JP2015093412A - ガスバリア性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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慎一郎 金井
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Abstract

【課題】防眩層を別途に設けることなく、防眩性及びガスバリア性を兼ね備えたガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】基材上にアンカーコート層及び無機層を有してなるガスバリア性フィルムであって、前記アンカーコート層は電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物であり、前記無機層の[表面積]/[面積]の比が1.0005〜1.0030である、ガスバリア性フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性フィルム及びその製造方法に関する。
透明基材の表面に酸化珪素等の無機層を形成したガスバリア性フィルムは、他のプラスチックフィルムと積層され、さまざまな包装用途に用いられてきた。近年は、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、有機TFT、有機半導体センサー、有機発光デバイス、電子ペーパー、フィルムコンデンサー、無機EL素子、カラーフィルター等で使用される基材フィルムや真空断熱材としての新しい用途にも使用されている。
このようなガスバリア性フィルムとして、防眩性を付与したガスバリア性フィルムが提案されている(特許文献1〜3)。
特許文献1には、基材の無機層上に防眩層を設けること、特許文献2及び3には、基材の無機層とは反対側の面に防眩層を設けることにより、ガスバリア性フィルムに防眩性を付与することが記載されている。
特開2002−341320号公報 特開2007−216435号公報 特開2011−240668号公報
しかしながら、特許文献1〜3のガスバリア性フィルムは、防眩層を別途形成する必要があるため、ガスバリア性フィルムを薄型化できないという問題や、工程が複雑化するという問題がある。
また、透明基材を凹凸化したり、透明基材上に形成するアンカーコート層を凹凸化することによって、透明基材又はアンカーコート層の凹凸形状を無機層に反映させることにより、防眩性を付与する手段が考えられる。しかし、無機層を形成する被着体が表面凹凸を有すると、無機層の成膜時に凹凸を原因として成膜性が低下し、ガスバリア性が低下するという問題があった。
以上から、本発明の課題は、防眩層を別途に設けることなく、防眩性及びガスバリア性を兼ね備えたガスバリア性フィルムを提供することにある。
上記課題を解決する本発明のガスバリア性フィルム及びその製造方法は、以下の[1]〜[14]である。
[1]基材上にアンカーコート層及び無機層を有してなるガスバリア性フィルムであって、前記アンカーコート層は電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物を含み、前記無機層の[表面積]/[面積]の比が1.0005〜1.0030であるガスバリア性フィルム。
[2]前記アンカーコート層は粒子を実質的に含有しない上記[1]に記載のガスバリア性フィルム。
[3][前記アンカーコート層の厚み]/[前記基材の表面の三次元最大山高さSp]の比が0.5以上である上記[1]又は[2]に記載のガスバリア性フィルム。
[4][前記アンカーコート層の厚み]/[前記無機層の厚み]の比が20〜250である、上記[1]〜[3]の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
[5]前記アンカーコート層の厚みが0.5μm超8.0μm未満である、上記[1]〜[4]の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
[6]前記無機層表面の十点平均粗さRzjisが10〜100nmである、上記[1]〜[5]の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
[7]前記ガスバリア性フィルムのヘイズが7〜30%である、上記[1]〜[6]の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
[8]前記ガスバリア性フィルムの全光線透過率が80%以上である、上記[1]〜[7]の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
[9]前記ガスバリア性フィルムの温度40℃相対湿度90%における水蒸気透過率が0.7g/m2/day以下である、上記[1]〜[8]の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
[10]前記ガスバリア性フィルムは、前記無機層を形成した後に、加熱及び/又は電離放射線を照射することにより、前記アンカーコート層を収縮させてなるものである、上記[1]〜[9]の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
[11]上記[1]〜[10]の何れかに記載のガスバリア性フィルムを有する太陽電池保護材。
[12]上記[1]〜[10]の何れかに記載のガスバリア性フィルムを有する発光体の保護材。
[13]上記[1]〜[10]の何れかに記載のガスバリア性フィルムを有するディスプレイ用の光拡散フィルム。
[14]基材上に、電離放射線硬化型樹脂組成物を含む塗料組成物を塗布した後、前記電離放射線硬化型樹脂組成物が完全に硬化しないように電離放射線を照射してアンカーコート層を形成する工程、前記アンカーコート層上に無機層を形成する工程、及び前記無機層を形成した後、加熱及び/又は電離放射線を照射し、前記アンカーコート層を収縮させ、前記無機層の[表面積]/[面積]の比を1.0005〜1.0030とする工程を順に行う、ガスバリア性フィルムの製造方法。
