JP5601673B1 - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】「横縞型」の燃料電池であって、支持基板の主面に形成された凹部に埋設された燃料極の剥離が発生し難いものを提供すること。
【解決手段】平板状の支持基板10の主面に形成された複数の凹部12に燃料極20がそれぞれ埋設されている。各凹部12は、支持基板10の材料からなる平坦な底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有する。各凹部12について、側壁の全周に亘って、底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分に丸み面取りが施される。側壁の全周に亘って、側壁の表面が、凹部12の深さ方向からみたとき凹部12の深さ方向において支持基板10の主面から遠ざかるにつれて凹部12の中央に近づくように傾斜し、且つ、側壁の表面と支持基板10の主面とが交差する部分における側壁の表面と支持基板10の主面とのなす鋭角の大きさが30〜85°である。
【選択図】図2
【解決手段】平板状の支持基板10の主面に形成された複数の凹部12に燃料極20がそれぞれ埋設されている。各凹部12は、支持基板10の材料からなる平坦な底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有する。各凹部12について、側壁の全周に亘って、底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分に丸み面取りが施される。側壁の全周に亘って、側壁の表面が、凹部12の深さ方向からみたとき凹部12の深さ方向において支持基板10の主面から遠ざかるにつれて凹部12の中央に近づくように傾斜し、且つ、側壁の表面と支持基板10の主面とが交差する部分における側壁の表面と支持基板10の主面とのなす鋭角の大きさが30〜85°である。
【選択図】図2
Description
本発明は、燃料電池に関する。
従来より、「ガス流路が内部に形成された多孔質の支持基板」と、「前記支持基板の表面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、燃料極、固体電解質、及び空気極が積層されてなる複数の発電素子部」と、「1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の燃料極と他方の空気極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部」とを備えた固体酸化物形燃料電池が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような構成は、「横縞型」とも呼ばれる。
ところで、上記文献に記載の燃料電池では、前記平板状の支持基板の主面における前記複数の箇所に、前記支持基板の材料からなる平坦な底壁と全周に亘って前記支持基板の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有する第1凹部がそれぞれ形成されている。前記各第1凹部には、対応する前記発電素子部の燃料極が密着するようにそれぞれ埋設されている。
係る構成が採用される場合、第1凹部の形状によっては、主として「第1凹部の底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分」において、埋設された燃料極の剥離が発生する場合があった。本発明者は、係る問題に対処するために種々の研究等を重ねた。その結果、本発明者は、係る剥離が発生し難い第1凹部の形状を見出した。
本発明は、「横縞型」の燃料電池であって、支持基板の主面に形成された凹部に埋設された燃料極の剥離が発生し難いものを提供することを目的とする。
本発明に係る燃料電池は、「背景技術」の欄で記載した燃料電池と同様に、支持基板と、複数の発電素子部と、1つ又は複数の電気的接続部と、を備えた「横縞型」の燃料電池である。加えて、前記平板状の支持基板の主面における前記複数の箇所に、前記支持基板の材料からなる平坦な底壁と全周に亘って前記支持基板の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有する第1凹部がそれぞれ形成され、前記各第1凹部に、対応する前記発電素子部の燃料極が密着するようにそれぞれ埋設されている。
本発明に係る燃料電池の特徴は、前記各第1凹部について、前記側壁の全周に亘って、前記底壁の表面と前記側壁の表面とが交差する部分に丸み面取りが施されたことにある。ここにおいて、前記丸み面取りが円弧で表され、前記円弧の半径が10〜500μmであることが好適である。また、前記各第1凹部について、前記側壁の全周に亘って、前記側壁の前記第1凹部の深さ方向に沿う断面形状は、「前記支持基板の主面に接続する位置から前記第1凹部の底壁に接続する位置までに亘る凹状の曲線」を呈していても、「前記支持基板の主面に接続するとともに凸状の曲面を呈する第1部分と、前記第1凹部の底壁に接続するとともに前記第1部分と接続する凹状の曲面を呈する第2部分と、で構成された曲線」を呈していてもよい。
上記構成によれば、側壁の全周に亘って前記丸み面取りが施されない場合と比べて、主として「第1凹部の底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分」において燃料極の剥離が発生し難いことが判明した。これは、以下の2つの理由に基づくと考えられる。即ち、側壁の全周に亘って前記丸み面取りが施されると、第1に、第1凹部の内壁と第1凹部に埋設された燃料極との界面において支持基板と燃料極との熱膨張率差から生じるせん断応力の過大な集中が回避され易い。第2に、焼成前の積層体において、第1凹部の内壁と第1凹部に埋設された燃料極との界面において接触不良が発生し難い。この結果、積層体の焼成後において燃料極の剥離が発生し難い、と考えられる。
