JP5756539B1 - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】支持基板の表面における発電素子部の領域を除く部分を覆う緻密膜がYSZとMgとを含む横縞型の燃料電池であって、「緻密膜」と「緻密膜の表面に接触する構成要素」との界面にて熱応力に起因するクラックが発生し難いものを提供すること。【解決手段】この燃料電池では、「支持基板10の表面における発電素子部Aの領域を除く部分を覆うとともにガスシール機能を有する緻密膜45」が、発電素子部Aの一部としての緻密な固体電解質40と連続して設けられる。緻密膜45の表面の一部は、反応防止膜50によって覆われる。緻密膜45は、YSZとMgとを含む緻密質材料で構成される。緻密膜45の厚さ方向において支持基板10の表面から遠い側(反応防止膜50に近い側)の緻密膜45のMg元素の濃度が、緻密膜45に厚さ方向において支持基板10の表面に近い側の緻密膜45のMg元素の濃度より小さい。【選択図】図2

Description

本発明は、燃料電池に関する。
従来より、「ガス流路が内部に形成された支持基板」と、「前記支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、燃料極、固体電解質、及び空気極が少なくとも積層されてなる複数の発電素子部」と、「1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の燃料極と他方の空気極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部」と、「前記発電素子部の一部としての緻密な前記固体電解質と接続されるとともに、前記支持基板の表面における前記発電素子部が設けられた領域を除いた部分を覆うように設けられた緻密膜であって、前記ガス流路を経て前記燃料極に供給されるガスと前記空気極に供給されるガスとの混合を防止する、緻密質材料で構成された緻密膜」と、を備えた固体酸化物形燃料電池が広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような構成は、「横縞型」とも呼ばれる。
一般に、係る燃料電池では、発電効率の向上のため、前記発電素子部の一部である固体電解質の材料について高い酸素イオン伝導性が要求される。このため、上記文献に記載の燃料電池では、固体電解質は、高い酸素イオン伝導性を備えたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)で構成されている。加えて、上記文献に記載の燃料電池では、前記発電素子部の一部である前記固体電解質が、前記支持基板の表面を覆うように前記発電素子部外へ延びている。前記固体電解質における前記発電素子部外の部分が前記緻密膜に対応している。従って、上記文献に記載の燃料電池では、前記緻密膜も、前記発電素子部の一部である固体電解質と同様、YSZで構成されている。
特許第4824135号公報
ところで、前記発電素子部の外にある前記緻密膜については、酸素イオン伝導性が要求されない一方で、前記2つのガスの混合を防止するシール機能を確実に維持するために高い靱性(燃料電池に加わる応力及び衝撃等に対してクラックが発生し難い特性)が要求される。一般に、YSZの靱性は比較的低い。従って、前記緻密膜がYSZで構成された上記文献に記載の燃料電池では、前記緻密膜の材料について改善の余地があった。
係る観点に基づき、本発明者は、前記緻密膜の材料として、YSZに、靱性が比較的高くなるマグネシウムを加えることを検討している。しかしながら、マグネシウムを加えると熱膨張係数が比較的小さくなるという特性をも併せ持つ。
一般に、上述した横縞型の燃料電池では、前記緻密膜の表面には、「前記電気的接続部における多孔質材料で構成された部分(後述する空気極集電膜)」、「前記固体電解質と前記空気極との間に介装されるとともにそれらの間の部分から前記発電素子部外へ延びるセリアを含んで構成される反応防止膜」、及び、「空気極そのもの(空気極活性部)」等の構成要素が接触する構成が採用され易い。一般に、これらの構成要素の熱膨張係数は比較的大きい。
以上のことから、前記緻密膜の材料に対してマグネシウムを加えると、「前記緻密膜」と「前記緻密膜の表面に接触する構成要素」との間の熱膨張係数差が大きくなり易い。このことに起因して、「前記緻密膜と前記構成要素との界面にて熱応力に起因するクラックが発生し易い」という新たな問題が発生した。この新たな問題の発生頻度を少なくすることが望まれているところである。
本発明の目的は、支持基板の表面における発電素子部が設けられた領域を除いた部分を覆う緻密膜がYSZとマグネシウムとを含んで構成される横縞型の燃料電池であって、「緻密膜」と「緻密膜の表面に接触する構成要素」との界面にて熱応力に起因するクラックが発生し難いものを提供することにある。
本発明に係る燃料電池は、上記文献に記載のものと同様に、支持基板と、発電素子部と、電気的接続部と、緻密膜と、を備える。前記緻密膜は、YSZとマグネシウムとを含んで構成される。なお、前記支持基板は、マグネシウムを含んで構成され得る。
本発明に係る燃料電池の特徴は、前記緻密膜の厚さ方向において前記支持基板の表面から遠い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の濃度が、前記緻密膜の厚さ方向において前記支持基板の表面に近い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の濃度より小さい、ことにある。
