JP2018022132A - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温定着性に優れ、かつ経時的な低温定着性の低下を抑制できるトナーを得ることが可能な静電荷像現像用トナーの製造方法を提供する。【解決手段】非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有するトナー粒子の分散液を冷却する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記冷却する工程が、温度Tu(℃)のトナー粒子の分散液を、水系媒体(W)中に添加して温度Td(℃)まで冷却する操作を含み、温度Tu、温度Td及び、結晶性樹脂(B)の融点Tm(℃)が下記の関係式(a)及び(b)を満たし、Tu− Tm≧ −15 (a)Td− Tm≦ −20 (b)トナー粒子の分散液の添加開始時の水系媒体(W)の温度Twが温度Td以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した静電荷像現像用トナーの開発が求められている。低温での定着性に優れるトナーを得る方法として、従来より結着樹脂として使用されている非晶性樹脂に加えて、結晶性樹脂を使用し、微細な樹脂粒子等を水系媒体中で凝集、融着させてトナーを得る、凝集融着法(乳化凝集法、凝集合一法)によるトナーの製造が行われている。
例えば、特許文献1には、炭素数10以上12以下のα,ω−アルカンジオールを含み平均炭素数が10以上12以下のアルコール成分とコハク酸を含む酸成分とを重縮合して得られる結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステルをコア部分に有し、非晶質ポリエステルをシェル部分に有するコアシェル粒子を凝集融着法で得た後、該コアシェル粒子の分散液を毎分25℃以上50℃以下の冷却速度で冷却させることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法が記載され、印刷物のOHP透過性に優れた静電荷像現像用トナーが得られることが記載されている。
また、特許文献2には、モル平均炭素数が8〜12であるモノマーを用いて得られるポリエステル部分を有する結晶性ポリエステル(A)を含有する樹脂粒子と、ポリエステルセグメント及び付加重合系樹脂セグメントを含み、該付加重合系樹脂セグメント中、3質量%以上15質量%以下の両反応性モノマー由来の構成成分を含む非晶質複合樹脂(B)を含有する樹脂粒子と、を含む凝集体Xを、水系媒体中で得る工程I、及び前記凝集体Xを融着する工程II、を有し、前記結晶性ポリエステル(A)と非晶質複合樹脂(B)の質量比(結晶性ポリエステル(A)/非晶質複合樹脂(B))が1/99〜40/60である、静電荷像現像用トナーの製造方法が記載され、低温定着性と耐熱保存性を両立し、得られた印刷物の耐折り曲げ性に優れる静電荷像現像用トナーが得られることが記載されている。
更に、特許文献3には、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とを有する非晶質の複合樹脂と結晶性ポリエステルを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記複合樹脂が、融点が60〜110℃である水酸基を有する炭化水素ワックス由来の構造部位を0.5〜10質量%含み、前記結晶性ポリエステルが、炭素数6〜12の脂肪族ジオールを含む原料モノマーを用いて得られる、トナー用結着樹脂組成物が記載され、該結着樹脂組成物を含有するトナーが低温定着性と保存性を両立できることが記載されている。
特開2014−130254号公報 特開2014−235409号公報 特開2015−7765号公報
しかしながら、凝集融着法等のケミカル法でトナー粒子を作製する場合、結着樹脂に結晶性樹脂を混合してトナーの低温定着性を向上させても、経時的に低温定着性が低下するという課題があることがわかってきた。
そこで、本発明は、結晶性樹脂を使用して凝集融着法等のケミカル法によりトナーを製造する場合であっても、低温定着性に優れ、かつ経時的な低温定着性の低下を抑制できるトナーを得ることが可能な静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、結晶性樹脂を使用したトナーの特性に影響する要因が、トナー粒子中の結晶性樹脂の分散状態にあると考えて検討を行った。その結果、トナー粒子の分散液において特定の冷却方法を行うことで、凝集融着法等のケミカル法によりトナーを製造する場合であっても、低温定着性に優れ、かつ経時的な低温定着性の低下を抑制でき、更に耐熱保存性にも優れるトナーが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有するトナー粒子の分散液を冷却する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記冷却する工程が、温度T(℃)のトナー粒子の分散液を、水系媒体(W)中に添加して温度T(℃)まで冷却する操作を含み、
温度T、温度T及び、結晶性樹脂(B)の融点T(℃)が下記の関係式(a)及び(b)を満たし、
− T ≧ −15 (a)
− T ≦ −20 (b)
トナー粒子の分散液の添加開始時の水系媒体(W)の温度Tが温度T以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
本発明によれば、結晶性樹脂を使用して凝集融着法等のケミカル法によりトナーを製造する場合であっても、低温定着性に優れ、かつ経時的な低温定着性の低下を抑制でき、更に耐熱保存性にも優れるトナーを得ることが可能な静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
本発明の静電荷像現像用トナー(本明細書中、単に「トナー」ともいう。)の製造方法は、非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有するトナー粒子の分散液を冷却する工程を含み、
前記冷却する工程が、温度T(℃)のトナー粒子の分散液を、水系媒体(W)中に添加して温度T(℃)まで冷却する操作を含み、
温度T、温度T及び、結晶性樹脂(B)の融点T(℃)が下記の関係式(a)及び(b)を満たし、
− T ≧ −15 (a)
− T ≦ −20 (b)
トナー粒子の分散液の添加開始時の水系媒体(W)の温度Tが温度T以下である。
本発明の製造方法により得られるトナーが、低温定着性に優れ、かつ経時的な低温定着性の低下を抑制でき、更に耐熱保存性にも優れるトナーを提供できる理由は定かではないが、次のように考えられる。
結晶性樹脂は、他の結着樹脂を構成する樹脂成分と必ずしも相溶性が良好ではないため、結晶性樹脂に由来する結晶ドメインのサイズが徐々に拡大しやすい。その結果、結晶性樹脂と他の結着樹脂との界面が相対的に減少し、トナー定着時に結晶性樹脂の溶融とともに周囲の非晶性樹脂を溶融しにくくなることで、低温定着性が低下する。特に、混練工程のない凝集融着法等のケミカル法でのトナーの製造においては、結晶性樹脂を非晶性樹脂中に十分に分散させることができず、結晶性樹脂を微分散化して結晶化させることが困難になっていると考えられる。
従来、結晶成長の速度は、結晶性のセグメントの拡散速度項と、結晶核の生成速度項とからなる関係式で示され、結晶成長時の温度が低温になるほど結晶核の生成が優位になり、結晶成長時の温度が高温になるほど拡散速度向上による結晶成長が優位になることが知られている。しかし検討の結果、融着直後、トナー粒子中の結晶性樹脂(B)と非晶性樹脂(A)は相溶性が高まっているため、結晶性樹脂(B)の結晶化は起こりづらく、実際には、結晶性樹脂(B)の融点より15℃低い温度より下がると急速に結晶化が進行することが分かった。一方、低温になるほど結晶成長よりも結晶核の生成が優位となるため、ある温度より低い温度域では結晶領域が微分散した状況を保ちやすくなるが、検討の結果、結晶性樹脂(B)の融点より20℃低い温度以下に保つことで、トナー粒子中に結晶ドメインが大きく成長する前に、結晶性樹脂(B)に由来する結晶核を多量に生成させることが可能になることが分かった。
そこで、結晶化が急速に進行する温度域を極力早く通過させて冷却する必要がある。本発明の方法では、トナー粒子の分散液を別途用意した冷却用の低温水中に添加することで、結晶核生成が優位になる温度域へ一気に冷却できる。しかもこの方法では、低温水の温度と使用量から、冷却後の温度を制御することができるため、結晶性樹脂(B)の結晶化温度を実質的に制御することができ、結果としてトナー粒子中の結晶性樹脂(B)の結晶サイズ及び出来上がる結晶ドメインの結晶化度を制御することができると考えられる。
そして、結晶核が多量に生成した後であれば、温度を上げて、結晶成長が結晶核生成より優勢になる温度になったとしても、既に多量の結晶核が非晶性樹脂中(A)に微分散している状態であるため、結晶性樹脂(B)に由来する結晶ドメインの肥大化を抑制することができると考えられる。これらの理由により、結晶性樹脂(B)を使用して凝集融着法等のケミカル法によりトナーを製造する場合であっても、トナー中の非晶性樹脂中に結晶性樹脂(B)を微分散することができ、その結果、低温定着性及び耐熱保存性に優れ、かつ経時的な低温定着性の低下を抑制できるトナーを得ることが可能になるものと考えられる。
トナー粒子は、溶融混練法、乳化転相法、重合法、凝集融着法等の従来から知られているいずれの方法により得られたトナー粒子であってもよいが、凝集融着法によるトナー粒子が好ましい。
凝集融着法である場合、トナーの製造方法は、例えば、
工程(1):非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を水系媒体中で凝集させて凝集粒子の分散液を得る工程(以下、単に「工程(1)」ともいう)と、
工程(2):得られた凝集粒子を融着させて、トナー粒子の分散液を得る工程(以下、単に「工程(2)」ともいう)と、
工程(3):得られた非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有するトナー粒子の分散液を冷却する工程(以下、単に「工程(3)」ともいう)と
を含む。
以下、各工程について詳細に説明する。
<工程(1)>
工程(1)は、例えば、非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を水系媒体中で凝集させて凝集粒子の分散液を得る工程である。
〔非晶性樹脂(A)〕
非晶性樹脂(A)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、ポリエステル樹脂セグメントを含む樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂セグメントを含む樹脂としては、ポリエステル樹脂が挙げられるが、同様の観点から、ポリエステル樹脂セグメントに疎水性の構成成分を含有させた非晶性複合樹脂がより好ましい。
非晶性複合樹脂としては、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む非晶性複合樹脂、ポリエステル樹脂セグメント、及び水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分を含む非晶性複合樹脂が挙げられ、いずれの非晶性複合樹脂であってもよいが、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは、ポリエステル樹脂セグメント、ビニル系樹脂セグメント、及び水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分を含む。
本発明において、樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。非晶性樹脂とは、結晶性指数が1.4超又は0.6未満の樹脂を意味する。
結晶性指数は、実施例に記載の方法により求められる。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
(ポリエステル樹脂セグメント)
ポリエステル樹脂セグメントは、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、アルコール成分(A−al)とカルボン酸成分(A−ac)とを重縮合して得られるポリエステル樹脂からなるセグメントである。
アルコール成分(A−al)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含み、より好ましくは式(I):

〔式中、OR1及びR1Oはアルキレンオキシドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはプロピレン基、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である〕で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む。
アルコール成分(A−al)中、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、好ましくは、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(ポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。
アルコール成分(A−al)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を80モル%以上含み、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である。
アルコール成分(A−al)は、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外の他の多価アルコールを含有していてもよい。アルコール成分(A−al)が含み得る他のアルコール成分としては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(例えば、平均付加モル数1以上16以下)付加物等が挙げられる。
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)等の芳香族ジオール、又はそれらの炭素数4のアルキレンオキサイド(例えば、平均付加モル数1以上16以下)付加物;水素添加ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)等の脂環式ジオール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(例えば、平均付加モル数2以上12以下)付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の3価以上の多価アルコール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(例えば、平均付加モル数1以上16以下)付加物等が挙げられる。
これらのアルコール成分(A−al)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボン酸成分(A−ac)としては、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの無水物及びそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。中でも、ジカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸と3価以上の多価カルボン酸とを併用することがより好ましい。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸が挙げられ、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
カルボン酸成分(A−ac)には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。これらの中でも、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、カルボン酸成分(A−ac)中、好ましくは97モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下であり、そして、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に好ましくは55モル%以上、更に好ましくは60モル%以上である。
脂肪族ジカルボン酸は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、その炭素数が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
炭素数2以上30以下の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。
これらの中でも、テレフタル酸、フマル酸、及びセバシン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、これらを組み合わせて使用することがより好ましい。
3価以上の多価カルボン酸は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは3価のカルボン酸であり、より好ましくはトリメリット酸及びその無水物、更に好ましくはトリメリット酸無水物である。
3価以上の多価カルボン酸を含む場合の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、カルボン酸成分(A−ac)中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
これらのカルボン酸成分(A−ac)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコール成分(A−al)の水酸基(OH基)に対するカルボン酸成分(A−ac)のカルボキシ基(COOH基)のモル当量比(COOH基/OH基)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
(ビニル系樹脂セグメント)
ビニル系樹脂セグメントは、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは炭化水素基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含有する。
炭化水素基を有するビニルモノマーは、入手性及び反応性の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルである。ここで、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを示す。
(メタ)アクリル酸エステルの場合、炭化水素基はエステルのアルコール側残基である。
ビニルモノマーの炭化水素基は、好ましくは飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは飽和脂肪族炭化水素基である。
ビニルモノマーの炭化水素基の炭素数は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
炭化水素基を有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸(イソ)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル(以下、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルともいう)、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル(以下、(メタ)アクリル酸(イソ)ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルが好ましく、(メタ)アクリル酸(イソ)ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルがより好ましく、メタクリル酸ステアリルが更に好ましい。
なお、「(イソ)」とは、ノルマル又はイソを意味する。
炭化水素基を有するビニルモノマー由来の構成単位の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、ビニル系樹脂セグメント中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