なお、以下、「無機層の[表面積]/[面積]の比」のことを、単に「無機層の面積比」と称する場合がある。
本発明によれば、防眩層を別途に設けることなく、防眩性及びガスバリア性を兼ね備えたガスバリア性フィルムを提供することができる。
実施例1のガスバリア性フィルムのエージング処理後の光学顕微鏡写真および三次元表面形状像 比較例2のガスバリア性フィルムのエージング処理後の光学顕微鏡写真および三次元表面形状像 比較例7のガスバリア性フィルムの光学顕微鏡写真および三次元表面形状像
<ガスバリア性フィルム>
本発明のガスバリア性フィルムは、基材上にアンカーコート層及び無機層を有してなるものであって、前記アンカーコート層は電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物を含み、前記無機層の[表面積]/[面積]の比が1.0005〜1.0030であるものである。以下に本発明を更に詳細に説明する。
(基材)
基材としては、樹脂を主成分とする樹脂フィルムが好ましく、その材料としては、通常の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料や、太陽電池用部材、電子ペーパー用部材、有機EL用部材に使用しうる樹脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン;環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド;エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリル樹脂、生分解性樹脂等が挙げられる。これらの中では、フィルム物性、コスト等の点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンが好ましい。基材は、これらの樹脂の2種以上を含むものであってもよい。
中でも、フィルム物性の点から、基材はポリエステルを主成分とするポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンナフタレートを主成分とするポリエチレンナフタレートフィルムがより好ましい。
本明細書において、「主成分」とは、具体的な含有率を制限するものではないが、構成成分全体の50質量%以上、好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であって100質量%以下の範囲を占める成分である。
基材は透明であることが好ましい。
また、上記基材の表面は、密着性を高めるために、コロナ放電処理、プラズマ処理等の易接着処理を施すことが好適である。
基材は、無機層の成膜性を良好にする観点から、表面が略平滑であることが好ましい。具体的には、基材の表面の三次元算術平均粗さSaが50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。
三次元算術平均粗さSaは、二次元パラメータの算術平均粗さRa(JIS B0601:2013)を三次元に拡張したパラメータであり、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ることにより算出できる。
上記基材は、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
上記基材としての樹脂フィルムは、未延伸であってもよいし延伸したものであってもよい。
上記基材は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、1種の樹脂からなる多層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルム等を製造することができる。
この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。延伸倍率は任意に設定できるが、100℃における熱収縮率が、好ましくは0.01〜5%、より好ましくは0.01〜2%である。中でもフィルム物性の点から、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムや、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートとポリエチレンテレフタレートの共押出二軸延伸フィルム、又はこれらの樹脂と他の樹脂の共押出二軸延伸フィルムが好ましい。
(アンカーコート層)
アンカーコート層は、基材と無機層との間に位置するものであり、基材と無機層との密着性を向上するとともに、無機層の面積比を本発明の範囲とする役割を有する。
アンカーコート層は、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物を含むものである。このようなアンカーコート層は、電離放射線硬化型樹脂組成物を含む塗料組成物から形成することができる。電離放射線硬化型樹脂組成物は、少なくとも電離放射線硬化型樹脂を含む組成物であり、電離放射線を照射することにより、硬化する樹脂組成物である。ここで、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
後述するように、本発明のガスバリア性フィルムを得る際には、無機層を形成する段階では、アンカーコート層の電離放射線硬化型樹脂組成物を完全に硬化しない状態(未硬化の電離放射線硬化型樹脂組成物を含む状態)としておき、無機層を形成した後に、加熱及び/又は電離放射線の照射を行う。該加熱及び/又は電離放射線の照射の際には、アンカーコート層は未硬化の電離放射線硬化型樹脂組成物を含むため、熱収縮及び/又は硬化収縮しやすく、該収縮による応力を無機層が変形することにより緩和する際に無機層に皺等が形成され、無機層の面積比を本願発明の範囲とすることができると考えられる。