これによれば、前記緻密膜における前記支持基板の表面から遠い側の部分では、マグネシウムの含有率が小さいので、この部分におけるマグネシウムの混入に起因する熱膨張係数の低下が抑制され得る。従って、「前記緻密膜」と「前記緻密膜の表面に接触する構成要素」との間の熱膨張係数差が小さくなり、この結果、「緻密膜」と「緻密膜の表面に接触する構成要素」との界面にて熱応力に起因するクラックが発生し難くなる。加えて、前記緻密膜における前記支持基板の表面に近い側の部分では、マグネシウムの含有率が大きい。従って、前記緻密膜における少なくともこの部分における靱性が高くなり、この結果、前記緻密膜全体としても高い靱性が確保され得る。
なお、前記緻密膜における厚さ方向の全域に亘ってマグネシウムが含まれても良い。また、前記緻密膜における厚さ方向において前記支持基板の表面に近い側からの一部にのみマグネシウムが含まれ、厚さ方向における残りの部分(即ち、前記支持基板の表面から遠い側の部分)にはマグネシウムが含まれなくても良い。また、前記緻密膜における面方向(広がり方向)の全域に亘ってマグネシウムが含まれてもよい。また、前記緻密膜の面方向における前記支持基板の表面と接触する部分にのみマグネシウムが含まれ、面方向における残りの部分(即ち、支持基板の表面以外と接触する部分)にはマグネシウムが含まれなくてもよい。前記「面方向における残りの部分」が接触する対象としては、例えば、「燃料極(燃料極集電部、及び、燃料極活性部)」、及び、「前記電気的接続部における緻密質材料で構成された部分(後述するインターコネクタ)」等が挙げられる。
本発明に係る燃料電池において、前記発電素子部の一部としての前記固体電解質と前記空気極との間に、セリアを含んで構成された反応防止膜が介装され得る。この場合、前記反応防止膜は、前記発電素子部の一部である前記固体電解質と前記空気極との間の部分から、前記緻密膜の表面を覆うように前記発電素子部外へ延び、前記反応防止膜における前記緻密膜の表面を覆う部分にマグネシウムが含まれるように構成され得る。
加えて、本発明者は、前記支持基板の表面に近い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の質量濃度(Xb)に対する、前記支持基板の表面から遠い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の質量濃度(Xa)の割合(Xa/Xb)が22〜98%である場合、そうでない場合と比べて、熱応力的に過酷な熱サイクル試験を行った後において、前記緻密膜にクラックが発生し難くなる、ことも見出した。
本発明に係る燃料電池を示す斜視図である。 図1に示す燃料電池の2−2線に対応する断面図である。 図1に示す支持基板の凹部に埋設された燃料極及びインターコネクタの状態を示した平面図である。 図1に示す燃料電池の作動状態を説明するための図である。 図1に示す燃料電池の作動状態における電流の流れを説明するための図である。 図1に示す支持基板を示す斜視図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第1段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第2段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第3段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第4段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第5段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第6段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第7段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第8段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池の製造過程における第9段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池について、緻密膜の周りの構成部材を説明するための図である。 図1に示す燃料電池の変形例についての図16に対応する図である。 図1に示す燃料電池の他の変形例についての図16に対応する図である。 緻密膜内のマグネシウム元素の分布を説明するための図である。 緻密膜、及び反応防止膜内のマグネシウム元素の分布の一例を示す図である。 図1に示す燃料電池の他の変形例についての図2に対応する図である。
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)を示す。このSOFCは、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
このSOFCの全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが50〜500mmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さが10〜100mmの長方形である。このSOFCの全体の厚さは、1〜5mmである。このSOFCの全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、図1に加えて、このSOFCの図1に示す2−2線に対応する部分断面図である図2を参照しながら、このSOFCの詳細について説明する。図2は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図2に示す構成と同様である。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。後述する図6に示すように、支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。本例では、支持基板10の上下面における複数の発電素子部Aに対応する位置に、凹部12(図6を参照)がそれぞれ形成されている。各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。各凹部12の長さ(x軸方向の寸法)は5〜50mmであり、幅(y軸方向の寸法)は2〜95mmであり、深さ(z軸方向の寸法)は0.03〜1.5mmである。