ビニル系樹脂セグメントは、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、スチレン系化合物由来の構成単位を含有することが好ましい。
スチレン系化合物としては、置換又は無置換のスチレンが挙げられる。置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩等が挙げられる。
スチレン系化合物としては、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
スチレン系化合物由来の構成単位の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、ビニル系樹脂セグメント中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
炭化水素基を有するビニルモノマー及びスチレン系化合物以外の原料ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル類;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。
ビニル系樹脂セグメントは、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは、炭素数6以上22以下の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とスチレン由来の構成単位を含有する。
ビニル系樹脂セグメント中における、炭素数6以上22以下の炭化水素基を有するビニルモノマー由来の構成単位及びスチレン系化合物由来の構成単位の総量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、そして、更に好ましくは100質量%である。
非晶性複合樹脂がポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む場合には、更に両反応性モノマー由来の構成単位を含むことが好ましく、該両反応性モノマー由来の構成単位が、前述のビニル系樹脂セグメントと前述のポリエステル樹脂セグメントとの結合点となることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、一分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニルモノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基又はカルボキシ基を有するビニルモノマーが好ましく、カルボキシ基を有するビニルモノマーがより好ましい。
両反応性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマー由来の構成単位の含有量は、結晶性樹脂の非晶性複合樹脂への分散性を向上させる観点、並びに付加重合反応及び重縮合反応の反応制御の観点から、ポリエステル樹脂セグメントの原料であるアルコール成分(A−al)全量100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは5モル部以上、更に好ましくは10モル部以上、更に好ましくは15モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは25モル部以下、更に好ましくは20モル部以下である。なお、両反応性モノマーを使用する場合であって、非晶性複合樹脂中の各セグメントの含有量を算出する場合、両反応性モノマー由来の構成単位はポリエステル樹脂セグメントの構成単位中に含まれるものとして算出する。
非晶性複合樹脂がポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む場合の、非晶性複合樹脂中のポリエステル樹脂セグメントの含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
非晶性複合樹脂がポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む場合の、非晶性複合樹脂中のポリエステル樹脂セグメントの含有量は、優れた低温定着性、経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントの総含有量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
非晶性複合樹脂がポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む場合の、非晶性複合樹脂中のビニル系樹脂セグメントの含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
非晶性複合樹脂がポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む場合の、非晶性複合樹脂中のビニル系樹脂セグメントの含有量は、優れた低温定着性、経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントの総含有量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
非晶性複合樹脂がポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む場合の、非晶性複合樹脂中のポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントとの総含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
(炭化水素ワックス由来の構成成分)
非晶性樹脂(A)が、ポリエステル樹脂セグメント、及び水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分を含む非晶性複合樹脂である場合には、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(以下「炭化水素ワックス(W1)」ともいう)由来の構成成分は、好ましくは、ポリエステル樹脂セグメントに結合している。
炭化水素ワックス(W1)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスであり、水酸基及びカルボキシ基のいずれか一方、又は両方を有していてもよいが、ポリエステルとの反応性の観点、及び、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、水酸基及びカルボキシ基の両方を有する炭化水素ワックスが好ましい。
炭化水素ワックス(W1)は、炭化水素ワックスを公知の方法で変性させて得られる。炭化水素ワックス(W1)の原料としては、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。原料となるパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの市販品としては、「HNP−11」、「HNP−9」、「HNP−10」、「FT−0070」、「HNP−51」、「FNP−0090」(以上、日本精蝋株式会社製)等が挙げられる。
水酸基を有する炭化水素ワックスは、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素ワックスを酸化処理により変性させて得られるものである。酸化処理の方法としては、例えば、特開昭62−79267号公報、特開2010−197979号公報に記載の方法等が挙げられる。具体的には、炭化水素ワックスをホウ酸の存在下で酸素を含有するガスで液相酸化する方法がある。
水酸基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、「ユニリン700」、「ユニリン425」、「ユニリン550」(以上、ベーカー ペトロライト社製)等が挙げられる。
カルボキシ基を有する炭化水素ワックスとしては、酸変性ワックスが挙げられ、前述のパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素ワックスに、カルボキシ基を導入することで得ることできる。酸変性の方法としては、例えば、特開2006−328388号公報、特開2007−84787号公報等に記載の方法が挙げられる。具体的には、炭化水素ワックスの溶融物に、DCP(ジクミルパーオキサイド)等の有機過酸化化合物(反応開始剤)とカルボン酸化合物を添加して反応させることで、カルボキシ基を導入することができる。
カルボキシ基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、例えば、ハイワックス1105A(無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
水酸基及びカルボキシ基を有する炭化水素ワックスは、例えば、前述の水酸基を有する炭化水素ワックスの酸化処理と同様の方法で得ることができる。
水酸基及びカルボキシ基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、「パラコール6420」、「パラコール6470」、「パラコール6490」(以上、日本精蝋株式会社製)等が挙げられる。
炭化水素ワックス(W1)の水酸基価は、ポリエステルとの反応性の観点、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは40mgKOH/g以上、より好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは70mgKOH/g以上、更に好ましくは90mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは180mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、更に好ましくは120mgKOH/g以下、更に好ましくは100mgKOH/g以下である。
炭化水素ワックス(W1)の酸価は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは8mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
炭化水素ワックス(W1)の水酸基価と酸価の合計は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは41mgKOH/g以上、より好ましくは55mgKOH/g以上、更に好ましくは80mgKOH/g以上、更に好ましくは90mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは175mgKOH/g以下、更に好ましくは140mgKOH/g以下、更に好ましくは120mgKOH/g以下である。
なお、炭化水素ワックス(W1)の水酸基価及び酸価は、実施例に記載の方法により求められる。
炭化水素ワックス(W1)の融点は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは73℃以上であり、そして、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
炭化水素ワックス(W1)の数平均分子量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、更に好ましくは700以上であり、そして、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、更に好ましくは1500以下である。
非晶性樹脂(A)が、ポリエステル樹脂セグメント、及び、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分を含む非晶性複合樹脂である場合の、非晶性複合樹脂中の炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。
(非晶性樹脂(A)の物性)
非晶性樹脂(A)の軟化点は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。
非晶性樹脂(A)のガラス転移温度は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、更に好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
非晶性樹脂(A)の酸価は、後述する樹脂粒子(X)の分散安定性を向上させる観点、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
前述の軟化点、ガラス転移温度及び酸価は、実施例に記載の方法により求められる。非晶性樹脂(A)の軟化点、ガラス転移温度及び酸価は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
なお、非晶性樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
(非晶性樹脂(A)の製造)
非晶性樹脂(A)は、公知の方法により製造できるが、例えば、ポリエステル樹脂セグメントを含む場合、アルコール成分(A−al)とカルボン酸成分(A−ac)とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒、エステル化助触媒、ラジカル重合禁止剤等を用いて重縮合することにより製造することができる。
ポリエステル樹脂セグメントを含む非晶性複合樹脂は、例えば、以下の(i)〜(iii)のいずれかの方法により製造することができるが、以下の(i)の方法により製造することが、重縮合反応の反応温度の自由度が高い点から好ましい。
(i)アルコール成分(A−al)及びカルボン酸成分(A−ac)による重縮合反応の後に、ビニル系樹脂セグメントの原料ビニルモノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応を行う方法
なお、非晶性複合樹脂に水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分を含ませたい場合は、アルコール成分及びカルボン酸成分による重縮合反応を、炭化水素ワックス(W1)の存在下で行うとよい。
また、反応性の観点から、ビニル系樹脂セグメントの原料ビニルモノマーとともに両反応性モノマーが反応系に供給されることが好ましい。また、反応性の観点から、エステル化触媒、エステル化助触媒等の触媒を用いてもよく、更にラジカル重合開始剤及びラジカル重合禁止剤を用いてもよい。
また、カルボン酸成分(A−ac)は、一部を重縮合反応に供し、次いで付加重合反応を行った後に再度反応温度を上昇させ、残部を反応系に添加することが、重縮合反応及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応を更に進めることができるためより好ましい。
(ii)ビニル系樹脂セグメントの原料ビニルモノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の後に、ポリエステル樹脂セグメントの原料モノマーによる重縮合反応を行う方法
(iii)アルコール成分(A−al)及びカルボン酸成分(A−ac)による重縮合反応とビニル系樹脂セグメントの原料ビニルモノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応とを並行して行う方法
前述の(i)〜(iii)の方法の重縮合反応及び付加重合反応は、いずれも、同一容器内で行うことが好ましい。
重縮合反応の温度は、非晶性樹脂(A)の生産性の観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、そして、好ましくは260℃以下、より好ましくは250℃以下である。
また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
重縮合反応に好適に用いられるエステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)等の錫化合物や、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、反応性の観点から、アルコール成分(A−al)とカルボン酸成分(A−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
エステル化助触媒としては、ピロガロール、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エステル等のピロガロール化合物;2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられ、反応性の観点から、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸が好ましい。
重縮合反応におけるエステル化助触媒の使用量は、反応性の観点から、アルコール成分(A−al)とカルボン酸成分(A−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。
重縮合反応におけるラジカル重合禁止剤としては、4−tert−ブチルカテコール等を使用することができる。
ラジカル重合禁止剤の使用量は、アルコール成分(A−al)とカルボン酸成分(A−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。
付加重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類等によって異なるが、非晶性複合樹脂の生産性の観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である。
また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
付加重合反応の重合開始剤としては、ジブチルパーオキサイド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、ビニル系樹脂セグメントの原料ビニルモノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
炭化水素ワックス(W1)の使用量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、非晶性複合樹脂を構成する原料中の炭化水素ワックス(W1)の含有量として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下となる量である。
なお、非晶性複合樹脂に含まれる炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分とは、該炭化水素ワックス(W1)がエステル結合している部位である。
〔結晶性樹脂(B)〕
結晶性樹脂(B)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂である。
本発明において、結晶性樹脂とは、前述の結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。
結晶性樹脂の結晶性指数は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、その値は、実施例に記載の方法により求められる。
結晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分(B−al)とカルボン酸成分(B−ac)との重縮合物である。
アルコール成分(B−al)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは、α,ω−脂肪族ジオールを80モル%以上含む。
α,ω−脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分(B−al)中、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
α,ω−脂肪族ジオールの炭素数は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
α,ω−脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールが好ましく、1,10−デカンジオールがより好ましい。
