JP2024066234A - 積層体 - Google Patents

積層体 Download PDF

Info

Publication number
JP2024066234A
JP2024066234A JP2022175684A JP2022175684A JP2024066234A JP 2024066234 A JP2024066234 A JP 2024066234A JP 2022175684 A JP2022175684 A JP 2022175684A JP 2022175684 A JP2022175684 A JP 2022175684A JP 2024066234 A JP2024066234 A JP 2024066234A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
gas barrier
adhesive layer
laminate
sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022175684A
Other languages
English (en)
Inventor
博貴 木下
智史 永縄
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Lintec Corp
Original Assignee
Lintec Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Lintec Corp filed Critical Lintec Corp
Priority to JP2022175684A priority Critical patent/JP2024066234A/ja
Publication of JP2024066234A publication Critical patent/JP2024066234A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Adhesive Tapes (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)

Abstract

【課題】工程シートの剥離後におけるガスバリア性が改善された積層体を提供する。【解決手段】工程シート、下地層、ガスバリア層、及び粘着層をこの順で積層した積層体であって、前記粘着層は、せん断変形時の0.1秒後の緩和弾性率が4×105Pa以上である、積層体。前記粘着層がアクリル酸エステル重合体を含有することが好ましい。前記下地層が耐熱性樹脂を含有することが好ましい。前記粘着層の前記ガスバリア層に対する粘着力が1N/25mm以上であることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、積層体に関する。
近年、有機EL素子は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。しかし、有機EL素子には、時間の経過とともに、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が低下し易いという問題がある。
有機EL素子に代表される経時的な性能劣化の問題は、近年注目される電子部材や光学部材全般に概して当てはまる問題である。この原因として、電子部材や光学部材の内部に酸素や水分等が浸入し、性能劣化を引き起こしていると考えられる。
そして、この原因への対処方法として、層構成を有するガスバリア性の封止剤で、被封止物となる電子部材や光学部材等を封止する方法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、封止剤として、剥離シート/下地層/ガスバリア層/接着剤層の層構成を有するガスバリア性フィルムが開示されている。特許文献1には、接着剤層に含有される樹脂として、ポリオレフィン系樹脂が記載され、また、下地層に含有される熱可塑性樹脂として、ポリスルホン系樹脂が記載されている。
国際公開第2018/180962号公報
特許文献1にあっては、剥離シート上に形成された下地層及びガスバリア層からなる薄膜ガスバリアフィルムは、接着剤層を介して、被着体に貼合され、被着体に貼合された後に剥離シートが剥離される。斯かる一連の工程において、ガスバリア性能が保持される必要があるが、剥離シートの剥離後にガスバリア層にクラックが発生し、ガスバリア性が低下することがあり、剥離シートの剥離後におけるガスバリア性について改善の余地があった。
そこで、本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、工程シートの剥離後におけるガスバリア性が改善された積層体を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、粘着層の緩和弾性率を上昇させることによって、工程シートの剥離後におけるガスバリア性が改善されることを着想し、本発明の積層体を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]~[8]に関する。
[1] 工程シート、下地層、ガスバリア層、及び粘着層をこの順で積層した積層体であって、前記粘着層は、せん断変形時の0.1秒後の緩和弾性率が4×10Pa以上である、積層体。
[2] 前記粘着層がアクリル酸エステル重合体を含有する、[1]に記載の積層体。
[3] 前記下地層が耐熱性樹脂を含有する、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 前記粘着層の前記ガスバリア層に対する粘着力が1N/25mm以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5] 前記工程シートの下地層に対する剥離力が1.0N/25mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記粘着層の厚みが20μm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] 前記下地層の厚みが20μm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8] ヘイズ値が2%以下であり、全光線透過率が85%以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
本発明によれば、工程シートの剥離後におけるガスバリア性が改善された積層体を提供することが可能となる。
本発明の積層体の一例を示す概略断面図である。
本明細書において、「ガスバリア性」とは、酸素や水蒸気等の気体の透過を防止する特性を指していう。
また、本明細書において、「重量平均分子量」及び「数平均分子量」は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」の記載は、「アクリロイル」及び/又は「メタクリロイル」を意味する。同様に、「(メタ)アクリル」の記載も「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。
[積層体]
第一の実施形態の積層体において、工程シート、下地層、ガスバリア層、及び粘着層がこの順で積層しており、粘着層は、せん断変形時の0.1秒後の緩和弾性率が4×10Pa以上である。
第一の実施形態の積層体は、工程シート、下地層、ガスバリア層、及び粘着層がこの順で積層してなる限り、特に制限はなく、密着性向上層等のその他の層がさらに積層していてもよい。例えば、粘着層は、ガスバリア層上に直接積層してもよいし、ガスバリア層上に密着性向上層を介して積層してもよい。
工程シート、下地層、ガスバリア層、及び粘着層の4層は、直接に(その他の層を介在させることなく)積層していてもよく、各層間の少なくともいずれか1つにその他の層が介在してもよいが、直接に(その他の層を介在させることなく)積層していることが好ましい。
第一の実施形態の積層体が有する層構成としては、例えば、任意で粘着層に積層される第2工程シートを有する、以下に示す態様が挙げられる。
・第1工程シート/下地層/ガスバリア層/粘着層/第2工程シート
・第1工程シート/下地層/ガスバリア層/密着性向上層/粘着層/第2工程シート
前記した層構成の態様において、第1工程シートと第2工程シートとは、同一であっても異なるものであってもよい。
前記した層構成の態様は、第一の実施形態の積層体を封止材として使用する前の状態を表したもので、使用する際には、通常、第2工程シートを剥離除去し、露出した粘着層の面と、被封止物とを粘着させて封止体を得るものである。
また、第一の実施形態の積層体の粘着層の面と被封止物の面とを粘着させた後には、通常、第1工程シートを剥離除去し、下地層を露出させて以下に示す層構成とすることができる。
