以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数2以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数7以上9以下のアラルキル基、炭素原子数3以上14以下の複素環基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、及び炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、何ら規定していなければ、それぞれ次の意味である。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、又はn−オクチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上5以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上5以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、又はネオペンチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。
炭素原子数2以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上4以下のアルキル基としては、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はイソプロピル基が挙げられる。
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、又はオクチルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、又はt−ブトキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が挙げられる。
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数6以上14以下のアリール基と、炭素原子数1以上6以下のアルキル基とが結合した基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基における炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、又は4−フェニルブチル基が挙げられる。
炭素原子数7以上9以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上9以下のアラルキル基は、フェニル基と、炭素原子数1以上3以下のアルキル基とが結合した基である。炭素原子数7以上9以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、又は1−フェニルエチル基が挙げられる。
炭素原子数3以上14以下の複素環基は、非置換である。炭素原子数3以上14以下の複素環基としては、例えば、1個以上(好ましくは1個以上3個以下)のヘテロ原子を含み、芳香性を有する5員又は6員の単環の複素環基;このような単環同士が縮合した複素環基;又は、このような単環と、5員又は6員の炭化水素環とが縮合した複素環基が挙げられる。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。複素環基の具体例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、又はベンズイミダゾリル基が挙げられる。
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、又はシクロデシル基が挙げられる。
炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、又はシクロへプチリデン基が挙げられる。
<第一実施形態:電子写真感光体>
本発明の第一実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体(以下、単層型感光体と記載することがある)、又は積層型電子写真感光体(以下、積層型感光体と記載することがある)が挙げられる。
[1.単層型感光体]
以下、図1を参照して、単層型感光体の構造について説明する。図1は、第一実施形態に係る感光体1の一例を示す概略断面図である。
図1では、感光体1は単層型感光体を示す。図1(a)に示すように、単層型感光体は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。単層型感光体は、感光層3として単層型感光層3aを備える。単層型感光層3aは、一層の感光層3である。図1(a)のように、感光層3は導電性基体2上に直接的に配置されてもよい。
図1(b)に示すように、単層型感光体は、導電性基体2と、単層型感光層3aと、中間層(下引き層)4とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と単層型感光層3aとの間に設けられる。図1(b)に示すように、感光層3は、中間層4を介して導電性基体2上に間接的に配置されてもよい。また、図1(c)に示すように、単層型感光層3a上に保護層5が設けられてもよい。
単層型感光層3aの厚さは、単層型感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。単層型感光層3aの厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
[2.積層型感光体]
積層型感光体では、感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを備える。以下、図2を参照して、積層型感光体の構造について説明する。図2は、第二実施形態に係る感光体1の別の例を示す概略断面図である。
図2では、感光体1は、積層型感光体を示す。図2(a)に示すように、積層型感光体は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3bと電荷輸送層3cとを備える。積層型感光体の耐摩耗性を向上させるためには、図2(a)に示すように、導電性基体2上に電荷発生層3bが設けられ、電荷発生層3b上に電荷輸送層3cが設けられることが好ましい。図2(b)に示すように、積層型感光体では、導電性基体2上に電荷輸送層3cが設けられ、電荷輸送層3c上に電荷発生層3bが設けられてもよい。
図2(c)に示すように、積層型感光体は、導電性基体2と感光層3と中間層(下引き層)4とを備えていてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に備えられる。また、感光層3上には、保護層5(図1(c)参照)が設けられていてもよい。
電荷発生層3b及び電荷輸送層3cの厚さは、それぞれの層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。電荷発生層3bの厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層3cの厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
以上、図1及び図2を参照して、感光体1の構造について説明した。
第一実施形態に係る感光体は、感光層を備える。感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、キノン誘導体及びジイミド誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種と、バインダー樹脂と、1種以上のフィラー粒子とを含む。積層型感光体では、電荷発生層は、例えば、電荷発生剤と、電荷発生剤用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)とを含む。電荷輸送層は、例えば、正孔輸送剤と、キノン誘導体及びジイミド誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種と、バインダー樹脂と、1種以上のフィラー粒子とを含む。単層型感光体では、単層型感光層は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、キノン誘導体及びジイミド誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種と、バインダー樹脂と、1種以上のフィラー粒子とを含有する。電荷発生層、電荷輸送層、及び単層型感光層は、添加剤を更に含有してもよい。
第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーの発生を抑制する。その理由は以下のように推測される。第一実施形態に係る感光体では、キノン誘導体及びジイミド誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。キノン誘導体は一般式(1)で表される(以下、一般式(1)で表されるキノン誘導体をキノン誘導体(1)と記載する)。ジイミド誘導体は一般式(2)で表される(以下、一般式(2)で表されるジイミド誘導体をジイミド誘導体(2)と記載することがある)。キノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)は、平面性を有し、比較的大きなπ共役系を有する。このため、感光層は、電子受容能に優れ、キャリアとしての電荷が感光層中に残留しにくい傾向にある。よって、第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーの発生を抑制すると考えられる。なお、転写メモリーの評価方法は、実施例にて詳細に後述する。
また、第一実施形態に係る感光体は、耐フィルミング性に優れる。その理由は以下のように推測される。便宜上、まず、画像形成プロセスにおけるフィルミングに起因する画像不良を説明する。電子写真方式の画像形成装置は、例えば、像担持体(感光体)と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部と、クリーニング部とを備える。画像形成プロセスが直接転写方式を採用する場合、転写部は、トナー像を感光体から記録媒体へ転写する。転写後、クリーニング部は、感光層3の表面を清掃する。
トナー像の転写において、記録媒体は感光体の表面で摺擦され、記録媒体が帯電(いわゆる摩擦帯電)することがある。かかる場合、記録媒体が感光体の帯電極性に対して同極性に帯電し帯電性が低下する傾向、又は逆極性に帯電(いわゆる逆帯電)する傾向がある。記録媒体がこのような帯電性を有すると、記録媒体が有する微小な成分(例えば、紙粉)が感光体の表面に移動し付着することがある。そして、クリーニング部が感光体の表面の画像領域に付着した微小な成分を除去しきれない場合、記録媒体上に形成された画像に欠陥が生じることがある。このような画像欠陥をフィルミングという。なお、耐フィルミング性の評価方法は、実施例にて詳細に後述する。
第一実施形態に係る感光体では、感光層は、キノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)はハロゲン原子を有する。このため、感光層がキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)よりなる群から選択される少なくとも1種を含むと、転写部において記録媒体が感光体の表面と摺擦しても、記録媒体は感光体の帯電極性に対して同極性で帯電性が低下しにくい傾向、及び逆帯電しにくい傾向にある。よって、微小な成分と感光層の表面とで静電引力が生じにくくなり、感光層の表面に微小な成分が付着しにくくなる。また、感光層は1種以上のフィラー粒子を含む。このため、感光層はその表面に凹凸形状を形成し易く、感光層の表面と微小な成分との接触面積が小さくなる傾向にある。接触面積が小さいと、クリーニング部は微小な成分を感光層から除去し易い。以上から、第一実施形態に係る感光体は耐フィルミング性に優れると考えられる。
