「電子機器」、「電子部品」、「モジュール」、「半導体装置」の記載について説明する。一般的に、「電子機器」とは、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレット端末、電子書籍端末、ウェアラブル端末、AV機器(AV;Audio Visual)、電化製品、住宅設備機器、業務用設備機器、デジタルサイネージ、自動車、又は、システムを有する電気製品などをいう場合がある。また、「電子部品」、又は「モジュール」とは、電子機器が有するプロセッサ、記憶装置、センサ、バッテリ、表示装置、発光装置、インターフェース機器、RFタグ(RF;Radio Frequency)、受信装置、送信装置などをいう場合がある。また、「半導体装置」とは、半導体素子を用いた装置、又は、電子部品又はモジュールが有する、半導体素子を適用した駆動回路、制御回路、論理回路、信号生成回路、信号変換回路、電位レベル変換回路、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路、記憶回路、メモリセル、表示回路、表示画素などをいう場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置であるヒステリシスコンパレータについて説明する。
<構成例1>
図1に本発明の一態様の半導体装置の一例を示す。半導体装置200は、トランジスタSiTr1と、トランジスタOSTr1と、トランジスタOSTr2と、回路CIR1と、回路CIR2と、インバータ回路INV1と、定電流回路CI1と、定電流回路CI2と、入力端子VNと、入力端子VPと、出力端子OUTと、を有する。
なお、トランジスタSiTr1は、pチャネル型のトランジスタであり、トランジスタOSTr1、及びトランジスタOSTr2は、nチャネル型のトランジスタである。加えて、トランジスタOSTr1、及びトランジスタOSTr2は、デュアルゲート構造を有するトランジスタであり、それぞれフロントゲート(本明細書では、単にゲートと記載する。)と、バックゲートと、を有する。
トランジスタSiTr1のチャネル形成領域は、シリコンを有することが好ましい。また、トランジスタOSTr1、及びトランジスタOSTr2のチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、又はスズ)、亜鉛のいずれかも少なくとも一を含む酸化物半導体であることが好ましい。また、トランジスタOSTr1、及びトランジスタOSTr2は、実施の形態5で説明するトランジスタの構造であることがより好ましい。また、トランジスタOSTr1のバックゲートとトランジスタOSTr2のバックゲートに、それぞれ等しい電位を印加した場合における、トランジスタOSTr1のId−Vg特性(ゲート−ソース間電圧におけるソース−ドレイン電流の特性)とトランジスタOSTr2のId−Vg特性と、は等しいことが好ましい。
回路CIR1は、端子CT1と、端子CT2と、端子CT3と、を有する。回路CIR1は、端子CT1に流れる電流と、端子CT2に流れる電流と、に応じた電位を端子CT3に出力する機能を有する。つまり、回路CIR1は、電流電圧変換回路として機能する。
回路CIR2は、端子CT4と、端子CT5と、を有する。回路CIR2は、端子CT4に印加される電位に応じて、2値の2つの電位のどちらか一方を、端子CT5に出力する機能を有する。なお、2つの電位とは、例えば、低レベル電位、高レベル電位とすることができる。
定電流回路CI1は、端子CI1Inと、端子CI1Outと、を有する。端子CI1Inは入力端子として機能し、端子CI1Outは出力端子として機能する。定電流回路CI1は、端子CI1Inから端子CI1Outに流れる電流を一定に保つ機能を有する。
定電流回路CI2は、端子CI2Inと、端子CI2Outと、を有する。端子CI2Inは入力端子として機能し、端子CI2Outは出力端子として機能する。定電流回路CI2は、端子CI2Inから端子CI2Outに流れる電流を一定に保つ機能を有する。
なお、定電流回路CI1と、定電流回路CI2と、は同じ回路構成であることが好ましい。
半導体装置200の入力端子VPは、コンパレータにおける+側入力端子(以後、非反転入力端子と呼ぶ。)として機能し、半導体装置200の入力端子VNは、コンパレータにおける−側入力端子(以後、反転入力端子と呼ぶ。)として機能する。
なお、半導体装置200は、外部電源との接続のため、配線VDDLと、配線VSSLと、に電気的に接続されている。配線VDDLは、高レベル電位VDDを与える配線であり、配線VSSLは、低レベル電位VSSを与えるための配線である。
トランジスタOSTr1の第1端子は、回路CIR1の端子CT1と電気的に接続され、トランジスタOSTr1の第2端子は、定電流回路CI1の端子CI1Inと電気的に接続され、トランジスタOSTr1のゲートは、入力端子VPと電気的に接続され、トランジスタOSTr1のバックゲートは、配線VSSLと電気的に接続されている。トランジスタOSTr2の第1端子は、回路CIR1の端子CT2と電気的に接続され、トランジスタOSTr2の第2端子は、定電流回路CI1の端子CI1Inと電気的に接続され、トランジスタOSTr2のゲートは、入力端子VNと電気的に接続され、トランジスタOSTr2のバックゲートは、回路CIR2の端子CT5と電気的に接続されている。定電流回路CI1の端子CI1Outは、配線VSSLと電気的に接続されている。
トランジスタOSTr1及びトランジスタOSTr2は、半導体装置200における差動対として機能する。
なお、トランジスタOSTr1の第2端子と、トランジスタOSTr2の第2端子と、定電流回路CI1の端子CI1Inと、の接続箇所をノードND1とする。加えて、トランジスタOSTr2のバックゲートと、回路CIR2の端子CT5と、の接続箇所をノードVBGNとする。
トランジスタSiTr1の第1端子は、配線VDDLと電気的に接続され、トランジスタSiTr1の第2端子は、定電流回路CI2の端子CI2Inと電気的に接続され、トランジスタSiTr1のゲートは、回路CIR1の端子CT3と電気的に接続されている。定電流回路CI2の端子CI2Outは、配線VSSLと電気的に接続されている。
インバータ回路INV1の入力端子は、定電流回路CI2の端子CI2Inと電気的に接続され、インバータ回路INV1の出力端子は、半導体装置200の出力端子OUTと電気的に接続されている。回路CIR2の端子CT4は、インバータ回路INV1の出力端子と電気的に接続されている。
なお、トランジスタSiTr1の第2端子と、定電流回路CI2の端子CI2Inと、インバータ回路INV1の入力端子と、の接続箇所をノードND3とする。
回路CIR1は、外部電源との接続のため、配線VDDLと電気的に接続されている。インバータ回路INV1は、外部電源との接続のため、配線VDDLと、配線VSSLと、に電気的に接続されている。
なお、図1、後述する図2乃至図7において、回路CIR2と、配線VDDL及び配線VSSLと、の電気的接続は省略している。回路CIR2は、回路CIR2の内部の構成によって、外部電源との接続が必要な場合がある。その場合、回路CIR2は、配線VDDLと、配線VSSLと電気的に接続される。
<<回路CIR1>>
ここで、半導体装置200の回路CIR1の構成例について説明する。
例えば、半導体装置200の回路CIR1は、カレントミラー回路を含む構成としてもよい。図2(A)に示す半導体装置211は、半導体装置200の回路CIR1にカレントミラー回路CMCを含む構成となっている。カレントミラー回路CMCは、端子CM1と、端子CM2と、を有する。カレントミラー回路CMCの端子CM1は、回路CIR1の端子CT1と電気的に接続され、カレントミラー回路CMCの端子CM2は、回路CIR1の端子CT2と電気的に接続されている。回路CIR1の端子CT3は、回路CIR1の端子CT2を介して、トランジスタOSTr2の第1端子と電気的に接続されている。
なお、カレントミラー回路CMCの端子CM2と、回路CIR1の端子CT2と、回路CIR1の端子CT3と、の接続箇所をノードND2とする。
図2(B)に、カレントミラー回路CMCの一例を示す。図2(B)のカレントミラー回路CMCは、トランジスタSiTr2と、トランジスタSiTr3と、を有する。なお、トランジスタSiTr2と、トランジスタSiTr3と、はそれぞれpチャネル型のトランジスタである。トランジスタSiTr2の第1端子は、配線VDDLと電気的に接続され、トランジスタSiTr2の第2端子は、トランジスタSiTr2のゲートと、トランジスタSiTr3のゲートと、端子CT1と、に電気的に接続されている。トランジスタSiTr3の第1端子は、配線VDDLと電気的に接続され、トランジスタSiTr3の第2端子は、端子CT2と、に電気的に接続されている。なお、本発明の一態様の半導体装置が有するカレントミラー回路は、図2(B)の構成に限定されず、図2(B)に示す回路とは別のカレントミラー回路であってもよい。
また、例えば、半導体装置200の回路CIR1は、抵抗素子を含む構成としてもよい。図3(A)に示す半導体装置212は、半導体装置200の回路CIR1に抵抗素子R1、及び抵抗素子R2を含む構成となっている。抵抗素子R1の一方の端子は、回路CIR1の端子CT1と電気的に接続され、抵抗素子R1の他方の端子は、配線VDDLと電気的に接続されている。抵抗素子R2の一方の端子は、回路CIR1の端子CT2と電気的に接続され、抵抗素子R2の他方の端子は、配線VDDLと電気的に接続されている。回路CIR1の端子CT3は、回路CIR1の端子CT2を介して、トランジスタOSTr2の第1端子と電気的に接続されている。
なお、抵抗素子R2の一方の端子と、回路CIR1の端子CT2と、回路CIR1の端子CT3と、の接続箇所をノードND2とする。
また、例えば、半導体装置200の回路CIR1の構成は、ダイオードを含む構成としてもよい。図3(B)に示す半導体装置213は、半導体装置200の回路CIR1にダイオードD1、及びダイオードD2を含む構成となっている。ダイオードD1の出力端子は、回路CIR1の端子CT1と電気的に接続され、ダイオードD1の入力端子は、配線VDDLと電気的に接続されている。ダイオードD2の出力端子は、回路CIR1の端子CT2と電気的に接続され、ダイオードD2の入力端子は、配線VDDLと電気的に接続されている。回路CIR1の端子CT3は、回路CIR1の端子CT2を介して、トランジスタOSTr2の第1端子と電気的に接続されている。
なお、ダイオードD2の出力端子と、回路CIR1の端子CT2と、回路CIR1の端子CT3と、の接続箇所をノードND2とする。
なお、図3(B)に示すダイオードD1、及びダイオードD2には、ダイオード接続されたトランジスタを適用してもよい。ダイオード接続されたトランジスタとは、ゲートとドレインが電気的に接続されたトランジスタのことをいう。特に、ダイオード接続されたトランジスタを適用する場合、ダイオード接続されたトランジスタをトランジスタOSTr1、及びトランジスタOSTr2と同じ材料、及び同じ構造にすることによって、半導体装置213を作製する工程を短縮することができる。また、ダイオード接続されたトランジスタをトランジスタSiTr1と同じ材料、及び同じ構造にすることによっても、半導体装置213を作製する工程を短縮することができる。また、ダイオード接続されたトランジスタを、インバータ回路INV1、定電流回路CI1、定電流回路CI2、及び回路CIR2のいずれかを構成するトランジスタと同じ材料、及び同じ構造にすることによっても、半導体装置213を作製する工程を短縮することができる。
半導体装置200の回路CIR1を、上記に挙げた、半導体装置211の回路CIR1、半導体装置212の回路CIR1、及び半導体装置213の回路CIR1のいずれかの構成にすることで、回路CIR1は、端子CT1に流れる電流と、端子CT2に流れる電流と、に応じた電位を端子CT3に出力する電流電圧変換回路とすることができる。
なお、本発明の一態様は、半導体装置211、半導体装置212、及び半導体装置213のそれぞれの構成に限定されない。回路CIR1が、電流電圧変換回路としての機能を有するのであれば、半導体装置211、半導体装置212、及び半導体装置213に示した回路CIR1以外の構成であってもよい。
<<定電流回路CI1、CI2>>
次に、半導体装置200の定電流回路CI1、及び定電流回路CI2に適用できる具体的な回路構成について説明する。
例えば、定電流回路CI1、及び定電流回路CI2は、トランジスタを含む構成としてもよい。図4(A)に示す半導体装置221は、半導体装置200の定電流回路CI1にトランジスタOSTr3を含み、半導体装置200の定電流回路CI2にトランジスタOSTr4を含む構成となっている。
配線VBIASLは、トランジスタOSTr3のゲート、及びトランジスタOSTr4のゲートに電位を与えるための配線である。
トランジスタOSTr3の第1端子は、定電流回路CI1の端子CI1Inと電気的に接続され、トランジスタOSTr3の第2端子は、定電流回路CI1の端子CI1Outと電気的に接続され、トランジスタOSTr3のゲートは、配線VBIASLと電気的に接続されている。トランジスタOSTr4の第1端子は、定電流回路CI2の端子CI2Inと電気的に接続され、トランジスタOSTr4の第2端子は、定電流回路CI2の端子CI2Outと電気的に接続され、トランジスタOSTr4のゲートは、配線VBIASLと電気的に接続されている。
また、例えば、図4(A)に示す半導体装置221のトランジスタOSTr3、及びトランジスタOSTr4は、デュアルゲート構造を有するトランジスタであってもよい。図4(B)に示す半導体装置222は、トランジスタOSTr3、及びトランジスタOSTr4を、デュアルゲート構造のトランジスタとした構成としており、トランジスタOSTr3、及びトランジスタOSTr4のそれぞれは、ゲートと、バックゲートと、を有する。トランジスタOSTr3のバックゲートは、配線BGL3と電気的に接続され、トランジスタOSTr4のバックゲートは、配線BGL4と電気的に接続されている。この接続構成を適用することで、配線BGL3、及び配線BGL4に電位を印加することにより、トランジスタOSTr3、及びトランジスタOSTr4のそれぞれのしきい値電圧を制御することができる。
また、例えば、図4(B)に示す半導体装置222の構成を、図5(A)に示す半導体装置223の構成に変更してもよい。半導体装置223は、半導体装置222のトランジスタOSTr3、トランジスタOSTr4のそれぞれのバックゲートの接続先を変更した構成となっている。トランジスタOSTr3のバックゲートは、トランジスタOSTr3のゲートと電気的に接続され、トランジスタOSTr4のバックゲートは、トランジスタOSTr4のゲートと電気的に接続されている。この接続構成にすることによって、トランジスタOSTr3、トランジスタOSTr4のそれぞれにおいて、バックゲートにゲートと同じ電位を印加することができる。そのため、それぞれのトランジスタが導通状態であるときのオン電流を増加することができる。つまり、半導体装置223の構成にすることによって、回路内の配線、素子などに印加される電位の変動速度が上がるため、ヒステリシスコンパレータの動作を速くすることができる。
また、例えば、図4(B)に示す半導体装置222の構成を、図5(B)に示す半導体装置224の構成としてもよい。半導体装置224は、半導体装置223とは別に、半導体装置222のトランジスタOSTr3、トランジスタOSTr4のそれぞれのバックゲートの接続先を変更した構成となっている。トランジスタOSTr3のバックゲートは、配線VSSLと電気的に接続され、トランジスタOSTr4のバックゲートは、配線VSSLと電気的に接続されている。この接続構成にすることによって、トランジスタOSTr3、トランジスタOSTr4のそれぞれのバックゲートに、低レベル電位VSSを印加することができる。これにより、トランジスタOSTr3、及びトランジスタOSTr4のしきい値電圧をプラス側にシフトすることができ、トランジスタOSTr3、及びトランジスタOSTr4に流れる電流を低減することができる。半導体装置224の構成にすることによって、ヒステリシスコンパレータに過剰な電流が流れるのを防ぐことができる。
なお、本発明の一態様の半導体装置は、半導体装置221、半導体装置222、半導体装置223、及び半導体装置224のそれぞれの構成に限定されない。定電流回路CI1、及び定電流回路CI2が、定電流回路としての機能を有するのであれば、半導体装置221、半導体装置222、半導体装置223、及び半導体装置224に示した定電流回路CI1、及び定電流回路CI2以外の構成であってもよい。
<<インバータ回路INV1>>
次に、インバータ回路INV1の内部構成の例について説明する。
図6(A)は、インバータ回路INV1の内部構成例を図示した半導体装置231の回路図である。
半導体装置231において、インバータ回路INV1は、トランジスタSiTr4と、トランジスタOSTr5と、を有する。
トランジスタOSTr5のチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、又はスズ)、亜鉛のいずれかも少なくとも一を含む酸化物半導体であることが好ましい。また、トランジスタOSTr5は、実施の形態5で説明するトランジスタであることがより好ましい。
半導体装置231のインバータ回路INV1において、トランジスタSiTr4の第1端子は、配線VDDLと電気的に接続され、トランジスタSiTr4の第2端子は、トランジスタOSTr5の第1端子と、インバータ回路INV1の出力端子と、に電気的に接続され、トランジスタSiTr4のゲートは、トランジスタOSTr5のゲートと、インバータ回路INV1の入力端子と、に電気的に接続されている。トランジスタOSTr5の第2端子は、配線VSSLと電気的に接続されている。
なお、本発明の一態様の半導体装置のインバータ回路INV1は、図6(A)に示す半導体装置231のインバータ回路INV1の構成に限定されない。場合によって、状況に応じて、又は、必要に応じて、インバータ回路INV1の内部の構成を変更することができる。
例えば、図6(A)の半導体装置231のトランジスタOSTr5は、シングルゲート構造のトランジスタであるが、デュアルゲート構造のトランジスタであってもよい。図6(B)に示す半導体装置232は、図6(A)に示す半導体装置231のトランジスタOSTr5を、デュアルゲート構造のトランジスタとした構成となっている。トランジスタOSTr5は、ゲートと、バックゲートと、を有する。トランジスタOSTr5のバックゲートは、配線BGL5と電気的に接続されている。この接続構成にすることによって、配線BGL5に電位を印加することによって、トランジスタOSTr5のしきい値電圧を制御することができる。
また、例えば、図6(B)の半導体装置232のトランジスタOSTr5のバックゲートの接続構成を変更してもよい。図7(A)に示す半導体装置233は、図6(B)に示す半導体装置232のトランジスタOSTr5のバックゲートの接続先を変更した構成となっている。トランジスタOSTr5のバックゲートは、トランジスタSiTr4のゲートと電気的に接続されている。この接続構成にすることによって、トランジスタOSTr5において、バックゲートにゲートと同じ電位を印加することができる。そのため、トランジスタOSTr5が導通状態であるときのオン電流を増加することができる。つまり、半導体装置233の構成にすることによって、ヒステリシスコンパレータの動作を速くすることができる。
また、例えば、図7(A)の半導体装置233とは別に、図6(B)の半導体装置232のトランジスタOSTr5のバックゲートの接続構成を変更してもよい。図7(B)に示す半導体装置234は、図7(A)の半導体装置233とは異なる、図6(B)の半導体装置232のトランジスタOSTr5のバックゲートの接続先を変更した構成となっている。トランジスタOSTr5のバックゲートは、配線VSSLと電気的に接続されている。この接続構成にすることによって、トランジスタOSTr5のバックゲートに、低レベル電位VSSを印加することができる。これにより、トランジスタOSTr5のしきい値電圧をプラス側にシフトすることができ、トランジスタOSTr5に流れる電流を低減することができる。半導体装置234の構成にすることによって、ヒステリシスコンパレータに過剰な電流が流れるのを防ぐことができる。
<<回路CIR2>>