・下地層/ガスバリア層/粘着層
・下地層/ガスバリア層/密着性向上層/粘着層
第一の実施形態の積層体は、基材を有しなくても、第1工程シートが、剥離除去されるまでの間、積層体の支持体や保護部材として機能する。
第一の実施形態の積層体のヘイズ値としては、特に制限はないが、光学用途の観点から、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
なお、ここでの「積層体のヘイズ値」は、後述する実施例と同様の方法で測定される。
第一の実施形態の積層体の全光線透過率としては、特に制限はないが、光学用途の観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
なお、ここでの「積層体の全光線透過率」は、後述する実施例と同様の方法で測定される。
第一の実施形態の積層体の水蒸気透過率は、酸素や水蒸気等の気体の透過を防止する観点から、好ましくは5.0g/m/day以下、より好ましくは0.5g/m/day以下、さらに好ましくは5×10-2(g/m/day)以下、さらに好ましくは8×10-3(g/m/day)以下である。
なお、ここでの「積層体の水蒸気透過率」は、後述する実施例と同様の方法で測定される。水蒸気透過率測定装置の検出下限値は、5×10-4(g/m/day)である。
なお、第一の実施形態の積層体は、被封止物に適用された後、第1工程シートは剥離除去することが好ましいが、通常、工程シートの水蒸気透過率はガスバリア層の水蒸気透過率に比べて非常に高いため、第1工程シートを残したまま測定した積層体の水蒸気透過率は、積層体から第1工程シートが除去されて被封止物上に形成される膜状体のガスバリア性能を反映していると考えられる。
<粘着層>
本発明者は、粘着層の緩和弾性率を上昇させることで、工程シート剥離時における粘着層の変形を抑制して、ガスバリア層への応力負荷を低減する(即ち、ガスバリア層の変形を抑制する)ことで、工程シートの剥離後におけるガスバリア性が改善されることを見出した。
粘着層のせん断変形時の0.1秒後の緩和弾性率としては、4×10Pa以上である限り、特に制限はないが、粘着層の変形抑制の観点から、好ましくは4.5×10Pa以上、より好ましくは5.0×10Pa以上、さらに好ましくは5.5×10Pa以上である。
粘着層のせん断変形時の0.1秒後の緩和弾性率の上限値としては、特に制限はないが、粘着層のガスバリア層に対する粘着力の観点から、好ましくは1GPa、より好ましくは0.5GPa、さらに好ましくは0.1GPaである。
なお、ここでの「粘着層のせん断変形時の0.1秒後の緩和弾性率」は、後述する実施例と同様の方法で測定される。
粘着層のガスバリア層に対する粘着力としては、特に制限はないが、工程シート剥離時に粘着層とガスバリア層との界面剥離を抑制する観点から、好ましくは1N/25mm以上、より好ましくは3N/25mm以上、さらに好ましくは5N/25mm以上である。一方、上限値は特に制約されないが、製造容易な観点から100N/25mm以下程度である。
なお、ここでの「粘着層のガスバリア層に対する粘着力」は、後述する実施例と同様の方法で測定される。
粘着層の厚みの上限値としては、特に制限はないが、粘着層の変形量抑制の観点から、好ましくは20μm、より好ましくは15μm、さらに好ましくは11μmである。
粘着層の厚みの下限値としては、特に制限はないが、耐屈曲性及び被着体への埋め込み性の両立の観点から、好ましくは5μm、より好ましくは7μm、さらに好ましくは9μmである。
<<粘着層用組成物>>
第一の実施形態の積層体における粘着層を形成する粘着層用組成物としては、形成される粘着層のせん断変形時の0.1秒後の緩和弾性率が4×10Pa以上である限り、特に制限はないが、粘着層のガスバリア層に対する粘着力の観点から、粘着層における樹脂としてアクリル酸エステル重合体を含有することが好ましい。
粘着層用組成物は、硬化剤、架橋剤、シランカップリング剤、溶媒、その他の成分、などをさらに含んでいてもよい。
(アクリル酸エステル重合体)
アクリル酸エステル重合体としては、特に制限はなく、例えば、官能基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アルキル基の少なくとも1種を含む単量体の重合体が好ましい。単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着層における樹脂としてアクリル酸エステル重合体を用いると、粘着層用組成物中の硬化性成分の含有量を増加させても、粘着層のガスバリア層に対する粘着力が低下しない。一方、粘着層における樹脂として、例えば、ポリオレフィン系樹脂を用いると、粘着層用組成物中の硬化剤成分の含有量を増加させた場合、粘着層のガスバリア層に対する粘着力が低下する。
アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000~10,000,000、より好ましくは100,000~6,000,000、さらに好ましくは1,000,000~4,000,000、さらに好ましくは1,600,000~2,000,000である。
上記重量平均分子量(Mw)が、上記範囲にあることで、得られる粘着層が、前述の粘着力と前述の緩和弾性率を両立し易いものとなる。
アクリル酸エステル重合体の含有量としては、特に制限はないが、粘着層用組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~95質量%、より好ましくは50~90質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。
ここで「粘着層用組成物の有効成分」とは、粘着層用組成物中に含まれる溶媒を除いた成分を指していう。
上記アクリル酸エステル重合体の含有量が、上記範囲にあることで、粘着層用組成物は、ガスバリア層との密着性向上により優れる。
(硬化剤)
硬化剤としては、特に制限はなく、例えば、エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましく挙げられる。
エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート等の2官能型モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型モノマー;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型モノマー;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型モノマー;などの多官能アクリレートモノマーが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、熱硬化性エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられる。
-硬化剤の配合量-
アクリル酸エステル重合体100質量部に対する硬化剤の含有量としては、特に制限はないが、好ましくは1~100質量部、より好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは5~30質量部、さらに好ましくは10~20質量部である。前記好ましい範囲の下限値以上とすることで、所望の緩和弾性率を得ることができ、前記好ましい範囲の上限値以下とすることで、ガスバリアへの所望の粘着力を得ることができる。
(架橋剤)
「架橋剤」とは、アクリル酸エステル重合体と反応する官能基を有し、架橋構造を形成する添加剤を指していう。
粘着層用組成物は、架橋密度が上昇し弾性率が高い粘着層が得られ易くなる観点から、さらに、架橋剤を含有させることが好ましい。
架橋剤としては、水酸基やカルボキシル基などの活性水素基との反応性の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;それらのビウレット体;それらのイソシアヌレート体;エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体;などが挙げられる。これらのイソシアネート系架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのイソシアネート系架橋剤の中でも、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
粘着層用組成物に含有させる架橋剤の含有量は、アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.2~1質量部である。
上記架橋剤の含有量が、上記範囲にあることで、粘着層は高弾性を発現しやすくなる。
(シランカップリング剤)