上記本発明に係る燃料電池において、前記各第1凹部について、前記側壁の全周に亘って、前記側壁の表面が、前記第1凹部の深さ方向からみたとき前記第1凹部の深さ方向において前記支持基板の主面から遠ざかるにつれて前記第1凹部の中央に近づくように傾斜し、且つ、前記側壁の前記第1凹部の深さ方向に沿う断面形状における「前記側壁の表面と前記支持基板の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角の大きさが最大となる位置」での前記鋭角の大きさ(第1角度)が30〜85°である。これによれば、上述した燃料極の剥離がより一層発生し難いことが判明した(詳細は後述する)。
また、上記本発明に係る燃料電池において、前記埋設された各燃料極における前記第1凹部の底壁に接触する面と反対側の面に、前記燃料極の材料からなる底壁と周方向に閉じた側壁とを有する第2凹部がそれぞれ形成され、前記各第2凹部に埋設部材がそれぞれ埋設される場合、前記各第2凹部について、前記側壁の全周に亘って、前記側壁の表面が、前記第2凹部の深さ方向からみたとき前記第2凹部の深さ方向において前記支持基板の主面から遠ざかるにつれて前記第2凹部の中央に近づくように傾斜し、且つ、前記側壁の前記第2凹部の深さ方向に沿う断面形状における「前記側壁の表面と前記支持基板の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角の大きさが最大となる位置」での前記鋭角の大きさ(第2角度)が、対応する前記第1凹部(の対応する位置の前記側壁)の前記第1角度より小さい、ことが好適である。
上記本発明に係る燃料電池では、前記各電気的接続部は、前記燃料極と接続する緻密な材料で構成された第1部分と、前記空気極及び前記第1部分と接続され且つ多孔質の材料で構成された第2部分とで構成され、前記各第1凹部に、対応する前記発電素子部の燃料極の集電部がそれぞれ埋設され、前記埋設された各燃料極集電部の外側面に形成された第2凹部に、対応する前記電気的接続部の前記第1部分がそれぞれ埋設され、前記埋設された各燃料極集電部の外側面の前記第2凹部が形成された位置と異なる位置に形成された第3凹部に、対応する前記発電素子部の燃料極の活性部であって対応する前記燃料極集電部に対して酸素イオン伝導性を有する物質の含有割合が大きい燃料極の活性部がそれぞれ埋設され得る。
また、対応する前記電気的接続部の第1部分が埋設された前記各第2凹部は、前記燃料極集電部の材料からなる底壁と、全周に亘って前記燃料極集電部の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有し得る。
また、前記燃料極集電部の前記第2凹部以外の外側面と、前記電気的接続部の第1部分の外側面と、前記支持基板の前記主面とにより、1つの平面が構成され得る。
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造体を示す。このSOFCの構造体は、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造体を示す。このSOFCの構造体は、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
このSOFCの構造体の全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが5〜50cmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さが1〜10cmの長方形である。このSOFCの構造体の全体の厚さは、1〜5mmである。このSOFCの構造体の全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、図1に加えて、このSOFCの構造体の図1に示す2−2線に対応する部分断面図である図2を参照しながら、このSOFCの構造体の詳細について説明する。図2は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図2に示す構成と同様である。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。後述する図11に示すように、支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。本例では、各凹部12(前記第1凹部に対応)は、支持基板10の材料からなる平坦な底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。各凹部12の大きさは、縦(長手方向(x軸方向)の長さ)0.5〜10cm、横(幅方向(y軸方向)の長さ)0.6〜9cm、深さ(z軸方向の長さ)50〜500μmである。
支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。
支持基板10は、「遷移金属酸化物又は遷移金属」と、絶縁性セラミックスとを含んで構成され得る。「遷移金属酸化物又は遷移金属」としては、NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)が好適である。遷移金属は、燃料ガスの改質反応を促す触媒(炭化水素系のガスの改質触媒)として機能し得る。
また、絶縁性セラミックスとしては、MgO(酸化マグネシウム)、又は、「MgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物」が好適である。また、絶縁性セラミックスとして、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、Y2O3(イットリア)が使用されてもよい。