アルコール成分(B−al)は、α,ω−脂肪族ジオール以外のアルコール成分を含有していてもよい。α,ω−脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、例えば、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のα,ω−脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
これらのアルコール成分(B−al)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボン酸成分(B−ac)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは脂肪族ジカルボン酸を80モル%以上含む。
脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分(B−ac)中、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸は、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸等が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、テトラデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
カルボン酸成分(B−ac)には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
これらのカルボン酸成分(B−ac)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコール成分(B−al)の水酸基(OH基)に対するカルボン酸成分(B−ac)のカルボキシ基(COOH基)のモル当量比(COOH基/OH基)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、更に好ましくは1.0以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下である。
結晶性樹脂(B)の軟化点は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
結晶性樹脂(B)の融点は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
結晶性樹脂(B)の酸価は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
前述の軟化点、融点、及び酸価は、実施例に記載の方法により求められる。結晶性樹脂(B)の軟化点、融点、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
なお、結晶性樹脂(B)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、融点、及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
(結晶性樹脂(B)の製造)
結晶性樹脂(B)は、公知の方法により製造できるが、例えば、結晶性ポリエステル樹脂である場合、アルコール成分(B−al)とカルボン酸成分(B−ac)とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒、エステル化助触媒、ラジカル重合禁止剤等を用いて重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒、エステル化助触媒、及びラジカル重合禁止剤は、前述の非晶性複合樹脂の製造の場合と同様のものを用いることができる。
エステル化触媒の使用量は、アルコール成分(B−al)とカルボン酸成分(B−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは220℃以下である。
〔水系媒体〕
水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、水系分散体の分散安定性を向上させる観点、及び環境性の観点から、水系媒体中の水の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下である。水としては、脱イオン水イオン交換水、又は蒸留水が好ましい。
水とともに水系媒体を構成し得る水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。
これらの中でも、メチルエチルケトンが好ましい。
〔工程(1)の条件〕
工程(1)は、好ましくは、次の工程(1−1)を含み、コアシェル構造を有するトナー粒子を得るため、続けて工程(1−2)を含んでいてもよい。
工程(1−1):水系媒体中で結晶性樹脂(B)の存在下で、非晶性樹脂(A)を含む樹脂粒子(X)を凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程(1−2):工程(1−1)で得られた凝集粒子(1)に、非晶性樹脂(C)を含有する樹脂粒子(Z)を添加して、凝集粒子(1)に樹脂粒子(Z)を付着してなる凝集粒子(2)を得る工程
なお、工程(1)が、工程(1−1)及び工程(1−2)を含む場合には、工程(2)における「得られた凝集粒子」とは、「工程(1−2)で得られた凝集粒子(2)」のことをいう。また、工程(1)が、工程(1−1)のみを含む場合には、工程(2)における「得られた凝集粒子」とは、「工程(1−1)で得られた凝集粒子(1)」のことをいう。
〔工程(1−1)〕
工程(1−1)は、好ましくは次の工程(1−1A)〜(1−1C)のいずれかである。
工程(1−1A):非晶性樹脂(A)を含有する樹脂粒子(X)、及び結晶性樹脂(B)を含む樹脂粒子(Y)、必要に応じて、ワックス、着色剤、凝集剤、界面活性剤等の任意成分を水系媒体中で凝集して凝集粒子を得る工程
工程(1−1B):非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含む樹脂粒子(X)、必要に応じて、ワックス、着色剤、凝集剤、界面活性剤等の任意成分を水系媒体中で凝集して凝集粒子を得る工程
工程(1−1C):非晶性樹脂(A)、結晶性樹脂(B)及びワックスを含有する樹脂粒子(X)、必要に応じて、ワックス、着色剤、凝集剤、界面活性剤等の任意成分を水系媒体中で凝集して凝集粒子を得る工程
これらの中では、トナーの生産安定性を向上させる観点から、好ましくは工程(1−1A)又は工程(1−1B)であり、より好ましくは工程(1−1A)である。
〔樹脂粒子(X)〕
樹脂粒子(X)は、非晶性樹脂(A)を含有する樹脂成分と、必要に応じて着色剤等の任意成分と(以下、樹脂成分及び任意成分を総称し「樹脂成分等」ともいう)を水系媒体中に分散させ、水系分散体として得られる。
樹脂粒子(X)の水系分散体を得る方法としては、樹脂成分等を水系媒体に添加し、分散機等によって分散処理を行う方法、樹脂成分等の溶融体又は有機溶媒溶液に、水系媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法(転相乳化)等が挙げられる。これらの中でも、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、転相乳化による方法が好ましい。
転相乳化法としては、樹脂成分等を有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に水系媒体を添加して転相乳化する方法(A)、及び、樹脂成分等を溶融して混合して得られた樹脂混合物に水系媒体を添加して転相乳化する方法(B)が挙げられる。均質な樹脂粒子(X)の水系分散体を得る観点から、方法(A)が好ましい。
方法(A)では、まず、樹脂成分等を有機溶媒に溶解させ、樹脂成分等の有機溶媒溶液を得、次いで、該溶液に水系媒体を添加して転相乳化する方法が好ましい。
転相乳化法で使用する有機溶媒としては、溶解性パラメータ(SP値:POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons,Inc)が、好ましくは15.0MPa1/2以上、より好ましくは16.0MPa1/2以上、更に好ましくは17.0MPa1/2以上であり、そして、好ましくは26.0MPa1/2以下、より好ましくは24.0MPa1/2以下、更に好ましくは22.0MPa1/2以下である。
有機溶媒としては、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、イソブタノール(21.5)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、ジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル(16.5)、テトラヒドロフラン(18.6)、ジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル(18.6)、酢酸イソプロピル(17.4)等の酢酸エステル系溶媒などが挙げられる。なお、各溶媒の後ろのカッコ内の数値はそれぞれのSP値(単位:MPa1/2)である。これらの中でも、水系媒体添加後の混合液からの除去が容易である観点から、好ましくはケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒から選ばれる少なくも1種、より好ましくはメチルエチルケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルから選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはメチルエチルケトンである。
有機溶媒と樹脂粒子(X)を構成する樹脂との質量比(有機溶媒/樹脂粒子(X)を構成する樹脂)は、樹脂を溶解し水系媒体への転相を容易にする観点、及び樹脂粒子(X)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.4以上であり、そして、好ましくは4以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
また、均質な樹脂粒子を得る観点、並びに優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、樹脂成分等の有機溶媒溶液を得る際に、前述の有機溶媒とともに、有機溶媒に対して30質量%以下の水を混合するのが好ましい。有機溶媒に水を混合する場合の、有機溶媒と水との混合質量比(有機溶媒/水)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは80/20以上、更に好ましくは85/15以上であり、そして、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは90/10以下である。
転相乳化法では、樹脂を中和剤により処理することが好ましい。
中和剤としては、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の含窒素塩基性物質などが挙げられ、これらの中でも、樹脂粒子(X)の分散安定性及び凝集性を向上させる観点から、好ましくはアルカリ金属の水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
樹脂の酸基に対する中和剤の使用当量(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
なお、中和剤の使用当量(モル%)は、下記式によって求めることができる。中和剤の使用当量は、100モル%以下の場合、中和度と同義であり、下記式で中和剤の使用当量が100モル%を超える場合には、中和剤が樹脂の酸基に対して過剰であることを意味し、このときの樹脂の中和度は100モル%とみなす。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
転相乳化法で添加する水系媒体の量は、樹脂粒子(X)の分散安定性を向上させる観点から、樹脂粒子(X)を構成する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、そして、好ましくは900質量部以下、より好ましくは600質量部以下、更に好ましくは400質量部以下である。
また、樹脂粒子(X)の分散安定性を向上させる観点から、水系媒体と有機溶媒との質量比(水系媒体/有機溶媒)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは80/20以上であり、そして、好ましくは97/3以下、より好ましくは93/7以下、更に好ましくは90/10以下である。
水系媒体を添加する際の温度は、樹脂粒子(X)の分散安定性を向上させる観点から、非晶性樹脂(A)のガラス転移温度以上が好ましく、具体的には、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
水系媒体の添加速度は、小粒径の樹脂粒子(X)を得る観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子(X)を構成する非晶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは0.5質量部/分以上、更に好ましくは1質量部/分以上、更に好ましくは3質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下である。転相後の水系媒体の添加速度には制限はない。
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散体から有機溶媒を除去する工程を有していてもよい。
有機溶媒の除去方法は、水と溶解しているため蒸留するのが好ましい。この場合、撹拌を行いながら、使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのが好ましい。また、樹脂粒子(X)の分散安定性を維持する観点から、減圧下で蒸留するのがより好ましく、また、温度及び圧力を一定にして蒸留するのが好ましい。なお、減圧した後に昇温しても、昇温した後に減圧してもよい。
また、有機溶媒は、完全に除去されず水系分散体中に残留していてもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、水系分散体中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0%である。
樹脂粒子(X)の水系分散体の固形分濃度は、トナーの生産性を向上させる観点、及び樹脂粒子(X)の水系分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。なお、固形分は、樹脂、着色剤、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
水系分散体中の樹脂粒子(X)の体積中位粒径(D50)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.10μm以上、更に好ましくは0.12μm以上であり、そして、好ましくは0.80μm以下、より好ましくは0.40μm以下、更に好ましくは0.30μm以下、更に好ましくは0.20μm以下である。
ここで、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径であり、後述の実施例に記載の方法で求められる。
また、樹脂粒子(X)の粒径分布の変動係数(CV値)(%)は、樹脂粒子(X)の水系分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、高画質の画像がトナーを得る観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
なお、CV値は、下記式で表される値である。下記式における体積平均粒径とは、体積基準で測定された粒径に、その粒径値を持つ粒子の割合を掛け、それにより得られた値を粒子数で除して得られる粒径であり、後述の実施例に記載の方法で求められる。
CV値(%)=[粒径分布の標準偏差(nm)/体積平均粒径(nm)]×100
〔樹脂粒子(Y)〕
樹脂粒子(Y)は、結晶性樹脂(B)を含有する樹脂成分と、必要に応じてワックス、着色剤等の任意成分とを水系媒体中に分散させ水系分散体として得ることが好ましい。
水系分散体を得る方法は、樹脂粒子(X)の場合と同じく、結晶性樹脂(B)等を水系媒体に添加し、分散機を用いて分散する方法、結晶性樹脂(B)等に水系媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法等が挙げられ、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、転相乳化による方法が好ましい。
転相乳化法においても、樹脂粒子(X)の場合と同様に、樹脂と、その他、前述の任意成分とを有機溶媒に溶解させて得られた溶液に、水系媒体を添加して転相乳化する方法が好ましい。使用できる水系媒体及び有機溶媒の好ましい態様も、前述の樹脂粒子(X)の製造と同様である。
有機溶媒と樹脂粒子(Y)を構成する樹脂との質量比(有機溶媒/樹脂粒子(Y)を構成する樹脂)は、樹脂を溶解し水系媒体への転相を容易にする観点、及び樹脂粒子(Y)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.4以上であり、そして、好ましくは4以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。
また、樹脂粒子(Y)の分散安定性を向上させる観点から、中和剤を溶液に添加することが好ましい。中和剤の好ましい態様は、樹脂粒子(X)の製造と同様である。
結晶性樹脂(B)の酸基に対する中和剤の使用当量(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
添加する水系媒体の量は、樹脂粒子(Y)の分散安定性を向上させる観点から、樹脂粒子(Y)を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、そして、好ましくは900質量部以下、より好ましくは600質量部以下、更に好ましくは400質量部以下である。
水系媒体と有機溶媒との質量比(水系媒体/有機溶媒)は、樹脂粒子(Y)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは80/20以上であり、そして、好ましくは97/3以下、より好ましくは93/7以下、更に好ましくは90/10以下である。
水系媒体を添加する際の温度は、樹脂粒子(Y)の分散安定性を向上させる観点から、結晶性樹脂(B)の融点より10℃低い温度以上が好ましく、具体的には、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
水系媒体の添加速度は、小粒径の樹脂粒子(Y)を得る観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子(Y)を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは0.5質量部/分以上、更に好ましくは1質量部/分以上、更に好ましくは3質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下、更に好ましくは10質量部/分以下である。転相後の水系媒体の添加速度には制限はない。
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散体から有機溶媒を除去する工程を有していてもよい。
有機溶媒の除去方法及び水系分散体中の有機溶媒の残存量の好ましい態様は、前述の樹脂粒子(X)の製造と同様である。
得られる樹脂粒子(Y)の水系分散体の固形分濃度は、トナーの生産性を向上させる観点、及び樹脂粒子(Y)の水系分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。なお、固形分は、樹脂、着色剤、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
水系分散体中の樹脂粒子(Y)の体積中位粒径(D50)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.10μm以上、更に好ましくは0.12μm以上であり、そして、好ましくは0.80μm以下、より好ましくは0.40μm以下、更に好ましくは0.20μm以下である。