次に、半導体装置200の回路CIR2に適用できる具体的な回路構成について説明する。
例えば、回路CIR2は、インバータ回路を含む構成としてもよい。図8(A)に示す半導体装置241は、半導体装置200の回路CIR2にインバータ回路INV2を含む構成となっている。インバータ回路INV2の入力端子は、回路CIR2の端子CT4と電気的に接続され、インバータ回路INV2の出力端子は、回路CIR2の端子CT5と電気的に接続されている。なお、インバータ回路INV2は、外部電源との接続のため、配線VDDLと、配線VSSLと、に電気的に接続されている。
また、半導体装置241のインバータ回路INV2は、図6(A)の半導体装置231のインバータ回路INV1と、同じ回路構成としてもよい。図8(B)は、インバータ回路INV1、及びインバータ回路INV2の内部構成例を示した半導体装置241Aの回路図である。
半導体装置241Aにおいて、インバータ回路INV1は、トランジスタSiTr4と、トランジスタOSTr5と、を有し、インバータ回路INV2は、トランジスタSiTr5と、トランジスタOSTr6と、を有する。
トランジスタOSTr5及びトランジスタOSTr6のチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、又はスズ)、亜鉛のいずれかも少なくとも一を含む酸化物半導体であることが好ましい。また、トランジスタOSTr5、及びトランジスタOSTr6は、実施の形態5で説明するトランジスタであることがより好ましい。
半導体装置241Aのインバータ回路INV1の内部の回路構成例については、半導体装置231のインバータ回路INV1の記載を参照する。半導体装置241Aのインバータ回路INV2において、トランジスタSiTr5の第1端子は、配線VDDLと電気的に接続され、トランジスタSiTr5の第2端子は、トランジスタOSTr6の第1端子と、インバータ回路INV2の出力端子と、に電気的に接続され、トランジスタSiTr5のゲートは、トランジスタOSTr6のゲートと、インバータ回路INV2の入力端子と、に電気的に接続されている。トランジスタOSTr5の第2端子は、配線VSSLと電気的に接続されている。回路CIR2の端子CT4は、インバータ回路INV2の入力端子と電気的に接続され、回路CIR2の端子CT5は、インバータ回路INV2の出力端子と電気的に接続されている。
また、例えば、回路CIR2は、抵抗素子とトランジスタと、を含む構成としてもよい。図9(A)に示す半導体装置242は、半導体装置200の回路CIR2に抵抗素子R3とトランジスタOSTr7を含む構成となっている。トランジスタOSTr7の第1端子は、抵抗素子R3の一方の端子と電気的に接続され、トランジスタOSTr7の第2端子は、配線VSSLと電気的に接続され、トランジスタOSTr7のゲートは、回路CIR2の端子CT4と電気的に接続されている。抵抗素子R3の他方の端子は、配線VDDLと電気的に接続されている。回路CIR2の端子CT5は、トランジスタOSTr7の第1端子と電気的に接続されている。
また、例えば、回路CIR2は、ダイオードとトランジスタと、を含む構成としてもよい。図9(B)に示す半導体装置243は、半導体装置200の回路CIR2にダイオードD3とトランジスタOSTr7を含む構成となっている。トランジスタOSTr7の第1端子は、ダイオードD3の出力端子と電気的に接続され、トランジスタOSTr7の第2端子は、配線VSSLと電気的に接続され、トランジスタOSTr7のゲートは、回路CIR2の端子CT4と電気的に接続されている。ダイオードD3の入力端子は、配線VDDLと電気的に接続されている。回路CIR2の端子CT5は、トランジスタOSTr7の第1端子と電気的に接続されている。
なお、半導体装置242、及び半導体装置243の回路CIR2が有するトランジスタOSTr7のチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、又はスズ)、亜鉛のいずれかも少なくとも一を含む酸化物半導体であることが好ましい。また、トランジスタOSTr7は、実施の形態5で説明するトランジスタの構造であることがより好ましい。
上記のように、回路CIR2の構成を、半導体装置241、半導体装置242、及び半導体装置243のいずれかの回路CIR2の構成にすることによって、回路CIR2は、端子CT4に印加される電位に応じて、2つの電位のどちらか一方を端子CT5に出力することができる。
なお、本発明の一態様は、半導体装置241、半導体装置242、及び半導体装置243のそれぞれの構成に限定されない。回路CIR2が、入力された電位に応じて2つの電位のどちらか一方を出力する機能を有するのであれば、半導体装置241、半導体装置242、及び半導体装置243に示した回路CIR2以外の構成であってもよい。
また、本発明の一態様の半導体装置は、場合によって、状況に応じて、又は、必要に応じて、上述した構成例を互いに組み合わせた構成としてもよい。
<構成例2>
図1の半導体装置200とは別の半導体装置の一例を図10に示す。半導体装置300は、半導体装置200から回路CIR2を除いて、回路CIR3を加えた回路構成となっている。つまり、半導体装置300は、トランジスタSiTr1と、トランジスタOSTr1と、トランジスタOSTr2と、回路CIR1と、回路CIR3と、インバータ回路INV1と、定電流回路CI1と、定電流回路CI2と、入力端子VNと、入力端子VPと、出力端子OUTと、を有する。
半導体装置200と同様に、トランジスタSiTr1のチャネル形成領域は、シリコンを有することが好ましい。また、トランジスタOSTr1、及びトランジスタOSTr2のチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、又はスズ)、亜鉛のいずれかも少なくとも一を含む酸化物半導体であることが好ましい。また、トランジスタOSTr1、及びトランジスタOSTr2は、実施の形態5で説明するトランジスタの構造であることがより好ましい。また、トランジスタOSTr1のバックゲートとトランジスタOSTr2のバックゲートに、それぞれ等しい電位を印加した場合における、トランジスタOSTr1のId−Vg特性(ゲート−ソース間電圧におけるソース−ドレイン電流の特性)とトランジスタOSTr2のId−Vg特性と、は等しいことが好ましい。
半導体装置300において、回路CIR1は、半導体装置200と同様に、電流電圧変換回路として機能する。なお、回路CIR1の詳細については、半導体装置200の回路CIR1の記載を参照する。
半導体装置300において、定電流回路CI1は、半導体装置200と同様に、端子CI1Inと、端子CI1Outと、を有し、端子CI1Inから端子CI1Outに流れる電流を一定に保つ機能を有する。なお、定電流回路CI1の詳細については、半導体装置200の定電流回路CI1の記載を参照する。
半導体装置300において、定電流回路CI2は、半導体装置200と同様に、端子CI2Inと、端子CI2Outと、を有し、端子CI2Inから端子CI2Outに流れる電流を一定に保つ機能を有する。なお、定電流回路CI2の詳細については、半導体装置200の定電流回路CI2の記載を参照する。
回路CIR3は、端子CT6と、端子CT7と、を有する。回路CIR3は、端子CT6に印加される電位に応じて、2つの電位のどちらか一方を、端子CT7に出力する機能を有する。
半導体装置300の入力端子VPは、コンパレータにおける非反転入力端子として機能し、半導体装置300の入力端子VNは、コンパレータにおける反転入力端子として機能する。
なお、半導体装置300は、外部電源との接続のため、配線VDDLと、配線VSSLと、に電気的に接続されている。配線VDDLは、高レベル電位VDDを与える配線であり、配線VSSLは、低レベル電位VSSを与えるための配線である。
トランジスタOSTr1の第1端子は、回路CIR1の端子CT1と電気的に接続され、トランジスタOSTr1の第2端子は、定電流回路CI1の端子CI1Inと電気的に接続され、トランジスタOSTr1のゲートは、入力端子VPと電気的に接続され、トランジスタOSTr1のバックゲートは、配線VSSLと電気的に接続されている。トランジスタOSTr2の第1端子は、回路CIR1の端子CT2と電気的に接続され、トランジスタOSTr2の第2端子は、定電流回路CI1の端子CI1Inと電気的に接続され、トランジスタOSTr2のゲートは、入力端子VNと電気的に接続され、トランジスタOSTr2のバックゲートは、回路CIR3の端子CT7と電気的に接続されている。なお、トランジスタOSTr2のバックゲートと、回路CIR3の端子CT7と、の接続箇所をノードVBGNとする。定電流回路CI1の端子CI1Outは、配線VSSLと電気的に接続されている。
トランジスタOSTr1及びトランジスタOSTr2は、半導体装置300における差動対として機能する。
トランジスタSiTr1の第1端子は、配線VDDLと電気的に接続され、トランジスタSiTr1の第2端子は、定電流回路CI2の端子CI2Inと電気的に接続され、トランジスタSiTr1のゲートは、回路CIR1の端子CT3と電気的に接続されている。定電流回路CI2の端子CI2Outは、配線VSSLと電気的に接続されている。回路CIR3の端子CT6は、定電流回路CI2の端子CI2Inと電気的に接続されている。
インバータ回路INV1の入力端子は、定電流回路CI2の端子CI2Inと電気的に接続され、インバータ回路INV1の出力端子は、半導体装置300の出力端子OUTと電気的に接続されている。
なお、図10において、回路CIR3と、配線VDDL及び配線VSSLと、の電気的接続の図示を省略している。回路CIR3は、回路CIR3の内部の構成によって、外部電源との接続が必要な場合がある。その場合、回路CIR3は、配線VDDLと、配線VSSLと電気的に接続される。
<<回路CIR3>>
ここで、半導体装置300の回路CIR3の構成例について説明する。
例えば、半導体装置300の回路CIR3は、バッファ回路を含む構成としてもよい。図11(A)に示す半導体装置301は、半導体装置300の回路CIR3にバッファ回路BUFを含む構成となっている。
バッファ回路BUFは、バッファ回路BUFの入力端子に印加された電位が、所定のしきい値電圧よりも高いときに、バッファ回路BUFの出力端子から高レベル電位VDDを出力し、バッファ回路BUFの入力端子に印加された電位が、所定のしきい値電圧よりも低いときに、バッファ回路BUFの出力端子から低レベル電位VSSを出力する機能を有する。
バッファ回路BUFの入力端子は、回路CIR3の端子CT6と電気的に接続され、バッファ回路BUFの出力端子は、回路CIR3の端子CT7と電気的に接続されている。加えて、回路CIR3は、外部電源との接続のため、配線VDDLと、配線VSSLと電気的に接続されている。
この構成にすることによって、端子CT6の電位を、所定の高さの電位に復元して、端子CT7に出力することができる。
なお、本発明の一態様は、半導体装置301の構成に限定されない。回路CIR3が、上述のように、入力された電位に応じて2つの電位のどちらか一方を出力する機能を有するのであれば、半導体装置301に示した回路CIR3以外の構成であってもよい。
また、半導体装置301の回路CIR3を用いて、電位を復元して出力する必要が無いとき、図11(B)に示す半導体装置302のように、回路CIR3を除いた構成としてもよい。半導体装置302にすることによって、半導体装置301よりも回路構成を簡単にすることができるため、回路面積を低減することができる。
また、構成例2に示す半導体装置は、場合によって、状況に応じて、又は、必要に応じて、構成例1に示す半導体装置の有する回路を組み合わせた構成としてもよい。
<動作例>
ここでは、本発明の一態様の半導体装置の動作の一例について説明する。なお、本動作例の説明では、図12に示す半導体装置250を用いている。半導体装置250は、半導体装置211に示す回路CIR1、半導体装置221に示す定電流回路CI1と定電流回路CI2、及び半導体装置241に示す回路CIR2を組み合わせて構成したヒステリシスコンパレータである。
半導体装置250の動作例を、図13のタイミングチャートに示す。図13のタイミングチャートは、時刻T0乃至時刻T8における、入力端子VP、入力端子VN、ノードVBGN、及び出力端子OUTのそれぞれの電位の変動を表している。また、REFは、半導体装置250における実効的な参照電位の変動を表している。
ここで、実効的な参照電位REFについて説明する。一般的には、コンパレータにおける参照電位とは、反転入力端子に印加された電位と定義されている場合が多いが、半導体装置250のヒステリシスコンパレータでは、差動対のトランジスタOSTr2のバックゲートに電位が印加されているとき、トランジスタOSTr2のしきい値電圧が変動するため、入力端子VNに印加される電位がそのまま参照電位とならない。この場合、半導体装置250のヒステリシスコンパレータの実効的な参照電位REFは、入力端子VNに印加された電位に、該しきい値電圧の変動分が加わった電位となる。
<<時刻T0から時刻T1まで>>
時刻T0は、初期状態であり、入力端子VP及び入力端子VNには、高レベル電位及び低レベル電位でない電位が印加されているものとする。そのため、参照電位REF、ノードVBGNの電位、及び出力端子の電位が不定となる。なお、図13では、時刻T1以前の入力端子VPの電位、入力端子VNの電位、参照電位REF、ノードVBGNの電位、及び出力端子OUTの電位は、それぞれ破線で表している。
また、半導体装置250が動作しているとき、配線VBIASLには所定の電位が印加される。これにより、トランジスタOSTr3のソース−ドレイン間に該電位に基づく電流I3が流れ、また、トランジスタOSTr4のソース−ドレイン間に該電位に基づく電流が流れる。
<<時刻T1から時刻T2まで>>
時刻T1において、入力端子VNには、一定の電位Vconstが印加される。加えて、時刻T1から時刻T2までの間に、入力端子VPには、一定の電位Vconstよりも高い電位が印加される。なお、入力端子VPに印加される電位は、時刻T1から時刻T2までの間にかけて、上昇するものとする。
入力端子VPに電位が入力されることによって、トランジスタOSTr1のゲートに該電位が印加される。このため、トランジスタOSTr1のソース−ドレイン間に電流I1が流れる。なお、時刻T1から時刻T2までの間では、入力端子VPに印加される電位は上昇するので、この間において電流I1は増加する。電流I1は、カレントミラー回路CMCの端子CM1から、トランジスタOSTr1を介して、ノードND1に流れる。
トランジスタOSTr2のソース−ドレイン間を流れる電流をI2とする。カレントミラー回路CMCの端子CM1には電流I1が流れるため、カレントミラー回路の原理によって、端子CM2に流れる電流I2は、電流I1と同じ大きさになろうとする。しかし、トランジスタOSTr2のゲートは、トランジスタOSTr1のゲートの電位よりも低い電位Vconstが印加されているため、電流I2は電流I1よりも小さくなる。そのため、端子CM2からノードND2に流れる電荷量は増加し、ノードND2の電位は高くなる。これにより、トランジスタSiTr1のゲートの電位が高くなるので、トランジスタSiTr1のソース−ドレイン間に流れる電流量が減少する。また、ノードND2の電位の高さによっては、トランジスタSiTr1は、非導通状態となる。
なお、キルヒホッフの法則により、電流I3は、電流I1と電流I2の和と等しくなる。
ここで、ノードND3の電位について考える。上述の通り、時刻T1から時刻T2までの間では、トランジスタSiTr1のソース−ドレイン間に流れる電流量は小さくなっている、又はトランジスタSiTr1が非導通状態となっている。加えて、トランジスタOSTr4のゲートには、配線VBIASLから所定の電位が与えられているので、トランジスタOSTr4のソース−ドレイン間には該電位に基づく電流が流れる。この結果、ノードND3の電位は、低レベル電位VSS側に近づく。
そして、インバータ回路INV1の入力端子には、ノードND3の電位が入力されるため、インバータ回路INV1の出力端子には、高レベル電位VDDが出力される。つまり、半導体装置250の出力端子OUTには、高レベル電位VDDが出力される。
また、インバータ回路INV1の出力端子はインバータ回路INV2の入力端子と電気的に接続されているので、インバータ回路INV2の出力端子には、低レベル電位VSSが出力される。このため、ノードVBGNの電位は、低レベル電位VSSとなり、この電位がトランジスタOSTr2のバックゲートに印加される。これにより、トランジスタOSTr2のしきい値電圧はプラスシフトされる。しかし、トランジスタOSTr2のソース−ドレイン間を流れる電流I2は増加しないため、トランジスタSiTr1のゲートの電位は変化しない、又は上昇する。そのため、ノードND3の電位は、低レベル電位VSS側に近づき、半導体装置250の出力端子OUTには、高レベル電位VDDが出力される。つまり、トランジスタOSTr2のしきい値電圧がプラスシフトしても、半導体装置250の出力端子OUTの電位は、変動しない。また、実効的な参照電位は、入力端子VNと同じVconstとなる。
<<時刻T2から時刻T3まで>>
時刻T2から時刻T3までの間において、入力端子VPに印加される電位は、下降するものとする。特に、時刻T3の時点では、入力端子VPの電位が、Vconstにまで下降するものとする。時刻T2から時刻T3までの間では、入力端子VPの電位が入力端子VNの電位Vconstよりも高いので、出力端子OUTの電位、及びノードVBGNの電位は、時刻T1から時刻T2までの間の出力端子OUTの電位、及びノードVBGNの電位からそれぞれ変化しない。
<<時刻T3から時刻T4まで>>
時刻T3から時刻T4までの間においても、入力端子VPに印加される電位は、下降するものとする。つまり、時刻T3を経過したとき、入力端子VPの電位は、入力端子VNの電位Vconstを下回ることになる。
時刻T3から時刻T4までの間では、入力端子VPの電位が低くなるため、トランジスタOSTr1のソース−ドレイン間に流れる電流I1は、時刻T1から時刻T3までの間のときの電流I1よりも減少する。電流I1は、カレントミラー回路CMCの端子CM1から、トランジスタOSTr1を介して、ノードND1に流れる。
カレントミラー回路CMCの端子CM1からトランジスタOSTr1の第1端子までに、電流I1が流れるため、カレントミラー回路の原理により、端子CM2に流れる電流I2は、電流I1と同じ電流量となる場合がある。そのため、電流I1の減少により、電流I2も減少する場合がある。トランジスタOSTr2のゲートは、一定の電位Vconstが印加され、かつ電流I2が減少しているため、端子CM2からノードND2に流れる電荷量は減少し、ノードND2の電位は低くなる。これにより、トランジスタSiTr1のゲートの電位が低くなるため、トランジスタSiTr1のソース−ドレイン間に流れる電流量が増加する。
ここで、ノードND3の電位について考える。上述の通り、時刻T3から時刻T4までの間では、トランジスタSiTr1のソース−ドレイン間に流れる電流量は大きくなっている。加えて、トランジスタOSTr4のゲートには、配線VBIASLから所定の電位が与えられているので、トランジスタOSTr4のソース−ドレイン間には該電位に基づく電流が流れる。ここでは、トランジスタSiTr1のオン電流は、トランジスタOSTr4のオン電流よりも高いと考え、ノードND3の電位は、高レベル電位VDD側に近づくものとする。
トランジスタSiTr1のオン電流を、トランジスタOSTr4のオン電流よりも高くする方法として、トランジスタSiTr1のチャネル形成領域が有する半導体の移動度を、トランジスタOSTr4のチャネル形成領域が有する半導体の移動度よりも高くすればよい。例えば、トランジスタSiTr1としてシリコンをチャネル形成領域に含むトランジスタを適用して、トランジスタOSTr4としてシリコンよりも移動度の低い半導体をチャネル形成領域に含むトランジスタを適用すればよい。
ノードND3の電位は高レベル電位VDD側に近づくため、インバータ回路INV1の入力端子には、高レベル電位VDDが入力される。これにより、インバータ回路INV1の出力端子には、低レベル電位VSSが出力される。つまり、半導体装置250の出力端子OUTには、低レベル電位VSSが出力される。