このように、支持基板10が「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含むことによって、改質前の残存ガス成分を含んだガスが多孔質の支持基板10の内部の多数の気孔を介して燃料ガス流路11から燃料極に供給される過程において、上記触媒作用によって改質前の残存ガス成分の改質を促すことができる。加えて、支持基板10が絶縁性セラミックスを含むことによって、支持基板10の絶縁性を確保することができる。この結果、隣り合う燃料極間における絶縁性が確保され得る。
支持基板10の厚さは、1〜5mmである。以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
図2〜図6に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)に形成された各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。
より詳細には、図4〜図6に示すように、各凹部12には、側壁の全周に亘って、底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分に丸み面取りが施されている。「丸み面取り」とは、断面図において、面取りされた面が「円弧」で表される面取り、或いは、「円弧とは異なる曲線」で表わされる面取りを指す。「丸み面取り」が「円弧」で表される面取りである場合、前記円弧の半径(所謂、面取り半径)は10〜500μmである。
図4〜図6に示すように、各凹部12について、凹部12の深さ方向(z軸方向)からみたとき、側壁の全周に亘って、側壁の表面が、凹部12の深さ方向(z軸方向)において支持基板10の主面から遠ざかるにつれて凹部12の中央に近づくように傾斜している。加えて、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部12の深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面に接続する位置から凹部12の底壁に接続する位置までに亘る、凹状の曲線」を呈している。なお、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部12の深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面に接続する位置から凹部12の底壁に接続する位置までに亘る直線」を呈していてもよい。また、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部12の深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面に接続するとともに凸状の曲面を呈する第1部分と、凹部12の底壁に接続するとともに前記第1部分と接続する凹状の曲面を呈する第2部分と、で構成された曲線」を呈していてもよい。以下、側壁の「凹部12の深さ方向」に沿う断面形状における「側壁の表面と支持基板10の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角の大きさが最大となる位置」での前記鋭角の大きさを、角度θ1(θ1<90°、図4〜図6を参照)と定義する。角度θ1の大きさについては後述する。
各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる平坦な底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる平坦な底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
図4〜図6に示すように、各凹部21aには、側壁の全周に亘って、底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分に「丸み面取り」が施されている。「丸み面取り」が「円弧」で表される面取りである場合、前記円弧の半径(所謂、面取り半径)は10〜100μmである。各凹部21aについて、凹部21aの深さ方向(z軸方向)からみたとき、側壁の全周に亘って、側壁の表面が、凹部21aの深さ方向(z軸方向)において支持基板10の主面から遠ざかるにつれて凹部21aの中央に近づくように傾斜している。加えて、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部21aの深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面又は燃料極集電部21の上面に接続する位置から凹部21aの底壁に接続する位置までに亘る、凹状の曲線」を呈している。なお、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部21aの深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面又は燃料極集電部21の上面に接続する位置から凹部21aの底壁に接続する位置までに亘る直線」を呈していてもよい。また、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部21aの深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面又は燃料極集電部21に接続するとともに凸状の曲面を呈する第1部分と、凹部21aの底壁に接続するとともに前記第1部分と接続する凹状の曲面を呈する第2部分と、で構成された曲線」を呈していてもよい。以下、側壁の「凹部21aの深さ方向」に沿う断面形状における「側壁の表面と支持基板10の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角、又は側壁の表面と燃料極集電部21の上面とのなす鋭角、の大きさが最大となる位置」での前記鋭角の大きさを、角度θ2(θ2<90°、図4、図6を参照)と定義する。角度θ2の大きさについては後述する。
