JP2014218453A - コラーゲン成形体及びその製造方法 - Google Patents

コラーゲン成形体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014218453A
JP2014218453A JP2013097686A JP2013097686A JP2014218453A JP 2014218453 A JP2014218453 A JP 2014218453A JP 2013097686 A JP2013097686 A JP 2013097686A JP 2013097686 A JP2013097686 A JP 2013097686A JP 2014218453 A JP2014218453 A JP 2014218453A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
collagen
membrane
fibrotic
irradiation
fibrillated
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013097686A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5633880B2 (ja
Inventor
田中 順三
Junzo Tanaka
順三 田中
生駒 俊之
Toshiyuki Ikoma
俊之 生駒
哲峰 許
Zhefeng Xu
哲峰 許
吉岡朋彦
Tomohiko Yoshioka
朋彦 吉岡
山口 勇
Isamu Yamaguchi
勇 山口
貴宏 河上
Takahiro Kawakami
貴宏 河上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Taki Chemical Co Ltd
Tokyo Institute of Technology NUC
Original Assignee
Taki Chemical Co Ltd
Tokyo Institute of Technology NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Taki Chemical Co Ltd, Tokyo Institute of Technology NUC filed Critical Taki Chemical Co Ltd
Priority to JP2013097686A priority Critical patent/JP5633880B2/ja
Publication of JP2014218453A publication Critical patent/JP2014218453A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5633880B2 publication Critical patent/JP5633880B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61LMETHODS OR APPARATUS FOR STERILISING MATERIALS OR OBJECTS IN GENERAL; DISINFECTION, STERILISATION OR DEODORISATION OF AIR; CHEMICAL ASPECTS OF BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES; MATERIALS FOR BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES
    • A61L27/00Materials for grafts or prostheses or for coating grafts or prostheses
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/78Connective tissue peptides, e.g. collagen, elastin, laminin, fibronectin, vitronectin or cold insoluble globulin [CIG]
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08JWORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
    • C08J9/00Working-up of macromolecular substances to porous or cellular articles or materials; After-treatment thereof
    • C08J9/36After-treatment

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Transplantation (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Oral & Maxillofacial Surgery (AREA)
  • Dermatology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)

Abstract