支持基板10は、Mg(マグネシウム)と、酸化物セラミックスと、を含んで構成される。具体的には、支持基板10は、例えば、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)、MgO(酸化マグネシウム)とYSZ(イットリア安定化ジルコニア)、MgO(酸化マグネシウム)とCSZ(マグネシア安定化ジルコニア)、MgO(酸化マグネシウム)とY(イットリア)とから構成され得る。なお、支持基板10の内部には、電気的絶縁性が維持され得る範囲内で、NiO/Niが含まれていてもよい。
支持基板10の厚さは、1〜5mmである。支持基板10の気孔率は、後述する「還元処理」の後において20〜60%である。なお、以下、他の部材の気孔率の値も、還元処理後の値である。なお、気孔率の測定は,樹脂埋めしたサンプル(還元処理後)の断面を研磨し、同断面についてのSEM(走査型電子顕微鏡)による画像(2次電子像)を解析することによって行われた。SEMの加速電圧は5kV、SEMの倍率は5000倍、又は7500倍に設定された。気孔率の測定は、サンプルの任意の10箇所の断面について行われ、それらの平均値が気孔率の値として採用された。
以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
図2及び図3に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)に形成された各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の4つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の4つの側面と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。燃料極集電部21の気孔率は、25〜50%であり、燃料極活性部22の気孔率も、25〜50%である。
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸素イオン伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。インターコネクタ30の気孔率は、10%以下である。
燃料極20(集電部21+活性部22)及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40、及び、固体電解質膜40と接続する緻密膜45により覆われている。固体電解質膜40は、燃料極活性部22と後述する空気極60(空気極活性部)とに挟まれた部分(従って、発電素子部Aの一部)に対応し、緻密膜45は、それ以外の部分(従って発電素子部Aの外の部分)に対応する。図1及び図2に示すように、本例では、緻密膜45は、燃料極20(集電部21、及び活性部22)の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び、支持基板10の表面(主面、及び、側端部)を覆っている。
固体電解質膜40は、イオン伝導性を有する緻密質材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)で構成される。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。固体電解質膜40の気孔率は、10%以下である。
緻密膜45は、後述するガスシール機能を有する緻密質材料からなる焼成体である。緻密膜45は、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)と、Mg(マグネシウム)と、を含んで構成される。より好ましくは、緻密膜45には、イットリウムが12.6〜14.8質量%(Wt%)、マグネシウムが0.27〜1.22質量%(Wt%)含まれているのがよい。緻密膜45の厚さは、3〜50μmである。緻密膜45の気孔率は、10%以下である。緻密膜45におけるMgの含有態様については後に詳述する。
このように、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40と緻密膜45とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。なお、本願において「緻密」とは、「ガスが通過しない程度に高密度であること」を指し、具体的には、「気孔率が10%以下であること」を指す。
なお、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、緻密膜45が平坦化されている。この結果、緻密膜45に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する緻密膜45でのクラックの発生が抑制され得、緻密膜45が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
