JP2017190390A - 積層体の製造方法および積層体、ならびに物品 - Google Patents
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Abstract
Description
また、エッチング処理により、フッ素樹脂層のエッチング処理面は、表面積が増加することから、上記エッチング処理面上に形成される接着層との接着面積も増加する。これにより上記層間接着強度を向上させることができる。
さらに、照射工程では、電子線照射により、電子線硬化性樹脂が硬化するのと同時に、フッ素樹脂層内に生じた反応活性種と電子線硬化性樹脂が有する重合性官能基との架橋結合が形成されるため、接着層とフッ素樹脂層との層間接着強度を更に向上させることができる。
このように、本発明によれば、一連の工程によりフッ素樹脂層と接着層との間に生じる機械的結合および化学的相互作用により、フッ素樹脂層の接着性を向上させた積層体を得ることができる。
まず、本発明の積層体の製造方法について説明する。本発明の積層体の製造方法は、フッ素樹脂層および上記フッ素樹脂層の少なくとも一方の面上に配置された接着層を有する積層体の製造方法であって、上記フッ素樹脂層の少なくとも一方の表面に対してエッチング処理を行うエッチング工程と、上記フッ素樹脂層の上記エッチング処理を行ったエッチング処理面上に、電子線硬化性樹脂を含む接着層用組成物を塗布する塗布工程と、上記フッ素樹脂層の上記接着層用組成物が塗布された面側から電子線を照射し、上記電子線硬化性樹脂を硬化させて上記接着層を形成する照射工程と、を有することを特徴とする。
まず、フッ素樹脂層1を準備し、フッ素樹脂層1の一方の表面に対してエッチング処理を行う(図1(a)、(b)、エッチング工程)。図1(a)では、エッチング処理として、プラズマXによるドライエッチング処理を行う例を示している。ここで、フッ素樹脂層1は、通常、その表面に多数の微細孔を有しているが、エッチング処理を行うことで、既存の微細孔が削られて孔径や深さが大きくなる。このため、フッ素樹脂層1のエッチング処理面は、エッチング処理前よりも拡大された微細孔を多数有する微細凹凸面となり、表面積が増加する。
次に、フッ素樹脂層1のエッチング処理を行ったエッチング処理面上に、電子線硬化性樹脂を含む接着層用組成物2Aを塗布する(図1(c)、塗布工程)。このとき、接着層用組成物2Aは、微細孔内に浸入する。
続いて、フッ素樹脂層1の接着層用組成物2Aが塗布された面側から電子線Yを照射して(図1(d))、接着層用組成物2A中の電子線硬化性樹脂を硬化させて接着層2を形成する(図1(e))。このとき、微細孔内の電子線硬化性樹脂が、電子線Yの照射により硬化されることで、接着層2とフッ素樹脂層1との間にアンカー効果が生じて、層間接着強度が向上する。また、電子線Yの照射により、接着層2が形成されるのと同時に、電子線Yが接着層用組成物2Aを介してフッ素樹脂層1に到達することで、フッ素樹脂層1と接着層2との層間に架橋結合が形成される等の化学的相互作用が生じる。
これにより、フッ素樹脂層1の接着性を向上させた積層体10が得られる。
一般に、フッ素樹脂層の表面には、構成材料であるフッ素樹脂の種類を問わず、図2(a)で示すような微細孔が多数存在する。本発明によれば、エッチング処理工程において、フッ素樹脂層表面に対して所望の方法でエッチング処理をすることで、フッ素樹脂層表面の既存の微細孔が削られ、その孔径や孔深さが大きくなる。このように、エッチング処理を行うことにより、フッ素樹脂層のエッチング処理面には、エッチング処理前よりも拡大された微細孔が多数存在することとなり、エッチング処理前よりも表面積や空孔率の高い粗面、すなわち微細凹凸面となる。
なお、図2(a)は、エッチング工程前のフッ素樹脂(PTFE)層表面のSEM画像であり、図2(b)はエッチング工程後のフッ素樹脂(PTFE)層表面のSEM画像である。
このとき、フッ素樹脂層および接着層間で架橋結合が形成されるため、接着層が薄厚であっても、所望の層間接着強度を得ることが可能である。中でも、PTFEやPCTFEを用いたフッ素樹脂層は、他のフッ素樹脂を用いた場合と比較して接着性が特に劣るところ、本発明によれば、これらのフッ素樹脂を用いたフッ素樹脂層に対しても、薄厚な接着層を形成することができ、且つフッ素樹脂層および接着層間に所望の層間接着強度を有することが可能となる。なお、フッ素樹脂層表面に到達する電子線は、接着層用組成物の塗布層を透過してエネルギーが減衰しているため、電子線照射によるフッ素樹脂の分解を抑えることができる。
