JP2006191809A - 伸展方向が制御された細胞の培養方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明における細胞培養プレートは、側壁1を複数個有し、それらの側壁1によって形成された培養細胞を配置するための空間構造3を複数有し、さらに側壁1に開口部2を設けることにより、複数の空間構造3が連通した構造を有しており、該細胞培養プレートを用いることで、伸展方向が制御された細胞の培養方法が提供される。
【選択図】図1
Description
単離した細胞は、直ちに試験に用いられる場合もあるが、多くは細胞培養の方法により培養皿や試験管のなかで培養が行われている。この培養系のなかで種々の検査が行われる。
培養皿として一般的に用いられているものには、シャーレ、または6ウェルプレート、12ウェル、48ウェル、96ウェルの各プレートがある(特許文献1参照)。また、最近の微量化への流れから、更に小口径で多数の培養皿からなる384ウェルプレートも使用され始めている。
細胞の活性を確認する方法として、老廃物の排出によるPHの変化や、炭酸ガスの放出を電気化学センサ等で測定が可能である。生体組織の測定データと、培養皿で培養した細胞の測定データを比較することが試みられているが、生体組織のデータを再現する値が、培養皿では再現できていないのが現状である。理由として、1個のウェルプレートは容器形状であるが、数ミクロンから数10ミクロンのサイズである細胞にとっては、平板上での培養と変わらないことが考えられる。特に、培養が難しい、例えば肝細胞等の組織細胞の増殖では、生体内で持っていた機能をさせることが更に困難となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
側壁を複数有することで、複数の空間構造を作製し、要求される用途に応じて空間構造のエリアサイズを設定する。要求される複数の空間構造の集合サイズは、縦・横0.5mm〜30mm、少なくとも1mm〜20cmのサイズで、適用可能である。
培養する細胞種に応じ、側壁、空間構造、開口部の寸法を設定することにより、多様な培養系において伸展方向の制御が可能になると推測される。開口部とは、側壁によって形成された空間構造どうしが、連結するための構造を開口部とする。例えば、側壁どうしの隙間、側壁の凹み構造、側壁の内部に形成されたトンネル構造等も開口部として細胞の接着斑どうしを結合するのに有効である。
細胞培養における擬似足場となる接着斑は、連通する面または凹凸パターンの側壁面に形成され、細胞が伸展可能な連通する面に増殖することによって伸展方向が制御されうる。
複数の細胞培養プレートを積層させることで、例えば、人工透析モジュールの代替機能を発現することが可能となる。複数の細胞培養プレートを積層させ細胞培養多層プレートとすることで、透析機能を高め、実際の生体組織を使用することで、老廃物の除去効率が高まり、患者の延命が可能になることが期待されている。
金属構造体を型として、樹脂成形品を成形した。金属構造体は、UV光を露光光源としたフォトリソグラフ法によりレジストパターン体を作製、その表面にスパッタリング法によりニッケルを500Å堆積させた後、電気メッキを実施し、厚さ0.5mmのニッケル製金属構造体を得た。
次に、ニッケル製金属構造体を成形金型のキャビティに固定し、射出成形により図1に示す樹脂製細胞培養プレートAを製造した。射出成形に用いた材料は、(株)クラレ製アクリル(パラペット G−HS)を使用した。
細胞培養プレートAの外形は、直径100mm、厚さ1mmの基板であり、中央部の縦40mm×横40mmのエリアに、複数の側壁1によって形成された複数の空間構造3を有する構造とした。側壁1の厚さは10μm、高さ15μm、幅60μmとし、4個の側壁1によって、縦100μm×横100μm、高さ15μmの空間構造3が1個形成される。複数の空間構造3を連通するための開口部2は、一直線に並ぶ側壁どうしの隙間であり、側壁1の間隔を40μmとした。
本成形品は平板形状であるが、使用用途に応じて、例えば、例えばシャーレの底部に、複数の側壁によって形成された複数の空間構造3を有するプレートを張り合わせるなどし、研究効率を高めるように工夫してもよい。