電離放射線硬化型樹脂の原料としては、重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしは重合性プレポリマーの中から適宜選択して用いることができ、例えば(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく挙げられる。中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。これらのモノマー、オリゴマーは併用して用いてもよく、また組成物の粘度調整などの目的で単官能性(メタ)アクリレートを更に適宜併用することができる。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートモノマーは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、耐薬品性、耐汚染性、あるいは高平滑性といった表面特性を優れたものとする観点、及び、反りの軽減、耐傷性及び外観性の向上の観点から適宜選択すればよい。
多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、アクリルオリゴマー、ポリブタジエンオリゴマー、シリコーンオリゴマー等から選ばれるオリゴマーの主鎖に、(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられる。
上述の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数は、耐薬品性、耐汚染性、あるいは高平滑性といった表面特性を優れたものとする観点、及び、反りの軽減、耐傷性及び外観性の向上の観点から適宜選択すればよい。
多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、1,000〜30,000であることが好ましく、1,000〜27,000であることがより好ましい。
単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、無機層の[表面積]/[面積]の比を本発明の範囲とする観点から、電離放射線硬化型樹脂組成物中には、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、光重合開始剤を0.1〜5質量部程度添加することが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾイン系、アセトフェノン系、フェニルケトン系、ベンソフェノン系、アントラキノン系等の光重合開始剤が挙げられ、具体的には例えば、ベンジルジメチルケタール、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸及びベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
また、電離放射線硬化型樹脂組成物中には、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
電離放射線硬化型樹脂として電子線硬化型樹脂を用いる場合、光重合開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得ることができる。電子線硬化型樹脂の原料としては、前記の多官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく用いられ、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、電離放射線硬化型樹脂組成物中には、熱重合開始剤を含有させてもよい。熱重合開始剤を含有することにより、アンカーコート層の形成段階は電子線又は紫外線で電離放射線硬化型樹脂組成物を硬化し、アンカーコート層上に無機層を形成した後は、熱により電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化を進行することができる。熱重合開始剤の含有量は、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜2.0質量部であることがより好ましい。
熱重合開始剤としては、有機化酸化物等が挙げられる。有機過酸化物としては、具体的には例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロルヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。有機過酸化物としては、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アンカーコート層を形成する塗料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、電離放射線硬化型樹脂組成物以外の成分を含有していてもよい。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、酸化防止剤等を含有することができる。但し、アンカーコート層を形成する塗料組成物の全固形分に占める電離放射線硬化型樹脂組成物は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
アンカーコート層は、上記塗料組成物を、基材上に塗布し、必要に応じて乾燥し、電離放射線硬化型樹脂組成物を硬化することにより形成することができる。なお、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化の程度は、アンカーコート層の形成段階では、完全に硬化しない状態(未硬化の電離放射線硬化型樹脂組成物を含む状態)とする。乾燥は塗料組成物が無溶剤型である場合は省略できる。
本発明では、後述するように、無機層を形成した後に、加熱及び/又は電離放射線の照射により、アンカーコート層を収縮させる。そのため、電離放射線硬化型樹脂組成物は、アンカーコート層の形成段階では完全には硬化させないようにする。