また、本発明によれば、薄膜且つフッ素樹脂層の接着性を向上させることが可能な接着層が形成されることから、接着層の形成に感圧接着剤を用いた場合に想定される上述の不具合の発生を抑制することができる。
本発明におけるエッチング工程は、上記フッ素樹脂層の少なくとも一方の表面に対してエッチング処理を行う工程である。
本工程に用いられるフッ素樹脂層は、本発明により得られる積層体の用途に適した表面滑性、絶縁性、ガスバリア性、耐薬品性、その他の種々物性を示すことが好ましい。
フッ素樹脂層を構成するフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとの共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体(ECTFE)、パーフルオロエチレンプロピレン共重合(PFEP)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。
上記フッ素樹脂層は、上記のフッ素樹脂の1種またはそれ以上で構成されるフィルム乃至シートである。
フッ素樹脂層の膜厚は、例えば(株)ミツトヨ製 デジマティックマイクロメータで測定した平均値である。
上記エッチング処理の種類は特に限定されず、ドライエッチング処理であってもよくウエットエッチング処理であってもよい。中でも、上記エッチング処理がドライエッチング処理であることが好ましい。ウエットエッチング処理では、エッチャントの種類によってフッ素樹脂層の変色や透明性の低下が生じる場合があるところ、ドライエッチング処理ではそのような不具合が生じにくく、本発明により得られる積層体を、透明性が要求される用途等の幅広い用途に使用可能となるからである。
以下、本工程において実施されるエッチング処理について、種類ごとに説明する。
本工程で実施可能なドライエッチング処理としては、フッ素樹脂層表面の微細孔を拡大することが可能な処理であればよく、その種類としては、原子と原子との衝突散乱現象による物理エッチング処理を含むことが好ましい。物理エッチング処理によれば、不活性イオンや原子がフッ素樹脂層表面に衝突してフッ素樹脂を除去することから、微細孔を効果的に拡大することができるからである。
また、フッ素樹脂層がPTFE、PCTFE等のフッ素樹脂を含む場合は、物理エッチング処理が好ましい。
すなわち、本工程におけるプラズマエッチング処理とは、処理ガスをプラズマイオン化してフッ素樹脂層表面に衝突させて衝突散乱によりエッチングする処理である。
なお、本明細書内におけるプラズマエッチング処理には、プラズマ処理装置を用いたプラズマエッチング処理の他、スパッタ装置を用いてエッチング処理を行うスパッタエッチング処理も含む。プラズマ処理装置によるプラズマエッチング処理と、スパッタ装置によるエッチング処理とは、装置の真空度、処理ガスの種類、電位のかけ方等の装置の設定条件が異なるが、プラズマによるエッチング方法は同様である。
プラズマ処理装置として、上述した処理が可能な装置であればよく、具体的には、容量結合型、誘導結合型、平行平板型、マイクロ波型、バレル型が挙げられる。中でも誘導結合型やマイクロ波型は、有効に原子にエネルギーを与えて加速させることができるため好適であるが、装置の構造や真空度等から総合的にエッチング効率が求められるため、方式は特定しない。
プラズマ処理装置として、従来公知のスパッタ装置を用いることも可能である。以下のプラズマ処理装置の説明には、スパッタ装置も含むものとする。
高周波(RF)電圧の周波数帯としては、チャンバー内においてプラズマを発生させ、処理ガスをイオン化することが可能な周波数帯であればよく、5MHz以上20GHz以下で設定することができる。
不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガス、窒素(N2)等の公知のガスが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、エッチング速度やエッチング選択比を調整するために、2種以上を混合して用いてもよい。中でも高エッチング率が得られ且つ高純度で低コストであることから、アルゴンが好適である。
なお、スパッタ装置を用いて本処理を行う場合は、処理ガスとしては、通常、アルゴンが用いられるが、上記処理ガスには、アルゴンの他、一部に酸素や窒素等が含まれていてもよい。
例えば、流量は1sccm〜5000sccm程度とすることができる。ここでsccmとは、標準状態(STP:0℃、1atm)での1分間当たりの処理ガスの平均導入量(cc)を意味する。
なお、プラズマエッチング処理において、エッチング方向は、電極方向、処理ガスの濃度や直進性等により決定することができる。
