JP2017168387A - 無機固体電解質材料、固体電解質シートおよび全固体型リチウムイオン電池 - Google Patents

無機固体電解質材料、固体電解質シートおよび全固体型リチウムイオン電池 Download PDF

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Abstract

【課題】電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池を実現できる無機固体電解質材料並びに固体電解質シート、および電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池を提供すること。【解決手段】本発明の無機固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料であって、当該無機固体電解質材料を500MPaで10分間プレス成型することにより得られる加圧成形体のナノインデーテンション法による弾性率が0.5×109Pa以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、無機固体電解質材料、固体電解質シートおよび全固体型リチウムイオン電池に関する。
リチウムイオン電池は、一般的に、携帯電話やノートパソコン等の小型携帯機器の電源として使用されている。また、最近では小型携帯機器以外に、電気自動車や電力貯蔵等の電源としてもリチウムイオン電池は使用され始めている。
現在市販されているリチウムイオン電池には、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されている。一方、電解液を固体電解質に変えて、電池を全固体化したリチウムイオン電池(以下、全固体型リチウムイオン電池とも呼ぶ。)は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
このような全固体型リチウムイオン電池には、固体電解質層として、固体電解質材料を主に含む固体電解質シートが使用されている。以下の特許文献1には、こうした固体電解質シートの例が記載されている。
特許文献1(特開2008−124011号)には、ガラス状のリチウムイオン伝導性固体電解質を、シート状に成形後熱処理する、またはシート状に成形すると共に熱処理する結晶性の固体電解質シートの製造方法が記載されている。
特開2008−124011号公報
本発明者らの検討によると、特許文献1に記載されているような固体電解質シートに関しては、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性がまだまだ満足するものではないことが明らかになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池を実現できる無機固体電解質材料並びに固体電解質シート、および電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した。その結果、無機固体電解質材料や固体電解質シートの弾性率を高度に制御することにより、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明によれば、
リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料であって、
当該無機固体電解質材料を500MPaで10分間プレス成型することにより得られる加圧成形体のナノインデーテンション法による弾性率が0.5×10Pa以上である無機固体電解質材料が提供される。
また、本発明によれば、
上記無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質シートが提供される。
また、本発明によれば、
リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質シートであって、
ナノインデーテンション法による弾性率が0.5×10Pa以上である固体電解質シートが提供される。
さらに、本発明によれば、
正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層された全固体型リチウムイオン電池であって、
上記固体電解質層が、上記固体電解質シートにより構成されたものである全固体型リチウムイオン電池が提供される。
本発明によれば、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池を実現できる無機固体電解質材料並びに固体電解質シート、および電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池を提供することができる。
本発明に係る実施形態の全固体型リチウムイオン電池の構造の一例を模式的に示した断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
[無機固体電解質材料]
はじめに、本実施形態に係る無機固体電解質材料について説明する。
本実施形態に係る無機固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料であって、当該無機固体電解質材料を500MPaで10分間プレス成型することにより得られる加圧成形体のナノインデーテンション法による弾性率が0.5×10Pa以上であり、好ましくは1.0×10Pa以上であり、より好ましくは2.0×10Pa以上であり、さらに好ましくは5.0×10Pa以上であり、さらにより好ましくは1.0×1010Pa以上であり、特に好ましくは2.0×1010Pa以上である。
本実施形態に係る無機固体電解質材料において、上記ナノインデーテンション法による弾性率を上記下限値以上とすることにより、得られる固体電解質シートの強度を向上でき、充放電で生じる電極の体積変化により固体電解質層に亀裂が入り、正極と負極が接触してしまうことを抑制することができる。その結果、全固体型リチウムイオン電池の電池特性を向上できる。
また、本実施形態に係る無機固体電解質材料のナノインデーテンション法による弾性率の上限値は特に限定されないが、得られる固体電解質シートの応力緩和力を向上させる観点から、例えば1.0×1012Pa以下であり、好ましくは1.0×1011Pa以下であり、より好ましくは8.0×1010Pa以下であり、さらに好ましくは5.0×1010Pa以下である。これにより、充放電で生じる電極の体積変化による固体電解質層の亀裂をより一層抑制することができ、その結果、全固体型リチウムイオン電池の電池特性をより向上できる。
なお、本実施形態では、全固体型リチウムイオン電池の電池特性とは、例えば、放電容量密度、出力特性、サイクル特性等をいう。