アンカーコート層を形成する段階での電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化の程度は、加熱の温度及び時間、並びに電離放射線の積算照射量により調整できるが、中でも電離放射線の積算照射量により調整することが好ましい。該調整を電離放射線の積算照射量により行う場合、無機層を形成する前のアンカーコート層について、電離放射線の照射前後IR測定を行い、1400cm-1付近のC=C結合に由来するピーク高さの比([電離放射線の照射後の1400cm-1付近のピーク高さ]/[電離放射線の照射前の1400cm-1付近のピーク高さ])が0.2〜0.8となるように電離放射線を照射することが好ましく、0.4〜0.7であることがより好ましい。以下、該比のことを「C=C結合のピーク高さ比」と称する場合がある。
アンカーコート層を形成する段階において、前記範囲となるように電離放射線の照射量を調整することにより、無機層を形成した後の加熱及び/又は電離放射線の照射によりアンカーコート層を収縮させることができ、無機層の[表面積]/[面積]の比を本発明の範囲に調整しやすくできる。
なお、光重合開始剤は高温で長時間加熱すると、揮発して量が減少したり、活性が低下したりするため、アンカーコート層を形成する段階での電離放射線硬化型樹脂組成物の加熱の程度によっても、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化度合いを調整することができる。例えば、紫外線の照射量を同条件としつつ、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化度合いを変化させたい場合は、アンカーコート層に電離放射線を照射する前の乾燥工程において、加熱温度及び/又は加熱時間を調整すればよい。その際の加熱温度は、光重合開始剤の融点以上で、適宜調整すればよい。
電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合、通常の大気下(非不活性雰囲気下)で硬化を行うと酸素阻害により硬化が不十分となり易いので、酸素阻害を防止するために、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化は不活性雰囲気下で行うことが好適とされている。しかし、本発明の場合、電離放射線硬化型樹脂を含むアンカーコート層を不十分に硬化させた上で無機層を形成し、その後にアンカーコート層を収縮させるため、通常の大気下(非不活性雰囲気下)で電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化を行うことが好ましい。
アンカーコート層は、無機層の成膜性を良好にするために、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。具体的には、アンカーコート層は粒子の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。なお、粒子とは、平均粒子径1nm以上のものをいう。粒子の平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡のTEM写真で確認できる。
アンカーコート層は無機層の成膜性を良好にする観点から、無機層を成膜する段階での表面が略平滑であることが好ましい。具体的には、無機層を成膜する段階においては、アンカーコート層の表面の[表面積]/[面積]の比が1.0003以下であることが好ましく、1.0000であることがより好ましい。
アンカーコート層の厚みは、無機層の[表面積]/[面積]の比を本発明の範囲に調整しやすくする観点から、0.5μm超8.0μm未満であることが好ましく、1.0μm以上7μm以下であることがより好ましい。0.5μmを超えることにより無機層表面に凹凸を形成しやすくなり、8.0μm未満とすることによりアンカーコート層の収縮力が過度になり過ぎることを抑え、無機層の面積比を調整しやすくできる。
また、アンカーコート層の厚みは、無機層を成膜する前のアンカーコート層表面を略平滑にする観点から、[アンカーコート層の厚み]/[基材の表面の三次元最大山高さSp]の比を0.5以上とすることが好ましく、1〜4とすることがより好ましい。
三次元最大山高さSpは、二次元パラメータの最大山高さRp(JIS B0601:2013)を三次元に拡張したパラメータであり、測定対象領域の表面の山高さの最大値を示す。
無機層を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、酸化炭化窒化物、ダイヤモンドライクカーボン又はこれらの混合物等が挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムを太陽電池に適用した場合に電流がリークする等のおそれがない点から、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム及び酸化窒化アルミニウム等の無機酸化物、窒化珪素及び窒化アルミニウム等の窒化物、ダイヤモンドライクカーボン並びにこれらの混合物が好ましい。
また、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム及びこれらの混合物は、高い防湿性が安定に維持できる点で好ましく、これらの中でも、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
また、酸化珪素は屈折率が低く、反射率を抑え、防眩性をより高めることができる点で好適である。
無機層の形成方法としては、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、あるいは化学気相蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)等の方法がいずれも含まれる。物理気相蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられ、化学気相蒸着法としては、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。原子層蒸着は、真空容器内に設置した基板上に、原料化合物の分子をモノレイヤーごとに表面へ吸着、反応による成膜、パージによる余剰分子の除去、のサイクルを繰り返し行うことによって、原子層を一層ずつ積み上げる手法である。