ウエットエッチング処理は、エッチャントと呼ばれる薬液を用いて被エッチング材のエッチングを行う表面処理法である。
本工程においては、フッ素樹脂層の表面に対してウエットエッチング処理を行うことにより、微細孔内にエッチャントが入りこみ、微細孔の壁が化学反応によりエッチングされることで、フッ素樹脂層の表面の既存の微細孔を拡大することができる。
また、ウエットエッチング処理によれば、微細孔の拡大に加えて、化学反応によりフッ素樹脂層のフッ素原子を外し、除去部分を化学修飾することができる。これにより、フッ素樹脂層は、その表面の微細孔の形状による接着力の向上に加えて、化学修飾による表面改質により接着力の向上を図ることができる。
ウエットエッチング処理の処理条件については特に限定されず、例えば、エッチング温度は、エッチャントがその性能を発揮可能な温度であればよく、エッチャントの種類やエッチング方式、エッチングレート、処理時間等に応じて適宜設定することができる。
エッチング処理後のフッ素樹脂層は、エッチング処理面に多数の微細孔を有する。エッチング処理後のフッ素樹脂層は、エッチング処理の前と同等の物性を示すことができる。
本発明における塗布工程は、上記フッ素樹脂層の上記エッチング処理を行ったエッチング処理面上に、電子線硬化性樹脂を含む接着層用組成物を塗布する工程である。
本工程において使用される接着層用組成物は、電子線硬化性樹脂を含む。本工程において接着層は、電子線照射により接着層用組成物中の電子線硬化性樹脂が硬化することで形成される。
電子線硬化性樹脂としては、一般的な接着層の形成に使用される樹脂を用いることができるが、中でも電子線照射により硬化して得られる接着層が、フッ素樹脂層と同程度の弾性および伸び特性を有することが可能となる樹脂が好ましい。
このような電子線硬化性樹脂としては、電子線照射を受けた際に直接、重合や二量化等の反応を起こす重合性官能基を有するモノマー、ダイマー、オリゴマーおよびポリマーを用いることができる。例えば、アクリル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを挙げることができる。
多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。
上記多官能性(メタ)アクリレートとして具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えばポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、中間体ポリマーにエチレン性不飽和結合のペンダント構造を導入するために用いる化合物としては、エチレン性不飽和結合と共に極性基を有するモノマーまたはオリゴマーの中から、中間体ポリマーの極性基と反応可能な樹脂を選択し用いることができる。
なお、電子線硬化性樹脂は電子線照射により硬化することから、上記接着層用組成物には、通常、重合開始剤は含まれない。
ここで、低分子材料とは、分子量が1000以下の材料をいい、具体的には、未反応のモノマーやオリゴマー、各種溶剤、紫外線重合開始剤のような光崩壊ラジカル発生材料、フタル酸エステル類等の可塑剤、添加剤等が挙げられる。
上記接着層用組成物の粘度は、JIS K7117−1に準拠した方法に従い、B型粘度計を用いて25℃の環境下にて測定することができる。
本工程において、フッ素樹脂層のエッチング処理面上に接着層用組成物を塗布する方法としては、所望の膜厚の塗布層を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、接着層用組成物の組成に応じて適宜選択される。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースロールコート法、コンマコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の公知の方式が挙げられる。
なお、上記接着層用組成物は、通常、溶剤を用いずにフッ素樹脂層上に直接塗布される。
本発明における照射工程は、上記フッ素樹脂層の上記接着層用組成物が塗布された面側から電子線を照射し、上記電子線硬化性樹脂を硬化させて上記接着層を形成する工程である。
電子線の照射線量を上記範囲内とすることで、フッ素樹脂層への過剰な電子線照射を抑制しつつ、フッ素樹脂層と接着層との間に架橋結合を形成することが可能だからである。また、フッ素樹脂層が電子線崩壊性フッ素樹脂層である場合、上記照射線量とすることで、上記フッ素樹脂の分子内において反応活性種による分子鎖の切断が促進されるため、分子鎖の切断箇所と電子線硬化性樹脂に含まれる重合性官能基との反応により架橋結合を形成することができ、接着層およびフッ素樹脂層間の層間接着強度をより向上させることが可能となるからである。
