JP2018064534A - 揚げ物用衣材 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、室温、チルド又は冷凍保存過程における調理具材から衣への水分移行及び電子レンジ加熱中の蒸気発生による衣の軟化により、油ちょう済み衣付き揚げ物類が本来有していた衣のサクサクとした食感とドライな歯切れが損なわれてしまうという問題があった。
従来、このような問題点を解決するために様々な試みがなされてきた。例えばトレハロースを0.1〜10重量%含有する揚げ物用衣材料(特許文献1)、小麦粉にHLBが5〜16の乳化剤を配合した平均粒径100〜180μmの天ぷら用小麦造粒物(特許文献2)、粒度が20〜80メッシュの難溶性粒状物質と増粘多糖類と高蛋白質粉粒体を含有する揚げ物用衣組成物(特許文献3)、ヨウ素価95以下の食用油脂、大豆蛋白質、乳化剤、α化度70%以上の穀粉及び/又は澱粉を含むバッターを付け、次いで水不溶性多糖類と水溶性多糖類を含むブレダー用ミックスを付けた後に油ちょうする冷凍揚げ物の製造方法(特許文献4)等が提案されていた。これらの方法の目指すところはフライ等加熱調理後の衣の食感をできるだけ固くしてサクサク感を際立たせることであり、電子レンジ加熱後に衣の軟化現象が生じても、その固さにより衣のサクサク感を維持させるというものであった。しかしながら、保存期間が長くなったり保存条件が不良であったりすると、調理具材からの水分移行のために衣自身がべたべたした状態になって、油ちょう直後のサクサク感と歯切れが損なわれてしまう欠点は改善されていない。コーングリッツ、セモリナ及びパスタ粉砕物から選ばれる1種以上と、大豆加工粉末と、醸造調味粉末を含む粉末状調味料成分とを含有するから揚げ様衣用組成物(特許文献5)や穀粉類と油脂と膨張剤とを含有する衣ミックスが具材質量に対して12〜20質量%付着しているから揚げ様食品素材(特許文献6)も提案されているが、これらはノンフライタイプのレンジ加熱用製品の製法であり、調理具材から移行してくる水分が吸収されることによりドライでふやけのない歯切れの良さは得られるものの、揚げたての衣のサクサク感については何ら触れられていない。
[1]縮合リン酸2価カチオン塩を0.09質量%以上含む、揚げ物用衣材。
[2]縮合リン酸2価カチオン塩が縮合リン酸カルシウム塩である、前記[1]に記載の揚げ物用衣材。
[3]バッター、打ち粉及びまぶし粉から選択される少なくとも1つである、前記[1]又は[2]に記載の揚げ物用衣材。
縮合リン酸とは、オルトリン酸が脱水反応により縮合したものであり、オルトリン酸が2分子脱水縮合したピロリン酸、3分子が脱水縮合したトリポリリン酸、更に高次に脱水縮合したメタリン酸が知られている。このような縮合リン酸は、1価又は2価のカチオンとの塩として食品利用されており、本発明では食用に使用できる縮合リン酸2価カチオン塩であれば特に限定なく使用できる。このような縮合リン酸2価カチオン塩は、1つの縮合リン酸アニオンに対して1つ以上の2価カチオン(Ca、Fe、Mg、Zn、Cu等)がイオン結合しているものであれば良く、好ましくは縮合リン酸カルシウム塩であり、より好ましくはピロリン酸カルシウムであり、最も好ましくはピロリン酸二水素カルシウムである。
表2記載のから揚げ粉、ピロリン酸カルシウム及び水を混合してから揚げ用バッター(揚げ物用衣材)を得た。鶏モモ肉30gにから揚げ用バッター(約9g)を万遍なく付着させ、175℃に加熱したサラダ油に投入して4分30秒間油ちょうして鶏から揚げを得た。−50℃の急速冷凍庫で30分間冷凍凍結処理した油ちょう済み冷凍鶏から揚げを、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室に入れて4週間保存した。冷凍保存後、凍結したまま電子レンジに投入し、600Wで30秒間加熱し、10名の専門パネラーにより表1の基準に従って官能評価を行い、平均値を評価点とした。