また、上記無機層は、単層の他、多層であってもよく、上記に挙げられる種々の成膜法を用い多層成膜し、防湿性を高めることが可能である。その場合、同一の成膜法を用いてもよいし、各層ごとに異なる成膜法を用いてもよいが、いずれも減圧下で連続して行うことが、効率的な防湿性向上、生産性の点で好ましい。
また、無機層が多層の場合、各層は同じ無機物質からなっていても、異なる無機物質からなっていてもよい。
無機層の厚さは、高い防湿性能の発現と透明性の点から、5〜1000nmであることが好ましく、10〜800nmがより好ましく、10〜500nmがさらに好ましく、20〜200nmがよりさらに好ましい。
また、無機層の[表面積]/[面積]の比を本発明の範囲に調整しやすくする観点から、[アンカーコート層の厚み]/[無機層の厚み]の比は、20〜250であることが好ましく、25〜200であることがより好ましく、30〜200であることがさらに好ましい。無機層が多層構造の場合、各無機層の厚みの合計厚みが、アンカーコート層の厚みと前記の関係を満たすことが好ましい。
本発明では、無機層の[表面積]/[面積]の比が1.0005〜1.0030である。該比が1.0005を下回ると、防眩性、光拡散性及び全光線透過率を良好にすることができず、該比が1.0030を超えると、無機層表面が過度に凹凸化されることによりガスバリア性が低下してしまう。無機層の面積比は、1.0005〜1.0025とすることが好ましく、1.0005〜1.0020とすることがより好ましい。
無機層の表面積は、光干渉法を用いた表面形状測定装置により、無機層の三次元表面形状を測定し、該表面形状により算出することができる。このような測定装置としては、菱化システム社製のVertScan(登録商標)2.0が挙げられる。無機層の面積は、表面積を測定した箇所の投影面積である。アンカーコート層の表面積及び面積についても同様である。
無機層の面積比を上述の範囲にするためには、アンカーコート層上に無機層を形成した後に、アンカーコート層を収縮させることが重要となる。
すなわち、アンカーコート層上に無機層を形成した後に、アンカーコート層を収縮させると、アンカーコート層は収縮により変形しようとするが、無機層にその動きを制限されている。そして、アンカーコート層の収縮による応力を緩和するために、無機層の表面に微細なちりめん状の皺が発生し、[表面積]/[面積]の比が1.0005〜1.0030となると考えられる。なお、アンカーコート層の収縮は、加熱及び/又は電離放射線の照射による熱収縮及び/又は硬化収縮であり、該収縮を起こすためには、無機層を形成する段階で、アンカーコート層の電離放射線硬化型樹脂組成物を完全に硬化させないようにする。
また、無機層の十点平均粗さRzjis(JIS B0601:2013)は、10〜100nmであることが好ましく、30〜80nmであることがより好ましい。10nm以上とすることにより防眩性を付与しやすくでき、100nm以下とすることによりバリア性の低下を抑制しやすくできる。
従来、基材−アンカーコート層−無機層を順次有する積層体において、アンカーコート層の収縮により生じる応力を無機層が変形することにより緩和する作用を利用して、無機層の表面に微細な凹凸を発生させ、無機層の面積比を調整する技術思想は存在しなかった。
したがって、基材−アンカーコート層−無機層という層構成からなる単純な積層体において、バリア性を維持しつつ無機層の面積比を大きくすることは、従来の常識では不可能なことであった。
すなわち、基材−アンカーコート層−無機層という層構成からなる積層体において、水蒸気透過率を0.7g/m2/day以下としつつ、無機層の面積比を1.0005〜1.0030として防眩性を付与する本発明は、従来からは想定できない特徴的な構成を有するものである。
無機層上には、高い防湿性能を発現する観点から、さらに保護層を形成してもよい。保護層は、無機層の微細な欠陥を補完する役割を果たし、より高いガスバリア性の発現が期待できる。該保護層としては有機無機ハイブリッド材料を含むコート層が好ましく用いられ、具体的には、ポリシラザン、ポリシロキサン等が用いられる。
保護層の厚みは、クラックの発生を防止し、高い防湿性能を発現する観点から、好ましくは5〜120nm、より好ましくは10〜90nmである。保護層は、例えば上記有機無機ハイブリッド材料を含む塗布液を調製し、これを無機層上に所望の厚みとなるように塗布、加熱乾燥することにより形成できる。
ガスバリア性フィルムは、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が0.7g/m2/day以下であることが好ましい。
ガスバリア性フィルムのヘイズ(JIS K7136:2000)は、7〜30%であることが好ましく、8〜25%であることがより好ましく、10〜20%であることがさらに好ましい。ヘイズを7%以上とすることにより、防眩性を良好にしやすくできるとともに、光拡散性、全光線透過率を良好にしやすくできる。また、ヘイズを30%以下とすることにより、ガスバリア性の低下を防止しやすくできる。
ガスバリア性フィルムの全光線透過率(JIS K7361−1:1997)は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。
ヘイズ及び全光線透過率は、ガスバリア性フィルムの無機層側から測定光を入射した値である。
本発明においては、上記構成層に必要に応じさらに追加の構成層を積層したガスバリア性積層フィルムが用途に応じて使用できる。
通常の実施態様としては、上記無機層あるいは保護層の上にプラスチックフィルムを設けたガスバリア性積層フィルムが各種用途に使用される。該プラスチックフィルムの厚さは、積層構造体の基材としての機械強度、可撓性、透明性等の点から、通常5〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲で用途に応じて選択される。