以下、感光体の要素として導電性基体、電子輸送剤、電子アクセプター化合物、正孔輸送剤、電荷発生剤、バインダー樹脂、ベース樹脂、添加剤、及び中間層を説明する。また、感光体の製造方法も説明する。
[3.導電性基体]
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、又はインジウムが挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の組合せとしては、例えば、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は真鍮等)が挙げられる。これらの導電性を有する材料の中でも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。また、導電性基体は、その表面にこれら導電性を有する材料の酸化皮膜を有してもよい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
[4.電子輸送剤、電子アクセプター化合物]
単層型感光体では、単層型感光層は、電子輸送剤としてキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。積層型感光体では、電荷輸送層は、電子アクセプター化合物としてキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
[4−1.キノン誘導体(1)]
キノン誘導体は、一般式(1)で表される。
一般式(1)中、R1は、1又は複数の置換基を有してもよい炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、及び炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基からなる群から選択される第一基を表す。第一基は、1又は複数のハロゲン原子で置換されている。2つのR1は互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3以上14以下の複素環基を表す。2つのR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)中、R1の表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数2以上4以下のアルキル基がより好ましく、エチル基、イソプロピル基、又はtert−ブチル基が更に好ましい。炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、1又は複数の置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、又はフッ素原子若しくは塩素原子を有するフェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基がフェニル基である場合、フェニル基におけるハロゲン原子の置換位置は、例えば、フェニル基が炭素原子数1以上8以下のアルキル基と結合する位置に対して、オルト位(o位)、メタ位(m位)、パラ位(p位)、又はこれらの少なくとも2つが挙げられ、パラ位が好ましい。1又は複数の置換基を有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、ハロゲン原子で置換された炭素原子数6以上14以下のアリール基及び1若しくは複数のハロゲン原子よりなる群から選択される1種以上の第三基を有する炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、1種以上の第三基を有する炭素原子数2以上4以下のアルキル基がより好ましく、2−クロロ−1,1−ジメチルエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチル−1−(4−クロロフェニル)メチル基、1−(4−クロロフェニル)エチル基、2−クロロ−1−フェニルエチル基、2−クロロ−1−(4−クロロフェニル)エチル基、又は1−(4−フルオロフェニル)エチル基が更に好ましく、2−クロロ−1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチル−1−(4−クロロフェニル)メチル基、1−(4−クロロフェニル)エチル基、2−クロロ−1−フェニルエチル基、2−クロロ−1−(4−クロロフェニル)エチル基、又は1−(4−フルオロフェニル)エチル基が特に好ましい。
一般式(1)中、R2の表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はシアノ基が挙げられる。一般式(1)中、R2の表す炭素原子数3以上14以下の複素環基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はシアノ基が挙げられる。
一般式(1)中、R1は、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有してもよい炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表すことが好ましい。このような炭素原子数6以上14以下のアリール基又は炭素原子数1以上5以下のアルキル基は、1又は複数のハロゲン原子で置換されることが好ましい。2つのR1は、互いに同一であることが好ましい。R2は、水素原子を表すことが好ましい。2つのR2は、互いに同一であることが好ましい。
一般式(1)中、2つのR1が表す第一基の有するハロゲン原子の数と、2つのR2が表す第一基の有するハロゲン原子の数との総数は、感光体の感度特性を更に向上させる観点及び転写メモリーの発生を更に抑制する観点から、4以上であることが好ましい。
キノン誘導体(1)の具体例としては、化学式(1−1)〜(1−7)で表されるキノン誘導体(以下、キノン誘導体(1−1)〜(1−7)と記載することがある)が挙げられる。
[4−2.キノン誘導体(1)の製造方法]
キノン誘導体(1)は、例えば、反応式(R1−1)で表す反応式(以下、反応(R1−1)と記載することがある)、及び反応式(R1−2)で表す反応式(以下、反応(R1−2)と記載することがある)にしたがって又はこれに準ずる方法によって製造される。キノン誘導体(1)の製造方法は、例えば、反応(R1−1)と、反応(R1−2)とを含む。
反応(R1−1)において、R1及びR2は、それぞれ一般式(1)中のR1及びR2と同義である。
反応(R1−1)では、1当量の化学式(A1)で表される化合物(ナフトール誘導体)(以下、ナフトール誘導体(A1)と記載することがある。なお、一般式(1)中、R1が水素原子を表す場合、ナフトール誘導体(A1)はナフトールを示す。)と1当量の一般式(B1)で表される化合物(アルコール誘導体)(以下、アルコール誘導体(B1)と記載することがある)とを溶媒中、濃硫酸の存在下で反応させて、1当量の中間体である一般式(C1)で表される化合物(以下、ナフトール誘導体(C1)と記載することがある)を得る。反応(R1−1)では、1モルのナフトール誘導体(A1)に対して、1モル以上2.5モル以下のアルコール誘導体(B1)を添加することが好ましい。1モルのナフトール誘導体(A1)に対して1モル以上のアルコール誘導体(B1)を添加すると、ナフトール誘導体(C1)の収率を向上させ易い。一方、1モルのナフトール誘導体(A1)に対して2.5モル以下のアルコール誘導体(B1)を添加すると、反応(R1−1)後に未反応のアルコール誘導体(B1)が残留し難く、キノン誘導体(1)の精製が容易となる。反応(R1−1)の反応温度は室温(例えば、25℃)であることが好ましい。反応(R1−1)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(R1−1)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、有機酸水溶液(より具体的には、酢酸等)が挙げられる。
より具体的には、反応(R1−1)では、ナフトール誘導体(A1)とアルコール誘導体(B1)とを反応させる。反応後、反応液にイオン交換水を加え、有機層に抽出する。有機層に含まれる有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、又は酢酸エチルが挙げられる。有機層にアルカリ水溶液で加え、有機層を洗浄し中和する。アルカリとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(より具体的には、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等)、又はアルカリ土類金属の水酸化物(より具体的には、水酸化カルシウム等)が挙げられる。
反応(R1−1)では、アルコール誘導体(B1)から反応中間体としてカルボカチオンが生成すると考えられる。このため、アルコール誘導体(B1)としては、例えば、第三級アルコール又はアリール基を有する第二級アルコールが好ましい。本明細書では、アリール基を有する第二級アルコールとは、ヒドロキシル基が結合した炭素原子にアリール基が結合した第二級アルコールを意味する。このような第二級アルコールは、アリール基により電子が非局在化しカルボカチオンが安定化すると考えられる。
反応(R1−2)において、R1及びR2は、それぞれ一般式(1)中のR1及びR2と同義である。
反応(R1−2)では、2つのR1が互いに同一であり2つのR2が互いに同一である場合、2当量のナフトール誘導体(C1)を酸化剤の存在下で反応して、1当量のキノン誘導体(1)を得る。反応(R1−2)では、1モルのナフトール誘導体(C1)に対して、1モルの酸化剤を添加することが好ましい。酸化剤としては、例えば、クロラニル、過マンガン酸カリウム、又は酸化銀が挙げられる。反応(R1−2)の反応温度は室温(例えば、25℃)であることが好ましい。反応(R1−2)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。溶媒としては、例えば、クロロホルム又はジクロロメタンが挙げられる。
反応(R1−2)では、2つのR1及び2つのR2のうち少なくとも一方が互いに異なる場合、ナフトール誘導体(C1)2当量をナフトール誘導体(C1)1当量とこれと異なるナフトール誘導体(C1)1当量とに変更した以外は、2つのR1が互いに同一であり2つのR2が互いに同一である場合の反応(R−2)と同様にしてキノン誘導体(1)を得る。
キノン誘導体(1)の製造では、必要に応じて他の工程(例えば、精製工程)を含んでもよい。このような工程としては、例えば、精製工程が挙げられる。精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶折等)が挙げられる。
[4−3.ジイミド誘導体(2)]
ジイミド誘導体(2)は、一般式(2)で表される。