「シランカップリング剤」とは、分子内に2種以上の異なる反応基を有する有機ケイ素化合物を指していう。
粘着層用組成物がシランカップリング剤をさらに含有することにより、耐久性がより優れたものとなる。
シランカップリング剤としては、優れた粘着強度を得る観点から、分子内に少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
このようなシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン;などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのシランカップリング剤の中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
粘着層用組成物に含有させるシランカップリング剤の含有量は、アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、好ましくは0.01~5.0質量部、より好ましくは0.05~1.0質量部である。
上記シランカップリング剤の含有量が、上記範囲にあることで、高温高湿の環境下に長時間暴露された場合でも、粘着層における被封止物に対する耐久性が優れたものとなる。
(溶媒)
粘着層用組成物は、溶媒を加えて溶液の形態とすることが、粘着層を塗布により形成する際に、粘着層用組成物を塗布に適した性状に調整し易くする観点から好ましい。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;などが挙げられる。
これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、中でも、トルエンが好ましい。
粘着層用組成物の調製に用いる溶媒の使用量は、固形分濃度が、好ましくは8~48質量%、より好ましくは8~38質量%、さらに好ましくは8~28質量%となるように用いればよい。
(その他の成分)
粘着層用組成物は、前記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤、軟化剤、粘着付与剤、などが挙げられる。
<ガスバリア層>
第一の実施形態の積層体はガスバリア層を有することで、酸素や水蒸気等の気体の透過を防止する効果が高い優れたガスバリア性を発揮させることができる。
また、ガスバリア層は、下地層と粘着層との間に介在させられるものである。
ガスバリア層の厚みとしては、特に制限はないが、十分なガスバリア性を得る観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上であり、また、均一な層形成の観点から、好ましくは800nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
ガスバリア層は、1層であっても一定の水準を満たすガスバリア性が得られるが、2層以上のガスバリア層を積層させることでガスバリア性の効果を高めることができる。
2層以上のガスバリア層は、同じ厚みであってもよいし、異なる厚みであってもよい。
2層以上のガスバリア層とした場合、各々のガスバリア層は、全て同じ組成物から形成された層であることが好ましい。
これにより、2層以上のガスバリア層間同士の層間密着性を向上させることができる。
ガスバリア層の好ましい態様としては、(i)無機蒸着膜からなるガスバリア層、(ii)ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層、及び(iii)高分子化合物を含む層(以下、「高分子層」ともいう。)の表面が改質されてなるガスバリア層〔この場合、ガスバリア層とは、改質された領域のみを意味するのではなく、「改質された領域を含む高分子層」を意味する。〕からなる群より選択される少なくとも1種である。
これらの中でも、ガスバリア層のより好ましい態様としては、(i)無機蒸着膜からなるガスバリア層、及び(iii)高分子層の表面が改質されてなるガスバリア層からなる群より選択される少なくとも1種である。
(i)無機蒸着膜からなるガスバリア層
無機蒸着膜としては、無機化合物や金属の蒸着膜が挙げられる。
無機化合物の蒸着膜の原料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛スズ等の無機酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機窒化物;無機炭化物;無機硫化物;酸化窒化ケイ素等の無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物;などが挙げられる。
金属の蒸着膜の原料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ、などが挙げられる。
これらの無機化合物及び金属の蒸着膜の原料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機蒸着膜としては、ガスバリア性の観点から、無機酸化物、無機窒化物、及び金属からなる群より選択される少なくとも1種を原料とする無機蒸着膜が好ましい。
これらの無機蒸着膜の中でも、透明性の観点から、無機酸化物、及び無機窒化物からなる群より選択される少なくとも1種を原料とする無機蒸着膜がより好ましい。
また、無機蒸着膜は、単層でもよく、多層でもよい。
無機蒸着膜の厚さは、ガスバリア性と取り扱い性の観点から、好ましくは20~800nm、より好ましくは30~500nm、さらに好ましくは40~200nmである。
無機蒸着膜を形成する方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
無機蒸着膜を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法;熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等のCVD法;原子層堆積法(ALD法);などが挙げられる。
(ii)ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層
ガスバリア性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分ケン化物、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリクロロトリフルオロエチレン等の酸素や水蒸気等の気体を透過し難い樹脂が挙げられる。
ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層の厚さは、ガスバリア性の観点から、好ましくは20~800nm、より好ましくは30~500nm、さらに好ましくは40~200nmである。
ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層を形成する方法としては、例えば、ガスバリア性樹脂を含む溶液を、下地層上に塗布し、得られた塗膜を適宜乾燥する方法が挙げられる。
ガスバリア性樹脂を含む溶液の塗布方法としては、特に制限はなく、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
塗膜の乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法が挙げられる。
(iii)高分子層の表面が改質されてなるガスバリア層
高分子層の表面が改質されてなるガスバリア層において、用いる高分子化合物としては、ケイ素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、脂環式炭化水素系樹脂、芳香族系重合体、などが挙げられる。これらの高分子化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
高分子層は、前記した高分子化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分をさらに含有してもよい。他の成分としては、例えば、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、などが挙げられる。
高分子化合物の含有量は、高分子層用組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
なお、ここで「高分子層用組成物の有効成分」とは、高分子層用組成物中に含まれる溶媒を除いた成分を指していう。
上記高分子化合物の含有量が、上記範囲にあることで、ガスバリア性に優れるガスバリア層を形成し易くすることができる。
高分子層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは20nm~800nm、より好ましくは30nm~500nm、さらに好ましくは40nm~300nmである。