加速電圧を上記範囲内とすることにより、フッ素樹脂層内にも電子線が透過することとなり、フッ素樹脂の分子内に反応活性種を発生させることができる。また、フッ素樹脂層が電子線崩壊性フッ素樹脂層である場合では、上記加速電圧で電子線を照射することで、フッ素樹脂の分子内において反応活性種による分子鎖の切断が促進される。
上記接着層の膜厚は、上述した接着層用組成物の塗布層の膜厚と同様とすることができる。
本発明は、上記エッチング工程と上記塗布工程との間に、上記フッ素樹脂層の上記エッチング処理面に上記接着層用組成物に対する親液性を付与する親液化処理工程を有することが好ましい。上記エッチング工程と上記塗布工程との間に本工程を有することで、接着層用組成物がフッ素樹脂層表面に有する微細孔に入り込みやすくなるため、フッ素樹脂層のエッチング処理面と接着層用組成物との密着性が向上して、アンカー効果が得られやすくなるからである。
親液化処理を行う際の処理条件については、親液化処理の種類や親液性の程度に応じて適宜設定することができる。
ここで、「塗布工程の直前」とは、親液化処理を完了してから接着層用組成物の塗布開始までの時間が0.5秒〜60秒の範囲内であることが好ましく、中でも1.0秒〜30秒の範囲内であることが好ましい。
本発明においては、塗布工程および照射工程によりフッ素樹脂層の一方の面に接着層を形成した後、上記フッ素樹脂層の接着層が形成されていない面に対して、第2エッチング工程、第2塗布工程および第2照射工程を行ってもよい。これにより、フッ素樹脂層の両面にそれぞれ接着層が配置された積層体を得ることができる。さらに、上記第2エッチング工程と上記第2塗布工程との間に第2親液化処理工程を有してもよい。
本発明により得られる積層体は、フッ素樹脂層および上記フッ素樹脂層の少なくとも一方の面上に配置された接着層を有する。上記フッ素樹脂層の上記接着層と接する面は、多数の微細孔を有する微細凹凸面である。上記積層体は、例えば、図1(e)で示す構造を有する。
低分子材料の溶出量は、プラスチック食品容器や医薬品容器、医療器具の溶出物試験法(日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法)により測定することができる。
また、上記接着層上には、通常、剥離層が設けられる。剥離層としては、従来公知の接着シートに使用される剥離層を用いることができる。
次に、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、フッ素樹脂層および上記フッ素樹脂層の少なくとも一方の面上に配置された接着層を有し、上記フッ素樹脂層を構成するフッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンであり、上記フッ素樹脂層と上記接着層との層間接着強度が300gf/cm以上であることを特徴とする。
また、本発明の積層体は、ドライクリーニング等の耐薬品・耐熱性の必要なIDタグの封止材、放熱・耐熱板、ファン、チラーのボード、パイプ、軸、軸受け等として用いることができる。
次に、本発明の物品について説明する。本発明の物品は、フッ素樹脂層および上記フッ素樹脂層の少なくとも一方面上に配置された接着層を有する積層体と、上記積層体の上記接着層上に配置された構造体と、を有し、上記フッ素樹脂層を構成するフッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンであり、上記フッ素樹脂層と上記接着層との層間接着強度が300gf/cm以上であることを特徴とする。
本発明における構造体は、上記積層体の上記接着層上に配置される。
上記構造体としては、フッ素樹脂層の物性を利用する用途に用いられる物体であれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレンや塩化ビニル等の樹脂シート、薬栓、ガスケットのラミネートゴム、PTP(press through pack)包装材料の防湿シート等の医療用部品、太陽電池フロントパネル、LED、CPU等の電子部品(具体的には、LEDの反射基材、CPUの放熱ファン、各種電子部品の耐熱層等)、車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス等の車両用部品等が挙げられる。