本発明者らの検討によれば、無機固体電解質材料や固体電解質シートの弾性率を高度に制御すること、すなわち、無機固体電解質材料の上記ナノインデーテンション法による弾性率や後述する固体電解質シートのナノインデーテンション法による弾性率を特定の範囲内とすることにより、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池が得られることを見出し、本発明に至った。
本実施形態に係る無機固体電解質材料や固体電解質シートを用いることにより、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池が得られる理由は明らかではないが、以下の理由が考えられる。
まず、無機固体電解質材料や固体電解質シートの弾性率が低いと、充放電で生じる電極の体積変化により固体電解質層に亀裂が発生しやすくなると考えられる。この亀裂が発生すると、正極と負極が接触して短絡等が起こり、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性が悪化してしまう。
これに対し、本実施形態に係る無機固体電解質材料や固体電解質シートは、弾性率が特定の値以上であり、強度に優れている。そのため充放電時に固体電解質層に亀裂が発生し難くなると考えられる。以上の理由から、本実施形態に係る無機固体電解質材料や固体電解質シートを用いると、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性の悪化を抑制することができると考えられる。
以上から、本実施形態に係る無機固体電解質材料や固体電解質シートによれば、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池を実現できる。
ここで、上記加圧成形体や後述の固体電解質シートのナノインデーテンション法による弾性率は、以下の条件に従い行うことができる。
測定装置としては、例えば、島津製作所製のダイナミック微小硬度計(DUH―W201)を使用し、使用圧子として三角錐の圧子(稜間角115°)を用いて、一定の試験力P(mN)による負荷−除荷試験(装置上の試験条件:MODE2)から、上記弾性率Eを測定することができる。このとき、弾性率EはE=σ/εで求められる。σは単位面積当りの力(Pa)、εは長さの変化の割合(ΔL/L)を指す。試験条件は、例えば、試験力50mN、負荷速度4.412993mN/秒、負荷保持時間2秒、試験回数3回とすることができる。試験回数3回の平均値をナノインデーテンション法による弾性率とすることができる。
なお、本実施形態では、例えば無機固体電解質材料の種類、無機固体電解質材料の粒度分布等を適切に選択することにより、本実施形態に係る無機固体電解質材料や固体電解質シートのナノインデーテンション法による弾性率を所望の範囲に制御することが可能である。これらの中でも、例えば、後述する無機固体電解質材料におけるLi/PやS/Pの割合、無機固体電解質材料の粒度分布(d90/d50)等が、本実施形態に係る無機固体電解質材料や固体電解質シートのナノインデーテンション法による弾性率を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
本実施形態に係る無機固体電解質材料としては、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、硫化物系無機固体電解質材料、酸化物系無機固体電解質材料、その他のリチウム系無機固体電解質材料等を挙げることができる。これらの中でも、硫化物系無機固体電解質材料が好ましい。これにより、無機固体電解質材料間の界面抵抗がより一層低下し、リチウムイオン伝導性により一層優れた固体電解質シートにすることができる。
硫化物系無機固体電解質材料としては、例えば、LiS−P材料、LiS−SiS材料、LiS−GeS材料、LiS−Al材料、LiS−SiS−LiPO材料、LiS−P−GeS材料、LiS−LiO−P−SiS材料、LiS−GeS−P−SiS材料、LiS−SnS−P−SiS材料等が挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン伝導性が優れており、製造方法が簡便である点から、LiS−P材料が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、リチウムイオン伝導性に優れ、かつ広い電圧範囲で分解等を起こさない安定性を有する点から、LiS−P材料が好ましい。ここで、例えば、LiS−P材料とは、少なくともLiS(硫化リチウム)とPとを含む混合物をメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得られる材料を意味する。
上記酸化物系無機固体電解質材料としては、例えば、LiTi(PO、LiZr(PO、LiGe(PO等のNASICON型、(La0.5+xLi0.5−3x)TiO等のペロブスカイト型等が挙げられる。
その他のリチウム系無機固体電解質材料としては、例えば、LiPON、LiNbO、LiTaO、LiPO、LiPO4−x(xは0<x≦1)、LiN、LiI、LISICON等が挙げられる。さらに、これらの無機固体電解質の結晶を析出させて得られるガラスセラミックスも無機固体電解質材料として用いることができる。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、構成元素として、Li、P、およびSを含んでいるものが好ましい。
また、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、当該固体電解質材料中の上記Pの含有量に対する上記Liの含有量のモル比(Li/P)が好ましくは1.0以上10.0以下であり、より好ましくは2.0以上5.0以下であり、さらに好ましくは3.0以上4.5以下であり、特に好ましくは3.2以上4.2以下である。また、上記Pの含有量に対する上記Sの含有量のモル比(S/P)が好ましくは1.0以上10.0以下であり、より好ましくは2.0以上6.0以下であり、さらに好ましくは3.0以上5.0以下であり、特に好ましくは3.2以上4.5以下である。
ここで、本実施形態の固体電解質材料中のLi、P、およびSの含有量は、例えば、ICP発光分光分析により求めることができる。
無機固体電解質材料の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。本実施形態の粒子状の無機固体電解質材料は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、無機固体電解質材料の平均粒子径d50に対する粒子径d90の比(d90/d50)が2.5以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましい。d90/d50が上記上限値以下であることにより、無機固体電解質材料の充填密度が向上し緻密化することで、本実施形態に係る無機固体電解質材料や、本実施形態に係る固体電解質シートのナノインデーテンション法による弾性率をより大きくすることができる。