一般式(2)中、R3及びR4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基とフェニルカルボニル基との何れかを有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、及び炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基からなる群より選択される第二基を表す。第二基は、1又は複数のハロゲン原子で置換されてもよい。R3及びR4のうち少なくとも一方が1又は複数のハロゲン原子を有する。
一般式(2)中、R3及びR4の表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、フェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はフェニルカルボニル基が挙げられ、塩素原子、メチル基、エチル基、又はフェニルカルボニル基が好ましい。置換基の数は、1以上3以下の整数であることが好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基がフェニル基である場合、フェニル基における置換基の置換位置は、例えば、フェニル基が窒素原子と結合する位置に対して、オルト位(o位)、メタ位(m位)、パラ位(p位)、又はこれらの少なくとも2つが挙げられる。この置換位置は、1つのオルト位及びパラ位、2つのオルト位、又は2つのオルト位及びパラ位が好ましい。置換基を有するフェニル基としては、例えば、4−クロロ−2−フェニルカルボニルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、又は2−エチル−6−メチルフェニル基が挙げられる。
一般式(2)中、R3及びR4の表す炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数7以上9以下のアラルキル基が好ましく、1−フェニルエチル基がより好ましい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はハロゲン原子が挙げられる。ハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル基が挙げられる。
一般式(2)中、R3とR4とが互いに同一であっても異なってもよい。R3とR4とは互いに同一である場合、R3及びR4は、1又は複数のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上9以下のアラルキル基、又はフェニルカルボニル基及びハロゲン原子を各々1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル基又は4−クロロ−2−フェニルカルボニルフェニル基がより好ましい。
一般式(2)中、R3とR4とが互いに異なる場合、R3及びR4のうちの一方が、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、R3及びR4のうちの他方が、1又は複数のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上9以下のアラルキル基、又はフェニルカルボニル基を有してもよく1又は複数のハロゲン原子を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。
一般式(2)中、R3及びR4の表す基は、1又は複数のハロゲン原子で置換されてもよく、R3及びR4のうち少なくとも一方が1又は複数のハロゲン原子を有する。2つのR3が表す第二基の有するハロゲン原子の数と、2つのR4が表す第二基の有するハロゲン原子の数との総数は1以上の整数である。転写メモリーの発生を更に抑制する観点から、総数は1又は2であることが好ましい。
ジイミド誘導体(2)の具体例としては、化学式(2−1)〜(2−6)で表されるジイミド誘導体(以下、ジイミド誘導体(2−1)〜(2−6)と記載することがある)が挙げられる。
[4−4.ジイミド誘導体(2)の製造方法]
[4−4−1.R1とR2とが互いに異なる場合]
一般式(2)中、R3とR4とが互いに異なる場合、ジイミド誘導体(2)は、例えば、反応式(R2−1)で表す反応式、反応式(R2−2)で表す反応式、及び反応式(R2−3)で表す反応式(以下、それぞれ反応(R2−1)、反応(R2−2)及び反応(R2−3)と記載することがある)にしたがって又はこれに準ずる方法によって製造される。ジイミド誘導体(2)の製造方法は、例えば、反応(R2−1)と、反応(R2−2)と、反応(R2−3)とを含む。
反応(R2−1)において、R3は一般式(1)中のR3と同義である。R5は、アルキル基を表し、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。
反応(R2−1)では、1モル当量の一般式(A2)で表される化合物(以下、化合物(A2)と記載することがある)と1モル当量の一般式(B2)で表される化合物(第一級アミン化合物)(以下、化合物(B2)と記載することがある)とを塩基の存在下で反応させて、1モル当量の一般式(C2)で表される化合物(以下、化合物(C2)と記載することがある)を得る。化合物(C2)は中間生成物である。反応(R2−1)では、1モルの化合物(A2)に対して、1モル以上2.5モル以下の化合物(B2)を添加することが好ましい。1モルの化合物(A2)に対して1モル以上の化合物(B2)を添加すると、化合物(C2)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(A2)に対して2.5モル以下の化合物(B2)を添加すると、反応(R2−1)後に未反応の化合物(B2)が残留し難く、化合物(C2)の精製が容易となる。反応(R2−1)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R2−1)の反応時間は1時間以上8時間以下であることが好ましい。反応(R2−1)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ジオキサンが挙げられる。塩基は、化合物(C2)の収率を向上させる観点から、求核性が低いことが好ましい。このような塩基としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が挙げられる。
反応(R2−2)において、R3は一般式(2)中のR3と同義である。反応(R2−2)において、R5は反応(R2−1)におけるR5と同義である。
反応(R2−2)では、1モル当量の化合物(C2)を酸の存在下で反応して、1モル当量の一般式(D2)で表される化合物(以下、化合物(D2)と記載することがある)を得る。化合物(D2)は中間生成物である。反応(R2−2)では、化合物(C2)のエステルが酸存在下で加水分解し、ジカルボン酸となった後、ジカルボン酸が閉環し、無水カルボン酸となる。その結果、化合物(D2)が生成する。反応(R2−2)の反応時間は、5時間以上30時間以下であることが好ましい。反応(R2−2)の反応温度は、70℃以上150℃以下であることが好ましい。酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸が好ましい。酸は、溶媒として機能してもよい。
反応(R2−3)において、R3及びR4は、それぞれ一般式(2)中のR3及びR4と同義である。
反応(R2−3)では、1モル当量の化合物(D2)と、1モル当量の一般式(E2)で表される化合物(第一級アミン化合物)(以下、化合物(E2)と記載することがある)とを塩基の存在下で反応させて、1モル当量のジイミド誘導体(2)を得る。反応(R2−3)では、1モルの化合物(D2)に対して、1モル以上2.5モル以下の化合物(E2)を添加することが好ましい。1モルの化合物(D2)に対して1モル以上の化合物(E2)を添加すると、ジイミド誘導体(2)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(D2)に対して2.5モル以下の化合物(E2)を添加すると、反応(R2−3)後に未反応の化合物(E2)が残留し難く、ジイミド誘導体(2)の精製が容易となる。反応(R2−3)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R2−3)の反応時間は1時間以上8時間以下であることが好ましい。反応(R2−3)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ジオキサンが挙げられる。塩基は、ジイミド誘導体(2)の収率を向上させる観点から、求核性が低いことが好ましい。このような塩基としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が挙げられる。
なお、ジイミド誘導体(2)の製造方法は、反応(R2−1)〜(R2−3)におけるR1を有する第一級アミン及びR2を有する第一級アミンによるイミド化の順番を変更してもよい。ジイミド誘導体(2)は、例えば、反応式(R’2−1)で表す反応式、反応式(R’2−2)で表す反応式、及び反応式(R’2−3)で表す反応式(以下、それぞれ反応(R’2−1)、反応(R’2−2)及び反応(R’2−3)と記載することがある)にしたがって又はこれに準ずる方法によっても製造される。
詳しくは、反応(R’2−1)は、化合物(B2)を化合物(E2)に変更した以外は、反応(R2−1)と同様の反応である。反応(R’2−2)は、化合物(C2)を一般式(C’2)で表される化合物(以下、化合物(C’2)と記載することがある)に変更した以外は、反応(R2−2)と同様の反応である。反応(R’2−3)は、化合物(D2)を一般式(D’2)で表される化合物(以下、化合物(D’2)と記載することがある)に変更し、化合物(E2)を化合物(B2)に変更した以外は、反応(R2−3)と同様の反応である。反応(R’2−1)〜(R’2−3)中、R3、R4、及びR5は、それぞれ反応(R2−1)〜(R2−3)におけるR3、R4、及びR5と同義である。
[4−4−2.R3とR4とが同一である場合]
一般式(2)中、R3とR4とが互いに同一である場合、ジイミド誘導体(2)は、例えば、反応式(R2−4)で表す反応式(以下、反応(R2−4)と記載することがある)にしたがって又はこれに準ずる方法によって製造される。なお、便宜上、反応式(R2−4)では、一般式(2)中のR4をR3に置き換えて示している。ジイミド誘導体(2)の製造方法は、例えば、反応(R2−4)を含む。
反応(R2−4)では、1モル当量の化学式(F2)で表される化合物(以下、化合物(F2)と記載することがある)と、2モル当量の一般式(G2)で表される化合物(第一級アミン化合物)(以下、化合物(G2)と記載することがある)とを塩基の存在下で反応させて、1モル当量のジイミド誘導体(2)を得る。反応(R2−4)では、1モルの化合物(F2)に対して、2モル以上5モル以下の化合物(G2)を添加することが好ましい。1モルの化合物(F2)に対して2モル以上の化合物(G2)を添加すると、ジイミド誘導体(2)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(F2)に対して5モル以下の化合物(G2)を添加すると、反応(R2−4)後に未反応の化合物(G2)が残留し難く、ジイミド誘導体(2)の精製が容易となる。反応(R2−4)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R2−4)の反応時間は1時間以上8時間以下であることが好ましい。反応(R2−4)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ピコリン(メチルピリジン)が挙げられる。塩基は、ジイミド誘導体(2)の収率を向上させる観点から、求核性が低いことが好ましい。このような塩基としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が挙げられる。