また、樹脂粒子(Y)の粒径分布の変動係数(CV値)(%)は、樹脂粒子(Y)の水系分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、高画質の画像がトナーを得る観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
工程(1)の非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制の観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。また、当該質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕は、優れた耐熱保存性の観点からは、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上、更に好ましくは75/25以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である。
非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)の合計含有量は、凝集粒子(1)に含まれる樹脂成分中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、そして、より好ましくは100質量%である。
〔ワックス粒子〕
工程(1)において、更にワックスを水系媒体中で凝集させて凝集粒子の分散液を得てもよい。
工程(1)が、工程(1−1A)又は工程(1−1B)である場合、ワックスを水系媒体に分散したワックス粒子の分散液を用いることが好ましい。
工程(1)で使用するワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン;シリコーンワックス;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物系又は石油系ワックス;エステルワックス等の合成ワックス等が挙げられる。これらのワックスは、単独で又は2種以上を併用することができる。これらの中でも、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくはカルナウバワックス及びパラフィンワックスから選ばれる少なくとも1種、より好ましくはパラフィンワックスである。
ワックスの融点は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上、更に好ましくは73℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
本発明において、ワックスの融点は、実施例記載の方法により求められる。ワックスを2種以上併用する場合、ワックスの融点は、トナーに含有されるワックス中、最も質量比の大きいワックスの融点を、本発明におけるワックスの融点とする。なお、全てが同一の比率の場合は、最も低い値とする。
ワックス粒子は、ワックスを水系媒体に分散した分散液として得ることが好ましく、水系媒体中でワックスを樹脂粒子(P)と混合し分散させて、ワックス粒子の水分散体として得ることがより好ましい。
ワックスの分散に用いる樹脂粒子(P)は、特に限定されず、トナー粒子中での分散安定性の観点から、好適例は前述の樹脂粒子(X)と同様であるが、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含有する非晶性複合樹脂を用いることがより好ましい。
樹脂粒子(P)に使用する非晶性複合樹脂は、前述の非晶性複合樹脂をそのまま用いてもよいが、小粒径の樹脂粒子を得る観点、及び水系媒体中でのワックスの分散性を向上させる観点から、樹脂粒子(P)に使用する非晶性複合樹脂の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。その他の樹脂特性の好適範囲、樹脂を構成する原料モノマーの好適例等は、前述の非晶性複合樹脂と同様である。
ワックス粒子の分散液は、ワックスと樹脂粒子(P)の水系分散体と必要に応じて水系媒体とを、ワックスの融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。
分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機、高圧分散機等が挙げられる。
超音波分散機としては、例えば超音波ホモジナイザーが挙げられる。その市販品としては、「US−150T」、「US−300T」、「US−600T」(株式会社日本精機製作所製)、「SONIFIER(登録商標)4020−400」、「SONIFIER(登録商標)4020−800」(ブランソン社製)等が挙げられる。
高圧分散機として市販される装置としては、高圧湿式微粒化装置「ナノマイザー(登録商標)NM2−L200−D08」(吉田機械興業株式会社製)が挙げられる。
また、分散機を使用する前に、ワックス、樹脂粒子(P)、及び水系媒体を、予めホモミキサー、ボールミル等の混合機で予備分散させておいてもよい。
ワックス粒子の分散液の水系媒体の好ましい態様は、樹脂粒子(X)の水系分散体を得る際に用いられる水系媒体と同様である。
ワックス粒子の水系媒体への分散は、ワックス粒子の分散安定性を向上させる観点、及び均一な凝集粒子を得る観点から、界面活性剤を用いてもよい。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、ワックス粒子の分散安定性を向上させる観点、及びワックス粒子と樹脂粒子の凝集性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤である。
界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等が挙げられる。これらの中でも、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
ワックス粒子分散液中の界面活性剤の含有量は、トナー作製時のワックス粒子の遊離を防止する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であり、そして、0質量%以上である。
ワックス粒子分散液の固形分濃度は、トナーの生産性を向上させる観点、及びワックス粒子分散液の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
ワックス粒子の体積中位粒径(D50)は、均一な凝集粒子を得る観点から、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.20μm以上、更に好ましくは0.30μm以上であり、そして、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.80μm以下、更に好ましくは0.60μm以下である。
ワックス粒子の粒径分布の変動係数(CV値)は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上であり、そして、均一な凝集粒子を得る観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、更に好ましくは40%以下である。
ワックス粒子の体積中位粒径及びCV値は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で求められる。
ワックスの使用量は、トナーの離型性、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、トナーの樹脂成分の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
〔着色剤粒子〕
工程(1)において、更に着色剤を水系媒体中で凝集させて凝集粒子の分散液を得てもよい。
工程(1)で使用する着色剤としては、顔料及び染料が挙げられ、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料が挙げられる。シアン顔料は、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料は、モノアゾ顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料が好ましい。マゼンタ顔料は、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
染料としては、アクリジン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、アジン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、アニリンブラック染料等が挙げられる。
着色剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
工程(1)で着色剤を混合する場合、着色剤を水系媒体に分散した着色剤粒子の分散液を用いることが好ましい。
着色剤粒子の分散液は、着色剤と水系媒体とを、界面活性剤等の存在下、分散機を用いて分散して得ることが好ましい。分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。
水系媒体の好ましい態様は、前述の樹脂粒子(X)の水系分散体に用いられる水系媒体と同様である。
着色剤粒子を水系媒体へ分散させる場合は、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点、並びに着色剤粒子と樹脂粒子(X)及び樹脂粒子(Y)との凝集性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤である。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等が挙げられ、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
着色剤粒子分散液中の界面活性剤の含有量は、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点、及びトナー作製時の着色剤粒子の凝集性を向上させ、遊離を防止する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。
着色剤粒子分散液の固形分濃度は、トナーの生産性を向上させる観点、及び着色剤粒子分散液の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像がトナーを得る観点から、好ましくは0.050μm以上、より好ましくは0.080μm以上、更に好ましくは0.10μm以上であり、そして、好ましくは0.50μm以下、より好ましくは0.30μm以下、更に好ましくは0.15μm以下である。
着色剤の量は、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、トナーの樹脂成分の総量100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
〔凝集粒子(1)〕
凝集粒子(1)は、樹脂粒子の分散液に、必要に応じてワックスを含有するワックス粒子分散液、凝集剤、界面活性剤、着色剤等の任意成分を混合し、凝集させて得られる。
具体的には、まず、樹脂粒子の水系分散体、及び必要に応じて、ワックス粒子分散液、界面活性剤、着色剤等の任意成分を水系媒体中で混合して、混合分散液を得ることが好ましい。そして、該混合分散液中の成分を凝集させて、凝集粒子(1)の分散液を得る際、凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
各成分の混合順序は、特に制限はなく、各成分をどのような順で添加してもよく、各成分を全て同時に添加してもよい。
工程(1−1)における混合温度は、凝集を制御して所望の粒径の凝集粒子を得る観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
前記混合分散液を調製する場合、樹脂粒子及び必要に応じて添加されるワックス粒子等の任意成分の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。
該界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系及びせっけん系(例えばアルキルエーテルカルボン酸塩等)等のアニオン性界面活性剤;アミン塩型及び第4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンオレイルエーテル及びポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル類、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート及びポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル類が好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが更に好ましい。
界面活性剤を使用する場合、その使用量は、樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
(凝集剤)
凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
凝集剤は、過剰な凝集を防ぎつつ、所望の粒径のトナーを得る観点から、電解質であることが好ましく、塩であることがより好ましい。
凝集剤としては、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤等が挙げられる。これらの中でも、凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、無機系凝集剤が好ましく、無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましい。
無機系凝集剤のカチオンの価数は、過剰な凝集を防ぎつつ、所望の粒径のトナーを得る観点から、好ましくは5価以下、より好ましくは2価以下、更に好ましくは1価である。無機系凝集剤の1価のカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、好ましくはアンモニウムイオンである。
無機金属塩としては、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。
無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
凝集剤としては、より好ましくは硫酸アンモニウムである。
凝集剤の使用量は、凝集を制御して所望の粒径を得る観点から、樹脂粒子(X)及び樹脂粒子(Y)を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、そして、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
凝集剤は、水溶液として混合分散液に滴下して添加することが好ましい。凝集剤は一時に添加してもよいし、断続的あるいは連続的に添加してもよい。添加時及び添加終了後には、十分な撹拌を行うことが好ましい。
また、凝集を制御して所望の粒径及び粒径分布の凝集粒子を得る観点から、凝集剤の水溶液は、pHを7.0以上9.0以下に調整して使用することが好ましい。
凝集剤を滴下する温度は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
更に、凝集を促進させ、所望の粒径及び粒径分布の凝集粒子を得る観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。保持する温度としては、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、更に好ましくは63℃以下である。
前述の温度範囲にて、凝集粒子の体積中位粒径をモニタリングすることによって、凝集の進行を確認することが好ましい。
凝集粒子(1)の体積中位粒径(D50)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。凝集粒子(1)の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
〔工程(1−2)〕
〔非晶性樹脂(C)〕
工程(1−2)を含む場合、非晶性樹脂(C)は、結晶性指数が、1.4超又は0.6未満の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度等)等により調整することができ、また、その値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
非晶性樹脂(C)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくはアルコール成分(C−al)とカルボン酸成分(C−ac)とを重縮合して得られるポリエステル樹脂である。
(アルコール成分(C−al))
アルコール成分(C−al)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含み、より好ましくは式(I):

〔式中、OR1及びR1Oはアルキレンオキシドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である〕で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含む。
アルコール成分(C−al)は、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含む。アルコール成分(C−al)中、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、優れた低温定着性、経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。
アルコール成分(C−al)はビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外の他の多価アルコールを含有していてもよい。アルコール成分(C−al)が含み得る他のアルコール成分は、前述した非晶性樹脂(A)のポリエステル樹脂セグメントを構成するアルコール成分(A−al)と同様である。
(カルボン酸成分(C−ac))
カルボン酸成分(C−ac)としては、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸等が挙げられる。中でも、ジカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸と3価以上の多価カルボン酸とを併用することがより好ましい。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸が挙げられ、好ましくは芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは芳香族ジカルボン酸である。
カルボン酸成分(C−ac)には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくはイソフタル酸、又はテレフタル酸であり、より好ましくはテレフタル酸である。
脂肪族ジカルボン酸は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、その炭素数が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
炭素数2以上30以下の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が好ましく、ドデセニルコハク酸がより好ましい。更に、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸と、テレフタル酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸等と組み合わせて使用することがより好ましく、テレフタル酸、フマル酸、及びドデセニルコハク酸を併用することが更に好ましい。
3価以上の多価カルボン酸は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは3価カルボン酸であり、より好ましくは、トリメリット酸及びその酸無水物から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはトリメリット酸無水物である。