【課題】本発明の目的は、細胞培養液又は体液等により、溶解、収縮、又は膨張などの変化が起こりにくい、コラーゲン成形体(特には、コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体、及びコラーゲン膜とコラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体)、及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】前記課題は、本発明の線維化又は非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体であって、前記コラーゲン膜が、液体の存在下でγ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理することによって得られ、重量法による密度が0.4g/cm以上であり、そして湿潤下での引張強度が1MPa以上であることを特徴とする、コラーゲン成形体によって解決することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、コラーゲン成形体及びその製造方法に関し、前記コラーゲン成形体は、細胞培養基材、再生医療用の足場材料、移植用材料、創傷被覆材、癒着防止材及び薬物輸送担体等に好適な材料である。
コラーゲンは、生体内のタンパク質の30%を占め、骨格支持及び細胞接着などの機能を有する重要なタンパク質であり、例えば、骨・軟骨、靭帯・腱、角膜実質、皮膚、肝臓、筋肉などの組織は、コラーゲン線維からできている。このコラーゲンを用いた成形体(生体材料)は、細胞培養基材、再生医療用の足場材料(例えば、軟骨・骨・脊椎・髄核・靭帯・角膜実質・皮膚・血管・神経・肝臓組織の再生材料)、移植用材料(創傷被覆材料、骨補填剤、止血材料、癒着防止材など)又は薬物送達担体として有用であり、特に再生医療による大型組織再生、細胞の分散防止、及び細胞の分化誘導には必要不可欠である。
しかし、コラーゲン成形体は、力学特性が十分でないため、操作が難しく、臨床現場における使用は限定されていた。一般的に、コラーゲン線維化成形体及びコラーゲン非線維化成形体は、水や細胞培養液中で膨潤し易く、また、これを細胞培養基材として用いた場合には、培養期間が数日以上に渡ると形態が変化したり、あるいはコラーゲンが徐々に分解して溶出したりすることがあった。そのため、移植すると、播種した細胞が分散してしまい、所望の組織部位に留まることが困難であったりした。
特開2005−261292号公報 特開2006−257014号公報 特開2010−193808号公報 国際公開第2012/070679号パンフレット
コラーゲン成形体の膨潤、又は溶出を防ぐ対策として、コラーゲン又はコラーゲン線維同士を架橋処理することが行われている(特許文献1)。架橋処理方法として、物理的架橋法及び化学的架橋法が知られている。化学的架橋法とは、グルタルアルデヒドに代表されるアルデヒド類、又はカルボジイミド類等の架橋剤を用いて架橋する方法であり、物理的架橋法とは、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射、又は熱脱水等によって架橋する方法である。
しかし、コラーゲン成形体を化学的架橋した場合は、架橋剤または架橋剤の分解物がコラーゲン成形体に残存する可能性があるため、用途によっては不都合なことがあった。例えば、前記細胞培養基材は、細胞と接触させるものであり、その中に化学的架橋に用いる架橋剤または架橋剤の分解物が含まれている場合、細胞の増殖に影響を与える可能性がある。また、再生医療用の足場材料、移植用材料、創傷被覆材、癒着防止材又は薬物輸送担体は、生体内において使用するものであり、架橋剤または架橋剤の分解物による生体内の組織や器官への影響、即ち、毒性・アレルギーなど、が懸念された。
本発明者らは、架橋剤を使用しないコラーゲン成形体(例えば、コラーゲン膜及びコラーゲン多孔体)の物理的架橋法について、鋭意研究した結果、従来のように乾燥したコラーゲン成形体に、γ線照射などの物理的架橋を行った場合、架橋したコラーゲン膜及びコラーゲン多孔体は、液体中又は生体内において、時間の経過とともに溶解し形状を維持することができないことを見出した。特に、細胞の増殖の足場として最適なコラーゲン多孔体は、強度も大きくないため、溶解又は膨潤が大きかった。
従って、本発明の目的は、細胞培養液又は体液等により、溶解、収縮、又は膨張などの変化が起こりにくい、コラーゲン成形体(特には、コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体、及びコラーゲン膜とコラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体)、及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、液体中で溶解、収縮、又は膨張などの変化が起こりにくいコラーゲン成形体について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、コラーゲン膜を液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射などの物理的架橋を行い、重量法による密度が0.4g/cm以上、且つ湿潤下での引張強度を1MPa以上とすることにより、液体中で溶解せず、且つ高強度のコラーゲン膜を製造できることを見出した。更に、コラーゲン膜とコラーゲン多孔体との積層体を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射などの物理的架橋を行うことにより、強度の高いコラーゲン膜と、細胞の増殖の足場として優れたコラーゲン多孔体を含む、液体中での溶解が起きにくいコラーゲン成形体を製造できることを見出した。更に、前記物理的架橋をポリエチレングリコール誘導体の存在下で行うことにより、優れた強度のコラーゲン成形体を得ることができることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]線維化又は非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体であって、前記コラーゲン膜が、液体の存在下でγ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理することによって得られ、重量法による密度が0.4g/cm以上であり、そして湿潤下での引張強度が1MPa以上であることを特徴とする、コラーゲン成形体、