また、本実施形態の粒子状の無機固体電解質材料の平均粒子径d50は、好ましくは1μm以上40μm以下であり、より好ましくは2μm以上30μm以下、さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。
無機固体電解質材料の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、固体電解質シートのリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
[無機固体電解質材料の製造方法]
つづいて、本実施形態に係る無機固体電解質材料の製造方法について説明する。
以下、構成元素として、Li、P、およびSを含む硫化物系無機固体電解質材料の製造方法を例に説明する。
本実施形態に係るLi、P、およびSを含む硫化物系無機固体電解質材料は、例えば、原料であるLiSおよびPを特定の割合で含み、必要に応じてLiNをさらに含む混合物Aをガラス化し、分級して粒度分布を調整することにより得ることができる。
また、得られたガラス状態の混合物Bを加熱(熱処理とも呼ぶ)してもよい。より具体的には、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、以下の(1)および(2)の工程を含む製造方法により得ることができる。また、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法は、以下の(3)の工程をさらに含んでもよい。
(1)LiSおよびPを特定の割合で含み、必要に応じてLiNをさらに含む混合物Aをガラス化する工程
(2)得られたガラス状態の混合物Bを分級して粒度分布を調整する工程
(3)ガラス状態の混合物Bを加熱することにより、上記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程
以下、各工程について説明する。
<混合物Aをガラス化する工程>
はじめに、LiSおよびPを特定の割合で含み、必要に応じてLiNをさらに含む混合物Aを調製する。LiS、PおよびLiNの混合割合は、所望の組成比を有する硫化物系無機固体電解質材料によって適宜設定される。
つぎに、混合物Aをガラス化する。
混合物Aをガラス化する方法としては特に限定されないが、例えば、メカノケミカル処理、溶融急冷法等によりおこなうことができる。
これらの中でも、メカノケミカル処理によりおこなうことが好ましい。常温での処理が可能であり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。また、メカノケミカル処理は、乾式メカノケミカル処理であっても、湿式メカノケミカル処理であってもよい。
メカノケミカル処理を用いると、LiS、PおよびLiNを微粒子状に粉砕しながら混合することができるため、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。これにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態に係る無機固体電解質材料を得ることができる。
ここで、メカノケミカル処理とは、混合対象に、せん断力、衝突力または遠心力のような機械的エネルギーを加えつつガラス化する方法である。メカノケミカル処理によるガラス化をおこなう装置としては、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等の粉砕・分散機が挙げられる。これらの中でもボールミルが好ましく、遊星型ボールミルが特に好ましい。遊星型ボールミルでは、ポットが自転回転しながら、台盤が公転回転するので、非常に高い衝撃エネルギーを効率良く発生させることができる。そのため、所望の無機固体電解質材料を効率良く得ることができる。
混合物Aをガラス化するときの回転速度や処理時間、温度、反応圧力、混合物に加えられる重力加速度等の混合条件は、混合物Aの処理量によって適宜決定することができる。一般的には、回転速度が速いほど、ガラスの生成速度は速くなり、処理時間が長いほどガラスヘの転化率は高くなる。例えば、一般的な遊星型ボールミル機を使用した場合は、回転速度を数十〜数百rpmとし、0.5時間〜500時間処理すればよい。通常は、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析をしたとき、原料であるPおよびLiNの回折ピークが消失していたら、上記混合物Aはガラス化され、混合物Bが得られていると判断することができる。
本実施形態の無機固体電解質材料は、リチウムイオンの伝導性をより一層向上できる観点から、非晶質性がより高いほど好ましい。
<分級して粒度分布を調整する工程>
つづいて、得られたガラス状態の混合物Bを分級して粒度分布を調整する。上記分級方法としては特に限定されず、篩等公知の方法を用いることができる。ここで、分級して粒度分布を調整する工程では、無機固体電解質材料の平均粒子径d50に対する粒子径d90の比(d90/d50)を2.5以下に調整することが好ましく、2.2以下に調整することがより好ましい。
これらの分級は、空気中の水分との接触を防ぐことができる点から、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下で行うことが好ましい。
また、分級して粒度分布を調整する工程は、上記(1)の工程の前に、原料であるLiS、PおよびLiNに対しておこなってもよいし、上記(1)の工程の後に、上記混合物Bに対しておこなってもよい。また、上記(3)の工程の後に、加熱処理後の上記混合物Bに対しておこなってもよい。
<混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程>
つづいて、得られたガラス状態の混合物Bを加熱することにより、上記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程について説明する。
本実施形態に係る無機固体電解質材料の製造方法では、ガラス状態の混合物Bを加熱することにより、混合物Bの少なくとも一部を結晶化させてもよい。こうすることにより、より一層リチウムイオン伝導性に優れた無機固体電解質材料を得ることができる。
上記混合物Bを加熱する際の温度としては、280℃以上500℃以下の範囲内であることが好ましく、280℃以上350℃以下の範囲内であることがより好ましい。
上記混合物Bを加熱する際の温度が上記範囲内であると、より一層優れたリチウムイオン伝導性を得ることができる。