また、3価以上の多価カルボン酸を含む場合の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、カルボン酸成分(C−ac)中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
これらのカルボン酸成分(C−ac)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコール成分(C−al)の水酸基(OH基)に対するカルボン酸成分(C−ac)のカルボキシ基(COOH基)のモル当量比(COOH基/OH基)は、好ましい熱物性の樹脂を得る観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下、更に好ましくは1.05以下である。
非晶性樹脂(C)の軟化点は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
非晶性樹脂(C)のガラス転移温度は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
非晶性樹脂(C)の酸価は、後述の樹脂粒子(Z)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
前述の軟化点、ガラス転移温度及び酸価は、後述の実施例に記載の方法により求められる。非晶性樹脂(C)の軟化点、ガラス転移温度及び酸価は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
なお、非晶性樹脂(C)を2種以上を組み合せて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
(非晶性樹脂(C)の製造)
非晶性樹脂(C)は、例えば、アルコール成分(C−al)とカルボン酸成分(C−ac)とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒、エステル化助触媒、ラジカル重合禁止剤等を用いて重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒、エステル化助触媒、及びラジカル重合禁止剤は、前述の非晶性複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントの製造に用いたものと同様のものを挙げることができる。これらの好適量、及び重縮合反応の反応温度等の条件も同様に前述の非晶性複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントの製造において示した条件を適用できる。
〔樹脂粒子(Z)〕
樹脂粒子(Z)は、非晶性樹脂(C)を含有する樹脂成分を水系媒体中に分散させ、樹脂粒子(Z)の水系分散体として得る方法によって製造する。
樹脂粒子(Z)は、非晶性樹脂(C)を含有する樹脂成分と、必要に応じて前述の任意成分とを水系媒体中に分散させ、樹脂粒子(Z)の水系分散体として得ることが好ましい。
水系分散体を得る方法及びその好適な条件は、樹脂粒子(X)の場合と同様である。
樹脂粒子(Z)の水系分散体の固形分濃度は、トナーの生産性を向上させる観点、及び樹脂粒子(Z)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。なお、固形分は、樹脂、界面活性剤等の不揮発性成分の総量である。
水系分散体中の樹脂粒子(Z)の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.08μm以上、更に好ましくは0.10μm以上であり、そして、好ましくは0.50μm以下、より好ましくは0.40μm以下、更に好ましくは0.30μm以下である。
また、樹脂粒子(Z)の粒径分布の変動係数(CV値)(%)は、樹脂粒子(Z)の水系分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
樹脂粒子(Z)には、非晶性樹脂(C)以外に、トナーに用いられる公知の樹脂、例えば、非晶性樹脂(C)以外のポリエステル、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ、ポリカーボネート、ポリウレタン等を含有することができる。
樹脂粒子(Z)に含まれる全樹脂成分中における非晶性樹脂(C)の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
また、樹脂粒子(Z)には、必要に応じて、前述の着色剤、帯電制御剤を含有させてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤等を含有させてもよい。
〔凝集粒子(2)〕
工程(1−2)は、工程(1−1)で得られた凝集粒子(1)に、樹脂粒子(Z)を添加して、凝集粒子(1)に樹脂粒子(Z)を付着してなる凝集粒子(2)を得る工程であり、前述の凝集粒子(1)の分散液に、樹脂粒子(Z)の水系分散体を添加することにより、凝集粒子(1)に更に樹脂粒子(Z)を付着させ、凝集粒子(2)の分散液を得ることが好ましい。
凝集粒子(1)の分散液に樹脂粒子(Z)の水系分散体を添加する前に、凝集粒子(1)の分散液に水系媒体を添加して希釈してもよい。また、凝集粒子(1)の分散液に樹脂粒子(Z)の水系分散体を添加する場合には、凝集粒子(1)に樹脂粒子(Z)を効率的に付着させるために、前述の凝集剤を工程(1−2)で用いてもよい。
樹脂粒子(Z)の水系分散体を添加する時の温度は、均一な凝集粒子を得る観点、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
樹脂粒子(Z)の水系分散体は、一定の時間をかけて連続的に添加しても、一時に添加しても、複数回に分割して添加してもよいが、一定の時間をかけて連続的に添加するか、複数回に分割して添加することが好ましい。このように添加することで、樹脂粒子(Z)が凝集粒子(1)に選択的に付着しやすくなる。中でも、選択的な付着を促進する観点、及びトナーの生産性を向上させる観点から、一定の時間をかけて連続的に添加することが好ましい。
樹脂粒子(Z)の水系分散体を連続的に添加する場合の添加速度は、均一な凝集粒子(2)を得る観点、及びトナーの生産性を向上させる観点から、凝集粒子(1)100質量部に対して、樹脂粒子(Z)が、好ましくは0.03質量部/min以上、より好ましくは0.05質量部/min以上、更に好ましくは0.07質量部/min以上であり、そして、好ましくは1.0質量部/min以下、より好ましくは0.5質量部/min以下、更に好ましくは0.3質量部/min以下である。
樹脂粒子(Z)の添加量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、樹脂粒子(Z)と樹脂粒子(X)及び樹脂粒子(Y)の合計との質量比[(Z)/((X)+(Y))]が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下になる量である。
なお、本発明の製造方法においては、非晶性樹脂(A)、結晶性樹脂(B)、及び非晶性樹脂(C)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、トナーに用いられる公知の樹脂、例えば、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ、ポリカーボネート、ポリウレタン等を含有することができる。
工程(1−2)を行う場合、非晶性樹脂(A)、結晶性樹脂(B)、及び非晶性樹脂(C)の合計含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、トナーの樹脂成分の総量に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
また、非晶性樹脂(C)と非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)の合計との質量比[(C)/((A)+(B))]は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
凝集粒子(2)の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点、並びに、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
工程(1−2)においては、凝集粒子が、トナーとして適度な粒径に成長したところで凝集を停止させてもよい。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
(凝集停止剤)
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、より好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、更に好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムである。
凝集停止剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、トナー中の樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは25質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。凝集停止剤は、トナーの生産性を向上させる観点から、水溶液で添加することが好ましい。
凝集停止剤を添加する温度は、トナーの生産性を向上させる観点から、凝集粒子(2)の分散液を保持する温度と同じであることが好ましい。凝集停止剤を添加する温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
また、凝集粒子を安定化し、一旦凝集した粒子が融着前に離散するのを防ぐ観点から、凝集の停止とともに酸を添加して、凝集粒子の分散液を中性から酸性にするのが好ましい。
添加する酸に制限はなく、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸等が好ましく挙げられるが、添加に対してpH変化が迅速である観点から、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは塩酸、硫酸、及び硝酸から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくは硫酸である。
酸は、水溶液の状態で添加することが好ましい。また、前記凝集停止剤とともに添加してもよい。
<工程(2)>
工程(2)は、例えば、工程(1)で得られた凝集粒子を融着させてトナー粒子の分散液を得る工程である。
凝集粒子中の、主として物理的にお互いに付着している状態であった各粒子が融着されて一体となり、トナー粒子(「融着粒子」ともいう)が形成される。
工程(2)においては、凝集粒子の融着性を向上させる観点、並びに、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、結晶性樹脂(B)の融点より15℃低い温度以上の温度で保持することが好ましい。
保持温度は、凝集粒子の融着性を向上させる観点、及びトナーの生産性を向上させる観点から、より好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より10℃低い温度以上、更に好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より8℃低い温度以上、更に好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より5℃低い温度以上、更に好ましくは結晶性樹脂(B)の融点以上であり、そして、好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より30℃高い温度以下、より好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より20℃高い温度以下、更に好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より12℃高い温度以下である。
その際、結晶性樹脂(B)の融点より15℃低い温度以上の温度で保持する時間は、凝集粒子の融着性を向上させる観点、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは240分以下、より好ましくは180分以下、更に好ましくは120分以下、更に好ましくは90分以下である。
工程(2)で得られる分散液中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
工程(2)で得られる分散液中のトナー粒子の円形度は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点、並びに、高画質の画像を得る観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
<工程(3)>
工程(3)(冷却する工程)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有するトナー粒子の分散液を冷却する工程であり、温度T(℃)のトナー粒子の分散液を、水系媒体(W)中に添加して温度T(℃)まで冷却する操作を含み、温度T、温度T及び、結晶性樹脂の融点T(℃)が下記の関係式(a)及び(b)を満たし、トナー粒子の分散液の添加開始時の水系媒体(W)の温度Tが温度T以下である。
− T ≧ −15 (a)
− T ≦ −20 (b)
トナー粒子は、工程(2)で得られるトナー粒子であることが好ましい。
トナー粒子は、コア部及び当該コア部の表面に存在するシェル部を有するコアシェル型トナー粒子であってもよい。トナー粒子がコアシェル型トナー粒子である場合、コア部は、非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有し、シェル部は、非晶性樹脂(C)を含有する。
冷却するトナー粒子において、非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制の観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。また、当該質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕は、優れた耐熱保存性の観点からは、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上、更に好ましくは75/25以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である。
冷却するトナー粒子において、結晶性樹脂(B)の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、トナー中の樹脂成分の総量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
コアシェル型トナー粒子である場合、非晶性樹脂(C)と非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)の合計との質量比[(C)/((A)+(B))]は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
温度T(℃)は、水系媒体(W)中に添加する際の、トナー粒子の分散液の温度を意味する。
温度T(℃)は、トナー粒子の分散液の添加終了後、混合液内の温度が一定になった時の温度を意味する。
温度T(℃)は、トナー粒子の分散液が添加される直前の水系媒体(W)の温度を意味する。
工程(3)で冷却用に使用する水系媒体(W)の好ましい態様は、樹脂粒子(X)の水系分散体を得る際に用いられる水系媒体と同様である。
関係式(a)に関し、(T − T)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、−15以上であり、好ましくは−12以上、より好ましくは−10以上であり、そして、優れた耐熱保存性の観点、及び作業効率の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは12以下であり、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制の観点から、更に好ましくは3以下、更に好ましくは0以下、更に好ましくは−5以下である。
関係式(b)に関し、(T − T)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、−20以下であり、好ましくは−30以下、より好ましくは−40以下であり、そして、作業効率の観点から、好ましくは−80以上、より好ましくは−65以上、更に好ましくは−50以上である。
温度T及び温度Tは、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは関係式(c):T− T≧ 10 (c)を更に満たす。
関係式(c)に関し、(T − T)は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは15以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上、更に好ましくは40以上であり、そして、作業効率の観点から、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。
温度T及び温度Tは、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは関係式(d):T− T≦ 40 (d)を更に満たす。
関係式(d)に関し、(T − T)は、好ましくは30以下、より好ましくは25以下であり、そして、好ましくは0以上、より好ましくは0超え、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上である。
水系媒体(W)の温度Tは、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは(T−20)℃以下、より好ましくは(T−30)℃以下、更に好ましくは(T−40)℃以下であり、そして、作業効率の観点から、好ましくは(T−90)℃以上、より好ましくは(T−80)℃以上、更に好ましくは(T−70)℃以上である。
トナー粒子の分散液には、水系媒体への添加前に、トナー粒子の形状を安定化させる観点から、塩基性物質を添加してもよい。塩基性物質としては、前述の例示と同様のものが挙げられる。
トナー粒子の分散液を水系媒体に添加する方法は、特に限定されず、一度に分散液の全量を添加してもよいし、時間をかけて徐々に添加してもよい。混合機等を介してトナー粒子分散液を水系媒体へ添加・混合しながら冷却してもよい。添加される水系媒体は、所望の関係式を満足すれば、冷却ジャケット等の冷却装置により更に冷却してもよい。
<後処理工程>
工程(3)の後に後処理工程を行ってもよく、単離することによってトナー粒子を得ることが好ましい。
工程(3)で得られた分散液中のトナー粒子は、水系媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。このとき、添加した界面活性剤も除去することが好ましいため、界面活性剤の曇点以下で水系媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に、乾燥を行うことが好ましい。乾燥時の温度は、トナー粒子自体の温度が、樹脂粒子(Z)を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低くなるようにすることが好ましく、トナー粒子を構成する樹脂のガラス転移温度の最小値より低くなるようにすることがより好ましい。乾燥方法としては、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法等を用いることが好ましい。乾燥後の水分含量は、トナーの帯電特性を向上させる観点から、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下に調整する。
[静電荷像現像用トナー]
〔トナー粒子〕
乾燥等を行うことによって得られたトナー粒子は、静電荷像現像用トナーとしてそのまま用いることもできるが、後述のようにトナー粒子の表面を処理したものを静電荷像現像用トナーとして用いることが好ましい。