高分子層は、例えば、高分子化合物を有機溶剤に溶解又は分散した液を、公知の塗布方法によって、下地層上に塗布し、得られた塗膜を乾燥することにより形成することができる。
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
高分子化合物を有機溶剤に溶解又は分散した液の塗布方法としては、特に制限はなく、バーコート法、スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法、などが挙げられる。
高分子層を形成するための塗膜の乾燥方法としては、特に制限はなく、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法が挙げられる。加熱温度は、好ましくは80~150℃であり、加熱時間は、通常、数十秒から数十分である。
高分子層の表面が改質されてなるガスバリア層において、高分子層の表面を改質する方法としては、イオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、熱処理、などが挙げられる。
イオン注入処理は、後述するように、加速させたイオンを高分子層に注入して、高分子層を改質する方法である。
プラズマ処理は、高分子層をプラズマ中に晒して、高分子層を改質する方法である。例えば、特開2012-106421号公報に記載の方法に従って、プラズマ処理を行うことができる。
紫外線照射処理は、高分子層に紫外線を照射して高分子層を改質する方法である。例えば、特開2013-226757号公報に記載の方法に従って、紫外線改質処理を行うことができる。
高分子層の表面が改質されてなるガスバリア層としては、よりガスバリア性に優れることから、ケイ素含有高分子化合物を含む層にイオン注入処理を施して得られるものが好ましい。
ケイ素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリオルガノシロキサン系化合物、ポリ(ジシラニレンフェニレン)系化合物、ポリ(ジシラニレンエチニレン)系化合物、などが挙げられる。これらの中でも、ポリシラザン系化合物が好ましい。
(ポリシラザン系化合物)
ポリシラザン系化合物は、分子内に-Si-N-結合(シラザン結合)を含む繰り返し単位を有する化合物である。具体的には、次の一般式(1)で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。
一般式(1)中、nは繰り返し単位数を示し、1以上の整数を表す。また、Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を示す。
無置換若しくは置換基を有するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基が挙げられる。
無置換若しくは置換基を有するアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の炭素数2~10のアルケニル基が挙げられる。
前記アルキル基、前記シクロアルキル基、及び前記アルケニル基が、置換基を有する場合の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;などが挙げられる。
無置換又は置換基を有するアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~15のアリール基が挙げられる。
前記したアリール基が置換基を有する場合の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシ基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;などが挙げられる。
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ-tert-ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基、などが挙げられる。
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基が好ましく、これらの中でも、水素原子がより好ましい。
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン系化合物としては、Rx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rx、Ry、Rzの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
また、第一の実施形態においては、前記ポリシラザン系化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。当該ポリシラザン変性物としては、例えば、特開昭62-195024号公報、特開平2-84437号公報、特開昭63-81122号公報、特開平1-138108号公報等、特開平2-175726号公報、特開平5-238827号公報、特開平5-238827号公報、特開平6-122852号公報、特開平6-306329号公報、特開平6-299118号公報、特開平9-31333号公報、特開平5-345826号公報、特開平4-63833号公報等に記載されているものが挙げられる。
これらの中でも、前記ポリシラザン系化合物としては、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有するイオン注入層を形成できる観点から、一般式(1)中、Rx、Ry、Rzが全て水素原子であるペルヒドロポリシラザン(PHPS)が好ましい。
また、前記ポリシラザン系化合物としては、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
前記ポリシラザン系化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記ポリシラザン系化合物の数平均分子量(Mn)としては、特に制限はないが、100~50,000である化合物を好適に用いることができる。
当該数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
(イオン注入)
前記高分子層に注入するイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;メタン、エタン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;金属のイオン;有機ケイ素化合物のイオン;などが挙げられる。
これらのイオンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、より簡便にイオンを注入することができ、より優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成し得ることから、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオンが好ましい。
イオンを注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法、などが挙げられる。
これらの方法の中でも、簡便に目的のガスバリア層を形成できることから、後者のプラズマイオンを注入する方法(プラズマイオン注入法)が好ましい。
プラズマイオン注入法は、例えば、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、高分子層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、高分子層の表面部に注入して行うことができる。プラズマイオン注入法は、より具体的には、WO2010/107018号パンフレット等に記載された方法により実施することができる。
イオンの注入量は、積層体の使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定することができる。
イオン注入により、イオンが注入される領域の厚さは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、高分子層の厚さや積層体の使用目的等に応じて調整すればよいが、好ましくは10~400nmである。
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いてポリシラザン層の表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
ガスバリア層は、単層であってもよく又は複層であってもよい。例えば、(i)無機蒸着膜からなるガスバリア層と(iii)高分子層の表面が改質されてなるガスバリア層とを併用してもよい。
