JP2017147951A - 細胞培養方法及び培養組織 - Google Patents
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〔1〕細胞培養基材に細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む細胞培養方法であって、前記細胞培養基材が表面加工コラーゲン成形体であり、前記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部が凹形状及び/又は凸形状を有しており、かつこの成形体の主要構成要素が、損なわれていない(intact)線維化コラーゲン又はコラーゲン分子である細胞培養方法。
〔2〕細胞培養基材に細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む細胞培養方法であって、前記細胞培養基材が表面加工コラーゲン成形体であり、前記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、少なくとも一部が転写部材と接触した状態で、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部に前記転写部材の形状が転写又は反映された被転写部を有しており、この被転写部に凹形状及び/又は凸形状を有している細胞培養方法。
〔3〕細胞培養基材に細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む細胞培養方法であって、前記細胞培養基材が表面加工コラーゲン成形体であり、前記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部に、凹形状及び/又は凸形状に変形した表面形状を有している細胞培養方法。
〔4〕細胞培養基材と、この細胞培養基材の表面及び/又は内部に形成されている細胞組織とを含んでなる培養組織であって、上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部が凹形状及び/又は凸形状を有しており、かつこの成形体の主要構成要素が、損なわれていない(intact)線維化コラーゲン又はコラーゲン分子である培養組織。
〔5〕細胞培養基材と、この細胞培養基材の表面及び/又は内部に形成されている細胞組織とを含んでなる培養組織であって、上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、少なくとも一部が転写部材と接触した状態で、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部に上記転写部材の形状が転写又は反映された被転写部を有しており、この被転写部に凹形状及び/又は凸形状を有している培養組織。
〔6〕細胞培養基材と、この細胞培養基材の表面及び/又は内部に形成されている細胞組織とを含んでなる培養組織であって、上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部に、凹形状及び/又は凸形状に変形した表面形状を有している培養組織。
本基材である表面加工コラーゲン成形体は、例えば、次の3つの態様で表すことができるものである。なお、いずれの態様においても、本基材は、切削等の加工手段によることなく、その表面の少なくとも一部に、凹形状及び/又は凸形状を有している。そのため、本基材の当該形状を有する部分は、それ以外の部分と同様の平滑性が保たれている。
本発明の目的が達成される限り、本基材の表面全体がパターン形状を有していてもよく、表面の一部がパターン形状を有していてもよい。例えば、本基材の外形が平膜状の場合、その上面、下面及び側面のうちから選択されるいずれか又は全ての表面がパターン形状を有していてもよい。また、その上面、下面及び側面から選択されたいずれかの面において、その面全体がパターン形状を有していてもよく、その面の一部の領域がパターン形状を有していてもよい。以下、パターン形状が形成された領域を「パターン領域」と称する場合がある。一つの面の異なる領域に、複数のパターン領域が形成されてもよい。
本基材は、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋されたものである。以下、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜及び非線維化コラーゲン膜を、「コラーゲン基材」とも称する。また、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射による架橋を、「照射架橋」とも称する。
本発明の目的が阻害されない限り、使用目的に応じて、本基材に、その他構成要素として各種添加剤が配合されてもよい。その他構成要素の例として、フィブリン、トロンビン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸等が挙げられる。