固体電解質膜40の上面には、反応防止膜50を介して空気極60(空気極活性部)が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50は、固体電解質膜40と空気極60との間の部分(従って、発電素子部Aの一部)から、緻密膜45の表面(の一部)を覆うように発電素子部Aの外へ延びている。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、セリアを含む材料で構成される。反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)で構成され得る。或いは、SDC(Ce,Sm)O(サマリウムドープセリア)で構成されてもよい。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。
空気極60(空気極活性部)は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生頻度を低下させるためである。
ここで、燃料極20(より正確には、活性部22)と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60(空気極活性部)とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、「電気的接続部」に対応する。
なお、インターコネクタ30は、「電気的接続部」における「緻密な材料で構成された部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、「電気的接続部」における「多孔質の材料で構成された部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
以上、説明した「横縞型」のSOFCに対して、図4に示すように、支持基板10の各燃料ガス流路11内に、長手方向の一方向(同じ方向)に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O+2e→O2− (於:空気極60) …(1)
+O2−→HO+2e (於:燃料極20) …(2)
発電状態においては、図5に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図4に示すように、このSOFC全体から(具体的には、図4において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
(製造方法)
次に、上記実施形態(図1に示した「横縞型」のSOFC)の製造方法の一例について図6〜図15を参照しながら簡単に説明する。図6〜図15において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
先ず、図6に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、MgOとMgAl)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図6に示す7−7線に対応する部分断面を表す図7〜図15を参照しながら説明を続ける。
図7に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図8に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された各凹部に、燃料極集電部の成形体21gがそれぞれ埋設・形成される。次いで、図9に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された各凹部に、燃料極活性部の成形体22gがそれぞれ埋設・形成される。各燃料極集電部の成形体21g、及び各燃料極活性部22gは、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとYSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
続いて、図10に示すように、前記各凹部に、インターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成される。このインターコネクタの成形体30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
次に、図11に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)、及び複数のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける固体電解質膜40に対応する箇所に、固体電解質膜の成形体40gが形成される。固体電解質膜の成形体40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
次いで、図12に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)、及び複数のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける緻密膜45に対応する箇所に、固体電解質膜の成形体40gに連続して、緻密膜の成形体45gが形成される。緻密膜の成形体45gの形成については後述する。
次に、図13に示すように、固体電解質膜の成形体40g及び緻密膜の成形体45gにおける反応防止膜50に対応する箇所に、反応防止膜の成形体50gが形成される。各反応防止膜の成形体50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように種々の成形体が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、上記実施形態において空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