なお、保存に家庭用冷凍冷蔵庫を使用した理由は、扉の開閉に伴う冷凍室の温度変化を試験に反映させるためである。
実施例1では、衣のサクサク感及び衣の歯切れとも許容範囲であり、ピロリン酸カルシウムの含有量が高くなるにつれ評価は高くなった。実施例5では、ピロリン酸カルシウムの効果は得られたものの、揚げ物用衣材中のから揚げ粉の含有量が低くなり、から揚げ粉(含有される小麦粉等)の本来の機能がやや低くなり、実施例4よりもやや食感に劣る傾向にあったが、から揚げとしては十分に満足できるものであった。
比較例1では、衣のサクサク感及び衣の歯切れ共に損なわれ、非常に悪い評価であった。比較例2では、ピロリン酸カルシウムの含有量が少なく改善効果が得られず、加熱後の衣の官能評価は悪いものであった。
表3記載のから揚げ粉、各種塩類及び水を混合してから揚げ用バッター(揚げ物用衣材)を得た以外は試験例1に従って油ちょう済み冷凍鶏から揚げを得、電子レンジ加熱して官能評価を行った。なお比較例1の鶏から揚げの、揚げたての食感を官能評価点数の5点とした。官能評価の結果を表3に示す。
B:ピロリン酸二水素二ナトリウム(大宮糧食工業、酸性ピロリン酸ナトリウムSAP−T)
C:ピロリン酸四カリウム(太平化学産業、ピロリン酸四カリウム)
D:リン酸二水素カルシウム(大宮糧食工業、第一リン酸カルシウムMCP−S)
E:硫酸カルシウム(太平化学産業、硫酸カルシウム)
F:塩化第二鉄(純正化学、塩化第二鉄)
表4記載のバッターミックス、ピロリン酸カルシウム及び水を混合してコロッケ用バッター(揚げ物用衣材)を得た。コロッケパテ50gをコロッケ用バッターに浸漬し、次いでパン粉を付着させ、175℃に加熱したサラダ油に投入して6分30秒間油ちょうしてコロッケを得た。−50℃の急速冷凍庫で40分間冷凍凍結処理した油ちょう済み冷凍コロッケを、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室に入れて4週間保存した。冷凍保存後、凍結したまま電子レンジに投入し、600Wで70秒間加熱し、10名の専門パネラーにより表1の基準に従って官能評価を行った。
比較例8のコロッケの、揚げたての食感を官能評価点数の5点として、各油ちょう済み冷凍コロッケを電子レンジ加熱して官能評価を行った。コロッケ用バッターはピロリン酸カルシウムの含有量が高くなるにつれ評価は高くなった。
表5記載のバッターミックス、ピロリン酸カルシウム及び水を混合してコロッケ用バッター(揚げ物用衣材)、及び打ち粉ミックスとピロリン酸カルシウムを混合して打ち粉(揚げ物用衣材)を得た。コロッケパテ50gに打ち粉を万遍なくまぶし、次いでコロッケ用バッターに浸漬し、最後にパン粉を付着させた。これを175℃に加熱したサラダ油に投入して6分30秒間油ちょうしてコロッケを得た。−50℃の急速冷凍庫で40分間冷凍凍結処理した油ちょう済み冷凍コロッケを、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室に入れて4週間保存した。冷凍保存後、凍結したまま電子レンジに投入し、600Wで70秒間加熱し、10名の専門パネラーにより表1の基準に従って官能評価を行った。
実施例12及び13ともに衣のサクサク感と衣の歯切れは良好で、ピロリン酸カルシウムを配合した打ち粉とバッターを併用することにより官能評価は更に向上した。表4と表5の結果から、バッター又は打ち粉のどちらかにピロリン酸カルシウムを配合することで、電子レンジ加熱による衣の劣化を効果的に抑制することができた。その効果は、ピロリン酸カルシウムを含有する打ち粉、バッター、打ち粉とバッターの併用の順でより良好に得られることが分かった。
比較例10では、比較例8に対して打ち粉をすることにより電子レンジ加熱によるコロッケパテから発生する蒸気の影響を抑制できることが分かったが、許容され得るものではなかった。