本発明の物品は、上述の構造体とフッ素樹脂層とが接着層を介して貼り合わされていることから、構造体にフッ素樹脂層の物性が付与された物品や、上記構造体によりフッ素樹脂層の機械的特性(例えば、熱収縮度、光透過、屈折、強度、反り等)が調整された物品とすることができる。
本発明の物品において、積層体の上記接着層上に構造体が配置されるとは、構造体の表面の一部が積層体の接着層と接していてもよく、上記構造体の表面が上記積層体により被覆されていてもよい。
本発明の物品は、構造体の種類に応じて、医療用物品、食品衛生用物品、自動車用物品、電子用物品、一般工業用物品等として用いることができる。
実施例および比較例で使用した接着層用組成物およびフッ素樹脂層は下記の通りである。
実施例および比較例で使用した接着層用組成物A〜Iは、それぞれ下記組成を含む。
また、接着層用組成物A〜Fの粘度を表1に示す。なお、接着層用組成物の粘度は、JIS K7117−1に準拠した方法に従い、B型粘度計を用いて測定した(25℃の環境下)。
・電子線硬化性樹脂:紫光UV−3200B(イソホロンジイソシアネートと、ポリエステル系ポリオールおよび3−メチル−1,5ペンタメチレンジオールならびにアジピン酸およびイソフタル酸の反応物と、2−ヒドロキシエチルアクリレートを主原料とする残存イソシアネートを有する硬化時に柔軟性を有する2〜3官能ウレタンアクリレート反応物とを含む。日本合成化学工業社製) … 60質量部
・反応希釈剤:アクリロイルモルフォリン … 40質量部
・電子線硬化性樹脂:紫光UV−3200B … 50質量部
・反応希釈剤:アクリロイルモルフォリン … 50質量部
・電子線硬化性樹脂:紫光UV−3200B … 60質量部
・反応希釈剤:フェノキシエチルアクリレート … 40質量部
・電子線硬化性樹脂:紫光UV−3200B … 80質量部
・反応希釈剤:アクリロイルモルフォリン … 20質量部
・電子線硬化性樹脂:紫光UV−3200B … 70質量部
・反応希釈剤:アクリロイルモルフォリン … 30質量部
・電子線硬化性樹脂:紫光UV−3200B … 80質量部
・反応希釈剤:フェノキシエチルアクリレート … 20質量部
・接着層用組成物Dに光重合開始剤(イルガキュア184 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)4質量部を十分に分散および溶解させた紫外線硬化型の接着層用組成物。
・接着層用組成物Eに光重合開始剤(イルガキュア184 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)4質量部を十分に分散および溶解させた紫外線硬化型の接着層用組成物。
・接着層用組成物Fに光重合開始剤(イルガキュア184 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)4質量部を十分に分散および溶解させた紫外線硬化型の接着層用組成物。
実施例および比較例で用いたフッ素樹脂層(エッチング処理前)は、以下の通りである。
・フッ素樹脂層A:PTFEキャスト製膜フィルム、厚さ43μm、中興化成工業社製
・フッ素樹脂層B:PCTFEキャスト製膜フィルム、厚さ50μm、ダイキン社製
1.エッチング工程
フッ素樹脂層Aの片面に対し、以下の方法でドライエッチング処理を行った。まず、誘電型真空プラズマ装置(マーチン社製)のチャンバー中にフッ素樹脂層Aを設置した後、減圧手段によりチャンバー内を10−5Torrに減圧真空にした。印加電圧には、13.56MHzの高周波電圧を用いた。処理ガスとしてアルゴンガスを用い、到達真空度を5.0E−4mbarとしてプラズマエッチング処理を実施した。
フッ素樹脂層Aのエッチング処理面に、接着層用組成物Aを15g/m2の厚さとなるように塗布した。
電子線照射装置を用いて、接着層用組成物Aの塗布面側から表2に示す照射条件I〜IVの各条件で電子線を照射して電子線硬化性樹脂を硬化させて接着層を形成し、積層体1A〜1Dをそれぞれ得た。
接着層用組成物Aに代えて接着層用組成物Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体2A〜2Dをそれぞれ得た。
接着層用組成物Aに代えて接着層用組成物Cを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体3A〜3Dをそれぞれ得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体4A〜4Dをそれぞれ得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で積層体5A〜5Dをそれぞれ得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で積層体6A〜6Dをそれぞれ得た。