<下地層>
第一の実施形態の積層体は下地層を有することで、ガスバリア層の損傷や劣化を抑制すると共に、第1工程シートを効率よく剥離除去することができる。
下地層は、第1工程シート上に直接積層させることが好ましい。
また、下地層は、第1工程シートとガスバリア層との間に介在させられるものである。
第1工程シートの下地層に対する剥離力としては、特に制限はないが、第1工程シート剥離時にバリア層への応力負荷の増大によるバリア層の変形やクラック発生を抑制する観点から、好ましくは1.0N/25mm以下、より好ましくは0.5N/25mm以下、さらに好ましくは0.3N/25mm以下である。なお、第1工程シートの下地層に対する剥離力の下限値としては、特に制限はないが、当該積層体製造に際し、第1工程シートと下地層の間で剥がれ等を防止する観点から、好ましくは0.001N/25mm、より好ましくは0.01N/25mm、特に好ましくは0.05N/25mmである。
下地層の厚みとしては、特に制限はないが、耐屈曲性の観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは0.5~5μm、特に好ましくは0.7~2μmである。
上記下地層の厚みが、上記範囲にあることで、ガスバリア層の損傷や劣化を抑制し易くすると共に、第1工程シートを効率よく剥離除去し易くすることができる。下地層が0.1~10μm程度の薄いものであると、積層体全体の厚さも小さな範囲に調整することが容易となり、有機EL素子等の電子デバイス等の小型化が求められる用途に好適である。積層体を基材とガスバリア層から構成した場合に、基材をこのような薄い厚さとすると、積層体の取り扱いが困難になる場合がある。第一の実施形態では、下地層のガスバリア層と積層する側と反対の側に第1工程シートが存在するために、取り扱い性の問題が解消される。そして、第1工程シートは通常被封止物に積層体を適用した後に除去されるので、封止体に残る積層体に由来する部材を薄いものとすることができる。
下地層の破断伸度としては、特に制限はないが、フレキシブルデバイス用途においては柔軟性の観点から、好ましくは1~10%、より好ましくは2~8%、さらに好ましくは3~6%である。なお、下地層の破断伸度の測定方法は、以下の通りである。下地層を15mm×150mmの試験片に裁断し、JISK7127:1999に従い、破断伸度を測定する。具体的には、上記試験片を、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-IS500N)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、破断した時の変位量を破断伸度(%)とする。なお、後述する実施例1のガスバリア性積層体における下地層の破断伸度(%)は4%であった。
下地層の弾性率としては、特に制限はないが、フレキシブルデバイス用途においては靭性の観点から、好ましくは1~10GPa、より好ましくは2~8GPa、さらに好ましくは3~6GPaである。なお、下地層の弾性率の測定方法は、上記の破断伸度の測定方法と同様であり、サンプル引張時の変位量に対する応力の最大傾きを弾性率とした。なお、後述する実施例1のガスバリア性積層体における下地層の弾性率は4GPaであった。
下地層の第1工程シートに接する側の下地層、或いは下地層の第1工程シートに接する側とは反対側の下地層のそれぞれの表面における粗さ曲線の最大断面高さ(Rt)は、好ましくは1~300nm、より好ましくは1~200nm、さらに好ましくは2~150nmである。
下地層の最大断面高さ(Rt)は、光干渉顕微鏡を用いて、下地層の表面を観察することにより測定することができる。例えば、積層体の製造工程で、第1工程シート上に下地層を形成させた際、露出している下地層の表面を測定対象とすることができる。
上記最大断面高さ(Rt)が、上記範囲にあることで、ガスバリア層を好適に保護しながら、第1工程シートを効率よく剥離除去し易くすることができる。
なお、上記最大断面高さ(Rt)は、後述する無機フィラーの平均粒径や含有量を調整することにより、上記範囲にすることができる。なお、後述する実施例1のガスバリア性積層体における下地層の最大断面高さ(Rt)は20nmであった。
<<下地層用組成物>>
第一の実施形態の積層体における下地層は、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)層の乾燥工程における変形抑制の観点から、耐熱性樹脂を含有する下地層用組成物から形成されることが好ましい。
以下、下地層の形成材料として好適な下地層用組成物中に含まれる各成分について述べる。
(耐熱性樹脂)
下地層は、次工程のペルヒドロポリシラザン(PHPS)乾燥時の変形抑制の観点から、耐熱性樹脂を含有することが好ましい。
耐熱性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂等の窒素含有樹脂などが挙げられる。
耐熱性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは150℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは350℃以上である。
ここで「ガラス転移温度(Tg)」とは、粘弾性測定(周波数11Hz、昇温速度3℃/分で0~250℃の範囲で引張モードによる測定)により得られたtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の最大点の温度を指していう。
上記ガラス転移温度(Tg)が、上記範囲にあることで、耐熱性に優れる下地層を形成することが容易となる。
耐熱性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000~10,000,000、好ましくは10,000~1,000,000、より好ましくは20,000~500,000、さらに好ましくは100,000~300,000である。
また、耐熱性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~2.5、より好ましくは1.5~2.2である。
ここで「重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値を指していう。
耐熱性樹脂の含有量は、前記した下地層用組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは40~50質量%である。
なお、ここで「下地層用組成物の有効成分」とは、下地層用組成物中に含まれる溶媒を除いた成分を指していう。
上記耐熱性樹脂の含有量が、上記範囲にあることで、下地層の弾性率や破断伸度を前述の適切な範囲に調整しやすくなる。
(エネルギー線硬化性成分)
下地層用組成物は、エネルギー線硬化性成分を含んでいてもよい。下地層用組成物がエネルギー線硬化性成分を含むことにより、特に、透明性が高く、かつ、複屈折率が低く光学等方性の高い積層体が得られるという利点がある。そのほか、下地層用組成物は、エネルギー線硬化性成分を含有させることで、下地層の弾性率や破断伸度を前述の適切な範囲に調整しやすくなる。
エネルギー線硬化性成分とは、電子線、紫外線等のエネルギー線を照射したり、加熱したりすることにより、硬化反応が開始され、硬化物に変化する樹脂をいう。当該エネルギー線硬化性成分は、通常、重合性化合物を主成分とする混合物である。
また、当該重合性化合物とは、エネルギー線重合性官能基を有する化合物である。当該エネルギー線重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のエチレン性不飽和基が例示される。
重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート誘導体が挙げられる。(メタ)アクリレート誘導体の具体例としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、などが挙げられる。
(メタ)アクリレート誘導体の分子量は、通常3,000以下、好ましくは200~2,000、より好ましくは200~1,000である。
エネルギー線硬化性成分の含有量は、前記した下地層用組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~90質量%、より好ましくは50~70質量%である。
なお、ここで「下地層用組成物の有効成分」とは、下地層用組成物中に含まれる溶媒を除いた成分を指していう。
上記エネルギー線硬化性成分の含有量が、上記範囲にあることで、耐溶剤性に優れる下地層が得られ易くなる。