表6記載の天ぷら粉、ピロリン酸カルシウム及び水を混合して天ぷら用バッター(揚げ物用衣材)を得た。生エビ(15〜18g/尾)に打ち粉(日本製粉社のTA−135)を万遍なくまぶし、天ぷら用バッターを付着させ、175℃に加熱したサラダ油に投入して2分間油ちょうしてエビ天ぷらを得た。−50℃の急速冷凍庫で20分間冷凍凍結処理した油ちょう済み冷凍エビ天ぷらを、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室に入れて4週間保存した。冷凍保存後、凍結したまま電子レンジに投入し、600Wで20秒間加熱し、10名の専門パネラーにより表1の基準に従って官能評価を行った。
その結果、から揚げ及びコロッケのバッター同様に、ピロリン酸カルシウムをバッターに配合することで、電子レンジ加熱後の衣の官能評価は良好になった。
表7記載のから揚げ粉、ピロリン酸カルシウムを混合してから揚げ用まぶし粉(揚げ物用衣材)を得た。鶏モモ肉30gにから揚げ用まぶし粉を万遍なくまぶし、175℃に加熱したサラダ油に投入して4分間油ちょうして鶏から揚げを得た。−50℃の急速冷凍庫で30分間冷凍凍結処理した油ちょう済み冷凍鶏から揚げを、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室に入れて4週間保存した。冷凍保存後、凍結したまま電子レンジに投入し、600Wで30秒間加熱し、10名の専門パネラーにより表1の基準に従って官能評価を行った。
から揚げ用まぶし粉にピロリン酸カルシウムをまぶし粉に配合することで、電子レンジ加熱後の衣の官能評価は良好であった。
表8記載のから揚げ粉、ピロリン酸カルシウムを混合してから揚げ用バッター、まぶし粉(揚げ物用衣材)を得た。鶏モモ肉30gにから揚げ用バッター(約9g)を万遍なく付着させた後、から揚げ用まぶし粉を万遍なくまぶし、175℃に加熱したサラダ油に投入して4分30秒間油ちょうして鶏から揚げを得た。−50℃の急速冷凍庫で30分間冷凍凍結処理した油ちょう済み冷凍鶏から揚げを、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室に入れて4週間保存した。冷凍保存後、凍結したまま電子レンジに投入し、600Wで35秒間加熱し、10名の専門パネラーにより表1の基準に従って官能評価を行った。
バッター及びまぶし粉にピロリン酸カルシウムを配合することで、電子レンジ加熱後の衣の官能評価は良好になった。バッター及びまぶし粉にピロリン酸カルシウムを2.5質量%配合した実施例3及び実施例14よりも、ピロリン酸カルシウムを配合したバッターとまぶし粉を併用した実施例15の官能評価は優れたものであった。
実施例3及び比較例1、実施例9及び比較例8、実施例14及び比較例11と同様に油ちょうして得られた鶏から揚げ、コロッケ、天ぷらを、各々室温保存及びチルド保存した後、電子レンジ加熱して10名の専門パネラーにより表1の基準に従って官能評価を行い、結果を表8に示した。室温保存する場合、油ちょう後粗熱をとり、網付き平底バットに斜立重ねし、8時間室温保存した。チルド保存する場合、油ちょう後粗熱をとって真空冷却し、家庭用冷凍冷蔵庫のチルド室で3日間チルド保存した。
ピロリン酸カルシウムを含有する衣材を使用した実施例では、何れの保存条件を選択しても電子レンジ加熱で良好な官能評価結果が得られた。ピロリン酸カルシウムを含有しない比較例では、何れも許容され得るものではなかった。
Claims (3)
- 縮合リン酸2価カチオン塩を0.09質量%以上含む、揚げ物用衣材。
- 縮合リン酸2価カチオン塩が縮合リン酸カルシウム塩である請求項1に記載の揚げ物用衣材。
- バッター、打ち粉及びまぶし粉から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の揚げ物用衣材。
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