本基材において、用いられるコラーゲンの種類は特に限定されないが、生体内での存在量が多いI型コラーゲンが好ましく、抗原決定基であるテロペプタイドが除去されたアテロコラーゲンがより好ましい。また、通常、哺乳類、魚介類、鳥類、爬虫類等の生物原料由来のコラーゲンが使用されうるが、ヒトと共通のウイルスを有しない魚介類由来のコラーゲンが好適に用いられる。
第1態様の特徴的部分は、本基材の主要構成要素が、損なわれていない(intact)線維化コラーゲン又はコラーゲン分子であることにある。即ち、表面の少なくとも一部にパターン形状を有する本基材が、切削等の加工手段による損傷を受けていないコラーゲンを主要構成要素として構成されていることを意味する。
第2態様の特徴的部分は、転写部材と接触した状態で架橋されることにより、転写部材の形状が転写又は反映されたパターン形状を有する被転写部が、本基材の表面の少なくとも一部に存在することである。当該パターン形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、転写部材の形状が完全に反転された形状だけでなく、その相似形状であってもよい。また、コラーゲン基材の表面が転写部材によって変形された形状であってもよい。変形の一例として、コラーゲン基材として弾力性を有したものを用いたときに、直方体状の突起を有した転写部材によって形成された略ドーム型の窪み形状(凹形状)が挙げられる。
第3態様の特徴的部分は、本基材の表面の少なくとも一部が、所定のパターン形状に変形していることである。つまり、このパターン形状は、本基材の表面の「変形」によるものであり、切削等の加工手段によるものではない。本態様には、第2態様で挙げた「変形の一例」も含まれる。
本基材の製造方法として、次の第1製法と第2製法を例示することができる。なお、本発明の目的が達成される限り、第1製法及び第2製法において、更に他の工程を含んでもよい。
コラーゲン基材としては未架橋のものを用いる。本発明の目的が阻害されない限り、コラーゲン基材が、少量の架橋コラーゲンを含んでもよい。以下、「未架橋の」と特に限定しなくても、コラーゲン基材である線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜及び非線維化コラーゲン膜は、架橋されていないものを指すこととする。
転写部材は、本基材にパターン形状を形成することができる部材である。当該機能を有している限り、転写部材の種類、形状等は特に限定されることはなく、使用目的に応じて適切な転写部材を選択することが望ましい。ここで、転写部材のうち、本基材のパターン形状の形成に寄与する部分を転写部と称する。
水性溶媒は、例えば、水、緩衝液、酸性溶液等が挙げられ、これらに有機溶媒を添加した混合溶媒でもよい。コラーゲン基材の種類と照射架橋の方法に応じて適宜使い分けることが好ましい。このような使い分けの具体例について、以下に説明する。
架橋処理方法は、照射架橋法である。γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち2種以上を組み合わせてもよい。好適な照射架橋法は、透過力が高く、均一に架橋させることができるγ線照射による架橋法である。特に、γ線照射による架橋処理では、照射線量を適宜設定することによって、高強度の表面加工コラーゲン成形体を得ることもできる。γ線照射では、線量率が固定の線源を用い、照射時間等の条件を適宜設定することにより、所定の照射線量を簡便に得ることができる。例えば、コバルト60線源を用いる場合、照射線量5〜75kGyで架橋処理を行うことができる。照射線量として、好ましくは5〜50kGyであり、より好ましくは10〜50kGyであり、さらに好ましくは15〜30kGyである。照射時間は、コラーゲン基材の量や大きさに応じて架橋反応が十分に進行するように設定することが好ましい。さらに、照射条件を適宜設定すれば架橋処理と同時に滅菌処理を行うことができる。そのため、架橋処理中及び架橋処理後の密封状態を保つようにすることで、滅菌済み製品として、そのまま市場に流通させることも可能である。
第1製法及び第2製法において、作用機序については定かではないが、水性溶媒の存在下で照射架橋をおこなうことによって、照射(γ線等)により発生した水のラジカルがコラーゲンの未架橋部分に作用し、これによって架橋反応を開始又は進行させると推測される。これにより、細胞培養環境や生体内環境で使用された場合にも、分解し難いという特性を付与することができると考えられる。特に好適な一形態は、照射架橋処理中に、転写部材と接触している部分のコラーゲン基材には水性溶媒が流通又は浸潤しており、転写部材と接触していない部分のコラーゲン基材には水性溶媒が流通している状態とすることである。即ち、転写部材と接触していない部分は当然のことながら、たとえ転写部材と接触している部分のコラーゲン基材であっても、水性溶媒の流動性が少なからず確保されている状態とする。これによって、水性溶媒の流動とともに、新たに発生した水のラジカルが順次コラーゲンの未架橋部分に作用して架橋反応を進行させてより強い架橋とすることも可能になると考えられる。尚、上記水性溶媒の流通又は浸潤においては、たとえ撹拌等による外力が作用しなくても、水分子のレベルでコラーゲン基材の内部から外部へ、またその逆方向への動きが確保されている状態であればよいと考えられる。