エネルギー線硬化性成分は、重合性化合物として、オリゴマーを含んでいてもよい。当該オリゴマーとしては、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリオールアクリレート系オリゴマー、などが挙げられる。また、エネルギー線硬化性成分は、光重合開始剤、熱重合開始剤等の重合開始剤を含んでいてもよい。
エネルギー線硬化性成分としては、紫外線照射により硬化する成分(紫外線硬化性成分)が好ましい。紫外線硬化性成分を用いることで、エネルギー線硬化性成分の硬化物からなる層を効率よく形成することができる。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、具体的には、アルキルフェノン系光重合開始剤、リン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤が好ましく、中でも、リン系光重合開始剤がより好ましい。
リン系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネート、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、などが挙げられる。
エネルギー線硬化性成分に含有させる重合開始剤の含有量は、前記した重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.5~6.5質量部、より好ましくは0.5~5.5質量部、さらに好ましくは0.5~4.5質量部である。
第一の実施形態で用いる下地層用組成物が、耐熱性樹脂を含有し、エネルギー線硬化性成分が重合性化合物及び重合開始剤を含有する場合、耐熱性樹脂、重合性化合物、及び重合開始剤の合計含有量は、前記した下地層用組成物の有効成分の全量(質量%)に対して、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。
なお、ここで「下地層用組成物の有効成分」とは、下地層用組成物中に含まれる溶媒を除いた成分を指していう。
(溶媒)
下地層用組成物は、溶媒を加えて溶液の形態とすることが、塗布により下地層を形成する工程で、下地層用組成物を塗布に適した性状に調整し易くする観点から好ましい。
溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶媒;などが挙げられる。
これらの中でも、ケトン系溶媒が好ましく、中でも、メチルエチルケトンが好ましい。
下地層用組成物の調製に用いる溶媒の使用量は、耐熱性樹脂の固形分濃度が、好ましくは5~45質量%、より好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは5~25質量%となるように用いればよい。
(その他の成分)
下地層用組成物は、耐熱性樹脂、エネルギー線硬化性成分、溶媒の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、無機フィラー、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などが挙げられる。
<工程シート>
下地層に積層される工程シート(第1工程シート)は、従来公知のものを使用することができる。例えば、工程シート用の基材上に、剥離剤により剥離処理された剥離層を有するものが挙げられる。前記工程シート用基材としては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のプラスチックフィルム;などが挙げられる。前記剥離剤としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー;長鎖アルキル系樹脂;アルキド系樹脂;フッ素系樹脂;などが挙げられる。また、工程シート用の基材として挙げた紙基材やプラスチックフィルムを、剥離層を設けずにそのまま用いてもよい。
第2工程シートを使用する場合、第1工程シートと第2工程シートの2枚の剥離フィルムはそれぞれ同一のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。互いに異なる2枚の剥離フィルムを用いる場合、それぞれ異なる剥離力を有するものを用いることが好ましい。2枚の剥離フィルムの剥離力が異なることで、積層体の使用時に問題が発生し難くなる。すなわち、2枚の剥離フィルムの剥離力を異なるようにすることで、積層体から最初に剥離フィルムを剥離する工程をより効率よく行うことができる。
第2工程シートは、粘着層との剥離性を良好にする観点から、剥離層を有することが好ましい。
工程シートの厚さは、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~125μm、さらに好ましくは30~100μmである。
<密着性向上層>
第一の実施形態の積層体は、工程シート、下地層、ガスバリア層、及び粘着層をこの順で積層して構成されるものであれば、特に制限はないが、粘着層は、密着性向上層を介してガスバリア層上に積層して構成されてもよい。
第一の実施形態の積層体は密着性向上層を有することで、ガスバリア層と粘着層との密着性を向上させることができる。
密着性向上層の厚みは、好ましくは700nm以下、より好ましくは50~700nm、さらに好ましくは100~500nm、よりさらに好ましくは150~400nmである。
上記密着性向上層の厚みが、上記範囲にあることで、ガスバリア層と粘着層との密着性を向上させる効果を好適に発揮させることができる。
密着性向上層は、有機物を含有する層であることが好ましい。具体的には、ポリエステル樹脂を含む層;アクリル樹脂を含む層;多官能アクリレート化合物、多官能ウレタンアクリレート化合物等のエネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性組成物の硬化物からなる層;熱硬化性エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する硬化性組成物の硬化物からなる層;などが挙げられる。
<封止体>
第一の実施形態の積層体を封止材として、被封止物を封止することにより、層間剥離等による欠損及び/又は水蒸気等の浸入に起因する不具合が発生し難いものとなる。そのため、封止体は、長期にわたって被封止物の性能維持が要求される用途で好適に用いることができる。すなわち、封止材の粘着層と被封止物との粘着面において優れた粘着性が維持され、被封止物が有していた当初性能が好適に保持され得る。
被封止物としては、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、無機EL素子、無機ELディスプレイ素子、電子ペーパー素子、液晶ディスプレイ素子、及び太陽電池素子からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
<<封止体の製造方法>>
封止体の製造方法としては、特に制限はないが、積層体が有する粘着層を被封止物に粘着させる工程と、第一の実施形態の積層体から第1工程シートを剥離する工程とを備えることが好ましい。
例えば、封止材とする第一の実施形態の積層体が、以下に示す態様であった場合には、先ず第2工程シートを剥離除去する。
次に、露出した粘着層の面と被封止物の面とを重ね合わせ、必要に応じて加圧し、被封止物が封止材となる積層体で封止されてなる、封止体を得るものである。また、粘着層は、被封止物と重ね合わせた後、所望により、光や熱により硬化させてもよい。
・第1工程シート/下地層/ガスバリア層/粘着層/第2工程シート
なお、通常、第1工程シートは、粘着層の面と被封止物を形成した後、剥離除去されるものである。
このような封止体の作製方法によれば、積層体が基材を有していなくても、第1工程シートが剥離除去されるまでの間、第1工程シートが積層体の支持体として機能するため、積層体の破断や変形が防止され、取り扱い性に優れる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。なお、以下に記載する「部」及び「%」は、特に言及しない限り、「質量基準」である。
以下の実施例の記載において示された重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製「HLC-8020」を用いて、下記の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた値である。
(測定条件)
カラム:「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検出器:示差屈折計
[緩和弾性率測定]