該プラスチックフィルムとして、ヒートシールが可能なフィルムを使用することにより、ヒートシールが可能となり、種々の容器として使用できる。ヒートシールが可能な樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、生分解性樹脂等の公知の樹脂が例示される。
また、太陽電池用部材、有機EL用部材、電子ペーパーの表面保護部材等の耐候性が重要視される用途においては、該プラスチックフィルムとして、耐加水分解性や耐候性に優れるフィルム(耐候性フィルム)を用いることが好ましい。耐候性フィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリメチルメタアクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂;ポリアミド等が挙げられる。
ガスバリア性フィルム積層体の温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率は、防湿性の観点から、好ましくは0.7g/m2/day以下、より好ましくは0.5g/m2/day以下である。
ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率の調整は、無機層を構成する無機物質の選択、無機層の厚み、基材の材質及び厚み、保護層の形成、及び無機物質の酸化数等を適宜調整することにより行うことができる。
水蒸気透過率の測定方法は、JIS Z 0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、具体的には実施例に記載の方法で測定される。
本発明のガスバリア性フィルムは、防湿性及び防眩性を有し、かつ全光線透過率が良好であることから、太陽電池用部材、有機EL、無機EL等の発光体の保護材、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイ用の光拡散フィルム、電子ペーパーの表面保護部材等に好適に用いることができる。
<ガスバリア性フィルムの製造方法>
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、基材上に、電離放射線硬化型樹脂組成物を含む塗料組成物を塗布した後、前記電離放射線硬化型樹脂組成物が完全に硬化しないように電離放射線を照射してアンカーコート層を形成する工程、前記アンカーコート層上に無機層を形成する工程、及び前記無機層を形成した後、加熱及び/又は電離放射線を照射し、前記アンカーコート層を収縮させ、前記無機層の[表面積]/[面積]の比を1.0005〜1.0030とする工程を順に行うものである。
アンカーコート層は、電離放射線硬化型樹脂組成物を含む塗料組成物を、基材上に塗布し、必要に応じて乾燥し、電離放射線硬化型樹脂組成物が完全に硬化しないように電離放射線を照射することにより形成することができる。乾燥は塗料組成物が無溶剤型である場合は省略できる。本発明では、電離放射線硬化型樹脂に、無機層を形成した後に、アンカーコート層が収縮による体積変化(硬化の進行や熱による収縮)を進行させることが重要であるため、アンカーコート層形成時の電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化を一定の範囲にすることが重要である。電離放射線硬化型樹脂組成物は、加熱及び/又は電離放射線の照射により、硬化を進行させることができる。
アンカーコート層を形成する段階での電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化の程度は、上述のように、電離放射線の積算照射量により調整することが好ましい。電離放射線の積算照射量は、上述のように、アンカーコート層をIR測定した際の1400cm-1付近のC=C結合に由来するピーク高さの比を基準に調整することが好ましい。
アンカーコート層を上述のように形成した後は、無機層を形成する。
無機層を形成した後は、加熱及び/又は電離放射線を照射し、アンカーコート層を収縮させ、無機層の[表面積]/[面積]の比を1.0005〜1.0030とする。
該工程での加熱の程度や電離放射線の照射量は、アンカーコート層の厚みや材質、並びに該工程前での電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化の程度により異なるため一概には言えないが、例えば、アンカーコート層の形成段階で、[電離放射線の照射後の1400cm-1付近のピーク高さ]/[電離放射線の照射前の1400cm-1付近のピーク高さ]=0.5となるだけの電離放射線を照射しており、アンカーコート層の厚みが4μmであるという前提条件の場合、加熱(エージング)で無機層の面積比を本発明の範囲とするためには、80〜100℃で24〜48時間程度の加熱(エージング)を実施することが好適である。前記前提条件において、電離放射線の照射で硬化を進行させる場合には、完全硬化に必要な残りの電離放射線を照射すればよい。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は制限を受けるものではない。なお、種々の物性の測定及び評価は次のようにして行った。
(1)水蒸気透過率
厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績社製、パイレンP1146)の表面に、ウレタン系接着剤(東洋モートン社製のAD900とCAT−RT85とを10:1.5の割合で配合したもの)を塗布、乾燥し、厚さ約3μmの接着剤層を形成した。次いで、該接着剤層上に、実施例及び比較例のガスバリア性フィルムのSiOx無機層側の面をラミネートし、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムを用いてJIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法」の諸条件に準じ、下記手法でガスバリア性フィルムの水蒸気透過率を求めた。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の各ガスバリア性積層フィルムを2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、48時間以上間隔で質量増加がほぼ一定になる目安として14日間まで、質量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出した(表には、7日目における水蒸気透過率の値を示す。)。