次に、図14に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形体60gが形成される。各空気極の成形体60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図15に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形体60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形体60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形体70gが形成される。各空気極集電膜の成形体70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように成形体60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCが得られる。以上、上記実施形態の製造方法の一例について説明した。
なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、支持基板10、及び燃料極20中のNi成分が、NiOとなっている。従って、燃料極20の導電性を獲得するため、その後、支持基板10側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。
(緻密膜に対するMgの付加)
上記実施形態では、緻密膜45が、YSZからなる固体電解質膜40と接続されている。従って、緻密膜が固体電解質膜40と全く同じ材料(即ち、YSZ)で構成される態様も考えられる。ここで、発電素子部Aの外にある緻密膜については、酸素イオン伝導性が要求されない。一方、緻密膜は、上述したガスシール機能を確実に維持するために高い靱性(SOFCに加わる応力及び衝撃等に対してクラックが発生し難い特性)が要求される。一般に、YSZの靱性は比較的低い。従って、緻密膜45がYSZで構成される態様では、緻密膜の材料について改善の余地がある。
係る観点に基づき、上記実施形態では、緻密膜45の材料として、YSZに靱性が比較的高くなるMg(マグネシウム)が加えられている。しかしながら、Mgが加わると熱膨張係数が比較的小さくなるという特性をも併せ持つ。
上記実施形態では、図16に示すように、緻密膜45の表面(上面)には、反応防止膜50が接触している。また、上記実施形態の変形例として、図17に示すように、反応防止膜50が設けられず、緻密膜45の表面(上面)に空気極集電膜70が接触する態様も考えられる。或いは、図18に示すように、反応防止膜50が設けられず、緻密膜45の表面(上面)に空気極60(空気極活性部)が接触する態様も考えられる。
ここで、上述のように、「緻密膜45の表面(上面)に接触し得る構成要素」(具体的には、反応防止膜50、空気極60、及び、空気極集電膜70等)の熱膨張係数は比較的大きい。従って、緻密膜45の材料に対してMgを加えると、緻密膜45と上記構成要素との間の熱膨張係数差が大きくなり易い。このことに起因して、「緻密膜45と上記構成要素との界面にて熱応力に起因するクラックが発生し易い」という新たな問題が発生した。この新たな問題の発生頻度を少なくすることが重要である。
(緻密膜内のマグネシウム元素の分布)
このため、上記実施形態では、緻密膜45の内部において、Mg(マグネシウム)の元素濃度が均一となっていない。より具体的には、図19に示すように、緻密膜45は、例えば、緻密膜45の厚さ方向において、緻密膜45の上面側(反応防止膜50に近い側、支持基板10の表面から遠い側)から下面側(支持基板10に近い側)にかけて、順に、a層、b層、c層、d層、及びe層の5層から構成されている。
図20は、緻密膜45及び反応防止膜50の内部における、Mg元素濃度(質量濃度Wt%)の分布の一例を示す。図20に示すように、緻密膜45内のMg元素濃度は、a層に近いほど小さくなり、e層に近いほど大きくなる。換言すれば、支持基板10の表面から遠い側の緻密膜45内のMg元素濃度は、支持基板10の表面に近い側の緻密膜45内のMg元素濃度より小さい。
図20に示す例では、緻密膜45における厚さ方向(z軸方向)の全域に亘ってMgが含まれている(厚さ方向の全域に亘って、Mg元素濃度>0)。加えて、反応防止膜50にも、厚さ方向における緻密膜45に近い側の一部のみにおいて、Mgが含まれている。なお、緻密膜45における厚さ方向において支持基板10の表面に近い側の一部のみにMgが含まれ、緻密膜45の厚さ方向における残りの部分(即ち、反応防止膜50に近い側の部分、支持基板の表面から遠い側の部分)にはMgが含まれなくても良い。この場合、反応防止膜50における厚さ方向の全域に亘ってMgが含まれない。
また、図20に示す例では、緻密膜45における面方向(広がり方向、x−y平面方向)の全域に亘ってMgが含まれている。緻密膜45の面方向における支持基板10の表面と接触する部分のみにMgが含まれ、緻密膜45の面方向における残りの部分(即ち、支持基板10の表面以外と接触する部分)にはMgが含まれなくてもよい。上記実施形態では、前記「面方向における残りの部分」が接触する対象として、「燃料極20(燃料極集電部21、及び、燃料極活性部22)」、及び、インターコネクタ30が挙げられる。