また、インバータ回路INV1の出力端子は、インバータ回路INV2の入力端子と電気的に接続されているので、インバータ回路INV2の出力端子には、高レベル電位VDDが出力される。このため、ノードVBGNの電位は、高レベル電位VDDとなり、この電位がトランジスタOSTr2のバックゲートに印加される。
トランジスタOSTr2のバックゲートに高レベル電位VDDが印加されたため、トランジスタOSTr2のしきい値電圧が変動し、トランジスタOSTr2のId−Vg特性(ゲート−ソース間電圧におけるソース−ドレイン電流の特性)特性はマイナス側にシフトする。ここで、該しきい値電圧の変動分をΔVthとする。
このとき、トランジスタOSTr2のゲートの電位Vconstは一定で、かつトランジスタOSTr2のId−Vg特性はマイナス側にシフトするので、トランジスタOSTr2に流れる電流I2は増加する。ノードND2の電位がより低くなるので、トランジスタSiTr1のソース−ドレイン間に流れる電流量が大きくなる。トランジスタSiTr1のオン電流は、トランジスタOSTr4のオン電流よりも高いため、ノードND3の電位は、更に高レベル電位VDD側に近づく。
ところで、上述のノードND3の電位がインバータ回路INV1の入力端子に入力されたとき、インバータ回路INV1の出力端子には、低レベル電位VSSが出力されるため、出力端子OUTには低レベル電位VSSが出力される。そして、インバータ回路INV2の入力端子に低レベル電位VSSが入力されるため、インバータ回路INV2の出力端子先のノードVBGNの電位は、高レベル電位VDDとなる。つまり、時刻T3から時刻T4までにおいて、該しきい値電圧の変動があっても、出力端子OUTの電位、及びノードVBGNの電位に対して変動は起こらない。
また、半導体装置250の参照電位は、トランジスタOSTr2のId−Vg特性はマイナス側にシフトしているため、入力端子VNに印加されているVconstよりも高くなる。このときの実効的な参照電位REFは、入力端子VNに印加されているVconstにしきい値電圧の変動分ΔVthが加わった高さとなる。
<<時刻T4から時刻T5まで>>
時刻T4から時刻T5までの間において、入力端子VPに印加される電位は、上昇するものとする。特に、時刻T5の時点では、入力端子VPの電位が、Vconstにまで上昇するものとする。時刻T4から時刻T5までの間では、入力端子VPの電位が入力端子VNの電位Vconstよりも低いので、出力端子OUTの電位、及びノードVBGNの電位は、時刻T3から時刻T4までの間の出力端子OUTの電位、及びノードVBGNの電位からそれぞれ変化しない。
<<時刻T5から時刻T6まで>>
時刻T5から時刻T6までの間においても、入力端子VPに印加される電位は、上昇するものとする。つまり、時刻T5を経過したとき、入力端子VPの電位は、入力端子VNの電位Vconstを上回ることになる。また、時刻T6の時点では、入力端子VPの電位が、Vconst+ΔVthにまで上昇するものとする。
時刻T5から時刻T6までの間において、半導体装置250の実効的な参照電位REFは、Vconst+ΔVthとなっているので、トランジスタOSTr1のゲートにトランジスタOSTr2のゲートと同じ電位Vconstが印加されていても、トランジスタOSTr1のオン電流は、トランジスタOSTr2のオン電流よりも小さくなる。そのため、ノードND2の電位は、低レベル電位VSS側に近づくため、トランジスタSiTr1にオン電流が流れる。すなわち、半導体装置250の出力端子OUTは、低レベル電位VSSが出力され、ノードVBGNの電位は、高レベル電位VDDとなる。つまり、時刻T5から時刻T6までの間の出力端子OUTの電位、及びノードVBGNの電位は、時刻T5以前から引き続き変化しない。
<<時刻T6から時刻T7まで>>
時刻T6から時刻T7までにおいても、入力端子VPに印加される電位は、上昇するものとする。つまり、時刻T6を経過したとき、入力端子VPの電位は、Vconst+ΔVthを上回ることになる。
このとき、トランジスタOSTr1のオン電流は、トランジスタOSTr2のオン電流よりも大きくなる。トランジスタOSTr2のソース−ドレイン間を流れる電流I2は、カレントミラー回路CMCの原理によって、トランジスタOSTr1のソース−ドレイン間を流れる電流I1と同じ大きさになろうとする。しかし、トランジスタOSTr2のゲートは、トランジスタOSTr1のゲートの電位よりも低い電位Vconstが印加されているため、電流I2は電流I1よりも小さくなる。そのため、カレントミラー回路の端子CM2からノードND2に流れる電荷量は増加し、ノードND2の電位は高くなる。これにより、トランジスタSiTr1のゲートの電位が高くなるので、トランジスタSiTr1のソース−ドレイン間に流れる電流量が減少する。また、ノードND2の電位の高さによっては、トランジスタSiTr1は、非導通状態となる。
ここで、ノードND3の電位について考える。上述の通り、時刻T6から時刻T7までの間では、トランジスタSiTr1のソース−ドレイン間に流れる電流量は小さくなっている、又はトランジスタSiTr1が非導通状態となっている。加えて、トランジスタOSTr4のゲートには、配線VBIASLから所定の電位が与えられているので、トランジスタOSTr4のソース−ドレイン間には該電位に基づく定電流が流れる。この結果、ノードND3の電位は、低レベル電位VSS側に近づく。
そして、インバータ回路INV1の入力端子には、ノードND3の電位が入力されるため、インバータ回路INV1の出力端子には、高レベル電位VDDが出力される。つまり、半導体装置250の出力端子OUTには、高レベル電位VDDが出力される。
また、インバータ回路INV1の出力端子は、インバータ回路INV2の入力端子と電気的に接続されているので、インバータ回路INV2の出力端子には、低レベル電位VSSが出力される。このため、ノードVBGNの電位は、低レベル電位VSSとなり、この電位がトランジスタOSTr2のバックゲートに印加される。これにより、トランジスタOSTr2のしきい値電圧はプラス側にシフトし、トランジスタOSTr2のId−Vg特性は、時刻T1から時刻T3まで間のトランジスタOSTr2のId−Vg特性に戻る。そのため、半導体装置250の実効的な参照電位REFは、入力端子VNと同じVconstとなる。
<<時刻T7から時刻T8まで>>
時刻T7から時刻T8までの間において、入力端子VPに印加される電位は、下降するものとする。特に、時刻T8では、入力端子VPの電位が、Vconstまで下降するものとする。時刻T7から時刻T8までの間では、入力端子VPの電位が入力端子VNの電位Vconstよりも高い場合、出力端子OUTの電位、及びノードVBGNの電位は、時刻T7における出力端子OUTの電位、及びノードVBGNの電位からそれぞれ変化しない。
下記に、上述の動作をまとめる。
時刻T1から時刻T3までの間に示したように、入力端子VPの電位が入力端子VNの電位よりも高いとき、ノードVBGNの電位は低レベル電位VSSとなり、出力端子OUTは高レベル電位VDDを出力する。なお、このとき、トランジスタOSTr2のバックゲートに低レベル電位VSSが印加されるため、トランジスタOSTr2のしきい値電圧の変動は起こらない。そのため、このときの半導体装置250の実効的な参照電位REFは、Vconstとなる。
時刻T3から時刻T5までの間に示したとおり、入力端子VPの電位が入力端子VNの電位よりも低いとき、ノードVBGNの電位は高レベル電位VDDとなり、出力端子OUTは低レベル電位VSSを出力する。なお、このとき、トランジスタOSTr2のバックゲートに高レベル電位VDDが印加されるため、トランジスタOSTr2のしきい値電圧がマイナス側にシフトする。そのため、このときの半導体装置250の実効的な参照電位REFは、Vconst+ΔVthとなる。
時刻T5から時刻T6までの間に示したとおり、入力端子VPの電位が入力端子VNの電位(Vconst)よりも低い状態において、入力端子VPの電位を入力端子VNの電位以上にしても、ノードVBGNの電位は高レベル電位VDDのままで時刻T5以前から変化しない。加えて、出力端子OUTの電位は低レベル電位VSSのままで時刻T5以前から変化しない。これは、半導体装置250の実効的な参照電位REFがVconst+ΔVthとなっており、時刻T5から時刻T6までの間では、入力端子VPの電位がVconst+ΔVthを上回っていないからである。
時刻T6から時刻T8までの間に示したとおり、入力端子VPの電位が、Vconst+ΔVthよりも高いとき、ノードVBGNの電位は低レベル電位VSSとなり、出力端子OUTは高レベル電位VDDを出力する。なお、このとき、トランジスタOSTr2のバックゲートに低レベル電位VSSが印加されるため、トランジスタOSTr2のId−Vg特性は、時刻T1からT3までの間のId−Vg特性に戻る。そのため、このときの半導体装置250の実効的な参照電位REFは、Vconstとなる。
つまり、入力端子VPの電位が入力端子VNの電位よりも低いときに、入力端子VN側の差動対のトランジスタのしきい値電圧をマイナス側にシフトさせ、かつ入力端子VPの電位が入力端子VNの電位よりも高いときに、入力端子VN側の差動対のトランジスタのしきい値電圧のシフトを元に戻すような構成することによって、入力比較電圧にヒステリシスを付与するコンパレータを実現することができる。
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。又は、他の実施の形態において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。つまり、本実施の形態及び他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載されているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。場合によっては、又は、状況に応じて、本発明の一態様における様々なトランジスタ、トランジスタのチャネル形成領域、又は、トランジスタのソースドレイン領域などは、様々な半導体を有していてもよい。場合によっては、又は、状況に応じて、本発明の一態様における様々なトランジスタ、トランジスタのチャネル形成領域、又は、トランジスタのソースドレイン領域などは、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、アルミニウムガリウムヒ素、インジウムリン、窒化ガリウム、又は、有機半導体などの少なくとも一つを有していてもよい。又は例えば、場合によっては、又は、状況に応じて、本発明の一態様における様々なトランジスタ、トランジスタのチャネル形成領域、又は、トランジスタのソースドレイン領域などは、酸化物半導体を有していなくてもよい。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本発明の一態様に係る記憶装置の構成の一例について、図14を用いながら説明する。
図14に記憶装置の構成の一例を示す。記憶装置2600は、周辺回路2601、及びメモリセルアレイ2610を有する。周辺回路2601は、ローデコーダ2621、ワード線ドライバ回路2622、ビット線ドライバ回路2630、出力回路2640、コントロールロジック回路2660を有する。
ビット線ドライバ回路2630は、カラムデコーダ2631、プリチャージ回路2632、センスアンプ2633、及び書き込み回路2634を有する。プリチャージ回路2632は、ビット線をプリチャージする機能を有する。センスアンプ2633は、ビット線から読み出されたデータ信号を増幅する機能を有する。増幅されたデータ信号は、出力回路2640を介して、デジタルのデータ信号RDATAとして記憶装置2600の外部に出力される。
なお、出力回路2640に、実施の形態1に記載の半導体装置200、半導体装置211乃至半導体装置213、半導体装置221乃至半導体装置224、半導体装置231乃至半導体装置234、半導体装置241乃至半導体装置243、半導体装置241A、半導体装置250、半導体装置300乃至半導体装置302のいずれか一を適用することができる。読み出されたデータ信号を、出力回路2640の入力端子に送ることによって、データ信号が“0”又は“1”であるかの判定を行うことができる。なお、出力回路2640ではなく、センスアンプ2633に半導体装置200、半導体装置211乃至半導体装置213、半導体装置221乃至半導体装置224、半導体装置231乃至半導体装置234、半導体装置241乃至半導体装置243、半導体装置241A、半導体装置250、半導体装置300乃至半導体装置302のいずれか一を適用してもよい。
また、記憶装置2600には、外部から電源電圧として低電源電圧(VSS)、周辺回路2601用の高電源電圧(VDD)、メモリセルアレイ2610用の高電源電圧(VIL)が供給される。
また、記憶装置2600には、制御信号(CE、WE、RE)、アドレス信号ADDR、データ信号WDATAが外部から入力される。アドレス信号ADDRは、ローデコーダ2621及びカラムデコーダ2631に入力され、データ信号WDATAは書き込み回路2634に入力される。
コントロールロジック回路2660は、外部からの入力信号(CE、WE、RE)を処理して、ローデコーダ2621、カラムデコーダ2631の制御信号を生成する。CEは、チップイネーブル信号であり、WEは、書き込みイネーブル信号であり、REは、読み出しイネーブル信号である。コントロールロジック回路2660が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて、他の制御信号を入力すればよい。
なお、上述の各回路あるいは各信号は、必要に応じて、適宜、取捨することができる。
また、pチャネル型Siトランジスタと、後述する実施の形態の酸化物半導体(好ましくはIn、Ga、及びZnを含む酸化物)をチャネル形成領域に含むトランジスタを用い、記憶装置2600に適用することで、小型の記憶装置2600を提供できる。また、消費電力低減することが可能な記憶装置2600を提供できる。また、動作速度を向上することが可能な記憶装置2600を提供できる。特に、Siトランジスタはpチャネル型のみとすることで、製造コストを低く抑えることができる。
なお、本実施の形態の構成例は、図14の構成に限定されない。例えば、周辺回路2601の一部、例えばプリチャージ回路2632又は/及びセンスアンプ2633をメモリセルアレイ2610の下層に設ける、などのように適宜構成を変更してもよい。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を記憶装置として電子部品に適用する例、及び該電子部品を具備する電子機器に適用する例について、図15、図16を用いて説明する。
<電子部品>
図15(A)では上述の実施の形態で説明し半導体装置を記憶装置として電子部品に適用する例について説明する。なお電子部品は、半導体パッケージ、又はIC用パッケージともいう。この電子部品は、端子取り出し方向や、端子の形状に応じて、複数の規格や名称が存在する。そこで、本実施の形態では、その一例について説明することにする。
上記実施の形態1、実施の形態2に示すようなトランジスタで構成される半導体装置は、組み立て工程(後工程)を経て、プリント基板に脱着可能な部品が複数合わさることで完成する。
後工程については、図15(A)に示す各工程を経ることで完成させることができる。具体的には、前工程で得られる素子基板が完成(ステップSTP1)した後、基板の裏面を研削する(ステップSTP2)。この段階で基板を薄膜化することで、前工程での基板の反り等を低減し、部品としての小型化を図るためである。
基板の裏面を研削して、基板を複数のチップに分離するダイシング工程を行う(ステップSTP3)。そして、分離したチップを個々にピックアップしてリードフレーム上に搭載し接合する、ダイボンディング工程を行う(ステップSTP4)。このダイボンディング工程におけるチップとリードフレームとの接着は、樹脂による接着や、テープによる接着等、適宜製品に応じて適した方法を選択する。なお、ダイボンディング工程は、インターポーザ上に搭載し接合してもよい。
なお、本実施の形態において、基板の一方の面に素子が形成されていたとき、基板の一方の面を表面とし、該基板の他方の面(該基板の素子が形成されていない側の面)を裏面とする。
次いでリードフレームのリードとチップ上の電極とを、金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する、ワイヤーボンディングを行う(ステップSTP5)。金属の細線には、銀線や金線を用いることができる。また、ワイヤーボンディングは、ボールボンディングや、ウェッジボンディングを用いることができる。
ワイヤーボンディングされたチップは、エポキシ樹脂等で封止される、モールド工程が施される(ステップSTP6)。モールド工程を行うことで電子部品の内部が樹脂で充填され、機械的な外力による内蔵される回路部やワイヤーに対するダメージを低減することができ、また水分や埃による特性の劣化を低減することができる。
次いでリードフレームのリードをメッキ処理する。そしてリードを切断及び成形加工する(ステップSTP7)。このめっき処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に実装する際のはんだ付けをより確実に行うことができる。
次いでパッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す(ステップSTP8)。そして最終的な検査工程(ステップSTP9)を経て電子部品が完成する(ステップSTP10)。
以上説明した電子部品は、上述の実施の形態で説明した半導体装置を含む構成とすることができる。そのため、信頼性に優れた電子部品を実現することができる。
また、完成した電子部品の斜視模式図を図15(B)に示す。図15(B)では、電子部品の一例として、QFP(Quad Flat Package)の斜視模式図を示している。図15(B)に示す電子部品4700は、リード4701及び回路部4703を示している。図15(B)に示す電子部品4700は、例えばプリント基板4702に実装される。このような電子部品4700が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板4702上で電気的に接続されることで電子機器の内部に搭載することができる。完成した回路基板4704は、電子機器等の内部に設けられる。
なお、本発明の一態様は、上記の電子部品4700の形状に限定せず、ステップSTP1において作製された素子基板も含まれる。また、本発明の一態様である素子基板は、ステップSTP2の基板の裏面の研削作業まで行った素子基板も含まれる。また、本発明の一態様である素子基板は、ステップSTP3のダイシング工程まで行った素子基板も含まれる。例えば、図15(C)に示す半導体ウェハ4800などが該素子基板に相当する。半導体ウェハ4800には、そのウェハ4801の上面に複数の回路部4802が形成されている。なお、ウェハ4801の上面において、回路部4802の無い部分は、スペーシング4803であり、ダイシング用の領域である。
ダイシングは、一点鎖線で示したスクライブラインSCL1及びスクライブラインSCL2(ダイシングライン、又は切断ラインと呼ぶ場合がある)に沿って行われる。なお、スペーシング4803は、ダイシング工程を容易に行うために、複数のスクライブラインSCL1が平行になるように設け、複数のスクライブラインSCL2が平行になるように設け、スクライブラインSCL1とスクライブラインSCL2が垂直になるように設けるのが好ましい。
ダイシング工程を行うことにより、図15(D)に示すようなチップ4800aを、半導体ウェハ4800から切り出すことができる。チップ4800aは、ウェハ4801aと、回路部4802と、スペーシング4803aと、を有する。なお、スペーシング4803aは、極力小さくなるようにするのが好ましい。この場合、隣り合う回路部4802の間のスペーシング4803の幅が、スクライブラインSCL1の切りしろと、又はスクライブラインSCL2の切りしろとほぼ同等の長さであればよい。
なお、本発明の一態様の素子基板の形状は、図15(C)に図示した半導体ウェハ4800の形状に限定されない。例えば、図15(E)に示す矩形の形状の半導体ウェハ4810あってもよい。素子基板の形状は、素子の作製工程、及び素子を作製するための装置に応じて、適宜変更することができる。