第1製法では、水性溶媒の存在下、コラーゲン基材の表面の少なくとも一部を転写部材で押圧した状態で照射架橋する。転写部材による押圧の程度は特に限定されないが、コラーゲン基材の表面を所定の形状に加工できる程度の押圧力とすることが好ましい。好適な一形態は、押圧部分だけが変形し、それ以外の部分は大きく変形しない程度の圧力とすることである。
第2製法は、転写部材と接触した状態で、可溶化コラーゲン溶液中のコラーゲンを線維化させて、コラーゲン基材である線維化コラーゲンゲルを調製する第一工程と、転写部材と接触した状態の線維化コラーゲンゲルを水性溶媒の存在下で照射架橋する第二工程とを含むものである。
第1製法及び第2製法の各最終工程に引き続き、架橋処理物を脱溶媒することにより乾燥させる乾燥工程を更に含んでもよい。乾燥の程度は、用途に応じて適宜設定すればよい。乾燥方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されることはない。本基材の主要構成要素が非線維化コラーゲンである場合、コラーゲンの線維化が生じない乾燥方法及び乾燥条件とすることが好ましい。
前述したその他構成要素を本基材に配合する場合は、その他構成要素の種類、目的とする用途等に応じて、その他構成要素の配合タイミングを適切に選択することが好ましい。配合のタイミングとして、例えば、架橋処理前、架橋処理後等が挙げられる。
本発明は、以上説明した本基材を、細胞培養基材として用いることを特徴とする細胞培養方法である。具体的には、細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む。本発明の目的が阻害されない限り、本培養方法が、更に他の工程を含んでもよい。
播種工程では、本基材に対して、培養する細胞が播種される。一般には、培養容器に本基材を収容した状態で播種する。細胞を播種する方法は特に限定されず、既知の手法が用いられうる。例えば、目的とする細胞を緩衝液又は液状の培地に懸濁して、所定濃度の細胞懸濁液を作製し、この細胞懸濁液を滴下することにより、播種工程が実施されてもよい。本基材として、例えば、膜状のものを用いるときは、好適にはパターン形状を有する面に細胞を播種する。培養容器に収納する本基材の数は特に限定されず、目的に応じて複数の本基材を用いることも可能であり、その場合には、外形、大きさ、パターン形状等が異なる複数の本基材を一つの培養容器に収容してもよい。培養容器の種類及び大きさは特に限定されず、通常、細胞培養用として使用されるシャーレ、ディッシュ、マルチカルチャープレート、フラスコ等既知の培養容器が適宜選択されて用いられる。また、培養容器の材質は、ガラスであってもよく、ポリスチレン等の樹脂であってもよい。
培養工程では、本基材に播種した細胞を所定の培養条件下で培養する。培養工程の一例では、先ず、細胞が播種された本基材を収容する培養容器に、培地が添加される。培地の種類は特に限定されないが、播種工程において、細胞懸濁液の作製に使用した培地と同じ種類の培地が好ましい。必要に応じて、各種成長因子、血清、抗生物質等を含む培地が用いられてもよい。次に、培地が添加された培養容器が、細胞の種類や培養の目的等に応じて選択された所定の培養条件下に置かれることにより、本基材に播種された細胞が培養される。一般には、温度37℃、湿度90%以上、CO2濃度5容積%に調整されたインキュベーターが利用される。
本発明は、本基材と、本基材の表面及び/又は内部に形成されている細胞組織とを含んでなる培養組織をも対象とするものである。本発明に係る培養組織(以下、「本培養組織」と称する)は、少なくとも、本基材を製造する製造工程、本基材に細胞を播種する播種工程及びこの細胞を培養する培養工程を含む製造方法により作製される。各工程の詳細については前述した通りである。
(可溶化コラーゲン溶液の調製)
ティラピアの鱗から製造された多木化学(株)製「セルキャンパス FD-08G」(凍結乾燥品)をpH3のHCl溶液に溶解した後、コラーゲン濃度1.1%、pH3に調整して、無色透明の可溶化コラーゲン溶液を得た。
可溶化コラーゲン溶液の9容量部と、10倍濃度のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)の1容量部とを混合し、この混合液0.79mlをシリコーン製成形器(直径20mm、高さ2.5mm)に注入した。水分の蒸発を防ぐために、成形器の上面をスライドグラスで覆い、25℃で12時間保持して線維化コラーゲンゲルを得た。当該線維化コラーゲンゲルを、エタノール/水混合液(容量比50/50)に浸漬した。続いて、容量比70/30、90/10、100/0のエタノール/水混合液に順次浸漬して、この線維化コラーゲンゲルを脱塩した。その後、成形器から取り出した線維化コラーゲンゲルの上下面をポリスチレン板で覆い、側面のみから脱溶媒することにより乾燥させて膜状の線維化コラーゲン成形体(以下、「線維化コラーゲン膜」と称する)を得た。