実施例及び比較例で得られた粘着シート(重剥離型剥離シート/粘着層/軽剥離型剥離シート)の粘着層を複数層積層し、厚さ0.5mmの積層体とし、直径8mmの円柱体を打ち抜き、これをサンプルとした。上記サンプルについて、JIS K7244-1:1998に準拠し、粘弾性測定装置(株式会社アントンパール社製、製品名「MCR302」)、を用いて、25℃環境下において、粘着層を1.0%歪ませ続け、緩和弾性率G(t)(MPa)を測定した。その測定結果から、測定開始より0.1秒後の弾性率を緩和弾性率とした。
[剥離力測定]
実施例及び比較例で得られたガスバリア性積層体(第1工程シート/下地層/ガスバリア層/粘着層/第2工程シート)を25mm幅、100mm長に裁断し、第2工程シートを剥離した後の粘着層面をアルミ板に貼合し、アルミ板/粘着層/ガスバリア層/下地層/第1工程シートの積層体を得た。その後23℃、50%RHの環境下で24時間放置してから、万能引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、製品名:テンシロン万能試験機RTG-1225)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、第1工程シートを下地層から剥離したときの剥離力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。
[粘着力測定]
粘着層の粘着力測定において、ガスバリア層と下地層間で剥離が生じるため、別途、ガスバリア面を有する被着体サンプルを準備する必要がある。まず、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材上に、実施例及び比較例と同様の手順でガスバリア層を形成した。その後、PETフィルム基材のガスバリア層が設けられているのとは逆側の面を接着剤によりアルミ板(幅50mm、長さ150mm、厚さ1mm)に固定し、ガスバリア層/PETフィルム/接着剤層/アルミ板の被着体サンプルを作製した。
実施例及び比較例で得られた粘着シート(重剥離型剥離シート/粘着層/軽剥離型剥離シート)から軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」、厚さ:50μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離シート/粘着層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断した。
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着層を前述の被着体サンプルに貼付し、PETフィルム/粘着層/ガスバリア層/PETフィルム/接着剤層/アルミ板の積層サンプルを得た。23℃、50%RHの環境下で24時間放置してから、万能引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、製品名:テンシロン万能試験機RTG-1225)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、PETフィルムと粘着層との積層体を積層サンプルから剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。
[光学特性評価(全光線透過率・ヘイズ値)]
実施例及び比較例で得られたガスバリア性積層体(第1工程シート/下地層/ガスバリア層/粘着層/第2工程シート)の第2工程シートを剥離し、露出した粘着層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、製品名「PETA4300」、厚さ:50μm)の易接着層に貼合し、PETフィルム/粘着層/ガスバリア層/下地層/第1工程シートの積層体を得た。得られた積層体を50mm×50mmに裁断して試験片を作製した。この試験片(第1工程シート剥離前)ついて、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、製品名「SH-7000」)を用いて、全光線透過率(%)及びヘイズ値(%)を測定した。
次に、前記試験片を、万能引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、製品名:テンシロン万能試験機RTG-1225)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、第1工程シートを剥離した後に、同様に全光線透過率(%)及びヘイズ値(%)を測定した。
[水蒸気透過率評価(ガスバリア性能:WVTR)]
実施例及び比較例で得られたガスバリア性積層体(第1工程シート/下地層/ガスバリア層/粘着層/第2工程シート)の第2工程シートを剥離し、露出した粘着層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、製品名「PETA4300」、厚さ:50μm)の易接着層に貼合し、PETフィルム/粘着層/ガスバリア層/下地層/第1工程シートの積層体を得た。得られた積層体(第1工程シート剥離前)を50cmの面積の円形状の試験片に裁断し、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、装置名:AQUATRAN)を用い、40℃、相対湿度90%の高温高湿環境下)にてガス流量20sccmで水蒸気透過率(WVTR:Water Vapor Transmittance Rate、g/m/day)を測定した。
次に、万能引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、製品名:テンシロン万能試験機RTG-1225)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、第1工程シートを剥離した後に、同様に水蒸気透過率を測定した。なお、ガスバリア層の水蒸気透過率はPETフィルムよりもはるかに小さいため、PETフィルムの積層によるWVTRへの影響は小さい。
[実施例1]
(1)薄膜フィルムの作製(第1工程シート/下地層)
耐熱性樹脂として、ポリイミド樹脂のペレット(河村産業株式会社製、製品名「KPI-MX300F」、Tg=354℃、重量平均分子量190,000)100質量部をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、ポリイミド樹脂の15質量%溶液を調製した。次いで、この溶液に、エネルギー線硬化性成分として、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート122質量部、及び重合開始剤として、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキサイド5質量部を添加、混合して、硬化性樹脂組成物(C1)を調製した。なお、エネルギー線硬化性成分及び重合開始剤は溶媒を含まず、全て固形分100%の原料である。
次に、片面に易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4160」、厚さ50μm)を準備し易接着層面とは反対の面に、硬化性樹脂組成物(C1)を塗布し、得られた塗膜を100℃で2分間加熱して乾燥した。
その後、高圧水銀ランプ(アイグラフィクス株式会社製、製品名「H04-L41」)を用いて、光線波長365nmの照度が130mW/cm、光量が700mJ/cm(Heraus社製、紫外線光量計、UV Power Puck(登録商標)II)の条件で、窒素雰囲気下にて紫外線照射して硬化反応を行い、厚さ1μmの耐熱性樹脂層を形成することにより、下地層/第1工程シートの構成からなる薄膜フィルムを得た。
(2)ガスバリア層の形成(第1工程シート/下地層/ガスバリア層)
次いで、下地層上にポリシラザン化合物(ペルヒドロポリシラザン(PHPS):Mn=2000)を主成分とするコーティング剤(メルクパフォーマンスマテリアルズ株式会社製、アミアクカNL-110-20、溶媒:キシレン)をスピンコート法により塗布し、100℃で2分間加熱乾燥させることで、ペルヒドロポリシラザンを含む、厚さ200nmの高分子層(ポリシラザン層)を形成した。
次に、プラズマイオン注入装置(日本電子株式会社製、RF電源:「RF」56000;株式会社栗田製作所製、高電圧パルス電源:PV-3-HSHV-0835)を用いて、ガス流量100sccm、Duty比0.5%、印加DC電圧-6kV、周波数1000Hz、印加RF電力1000W、チャンバー内圧0.2Pa、DCパルス幅5μsec、処理時間200秒の条件で、アルゴンガス由来のイオンを高分子層(ポリシラザン層)の表面に注入し、ガスバリア層を形成して、第1工程シート上に形成されたガスバリアフィルム(下地層/ガスバリア層)を得た。
(3)粘着シート(重剥離型剥離シート/粘着層/軽剥離型剥離シート)の作製