上記混合物Bを加熱する時間は、所望の無機固体電解質材料が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば、1分間以上24時間以下の範囲内であり、好ましくは0.5時間以上3時間以下である。加熱の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。なお、このような加熱する際の温度、時間等の条件は、本実施形態の無機固体電解質材料の特性を最適なものにするため適宜調整することができる。
本実施形態に係る無機固体電解質材料を得るためには、上記の各工程を適切に調整することが重要である。ただし、本実施形態に係る無機固体電解質材料の製造方法は、上記のような方法には限定されず、種々の条件を適切に調整することにより、本実施形態に係る無機固体電解質材料を得ることができる。
[固体電解質シート]
次に、本実施形態に係る固体電解質シートについて説明する。
本実施形態に係る固体電解質シートは、前述した本実施形態に係る無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質シート、あるいはリチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質シートであって、ナノインデーテンション法による弾性率が0.5×10Pa以上である固体電解質シートである。
ここで、上記リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料としては、前述した本実施形態に係る無機固体電解質材料を挙げることができる。
本実施形態に係る固体電解質シートのナノインデーテンション法による弾性率は、好ましくは1.0×10Pa以上であり、より好ましくは2.0×10Pa以上であり、さらに好ましくは5.0×10Pa以上であり、さらにより好ましくは1.0×1010Pa以上であり、特に好ましくは2.0×1010Pa以上である。
本実施形態に係る固体電解質シートにおいて、上記ナノインデーテンション法による弾性率を上記下限値以上とすることにより、得られる固体電解質層の強度を向上でき、充放電で生じる電極の体積変化により固体電解質層に亀裂が入り、正極と負極が接触してしまうことを抑制することができる。その結果、全固体型リチウムイオン電池の電池特性を向上できる。
また、本実施形態に係る固体電解質シートのナノインデーテンション法による弾性率の上限値は特に限定されないが、得られる固体電解質シートの応力緩和力を向上させる観点から、例えば1.0×1012Pa以下であり、好ましくは1.0×1011Pa以下であり、より好ましくは8.0×1010Pa以下であり、さらに好ましくは5.0×1010Pa以下である。これにより、充放電で生じる電極の体積変化による固体電解質層の亀裂をより一層抑制することができ、その結果、全固体型リチウムイオン電池の電池特性をより向上できる。
本実施形態に係る固体電解質シートは、例えば、全固体型リチウムイオン電池を構成する固体電解質層に用いられる。
本実施形態に係る固体電解質シートを適用した全固体型リチウムイオン電池の例としては、正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層されたものが挙げられる。この場合、固体電解質層が固体電解質シートにより構成されたものである。
本実施形態に係る固体電解質シートの平均厚みは、好ましくは5μm以上500μm以下であり、より好ましくは10μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上100μm以下である。上記固体電解質シートの平均厚みが上記下限値以上であると、無機固体電解質材料の欠落や、固体電解質シート表面のひび割れをより一層抑制できる。また、上記固体電解質シートの平均厚みが上記上限値以下であると、固体電解質シートのインピーダンスをより一層低下させることができる。その結果、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性をより一層向上できる。
本実施形態に係る固体電解質シートは、粒子状の無機固体電解質材料の加圧成形体であることが好ましい。すなわち、粒子状の無機固体電解質材料を加圧し、無機固体電解質材料同士のアンカー効果で一定の強度を有する固体電解質シートとすることが好ましい。
加圧成形体とすることにより、無機固体電解質材料同士の結合が起こり、得られる固体電解質シートの強度はより一層高くなる。その結果、無機固体電解質材料の欠落や、無機固体電解質材料表面のひび割れをより一層抑制できる。
本実施形態に係る固体電解質シート中の上記無機固体電解質材料の含有量は、固体電解質シートの全体を100質量%としたとき、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。これにより、無機固体電解質材料間の接触性が改善され、固体電解質シートの界面接触抵抗を低下させることができる。その結果、固体電解質シートのリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。そして、このようなリチウムイオン伝導性に優れた固体電解質シートを用いることにより、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性をより一層向上できる。
固体電解質シートの平面形状は、特に限定されず、電極層や集電体層の形状に合わせて適宜選択することが可能であるが、例えば、矩形とすることができる。
また、本実施形態に係る固体電解質シートにはバインダー樹脂が含まれてもよいが、バインダー樹脂の含有量は、固体電解質シートの全体を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下、よりさらに好ましくは0.01質量%以下である。また、本実施形態に係る固体電解質シートは、バインダー樹脂を実質的に含まないことがよりさらに好ましく、バインダー樹脂を含まないことが最も好ましい。
これにより、無機固体電解質材料間の接触性が改善され、固体電解質シートの界面接触抵抗を低下させることができる。その結果、固体電解質シートのリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。そして、このようなリチウムイオン伝導性に優れた固体電解質シートを用いることにより、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性を向上できる。
なお、「バインダー樹脂を実質的に含まない」とは、本発明の効果が損なわれない程度には含有してもよいことを意味する。また、固体電解質層と正極層または負極層との間に粘着性樹脂層を設ける場合、固体電解質層と粘着性樹脂層との界面近傍に存在する粘着性樹脂層由来の粘着性樹脂は、「固体電解質シート中のバインダー樹脂」から除かれる。
