面のみに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。また、上記実施形態においては、支持基板10の一つの主面上に、電気的に直列に接続された複数の発電素子部Aが配置された所謂「横縞型」と呼ばれる構成が採用されているが、支持基板10の一つの主面上に一つの発電素子部Aが配置される構成(所謂「縦縞型」)が採用されてもよい。
また、上記実施形態においては、燃料極20が燃料極集電部21と燃料極活性部22との2層で構成されているが、燃料極20が燃料極活性部22に相当する1層(Ni+酸化物セラミックス)で構成されてもよい。また、上記実施形態においては、支持基板10の主面に複数の凹部12が形成され、各凹部12に燃料極20がそれぞれ埋設されているが、図28に示すように、支持基板10の主面上に燃料極20がそれぞれ積層されていてもよい。この場合、図28に示すように、中間層15は、支持基板10の主面上における、支持基板10と燃料極20との境界部分に形成される。
加えて、上記実施形態においては、図3に示すように、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(支持基板10の材料からなる長手方向に沿う2つの側壁と、燃料極集電部21の材料からなる幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みとなっている。この結果、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
これに対し、図29に示すように、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みであってもよい。これによれば、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の4つの側面の全てと底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触する。従って、燃料極集電部21とインターコネクタ30との界面の面積をより一層大きくできる。従って、燃料極集電部21とインターコネクタ30との間における電子伝導性をより一層高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力をより一層高めることができる。
10…支持基板、11…燃料ガス流路、12…凹部、15…中間層、20…燃料極、21…燃料極集電部、21a、21b…凹部、22…燃料極活性部、30…インターコネクタ、40…固体電解質膜、50…反応防止膜、60…空気極、70…空気極集電膜、A…発電素子部
Claims (4)
- ガス流路が内部に形成されるとともに、酸化マグネシウム(MgO)と第1酸化物セラミックスとを含んで構成された支持基板と、
前記支持基板に設けられるとともに、ニッケル(Ni)と第2酸化物セラミックスとを含んで構成された燃料極と、固体電解質と、空気極とがこの順に積層されてなる発電素子部と、
を備えた燃料電池であって、
前記支持基板と前記燃料極との境界部分に中間層が介在し、
前記中間層は、
酸化マグネシウム(MgO)と酸化ニッケル(NiO)との固溶体である(Mg,Ni)Oと、前記第1酸化物セラミックスと、前記第2酸化物セラミックスと、を含み、
前記燃料電池が還元雰囲気で熱処理が施された還元体である状態において、常温にて、前記燃料極における前記中間層との界面近傍では、前記界面に沿った圧縮応力が作用し、
前記中間層の厚さは、3.0〜75μmである、燃料電池。 - 請求項1に記載の燃料電池において、
前記中間層の気孔率は、10〜40%である、燃料電池。 - ガス流路が内部に形成されるとともに、酸化マグネシウム(MgO)と第1酸化物セラミックスとを含んで構成された支持基板と、
前記支持基板に設けられるとともに、ニッケル(Ni)と第2酸化物セラミックスとを含んで構成された燃料極と、固体電解質と、空気極とがこの順に積層されてなる発電素子部と、
を備えた燃料電池であって、
前記支持基板と前記燃料極との境界部分に中間層が介在し、
前記中間層は、
酸化マグネシウム(MgO)と酸化ニッケル(NiO)との固溶体である(Mg,Ni)Oと、前記第1酸化物セラミックスと、前記第2酸化物セラミックスと、を含み、
前記燃料電池が還元雰囲気で熱処理が施された還元体である状態において、常温にて、前記燃料極における前記中間層との界面近傍では、前記界面に沿った引張応力が作用し、
前記中間層の厚さは、3.0〜100μmである、燃料電池。 - 請求項3に記載の燃料電池において、
前記中間層の気孔率は、10〜40%である、燃料電池。
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