トナー粒子において、結晶性樹脂(B)及び非晶性樹脂(A)の合計含有量に対する、結晶性樹脂(B)の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
また、結晶性樹脂(B)の含有量は、優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、トナー中の樹脂成分の総量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、トナーの生産性を向上させる観点、印刷物の画像濃度を向上させる観点、並びに優れた低温定着性、かつ経時的な低温定着性の低下抑制、及び優れた耐熱保存性の観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー粒子のCV値は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上、更に好ましくは16%以上であり、そして、高画質の画像を得る観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは26%以下である。
トナー粒子の円形度は、トナーの低温定着性及び帯電特性を向上させる観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
トナー粒子は、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子、及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等が挙げられ、これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
本発明により得られる静電荷像現像用トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
前述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の静電荷像現像用トナーの製造方法を開示する。
<1>非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有するトナー粒子の分散液を冷却する工程(工程(3))を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記冷却する工程が、温度T(℃)のトナー粒子の分散液を、水系媒体(W)中に添加して温度T(℃)まで冷却する操作を含み、
温度T、温度T及び、結晶性樹脂(B)の融点T(℃)が下記の関係式(a)及び(b)を満たし、
− T ≧ −15 (a)
− T ≦ −20 (b)
トナー粒子の分散液の添加開始時の水系媒体(W)の温度Tが温度T以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
<2>非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を水系媒体中で凝集させて凝集粒子の分散液を得る工程(工程(1))、及び
得られた凝集粒子を融着させて、トナー粒子の分散液を得る工程(工程(2))を更に有する、<1>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<3>非晶性樹脂(A)が、好ましくはポリエステル樹脂セグメントを含む樹脂であり、より好ましくはポリエステル樹脂セグメントに疎水性の構成成分を含有させた非晶性複合樹脂である、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<4>非晶性複合樹脂が、好ましくはポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む非晶性複合樹脂、又は、ポリエステル樹脂セグメント、及び水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分を含む非晶性複合樹脂であり、より好ましくは、ポリエステル樹脂セグメント、ビニル系樹脂セグメント、及び水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分を含む非晶性複合樹脂である、<3>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<5>非晶性樹脂(A)のポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分(A−al)が、好ましくはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を80モル%以上含み、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である、<3>又は<4>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<6>非晶性複合樹脂が、好ましくは炭化水素基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含有するビニル系樹脂セグメントを含む、<3>〜<5>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<7>非晶性複合樹脂のビニルモノマーの炭化水素基が、好ましくは飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは飽和脂肪族炭化水素基である、<6>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<8>非晶性複合樹脂のビニルモノマーの炭化水素基の炭素数が、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である、<6>又は<7>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<9>非晶性複合樹脂の炭化水素基を有するビニルモノマー由来の構成単位の含有量が、ビニル系樹脂セグメント中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である、<6>〜<8>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<10>非晶性複合樹脂のビニル系樹脂セグメントが、好ましくは、炭素数6以上22以下の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とスチレン由来の構成単位を含有する、<6>〜<9>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<11>非晶性複合樹脂が、好ましくは両反応性モノマー由来の構成単位を更に含み、より好ましくは該両反応性モノマー由来の構成単位が、前述のビニル系樹脂セグメントと前述のポリエステル樹脂セグメントとの結合点となる、<6>〜<10>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<12>両反応性モノマーが、好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアクリル酸である、<11>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<13>両反応性モノマー由来の構成単位の含有量は、ポリエステル樹脂セグメントの原料であるアルコール成分(A−al)全量100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは5モル部以上、更に好ましくは10モル部以上、更に好ましくは15モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは25モル部以下、更に好ましくは20モル部以下である、<11>又は<12>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<14>非晶性複合樹脂中のポリエステル樹脂セグメントの含有量が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である、<3>〜<13>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<15>非晶性複合樹脂中のビニル系樹脂セグメントの含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である、<6>〜<14>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<16>非晶性樹脂(A)が、ポリエステル樹脂セグメント、及び水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分を含む非晶性複合樹脂であり、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分が、ポリエステル樹脂セグメントに結合している、<3>〜<15>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<17>非晶性複合樹脂中の炭化水素ワックス由来の構成成分の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である、<16>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<18>非晶性樹脂(A)の軟化点が、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である、<1>〜<17>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<19>非晶性樹脂(A)のガラス転移温度が、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、更に好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である、<1>〜<18>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<20>結晶性樹脂(B)が、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂である、<1>〜<19>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<21>結晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分(B−al)とカルボン酸成分(B−ac)との重縮合物である、<20>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<22>結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分(B−al)は、好ましくは、α,ω−脂肪族ジオールを80モル%以上含む、<20>又は<21>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<23>α,ω−脂肪族ジオールの含有量が、アルコール成分(B−al)中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である、<22>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<24>結晶性ポリエステル樹脂のカルボン酸成分(B−ac)が、好ましくは脂肪族ジカルボン酸を80モル%以上含む、<20>〜<23>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<25>結晶性ポリエステル樹脂の脂肪族ジカルボン酸の含有量が、カルボン酸成分(B−ac)中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、更に好ましくは100モル%である、<20>〜<24>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<26>結晶性ポリエステル樹脂の脂肪族ジカルボン酸の炭素数が、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である、<20>〜<25>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<27>結晶性樹脂の融点が、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である、<20>〜<26>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<28>工程(1)が、好ましくは、次の工程(1−1)を含み、続けて工程(1−2)を含んでいてもよい、<2>〜<27>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程(1−1):水系媒体中で結晶性樹脂(B)の存在下で、非晶性樹脂(A)を含む樹脂粒子(X)を凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程(1−2):工程(1−1)で得られた凝集粒子(1)に、非晶性樹脂(C)を含有する樹脂粒子(Z)を添加して、凝集粒子(1)に樹脂粒子(Z)を付着してなる凝集粒子(2)を得る工程
<29>工程(1)の非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕が、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である、<2>〜<28>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<30>工程(1)の非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕が、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上、更に好ましくは75/25以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である、<2>〜<28>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<31>工程(1)において、更にワックスを水系媒体中で凝集させて凝集粒子の分散液を得る、<2>〜<30>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<32>ワックスを、ワックス粒子の分散液として用いる、<31>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<33>ワックス粒子が、水系媒体中でワックスを樹脂粒子(P)と混合し分散させて、ワックス粒子の水分散体として得られたものである、<31>又は<32>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<34>工程(1)が、工程(1−2)を含む、<28>〜<33>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<35>非晶性樹脂(C)は、好ましくはアルコール成分(C−al)とカルボン酸成分(C−ac)とを重縮合して得られるポリエステル樹脂である、<34>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<36>非晶性樹脂(C)のアルコール成分(C−al)が、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を80モル%以上含む、<34>又は<35>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<37>非晶性樹脂(C)のアルコール成分(C−al)が、好ましくは炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を含み、より好ましくはドデセニルコハク酸を含む、<34>〜<36>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<38>非晶性樹脂(C)の軟化点が、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である、<34>〜<37>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<39>非晶性樹脂(C)のガラス転移温度が、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である、<34>〜<38>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<40>非晶性樹脂(C)と、非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)の合計との質量比[(C)/((A)+(B))]が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である、<34>〜<39>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<41>工程(2)において、好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より15℃低い温度以上の温度で保持する、<1>〜<40>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<42>保持温度が、好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より10℃低い温度以上、より好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より8℃低い温度以上、更に好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より5℃低い温度以上、更に好ましくは結晶性樹脂(B)の融点以上であり、そして、好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より30℃高い温度以下、より好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より20℃高い温度以下、更に好ましくは結晶性樹脂(B)の融点より12℃高い温度以下である、<41>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<43>トナー粒子が、コア部及び当該コア部の表面に存在するシェル部を有するコアシェル型トナー粒子であり、前記コア部が非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有し、前記シェル部が、非晶性樹脂(C)を含有する、<1>〜<42>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<44>非晶性樹脂(C)と非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)の合計との質量比[(C)/((A)+(B))]が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である、<43>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<45>非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕が、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である、<1>〜<44>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<46>非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕が、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上、更に好ましくは75/25以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である、<1>〜<45>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<47>(T − T)が、−15以上であり、好ましくは−12以上、より好ましくは−10以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは0以下、更に好ましくは−5以下である、<1>〜<46>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<48>(T − T)が、−20以下であり、好ましくは−30以下、より好ましくは−40以下であり、そして、好ましくは−80以上、より好ましくは−65以上、更に好ましくは−50以上である、<1>〜<47>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<49>下記の関係式(c)を更に満たす、<1>〜<48>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