樹脂製細胞培養プレートAを製造する方法と同様の製造方法にて、図2に示す樹脂製細胞培養プレートBを製造した。
細胞培養プレートBの外形は、直径100mm、厚さ1mmの基板であり、中央部の縦40mm×横40mmのエリアに、複数の側壁1によって形成された複数の空間構造3を有する構造とした。側壁1の厚さは10〜20μm、高さ30μm、幅250μmとし、側壁1によって、縦100μm×横100μm、高さ30μmの空間構造が1個形成される。複数の空間構造3を連通するための開口部2は、側壁1の間隔を40μmとして得られた。
本成形品は平板形状であるが、使用用途に応じて、例えば、例えばシャーレの底部に、複数の側壁1によって形成された複数の空間構造2を有するプレートを張り合わせるなどし、研究効率を高めるように工夫してもよい。
樹脂製細胞培養プレートAを製造する方法と同様の製造方法にて、図4に示す樹脂製細胞培養プレートCを製造した。
細胞培養プレートBの外形は、縦80mm×横140mm、厚さ1mmの基板であり、中央部の縦40mm×横40mmのエリアに、複数の側壁によって形成された複数の空間構造を有し、その両側に培養液を灌流するための直径2mmの貫通孔4を2個有する構造とした。側壁1の厚さは10μm、高さ15μm、幅60μmとし、4個の側壁によって、縦100μm×横100μm、高さ15μmの空間構造3が1個形成される。複数の空間構造を連通するための開口部2は、一直線に並ぶ側壁どうしの隙間で、側壁1の間隔を40μmとした。
樹脂製細胞培養プレートCは、細胞培養試験では、培養液に浸すともにアクリル製プレートを重ね合わせ、貫通孔4により培養液を循環させた環境下で培養試験を行う。培養液が流れる流路5は、複数の空間構造の上面全体であり、アクリル製プレートとの隙間は、0.5mmとした。
樹脂製細胞培養プレートAを製造する方法と同様の製造方法にて、図5に示す樹脂製細胞培養プレートDを製造した。
細胞培養プレートDの外形は、縦70mm×横140mm、厚さ1mmの基板であり、中央部の縦40mm×横40mmのエリアに、複数の側壁1によって形成された複数の空間構造3を有し、その両側に培養液を灌流するための直径2mmの貫通孔4を2個有する構造とした。側壁1の厚さは10μm、高さ15μm、幅60μmとし、4個の側壁1によって、縦100μm×横100μm、高さ25μmの空間構造3が1個形成される。複数の空間構造3を連通するための開口部2は、一直線に並ぶ側壁1どうしの隙間で、側壁の間隔を40μmとした。
樹脂製細胞培養プレートDは、細胞培養試験では、培養液に浸すともにアクリル製プレートを重ね合わせ、貫通孔4により培養液を循環させた環境下で培養試験を行う。培養液が流れる幅2mm、長さ40mm流路5は、複数の空間構造3が設けられたエリアの間に等間隔で5本有する構造とした。アクリル製プレートと、複数の空間構造3の上部は密着している。
樹脂製細胞培養プレートAを製造する方法と同様の製造方法にて、図6に示す樹脂製細胞培養プレートEを製造した。
細胞培養プレートEの外形は、直径100mm、厚さ1mmの基板であり、中央部の縦40mm×横40mmのエリアに、複数の凹パターン6を有する構造とした。凹パターン6の幅は20μm、深さ30μm、長さ180μmとし、縦方向80μm、横方向20μmの間隔にて、連続する構造とした。
<細胞培養プレートの調整>
(細胞培養プレートA〜E)
細胞培養プレートA〜Eを用い、紫外線による滅菌処理を行った。次に細胞の付着を促すコラーゲンを塗布して細胞を培養するためのプレートを作製した後、シャーレ内に固定した。
スライドガラス1、2を用い、紫外線による滅菌処理を行った。次に細胞の付着を促すコラーゲンを塗布して細胞を培養するためのプレートを作製した後、シャーレ内に固定化した。
(細胞培養プレートA〜Dおよび比較用プレートA)
ラットの心筋細胞を、細胞培養プレートA〜Dの空間構造が設けられたエリア、および比較用プレート1上に配置し、培養液に浸した。細胞培養プレートC〜Dは、培養液に浸すともにアクリル製プレートを重ね合わせ、貫通孔4により培養液を循環させた。
(細胞培養プレートE、および比較用プレートB:)
ラットの骨髄およびニワトリ胚心臓から分離培養したラット骨髄間質細胞およびニワトリ胚線繊芽細胞を、細胞培養プレートEの凹パターンエリア並びに比較用培養プレート2上に配置し、培養液に浸した。