アクリル酸エステル重合体(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸=95/5(質量比);Mw180万)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、硬化剤としてのトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート15質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム株式会社製、商品名:BHS-8515)0.31質量部と、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.19質量部を混合し、十分に撹拌して、トルエンで希釈することにより、粘着層用組成物の塗布溶液を得た。
上記工程にて得られた粘着層用組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製、製品名「SP-PET382150」)の剥離処理面に、コンマコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で2分間加熱処理して塗布層を形成した。
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製、製品名「SP-PET381031」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、剥離シート越しに、フージョン社製無電極ランプ(Hバブル使用)を用いて、照度200mW/cm、露光量:200mJ/cmの条件で紫外線を照射した。その後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ10μmの粘着層を有する粘着シート、すなわち、重剥離型剥離シート/粘着層(厚さ:10μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
(4)ガスバリア性積層体(第1工程シート/下地層/ガスバリア層/粘着層/第2工程シート)の作製
上記で得られた粘着シートの軽剥離型剥離シートを剥離し、第1工程シート上に形成されたガスバリアフィルム(下地層/ガスバリア層)に貼合することで、ガスバリア性積層体(第1工程シート/下地層/ガスバリア層/粘着層/重剥離型剥離シート(第2工程シート))を得た。
[比較例1]
粘着層用組成物の塗布溶液調整に関して、アクリル酸エステル重合体(アクリル酸2-エチルヘキシル/メタクリル酸メチル/アクリル酸2-ヒドロキシエチル=60/20/20(質量比);Mw60万))100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム株式会社製、商品名:BHS-8515)0.23質量部と、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.25質量部を混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより、粘着層用組成物の塗布溶液を得た。それ以外は、実施例1と同様の工程にて、ガスバリア性積層体を得た。
表1において、「PI」は「ポリイミド樹脂」を表し、「PHPS」は「ペルヒドロポリシラザン」を表し、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」を表す。
実施例1では、「粘着層として緩和弾性率が高い(6×10Pa)粘着シートを使用することで、第1工程シートを剥離する際の粘着シートの変形が小さく、ガスバリア層への応力負荷が小さいことにより、ガスバリア層が変形せず、結果として剥離後のガスバリア性が維持される。
比較例1では、粘着層として緩和弾性率が低い(9×10Pa)粘着シートを使用することで、第1工程シートを剥離する際の粘着シートの変形が大きく、ガスバリア層への応力負荷が大きいことにより、ガスバリア層が変形し、結果として剥離後のガスバリア性が大きく低下する。
実施例1は、第1工程シートと下地層との剥離力が0.5N/25mm以下であり、第1工程シートを容易に剥離することが可能である。また、実施例1は、ガスバリア層と粘着層との粘着力が0.5N/25mm以上であり、第1工程シートの剥離時に当界面の密着性は十分に担保されている。さらに、実施例1は、積層体のヘイズ値が2%以下、積層体の全光線透過率が85%以上であり、ディスプレイ等の光学用途に適している。
本発明によれば、工程シートの剥離後におけるガスバリア性が改善された積層体を提供することが可能となる。
100 積層体
110 工程シート
120 下地層
130 ガスバリア層
140 粘着層

Claims (8)

  1. 工程シート、下地層、ガスバリア層、及び粘着層をこの順で積層した積層体であって、
    前記粘着層は、せん断変形時の0.1秒後の緩和弾性率が4×10Pa以上である、積層体。
  2. 前記粘着層がアクリル酸エステル重合体を含有する、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記下地層が耐熱性樹脂を含有する、請求項1に記載の積層体。
  4. 前記粘着層の前記ガスバリア層に対する粘着力が1N/25mm以上である、請求項1に記載の積層体。
  5. 前記工程シートの下地層に対する剥離力が1.0N/25mm以下である、請求項1に記載の積層体。
  6. 前記粘着層の厚みが20μm以下である、請求項1に記載の積層体。
  7. 前記下地層の厚みが20μm以下である、請求項1に記載の積層体。
  8. ヘイズ値が2%以下であり、全光線透過率が85%以上である、請求項1に記載の積層体。
JP2022175684A 2022-11-01 2022-11-01 積層体 Pending JP2024066234A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022175684A JP2024066234A (ja) 2022-11-01 2022-11-01 積層体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022175684A JP2024066234A (ja) 2022-11-01 2022-11-01 積層体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024066234A true JP2024066234A (ja) 2024-05-15

Family

ID=91064687

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022175684A Pending JP2024066234A (ja) 2022-11-01 2022-11-01 積層体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024066234A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6626998B2 (ja) ガスバリア性粘着シート、その製造方法、並びに電子部材及び光学部材
JP5422055B2 (ja) 粘着シート、及び電子デバイス
JP5988989B2 (ja) ガスバリアフィルム及びその製造方法、ガスバリアフィルム積層体、電子デバイス用部材、並びに電子デバイス
TWI676660B (zh) 接著劑組成物、接著片及電子裝置
TWI772392B (zh) 阻氣性薄膜及密封體
CN111621248B (zh) 反复弯曲装置用粘着剂、粘着片、反复弯曲层叠构件及反复弯曲装置
TWI733777B (zh) 底漆層形成用固化性組合物、阻氣性積層膜及阻氣性積層體
TW201816047A (zh) 接著劑組成物、密封薄片以及密封體
JP7080180B2 (ja) ガスバリア性積層シート、ガスバリア性積層シートの製造方法、及び電子部材又は光学部材
JP7100622B2 (ja) 粘着剤組成物、封止シート、及び封止体
TWI624363B (zh) Laminated body, manufacturing method thereof, member for electronic device, and electronic device
WO2015129624A1 (ja) 接着剤組成物、接着シート及び電子デバイス
JP7227124B2 (ja) 機能性フィルム及びデバイス
TW202031479A (zh) 氣體阻隔性層合體
JP2024066234A (ja) 積層体
JP7010597B2 (ja) 粘着剤組成物、封止シート、及び封止体
WO2022209556A1 (ja) ハードコートフィルム積層体、粘着剤層付きハードコートフィルム積層体およびそれらの製造方法
TW202132105A (zh) 光學用層合體