− T ≧ 10 (c)
<50>(T − T)が、好ましくは15以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上、更に好ましくは40以上であり、そして、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である、<49>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<51>下記の関係式(d)を更に満たす、<1>〜<50>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
− T ≦ 40 (d)
<52>(T − T)が、好ましくは30以下、より好ましくは25以下であり、そして、好ましくは0以上、より好ましくは0超え、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上である、<51>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<53>水系媒体(W)の温度Tが、(T−90)℃以上(T−20)℃以下である、<1>〜<52>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<54>水系媒体(W)の温度Tが、好ましくは(T−20)℃以下、より好ましくは(T−30)℃以下、更に好ましくは(T−40)℃以下であり、そして、好ましくは(T−90)℃以上、より好ましくは(T−80)℃以上、更に好ましくは(T−70)℃以上である、<53>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
各樹脂、ワックス、各粒子、及びトナー等の各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
[樹脂の酸価]
JIS K 0070−1992に記載の中和滴定法に従って測定した。ただし、測定溶媒をクロロホルムとした。
[樹脂の軟化点、結晶性指数、融点及びガラス転移温度]
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合にピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
[ワックスの融点]
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
[ワックスの水酸基価及び酸価]
JIS K 0070に従って測定した。但し、測定溶媒をキシレン及びエタノールの混合溶媒(質量比;キシレン:エタノール=3:5)とした。
[ワックスの数平均分子量(Mn)]
以下に示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量(Mn)を測定した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をクロロホルムに25℃で溶解させ、次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター(製品名:「DISMIC」、型式「25JP」、ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)測定
以下の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、1mL/minの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させ、そこに前記試料溶液100μLを注入して分子量を測定した。試料の分子量(数平均分子量Mn)は、数種類の単分散ポリスチレン(製品名:「TSKgel標準ポリスチレン」;タイプ名(Mw):「A−500(5.0×10)」、「A1000(1.01×10)」、「A2500(2.63×10)」、「A−5000(5.97×10)」、「F−1(1.02×10)」、「F−2(1.81×10)」、「F−4(3.97×10)」、「F−10(9.64×10)」、「F−20(1.90×10)」、「F−40(4.27×10)」、「F−80(7.06×10)」、「F−128(1.09×10)」;いずれも東ソー株式会社製)を標準試料として、予め作成した検量線に基づき算出した。
・測定装置:「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)
・分析カラム:「GMHXL」及び「G3000HXL」(東ソー株式会社製)
[樹脂粒子、着色剤粒子、及びワックス粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値]
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を測定した。また、CV値は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
[樹脂粒子(X)の水系分散体、樹脂粒子(Y)の水系分散体、着色剤粒子分散液、及びワックス粒子分散液の固形分濃度]
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、水分量の変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−水分(質量%)
[凝集粒子の体積中位粒径(D50)]
凝集粒子の体積中位粒径(D50)は次の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
[融着後のトナー粒子の円形度]
次の条件で融着後のトナー粒子の円形度を測定した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:融着後のトナー粒子(Ma)の分散液を固形分濃度が0.001〜0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
[トナー粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値]
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、次の通り測定した。
測定装置、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、前記凝集粒子の体積中位粒径(D50)の測定で用いたものと同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(Hydrophile−LipophileBalance)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を求めた。
また、CV値(%)は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
[トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性]
<低温定着性>
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が1.3〜1.5mg/cmとなるベタ画像をA4紙の上端から5mmの余白部分を残し、50mmの長さで定着させずに出力した。
次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を90℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.2秒の速度でトナーを定着させ、印刷物を得た。
同様の方法で定着器の温度を5℃ずつ上げて、トナーを定着させ、印刷物を得た。
印刷物の画像上の上端の余白部分からベタ画像にかけて、メンディングテープ「Scotch(登録商標)メンディングテープ810」(住友スリーエム株式会社製、幅18mm)を長さ50mmに切ったものを軽く貼り付けた後、500gのおもりを載せ、速さ10mm/sで1往復押し当てた。その後、貼付したテープを下端側から剥離角度180°、速さ10mm/sで剥がし、テープ剥離後の印刷物を得た。テープ貼付前及び剥離後の印刷物の下に上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(株式会社沖データ製)を30枚敷き、各印刷物のテープ貼付前及び剥離後の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、各反射画像濃度から次の式に従って定着率を算出した。
定着率(%)=(テープ剥離後の反射画像濃度/テープ貼付前の反射画像濃度)×100
定着率が90%以上となる最低の温度を最低定着温度(T1)とした。最低定着温度が低いほど低温定着性に優れることを表す。
<低温定着性の経時安定性>
トナーを45℃の恒温槽で200時間保持した後、前記低温定着性の評価と同様の方法で最低定着温度(T2)を測定した。次に、最低定着温度(T1)と最低定着温度(T2)の差を算出し、低温定着性の経時安定性を評価した。数値の絶対値が小さいほど、低温定着性の経時安定性に優れていることを表す。
[トナーの耐熱保存性]
内容積100mLの広口ポリビンにトナー20gを入れて密封し、任意の温度で12時間静置した。その後、25℃の温度下で密封したまま12時間以上静置して冷却した。次いで、「パウダーテスタ(登録商標)」(ホソカワミクロン株式会社製)の振動台に、目開き250μmのフルイをセットし、その上に前記トナー20gを乗せ30秒間振動を行い、フルイ上にトナーが残存するか否かを目視で判別し、残存しなかった保存温度の最大値を凝集しない最高温度とした。温度が高いほど、トナーが耐熱保存性に優れることを表す。
[樹脂の製造]
製造例A1
(非晶性樹脂A−1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン(2.2)付加物3356g、テレフタル酸955g、パラコール6490(日本精鑞株式会社製)385g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)25g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸2.5gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8kPa(G)にて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン2198g、メタクリル酸ステアリル550g、アクリル酸110g、及びジブチルパーオキサイド330gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、−8kPa(G)にて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、190℃まで冷却し、フマル酸200g、セバシン酸194g、トリメリット酸無水物184g、及び4−tert−ブチルカテコール2.5gを加え、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後、−4kPa(G)にて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂A−1を得た。物性を表1に示す。
製造例A2〜A6
(非晶性樹脂A−2〜A−6の製造)
原料組成を表1に示すように変更した以外は製造例A1と同様にして、非晶性樹脂A−2〜A−6を得た。物性を表1に示す。
製造例C1
(非晶性樹脂C−1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン(2.2)付加物5001g、テレフタル酸1788g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3.0gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8kPa(G)にて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、180℃まで冷却し、フマル酸179g、ドデセニルコハク酸無水物206g、トリメリット酸無水物325g、及び4−tert−ブチルカテコール3.8gを加え、220℃まで10℃/hrで昇温し、その後、フラスコ内の圧力を下げ、−10kPa(G)にて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂C−1を得た。物性を表1に示す。
製造例A11
(非晶性樹脂A−11の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン(2.2)付加物4313g、テレフタル酸818g、コハク酸727g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3.0gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8kPa(G)にて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン2756g、メタクリル酸ステアリル689g、アクリル酸142g、及びジブチルパーオキサイド413gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、−8kPa(G)にて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂A−11を得た。物性を表1に示す。
製造例B1
(結晶性樹脂B−1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10−デカンジオール3416g及びセバシン酸4084gを入れた。撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)23gを加え、更に200℃にて1時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持し、結晶性樹脂B−1を得た。物性を表2に示す。
製造例B2
(結晶性樹脂B−2の製造)
原料組成を表2に示すように変更した以外は製造例B1と同様にして、結晶性樹脂B−2を得た。物性を表2に示す。
[樹脂粒子の水系分散体の製造]
製造例X1
(樹脂粒子の水系分散体X−1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、非晶性樹脂A−1を300g、及びメチルエチルケトン300gと脱イオン水41gの混合溶媒を入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/min(周速度63m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子の水系分散体X−1を得た。物性を表3に示す。
製造例X2〜X6
(樹脂粒子の水系分散体X−2〜X−6の製造)
樹脂の種類を表3に示すように変更した以外は、製造例X1と同様にして樹脂粒子の水系分散体X−2〜X−6を得た。物性を表3に示す。
製造例Z1
(樹脂粒子の水系分散体Z−1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、非晶性樹脂C−1を300g、及びメチルエチルケトン180gと脱イオン水25gの混合溶媒を入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/min(周速度63m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子の水系分散体C−1を得た。物性を表3に示す。
製造例P1
(樹脂粒子の水系分散体P−1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、非晶性樹脂A−11を200g、及びメチルエチルケトン200gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水700gを50分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子の水系分散体P−1を得た。物性を表3に示す。
製造例Y1
(樹脂粒子の水系分散体Y−1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、結晶性樹脂B−1を300g、及びメチルエチルケトン300gと脱イオン水41gの混合溶媒を入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、結晶性樹脂B−1の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/min(周速度63m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子の水系分散体Y−1を得た。物性を表4に示す。
製造例Y2
(樹脂粒子の水系分散体Y−2の製造)
結晶性樹脂B−1を結晶性樹脂B−2に変更した以外は、製造例Y1と同様にして樹脂粒子の水系分散体Y−2を得た。物性を表4に示す。
製造例X21
(樹脂粒子の水系分散体X−21の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、非晶性樹脂A−1を210g(混合比70)、結晶性樹脂B−1を90g(混合比30)、及びメチルエチルケトン300gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、非晶性樹脂A−1と結晶性樹脂B−1の酸価との加重平均から求めた混合樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/min(周速度63m/min)で撹拌しながら、脱イオン水630gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子の水系分散体X−21を得た。物性を表5に示す。
[ワックス粒子分散液の製造]
製造例D1
(ワックス粒子分散液D−1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水120g、樹脂粒子の水系分散体P−1 86g、及びパラフィンワックス「HNP−9」(日本精鑞株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90〜95℃に温度を保持して溶融させ、撹拌し、溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を更に90〜95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US−600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、20分間分散処理した後に室温(25℃)まで冷却した。脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、ワックス粒子分散液D−1を得た。分散液中のワックス粒子の体積中位粒径(D50)は0.47μm、CV値は27%であった。
[着色剤粒子分散液の製造]
製造例E1
(着色剤粒子分散液E−1の製造)