図4〜図6に示すように、各凹部21bには、側壁の全周に亘って、底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分に「丸み面取り」が施されている。「丸み面取り」が「円弧」で表される面取りである場合、前記円弧の半径(所謂、面取り半径)は10〜300μmである。各凹部21bについて、凹部21bの深さ方向(z軸方向)からみたとき、側壁の全周に亘って、側壁の表面が、凹部21bの深さ方向(z軸方向)において支持基板10の主面から遠ざかるにつれて凹部21bの中央に近づくように傾斜している。加えて、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部21bの深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面又は燃料極集電部21の上面に接続する位置から凹部21bの底壁に接続する位置までに亘る、凹状の曲線」を呈している。なお、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部21bの深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面又は燃料極集電部21の上面に接続する位置から凹部21bの底壁に接続する位置までに亘る直線」を呈していてもよい。また、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部21bの深さ方向」に沿う断面形状が、「支持基板10の主面又は燃料極集電部21に接続するとともに凸状の曲面を呈する第1部分と、凹部21bの底壁に接続するとともに前記第1部分と接続する凹状の曲面を呈する第2部分と、で構成された曲線」を呈していてもよい。以下、側壁の「凹部21bの深さ方向」に沿う断面形状における「側壁の表面と支持基板10の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角、又は側壁の表面と燃料極集電部21の上面とのなす鋭角、の大きさが最大となる位置」での前記鋭角の大きさを、角度θ3(θ3<90°、図4、図5を参照)と定義する。角度θ3の大きさについては後述する。
角度θ1、θ2、及び、θ3について付言する。角度θ1、θ2、及び、θ3を総称して「角度θ」と呼ぶ。上述のように、角度θは、対応する凹部の側壁の「凹部の深さ方向」に沿う断面形状における「側壁の表面と支持基板10の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角、又は側壁の表面と燃料極集電部21の上面とのなす鋭角、の大きさが最大となる位置」での前記鋭角の大きさ、と定義される。
図7に示すように、対応する凹部の側壁の全周に亘って、側壁の「凹部の深さ方向」に沿う断面形状が「支持基板10の主面又は燃料極集電部21の上面に接続する位置から凹部の底壁に接続する位置までに亘る、凹状の曲線」を呈している場合、角度θは、「側壁の表面と支持基板10の主面又は燃料極集電部21の上面とが交差する箇所(図7の点Pを参照)における、側壁の表面と支持基板10の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角、又は側壁の表面と燃料極集電部21の上面とのなす鋭角、の大きさ」を意味する。図4〜図6に示すθ1〜θ3は、図7に示す角度θに対応している。
図8に示すように、対応する凹部の側壁の全周に亘って、側壁の「凹部の深さ方向」に沿う断面形状が「支持基板10の主面又は燃料極集電部21の上面に接続するとともに凸状の曲面を呈する第1部分と、凹部の底壁に接続するとともに前記第1部分と接続する凹状の曲面を呈する第2部分と、で構成された曲線」を呈している場合、角度θは、「側壁における前記第1、第2部分の接続箇所(変曲点、図8の点Pを参照)における、側壁の表面と支持基板10の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角、又は側壁の表面と燃料極集電部21の上面とのなす鋭角、の大きさ」を意味する。
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸素イオン伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
燃料極20及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。
なお、図2に示すように、本例では、固体電解質膜40が、燃料極20(集電部21+活性部22)の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、前記「電気的接続部」に対応する。
なお、インターコネクタ30は、前記「電気的接続部」における前記「緻密な材料で構成された第1部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、前記「電気的接続部」における前記「多孔質の材料で構成された第2部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
以上、説明した「横縞型」のSOFCの構造体に対して、図9に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O2+2e−→O2− (於:空気極60) …(1)
H2+O2−→H2O+2e− (於:燃料極20) …(2)