上記バインダー樹脂とは無機固体電解質材料間を結着させるために、リチウムイオン電池に一般的に使用される結着剤のことをいい、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリイミド等が挙げられる。
[固体電解質シートの製造方法]
つぎに、本実施形態に係る固体電解質シートの製造方法について説明する。
本実施形態に係る固体電解質シートは、例えば、下記(A)、(B)および(C)の工程を含む製造方法により作製することができる。
(A)粒子状の本実施形態に係る無機固体電解質材料を多孔体の空隙に充填する工程
(B)多孔体の空隙に充填された無機固体電解質材料を金型のキャビティ表面上または基材表面上に篩い落とすことにより、金型のキャビティ表面上または基材表面上に無機固体電解質材料を膜状に堆積させる工程
(C)膜状に堆積した無機固体電解質材料を加圧する工程
以下、各工程について詳細に説明する。
はじめに、(A)粒子状の無機固体電解質材料を多孔体の空隙に充填する。粒子状の無機固体電解質材料を多孔体の空隙に充填する方法としては特に限定されないが、例えば、空気中または不活性雰囲気中で多孔体の空隙内に粒子状の無機固体電解質材料を直接供給する方法や、粒子状の無機固体電解質材料を溶媒に分散させてスラリー状態にし、次いで、そのスラリーを多孔体上に塗布し、空隙内にスラリーを浸透させた後、溶媒を乾燥する方法等が挙げられる。
空気中または不活性雰囲気中で多孔体の空隙内に粒子状の無機固体電解質材料を直接供給する方法としては、多孔体上に無機固体電解質材料を粉体塗工し、スキージにより、多孔体上の過剰な無機固体電解質材料を取り除きつつ、空隙内に無機固体電解質材料を充填する方法等が挙げられる。
上記スラリーを塗布する方法としては、ドクターブレード塗工法、浸漬塗工法、スプレー塗工法、バーコーター塗工法等の一般的に公知の方法を使用できる。
これらの方法により、多孔体の空隙内に無機固体電解質材料を連続的に充填することができる。
ここで、多孔体は、空隙内に無機固体電解質材料を充填できるものである。
多孔体の形状は特に限定されないが、取り扱いのし易さの観点から、好ましくはシート状である。
多孔体の形態としては、例えば、織布、不織布、メッシュクロス、多孔性膜、エキスパンドシート、パンチングシート等から選択される一種または二種以上が挙げられる。
次に、(B)多孔体の空隙に充填された無機固体電解質材料を金型のキャビティ表面上または基材表面上に篩い落とすことにより、金型のキャビティ表面上または基材表面上に無機固体電解質材料を膜状に堆積させる。ここで、所望の厚みが得られるまで、多孔体の空隙に充填された無機固体電解質材料を金型のキャビティ表面上または基材表面上に篩い落とす。
無機固体電解質材料は多孔体の開口部によって少量ずつ篩い落とされるため、金型のキャビティ表面上または基材表面上に成に均一な厚みで膜状に堆積することができる。
無機固体電解質材料を金型のキャビティ表面上または基材表面上に篩い落とす方法としては、例えば、多孔体を振動させることにより、多孔体の空隙に充填された無機固体電解質材料を金型のキャビティ表面上または基材表面上に篩い落とす方法等が挙げられる。
また、工程(B)では、膜状に堆積した無機固体電解質材料を振動させることにより、粒子状の無機固体電解質材料を流動させて、膜状に堆積した無機固体電解質材料を緻密化させる工程をさらに含んでもよい。これにより得られる固体電解質シートの厚みをより一層均一にすることができる。振動させる方法としては、例えば、超音波振動やハンマーによる軽い打撃のような小さな振幅の振動が挙げられる。
上記基材としては、例えば、正極層、負極層、金属箔、プラスチックフィルム、カーボン等が挙げられる。
次いで、(C)膜状に堆積した無機固体電解質材料を加圧する。これにより、無機固体電解質材料同士のアンカー効果で一定の強度を有する固体電解質シートになる。ここで、粒子状の無機固体電解質材料を基材表面上に堆積させた場合、基材が積層された状態で加圧してもよいし、基材を剥離してから加圧してもよい。
加圧を行えば無機固体電解質材料同士の結合が起こり、得られる固体電解質シートの強度はより一層高くなる。その結果、無機固体電解質材料の欠落や、無機固体電解質材料表面のひび割れをより一層抑制できる。
上記無機固体電解質材料を加圧する方法は特に限定されず、例えば、金型のキャビティ表面上に無機固体電解質材料を堆積させた場合は金型と押し型によるプレス、粒子状の無機固体電解質材料を基材表面上に堆積させた場合は金型と押し型によるプレスやロールプレス、平板プレス等を用いることができる。
無機固体電解質材料を加圧する圧力は、例えば、10MPa以上500MPa以下である。
また、必要に応じて、膜状に堆積した無機固体電解質材料を加圧するとともに加熱してもよい。加熱加圧を行えば無機固体電解質材料同士の融着・結合が起こり、得られる固体電解質シートの強度はより一層高くなる。その結果、無機固体電解質材料の欠落や、無機固体電解質材料表面のひび割れをより一層抑制できる。
無機固体電解質材料を加熱する温度は、例えば、40℃以上500℃以下である。
[全固体型リチウムイオン電池]
つぎに、本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200について説明する。図1は、本発明に係る実施形態の全固体型リチウムイオン電池200の構造の一例を模式的に示した断面図である。本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200はリチウムイオン二次電池であるが、リチウムイオン一次電池であってもよい。
本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200は、正極層210と、固体電解質層220と、負極層230とがこの順番に積層されてなる。そして、固体電解質層220が、本実施形態に係る固体電解質シートにより構成されたものである。
また、実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200は、正極層210と、固体電解質層220と、負極層230とにより構成される単位セルを2つ以上積層させることにより、バイポーラ型リチウムイオン電池とすることもできる。
全固体型リチウムイオン電池200の形状は特に限定されず、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状が挙げられる。
本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200は、一般的に公知の方法に準じて製造される。例えば、正極層210と、固体電解質層220と、負極層230とを重ねたものを、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成することにより作製される。