[2]前記コラーゲン成形体が、架橋処理コラーゲン膜と線維化又は非繊維化架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体であって、
前記架橋処理コラーゲン多孔体が、液体の存在下でγ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理することによって得られる、[1]に記載のコラーゲン成形体、
[3]前記架橋処理が、一般式(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して−COOH、−OH、−SH、−NH、−NH−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=CH、及び−CO−C(CH)=CHからなる群から選択される基であり、Yは、単結合、酸素原子(O)、場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基、又は鎖中に酸素原子を含む場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、Zは、単結合、又は場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、そしてnは1〜500の整数である)で表されるポリエチレングリコール誘導体の存在下での架橋処理である、[1]又は[2]に記載のコラーゲン成形体、
[4]前記ポリエチレングリコール誘導体の分子量が1,000〜15,000である、[1]〜[3]のいずれかに記載のコラーゲン成形体、
[5]前記液体のpHが3.0〜10.0である、[1]〜[4]のいずれかに記載のコラーゲン成形体、
[6]前記γ線照射の照射量が、5〜50kGyである、[1]〜[5]のいずれかに記載のコラーゲン成形体、
[7]ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)中に37℃で5日間浸漬した場合の溶解率が10質量%以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載のコラーゲン成形体、
[8]ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)中に37℃で5日間浸漬した後の、浸漬前に対する面積変化率が5%以内である、[1]〜[7]のいずれかに記載のコラーゲン成形体、
[9](1)コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン溶液を成形器内に入れ、コラーゲンを線維化することによって、線維化コラーゲンゲルを成形する工程、(2)前記線維化コラーゲンゲルを、水混和性有機溶媒濃度を段階的に高めた水混和性有機溶媒と水との混合液に順次浸漬して脱塩する工程、(3)前記脱塩した線維化コラーゲンゲルを乾燥し線維化コラーゲン膜を得る工程、及び(4)前記線維化コラーゲン膜を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程、を含む線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法、
[10](1)コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン溶液を成形器内に入れ、コラーゲンを線維化することによって、線維化コラーゲンゲルを成形する工程、(2)前記線維化コラーゲンゲルを、水混和性有機溶媒濃度を段階的に高めた水混和性有機溶媒と水との混合液に順次浸漬して脱塩する工程、(3)前記脱塩した線維化コラーゲンゲルを乾燥し線維化コラーゲン膜を得る工程、(3a)(A)前記線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下の多孔体作製用線維化コラーゲンゲルとを接触させる工程、若しくは、(B)前記線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が5.0質量%以下の多孔体作製用コラーゲン酸性溶液とを接触させる工程、(3b)前記接触物を凍結乾燥して積層体を得る工程、(4)前記積層体を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程を含む、線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含む[9]に記載のコラーゲン成形体の製造方法、
[11]前記乾燥工程(3)が、脱塩した線維化コラーゲンゲルを、上部及び下部を被覆して通気性を遮断した被覆上部と被覆下部との間に、非被覆の外周部を設け、当該外周部から脱媒して乾燥させる工程である、[9]又は[10]に記載のコラーゲン成形体の製造方法、