(1/2)・O2+2e−→O2− (於:空気極60) …(1)
H2+O2−→H2O+2e− (於:燃料極20) …(2)
発電状態においては、図10に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図9に示すように、このSOFCの構造体全体から(具体的には、図9において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
(製造方法)
次に、図1に示した「横縞型」のSOFCの構造体の製造方法の一例について図11〜図19を参照しながら簡単に説明する。図11〜図19において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
次に、図1に示した「横縞型」のSOFCの構造体の製造方法の一例について図11〜図19を参照しながら簡単に説明する。図11〜図19において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
先ず、図11に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図11に示す12−12線に対応する部分断面を表す図12〜図19を参照しながら説明を続ける。
図12に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図13に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された各凹部に、燃料極集電部の成形体21gがそれぞれ埋設・形成される。次いで、図14に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された各凹部に、燃料極活性部の成形体22gがそれぞれ埋設・形成される。各燃料極集電部の成形体21g、及び各燃料極活性部22gは、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとYSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
続いて、図15に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面における「燃料極活性部の成形体22gが埋設された部分を除いた部分」に形成された各凹部に、インターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成される。各インターコネクタの成形体30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO3)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
次に、図16に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)及び複数のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタの成形体30gが形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
次に、図17に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCの構造体において空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
次に、図18に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図19に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCの構造体が得られる。以上、図1に示したSOFCの構造体の製造方法の一例について説明した。
なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、支持基板10、及び燃料極20中のNi成分が、NiOとなっている。従って、燃料極20の導電性を獲得するため、その後、支持基板10側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。
(作用・効果)
以上、説明したように、上記本発明の実施形態に係る「横縞型」のSOFCの構造体では、支持基板10の主面に形成された各凹部12について、側壁の全周に亘って、底壁の表面と前記側壁の表面とが交差する部分に「丸み面取り」が施されている。この結果、側壁の全周に亘って「丸み面取り」が施されない場合と比べて、主として「凹部12の底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分」において燃料極20(具体的には、燃料極集電部21)の剥離が発生し難いことが判明した。これは、以下の2つの理由に基づくと考えられる。
以上、説明したように、上記本発明の実施形態に係る「横縞型」のSOFCの構造体では、支持基板10の主面に形成された各凹部12について、側壁の全周に亘って、底壁の表面と前記側壁の表面とが交差する部分に「丸み面取り」が施されている。この結果、側壁の全周に亘って「丸み面取り」が施されない場合と比べて、主として「凹部12の底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分」において燃料極20(具体的には、燃料極集電部21)の剥離が発生し難いことが判明した。これは、以下の2つの理由に基づくと考えられる。