製造例1では、前述の線維化コラーゲン膜をコラーゲン基材とし、ナイロンメッシュ(目開き:300μm、繊維径:100〜150μm)を転写部材として使用し、ポリエチレンシートを支持部材として使用した。1枚の線維化コラーゲン膜の上面及び下面を、上記各1枚のナイロンメッシュ及びポリエチレンシートで挟んで押圧し、クリップで固定して押圧状態を保持した。その後、D-PBS中に投入して、25kGyのγ線を照射することにより、製造例1の表面加工コラーゲン成形体を得た。得られた表面加工コラーゲン成形体の主要構成要素は、架橋された線維化コラーゲンである。
製造例1の表面加工コラーゲン成形体のナイロンメッシュと接していた表面を、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM-6010LA」)で観察した。その結果、この表面にナイロンメッシュの表面形状が転写又は反映された、一定のパターン形状が形成されていることを確認した(図1B、倍率50倍)。また、この成形体そのものが多孔質構造を有するものでないことを確認した。尚、図1Aは、転写部材として用いたナイロンメッシュをカーボンペースト上に載置して撮影した走査型電子顕微鏡像(倍率50倍)である。
製造例1の表面加工コラーゲン成形体を、6wellプレートに配し、D-PBS 5ml中に37℃で5日間浸漬した。5日後、上澄みのみをサンプリングし、80℃で1日間乾燥した後、溶解重量を測定し、溶解率を求めた。その結果、溶解率は3%であった。
製造例1と同様の方法で調製した可溶化コラーゲン溶液の9容量部と、10倍濃度のD-PBSの1容量部とを混合し、この混合液0.79mlをシリコーン製成形器(直径20mm、高さ2.5mm)に注入した。
製造例1の表面加工コラーゲン成形体を細胞培養基材として、以下の手順により、本発明に係る細胞培養方法を実施した。なお、角化細胞(Keratinocyte)として、新潟大学歯学部倫理委員会の承認を受けて実験に使用している、新潟大学医歯学総合病院の口腔外科を受診した患者の口腔粘膜上皮由来の初代培養細胞を用いた。
12wellプレートに、細胞培養基材として、製造例1の表面加工コラーゲン成形体を収容した。尚、パターン形状を有する面を上面とした。これを1 wellあたり1μg/μlのIV型コラーゲン溶液25μLとD-PBS 500μlの混合液でコーティングした後、4℃で一晩静置した。
角化細胞の細胞懸濁液を調製し、この細胞懸濁液を、1×106 cells/wellとなるように、細胞培養基材の表面に播種した。培地は、EpiLife(登録商標、Thermo Fisher Scientific)high Ca++(1.2mM)培地5.5mLを用い、液相培養(Submerged Culture)にて培養4日目(Day 4)まで毎日培地交換した。
気相−液相培養(air-liquid interface culture)に移行し、EpiLife(登録商標、Thermo Fisher Scientific)high Ca++(1.2mM)培地10mLで1日おきに培地交換した。当該培養を培養11日目(Day 11)まで継続した。
得られた培養組織を、4%パラホルムアルデヒドに一晩浸漬(4℃)することにより固定した。次に、パラフィン包埋後、常法によるヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を施して、光学顕微鏡による形態観察に供した。実施例1で得られた培養組織の光学顕微鏡写真が、図4(4A及び4B)に示されている。
製造例1の表面加工コラーゲン成形体に替えて、製造例2の表面加工コラーゲン成形体を細胞培養基材として用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の細胞培養方法を実施した。尚、細胞培養基材は、パターン形状を有する面を上面として12wellプレートに収容し、この上面に対して細胞懸濁液を播種した。実施例2で得られた培養組織の光学顕微鏡写真が、図5(5A−5C)に示されている。
図3は、12wellプレートに収容した製造例1及び2の細胞培養基材の、Day 0からDay 11までの形状変化を示す写真である。図示される通り、製造例1の細胞培養基材は、外観形状にほとんど変化がみられなかったが、製造例2の細胞培養基材は、培養日数の経過とともに収縮した。
図4は、実施例1で得られた培養組織の断面を示す組織像である(4A:倍率10倍、4B:倍率20倍)。実施例1では、細胞培養基材の上部(表面)全体に、連続した上皮層の形成が見られた。細胞培養基材のパターン形状が形成された部位には、上皮脚様の細胞が増殖していた。細胞組織が厚い部分では、10層程度の上皮層及び5層程度の角化層の形成が確認された。
図5は、実施例2で得られた培養組織の断面を示す組織像である(5A:倍率10倍、5B:倍率20倍、5C:倍率40倍)。実施例2では、細胞培養基材の上部(表面)全体に、連続した上皮層の形成が見られた。また、細胞と細胞培養基材との接着は良好であった。細胞培養基材のパターン形状が形成された部位には、上皮脚様の細胞が増殖していた。実施例2では、パターン形状の有無に関係なく、どの部位にもある程度の厚みがある上皮層が形成され、細胞の密度が高く、円柱状の細胞の配列が認められた。細胞組織が厚い部分では、10層程度の上皮層及び5層程度の角化層の形成が確認された。