[12]前記液体、前記コラーゲン溶液、前記多孔体作製用線維化コラーゲンゲル、及び前記多孔体作製用コラーゲン酸性溶液からなる群から選択される少なくとも1つが、一般式(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して−COOH、−OH、−SH、−NH、−NH−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=CH、及び−CO−C(CH)=CHからなる群から選択される基であり、Yは、単結合、酸素原子(O)、場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基、又は鎖中に酸素原子を含む場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、Zは、単結合、又は場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、そしてnは1〜500の整数である)で表されるポリエチレングリコール誘導体を含む、[9]〜[11]のいずれかに記載のコラーゲン成形体の製造方法、
[13](1)酸性液にコラーゲンを溶解し、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン酸性溶液を得る工程、(2)前記コラーゲン酸性溶液を成形器に入れ、成形する工程、(3)前記コラーゲン酸性溶液を乾燥し非線維化コラーゲン膜を得る工程、及び(4)前記非線維化コラーゲン膜を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程、を含む非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法、
[14](1)酸性液にコラーゲンを溶解し、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン酸性溶液を得る工程、(2)前記コラーゲン酸性溶液を成形器に入れ、成形する工程、(3)前記コラーゲン酸性溶液を乾燥し非線維化コラーゲン膜を得る工程、(3a)(A)前記非線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下の多孔体作製用線維化コラーゲンゲルとを接触させる工程、若しくは(B)前記非線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が5.0質量%以下の多孔体作製用コラーゲン酸性溶液とを接触させる工程、(3b)前記接触物を凍結乾燥して積層体を得る工程、(4)前記積層体を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程、を含む、非線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含む[13]に記載のコラーゲン成形体の製造方法、
[15]前記液体、前記コラーゲン膜作製用コラーゲン酸性溶液、前記多孔体作製用線維化コラーゲンゲル、及び前記多孔体作製用コラーゲン酸性溶液からなる群から選択される少なくとも1つが、一般式(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して−COOH、−OH、−SH、−NH、−NH−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=CH、及び−CO−C(CH)=CHからなる群から選択される基であり、Yは、単結合、酸素原子(O)、場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基、又は鎖中に酸素原子を含む場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、Zは、単結合、又は場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、そしてnは1〜500の整数である)で表されるポリエチレングリコール誘導体を含む、[13]又は[14]に記載のコラーゲン成形体の製造方法、及び
[16][9]〜[15]のいずれかに記載の製造方法によって得ることのできるコラーゲン成形体、
に関する。
本発明の架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体は、液体中で溶解しにくく、従って液体中でまたは細胞培養中に、収縮、又は膨潤などの体積変化が起こりにくい。また、本発明の架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体によれば、強度の高いコラーゲン膜と、細胞の増殖の足場として優れたコラーゲン多孔体を含み、溶液中での膨潤、及び溶解が起きにくいことから、再生医療用の足場材料、移植用材料、創傷被覆材、癒着防止材又は薬物輸送担体として、好適に用いることができる。また、本発明のコラーゲン成形体は、物理的架橋処理によって滅菌されており、細胞培養基材としての使用、又は生体内での使用に適している。
また、本発明の成形体は、ポリエチレングリコール誘導体の存在下で架橋処理されることによって、ポリエチレングリコール誘導体がコラーゲン分子または線維同士を架橋し、強度が向上する。更に、コラーゲン分子又は線維に結合したポリエチレングリコール誘導体の片側末端に成長因子またはペプチドなどを結合させるのに好適である。
更に、本発明の製造方法は本発明のコラーゲン成形体を製造することができる。従って、本発明の製造方法によって得られるコラーゲン成形体は、例えば細胞培養液中に数日間浸漬しても分解し難く且つ膨張や収縮が極めて少ない。従って、細胞培養基材、再生医療用の足場材料、移植用材料、創傷被覆材、癒着防止材、又は薬物輸送担体等に適した材料である。