即ち、凹部12の側壁の全周に亘って「丸み面取り」が施されると、第1に、凹部12の内壁と凹部12に埋設された燃料極集電部21との界面において支持基板10と燃料極集電部21との熱膨張率差から生じるせん断応力の過大な集中が回避され易い。第2に、焼成前の積層体において、凹部12の内壁と凹部12に埋設された燃料極集電部21との界面において接触不良が発生し難い。この結果、積層体の焼成後において燃料極集電部21の剥離が発生し難い、と考えられる。
また、支持基板10の上下面に形成されている、燃料極20(集電部21)を埋設するための複数の凹部12のそれぞれが、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁を有している。換言すれば、支持基板10において各凹部12を囲む枠体がそれぞれ形成されている。従って、この構造体は、支持基板10が外力を受けた場合に変形し難い。
また、支持基板10の各凹部12内に燃料極20(集電部21+活性部22)及びインターコネクタ30等の部材が隙間なく充填・埋設された状態で、支持基板10と前記埋設された部材とが共焼結される。従って、部材間の接合性が高く且つ信頼性の高い焼結体が得られる。
また、インターコネクタ30が、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bに埋設され、この結果、直方体状のインターコネクタ30の幅方向(y軸方向)に沿う2つの側面と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。従って、燃料極集電部21の外側平面上に直方体状のインターコネクタ30が積層される(接触する)構成が採用される場合に比べて、燃料極20(集電部21)とインターコネクタ30との界面の面積を大きくできる。従って、燃料極20とインターコネクタ30との間における電子伝導性を高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、上記実施形態では、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに、複数の発電素子部Aが設けられている。これにより、支持基板の片側面のみに複数の発電素子部が設けられる場合に比して、構造体中における発電素子部の数を多くでき、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、上記実施形態では、固体電解質膜40が、燃料極20(集電部21+活性部22)の外側面、インターコネクタ30の外側面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、燃料極20の外側面とインターコネクタ30の外側面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
(角度θ1の適切な範囲)
以下、凹部12の側壁の表面と支持基板10の主面とが交差する部分における、側壁の表面と支持基板10の主面とのなす角度を180°から減じて得られる角度(側壁の表面と燃料極集電部21の上面とのなす角度)θ1(θ1<90°、図4〜図6を参照)の大きさについて述べる。
以下、凹部12の側壁の表面と支持基板10の主面とが交差する部分における、側壁の表面と支持基板10の主面とのなす角度を180°から減じて得られる角度(側壁の表面と燃料極集電部21の上面とのなす角度)θ1(θ1<90°、図4〜図6を参照)の大きさについて述べる。
支持基板10の主面に形成された凹部12に燃料極20(より正確には、燃料極集電部21)が埋設(充填)された上記実施形態が、通常の環境下で稼働される場合には、埋設された燃料極集電部21の剥離が発生し難い。しかしながら、上記実施形態が熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、埋設された燃料極集電部21の剥離が発生する場合があった。本発明者は、係る燃料極集電部21の剥離の発生が、角度θ1(θ1<90°)の大きさと強い相関があることを見出した。以下、このことを確認した試験について説明する。
(試験)
この試験では、上記実施形態に係る燃料電池について、支持基板10及び燃料極集電部21の材質、並びに、角度θ1(θ1<90°)の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、14種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。表1に記載されたθ1の値は、焼成体である上記実施形態の完成後、且つ、上記還元処理後の段階での値(N=10の平均値)である。
この試験では、上記実施形態に係る燃料電池について、支持基板10及び燃料極集電部21の材質、並びに、角度θ1(θ1<90°)の組み合わせが異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、14種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。表1に記載されたθ1の値は、焼成体である上記実施形態の完成後、且つ、上記還元処理後の段階での値(N=10の平均値)である。
各サンプル(図1に示す燃料電池)にて使用された支持基板10としては、材料の気孔率が20〜60%であり、厚さ、幅がそれぞれ、2.5mm、50mm(即ち、アスペクト比が20)であり、ガス流路11の断面形状が直径1.5mmの円形であり、隣接するガス流路11、11間のピッチPが5.0mmのものが使用された。各サンプルでは、上述と同様、支持基板成形体、燃料極成形体、及び固体電解質膜成形体が共焼成された。その後、各サンプルに対して還元処理が行われた。各サンプルでは、支持基板10と燃料極集電部21との(常温から1000℃の間における)熱膨張率差は、0.5〜2ppm/Kであった。