正極層210は特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池に一般的に用いられている正極を使用することができる。正極層210は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、正極活物質を含む正極活物質層をアルミ箔等の集電体上に形成することにより得ることができる。
正極活物質層の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
上記正極活物質層は正極活物質を必須成分として含んでいる。
正極活物質としては特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の正極層に使用可能な一般的に公知の正極活物質を用いることができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)、固溶体酸化物(LiMnO−LiMO(M=Co、Ni等))、リチウム−マンガン−ニッケル酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)、オリビン型リチウムリン酸化物(LiFePO)等の複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;LiS、CuS、Li−Cu−S化合物、TiS、FeS、MoS、Li−Mo−S化合物、Li−Ti−S化合物、Li−V−S化合物等の硫化物系正極活物質;硫黄を含浸したアセチレンブラック、硫黄を含浸した多孔質炭素、硫黄と炭素の混合粉等の硫黄を活物質とした材料;等を用いることができる。これらの正極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、より高い放電容量密度を有し、かつ、サイクル特性により優れる観点から、硫化物系正極活物質が好ましく、Li−Mo−S化合物、Li−Ti−S化合物、Li−V−S化合物から選択される一種または二種以上がより好ましい。
ここで、Li−Mo−S化合物は構成元素としてLi、Mo、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるモリブデン硫化物および硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
また、Li−Ti−S化合物は構成元素としてLi、Ti、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるチタン硫化物と硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
Li−V−S化合物は構成元素としてLi、V、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるバナジウム硫化物と硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
上記正極活物質層は特に限定されないが、正極活物質以外の成分として、例えば、固体電解質材料、バインダー、導電助剤等から選択される一種または二種以上の材料を含んでもよい。
正極活物質層中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
負極層230は特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。負極層230は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、負極活物質を含む負極活物質層を銅等の集電体上に形成することにより得ることができる。
負極活物質層の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
上記負極活物質層は負極活物質を必須成分として含んでいる。
負極活物質としては特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の負極層に使用可能な一般的に公知の負極活物質を用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした金属系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;金属リチウム;リチウムチタン複合酸化物(例えばLiTi12)等が挙げられる。これらの負極活物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記負極活物質層は特に限定されないが、負極活物質以外の成分として、例えば、固体電解質材料、バインダー、導電助剤等から選択される一種または二種以上の材料を含んでもよい。
負極活物質層中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[1]測定方法
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
(1)ICP発光分光分析
ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメント社製、SPS3000)を用いて、ICP発光分光分析法により測定し、固体電解質材料や正極活物質中の各元素の質量%をそれぞれ求め、それに基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。
(2)粒度分布
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー3000)を用いて、レーザー回折法により、実施例および比較例で使用した無機固体電解質材料の粒度分布を測定した。測定結果から、無機固体電解質材料について、重量基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒子径)および重量基準の累積分布における90%累積時の粒径(D90)を求めた。
(3)ナノインデーテンション法による弾性率の測定
精製したアルゴンガスが充満されたステンレス製グローブボックス中で、実施例および比較例で得られた無機固体電解質材料200mgをφ14mmのプレス治具に入れ、500MPaで10分間プレス成型した。次いで、得られた円形のペレット(加圧成形体)を密閉容器に入れた。
測定装置として、島津製作所製ダイナミック微小硬度計(DUH―W201)を使用し、使用圧子として三角錐の圧子(稜間角115°)を用いた。ダイナミック超微小硬度計は、予めラミネート製簡易型グローブボックスに入れ、精製アルゴンを導入しながら乾燥を行った。