ジイミド誘導体(2)の製造方法は、必要に応じて適宜な工程を含んでもよい。このような工程としては、例えば、精製工程が挙げられる。精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶折等)が挙げられる。
感光体が単層型感光体である場合、キノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)の合計した含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上75質量部以下であることが特に好ましい。
感光体が積層型感光体である場合、キノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)の合計した含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
[4−5.別の電子アクセプター化合物、電子輸送剤]
電荷輸送層は、キノン誘導体(1)、ジイミド誘導体(2)、又はキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)に加えて、更に別の電子アクセプター化合物を含有してもよい。単層型感光層は、キノン誘導体(1)、ジイミド誘導体(2)、又はキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)に加えて、更に別の電子輸送剤を含有してもよい。別の電子アクセプター化合物及び電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物(キノン誘導体(1)以外のキノン系化合物)、ジイミド系化合物(ジイミド誘導体(2)以外のジイミド系化合物)、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの電子輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[5.正孔輸送剤]
正孔輸送剤としては、例えば、含窒素環式化合物又は縮合多環式化合物を使用することができる。含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン誘導体(より具体的には、ベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体等)、オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等)、スチリル化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等)、カルバゾール化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、又はトリアゾール系化合物が挙げられる。これらの正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの正孔輸送剤のうち、一般式(HTM)で表される化合物(ベンジジン誘導体、以下、正孔輸送剤(HTM)と記載することがある)が好ましい。
一般式(HTM)中、Q8、Q10、Q11、Q12、Q13、及びQ14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q9及びQ15は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。bは、0以上5以下の整数を表す。bが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ9は、互いに同一でも異なっていてもよい。cは、0以上4以下の整数を表す。cが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ15は、互いに同一でも異なっていてもよい。kは、0又は1を表す。
一般式(HTM)中、Q8、Q10、Q11、Q12、Q13、及びQ14は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子、メチル基、又はエチル基を表すことが好ましい。kは0を表すことが好ましい。b及びcは0を表すことが好ましい。
正孔輸送剤(HTM)としては、例えば、化学式(HTM1)で表される正孔輸送剤(以下、正孔輸送剤(HTM1)と記載することがある)が挙げられる。
感光体が単層型感光体である場合、正孔輸送剤の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上75質量部以下であることが特に好ましい。
感光体が積層型感光体である場合、正孔輸送剤の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
[6.電荷発生剤]
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、電荷発生剤を含有してもよい。感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、電荷発生剤を含有してもよい。
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(より具体的には、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、又はアモルファスシリコン等)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、化学式(CGM−1)で表されるチタニルフタロシアニン(以下、電荷発生剤(CGM−1)と記載することがある)又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(CGM−2)で表される無金属フタロシアニン(以下、電荷発生剤(CGM−2)と記載することがある)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、X型、α型、β型、Y型、V型、又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、又はY型結晶(以下、それぞれα型チタニルフタロシアニン、β型チタニルフタロシアニン、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。クロロガリウムフタロシアニンの結晶としては、クロロガリウムフタロシアニンのII型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましい。感光層がキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する場合に感光体の電気特性を特に向上させるためには、電荷発生剤としては、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
(CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法)
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
短波長レーザー光源を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。短波長レーザー光の波長は、例えば、350nm以上550nm以下である。
感光体が単層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、電荷発生層に含有されるベース樹脂100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
[7.バインダー樹脂]
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(より具体的には、エポキシ化合物のアクリル酸誘導体付加物等)又はウレタン−アクリル酸系樹脂(ウレタン化合物のアクリル酸誘導体付加物)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的強度、光学的特性及び耐摩耗性のバランスに優れた単層型感光層及び電荷輸送層が得られることから、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好ましい。更にキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)との相溶性が良好であり、キノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)の感光層中での分散性が向上する観点から、一般式(3)で表される繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(3)と記載することがある)又は一般式(4)で表される繰返し単位を有するポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(4)と記載することがある)がより好ましい。
一般式(3)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。R11とR12とは、互いに結合して形成されるシクロアルキリデン基を表してもよい。R11とR12とは、互いに同一であっても異なってもよい。R13及びR14は、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表す。R13とR14とは、互いに同一であっても異なってもよい。
一般式(4)中、R15及びR16は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。R15とR16とは、互いに結合して形成されるシクロアルキリデン基を表してもよい。R15とR16とは、互いに同一であっても異なってもよい。R17及びR18は、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表す。R17とR18は、互いに同一であっても異なってもよい。
一般式(3)中、R11及びR12の表すハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R11とR12とが互いに結合して形成されるシクロアルキリデン基は、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基が好ましく、シクロヘキシリデン基がより好ましい。一般式(3)中、R11及びR12は、水素原子若しくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すこと、又は互いに結合して形成される炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表すことが好ましい。R11及びR12は、水素原子若しくはメチル基を表すこと、又は互いに結合して形成されるシクロヘキシリデン基を表すことがより好ましい。