エッチング工程後、接着層用組成物Aを塗布する直前に、下記の方法で親液化処理工程を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体7A〜7Dを得た。
(親液化処理工程)
フッ素樹脂層Aのエッチング処理面に対しコロナ処理をした。コロナ処理後の上記エッチング処理面の接触角は60°(処理前の接触角=75°)であった。上記接触角の測定は、JIS K6768に準じてθ/2法にて行った。また、同じくJIS K6768に準じた方法により、試薬を綿棒につけて塗布して2秒後に液膜が破れるか否か判定し、コロナ処理によりエッチング処理面の濡れ性が向上されたことが確認された。
エッチング工程後、接着層用組成物Bを塗布する直前に、フッ素樹脂層Aのエッチング処理面に対し、実施例7と同様の親液化処理工程を行ったこと以外は、実施例2と同様の方法で積層体8A〜8Dを得た。
エッチング工程後、接着層用組成物Cを塗布する直前に、フッ素樹脂層Aのエッチング処理面に対し、実施例7と同様の親液化処理工程を行ったこと以外は、実施例3と同様の方法で積層体9A〜9Dを得た。
エッチング工程後、接着層用組成物Aを塗布する直前に、フッ素樹脂層Bのエッチング処理面に対し、実施例7と同様の親液化処理工程を行ったこと以外は、実施例4と同様の方法で積層体10A〜10Dを得た。
エッチング工程後、接着層用組成物Bを塗布する直前に、フッ素樹脂層Bのエッチング処理面に対し、実施例7と同様の親液化処理工程を行ったこと以外は、実施例5と同様の方法で積層体11A〜11Dを得た。
エッチング工程後、接着層用組成物Cを塗布する直前に、フッ素樹脂層Bのエッチング処理面に対し、実施例7と同様の親液化処理工程を行ったこと以外は、実施例6と同様の方法で積層体12A〜12Dを得た。
接着層用組成物Aに代えて接着層用組成物Dを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体13A〜13Dをそれぞれ得た。
接着層用組成物Aに代えて接着層用組成物Eを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体14A〜14Dをそれぞれ得た。
接着層用組成物Aに代えて接着層用組成物Fを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体15A〜15Dをそれぞれ得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、実施例13と同様の方法で積層体16A〜16Dをそれぞれ得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、実施例14と同様の方法で積層体17A〜17Dをそれぞれ得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、実施例15と同様の方法で積層体18A〜18Dをそれぞれ得た。
エッチング工程を行わなかったこと以外は、実施例13と同様の方法で積層体19A〜19Dをそれぞれ得た。
エッチング工程を行わなかったこと以外は、実施例14と同様の方法で積層体20A〜20Dをそれぞれ得た。
エッチング工程を行わなかったこと以外は、実施例15と同様の方法で積層体21A〜21Dをそれぞれ得た。
エッチング工程を行わなかったこと以外は、実施例16と同様の方法で積層体22A〜22Dをそれぞれ得た。
エッチング工程を行わなかったこと以外は、実施例17と同様の方法で積層体23A〜23Dをそれぞれ得た。
エッチング工程を行わなかったこと以外は、実施例18と同様の方法で積層体24A〜24Dをそれぞれ得た。
エッチング工程として、実施例1と同様の方法で、フッ素樹脂層Aの片面に対してドライエッチング処理を行った。次に、塗布工程として、フッ素樹脂層Aのエッチング処理面に15g/m2の厚さとなるように接着層用組成物Gを塗布した。続いて、硬化工程として、紫外線照射装置を用いて、出力80W/cm、高圧水銀UV灯下、積算光量800mJ/cm2で、塗布面側から紫外線を照射し、接着層用組成物Gの塗布層を硬化して接着層を形成し、積層体25を得た。
接着層用組成物Gに代えて接着層用組成物Hを用いたこと以外は、比較例7と同様の方法で積層体26を得た。