<電子機器>
次に上述した電子部品を適用した電子機器について説明する。
本発明の一態様に係る半導体装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、医療機器などが挙げられる。特に、ヒステリシスコンパレータは、温度センサ、光センサ、タッチセンサなどのセンサなどに用いられ、本発明の一態様の半導体装置は、これらの電子機器などに用いられる場合がある。本発明の一態様の半導体装置を有する電子機器の具体例を図16に示す。
図16(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体5201、筐体5202、表示部5203、表示部5204、マイクロフォン5205、スピーカ5206、操作キー5207、スタイラス5208等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、携帯型ゲーム機の各種集積回路に用いることができる。なお、図16(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部5203と表示部5204とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
図16(B)は携帯情報端末であり、第1筐体5601、第2筐体5602、第1表示部5603、第2表示部5604、接続部5605、操作キー5606等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、携帯情報端末の各種集積回路に用いることができる。第1表示部5603は第1筐体5601に設けられており、第2表示部5604は第2筐体5602に設けられている。そして、第1筐体5601と第2筐体5602とは、接続部5605により接続されており、第1筐体5601と第2筐体5602の間の角度は、接続部5605により変更が可能である。第1表示部5603における映像を、接続部5605における第1筐体5601と第2筐体5602との間の角度に従って、切り替える構成としても良い。また、第1表示部5603及び第2表示部5604の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしても良い。なお、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。或いは、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。
図16(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体5401、表示部5402、キーボード5403、ポインティングデバイス5404等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、ノート型パーソナルコンピュータの各種集積回路に用いることができる。
図16(D)はウェアラブル端末の一種であるスマートウォッチであり、筐体5901、表示部5902、操作ボタン5903、操作子5904、バンド5905などを有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、スマートウォッチの各種集積回路に用いることができる。また、表示部5902に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしてもよい。また、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。あるいは、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。また、操作ボタン5903にスマートウォッチを起動する電源スイッチ、スマートウォッチのアプリケーションを操作するボタン、音量調整ボタン、又は表示部5902を点灯、あるいは消灯するスイッチなどのいずれかを備えることができる。また、図16(D)に示したスマートウォッチでは、操作ボタン5903の数を2個示しているが、スマートウォッチの有する操作ボタンの数は、これに限定されない。また、操作子5904は、スマートウォッチの時刻合わせを行うリューズとして機能する。また、操作子5904は、時刻合わせ以外に、スマートウォッチのアプリケーションを操作する入力インターフェースとして、用いるようにしてもよい。なお、図16(D)に示したスマートウォッチでは、操作子5904を有する構成となっているが、これに限定せず、操作子5904を有さない構成であってもよい。
図16(E)はビデオカメラであり、第1筐体5801、第2筐体5802、表示部5803、操作キー5804、レンズ5805、接続部5806等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、ビデオカメラの各種集積回路に用いることができる。操作キー5804及びレンズ5805は第1筐体5801に設けられており、表示部5803は第2筐体5802に設けられている。そして、第1筐体5801と第2筐体5802とは、接続部5806により接続されており、第1筐体5801と第2筐体5802の間の角度は、接続部5806により変更が可能である。表示部5803における映像を、接続部5806における第1筐体5801と第2筐体5802との間の角度に従って切り替える構成としてもよい。
図16(F)は自動車であり、車体5701、車輪5702、ダッシュボード5703、ライト5704等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、自動車の各種集積回路に用いることができる。
図16(G)は電気冷凍冷蔵庫であり、筐体5301、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、電気冷凍冷蔵庫の各種集積回路に用いることができる。
図16(H)は、情報端末の機能を有する携帯電話であり、筐体5501、表示部5502、マイク5503、スピーカ5504、操作ボタン5505を有する。また、表示部5502に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしてもよい。また、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。あるいは、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。また、操作ボタン5505に携帯電話を起動する電源スイッチ、携帯電話のアプリケーションを操作するボタン、音量調整ボタン、又は表示部5502を点灯、あるいは消灯するスイッチなどのいずれかを備えることができる。また、図16(H)に示した携帯電話では、操作ボタン5505の数を2個示しているが、携帯電話の有する操作ボタンの数は、これに限定されない。また、図示していないが、図16(H)に示した携帯電話は、カメラを有する構成であってもよい。また、図示していないが、図16(H)に示した携帯電話は、フラッシュライト又は照明の用途として、発光装置を有する構成であってもよい。また、図示していないが、図16(H)に示した携帯電話は、筐体5501の内部にセンサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線などを測定する機能を含むもの)を有する構成であってもよい。特に、ジャイロ、加速度センサなどの傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、図16(H)に示す携帯電話の向き(鉛直方向に対して携帯電話がどの向きに向いているか)を判断して、表示部5502の画面表示を、携帯電話の向きに応じて自動的に切り替えるようにすることができる。また、特に、指紋、静脈、虹彩、又は声紋など生体情報を取得するセンサを有する検出装置を設けることで、生体認証機能を有する携帯電話を実現することができる。
次に、本発明の一態様の半導体装置又は記憶装置を備えることができる表示装置について説明する。一例としては、表示装置は、画素を有する。画素は、例えば、トランジスタや表示素子を有する。又は、表示装置は、画素を駆動する駆動回路を有する。駆動回路は、例えば、トランジスタを有する。例えば、これらのトランジスタとして、他の実施の形態で述べたトランジスタを採用することができる。
例えば、本明細書等において、表示素子、表示素子を有する装置である表示装置、発光素子、及び発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態を用いること、又は様々な素子を有することが出来る。表示素子、表示装置、発光素子又は発光装置は、例えば、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LEDチップ(白色LEDチップ、赤色LEDチップ、緑色LEDチップ、青色LEDチップなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電子放出素子、カーボンナノチューブを用いた表示素子、液晶素子、電子インク、エレクトロウェッティング素子、電気泳動素子、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子(例えば、グレーティングライトバルブ(GLV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、MIRASOL(登録商標)、IMOD(インターフェロメトリック・モジュレーション)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、圧電セラミックディスプレイなど)、又は、量子ドットなどの少なくとも一つを有している。これらの他にも、表示素子、表示装置、発光素子又は発光装置は、電気的又は磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有していてもよい。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク、電子粉流体(登録商標)、又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。量子ドットを各画素に用いた表示装置の一例としては、量子ドットディスプレイなどがある。なお、量子ドットは、表示素子としてではなく、バックライトの一部に設けてもよい。量子ドットを用いることにより、色純度の高い表示を行うことができる。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、又は、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、又は、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。なお、LEDチップを用いる場合、LEDチップの電極や窒化物半導体の下に、グラフェンやグラファイトを配置してもよい。グラフェンやグラファイトは、複数の層を重ねて、多層膜としてもよい。このように、グラフェンやグラファイトを設けることにより、その上に、窒化物半導体、例えば、結晶を有するn型GaN半導体層などを容易に成膜することができる。さらに、その上に、結晶を有するp型GaN半導体層などを設けて、LEDチップを構成することができる。なお、グラフェンやグラファイトと、結晶を有するn型GaN半導体層との間に、AlN層を設けてもよい。なお、LEDチップが有するGaN半導体層は、MOCVDで成膜してもよい。ただし、グラフェンを設けることにより、LEDチップが有するGaN半導体層は、スパッタ法で成膜することも可能である。また、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子においては、表示素子が封止されている空間(例えば、表示素子が配置されている素子基板と、素子基板に対向して配置されている対向基板との間)に、乾燥剤を配置してもよい。乾燥剤を配置することにより、MEMSなどが水分によって動きにくくなることや、劣化しやすくなることを防止することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本発明の一態様の記憶装置を備えることができるメモリカード(例えば、SDカード)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SSD(Solid State Drive)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用することができる。本実施の形態では、リムーバブル記憶装置の幾つかの構成例について、図17を用いて、説明する。
図17(A)はUSBメモリの模式図である。USBメモリ5100は、筐体5101、キャップ5102、USBコネクタ5103及び基板5104を有する。基板5104は、筐体5101に収納されている。基板5104には、記憶装置及び記憶装置を駆動する回路が設けられている。例えば、基板5104には、メモリチップ5105、コントローラチップ5106が取り付けられている。メモリチップ5105は、実施の形態3で説明したメモリセルアレイ2610、ワード線ドライバ回路2622、ローデコーダ2621、センスアンプ2633、プリチャージ回路2632、カラムデコーダ2631などが組み込まれている。コントローラチップ5106は、具体的にはプロセッサ、ワークメモリ、ECC回路等が組み込まれている。なお、メモリチップ5105とコントローラチップ5106とのそれぞれの回路構成は、上述の記載に限定せず、状況に応じて、又は場合によって、適宜回路構成を変更してもよい。例えば、ワード線ドライバ回路2622、ローデコーダ2621、センスアンプ2633、プリチャージ回路2632、カラムデコーダ2631をメモリチップ5105でなく、コントローラチップ5106に組み込んだ構成としてもよい。USBコネクタ5103が外部装置と接続するためのインターフェースとして機能する。
図17(B)はSDカードの外観の模式図であり、図17(C)は、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード5110は、筐体5111、コネクタ5112及び基板5113を有する。コネクタ5112が外部装置と接続するためのインターフェースとして機能する。基板5113は筐体5111に収納されている。基板5113には、記憶装置及び記憶装置を駆動する回路が設けられている。例えば、基板5113には、メモリチップ5114、コントローラチップ5115が取り付けられている。メモリチップ5114には、実施の形態3で説明したメモリセルアレイ2610、ワード線ドライバ回路2622、ローデコーダ2621、センスアンプ2633、プリチャージ回路2632、カラムデコーダ2631などが組み込まれている。コントローラチップ5115には、プロセッサ、ワークメモリ、ECC回路等が組み込まれている。なお、メモリチップ5114とコントローラチップ5115とのそれぞれの回路構成は、上述の記載に限定せず、状況に応じて、又は場合によって、適宜回路構成を変更してもよい。例えば、ワード線ドライバ回路2622、ローデコーダ2621、センスアンプ2633、プリチャージ回路2632、カラムデコーダ2631をメモリチップ5114でなく、コントローラチップ5115に組み込んだ構成としてもよい。
基板5113の裏面側にもメモリチップ5114を設けることで、SDカード5110の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板5113に設けてもよい。これによって、外部装置とSDカード5110との間で無線通信を行うことができ、メモリチップ5114のデータの読み出し、書き込みが可能となる。
図17(D)はSSDの外観の模式図であり、図17(E)は、SSDの内部構造の模式図である。SSD5150は、筐体5151、コネクタ5152及び基板5153を有する。コネクタ5152が外部装置と接続するためのインターフェースとして機能する。基板5153は筐体5151に収納されている。基板5153には、記憶装置及び記憶装置を駆動する回路が設けられている。例えば、基板5153には、メモリチップ5154、メモリチップ5155、コントローラチップ5156が取り付けられている。メモリチップ5154には、実施の形態3で説明したメモリセルアレイ2610、ワード線ドライバ回路2622、ローデコーダ2621、センスアンプ2633、プリチャージ回路2632、カラムデコーダ2631などが組み込まれている。基板5153の裏面側にもメモリチップ5154を設けることで、SSD5150の容量を増やすことができる。メモリチップ5155にはワークメモリが組み込まれている。例えば、メモリチップ5155には、DRAMチップを用いればよい。コントローラチップ5156には、プロセッサ、ECC回路などが組み込まれている。なお、メモリチップ5154と、メモリチップ5155と、コントローラチップ5115と、のそれぞれの回路構成は、上述の記載に限定せず、状況に応じて、又は場合によって、適宜回路構成を変更しても良い。例えば、コントローラチップ5156にも、ワークメモリとして機能するメモリを設けてもよい。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、半導体装置の一形態を、図18乃至図24を用いて説明する。
なお、本発明の一態様に係るトランジスタは、実施の形態6で説明するnc−OS又はCAAC−OSを有することが好ましい。
<トランジスタ構造1>
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタの一例について説明する。図18(A)、図18(B)、及び図18(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタの上面図及び断面図である。図18(A)は上面図であり、図18(B)は、図18(A)に示す一点鎖線X1−X2、図18(C)は、一点鎖線Y1−Y2に対応する断面図である。なお、図18(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
トランジスタ1200Aは、バックゲート電極として機能する導電体1205(導電体1205a、及び導電体1205b)、ゲート電極として機能する導電体1260と、ゲート絶縁層として機能する絶縁体1220、絶縁体1222、絶縁体1224、及び絶縁体1250と、チャネルが形成される領域を有する酸化物1230(酸化物1230a、酸化物1230b、及び酸化物1230c)と、ソース又はドレインの一方として機能する導電体1240aと、ソース又はドレインの他方として機能する導電体1240bと、過剰酸素を有する絶縁体1280と、バリア性を有する絶縁体1282と、を有する。
また、酸化物1230は、酸化物1230aと、酸化物1230a上の酸化物1230bと、酸化物1230b上の酸化物1230cと、を有する。なお、トランジスタ1200Aをオンさせると、主として酸化物1230bに電流が流れる(チャネルが形成される)。一方、酸化物1230a及び酸化物1230cは、酸化物1230bとの界面近傍(混合領域となっている場合もある)は電流が流れる場合があるものの、そのほかの領域は絶縁体として機能する場合がある。
また、図18に示すように、酸化物1230cは、酸化物1230a、及び酸化物1230bの側面を覆うように設けることが好ましい。絶縁体1280と、チャネルが形成される領域を有する酸化物1230bとの間に、酸化物1230cが介在することにより、絶縁体1280から、水素、水、及びハロゲン等の不純物が、酸化物1230bへ拡散することを抑制することができる。
絶縁体1214は、酸素や水素に対してバリア性を有する材料を用いるのが好ましい。例えば、水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを絶縁体1214に用いることができる。また、例えば、絶縁体1214に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。特に、酸化アルミニウムは、酸素と、トランジスタの電気特性の変動要因となる水素と、水分などの不純物と、に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ1200aへの混入を防止することができる。また、トランジスタ1200aを構成する金属酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ1200aに対する保護膜として用いることに適している。