一般式(3)中、R13及びR14の表すハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、ハロゲン原子を有してもよいメチル基が好ましく、メチル基又はフッ化メチル基がより好ましく、メチル基又はトリフルオロメチル基が更に好ましい。一般式(3)中、R13及びR14は、水素原子又はハロゲン原子を有してもよいメチル基を表すことが好ましく、水素原子又はフッ化メチル基を表すことがより好ましく、水素原子又はトリフルオロメチル基を表すことが更に好ましい。R13及びR14は互いに同一であることが好ましい。感光体の耐フィルミング性を更に向上させる観点から、一般式(3)中、R11、R12、R13、及びR14のうち少なくとも1つが、1又は複数のハロゲン原子を有することが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(3)としては、例えば、化学式(PC−1)、化学式(PC−2)、化学式(PC−3)、化学式(PC−4)、又は化学式(PC−5)で表される繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、それぞれポリカーボネート樹脂(PC−1)〜(PC−5)と記載することがある)が挙げられる。
一般式(4)中、R15及びR16の表すハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R17及びR18の表すハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(4)中、R15及びR16は、水素原子又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又はメチル基を表すことがより好ましい。R15とR16とは、互いに異なることが好ましい。R17及びR18は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。R17とR18とは互いに同一であることが好ましい。感光体の耐フィルミング性を更に向上させる観点から、一般式(4)中、R15、R16、R17、及びR18のうち少なくとも1つが、1又は複数のハロゲン原子を有することが好ましい。2つのカルボニル基の置換位置は、2つのカルボニル基を有しているベンゼン環上で、互いにオルト位(o位)、メタ位(m位)、又はパラ位(p位)の関係である。
ポリアリレート樹脂(4)としては、例えば、化学式(PAR−1)で表される繰返し単位を有するポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(PAR−1)と記載することがある)が挙げられる。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、40,000以上であることが好ましく、40,000以上51,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が40,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。バインダー樹脂の粘度平均分子量が51,000以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、電荷輸送層用塗布液又は単層型感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、電荷輸送層又は単層型感光層を形成し易くなる。
[8.フィラー粒子]
フィラー粒子は、シリカ粒子又は樹脂粒子である。樹脂粒子の樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PFS樹脂と記載することがある)、又はポリテトラフロオロエチレン樹脂(以下、PTFE樹脂と記載することがある)が挙げられる。樹脂粒子は、ハロゲン原子(より具体的には、フッ素原子等)を含むことが好ましい。フィラー粒子は導電性を有しないことが好ましい。フィラー粒子が導電性を有すると、感光層の表面を均質に帯電しにくくなるからである。
フィラー粒子の体積中位径D50は、5nm以上10μm以下であることが好ましい。フィラー粒子の体積中位径D50は、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチタイザー3」)を用いて測定される。なお、体積中位径D50はコールターカウンター法を用いて体積基準で算出されたメディアン径を意味する。
フィラー粒子の含有量は、単層型感光層又は電荷輸送層中のバインダー樹脂100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
[9.ベース樹脂]
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、ベース樹脂を含有する。ベース樹脂は、感光体に適用できるベース樹脂である限り、特に制限されない。ベース樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、アクリル酸系樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(より具体的には、エポキシ化合物のアクリル酸誘導体付加物等)又はウレタン−アクリル酸系樹脂(より具体的には、ウレタン化合物のアクリル酸誘導体付加物等)が挙げられる。ベース樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電荷発生層に含有されるベース樹脂は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂とは異なることが好ましい。電荷輸送層用塗布液の溶剤に電荷発生層を溶解させないためである。積層型感光体の製造では、導電性基体上に電荷発生層を形成し、電荷発生層上に電荷輸送層を形成することが一般的である。電荷輸送層を形成する際に、電荷発生層上に電荷輸送層用塗布液を塗布するからである。
[10.添加剤]
感光体の感光層(電荷発生層、電荷輸送層、又は単層型感光層)は、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤、又は紫外線吸収剤等)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、又はレベリング剤が挙げられる。
[11.中間層]
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、又は銅等)の粒子、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛等)の粒子、又は非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、感光層の添加剤と同様である。
[12.感光体の製造方法]
次に、感光体が単層型感光体である場合、単層型感光体は、例えば、単層型感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。単層型感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤としてのキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)よりなる群から選択される少なくとも1種と、バインダー樹脂と、フィラー粒子と、必要に応じて添加される添加剤とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
感光体が積層型感光体である場合、積層型感光体は、例えば、以下のように製造される。まず、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、電荷発生層を形成する。続いて、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、乾燥することによって、電荷輸送層を形成する。これにより、積層型感光体が製造される。
電荷発生層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、ベース樹脂と、必要に応じて添加される添加剤とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、電子アクセプター化合物としてのキノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)より成る群から選択される少なくとも1種と、バインダー樹脂と、フィラー粒子と、必要に応じて添加される添加剤とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液又は単層型感光層用塗布液(以下、塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散機を用いることができる。
塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
以上、第一実施形態に係る感光体について説明した。第一実施形態の感光体によれば、耐フィルミング性に優れ、転写メモリーの発生を抑制することができる。
<第二実施形態:画像形成装置>
第二実施形態は画像形成装置に関する。以下、図3を参照して第二実施形態に係る画像形成装置の一態様について説明する。図3は、第二実施形態に係る画像形成装置の一例を示す図である。第二実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成ユニット40を備える。画像形成ユニット40は、像担持体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。像担持体30は、第一実施形態に係る感光体である。帯電部42は、像担持体30の表面を帯電する。帯電部42の帯電極性は、正極性である。露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光して、像担持体30の表面に静電潜像を形成する。現像部46は、現像剤を用いて静電潜像をトナー像として現像する。転写部48は、像担持体30の表面と記録媒体Pとが接触しながら、トナー像を像担持体30から記録媒体Pへ転写する。以上、第二実施形態に係る画像形成装置の概要を記載した。
第二実施形態に係る画像形成装置100は、フィルミング及び転写メモリーの発生に起因する画像不良を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、耐フィルミング性に優れ、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、フィルミング及び転写メモリーの発生に起因する画像不良を抑制することができる。以下、転写メモリーの発生の抑制について詳細に説明する。
まず、便宜上、転写メモリーに起因する画像不良について説明する。上述のように画像形成プロセスで転写メモリーが発生すると、画像形成における感光体の周を基準としたときに(以下、基準周と記載することがある)、像担持体30の表面において基準周の次の周の帯電工程で所望の電位が得られない領域は、基準周の次の周の帯電工程で所望の電位が得られる領域に比べ、電位が低下する傾向にある。具体的には、像担持体30の表面における基準周の非露光領域は、基準周の露光領域に比べ、基準周の次の周の帯電時に電位が低下する傾向にある。このため、基準周の非露光領域は、基準周の露光領域に比べ、帯電時の電位が低下し易いため、現像時に正帯電トナーを引き付け易くなる。その結果、基準周の非画像部(非露光領域)を反映した画像が形成され易い。このような基準周の画像部を反映した画像が形成される画像不良が、転写メモリーに起因して発生する画像不良(以下、画像ゴーストと記載することがある)である。