(細胞培養プレートA〜Dおよび比較用培養プレート1)
前記の環境下で4日間の細胞培養試験を行った。細胞培養プレートC〜Dを用いた試験では常に新鮮な培養液を細胞に供給可能であるため培養液の交換は行わなかったが、細胞培養プレートA〜Bおよび比較用培養プレート1を用いた試験では、試験開始3日目に培養液の交換を行った。
細胞培養プレートAを用いてラットの心筋細胞を培養した結果を図3の写真に示す。
細胞培養プレートEによる試験では、ラット骨髄間質細胞およびニワトリ胚線繊芽細胞を伸展方向が制御された形態で培養することに成功した。ラット骨髄間質細胞およびニワトリ胚線維芽細胞は、凹パターン6の側壁、または凹パターン6の上部に擬似足場となる接着斑を形成させた後、凹パターン6の内部に伸展することなく、連通する面7である凹部の上部に選択的に伸展することを確認した。すなわち、連通する面7に沿った方向へ培養細胞の伸展方向が制御されている。
一方、比較用培養プレート2による試験では、細胞は薄くのびて、スライドガラス一面に広がる形態となり、伸展方向を制御することはできなかった。
また、スライドガラス上では、培養面に隙間を有することができなかったが、細胞培養プレートEでは、凹パターン6によって培養面の隙間を制御した形で培養することが可能である。この技術により、培養細胞を複合させ、例えば、血管内皮細胞を共培養することで、生体組織をより正しく再現した細胞培養が可能になることが期待される。
6:凹パターン、7:連通する面
Claims (12)
- 側壁を複数個有し、それらの側壁によって形成された培養細胞を配置するための複数の空間構造を有し、さらに、側壁に開口部を設けることにより、複数の空間構造が連通した連結構造を有する細胞培養プレートを用いて、細胞培養における擬似足場となる接着斑を側壁面に形成させ、空間構造内で培養された細胞は対向する側壁に伸展し、それぞれの空間構造で培養された細胞が開口部によって結合することにより、培養細胞の伸展方向が制御されることを特徴とする細胞の培養方法。
- 前記細胞培養プレートにおける側壁が、高さが3μm〜1000μm、厚さが3μm〜1000μm、幅が3μm〜3000μmであることを特徴とする請求項1記載の細胞の培養方法。
- 前記細胞培養プレートが、培養液を灌流する流路を有する請求項1または2記載の細胞の培養方法。
- 前記流路の幅が1μm〜1000μm、深さが1μm〜1000μmである請求項3に記載の細胞の培養方法。
- 前記細胞培養プレートにおいて、細胞が配置される空間構造内に、高さまたは深さが0.001μm〜50μmの微細凹凸パターンを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の細胞の培養方法。
- 複数個の凹または凸パターンを有し、それら凹パターンの上部または凸パターンの底部に連通する面を有する細胞培養プレートを用いて、細胞培養における擬似足場となる接着斑を連通する面または凹凸パターンの側壁面に形成させ、該細胞を伸展可能な連通する面に増殖せしめることで培養細胞の伸展方向が制御されることを特徴とする細胞の培養方法。
- 側壁を複数個有し、それらの側壁によって形成された培養細胞を配置するための複数の空間構造を有し、さらに、側壁に開口部を設けることにより、複数の空間構造が連通した連結構造を有することを特徴とする細胞培養プレート。
- 複数個の凹、または凸パターンを有し、それら凹、または凸パターンを設けることにより、凹パターンの上部、または凸パターンの底部に連通する面を有することを特徴とする細胞培養プレート。
- 前記細胞培養プレートに細胞固定化のための表面処理が施されていること特徴とする請求項7または8に記載の細胞培養プレート。
- 樹脂成形品よりなることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の細胞培養プレート。
- 樹脂成形品が水溶性樹脂成形品である請求項10に記載の細胞培養プレート。
- 請求項7〜11のいずれか1項に記載の細胞培養プレートを複数枚積層させた構造である細胞培養多層プレート。
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