図19に示すように5層からなる緻密膜45は、例えば、以下のように形成される。先ず、緻密膜45の材料(例えば、YSZとMg)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング等を利用して、「e層に対応する成形体」が形成される。次いで、「e層に対応する成形体」の上面に、「e層に対応する成形体」用の上記スラリーよりMg粉末の含有割合が小さいスラリーを用いて、印刷法、ディッピング等を利用して、「d層に対応する成形体」が形成される。次いで、「d層に対応する成形体」の上面に、「d層に対応する成形体」用の上記スラリーよりMg粉末の含有割合が小さいスラリーを用いて、印刷法、ディッピング等を利用して、「c層に対応する成形体」が形成される。次いで、「c層に対応する成形体」の上面に、「c層に対応する成形体」用の上記スラリーよりMg粉末の含有割合が小さいスラリーを用いて、印刷法、ディッピング等を利用して、「b層に対応する成形体」が形成される。最後に、「b層に対応する成形体」の上面に、「b層に対応する成形体」用の上記スラリーよりMg粉末の含有割合が小さいスラリーを用いて、印刷法、ディッピング等を利用して、「a層に対応する成形体」が形成される。これにより、5層からなる「緻密膜の成形体45g」(図12を参照)が形成される。
その後、5層からなる「緻密膜の成形体45g」が、「緻密膜の成形体45g」を挟む「支持基板の成形体10g、及び、反応防止膜の成形体50g」とともに、共焼成される(図13→図14を参照)。この結果、図19に示す「5層からなる緻密膜45」(焼成体)が得られる。
なお、図19に示す緻密膜45では、支持基板10の表面に近い側から遠い側に向かって、緻密膜45内のMg元素濃度が、5段階に小さくなるように構成されているが、支持基板10の表面に近い側から遠い側に向かって、緻密膜45内のMg元素濃度が、無段階に徐々に小さくなるように構成されてもよい。また、支持基板の成形体10gにMgが含まれ且つ緻密膜の成形体45g及び反応防止膜の成形体50gにMgが含まれない状態で、これらの成形体の積層体が共焼成された場合においても、支持基板10内のMgが緻密膜45内(ひいては、反応防止膜50内)に拡散することによって、図20に示すMg元素濃度の分布に類似するMg元素濃度の分布が実現し得る。
上記実施形態によれば、緻密膜45における支持基板10の表面から遠い側の部分(反応防止膜50に近い部分)では、Mgの含有率が小さい。従って、この部分におけるMgの混入に起因する熱膨張係数の低下が抑制され得る。従って、緻密膜45と反応防止膜50との間の熱膨張係数差が小さくなる。この結果、緻密膜45と反応防止膜50(即ち、緻密膜45の表面に接触する構成要素)との界面にて熱応力に起因するクラックが発生し難くなる。加えて、緻密膜45における支持基板10の表面に近い側の部分では、Mgの含有率が大きい。従って、緻密膜45における少なくともこの部分における靱性が高くなる。この結果、緻密膜45の全体としても高い靱性が確保され得る。
(緻密膜内のMg元素分布の適正な範囲)
上記実施形態では、通常の環境下で稼働される場合には、緻密膜45にクラックが発生しない。しかしながら、このSOFCが熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、緻密膜45にクラックが発生する場合があった。
以下、上述した図20に示すように、緻密膜45のa層側(即ち、反応防止膜50に近い側)の界面近傍(反応防止膜50との界面から3μmの領域)のMg元素濃度の平均値をXa(Wt%)、緻密膜45のe層側(即ち、支持基板10に近い側)の界面近傍(支持基板10との界面から3μmの領域)のMg元素濃度の平均値をXb(Wt%)とする。本発明者は、係る緻密膜45のクラックの発生が、値「Xa/Xb」と強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験について説明する。
(試験)
この試験では、上記実施形態について、Xa、及び、Xbの組み合わせが異なる(即ち、値「Xa/Xb」が異なる)複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、7種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。各サンプルについて、Xa、Xbの値は、EPMA(Electron Probe Micro Analyser)を用いてサンプルの断面についての各元素の含有量をそれぞれ測定・定量化し、それらの組成比を算出することによって計算された。表1に記載されたXa、Xbの値は、上記還元処理後の値(N=10の平均値)である。
Figure 0005756539
各サンプル(図1に示すSOFC)にて、緻密膜45は、上述した図19に示すように5層とされた。支持基板10は、MgOとMgAlとによって構成された。緻密膜45は、YSZ(8YSZ)とMgとを含んで構成された。反応防止膜50は、GDCによって構成された。支持基板10、緻密膜45、及び、反応防止膜50は、共焼成され、その後、その焼成体に対して還元処理が施されることによって形成された。値Xaの調整は、「a層に対応する成形体」用のスラリーに添加されるMg粉末の含有割合を調整することによってなされ、値Xbの調整は、「e層に対応する成形体」用のスラリーに添加されるMg粉末の含有割合を調整することによってなされた。
そして、上記還元処理後の各サンプルについて、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、緻密膜45におけるクラックの発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表1に示すとおりである。値Xaは0.10〜1.20Wt%であり、値Xbは0.66〜1.22Wt%であった。
表1から理解できるように、熱応力的に過酷な上記熱サイクル試験を行った後では、値「Xa/Xb」が22%より小さい、又は、98%より大きいと、理由は不明であるが、緻密膜45にクラックが発生し易く、「Xa/Xb」が22%〜98%の範囲内であると、理由は不明であるが、緻密膜45にクラックが発生し難い。以上より、値「Xa/Xb」が22%〜98%の範囲内であると、緻密膜45にクラックが発生し難い、ということができる。