図4を参照して、画像不良が発生した画像を説明する。図4は、画像ゴーストが発生した画像60を示す図である。画像60は、領域62及び領域64を含む。領域62は像担持体1周分に相当する領域であり、領域64も像担持体1周分に相当する領域である。領域62は画像66を含む。画像66は、ドーナツ型のソリッド画像から構成される。領域64は画像68及び画像69を含む。画像68は、ドーナツ型のハーフトーン画像である。画像69は、領域64におけるドーナツ型の白抜きのハーフトーン画像である。画像69は、画像68に比べ画像濃度が濃い。画像69は、領域62の非露光領域を反映し、設計画像濃度より濃くなった画像不良(画像ゴースト)である。なお、領域64の画像は、設計画像上全面ハーフトーン画像から構成される。
第一実施形態に係る感光体は、上述のように転写メモリーに起因する画像不良の発生を抑制する傾向にある。したがって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備えるため、転写メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができると考えられる。
以下、各部について詳細に説明する。図3を参照して第二実施形態に係る画像形成装置100を説明する。画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置100は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置100がカラー画像形成装置である場合、画像形成装置100は、例えば、タンデム方式を採用する。以下、タンデム方式の画像形成装置100を例に挙げて説明する。
画像形成装置100は、直接転写方式を採用する。通常、直接転写方式を採用する画像形成装置では、像担持体30が転写バイアスの影響を受けやすいため、通常、転写メモリーが発生し易い。また、通常、直接転写方式を採用する画像形成装置では、像担持体30の表面が記録媒体Pに接触することがあるため、像担持体30の表面に微小な成分が付着し易く、フィルミングに起因する画像不良が発生し易い。しかし、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、耐フィルミング性に優れ、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備えると、画像形成装置100が直接転写方式を採用する場合であっても、フィルミング及び転写メモリーに起因する画像不良の発生を抑制できると考えられる。
画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト50と、定着部54とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
画像形成ユニット40は、更にクリーニング部52を備えることができる。クリーニング部52はクリーニングブレードである。画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体30が設けられる。像担持体30は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体30の周囲には、帯電部42を基準として像担持体30の回転方向の上流側から順に、帯電部42、露光部44、現像部46、転写部48、及びクリーニング部52が設けられる。なお、画像形成ユニット40には、除電部(不図示)が更に備えられてもよい。
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。なお、画像形成装置100がモノクロ画像形成装置である場合には、画像形成装置100は、画像形成ユニット40aを備え、画像形成ユニット40b〜40dは省略される。
帯電部42は、帯電ローラーである。帯電ローラーは、像担持体30の表面と接触しながら像担持体30の表面を帯電する。通常、帯電ローラーを備える画像形成装置では、フィルミング及び転写メモリーに起因する画像不良が生じ易い。しかし、第一実施形態に係る感光体は、像担持体30として画像形成装置100に備えられる。第一実施形態に係る感光体は、耐フィルミング性に優れ、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、帯電部42として帯電ローラーは画像形成装置100に備えられる場合であっても、フィルミング及び転写メモリーの発生に起因する画像不良の発生が抑制される。他の接触帯電方式の帯電部としては、例えば、帯電ブラシが挙げられる。帯電部42は、非接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部としては、例えば、コロトロン帯電部、又はスクロトロン帯電部が挙げられる。
帯電部42が印加する電圧は、特に限定されない。帯電部42が印加する電圧としては、直流電圧、交流電圧、又は重畳電圧(直流電圧に交流電圧が重畳した電圧)が挙げられ、より好ましくは直流電圧が挙げられる。直流電圧は交流電圧又は重畳電圧に比べ、以下に示す優位性がある。帯電部42が直流電圧のみを印加すると、像担持体30に印加される電圧値が一定であるため、像担持体30の表面を一様に一定電位まで帯電させ易い。また、帯電部42が直流電圧のみを印加すると、感光層の磨耗量が減少する傾向がある。その結果、好適な画像を形成することができる。
露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光する。これにより、像担持体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、現像剤を用いて静電潜像をトナー像として現像する。現像剤は一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよい。現像剤は、重合トナーを含んでもよい。通常、現像剤が重合トナーを含むと、画像形成後の感光体の表面に残留した重合トナーはクリーニング部(例えば、クリーニングブレード)によって除去されにくい。かかる場合、感光体の表面に微小な成分が付着し、フィルミングが生じ易い。しかし、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、耐フィルミング性に優れる。このため、第二実施形態に係る画像形成装置100は、現像剤が重合トナーを含む場合であっても、フィルミングに起因する画像不良を抑制することができる。
転写ベルト50は、像担持体と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、像担持体の表面から記録媒体Pへ転写する。像担持体から記録媒体Pにトナー像が転写されるときに、像担持体は記録媒体Pと接触している。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。
定着部54は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部54は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
以上、第二実施形態に係る画像形成装置を説明した。第二実施形態に係る画像形成装置は、像担持体として第一実施形態に係る感光体を備えることで、画像不良の発生を抑制することができる。
<第三実施形態:プロセスカートリッジ>
第三実施形態はプロセスカートリッジに関する。第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、第一実施形態に係る感光体1を備える。引き続き、図3を参照して、第三実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
プロセスカートリッジは、ユニット化された像担持体を備える。プロセスカートリッジは、像担持体30に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46、転写部48、及びクリーニング部52からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成が採用される。プロセスカートリッジは、例えば、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジには、除電器(不図示)が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、像担持体30の感度特性等が劣化した場合に、像担持体30を含めて容易かつ迅速に交換することができる。
以上、第三実施形態に係るプロセスカートリッジを説明した。第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、像担持体として第一実施形態に係る感光体を備えることで、フィルミング及び転写メモリーの発生に起因する画像不良の発生を抑制することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.感光体の材料>
単層型感光体の単層型感光層を形成するための材料として、以下の電子輸送剤、正孔輸送剤、電荷発生剤、バインダー樹脂、及びフィラー粒子を準備した。
[1−1.電子輸送剤]
電子輸送剤として、キノン誘導体(1−1)〜(1−4)及び(1−6)を準備した。キノン誘導体(1−1)〜(1−4)及び(1−6)は、それぞれ以下の方法で製造した。
[1−1−1.キノン誘導体(1−1)の製造]
反応式(r1−1)及び反応式(r1−2)で表される反応(以下、それぞれ反応(r1−1)及び(r1−2)と記載することがある)にしたがってキノン誘導体(1−1)を製造した。
反応(r1−1)では、ナフトール誘導体(A1−1)(1−ナフトール)とアルコール誘導体(B1−1)とを反応させて、中間生成物であるナフトール誘導体(C1−1)を得た。詳しくは、ナフトール誘導体(A1−1)1.44g(0.010モル)と、アルコール誘導体(B1−1)1.57g(0.010モル)と、酢酸30mLとをフラスコに投入し、酢酸溶液を調製した。フラスコ内容物に濃硫酸0.98g(0.010モル)を滴下し、室温で8時間攪拌した。フラスコ内容物にイオン交換水及びクロロホルムを加え有機層を得た。有機層を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、中和した。続けて、有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、有機層を乾燥させた。乾燥させた有機層を減圧留去し、ナフトール誘導体(C1−1)を含む粗生成物を得た。
反応(r1−2)では、ナフトール誘導体(C1−1)を酸化反応させて、キノン誘導体(1−1)を得た。詳しくは、ナフトール誘導体(C1−1)を含む粗生成物と、クロロホルム100mLとをフラスコに投入し、クロロホルム溶液を調製した。フラスコ内容物にクロラニル2.46g(0.010モル)を加え、室温で8時間攪拌した。続けて、フラスコ内容物をろ過し、ろ液を得た。得られたろ液の溶媒を留去し、残渣を得た。展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりで得られた残渣を精製した。これにより、キノン誘導体(1−1)を得た。キノン誘導体(1−1)の収量は、1.68gであり、ナフトール誘導体(A1−1)からのキノン誘導体(1−1)の収率は、60モル%であった。
[1−1−2.キノン誘導体(1−2)〜(1−4)及び(1−6)の製造]
以下の点を変更した以外は、キノン誘導体(1−1)の製造と同様の方法で、キノン誘導体(1−2)〜(1−4)及び(1−6)をそれぞれ製造した。なお、キノン誘導体(1−2)〜(1−4)及び(1−6)の製造において各原料は、キノン誘導体(1−1)の製造において対応する原料のモル数と同じモル数で添加した。