密閉容器に入れた円形のペレットをステンレス製グローブボックスから取出し、簡易型グローブボックス内のダイナミック超微小硬度計にセットし、試験力50mN、負荷速度4.412993mN/秒、負荷保持時間2秒、試験回数3回の試験条件で負荷―除荷試験を実施した。
ここで、一定の試験力P(mN)による負荷−除荷試験(装置上の試験条件:MODE2)から弾性率Eを求めることができる。このとき、弾性率EはE=σ/εで求められる。σは単位面積当りの力(Pa)、εは長さの変化の割合(ΔL/L)を指す。試験回数3回の平均値をナノインデーテンション法による弾性率とした。
(4)電池特性評価
導電性銅箔導電テープ(寺岡製作所製8313 0.03、外寸法:25.0mm×25.0mm、厚み:30μm、銅箔:0.009mm、導電性アクリル系粘着剤層:0.021mm、粘着剤層面に黒鉛(日本黒鉛工業社製、CGC−20、8mg)を付着)、負極活物質層(インジウム箔、ニラコ社製、23.0mm×23.0mm、平均厚み:20μm)、実施例および比較例で得られた固体電解質シート、正極活物質層(Li14MoS:ケッチェンブラック(KB):Li1112=1:0.5:1.2(質量比)、平均厚み:30μm)、導電性銅箔導電テープ(寺岡製作所製8313 0.03、外寸法:25.0mm×25.0mm、厚み:30μm、銅箔:0.009mm、導電性アクリル系粘着剤層:0.021mm、粘着剤層面にケッチェンブラック(ライオン社製、325メッシュ、0.1mg)を付着)をこの順で積層させた。次いで、得られた積層体を320MPaで加圧して第一単位セルを作製した。ここで、第一単位セルの作製と同様の方法で、第一単位セルと同じ構成の第二単位セルを作製した。
次いで、中央に直径15mmの円形状の貫通孔を形成した粘着性樹脂層(日東電工社製、極薄両面テープNo.5600、層構成:アクリル系粘着剤層/PETフィルム基材/アクリル系粘着剤層、総厚み:5μm、外寸法:25.0mm×25.0mm)を介して、得られた第一単位セルと第二単位セルを積層して積層体を作製し、得られた積層体を80MPaで加圧した。次いで、得られた積層体をアルミラミネートフィルムで真空ラミネートし、バイポーラ型の全固体型リチウムイオン電池を得た。
次いで、得られた全固体型リチウムイオン電池について、25℃で、電流密度65μA/cmの条件で充電終止電位4.5Vまで充電した後、電流密度65μA/cmの条件で、放電終止電位2.0Vまで放電させる条件で充放電を35回以上行った。
ここで、1回目の放電容量を100%としたときの20回目の放電容量を放電容量変化率[%]とし、放電容量変化率が100%のものを◎、放電容量変化率が80%以上100%未満のものを〇、放電容量変化率が80%未満のものを×と評価した。
[2]材料
つぎに、以下の実施例、比較例において使用した材料について説明する。
(1)正極活物質(Li14MoS
アルゴン雰囲気下で、Al製ポットに、MoS(和光純薬工業社製、4.7mmol)と、LiS(シグマアルドリッチジャパン社製、32.5mmol)と、を秤量して加え、さらにZrOボールを入れ、Al製ポットを密閉した。
次いで、Al製ポットを、ボールミル回転台に乗せ120rpmで、4日間処理を行い、混合物を得た。
得られたLi−Mo−S化合物は乳鉢により粉砕し、目開き43μmの篩により分級してLi−Mo−S化合物を得た。
Moの含有量に対するLiの含有量のモル比(Li/Mo)は14であり、Moの含有量に対するSの含有量のモル比(S/Mo)は9であった。
(2)多孔体
多孔体としては、ナイロンメッシュクロス(田中三次郎商店社製13XX‐100、厚み105μm、空隙率36%、目開き100μm)を用いた。
<実施例1>
(1)硫化物系無機固体電解質材料の作製
硫化物系無機固体電解質材料であるLiS−P材料を以下の手順で作製した。
原料には、LiS(シグマアルドリッチジャパン製、純度99.9%)、P(関東化学製試薬)を使用した。LiNは、以下の手順で作製した。
まず、窒素雰囲気のグローブボックス中で、Li箔(本城金属社製、純度99.8%、厚み0.5mm)にステンレス製の剣山を使用しφ1mm以下の穴を多数開けた。Li箔は穴の部分から黒紫色に変化し始め、そのまま、常温で24時間放置することでLi箔すべてが黒紫色のLiNに変化した。LiNは、メノウ乳鉢で粉砕後、ステンレス製篩で篩い分けし、75μm以下の粉末を回収し無機固体電解質材料の原料とした。
つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLiS:P:LiN=67.5:22.5:10.0(モル%)になるように精秤し、これら粉末を20分間メノウ乳鉢で混合した。次いで、混合粉末2gを秤量し、φ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、遊星ボールミル(フリッチュ社製、P−7)にて100rpmで1時間混合粉砕した。次いで、400rpmで15時間混合粉砕して、Li1112組成のLiS−P材料を得た。得られたLi1112組成のLiS−P材料を、精製したアルゴンガスが充満されたステンレス製グローブボックス中で、ナイロン製メッシュ(目開き100μm)で篩に掛け、粒子状の無機固体電解質材料(Li1112)を得た。なお、前述したナノインデーテンション法による弾性率の測定におけるプレス成型は、無機固体電解質材料をステンレス製グローブボックス内から取り出さずに、このステンレス製グローブボックス内でおこなった。得られた粒子状の無機固体電解質材料(Li1112)について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
(2)固体電解質シートの作製
ナイロンメッシュクロスの一方の面に、厚み75μmのスペーサ(厚み60μmのマスキングテープと厚み15μmのベースレス両面テープ)を介してポリエチレンテレフタレート(PET)板を貼り付けたものを作製した。なお、ナイロンメッシュクロスには25mm×25mm以外の部分の開口部を樹脂で充填し、粉末が25mm×25mmのみを通過できるようにしておいた。
次いで、ナイロンメッシュクロスとPET板の間に設けた空間部(スペーサにより確保した空間)と、ナイロンメッシュクロスの開口部(空隙)に、スキージを使用して粒子状の無機固体電解質材料(Li1112)を充填した。
次いで、粒子状の無機固体電解質材料が充填されたナイロンメッシュクロスを反転してプレス金型の上に設置し、PET板を木槌で叩き、振動させることでプレス金型のキャビティ表面上に無機固体電解質材料を篩い落とすことにより、プレス金型のキャビティ表面上に無機固体電解質材料を膜状に堆積させた。ここで、無機固体電解質材料はプレス金型のキャビティ(25mm×25mm)に均一な厚みで膜状に堆積した。