各サンプルにおいて、凹部12の大きさは、縦(x軸方向の長さ)0.5〜10cm、横(y軸方向の長さ)0.6〜9cm、深さ(z軸方向の長さ)50〜500μmであった。凹部12の底壁の表面と側壁の表面とが交差する部分において側壁の全周に亘って施された「丸み面取り」の面取り半径は、10〜500μmであった。凹部12について、凹部12の深さ方向(z軸方向)からみたとき、側壁の全周に亘って、側壁の表面が、凹部12の深さ方向(z軸方向)において支持基板10の主面から遠ざかるにつれて凹部12の中央に近づくように傾斜していた。加えて、側壁の全周に亘って、側壁の「凹部12の深さ方向」(z軸方向)に沿う断面形状が、「支持基板10の主面に接続する位置から凹部12の底壁に接続する位置までに亘る、凹状の曲線」を呈していた。焼成温度は、1300〜1600℃の範囲内で調整された。焼成時間は、1〜20時間の範囲内で調整された。還元処理温度は、800〜1000℃の範囲内で調整された。還元処理時間は、1〜10時間の範囲内で調整された。
そして、上記還元処理後の段階(還元状態)における各サンプルについて、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」を100回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、凹部12に埋設された燃料極集電部21の剥離の発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した観察によってなされた。この結果は表1に示すとおりである。
表1から理解できるように、熱応力的に過酷な上記熱サイクル試験を行った後では、角度θ1が30°未満、又は、85°より大きい場合には、理由は不明であるが、埋設された燃料極集電部21に剥離が発生し易い。一方、角度θ1が30〜85°の範囲内では、燃料極集電部21に剥離が発生し難い、ということができる。以上より、角度θ1が30〜85°の範囲内にある場合、そうでない場合と比べて、凹部12に埋設された燃料極集電部21の剥離が発生し難い、ということができる。
なお、本発明者は、通常の条件・環境下(例えば、常温から750℃まで4時間で上げた後に750℃から常温まで12時間で下げるパターン)にて上記実施形態が使用される場合、角度θ1が30〜85°の範囲外であっても、凹部12に埋設された燃料極集電部21に剥離が発生しないことを別途確認している。
以上の結果は、凹部12の平面形状(凹部12の深さ方向(z軸方向)からみたときの形状)が長方形状の場合に対応するが、正方形、円形、楕円形、長穴形状等であっても同じ結果が得られることが既に確認されている。また、以上の結果は、凹部12の深さ方向(z軸方向)において凹部12の側壁の表面が凹面状の曲面を呈する場合に対応するが、凹部12の深さ方向(z軸方向)において凹部12の側壁の表面が平面を呈する場合であっても同じ結果が得られることが既に確認されている。
また、各凹部12について、凹部21aの側壁の全周に亘って、角度θ2が、凹部12の対応する位置の側壁の角度θ1より小さいと、凹部21aに埋設された燃料極活性部22の剥離の発生が抑制され得ることが確認されている。同様に、各凹部12について、凹部21bの側壁の全周に亘って、角度θ3が、凹部12の対応する位置の側壁の角度θ1より小さいと、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の剥離の発生が抑制され得ることが確認されている。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、各凹部12にはインターコネクタ30の全体が埋設されているが、インターコネクタ30の一部のみが各凹部12に埋設され、インターコネクタ30の残りの部分が凹部12の外に突出(即ち、支持基板10の主面から突出)していてもよい。
また、上記実施形態においては、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられているが、図20に示すように、支持基板10の片側面のみに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。
また、上記実施形態においては、燃料極20が燃料極集電部21と燃料極活性部22との2層で構成されているが、燃料極20が燃料極活性部22に相当する1層で構成されてもよい。
加えて、上記実施形態においては、図3に示すように、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(支持基板10の材料からなる長手方向に沿う2つの側壁と、燃料極集電部21の材料からなる幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みとなっている。この結果、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の幅方向に沿う2つの側面と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。同様に、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21aが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(支持基板10の材料からなる長手方向に沿う2つの側壁と、燃料極集電部21の材料からなる幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みとなっている。この結果、凹部21aに埋設された燃料極活性部22の幅方向に沿う2つの側面と底面とが凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