特許文献1に記載の実施例1に従って、多孔質コラーゲン成形体を作製した。先ず、実施例1と同様の方法で調製した可溶化コラーゲン溶液の9容量部に、重炭酸ナトリウム水溶液1容量部を、重炭酸ナトリウム/可溶化コラーゲン溶液中のコラーゲン(モル比)=1.5×103となるように添加して、線維化コラーゲンゲルを得た。次に、当該線維化コラーゲンゲルを12wellプレートに2mlずつ分注した後、-35℃・3時間で凍結乾燥して、線維化コラーゲンで構成された多孔体を得た。次いで、この多孔体を0.05mol/Lの重炭酸ナトリウム水溶液中に浸漬した状態で25kGyのγ線照射を行うことによって、比較製造例1の多孔質コラーゲン成形体を得た。比較製造例1の多孔質コラーゲン成形体の表面には凹凸は殆ど確認出来なかった。また、特許文献1に記載の方法で平均孔径を求めたところ、多孔質コラーゲン成形体の平均孔径は95.5μm であった。この多孔質コラーゲン成形体の主要構成要素は、架橋された線維化コラーゲンである。
製造例1の表面加工コラーゲン成形体に替えて、比較製造例1の多孔質コラーゲン成形体を細胞培養基材として用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の細胞培養方法を実施した。比較例1では、播種した角化細胞が成形体内部に落ち込み、所定の培養期間経過後も、ヒト口腔粘膜上皮に類似した層構造を有する上皮の形成は見られなかった。
Claims (6)
- 細胞培養基材に細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む細胞培養方法であって、
上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、
上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部が凹形状及び/又は凸形状を有しており、かつこの成形体の主要構成要素が、損なわれていない(intact)線維化コラーゲン又はコラーゲン分子である細胞培養方法。 - 細胞培養基材に細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む細胞培養方法であって、
上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、
上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、少なくとも一部が転写部材と接触した状態で、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部に上記転写部材の形状が転写又は反映された被転写部を有しており、この被転写部に凹形状及び/又は凸形状を有している細胞培養方法。 - 細胞培養基材に細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む細胞培養方法であって、
上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、
上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部に、凹形状及び/又は凸形状に変形した表面形状を有している細胞培養方法。 - 細胞培養基材と、この細胞培養基材の表面及び/又は内部に形成されている細胞組織とを含んでなる培養組織であって、
上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、
上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部が凹形状及び/又は凸形状を有しており、かつこの成形体の主要構成要素が、損なわれていない(intact)線維化コラーゲン又はコラーゲン分子である培養組織。 - 細胞培養基材と、この細胞培養基材の表面及び/又は内部に形成されている細胞組織とを含んでなる培養組織であって、
上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、
上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、少なくとも一部が転写部材と接触した状態で、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部に上記転写部材の形状が転写又は反映された被転写部を有しており、この被転写部に凹形状及び/又は凸形状を有している培養組織。 - 細胞培養基材と、この細胞培養基材の表面及び/又は内部に形成されている細胞組織とを含んでなる培養組織であって、
上記細胞培養基材が、表面加工コラーゲン成形体であり、
上記表面加工コラーゲン成形体が、未架橋の線維化コラーゲンゲル、線維化コラーゲン膜又は非線維化コラーゲン膜が、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射又はプラズマ照射により架橋された成形体であって、この成形体の表面の少なくとも一部に、凹形状及び/又は凸形状に変形した表面形状を有している培養組織。
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