なお、本発明者は、通常の条件・環境下(例えば、常温から750℃まで4時間で上げた後に750℃から常温まで12時間で下げるパターン)にて上記実施形態が使用される場合、値「Xa/Xb」が22%〜98%の範囲外であっても、緻密膜45にクラックが発生しないことを別途確認している。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、各燃料極20(集電部21及び活性部22)が支持基板の主面に形成された凹部12に埋設されているが、図21に示すように、支持基板の主面に凹部が形成されず、各燃料極20(集電部21及び活性部22)が支持基板の主面から突出するように形成されていてもよい。この場合、図21に示すように、緻密膜45に段差が形成される。
また、上記実施形態では、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられているが、支持基板10の片側面のみに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。
加えて、上記実施形態においては、燃料極20が燃料極集電部21と燃料極活性部22との2層で構成されているが、燃料極20が燃料極活性部22に相当する1層で構成されてもよい。
10…支持基板、11…燃料ガス流路、12…凹部、20…燃料極、21…燃料極集電部、30…インターコネクタ、40…固体電解質膜、45…緻密膜、50…反応防止膜、60…空気極(空気極活性部)、70…空気極集電膜、A…発電素子部

Claims (2)

  1. ガス流路が内部に形成された支持基板と、
    前記支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、燃料極、イットリア安定化ジルコニアを含む固体電解質、及び空気極が少なくとも積層されてなる複数の発電素子部と、
    1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の燃料極と他方の空気極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部と、
    前記発電素子部の一部としての緻密な前記固体電解質と接続されるとともに、前記支持基板の表面における前記発電素子部が設けられた領域を除いた部分を覆うように設けられた緻密膜であって、前記ガス流路を経て前記燃料極に供給されるガスと前記空気極に供給されるガスとの混合を防止する、イットリア安定化ジルコニアを含む緻密質材料で構成された緻密膜と、
    を備えた燃料電池において、
    前記発電素子部の一部としての前記固体電解質と前記空気極との間に、セリアを含んで構成された反応防止膜が介装され、
    前記反応防止膜は、前記発電素子部の一部である前記固体電解質と前記空気極との間の部分から、前記緻密膜の表面を覆うように前記発電素子部外へ延びており、
    前記緻密膜は、マグネシウムを含み、前記緻密膜の厚さ方向において前記支持基板の表面から遠い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の濃度が、前記緻密膜の厚さ方向において前記支持基板の表面に近い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の濃度より小さく、
    前記支持基板の表面に近い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の質量濃度(Xb)に対する、前記支持基板の表面から遠い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の質量濃度(Xa)の割合(Xa/Xb)が、22〜98%である、燃料電池。
  2. ガス流路が内部に形成された支持基板と、
    前記支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、燃料極、イットリア安定化ジルコニアを含む固体電解質、及び空気極が少なくとも積層されてなる複数の発電素子部と、
    1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の燃料極と他方の空気極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部と、
    前記発電素子部の一部としての緻密な前記固体電解質と接続されるとともに、前記支持基板の表面における前記発電素子部が設けられた領域を除いた部分を覆うように設けられた緻密膜であって、前記ガス流路を経て前記燃料極に供給されるガスと前記空気極に供給されるガスとの混合を防止する、イットリア安定化ジルコニアを含む緻密質材料で構成された緻密膜と、
    を備えた燃料電池において、
    前記緻密膜は、マグネシウムを含み、前記緻密膜の厚さ方向において前記支持基板の表面から遠い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の濃度が、前記緻密膜の厚さ方向において前記支持基板の表面に近い側の前記緻密膜のマグネシウム元素の濃度より小さく、
    前記発電素子部の一部としての前記固体電解質と前記空気極との間に、セリアを含んで構成された反応防止膜が介装され、
    前記反応防止膜は、前記発電素子部の一部である前記固体電解質と前記空気極との間の部分から、前記緻密膜の表面を覆うように前記発電素子部外へ延びており、
    前記反応防止膜における前記緻密膜の表面を覆う部分に、マグネシウムが含まれる、燃料電池。
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