絶縁体1216は、絶縁体1214上に設けられる。絶縁体1216には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどの材料を用いることができる。
バックゲート電極として機能する導電体1205には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等である。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素又は酸素に対するバリア性があり、また、酸化しにくい(耐酸化性が高い)ため、好ましい。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
例えば、導電体1205aとして、水素に対するバリア性を有する導電体として、窒化タンタル等を用い、導電体1205bとして、導電性が高いタングステンを積層するとよい。当該組み合わせを用いることで、配線としての導電性を保持したまま、酸化物1230への水素の拡散を抑制することができる。なお、図18では、導電体1205a、及び導電体1205bの2層構造を示したが、当該構成に限定されず、単層でも3層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、及び導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
絶縁体1220、及び絶縁体1224は、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などの、酸素を含む絶縁体であることが好ましい。特に、絶縁体1224として過剰酸素を含む(化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む)絶縁体を用いることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を、トランジスタ1200Aを構成する酸化物1230に接して設けることにより、酸化物1230中の酸素欠損を補償することができる。なお、絶縁体1222と絶縁体1224とは、必ずしも同じ材料を用いなくともよい。
絶縁体1222は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムを用いるのが好ましい。又は、例えば、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)又は(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh−k材料を含む絶縁体を用いるのが好ましい。又は、例えば、上述した材料を単層としてではなく、上述した材料から複数選んで積層して用いることが好ましい。特に、酸化アルミニウム、及び酸化ハフニウム、などの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。このような材料を用いて形成した場合、酸化物1230からの酸素の放出や、外部からの水素等の不純物の混入を防ぐ層として機能する。
又は、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又は、これらの絶縁体を窒化処理しても良い。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
なお、絶縁体1220、絶縁体1222、及び絶縁体1224が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
絶縁体1220及び絶縁体1224の間に、high−k材料を含む絶縁体1222を有することで、特定の条件で絶縁体1222が電子を捕獲し、しきい値電圧を増大させることができる。つまり、絶縁体1222が負に帯電する場合がある。
例えば、絶縁体1220、及び絶縁体1224に、酸化シリコンを用い、絶縁体1222に、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルのような電子捕獲準位の多い材料を用いた場合、半導体装置の使用温度、あるいは保管温度よりも高い温度(例えば、125℃以上450℃以下、代表的には150℃以上300℃以下)の下で、導電体1205の電位をソース電極やドレイン電極の電位より高い状態を、10ミリ秒以上、代表的には1分以上維持することで、トランジスタ1200Aを構成する酸化物1230から導電体1205に向かって、電子が移動する。この時、移動する電子の一部が、絶縁体1222の電子捕獲準位に捕獲される。
絶縁体1222の電子捕獲準位に必要な量の電子を捕獲させたトランジスタは、しきい値電圧がプラス側にシフトする。なお、導電体1205の電圧の制御によって電子の捕獲する量を制御することができ、それに伴ってしきい値電圧を制御することができる。当該構成を有することで、トランジスタ1200Aは、ゲート電圧が0Vであっても非導通状態(オフ状態ともいう)であるノーマリーオフ型のトランジスタとなる。
また、電子を捕獲する処理は、トランジスタの作製過程に行えばよい。例えば、トランジスタのソース導電体あるいはドレイン導電体に接続する導電体の形成後、あるいは、前工程(ウェハ処理)の終了後、あるいは、ウェハダイシング工程後、パッケージ後等、工場出荷前のいずれかの段階で行うとよい。
また、絶縁体1220、絶縁体1222、及び絶縁体1224の膜厚を適宜調整することで、しきい値電圧を制御することができる。例えば、絶縁体1220、絶縁体1222、及び絶縁体1224の合計膜厚が薄くすることで導電体1205からの電圧が効率的にかかる為、消費電力が低いトランジスタを提供することができる。絶縁体1220、絶縁体1222、及び絶縁体1224の合計膜厚は、65nm以下、好ましくは20nm以下であることが好ましい。
従って、非導通時のリーク電流の小さいトランジスタを提供することができる。また、安定した電気特性を有するトランジスタを提供することができる。又は、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。又は、サブスレッショルドスイング値の小さいトランジスタを提供することができる。又は、信頼性の高いトランジスタを提供することができる。
酸化物1230a、酸化物1230b、及び酸化物1230cは、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、又はSn)等の金属酸化物で形成される。また、酸化物1230として、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物を用いてもよい。
以下に、本発明に係る酸化物1230について説明する。
酸化物1230に用いる酸化物としては、少なくともインジウム又は亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウム及び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム又はスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種が含まれていてもよい。
ここで、酸化物が、インジウム、元素M及び亜鉛を有する場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム又はスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
まず、図25(A)、図25(B)、及び図25(C)を用いて、本発明に係る酸化物が有するインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明する。なお、図25には、酸素の原子数比については記載しない。また、酸化物が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、及び[Zn]とする。
図25(A)、図25(B)、及び図25(C)において、破線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):1の原子数比(αは−1以上1以下の実数である。)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):2の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):3の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):4の原子数比となるライン、及び[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):5の原子数比となるラインを表す。
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比(βは0以上の実数である。)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、及び[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比となるラインを表す。
また、図25に示す、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比又はその近傍値の酸化物は、スピネル型の結晶構造をとりやすい。
図25(A)及び図25(B)では、本発明の一態様の酸化物が有する、インジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
一例として、図26に、[In]:[M]:[Zn]=1:1:1である、InMZnO4の結晶構造を示す。また、図26は、b軸に平行な方向から観察した場合のInMZnO4の結晶構造である。なお、図26に示すM、Zn、酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)における金属元素は、元素M又は亜鉛を表している。この場合、元素Mと亜鉛の割合が等しいものとする。元素Mと亜鉛とは、置換が可能であり、配列は不規則である。
InMZnO4は、層状の結晶構造(層状構造ともいう)をとり、図26に示すように、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)が1に対し、元素M、亜鉛、及び酸素を有する(M,Zn)層が2となる。
また、インジウムと元素Mは、互いに置換可能である。そのため、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換し、(In,M,Zn)層と表すこともできる。その場合、In層が1に対し、(In,M,Zn)層が2である層状構造をとる。
[In]:[M]:[Zn]=1:1:2となる原子数比の酸化物は、In層が1に対し、(M,Zn)層が3である層状構造をとる。つまり、[In]及び[M]に対し[Zn]が大きくなると、酸化物が結晶化した場合、In層に対する(M,Zn)層の割合が増加する。
ただし、酸化物中において、In層が1層に対し、(M,Zn)層の層数が非整数である場合、In層が1層に対し、(M,Zn)層の層数が整数である層状構造を複数種有する場合がある。例えば、[In]:[M]:[Zn]=1:1:1.5である場合、In層が1に対し、(M,Zn)層が2である層状構造と、(M,Zn)層が3である層状構造とが混在する層状構造となる場合がある。
例えば、酸化物をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される。特に、成膜時の基板温度によっては、ターゲットの[Zn]よりも、膜の[Zn]が小さくなる場合がある。
また、酸化物中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。例えば、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比の近傍値である原子数比では、スピネル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、[In]:[M]:[Zn]=1:0:0を示す原子数比の近傍値である原子数比では、ビックスバイト型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。酸化物中に複数の相が共存する場合、異なる結晶構造の間において、粒界(グレインバウンダリーともいう)が形成される場合がある。
また、インジウムの含有率を高くすることで、酸化物のキャリア移動度(電子移動度)を高くすることができる。これは、インジウム、元素M及び亜鉛を有する酸化物では、主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、インジウムの含有率を高くすることにより、s軌道が重なる領域がより大きくなるため、インジウムの含有率が高い酸化物はインジウムの含有率が低い酸化物と比較してキャリア移動度が高くなるためである。
一方、酸化物中のインジウム及び亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度が低くなる。従って、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0を示す原子数比、及びその近傍値である原子数比(例えば図25(C)に示す領域C)では、絶縁性が高くなる。
従って、本発明の一態様の酸化物は、キャリア移動度が高く、かつ、粒界が少ない層状構造となりやすい、図25(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ましい。
また、図25(B)に示す領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4.1、及びその近傍値を示している。近傍値には、例えば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。領域Bで示される原子数比を有する酸化物は、特に、結晶性が高く、キャリア移動度も高い優れた酸化物である。
なお、酸化物が、層状構造を形成する条件は、原子数比によって一義的に定まらない。原子数比により、層状構造を形成するための難易の差はある。一方、同じ原子数比であっても、形成条件により、層状構造になる場合も層状構造にならない場合もある。従って、図示する領域は、酸化物が層状構造を有する原子数比を示す領域であり、領域A乃至領域Cの境界は厳密ではない。
続いて、上記酸化物をトランジスタに用いる場合について説明する。
なお、上記酸化物をトランジスタに用いることで、粒界におけるキャリア散乱等を減少させることができるため、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物は、キャリア密度が8×1011cm−3未満、好ましくは1×1011cm−3未満、さらに好ましくは1×1010cm−3未満であり、1×10−9cm−3以上とすればよい。
なお、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
ここで、酸化物中における各不純物の影響について説明する。
酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物において欠陥準位が形成される。このため、酸化物におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
また、酸化物において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
不純物が十分に低減された酸化物をトランジスタのチャネル領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
続いて、該酸化物を2層構造、又は3層構造とした場合について述べる。酸化物S1、酸化物S2、酸化物S3の積層構造、及び積層構造に接する絶縁体のバンド図と、酸化物S1、酸化物S2の積層構造、及び積層構造に接する絶縁体のバンド図と、酸化物S2、酸化物S3の積層構造、及び積層構造に接する絶縁体のバンド図と、について、図27を用いて説明する。
図27(A)は、絶縁体I1、酸化物S1、酸化物S2、酸化物S3、及び絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。また、図27(B)は、絶縁体I1、酸化物S2、酸化物S3、及び絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。また、図27(C)は、絶縁体I1、酸化物S1、酸化物S2、及び絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。なお、バンド図は、理解を容易にするため絶縁体I1、酸化物S1、酸化物S2、酸化物S3、及び絶縁体I2の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)を示す。
酸化物S1、酸化物S3は、酸化物S2よりも伝導帯下端のエネルギー準位が真空準位に近い。代表的には、酸化物S2の伝導帯下端のエネルギー準位は、酸化物S1及び酸化物S3のそれぞれの伝導帯下端のエネルギー準位よりも低くなればよい。具体的には、酸化物S2と酸化物S1とのそれぞれの伝導帯下端のエネルギー準位の差が0.15eV以上2eV以下であれば好ましく、更に、0.5eV以上1eV以下であればより好ましい。加えて、酸化物S2と酸化物S3のそれぞれの伝導帯下端のエネルギー準位の差が、0.15eV以上2eV以下であれば好ましく、更に、0.5eV以上1eV以下であればより好ましい。すなわち、酸化物S2の電子親和力は、酸化物S1及び酸化物S3のそれぞれの電子親和力よりも高ければよく、具体的には、酸化物S1と酸化物S2のそれぞれの電子親和力との差が0.15eV以上2eV以下、好ましくは0.5eV以上1eV以下であり、かつ酸化物S3と酸化物S2のそれぞれの電子親和力との差が0.15eV以上2eV以下、好ましくは0.5eV以上1eV以下であることが好ましい。
図27(A)、図27(B)、及び図27(C)に示すように、酸化物S1、酸化物S2、酸化物S3において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化又は連続接合するともいうことができる。このようなバンド図を有するためには、酸化物S1と酸化物S2との界面、又は酸化物S2と酸化物S3との界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
具体的には、酸化物S1と酸化物S2、酸化物S2と酸化物S3が、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物S2がIn−Ga−Zn酸化物の場合、酸化物S1、酸化物S3として、In−Ga−Zn酸化物、Ga−Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物S2となる。酸化物S1と酸化物S2との界面、及び酸化物S2と酸化物S3との界面における欠陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、高いオン電流が得られる。
トラップ準位に電子が捕獲されることで、捕獲された電子は固定電荷のように振る舞うため、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。酸化物S1、酸化物S3を設けることにより、トラップ準位を酸化物S2より遠ざけることができる。当該構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向にシフトすることを防止することができる。