接着層用組成物Gに代えて接着層用組成物Iを用いたこと以外は、比較例7と同様の方法で積層体27を得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、比較例7と同様の方法で積層体28を得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、比較例8と同様の方法で積層体29を得た。
フッ素樹脂層Aに代えてフッ素樹脂層Bを用いたこと以外は、比較例9と同様の方法で積層体30を得た。
実施例1〜18、および比較例1〜12で得た積層体を15mm巾の短冊状に切断し、接着層上にガムテープを貼合して補強したサンプルを作製した。
各サンプルについてT型剥離試験を行いてT型剥離強度を測定し、得られた測定値をフッ素樹脂層と接着層との層間接着強度とした。
T型剥離試験は、JIS K6854−3 1999(T型剥離試験法)に準じて、テンシロン(オリエンテック社製 引張試験機RTA−250)を用い、標準ロードセルで20%加重しながら毎分100mmの速度で剥離して行った。
剥離強度は、サンプルの剥離開始側に位置するサンプルの端部から、T型剥離強度が安定する位置(サンプルの端部から長さ方向30mmの位置)での強度の平均値(測定数N=6)を記録した。
実施例1〜6の各積層体を用いたサンプルの層間接着強度の結果を表3に、実施例13〜実施例18の各積層体を用いたサンプルの層間接着強度の結果を表5に、比較例1〜6の各積層体を用いたサンプルの層間接着強度の結果を表6に、比較例7〜12の各積層体を用いたサンプルの層間接着強度の結果を表7にそれぞれ示す。
また、表4に示さないが、実施例7〜12については、親液化未処理の実施例1〜6において対応するサンプルの層間接着強度よりも上回る結果となった。
さらに、親液化処理工程を行うことで、親液化処理工程を行なわない場合よりも、接着層用組成物を塗布したときに均一に広がり、得られる積層体のフッ素樹脂層と接着層との層間接着強度のばらつきが小さくなった。
2 … 接着層
2A … 接着層用組成物
10 … 積層体
Claims (8)
- フッ素樹脂層および前記フッ素樹脂層の少なくとも一方の面上に配置された接着層を有する積層体の製造方法であって、
前記フッ素樹脂層の少なくとも一方の表面に対してエッチング処理を行うエッチング工程と、
前記フッ素樹脂層の前記エッチング処理を行ったエッチング処理面上に、電子線硬化性樹脂を含む接着層用組成物を塗布する塗布工程と、
前記フッ素樹脂層の前記接着層用組成物が塗布された面側から電子線を照射し、前記電子線硬化性樹脂を硬化させて前記接着層を形成する照射工程と、
を有することを特徴とする積層体の製造方法。 - 前記エッチング処理がドライエッチング処理であることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
- 前記フッ素樹脂層を構成するフッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の製造方法。
- 前記照射工程で照射される前記電子線の照射線量が5MGy以上20MGy未満であることを特徴とする請求項3に記載の積層体の製造方法。
- 前記接着層用組成物の粘度が20Pa・s以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の積層体の製造方法。
- 前記エッチング工程と前記塗布工程との間に、前記フッ素樹脂層の前記エッチング処理面に前記接着層用組成物に対する親液性を付与する親液化処理工程を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の積層体の製造方法。
- フッ素樹脂層および前記フッ素樹脂層の少なくとも一方の面上に配置された接着層を有し、
前記フッ素樹脂層を構成するフッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンであり、
前記フッ素樹脂層と前記接着層との層間接着強度が300gf/cm以上であることを特徴とする積層体。 - フッ素樹脂層および前記フッ素樹脂層の少なくとも一方面上に配置された接着層を有する積層体と、
前記積層体の前記接着層上に配置された構造体と、
を有し、
前記フッ素樹脂層を構成するフッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリクロロトリフルオロエチレンであり、
前記フッ素樹脂層と前記接着層との層間接着強度が300gf/cm以上であることを特徴とする物品。
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