これに対し、図3〜図6にそれぞれ対応する図21〜図24に示すように、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みであってもよい。同様に、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21aが、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みであってもよい。
これによれば、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の4つの側面の全てと底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触する。従って、燃料極集電部21とインターコネクタ30との界面の面積をより一層大きくできる。従って、燃料極集電部21とインターコネクタ30との間における電子伝導性をより一層高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力をより一層高めることができる。同様に、凹部21aに埋設された燃料極活性部22の4つの側面の全てと底面とが凹部21a内で燃料極集電部21と接触する。従って、燃料極集電部21と燃料極活性部22との界面の面積をより一層大きくできる。従って、燃料極集電部21と燃料極活性部22との間における電子伝導性をより一層高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力をより一層高めることができる。
図21〜図24に示す例においても、角度θ1が30〜85°の範囲内にある場合、そうでない場合と比べて、凹部12に埋設された燃料極集電部21の剥離が発生し難いことが確認されている。また、各凹部12について、凹部21aの側壁の全周に亘って、角度θ2が、凹部12の対応する位置の側壁の角度θ1より小さいと、凹部21aに埋設された燃料極活性部22の剥離の発生が抑制され得ることが確認されている。同様に、各凹部12について、凹部21bの側壁の全周に亘って、角度θ3が、凹部12の対応する位置の側壁の角度θ1より小さいと、凹部21bに埋設されたインターコネクタ30の剥離の発生が抑制され得ることが確認されている。
10…支持基板、11…燃料ガス流路、12…凹部、20…燃料極、21…燃料極集電部、21a、21b…凹部、22…燃料極活性部、30…インターコネクタ、40…固体電解質膜、50…反応防止膜、60…空気極、70…空気極集電膜、A…発電素子部
Claims (5)
- ガス流路が内部に形成された平板状の多孔質の支持基板と、
前記平板状の支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極が積層されてなる複数の発電素子部と、
1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の燃料極と他方の空気極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部と、
を備えた燃料電池において、
前記平板状の支持基板の主面における前記複数の箇所に、前記支持基板の材料からなる平坦な底壁と全周に亘って前記支持基板の材料からなる周方向に閉じた側壁とを有する第1凹部がそれぞれ形成され、
前記各第1凹部に、対応する前記発電素子部の燃料極がそれぞれ埋設され、
前記各第1凹部について、前記側壁の全周に亘って、
前記底壁の表面と前記側壁の表面とが交差する部分に丸み面取りが施され、
前記各第1凹部について、前記側壁の全周に亘って、
前記側壁の表面が、前記第1凹部の深さ方向からみたとき前記第1凹部の深さ方向において前記支持基板の主面から遠ざかるにつれて前記第1凹部の中央に近づくように傾斜し、且つ、前記側壁の前記第1凹部の深さ方向に沿う断面形状における前記側壁の表面と前記支持基板の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角の大きさが最大となる位置での前記鋭角の大きさである第1角度が30〜85°である、燃料電池。 - 請求項1に記載の燃料電池において、
前記埋設された各燃料極における前記第1凹部の底壁に接触する面と反対側の面に、前記燃料極の材料からなる底壁と周方向に閉じた側壁とを有する第2凹部がそれぞれ形成され、
前記各第2凹部に埋設部材がそれぞれ埋設され、
前記各第2凹部について、前記側壁の全周に亘って、
前記側壁の表面が、前記第2凹部の深さ方向からみたとき前記第2凹部の深さ方向において前記支持基板の主面から遠ざかるにつれて前記第2凹部の中央に近づくように傾斜し、且つ、前記側壁の前記第2凹部の深さ方向に沿う断面形状における前記側壁の表面と前記支持基板の主面とのなす角度を180°から減じて得られる鋭角の大きさが最大となる位置での前記鋭角の大きさである第2角度が、対応する前記第1凹部の前記第1角度より小さい、燃料電池。 - 請求項1又は請求項2に記載の燃料電池において、
前記各第1凹部について、前記側壁の全周に亘って、
前記側壁の前記第1凹部の深さ方向に沿う断面形状が、前記支持基板の主面に接続する位置から前記第1凹部の底壁に接続する位置までに亘る、凹状の曲線を呈している、燃料電池。 - 請求項1又は請求項2に記載の燃料電池において、
前記各第1凹部について、前記側壁の全周に亘って、
前記側壁の前記第1凹部の深さ方向に沿う断面形状が、前記支持基板の主面に接続するとともに凸状の曲面を呈する第1部分と、前記第1凹部の底壁に接続するとともに前記第1部分と接続する凹状の曲面を呈する第2部分と、で構成された曲線を呈している、燃料電池。 - 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の燃料電池において、
前記丸み面取りが円弧で表され、前記円弧の半径が10〜500μmである、燃料電池。
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