表1に反応(r1−1)におけるナフトール誘導体(A1)、アルコール誘導体(B1)、及びナフトール誘導体(C1)を示す。表1中、ナフトール誘導体(A1)欄のA1−1は、ナフトール誘導体(A1−1)を示す。アルコール誘導体(B)欄のB1−1〜B1−4及びB1−6は、それぞれアルコール誘導体(B1−1)〜(B1−4)及び(B1−6)を示す。ナフトール誘導体(C)欄のC1−1〜C1−4及びC1−6は、それぞれナフトール誘導体(C1−1)〜(C1−4)及び(C1−6)を示す。
反応(r1−1)で使用するアルコール誘導体(B1−1)をアルコール誘導体(B1−2)〜(B1−4)及び(B1−6)の何れかに変更した。それらの結果、反応(r1−1)では、ナフトール誘導体(C1−1)の代わりに、それぞれナフトール誘導体(C1−2)〜(C1−4)及び(C1−6)を含む粗生成物が得られた。
表1に反応(r1−2)におけるナフトール誘導体(C1)、及びキノン誘導体(1)を示す。表1中、キノン誘導体(1)欄の1−1〜1−4及び1−6は、それぞれキノン誘導体(1−1)〜(1−4)及び(1−6)を示す。反応(r1−2)で使用するナフトール誘導体(C1−1)を含む粗生成物をナフトール誘導体(C1−2)〜(C1−4)及び(C1−6)の何れかを含む粗生成物に変更した。それらの結果、反応(r1−2)では、キノン誘導体(1−1)の代わりに、それぞれキノン誘導体(1−2)〜(1−4)及び(1−6)が得られた。
表1にキノン誘導体(1)の収量及び収率を示す。なお、表1中、アルコール誘導体(B1−2)〜(B1−4)及び(B1−6)は、それぞれ下記化学式(B1−2)〜(B1−4)及び(B1−6)で表される。また、ナフトール誘導体(C1−2)〜(C1−4)及び(C1−6)は、それぞれ下記化学式(C1−2)〜(C1−4)及び(C1−6)で表される。
ジイミド誘導体(2−1)〜(2−4)及び(2−6)を準備した。ジイミド誘導体(2−1)〜(2−4)及び(2−6)は、それぞれ以下の方法で製造した。
[1−1−3.ジイミド誘導体(2−1)の製造]
反応式(r2−4)で表される反応(以下、反応(r2−4)と記載することがある)にしたがってジイミド誘導体(2−1)を製造した。
反応(r2−4)では、化合物(F2−1)(ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物)2.68g(10ミリモル)と、化学式(G2−1)で表される化合物4.64g(20ミリモル)と、ピコリン50mLとをフラスコに投入し、ピコリン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して4時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、イオン交換水をフラスコに投入し、クロロホルムで抽出した。有機層の溶媒(ピコリン)を除去し、残渣を得た。得られた残渣を展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、ジイミド誘導体(2−1)を得た。ジイミド誘導体(2−1)の収量は4.16gであり、反応(r2−4)における化合物(F2−1)からのジイミド誘導体(2−1)の収率は60モル%であった。
[1−1−4.ジイミド誘導体(2−5)の製造]
以下の点を変更した以外は、ジイミド誘導体(2−1)の製造と同様の方法で、ジイミド誘導体(2−5)を製造した。なお、ジイミド誘導体(2−5)の製造において使用される各原料は、ジイミド誘導体(2−1)の製造において対応する原料のモル数と同じモル数で添加した。
ジイミド誘導体(2−5)の製造では、反応(r2−4)で使用した化合物(G2−1)を化合物(G2−5)に変更した。その結果、ジイミド誘導体(2−1)の代わりに、ジイミド誘導体(2−5)を得た。表2に反応(r2−4)における化合物(F2)、化合物(G2)、及びジイミド誘導体(2)を示す。表2中、F2−1は化合物(F2−1)を示す。G2−1は化合物(G2−1)を示し、G2−5は化合物(G2−5)を示す。
表2にジイミド誘導体(2)の収量及び収率を示す。なお、化合物(G2−5)は、化学式(G2−5)で表される。
[1−1−5.ジイミド誘導体(2−2)の製造]
反応式(r’2−1)、(r’2−2)及び(r’2−3)で表される反応(以下、それぞれ反応(r'2−1)、反応(r’2−2)、及び反応(r'2−3)と記載することがある)にしたがってジイミド誘導体(2−2)を製造した。
反応(r’2−1)では、化合物(A2−2)3.42g(10ミリモル)と、化合物(E2−2)1.35g(10ミリモル)と、N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.3g(10ミリモル)と、ジオキサン50mLとをフラスコに投入し、ジオキサン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して2時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、ジオキサンを除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン(体積比V/V=1/2)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化学式(C’2−2)で表される中間生成物(以下、化合物(C’2−2)と記載することがある)を得た。
反応(r’2−2)では、化合物(C’2−2)と、トリフルオロ酢酸15mLとをフラスコに投入し、トリフルオロ酢酸溶液を調製した。化合物(C’2−2)は、反応(r’2−1)で得られた全量を反応(r’2−2)で使用した。フラスコ内容物の温度を80℃に昇温し、80℃に維持して24時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、トリフルオロ酢酸を除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン(体積比V/V=1/4)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化学式(D’2−2)で表される中間生成物(以下、化合物(D'2−2)と記載することがある)を得た。
反応(r’2−3)では、化合物(D’2−2)と、化学式(B2−2)で表される化合物2.32g(10ミリモル)と、N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.3g(10ミリモル)と、ジオキサン50mLとをフラスコに投入し、ジオキサン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して2時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、ジオキサンを除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチルを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、ジイミド誘導体(2−2)を得た。ジイミド誘導体(2−2)の収量は2.69gであり、反応(r’2−1)〜(r’2−3)における化合物(A2−2)からのジイミド誘導体(2−2)の収率は45モル%であった。
[1−1−6.ジイミド誘導体(2−3)及び(2−6)の製造]
以下の点を変更した以外は、ジイミド誘導体(2−2)の製造と同様の方法で、ジイミド誘導体(2−3)及び(1−6)をそれぞれ製造した。なお、ジイミド誘導体(2−3)及び(2−6)の合成において使用される各原料は、ジイミド誘導体(2−2)の製造において対応する原料のモル数と同じモル数で添加した。
ジイミド誘導体(2−3)及び(2−6)の製造では、反応(r'2−3)で使用した化合物(B2−2)をそれぞれ化合物(B2−3)及び(B2−6)に変更した。それらの結果、ジイミド誘導体(2−2)の代わりに、それぞれジイミド誘導体(2−3)及び(2−6)を得た。表3に反応(r’2−1)〜(r’2−3)における化合物(A2)、化合物(D’2)、化合物(B2)、及びジイミド誘導体(2)を示す。
表3にジイミド誘導体(2)の収量及び収率を示す。なお、化合物(B2−3)及び(B2−6)は、それぞれ下記化学式(B2−3)及び(B2−6)で表される。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、製造したキノン誘導体(1−1)〜(1−4)及び(1−6)並びにジイミド誘導体(2−1)〜(2−3)及び(2−5)〜(2−6)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうちキノン誘導体(1−1)及びジイミド誘導体(2−1)を代表例として挙げる。図5及び図6は、それぞれキノン誘導体(1−1)及びジイミド誘導体(2−1)の1H−NMRスペクトルを示す。図5及び図6中、縦軸は信号強度(単位:任意単位)を示し、横軸は化学シフト(単位:ppm)を示す。以下に、キノン誘導体(1−1)及びジイミド誘導体(2−1)の化学シフト値を示す。
キノン誘導体(1−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.30(d, 2H), 7.18−7.74(m, 16H), 4.57(q, 2H), 1.50(d, 6H).
ジイミド誘導体(2−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.70(d, 4H), 7.62−7.75(m, 8H), 7.36−7.55(m, 8H).
1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、キノン誘導体(1−1)及びジイミド誘導体(2−1)が得られていることを確認した。他のキノン誘導体(1−2)〜(1−4)及び(1−6)、並びにジイミド誘導体(2−2)〜(2−3)及び(2−5)〜(2−6)も同様にして、1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、それぞれキノン誘導体(1−2)〜(1−4)及び(1−6)、並びにジイミド誘導体(2−2)〜(2−3)及び(2−5)〜(2−6)が得られていることを確認した。
[1−1−7.化合物(ET−1)〜(ET−3)の準備]
電子輸送剤として、化学式(ET−1)〜(ET−4)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(ET−1)〜(ET−4)と記載することがある)を準備した。
[1−2.正孔輸送剤]
正孔輸送剤として、第一実施形態で説明した正孔輸送剤(HTM1)を準備した。
[1−3.電荷発生剤]
第一実施形態で説明した電荷発生剤(CGM−1)及び(CGM−2)を準備した。電荷発生剤(CGM−1)は、化学式(CGM−1)で表されるチタニルフタロシアニン(Y型チタニルフタロシアニン)であった。また、電荷発生剤(CGM−1)の結晶構造はY型であった。
電荷発生剤(CGM−2)は、化学式(CGM−2)で表される無金属フタロシアニン(X型無金属フタロシアニン)であった。また、電荷発生剤(CGM−2)の結晶構造はX型であった。
[1−4.バインダー樹脂]
バインダー樹脂として第一実施形態で説明したポリカーボネート樹脂(PC−1)〜(PC−5)(粘度平均分子量はそれぞれ40,000、45,500、51,000、48,500及び49,000であった。)及びポリアリレート樹脂(PAR−1)(粘度平均分子量50,000)を準備した。
[1−5.フィラー粒子]