酸化物S1、酸化物S3は、酸化物S2と比較して、導電率が十分に低い材料を用いる。このとき、酸化物S2、酸化物S2と酸化物S1との界面、及び酸化物S2と酸化物S3との界面が、主にチャネル領域として機能する。例えば、酸化物S1、酸化物S3には、図25(C)において、絶縁性が高くなる領域Cで示す原子数比の酸化物を用いればよい。なお、図25(C)に示す領域Cは、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、又はその近傍値である原子数比を示している。
特に、酸化物S2に領域Aで示される原子数比の酸化物を用いる場合、酸化物S1及び酸化物S3には、[M]/[In]が1以上、好ましくは2以上である酸化物を用いることが好ましい。また、酸化物S3として、十分に高い絶縁性を得ることができる[M]/([Zn]+[In])が1以上である酸化物を用いることが好適である。
絶縁体1250は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムを用いることができる。又は、例えば、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)又は(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh−k材料を含む絶縁体を用いることができる。又は、上述した材料を単層としてではなく、上述した材料を複数選んで積層して用いることができる。又は、これらの絶縁体に例えば酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理しても良い。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
また、絶縁体1250は、絶縁体1224と同様に、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁体を用いることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物1230に接して設けることにより、酸化物1230中の酸素欠損を低減することができる。
また、絶縁体1250は、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化シリコンなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることができる。このような材料を用いて形成した場合、酸化物1230からの酸素の放出や、外部からの水素等の不純物の混入を防ぐ層として機能する。
なお、絶縁体1250は、絶縁体1220、絶縁体1222、及び絶縁体1224と同様の積層構造を有していてもよい。絶縁体1250が、電子捕獲準位に必要な量の電子を捕獲させた絶縁体を有することで、トランジスタ1200Aは、しきい値電圧をプラス側にシフトすることができる。当該構成を有することで、トランジスタ1200Aは、ゲート電圧が0Vであっても非導通状態(オフ状態ともいう)であるノーマリーオフ型のトランジスタとなる。
また、図18に示す半導体装置において、酸化物1230と導電体1260の間に、絶縁体1250の他にバリア膜を設けてもよい。もしくは、酸化物1230cにバリア性があるものを用いてもよい。
例えば、過剰酸素を含む絶縁膜を酸化物1230に接して設け、さらにバリア膜で包み込むことで、酸化物を化学量論比組成とほぼ一致するような状態、又は化学量論的組成より酸素が多い過飽和の状態とすることができる。また、酸化物1230への水素等の不純物の侵入を防ぐことができる。
導電体1240aと、及び導電体1240bは、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
導電体1240aと、導電体1240bとは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、又はタングステンなどの金属、又はこれを主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素又は酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
また、図18では単層構造を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタルとタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層するとよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
また、チタン膜又は窒化チタン膜と、そのチタン膜又は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜又は窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜又は窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜又は窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜又は窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫又は酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
また、ゲート電極として機能を有する導電体1260は、例えばアルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属、又は上述した金属を成分とする合金か、上述した金属を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素又は酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一又は複数から選択された金属を用いてもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体、ニッケルシリサイド等のシリサイドを用いてもよい。また、図18では単層構造を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。
例えば、アルミニウム上にチタン膜を積層する二層構造とするとよい。また、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜又は窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造としてもよい。
また、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一又は複数の金属を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
また、導電体1260は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属の積層構造とすることもできる。
続いて、トランジスタ1200Aの上方には、絶縁体1280、及び絶縁体1282を設ける。
絶縁体1280には、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を用いることが好ましい。つまり、絶縁体1280には、化学量論的組成よりも酸素が過剰に存在する領域(以下、過剰酸素領域ともいう)が形成されていることが好ましい。特に、トランジスタ1200Aに酸化物半導体を用いる場合、トランジスタ1200Aの近傍の層間膜などに、過剰酸素領域を有する絶縁体を設けることで、トランジスタ1200Aの有する酸化物1230の酸素欠損を低減することができ、信頼性を向上させることができる。
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、又は100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
例えばこのような材料として、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンを含む材料を用いることが好ましい。又は、金属酸化物を用いることもできる。なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
また、トランジスタ1200Aを覆う絶縁体1280は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
絶縁体1282は、例えば、酸化アルミニウム、及び酸化ハフニウム、などの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。このような材料を用いて形成した場合、酸化物1230からの酸素の放出や、外部からの水素等の不純物の混入を防ぐ層として機能する。
上記構成を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。又は、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。又は、上記構成を有するトランジスタを半導体装置に用いることで、半導体装置の電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。又は、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。
<トランジスタ構造2>
図19には、図18のトランジスタとは別の構造の一例を示す。図19(A)はトランジスタ1200Bの上面を示す。なお、図の明瞭化のため、図19(A)において一部の膜は省略されている。また、図19(B)は、図19(A)に示す一点鎖線X1−X2に対応する断面図であり、図19(C)はY1−Y2に対応する断面図である。
なお、図19に示すトランジスタ1200Bにおいて、図18に示したトランジスタ1200Aを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
図19に示す構造は、導電体1260を、2層構造で設けている。2層構造としては、同じ材料を積層して設けてもよい。例えば、導電体1260aは、熱CVD法、MOCVD法又はALD法を用いて形成する。特に、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法等により形成することで、絶縁体1250に対する成膜時のダメージを減らすことができる。また、被覆性を向上させることができるため、導電体1260aをALD法等により形成することが好ましい。従って、信頼性が高いトランジスタを提供することができる。
続いて、導電体1260bはスパッタリング法を用いて形成する。この時、絶縁体1250上に、導電体1260aを有することで、導電体1260bの成膜時のダメージが、絶縁体1250に影響することを抑制することができる。また、ALD法と比較して、スパッタリング法は成膜速度が速いため、歩留まりが高く、生産性を向上させることができる。
さらに、図19に示す構造は、導電体1260を覆うように、絶縁体1270を設ける。絶縁体1280に酸素が脱離する酸化物材料を用いる場合、導電体1260bが、脱離した酸素により酸化することを防止するため、絶縁体1270は、酸素に対してバリア性を有する物質を用いる。
例えば、絶縁体1270には、酸化アルミニウムなどの金属酸化物を用いることができる。また絶縁体1270は、導電体1260の酸化を防止する程度に設けられていればよい。例えば、絶縁体1270の膜厚は、1nm以上10nm以下、好ましくは3nm以上7nm以下として設ける。
当該構成とすることで、導電体1260の材料選択の幅を広げることができる。例えば、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、又は加工がしやすい導電体を用いることができる。
従って、導電体1260の酸化を抑制し、絶縁体1280から、脱離した酸素を効率的に酸化物1230へと供給することができる。また、導電体1260に導電性が高い導電体を用いることで、消費電力が小さいトランジスタを提供することができる。
<トランジスタ構造3>
図20には、図18、及び図19のトランジスタとは別の構造の一例を示す。図20(A)はトランジスタ1200Cの上面を示す。なお、図の明瞭化のため、図20(A)において一部の膜は省略されている。また、図20(B)は、図20(A)に示す一点鎖線X1−X2に対応する断面図であり、図20(C)はY1−Y2に対応する断面図である。
なお、図20に示すトランジスタ1200Cにおいて、図18に示したトランジスタ1200Aを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
図20に示す構造は、ゲート電極と機能する導電体1260が、導電体1260a、導電体1260b、導電体1260cを有する。また、酸化物1230cは、酸化物1230bの側面を覆っていればよく、絶縁体1224上で切断されていてもよい。
導電体1260aは、熱CVD法、MOCVD法又はALD法を用いて形成する。特に、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法等により形成することで、絶縁体1250に対するプラズマによるダメージを減らすことができる。また、被覆性を向上させることができるため、導電体1260aをALD法等により形成することが好ましい。従って、信頼性が高いトランジスタを提供することができる。
また、導電体1260bは、タンタル、タングステン、銅、アルミニウムなどの導電性が高い材料を用いて形成する。さらに、導電体1260b上に形成する導電体1260cは、窒化タングステンなどの耐酸化性が高い導電体を用いて形成することが好ましい。
例えば、絶縁体1280に酸素が脱離する酸化物材料を用いる場合、過剰酸素領域を有する絶縁体1280と接する面積が大きい導電体1260cに耐酸化性が高い導電体を用いることで、過剰酸素から脱離される酸素が導電体1260に吸収されることを抑制することができる。また、導電体1260の酸化を抑制し、絶縁体1280から、脱離した酸素を効率的に酸化物1230へと供給することができる。また、導電体1260bに導電性が高い導電体を用いることで、消費電力が小さいトランジスタを提供することができる。
また、図20(C)に示すように、チャネル幅方向において、酸化物1230bが導電体1260に覆われている。また、絶縁体1224が凸部を有することによって、酸化物1230bの側面も導電体1260で覆うことができる。例えば、絶縁体1224の凸部の形状を調整することで、酸化物1230bの側面において、導電体1260の底面が、酸化物1230bの底面よりも、基板側となる構造となることが好ましい。つまり、トランジスタ1200Cは、導電体1260の電界によって、酸化物1230bを電気的に取り囲むことができる構造を有する。このように、導電体の電界によって、酸化物1230bを電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造と呼ぶ。s−channel構造のトランジスタ1200Cは、酸化物1230b全体(バルク)にチャネルを形成することもできる。s−channel構造では、トランジスタのドレイン電流を大きくすることができ、さらに大きいオン電流(トランジスタがオン状態のときにソースとドレインの間に流れる電流)を得ることができる。また、導電体1260の電界によって、酸化物1230bに形成されるチャネル形成領域の全領域を空乏化することができる。したがって、s−channel構造では、トランジスタのオフ電流をさらに小さくすることができる。なお、チャネル幅を小さくすることで、s−channel構造によるオン電流の増大効果、オフ電流の低減効果などを高めることができる。
<トランジスタ構造4>
図21には、図18乃至図20のトランジスタとは別の構造の一例を示す。図21(A)はトランジスタ1200Dの上面を示す。なお、図の明瞭化のため、図21(A)において一部の膜は省略されている。また、図21(B)は、図21(A)に示す一点鎖線X1−X2に対応する断面図であり、図21(C)はY1−Y2に対応する断面図である。
なお、図21に示すトランジスタ1200Dにおいて、図18に示したトランジスタ1200Aを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
図21に示す構造は、ソース又はドレインとして機能する導電体が積層構造を有する。導電体1240a、及び導電体1240bは、酸化物1230bと密着性が高い導電体を用い、導電体1241a、導電体1241bは、導電性が高い材料を用いることが好ましい。また、導電体1240a、及び導電体1240bは、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法等により形成することで、被覆性を向上させることができる。
例えば、酸化物1230bに、インジウムを有する金属酸化物を用いる場合、導電体1240a、及び導電体1240bには、窒化チタンなどを用いればよい。また、導電体1241a、及び導電体1241bに、タンタル、タングステン、銅、アルミニウムなどの導電性が高い材料を用いることで、信頼性が高く、消費電力が小さいトランジスタを提供することができる。
また、図21(B)、及び図21(C)に示すように、チャネル幅方向において、酸化物1230bが導電体1205、及び導電体1260に覆われている。また、絶縁体1222が凸部を有することによって、酸化物1230bの側面も導電体1260で覆うことができる。
ここで、絶縁体1222に、酸化ハフニウムなどのhigh−k材料を用いる場合、絶縁体1222の比誘電率が大きいため、SiO2膜換算膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)を小さくすることができる。従って、酸化物1230にかかる導電体1205からの電界の影響を弱めることなく、絶縁体1222の物理的な厚みにより、導電体1205と、酸化物1230との間の距離を広げることができる。従って、絶縁体1222の膜厚により、導電体1205と、酸化物1230との間の距離を調整することができる。
例えば、絶縁体1224の凸部の形状を調整することで、酸化物1230bの側面において、導電体1260の底面が、酸化物1230bの底面よりも、基板側となる構造となることが好ましい。つまり、トランジスタ1200Dは、導電体1260の電界によって、酸化物1230bを電気的に取り囲むことができる構造を有する。つまり、トランジスタ1200Cと同様に、トランジスタ1200Dは、s−channel構造を有する。s−channel構造のトランジスタ1200Dは、酸化物1230b全体(バルク)にチャネルを形成することもできる。s−channel構造では、トランジスタのドレイン電流を大きくすることができ、さらに大きいオン電流(トランジスタがオン状態のときにソースとドレインの間に流れる電流)を得ることができる。また、導電体1260の電界によって、酸化物1230bに形成されるチャネル形成領域の全領域を空乏化することができる。したがって、s−channel構造では、トランジスタのオフ電流をさらに小さくすることができる。なお、チャネル幅を小さくすることで、s−channel構造によるオン電流の増大効果、オフ電流の低減効果などを高めることができる。
<トランジスタ構造5>
図22には、図18乃至図21のトランジスタとは別の構造の一例を示す。図22(A)はトランジスタ1200Eの上面を示す。なお、図の明瞭化のため、図22(A)において一部の膜は省略されている。また、図22(B)は、図22(A)に示す一点鎖線X1−X2に対応する断面図であり、図22(C)はY1−Y2に対応する断面図である。
なお、図22に示すトランジスタ1200Eにおいて、図18に示したトランジスタ1200Aを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
図22に示すトランジスタ1200Eは、絶縁体1280に形成された開口部に、酸化物1230c、絶縁体1250、導電体1260を形成されている。また、導電体1240a及び導電体1240bの一方の端部と、絶縁体1280に形成された開口部の端部が一致している。さらに、導電体1240a及び導電体1240bの端部が、酸化物1230の端部の一部と一致している。従って、導電体1240a及び導電体1240bは、酸化物1230又は絶縁体1280の開口部と、同時に整形することができる。そのため、マスク及び工程を削減することができる。また、歩留まりや生産性を向上させることができる。