水蒸気透過率(g/m2/24h)=(m/s)/t
m; 試験期間最後2回の秤量間隔の増加質量(g)
s; 透湿面積(m2
t; 試験期間最後2回の秤量間隔の時間(h)/24(h)
さらに、下記式より、水蒸気透過率維持率を求めた。
水蒸気透過率維持率 = エージング後のガスバリア性フィルムの水蒸気透過率/エージング前のガスバリア性フィルムの水蒸気透過率
(2)ヘイズおよび全光線透過率測定
ガスバリア性フィルムについて、ヘーズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)を用いて、ヘイズ及び全光線透過率を測定した。光源設定はD65とした。また、測定光の入射面は無機層側とした。なお、エージングをしたものについては、エージング後に測定した。
(3)表面積および表面形状像の測定
菱化システム社製の商品名システムVertScan2.0 R5200Gを用いて、50倍対物レンズで94.33μm×70.75μmの範囲のガスバリア性フィルムの無機層の表面積を測定した。なお、エージングをしたものについては、エージング後に測定した。
(4)真空蒸着法により形成した無機層の厚み
無機層の厚みの測定は蛍光X線を用いて行った。具体的には、フィルム上に既知の2種の厚みの薄膜を形成し、それぞれについて放射される特定の蛍光X線強度を測定し、この情報より検量線を作成する。ガスバリア性フィルムの無機層について同様に蛍光X線強度を測定し、検量線からその厚みを算出した。なお、エージングをしたものについては、エージング後に測定した。
(5)アンカーコート層の厚み
アンカーコート層の塗布、乾燥、硬化後に、断面写真から観察される10点平均値から求めた。
(6)無機層表面の十点平均粗さ、基材表面の最大山高さ
菱化システム社製の商品名VertScan2.0 R5200Gにより無機層表面の十点平均粗さRzjis(JIS B0601:2013)並びに基材フィルム表面の三次元最大山高さSp及び三次元算術平均粗さSaを測定した。Sp及びSaの測定では、5倍対物レンズで948.76μm×711.61μmの範囲を測定した。なお、エージングをしたものについては、エージング後に測定した。
(7)C=C結合のピーク高さ比
無機層を形成する前のアンカーコート層について、電離放射線の照射前後にIR測定を行い、1400cm-1付近のC=C結合に由来するピーク高さの比([電離放射線の照射後の1400cm-1付近のピーク高さ]/[電離放射線の照射前の1400cm-1付近のピーク高さ])を算出した。IR測定は、ニコレー・ジャパン社製の商品名Nexus670を用いて、ATR法にて測定した(スキャン回数:32回、分解能4cm-1)。
[実施例1]
基材フィルムとして、厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社、ダイアホイルT100、Sp:1.5μm、Sa:25.4nm)を用い、そのコロナ処理面に、以下のように調整した紫外線硬化型樹脂組成物を塗布後、100℃の乾燥オーブンで20秒間乾燥を行なった後、高圧水銀ランプ(160W/cm)を用いて大気雰囲気下で積算紫外線照射量を50mJ/cm2照射し、厚み4μmの紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物を含むアンカーコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して2×10-3Paの真空下でSiOを抵抗加熱方式で蒸発させ、紫外線硬化型樹脂組成物上に厚さ30nmのSiOx無機層を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。次に、該ガスバリア性フィルムを100℃の乾燥オーブンで48時間エージングを行なった。
得られたガスバリア性フィルムについて、上記評価を行った。結果を表1に示す。
(紫外線硬化型樹脂組成物aの調製)
メチルエチルケトンにアクリルポリマー(大成ファインケミカル社製、アクリット8KX-077、重量平均分子量23,000)及び1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(BASF社製、Irgacure184)を100:100:3の質量比となるよう配合し、紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
[実施例2〜4]、[比較例1〜4]
アンカーコート層の形成条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜4のガスバリア性フィルムを作製し、評価した。
[実施例5]
紫外線硬化型樹脂組成物aの代わりに、メチルエチルケトンにアクリルオリゴマー(日本合成社製、紫光UV−2750B 平均分子量3000)及び1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(BASF社製、Irgacure184)を100:100:3の質量比となるよう配合してなる紫外線硬化型樹脂組成物bを用いたこと以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルを作製し、評価した。
[比較例5]
紫外線硬化樹脂組成物aの代わりに熱硬化シリコーン樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、SHC900)を用いて乾燥温度を120℃、乾燥時間を60秒とし、紫外線照射を行なわないこと以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製し、評価した。