表4に実施例及び比較例で使用したフィラー粒子を示す。表4はフィラー粒子の種類、材質、体積中位径、商品名、及び製造元を示す。なお、表4の欄「商品名」における「AEROSIL」及び「トレパール」は登録商標である。表4中、フィラー粒子の体積中位径D50は、第一実施形態で説明した精密粒度分布測定装置を用いて測定した。
<2.単層型感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(A−1)〜(A−28)及び感光体(B−1)〜(B−6)を製造した。
[2−1.感光体(A−1)の製造]
電荷発生剤(CGM−1)3質量部、正孔輸送剤としての化合物(HTM1)60質量部、電子輸送剤としてのキノン誘導体(1−1)40質量部、フィラー粒子F7:5質量部、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(PC−1)100質量部、及び溶剤としてのテトラヒドロフラン800質量部を容器内に投入した。棒状音波発振子を用いて、容器内の材料と溶剤とを2分間混合させ、材料を溶剤に分散させた。更にボールミルを用いて、容器内の材料と溶媒とを50時間混合して、材料を溶剤に分散させた。これにより、単層型感光層用塗布液を得た。単層型感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した単層型感光層用塗布液を、100℃で40分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層型感光層(膜厚25μm)を形成した。その結果、単層型感光体(A−1)が得られた。
[2−2.感光体(A−2)〜(A−28)及び感光体(B−1)〜(B−6)の製造]
以下の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様の方法で、感光体(A−2)〜(A−28)及び感光体(B−1)〜(B−6)をそれぞれ製造した。感光体(A−1)の製造に用いた電荷発生剤(CGM−1)を、表5〜7に示す種類の電荷発生剤に変更した。感光体(A−1)の製造に用いた電子輸送剤としてのキノン誘導体(1−1)40質量部を、表5〜7に示す電子輸送剤の種類及び含有量に変更した。感光体(A−1)の製造に用いたフィラー粒子F7:5質量部を、表5〜7に示す種類のフィラー粒子の種類及び含有量に変更した。感光体(A−1)の製造に用いたバインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(PC−1)を、表5〜7に示す種類のバインダー樹脂に変更した。なお、表5〜7に感光体(A−1)〜(A−28)及び感光体(B−1)〜(B−6)の構成を示す。表5〜7中、CGM、HTM、及びETMは、それぞれ電荷発生剤、正孔輸送剤、及び電子輸送剤を示す。表5〜7中、CGM欄のCGM−1及びCGM−2は、それぞれY型チタニルフタロシアニン(電荷発生剤(CGM−1))及びX型無金属フタロシアニン(電荷発生剤(CGM−2))を示す。HTM欄のH−1は化合物(HTM1)を示す。ETM欄の1−1〜1−4及び1−6、2−1〜2−3及び2−5〜2−6、並びにET−1〜ET−3は、それぞれキノン誘導体(1−1)〜(1−4)及び(1−6)、ジイミド誘導体(2−1)〜(2−3)及び(2−5)〜(2−6)、並びに化合物(ET−1)〜(ET−3)を示す。表5〜7中、フィラー粒子の種類欄のF1、F3〜F4、F6〜F7、及びF9〜F11は、それぞれフィラー粒子F1、F3〜F4、F6〜F7、及びF9〜F11を示す。表5〜7中、バインダーの種類欄のPC−1〜PC−5及びPAR−1は、ぞれぞれポリカーボネート樹脂(PC−1)〜(PC−5)及びポリアリレート樹脂(PAR−1)を示す。
<3.感光体の評価>
[3−1.単層型感光体の感度特性の評価]
製造した単層型感光体(A−1)〜(A−28)及び単層型感光体(B−1)〜(B−6)のそれぞれに対して、電気特性(感度特性)を評価した。電気特性の評価は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で行った。
ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、単層型感光体の表面を正極性に帯電させた。帯電条件を、単層層型感光体の回転数31rpmに設定した。帯電直後の単層型感光体の表面電位を+600Vに設定した。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光エネルギー1.5μJ/cm2)を取り出した。取り出された単色光を、単層型感光体の表面に照射した。照射が終了してから0.5秒経過した時の単層型感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、感度電位(VL、単位V)とした。測定された単層型感光体の感度電位(VL)を、表8〜9に示す。なお、感度電位(VL)の絶対値が小さいほど、単層型感光体の感度特性が優れていることを示す。
[3−2.画像不良(画像ゴースト)の評価]
単層型感光体(A−1)〜(A−28)及び単層型感光体(B−1)〜(B−6)のそれぞれに対して、画像不良(画像ゴースト)を評価した。画像不良の評価は、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で行った。
単層型感光体を評価機に装着した。評価機は、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」改造機)を用いた。重合トナー(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「試作品」 一成分現像剤)を評価機の現像部に充填した。この評価機は、接触帯電方式及び直接転写方式を採用していた。この評価機は、接触帯電方式の帯電部として帯電ローラー及びクリーニング部としてクリーニングブレードを備えていた。記録媒体として京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」(A4サイズ)を使用した。
まず、記録媒体に(A4サイズ紙)15秒間隔で印字パターン(画像濃度40%)を1000枚印刷し、印字試験を行った。その後、下記操作により評価用画像を作成した。
図7を参照して、評価用画像を説明する。図7は、評価用画像70を示す図である。評価用画像70は、領域72及び領域74を含む。領域72は、像担持体1周分に相当する領域である。領域72は、画像76を含む。画像76は、ドーナツ型のソリッド画像(画像濃度100%)から構成される。このソリッド画像は、2つの同心円1組から構成される。領域74は、像担持体1周分に相当する領域である。領域74は画像78を含む。画像78は、全面ハーフトーン画像(画像濃度40%)から構成される。はじめに領域72の画像76を形成し、その後、領域74の画像78を形成した。画像76は感光体1周分に相当する画像であり、画像78は画像76を形成する周を基準として次周回1周分に相当する画像である。
次いで、印字試験後に得られた画像を評価用画像とした。評価用画像を目視で観察し、領域74における画像76に対応した画像の有無を確認した。ここで、目視による観察とは、肉眼での観察(肉眼観察)又はルーペ(倍率10倍、TRUSCO社製、TL−SL10K)を介した観察(ルーペ観察)である。転写メモリーに起因する画像不良(画像ゴースト)の発生の有無を確認した。画像ゴーストの発生の有無は、下記の基準に基づいて評価した。得られた評価結果を表8〜9に示す。なお、評価A〜Cを合格とした。
(画像ゴーストの評価基準)
評価A:画像76に対応する画像ゴーストが観察されなかった。
評価B:画像76に対応する画像ゴーストがわずかに観察された。
評価C:画像76に対応する画像ゴーストが観察されたが、実用上問題のない水準であった。
評価D:画像76に対応する画像ゴーストが明確に観察され、実用上問題のある水準であった。画像評価用サンプルにおいて観測された画像ゴーストと、画像ゴーストが観測されなかった非画像部とのコントラストが低かった。
[3−3.単層型感光体の耐フィルミング性の評価]
単層型感光体(A−1)〜(A−28)及び単層型感光体(B−1)〜(B−6)のそれぞれに対して、耐フィルミング性を評価した。耐フィルミング性の評価は、温度10℃及び相対湿度15%RHの環境下で行った。評価機は、画像不良の評価で用いた画像形成装置を同じものを用いた。
まず、印字試験を行った。詳しくは、記録媒体に(A4サイズ紙)15秒間隔で印字パターン(画像濃度1%)を5000枚印刷した。印字試験後、評価用画像を作成した。詳しくは、ハーフトーン画像(画像濃度50%)を1枚印刷し、評価用画像とした。評価用画像を目視で観察し、フィルミングに起因する画像不良(筋、ダッシュマーク)の有無を確認した。筋とは、印刷方向に平行な線である。ダッシュマークとは、印刷方向に平行な線状の筋である。画像不良の有無は、下記の基準に基づいて評価した。得られた評価結果を表8〜9に示す。なお、評価A〜Cを合格とした。
(耐フィルミング性の評価基準)
評価A:筋、ダッシュマークは観察されなかった。
評価B:筋、ダッシュマークはわずかに観察された。
評価C:筋、ダッシュマークが部分的に観察されたが、実用上問題のない水準であった。
評価D:筋、ダッシュマークが全体的に明確に観察され、実用上問題のある水準であった。
[総合評価]
転写メモリーの評価結果及び耐フィルミング性の評価結果から、下記の基準に基づいて感光体の総合評価を行った。
評価A:転写メモリーの評価結果及び耐フィルミング性の評価結果が評価C〜Dでなく、評価A又は評価Bであった。
評価B:転写メモリーの評価結果及び耐フィルミング性の評価結果が
評価Dでなく、これらの評価結果少なくとも一方の評価結果が評価Cであった。
評価C:転写メモリーの評価結果及び耐フィルミング性の評価結果のうち少なくとも一方の評価結果が評価Dであった。
表5及び表6に示すように、感光体(A−1)〜(A−28)では、感光層は電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、フィラー粒子と、バインダー樹脂とを含有していた。詳しくは、電子輸送剤は、キノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)のうちの少なくとも1種を含有していた。キノン誘導体(1)は一般式(1)で表される。キノン誘導体(1)は、キノン誘導体(1−1)〜(1−4)及びキノン誘導体(1−6)の何れか1種であった。ジイミド誘導体(2)は、一般式(2)で表される。ジイミド誘導体(2)は、ジイミド誘導体(2−1)〜(2−3)及びジイミド誘導体(2−5)〜(2−6)の何れか1種であった。フィラー粒子は、F1、F3〜F4、F6〜F7、及びF9〜F10のうちの何れか1種であった。
表8及び表9に示すように、感光体(A−1)〜(A−28)では、転写メモリー及び耐フィルミング性の総合評価結果がA又はBであった。
表7に示すように、感光体(B−1)では、感光層は、フィラー粒子を含有していなかった。感光体(B−2)〜(B−5)では、感光層は、電子輸送剤として電子輸送剤(ET−1)〜(ET−4)の何れかを含有していた。電子輸送剤(ET−1)〜(ET−4)は、キノン誘導体(1)及びジイミド誘導体(2)の何れでもなかった。感光体(B−6)では、感光層は、フィラー粒子F11を含有していた。フィラー粒子F11は、シリカ粒子及び樹脂粒子の何れでもなかった。
表9に示すように、感光体(B−1)〜(B−6)では、転写メモリー及び耐フィルミング性の総合評価結果がC又はDであった。
感光体(A−1)〜(A−28)は、感光体(B−1)〜(B−6)に比べ、転写メモリーの発生を抑制し、耐フィルミング性に優れる。