内容積1Lのビーカーに、銅フタロシアニン顔料「ECB−301」(大日精化工業株式会社製)150g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G−15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)200g、及び脱イオン水257gを混合し、超音波ホモジナイザー「US−600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて室温下で3時間分散させた後、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤粒子分散液E−1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は0.12μmであった。
[トナーの製造]
実施例1(トナー1の作製)
(凝集融着工程)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子の水系分散体X−1を210g、樹脂粒子の水系分散体Y−1を90g、ワックス粒子分散液D−1を30g、着色剤粒子分散液E−1を20g、及び非イオン性界面活性剤「エマルゲン(登録商標)150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレン(平均付加モル数50)ラウリルエーテル)の10質量%水溶液6gを温度25℃で混合した。次に、該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム19gを脱イオン水187gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液19gを添加してpH8.6に調整した溶液を、25℃で5分かけて滴下した後、59℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径(D50)が5.2μmになるまで、59℃で保持し、凝集粒子(1)の分散液を得た。
前記凝集粒子(1)の分散液の温度を59℃に保持しながら、樹脂粒子分散液Z−1を46g、0.3ml/minの速度で滴下して凝集粒子(2)の分散液を得た。
前記凝集粒子(2)の分散液に、アニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E−27C」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)15g、脱イオン水1050g、及び0.1mol/L硫酸20gを混合した水溶液を添加した。その後、83℃まで1時間かけて昇温した後、0.1mol/L硫酸20gを添加し、円形度が0.970になるまで83℃で保持することにより、凝集粒子が融着したトナー粒子の分散液を得た。
(冷却工程)
攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの4つ口フラスコに脱イオン水3980gを入れ10℃に冷却した。該冷却した脱イオン水を撹拌しながら、前記83℃のトナー粒子の分散液の1500gを冷却した脱イオン水中に一気に添加して、トナー粒子の分散液を30℃±2℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。
なお、冷却に使用する脱イオン水の量は以下のように計算して見積もった。
冷却に使用する脱イオン水の必要量(g)=[トナー粒子の分散液量(g)×(温度T(℃)−温度T(℃))]/(温度T(℃)−温度T(℃))
但し、トナー粒子の分散液の比熱は冷却に使用する脱イオン水の比熱と等しいとした。
該冷却工程の場合、冷却に使用する脱イオン水の必要量(g)=[1500×(83−30)]/(30−10)=3975(g)となるので、10℃の脱イオン水を3980g用意して本冷却工程を行った。
(濾過乾燥工程)
得られたトナー粒子の冷却済み分散液を吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、25℃で2時間吸引濾過した。その後、真空定温乾燥機(ADVANTEC社製 DRV622DA)を用いて、33℃で48時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の物性を表6に示す。
(外添工程)
該トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー1を得た。得られたトナー1の評価結果を表6に示す。
実施例2(トナー2の作製)
冷却工程を次のように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー2を得た。得られたトナー2の評価結果を表6に示す。
(冷却工程)
攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの4つ口フラスコに脱イオン水3980gを入れ10℃に冷却した。前工程で得られた83℃のトナー粒子の分散液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を20g添加した後、分散液の1500gを温度を83℃に保持したまま、60mL/分の速度で、冷却した脱イオン水中に添加して、トナー粒子の分散液を30℃±2℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。
なお、冷却に使用する脱イオン水の量は実施例1と同様に計算して見積もった。
実施例3(トナー3の作製)
冷却工程を次のように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー3を得た。得られたトナー3の評価結果を表6に示す。
(冷却工程)
前工程で得られた83℃のトナー粒子の分散液を室温(25℃)で撹拌しながら68℃まで冷却した。別途、攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの4つ口フラスコに脱イオン水2850gを入れ10℃に冷却した。該冷却した脱イオン水を撹拌しながら、前記68℃のトナー粒子の分散液1500gを冷却した脱イオン水中に一気に添加して、トナー粒子の分散液を30℃±2℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。
なお、冷却に使用する脱イオン水の量は実施例1と同様に計算して見積もった。
すなわち、冷却に使用する脱イオン水の必要量(g)=[1500×(68−30)]/(30−10)=2850(g)となるので、10℃の脱イオン水を2850g用意して本冷却工程を行った。
実施例4(トナー4の作製)
冷却工程を次のように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー4を得た。得られたトナー4の評価結果を表6に示す。
(冷却工程)
攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの4つ口フラスコに脱イオン水1980gを入れ25℃に冷却した。該冷却した脱イオン水を撹拌しながら、前記83℃のトナー粒子の分散液1500gを冷却した脱イオン水中に一気に添加して、トナー粒子の分散液を50℃±2℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。該分散液を室温(25℃)で静置して更に30℃まで冷却した後、次の濾過工程に供した。
なお、冷却に使用する脱イオン水の量は実施例1と同様に計算して見積もった。
すなわち、冷却に使用する脱イオン水の必要量(g)=[1500×(83−50)]/(50−25)=1980(g)となるので、25℃の脱イオン水を1980g用意して本冷却工程を行った。
実施例5(トナー5の作製)
実施例1の凝集融着工程において、樹脂粒子の水系分散体X−1及び樹脂粒子の水系分散体Y−1を使用せず、樹脂粒子の水系分散体X−21を300g使用した以外は実施例1と同様にしてトナー5を得た。得られたトナー5の評価結果を表6に示す。
実施例6(トナー6の作製)
実施例1の凝集融着工程において、樹脂粒子の水系分散体X−1の使用量を240gに、樹脂粒子の水系分散体Y−1の使用量を60gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてトナー6を得た。得られたトナー6の評価結果を表6に示す。
実施例7(トナー7の作製)
実施例1の凝集融着工程において、樹脂粒子の水系分散体X−1の使用量を180gに、樹脂粒子の水系分散体Y−1の使用量を120gに、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてトナー7を得た。得られたトナー7の評価結果を表6に示す。
実施例8〜12、15(トナー8〜12、15の作製)
実施例1の凝集融着工程において、使用する樹脂粒子の水系分散体を表6に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にしてトナー8〜12及び15を得た。得られたトナーの評価結果を表6に示す。
実施例13(トナー13の作製)
冷却工程を次のように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー13を得た。得られたトナー13の評価結果を表6に示す。
(冷却工程)
前工程で得られた83℃のトナー粒子の分散液を室温(25℃)で撹拌しながら68℃まで冷却した。別途、攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの4つ口フラスコに脱イオン水1080gを入れ25℃に冷却した。該冷却した脱イオン水を撹拌しながら、前記68℃のトナー粒子の分散液1500gを25℃の脱イオン水中に一気に添加して、トナー粒子の分散液を50℃±2℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。該分散液を室温(25℃)で静置して更に30℃まで冷却した後、次の濾過工程に供した。
なお、冷却に使用する脱イオン水の量は実施例1と同様に計算して見積もった。
すなわち、冷却に使用する脱イオン水の必要量(g)=[1500×(68−50)]/(50−25)=1080(g)となるので、25℃の脱イオン水を1080g用意して本冷却工程を行った。
実施例14(トナー14の作製)
(凝集融着工程)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子の水系分散体X−1を210g、樹脂粒子の水系分散体Y−1を90g、ワックス粒子分散液D−1を30g、着色剤粒子分散液E−1を20g、及び非イオン性界面活性剤「エマルゲン(登録商標)150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレン(平均付加モル数50)ラウリルエーテル)の10質量%水溶液6gを温度25℃で混合した。次に、該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム19gを脱イオン水187gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液19gを添加してpH8.6に調整した溶液を、25℃で5分かけて滴下した後、59℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径(D50)が5.2μmになるまで、59℃で保持し、凝集粒子(1)の分散液を得た。
前記凝集粒子(1)の分散液の温度を59℃に保持しながら、樹脂粒子分散液Z−1を46g、0.3ml/minの速度で滴下して凝集粒子(2)の分散液を得た。
前記凝集粒子(2)の分散液に、アニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E−27C」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)15g、脱イオン水1050g、及び0.1mol/L硫酸30gを混合した水溶液を添加し、その後、75℃まで50分かけて昇温した後、0.1mol/L硫酸20gを添加し、円形度が0.970になるまで75℃で保持することにより、凝集粒子が融着したトナー粒子の分散液を得た。
(冷却工程)
攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの4つ口フラスコに脱イオン水3380gを入れ10℃に冷却した。該冷却した脱イオン水を撹拌しながら、前記75℃のトナー粒子の分散液の1500gを冷却した脱イオン水中に一気に添加して、トナー粒子の分散液を30℃±2℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。
なお、冷却に使用する脱イオン水の量は実施例1と同様に計算して見積もった。
すなわち、冷却に使用する脱イオン水の必要量(g)=[1500×(75−30)]/(30−10)=3375(g)となるので、10℃の脱イオン水を3375g用意して本冷却工程を行った。
比較例1(トナー16の作製)
冷却工程を次のように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー16を得た。得られたトナーの評価結果を表6に示す。
(冷却工程)
前工程で得られた83℃のトナー粒子の分散液を室温(25℃)で撹拌しながら30℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。
比較例2(トナー17の作製)
冷却工程を次のように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー17を得た。得られたトナーの評価結果を表6に示す。
(冷却工程)
前工程で得られた83℃のトナー粒子の分散液を室温(25℃)で撹拌しながら60℃まで冷却した。別途、攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの4つ口フラスコに脱イオン水2250gを入れ10℃に冷却した。該冷却した脱イオン水を撹拌しながら、前記60℃のトナー粒子の分散液1500gを冷却した脱イオン水中に一気に添加して、トナー粒子の分散液を30℃±2℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。
なお、冷却に使用する脱イオン水の量は実施例1と同様に計算して見積もった。
すなわち、冷却に使用する脱イオン水の必要量(g)=[1500×(60−30)]/(30−10)=2250(g)となるので、10℃の脱イオン水を2250g用意して本冷却工程を行った。
比較例3(トナー18の作製)
冷却工程を次のように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー18を得た。得られたトナーの評価結果を表6に示す。
(冷却工程)
攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの4つ口フラスコに脱イオン水690gを入れ10℃に冷却した。該冷却した脱イオン水を撹拌しながら、前記83℃のトナー粒子の分散液1500gを冷却した脱イオン水中に一気に添加して、トナー粒子の分散液を60℃±2℃まで冷却し、トナー粒子の冷却済み分散液を得た。該分散液を室温(25℃)で静置して更に30℃まで冷却した後、次の濾過工程に供した。
なお、冷却に使用する脱イオン水の量は実施例1と同様に計算して見積もった。
すなわち、冷却に使用する脱イオン水の必要量(g)=[1500×(83−60)]/(60−10)=690(g)となるので、10℃の脱イオン水を690g用意して本冷却工程を行った。
上記表6中の各種冷却条件は以下のとおりである。
冷却1:83℃のトナー粒子の分散液を一気に10℃の脱イオン水へ添加して30℃まで冷却した。
冷却2:83℃のトナー粒子の分散液を60mL/分の速度で10℃の脱イオン水へ添加して30℃まで冷却した。
冷却3:83℃のトナー粒子の分散液を25℃の環境で撹拌しながら68℃まで冷却してから10℃の脱イオン水へ添加することで30℃まで冷却した。
冷却4:83℃のトナー粒子の分散液を一気に25℃の脱イオン水へ添加することで50℃まで冷却した。
冷却5:83℃のトナー粒子の分散液を25℃の環境で撹拌しながら68℃まで冷却してから25℃の脱イオン水へ添加することで50℃まで冷却した。
冷却6:75℃のトナー粒子の分散液を10℃の脱イオン水へ添加することで30℃まで冷却した。
冷却7:83℃のトナー粒子の分散液を25℃の環境で撹拌しながら60℃まで冷却してから10℃の脱イオン水へ添加することで30℃まで冷却した。
冷却8:83℃のトナー粒子の分散液を10℃の脱イオン水へ添加することで60℃まで冷却した。
徐冷:83℃のトナー粒子の分散液を25℃の環境で撹拌しながら30℃まで冷却した。
表6から、実施例1〜15の製造方法で得られたトナーは、比較例1〜3の製造方法で得られたトナーに比べて、低温定着性に優れ、かつ経時的な低温定着性の低下を抑制でき、更に耐熱保存性に優れることがわかる。

Claims (11)

  1. 非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を含有するトナー粒子の分散液を冷却する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    前記冷却する工程が、温度T(℃)のトナー粒子の分散液を、水系媒体(W)中に添加して温度T(℃)まで冷却する操作を含み、
    温度T、温度T及び、結晶性樹脂(B)の融点T(℃)が下記の関係式(a)及び(b)を満たし、
    − T ≧ −15 (a)
    − T ≦ −20 (b)
    トナー粒子の分散液の添加開始時の水系媒体(W)の温度Tが温度T以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
  2. 非晶性樹脂(A)及び結晶性樹脂(B)を水系媒体中で凝集させて凝集粒子の分散液を得る工程、及び
    得られた凝集粒子を融着させて、トナー粒子の分散液を得る工程を更に有する、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 下記の関係式(c)を更に満たす、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
    − T ≧ 10 (c)
  4. 下記の関係式(d)を更に満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
    − T ≦ 40 (d)
  5. 水系媒体(W)の温度Tが、(T−90)℃以上(T−20)℃以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  6. 結晶性樹脂(B)が、α,ω−脂肪族ジオールを80モル%以上含むアルコール成分と炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸を80モル%以上含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステルである、請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  7. 非晶性樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との質量比〔非晶性樹脂(A)/結晶性樹脂(B)〕が、50/50以上95/5以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  8. 非晶性樹脂(A)が、ポリエステル樹脂セグメント、及び水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス由来の構成成分を含む非晶性複合樹脂である、請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  9. 非晶性樹脂(A)が、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントを含む非晶性複合樹脂である、請求項1〜8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  10. 非晶性樹脂(A)が、ポリエステル樹脂セグメントを含み、ポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキサイド付加物を80モル%以上含む、請求項1〜9のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  11. 結晶性樹脂(B)の含有量が、トナーの樹脂成分の総量に対して、5質量%以上45質量%以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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