次いで、油圧平板プレスを使用して、320MPaでプレスすることで固体電解質シートを得た。得られた固体電解質シートについて電池特性評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
<実施例2〜7>
また、Li1112組成のLiS−P材料の作製方法に準じた方法により、表1に記載の組成を有する粒子状の無機固体電解質材料をそれぞれ得た。得られた粒子状の無機固体電解質材料について各評価をおこなった。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
また、無機固体電解質材料の種類を表1に示す無機固体電解質材料とした以外は、実施例1と同様の方法で固体電解質シートをそれぞれ作製し、電池特性評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
<比較例1>
ナイロン製メッシュ(目開き100μm)で篩に掛ける操作をおこなわなかった以外は実施例1と同様の方法で粒子状の無機固体電解質材料および固体電解質シートを作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表2に示す。
<比較例2〜7>
ナイロン製メッシュ(目開き100μm)で篩に掛ける操作をおこなわなかった以外は、実施例2〜7と同様の方法で粒子状の無機固体電解質材料をそれぞれ作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表2にそれぞれ示す。
また、無機固体電解質材料の種類を表2に示す無機固体電解質材料とした以外は、実施例1と同様の方法で固体電解質シートをそれぞれ作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表2にそれぞれ示す。
Figure 2017168387
Figure 2017168387
実施例で得られた固体電解質シートを用いた全固体型リチウムイオン電池は、比較例で得られた固体電解質シートを用いた全固体型リチウムイオン電池に比べて、電池特性に優れていた。
以上から、本実施形態に係る無機固体電解質材料および固体電解質シートによれば、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池が得られることが確認できた。
200 全固体型リチウムイオン電池
210 正極層
220 負極層
230 固体電解質層

Claims (17)

  1. リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料であって、
    当該無機固体電解質材料を500MPaで10分間プレス成型することにより得られる加圧成形体のナノインデーテンション法による弾性率が0.5×10Pa以上である無機固体電解質材料。
  2. 請求項1に記載の無機固体電解質材料において、
    硫化物系無機固体電解質材料を含む無機固体電解質材料。
  3. 請求項2に記載の無機固体電解質材料において、
    前記硫化物系無機固体電解質材料は構成元素として、Li、P、およびSを含む無機固体電解質材料。
  4. 請求項3に記載の無機固体電解質材料において、
    前記硫化物系無機固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が1.0以上10.0以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が1.0以上10.0以下である無機固体電解質材料。
  5. 請求項1乃至4いずれか一項に記載の無機固体電解質材料において、
    当該無機固体電解質材料は粒子状であり、
    レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、前記無機固体電解質材料の平均粒子径d50に対する粒子径d90の比(d90/d50)が2.5以下である無機固体電解質材料。
  6. 請求項5に記載の無機固体電解質材料において、
    前記無機固体電解質材料の平均粒子径d50が1μm以上40μm以下である無機固体電解質材料。
  7. 請求項1乃至6いずれか一項に記載の無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質シート。
  8. リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質シートであって、
    ナノインデーテンション法による弾性率が0.5×10Pa以上である固体電解質シート。
  9. 請求項8に記載の固体電解質シートにおいて、
    前記無機固体電解質材料が硫化物系無機固体電解質材料を含む固体電解質シート。
  10. 請求項9に記載の固体電解質シートにおいて、
    前記硫化物系無機固体電解質材料は構成元素として、Li、P、およびSを含む固体電解質シート。
  11. 請求項10に記載の固体電解質シートにおいて、
    前記硫化物系無機固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が1.0以上10.0以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が1.0以上10.0以下である固体電解質シート。
  12. 請求項7乃至11いずれか一項に記載の固体電解質シートにおいて、
    粒子状の前記無機固体電解質材料の加圧成形体である固体電解質シート。
  13. 請求項7乃至12いずれか一項に記載の固体電解質シートにおいて、
    当該固体電解質シート中のバインダー樹脂の含有量が、前記固体電解質シートの全体を100質量%としたとき、0.5質量%未満である固体電解質シート。
  14. 請求項7乃至13いずれか一項に記載の固体電解質シートにおいて、
    当該固体電解質シート中の前記無機固体電解質材料の含有量が、前記固体電解質シートの全体を100質量%としたとき、98質量%以上である固体電解質シート。
  15. 請求項7乃至14いずれか一項に記載の固体電解質シートにおいて、
    当該固体電解質シートの平均厚みが5μm以上500μm以下である固体電解質シート。
  16. 請求項7乃至15いずれか一項に記載の固体電解質シートにおいて、
    全固体型リチウムイオン電池を構成する固体電解質層に用いられる固体電解質シート。
  17. 正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層された全固体型リチウムイオン電池であって、
    前記固体電解質層が、請求項7乃至16いずれか一項に記載の固体電解質シートにより構成されたものである全固体型リチウムイオン電池。
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