また、導電体1240a、導電体1240b、及び酸化物1230cは、過剰酸素領域を有する絶縁体1280と、酸化物1230dを介して接する。そのため、絶縁体1280と、チャネルが形成される領域を有する酸化物1230bとの間に、酸化物1230dが介在することにより、絶縁体1280から、水素、水、及びハロゲン等の不純物が、酸化物1230bへ拡散することを抑制することができる。
さらに、図22に示すトランジスタ1200Eは、導電体1240a、導電体1240b、導電体1241a、及び導電体1241bと、導電体1260と、がほとんど重ならない構造を有するため、導電体1260にかかる寄生容量を小さくすることができる。即ち、動作周波数が高いトランジスタを提供することができる。
<トランジスタ構造6>
図23には、図18乃至図22のトランジスタとは構造の一例を示す。図23(A)はトランジスタ1200Fの上面を示す。なお、図の明瞭化のため、図23(A)において一部の膜は省略されている。また、図23(B)は、図23(A)に示す一点鎖線X1−X2に対応する断面図であり、図23(C)はY1−Y2に対応する断面図である。
なお、図23に示すトランジスタ1200Fにおいて、図22に示したトランジスタ1200Eを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
絶縁体1282上に、絶縁体1285、及び絶縁体1286が形成される。
絶縁体1280、絶縁体1282、及び絶縁体1285に形成された開口部に、酸化物1230c、絶縁体1250、導電体1260を形成されている。また、導電体1240a、導電体1240bの端部と、絶縁体1280に形成された開口部の端部が一致している。さらに、導電体1240a、導電体1240bの端部が、酸化物1230cの端部の一部と一致している。従って、導電体1240a、導電体1240bは、絶縁体1280の開口部と、同時に整形することができる。そのため、マスク及び工程を削減することができる。また、歩留まりや生産性を向上させることができる。
また、導電体1240a、導電体1240b、酸化物1230c、及び酸化物1230bは、過剰酸素領域を有する絶縁体1280と、酸化物1230dを介して接する。そのため、絶縁体1280と、チャネルが形成される領域を有する酸化物1230bとの間に、酸化物1230dが介在することにより、絶縁体1280から、水素、水、及びハロゲン等の不純物が、酸化物1230bへ拡散することを抑制することができる。
また、図23に示すトランジスタ1200Fは、高抵抗のオフセット領域が形成されないため、これによってトランジスタのオン電流を増大することができる。
<トランジスタ構造7>
図24には、図18乃至図23のトランジスタとは別の構造の一例を示す。図24(A)はトランジスタ1200Gの上面を示す。なお、図の明瞭化のため、図24(A)において一部の膜は省略されている。また、図24(B)は、図24(A)に示す一点鎖線X1−X2に対応する断面図であり、図24(C)はY1−Y2に対応する断面図である。
なお、図24に示すトランジスタ1200Gにおいて、図18に示したトランジスタ1200Aを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
図24に示すトランジスタ1200Gは、酸化物1230dを有さない構造である。例えば、導電体1240a、及び導電体1240bに耐酸化性が高い導電体を用いる場合、酸化物1230dは、必ずしも設けなくてもよい。そのため、マスク及び工程を削減することができる。また、歩留まりや生産性を向上させることができる。
また、絶縁体1224は、酸化物1230a、及び酸化物1230bと重畳する領域にのみ設けてもよい。この場合、絶縁体1222をエッチングストッパーとして、酸化物1230a、酸化物1230b、及び絶縁体1224を加工することができる。従って、歩留まりや生産性を高めることができる。
さらに、図24に示すトランジスタ1200Gは、導電体1240a、導電体1240bと、導電体1260と、がほとんど重ならない構造を有するため、導電体1260にかかる寄生容量を小さくすることができる。即ち、動作周波数が高いトランジスタを提供することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した酸化物1230に適用可能な酸化物半導体膜の構造について説明する。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(c−axis−aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)及び非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体と、に分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体及びnc−OSなどがある。
非晶質構造は、一般に、等方的であって不均質構造を持たない、準安定状態で原子の配置が固定化していない、結合角度が柔軟である、短距離秩序は有するが長距離秩序を有さない、などといわれている。
即ち、安定な酸化物半導体を完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体とは呼べない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体とは呼べない。一方、a−like OSは、等方的でないが、鬆(ボイドともいう。)を有する不安定な構造である。不安定であるという点では、a−like OSは、物性的に非晶質酸化物半導体に近い。
<CAAC−OS>
まずは、CAAC−OSについて説明する。
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一種である。
CAAC−OSをX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析した場合について説明する。例えば、空間群R−3mに分類されるInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図28(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSでは、結晶がc軸配向性を有し、c軸がCAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)、又は上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。なお、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、空間群Fd−3mに分類される結晶構造に起因する。そのため、CAAC−OSは、該ピークを示さないことが好ましい。
一方、CAAC−OSに対し、被形成面に平行な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。そして、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図28(B)に示すように明瞭なピークは現れない。一方、単結晶InGaZnO4に対し、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図28(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸及びb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、CAAC−OSの被形成面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図28(D)に示すような回折パターン(制限視野電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面又は上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図28(E)に示す。図28(E)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、プローブ径が300nmの電子線を用いた電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸及びb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図28(E)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面及び(100)面などに起因すると考えられる。また、図28(E)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像であってもペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない場合がある。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
図29(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって観察することができる。
図29(A)より、金属原子が層状に配列している領域であるペレットを確認することができる。ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。ペレットは、CAAC−OSを被形成面又は上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面又は上面と平行となる。
また、図29(B)及び図29(C)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図29(D)及び図29(E)は、それぞれ図29(B)及び図29(C)を画像処理した像である。以下では、画像処理の方法について説明する。まず、図29(B)を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理することでFFT像を取得する。次に、取得したFFT像において原点を基準に、2.8nm−1から5.0nm−1の間の範囲を残すマスク処理する。次に、マスク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理することで画像処理した像を取得する。こうして取得した像をFFTフィルタリング像と呼ぶ。FFTフィルタリング像は、Cs補正高分解能TEM像から周期成分を抜き出した像であり、格子配列を示している。
図29(D)では、格子配列の乱れた箇所を破線で示している。破線で囲まれた領域が、一つのペレットである。そして、破線で示した箇所がペレットとペレットとの連結部である。破線は、六角形状であるため、ペレットが六角形状であることがわかる。なお、ペレットの形状は、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合が多い。
図29(E)では、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間を点線で示し、格子配列の向きを破線で示している。点線近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。点線近傍の格子点を中心に周囲の格子点を繋ぐと、歪んだ六角形や、五角形又は/及び七角形などが形成できる。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制していることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
以上に示すように、CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のペレット(ナノ結晶)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。よって、CAAC−OSを、CAA crystal(c−axis−aligned a−b−plane−anchored crystal)を有する酸化物半導体と称することもできる。
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(又は分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
<nc−OS>
次に、nc−OSについて説明する。
nc−OSをXRDによって解析した場合について説明する。例えば、nc−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、配向性を示すピークが現れない。即ち、nc−OSの結晶は配向性を有さない。
また、例えば、InGaZnO4の結晶を有するnc−OSを薄片化し、厚さが34nmの領域に対し、被形成面に平行にプローブ径が50nmの電子線を入射させると、図30(A)に示すようなリング状の回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)が観測される。また、同じ試料にプローブ径が1nmの電子線を入射させたときの回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)を図30(B)に示す。図30(B)より、リング状の領域内に複数のスポットが観測される。したがって、nc−OSは、プローブ径が50nmの電子線を入射させることでは秩序性が確認されないが、プローブ径が1nmの電子線を入射させることでは秩序性が確認される。
また、厚さが10nm未満の領域に対し、プローブ径が1nmの電子線を入射させると、図30(C)に示すように、スポットが略正六角状に配置された電子回折パターンが観測される場合がある。したがって、厚さが10nm未満の範囲において、nc−OSが秩序性の高い領域、即ち結晶を有することがわかる。なお、結晶が様々な方向を向いているため、規則的な電子回折パターンが観測されない領域もある。
図30(D)に、被形成面と略平行な方向から観察したnc−OSの断面のCs補正高分解能TEM像を示す。nc−OSは、高分解能TEM像において、補助線で示す箇所などのように結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下の大きさであり、特に1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体(microcrystalline oxide semiconductor)と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
このように、nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
なお、ペレット(ナノ結晶)間で結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、又はNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。
図31に、a−like OSの高分解能断面TEM像を示す。ここで、図31(A)は電子照射開始時におけるa−like OSの高分解能断面TEM像である。図31(B)は4.3×108e−/nm2の電子(e−)照射後におけるa−like OSの高分解能断面TEM像である。図31(A)及び図31(B)より、a−like OSは電子照射開始時から、縦方向に延伸する縞状の明領域が観察されることがわかる。また、明領域は、電子照射後に形状が変化することがわかる。なお、明領域は、鬆又は低密度領域と推測される。
鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。以下では、a−like OSが、CAAC−OS及びnc−OSと比べて不安定な構造であることを示すため、電子照射による構造の変化を示す。
試料として、a−like OS、nc−OS及びCAAC−OSを準備する。いずれの試料もIn−Ga−Zn酸化物である。
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料は、いずれも結晶部を有する。
なお、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、以下では、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO4の結晶部と見なした。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa−b面に対応する。
図32は、各試料の結晶部(22箇所から30箇所)の平均の大きさを調査した例である。なお、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図32より、a−like OSは、TEM像の取得などに係る電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。図32より、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、電子(e−)の累積照射量が4.2×108e−/nm2においては1.9nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OS及びCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。図32より、電子の累積照射量によらず、nc−OS及びCAAC−OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.3nm程度及び1.8nm程度であることがわかる。なお、電子線照射及びTEMの観察は、日立透過電子顕微鏡H−9000NARを用いた。電子線照射条件は、加速電圧を300kV、電流密度を6.7×105e−/(nm2・s)、照射領域の直径を230nmとした。
このように、a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OS及びCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られない。即ち、a−like OSは、nc−OS及びCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OS及びCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満である。また、nc−OSの密度及びCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満である。単結晶の密度の78%未満である酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3である。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満である。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度及びCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満である。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
<酸化物半導体のキャリア密度>
次に、酸化物半導体のキャリア密度について、以下に説明を行う。
酸化物半導体のキャリア密度に影響を与える因子としては、酸化物半導体中の酸素欠損(Vo)、又は酸化物半導体中の不純物などが挙げられる。
酸化物半導体中の酸素欠損が多くなると、該酸素欠損に水素が結合(この状態をVoHともいう)した際に、欠陥準位密度が高くなる。又は、酸化物半導体中の不純物が多くなると、該不純物に起因し欠陥準位密度が高くなる。したがって、酸化物半導体中の欠陥準位密度を制御することで、酸化物半導体のキャリア密度を制御することができる。
ここで、酸化物半導体をチャネル領域に用いるトランジスタを考える。
トランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトの抑制、又はトランジスタのオフ電流の低減を目的とする場合においては、酸化物半導体のキャリア密度を低くする方が好ましい。酸化物半導体のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性と言う。高純度真性の酸化物半導体のキャリア密度としては、8×1015cm−3未満、好ましくは1×1011cm−3未満、さらに好ましくは1×1010cm−3未満であり、1×10−9cm−3以上とすればよい。
一方で、トランジスタのオン電流の向上、又はトランジスタの電界効果移動度の向上を目的とする場合においては、酸化物半導体のキャリア密度を高くする方が好ましい。酸化物半導体のキャリア密度を高くする場合においては、酸化物半導体の不純物濃度をわずかに高める、又は酸化物半導体の欠陥準位密度をわずかに高めればよい。あるいは、酸化物半導体のバンドギャップをより小さくするとよい。例えば、トランジスタのId−Vg特性のオン/オフ比が取れる範囲において、不純物濃度がわずかに高い、又は欠陥準位密度がわずかに高い酸化物半導体は、実質的に真性とみなせる。また、電子親和力が大きく、それにともなってバンドギャップが小さくなり、その結果、熱励起された電子(キャリア)の密度が増加した酸化物半導体は、実質的に真性とみなせる。なお、より電子親和力が大きな酸化物半導体を用いた場合には、トランジスタのしきい値電圧がより低くなる。
上述のキャリア密度が高められた酸化物半導体は、わずかにn型化している。したがって、キャリア密度が高められた酸化物半導体を、「Slightly−n」と呼称してもよい。
実質的に真性の酸化物半導体のキャリア密度は、1×105cm−3以上1×1018cm−3未満が好ましく、1×107cm−3以上1×1017cm−3以下がより好ましく、1×109cm−3以上5×1016cm−3以下がさらに好ましく、1×1010cm−3以上1×1016cm−3以下がさらに好ましく、1×1011cm−3以上1×1015cm−3以下がさらに好ましい。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(本明細書等の記載に関する付記)
以上の実施の形態における各構成の説明について、以下に付記する。
<実施の形態で述べた本発明の一態様に関する付記>
各実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて、本発明の一態様とすることができる。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)と、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)との少なくとも一つの内容に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことができる。
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)と、一つ若しくは複数の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)との少なくとも一つの図に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることができる。
<序数詞に関する付記>
本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものである。従って、構成要素の数を限定するものではない。また、構成要素の順序を限定するものではない。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素が、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において「第2」に言及された構成要素とすることもありうる。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素を、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において省略することもありうる。
<図面を説明する記載に関する付記>
実施の形態について図面を参照しながら説明している。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態の発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化する。そのため、配置を示す語句は、明細書で説明した記載に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
また、「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上又は直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
また本明細書等において、ブロック図では、構成要素を機能毎に分類し、互いに独立したブロックとして示している。しかしながら実際の回路等においては、構成要素を機能毎に切り分けることが難しく、一つの回路に複数の機能が係わる場合や、複数の回路にわたって一つの機能が関わる場合があり得る。そのため、ブロック図のブロックは、明細書で説明した構成要素に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、説明の便宜上任意の大きさに示したものである。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は明確性を期すために模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
また、図面において、上面図(平面図、レイアウト図ともいう)や斜視図などにおいて、図面の明確性を期すために、一部の構成要素の記載を省略している場合がある。
また、図面において、同一の要素又は同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
<言い換え可能な記載に関する付記>
本明細書等において、トランジスタの接続関係を説明する際、ソースとドレインとの一方を、「ソース又はドレインの一方」(又は第1電極、又は第1端子)と表記し、ソースとドレインとの他方を「ソース又はドレインの他方」(又は第2電極、又は第2端子)と表記している。これは、トランジスタのソースとドレインは、トランジスタの構造又は動作条件等によって変わるためである。なおトランジスタのソースとドレインの呼称については、ソース(ドレイン)端子や、ソース(ドレイン)電極等、状況に応じて適切に言い換えることができる。また、本明細書等では、ゲート以外の2つの端子を第1端子、第2端子と呼ぶ場合や、第3端子、第4端子と呼ぶ場合がある。なお、ボトムゲートとは、トランジスタの作製時において、チャネル形成領域よりも先に形成される端子のことをいい、「トップゲート」とは、トランジスタの作製時において、チャネル形成領域よりも後に形成される端子のことをいう。
トランジスタは、ゲート、ソース、及びドレインと呼ばれる3つの端子を有する。ゲートは、トランジスタの導通状態を制御する制御端子として機能する端子である。ソース又はドレインとして機能する2つの入出力端子は、トランジスタの型及び各端子に与えられる電位の高低によって、一方がソースとなり他方がドレインとなる。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。また、本明細書等では、ゲート以外の2つの端子を第1端子、第2端子と呼ぶ場合や、第3端子、第4端子と呼ぶ場合がある。
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
また、本明細書等において、電圧と電位は、適宜言い換えることができる。電圧は、基準となる電位からの電位差のことであり、例えば基準となる電位をグラウンド電位(接地電位)とすると、電圧を電位に言い換えることができる。グラウンド電位は必ずしも0Vを意味するとは限らない。なお電位は相対的なものであり、基準となる電位によっては、配線等に与える電位を変化させる場合がある。
なお本明細書等において、「膜」、「層」などの語句は、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、場合によっては、又は、状況に応じて、「膜」、「層」などの語句を使わずに、別の用語に入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」又は「導電膜」という用語を、「導電体」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、例えば、「絶縁層」「絶縁膜」という用語を、「絶縁体」という用語に変更することが可能な場合がある。
なお本明細書等において、「配線」、「信号線」、「電源線」などの用語は、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「配線」という用語を、「信号線」という用語に変更することが可能な場合がある。また、例えば、「配線」という用語を、「電源線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で、「信号線」「電源線」などの用語を、「配線」という用語に変更することが可能な場合がある。「電源線」などの用語は、「信号線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で「信号線」などの用語は、「電源線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、配線に印加されている「電位」という用語を、場合によっては、又は、状況に応じて、「信号」などという用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で、「信号」などの用語は、「電位」という用語に変更することが可能な場合がある。
<語句の定義に関する付記>
以下では、上記実施の形態中で言及した語句の定義について説明する。
<<半導体について>>
本明細書において、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「導電体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「導電体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体層を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、例えば、半導体にDOS(Density of States)が形成されることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコン層である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
<<トランジスタについて>>
本明細書において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域又はドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域又はソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
<<スイッチについて>>
本明細書等において、スイッチとは、導通状態(オン状態)、又は、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有するものをいう。又は、スイッチとは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有するものをいう。
一例としては、電気的スイッチ又は機械的なスイッチなどを用いることができる。つまり、スイッチは、電流を制御できるものであればよく、特定のものに限定されない。
電気的なスイッチの一例としては、トランジスタ(例えば、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタなど)、ダイオード(例えば、PNダイオード、PINダイオード、ショットキーダイオード、MIM(Metal Insulator Metal)ダイオード、MIS(Metal Insulator Semiconductor)ダイオード、ダイオード接続のトランジスタなど)、又はこれらを組み合わせた論理回路などがある。
なお、スイッチとしてトランジスタを用いる場合、トランジスタの「導通状態」とは、トランジスタのソース電極とドレイン電極が電気的に短絡されているとみなせる状態をいう。また、トランジスタの「非導通状態」とは、トランジスタのソース電極とドレイン電極が電気的に遮断されているとみなせる状態をいう。なおトランジスタを単なるスイッチとして動作させる場合には、トランジスタの極性(導電型)は特に限定されない。
機械的なスイッチの一例としては、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のように、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)技術を用いたスイッチがある。そのスイッチは、機械的に動かすことが可能な電極を有し、その電極が動くことによって、導通と非導通とを制御して動作する。
<<チャネル長について>>
本明細書等において、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(又はトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、又はチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域又はソース電極)とドレイン(ドレイン領域又はドレイン電極)との間の距離をいう。
なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値又は平均値とする。
<<チャネル幅について>>
本明細書等において、チャネル幅とは、例えば、上面図において半導体(又はトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、又はチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。
なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値又は平均値とする。
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)と、が異なる場合がある。例えば、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体とゲート電極とが重なる領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅又は見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。又は、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって、値を決定することができる。
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
<<接続について>>
本明細書等において、XとYとが接続されている、と記載する場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とを含むものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図又は文章に示された接続関係に限定されず、図又は文章に示された接続関係以外のものも含むものとする。
ここで使用するX、Yなどは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、又は、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅又は電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載する場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とを含むものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示的に記載する場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合と同じであるとする。
なお、例えば、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1を介して(又は介さず)、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2を介して(又は介さず)、Yと電気的に接続されている場合や、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1の一部と直接的に接続され、Z1の別の一部がXと直接的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2の一部と直接的に接続され、Z2の別の一部がYと直接的に接続されている場合では、以下のように表現することが出来る。
例えば、「XとYとトランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とは、互いに電気的に接続されており、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yの順序で電気的に接続されている。」と表現することができる。又は、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)はYと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この順序で電気的に接続されている」と表現することができる。又は、「Xは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とを介して、Yと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この接続順序で設けられている」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続の順序について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。なお、これらの表現方法は、一例であり、これらの表現方法に限定されない。ここで、X、Y、Z1、Z2は、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
なお、回路図上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
<<平行、垂直について>>
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上かつ10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上かつ5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上かつ30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上かつ100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上かつ95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上かつ120°以下の角度で配置されている状態をいう。
<<三方晶、菱面体晶について>>
本明細書において、結晶が三方晶又は菱面体晶である場合、六方晶系として表す。