[比較例6]
紫外線硬化樹脂組成物aの硬化物層を設けず、基材上に直接SiOx無機層を形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製し、評価した
[比較例7]
実施例2において、蒸着後にエージングを行なわないこと以外は同様にしてガスバリア性フィルムを作製し、評価した。
[比較例8]
アンカーコート層の形成条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例8のガスバリア性フィルムを作製し、評価した。
表1の結果から明らかなように、実施例のガスバリア性フィルムは、無機層の面積比が1.0005〜1.0030であることから、防眩性を有し(ヘイズが7%以上)、水蒸気透過率が低く、全光線透過率も良好であった。
一方、比較例1及び4〜7のものは、無機層の面積比が小さいことから、防眩性が十分ではないものであった。比較例1のものは、アンカーコート層の厚みが薄いため、無機層の表面形状を変化させるだけの応力が働かないためと考えられる。比較例4及び5のものは、アンカーコート層を形成した段階で、紫外線硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂の硬化がほぼ完了しており、エージングによりさらなる硬化が進行しなかったためと考えられる。比較例6のものはアンカーコートを有さないことから、無機層の密着性が劣り、水蒸気透過率が極めて高いものであった。なお、比較例6において無機層の表面積比が1を超えているのは、基材の僅かな凹凸が反映されたものである。
また、比較例2、3及び8のものは、無機層の面積比が大きすぎるため、エージング後の水蒸気透過率が高く、ガスバリア性が不十分なものであった。
なお、図1は、実施例1のガスバリア性フィルムのエージング処理後の光学顕微鏡写真および三次元表面形状像である。また、図2は、比較例2のガスバリア性フィルムのエージング処理後の光学顕微鏡写真および三次元表面形状像である。また、図3は、比較例7のガスバリア性フィルムの光学顕微鏡写真および三次元表面形状像である。
本発明によれば、防眩層を別途に設けることなく、防眩性及びガスバリア性を兼ね備えたガスバリア性フィルムを提供することができる。このような本発明のガスバリア性フィルムは、防湿性及び防眩性を有し、かつ全光線透過率が良好であることから、太陽電池用部材、有機EL、無機EL等の発光体の保護材、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイ用の光拡散フィルム、電子ペーパーの表面保護部材等に好適に用いることができる。

Claims (14)

  1. 基材上にアンカーコート層及び無機層を有してなるガスバリア性フィルムであって、前記アンカーコート層は電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物を含み、前記無機層の[表面積]/[面積]の比が1.0005〜1.0030であるガスバリア性フィルム。
  2. 前記アンカーコート層は粒子を実質的に含有しない請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. [前記アンカーコート層の厚み]/[前記基材の表面の三次元最大山高さSp]の比が0.5以上である請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. [前記アンカーコート層の厚み]/[前記無機層の厚み]の比が20〜250である、請求項1〜3の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記アンカーコート層の厚みが0.5μm超8.0μm未満である、請求項1〜4の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記無機層表面の十点平均粗さRzjisが10〜100nmである、請求項1〜5の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
  7. 前記ガスバリア性フィルムのヘイズが7〜30%である、請求項1〜6の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
  8. 前記ガスバリア性フィルムの全光線透過率が80%以上である、請求項1〜7の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
  9. 前記ガスバリア性フィルムの温度40℃相対湿度90%における水蒸気透過率が0.7g/m2/day以下である、請求項1〜8の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
  10. 前記ガスバリア性フィルムは、前記無機層を形成した後に、加熱及び/又は電離放射線を照射することにより、前記アンカーコート層を収縮させてなるものである、請求項1〜9の何れかに記載のガスバリア性フィルム。
  11. 請求項1〜10の何れかに記載のガスバリア性フィルムを有する太陽電池保護材。
  12. 請求項1〜10の何れかに記載のガスバリア性フィルムを有する発光体の保護材。
  13. 請求項1〜10の何れかに記載のガスバリア性フィルムを有するディスプレイ用の光拡散フィルム。
  14. 基材上に、電離放射線硬化型樹脂組成物を含む塗料組成物を塗布した後、前記電離放射線硬化型樹脂組成物が完全に硬化しないように電離放射線を照射してアンカーコート層を形成する工程、前記アンカーコート層上に無機層を形成する工程、及び前記無機層を形成した後、加熱及び/又は電離放射線を照射し、前記アンカーコート層を収縮させ、前記無機層の[表面積]/[面積]の比を1.0005〜1.0030とする工程を順に行う、ガスバリア性フィルムの製造方法。
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