実施例1(25kGy照射)及び比較例1(未照射)で得られたコラーゲン成形体の引張応力を測定した結果を示すグラフである。 実施例1(25kGy照射)、実施例2(10kGy照射)及び比較例1(未照射)で得られたコラーゲン成形体を、リン酸緩衝液(PBS)中において、37℃で5日間インキュベートした後のPBS中の分子量分布をGPCで分析した結果を示すグラフである。 架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体の模式図及び写真を示した図である。 実施例3で得られた、架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体を、PBS中で37℃、24時間インキュベーションした場合の、変形を検討した写真である。 実施例3で得られた、架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の、コラーゲン膜(緻密面)及びコラーゲン多孔体(多孔面)の電子顕微鏡写真である。 実施例4、5、又は6の引張強度試験に用いる試料形状の模式図である。
[1]コラーゲン成形体
本発明のコラーゲン成形体は、線維化又は非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体である。そして、前記コラーゲン膜は、液体の存在下でγ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理することによって得られ、重量法による密度が0.4g/cm以上であり、そして湿潤下での引張強度が1MPa以上である。
また本発明のコラーゲン成形体は、架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含んでもよい。そして、前記架橋処理コラーゲン多孔体は、液体の存在下でγ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理することによって得られるものである。
本発明のコラーゲン成形体は、限定されるものではないが、後述のコラーゲン成形体の製造方法によって製造することができる。
以下、上記いずれかに係る本発明のコラーゲン成形体を「本発明の成形体」と称する。
本発明の成形体に含まれる架橋処理コラーゲン膜としては、線維化架橋処理コラーゲン膜又は非線維化架橋処理コラーゲン膜を挙げることができる。線維化架橋処理コラーゲン膜、及び非線維化架橋処理コラーゲン膜は、後述のコラーゲン成形体の製造方法に記載の手順に従って製造することができる。
また、本発明の成形体に含まれる架橋処理コラーゲン多孔体としては、線維化架橋処理コラーゲン多孔体又は非線維化架橋処理コラーゲン多孔体を挙げることができる。線維化架橋処理コラーゲン多孔体及び非線維化架橋処理コラーゲン多孔体は、後述のコラーゲン成形体の製造方法に記載の手順に従って製造することができる。
《架橋処理コラーゲン膜》
本発明の成形体に含まれる架橋処理コラーゲン膜は、重量法による密度が0.4g/cm以上であり、好ましくは0.5g/cm以上であり、より好ましくは0.6g/cm以上であり、更に好ましくは0.65g/cm以上であり、最も好ましくは0.70g/cm以上である。密度が0.4g/cm未満であると架橋の効果を十分に得ることができず、機械的強度が不足することがある。また、密度の上限は、特に限定されるものではないが、1.2g/cm以下が好ましく、1.15g/cm以下がより好ましく、1.1g/cm以下が最も好ましい。重量法による密度は、架橋処理コラーゲン膜の重量を体積で割ることによって計算することができる。
本発明の成形体に含まれる架橋処理コラーゲン膜は、湿潤下での引張強度が1MPa以上であり、より好ましくは2.0MPa以上であり、更に好ましくは2.5MPa以上であり、最も好ましくは3.0MPa以上である。湿潤下での引張強度が1MPa以上であることによって、溶液中又は生体内において、十分な強度を得ることができる。例えば、架橋処理コラーゲン膜の強度については、架橋処理コラーゲン膜を、D−PBS中に20℃で、1日間浸漬した後に湿潤状態のまま測定した該膜の引張強度を測定することによって評価することができる。平均膜厚が1μm〜2mmの範囲内において引張強度が1MPa以上であれば、強度が高いと判断する目安となる。ここで、平均膜厚とは、最低5箇所の膜厚を計測して求めた平均値である。
具体的には、引張強度試験は、常法に従って行うことができる。すなわち、幅1〜10mm、長さ10〜30mmの試験片を、ロードセル間の距離が5〜10mmとなるように両端を固定し、速度0.5mm/分で引っ張り、破断時の伸び(%)及び応力(g)を、引張試験機(Orientec;STA−1150)を用いて測定する。測定は、5個の試験片について行い、その平均値を求める。なお、試験片の厚みは、マイクロメータにより計測し、引張強度を計算する。
試験片の形態は、例えば幅10mm×長さ20mmの長方形でもよく、図6に示したように、幅10mm×長さ20mmで、中央部分において幅を10mmから5mmに狭くした形状でもよい。引張強度は、試験片の厚み、及び幅から計算することができる。
架橋処理コラーゲン膜の乾燥状態における引張強度は、30MPa以上が好ましく、35MPa以上がより好ましく、45MPa以上が更に好ましい。30MPa未満では、生体材料として使用した場合に、十分な強度及び操作性を得ることができないからである。また、引張強度の上限は、特に限定されるものではないが、200MPa以下が好ましく、150MPa以下がより好ましく、120MPa以下が最も好ましい。200MPaを超えると、例えば移植した際に周辺組織と結合しないことや周辺組織を損傷してしまうことがある。
架橋処理コラーゲン膜の平均膜厚は、例えば1μm〜2mmであり、好ましくは5μm〜1mmであり、より好ましくは10〜500μm、更に好ましくは20〜300μmであり、最も好ましくは50〜200μmである。1μm未満であると、強度が著しく低下したり、均一な膜が得られないことがあり、2mmを超えると乾燥工程に時間がかかったり、均一な膜成形が困難であったりすることがある。
平均膜厚は、以下の方法によって測定することができる。マイクロメータを用いて最低5点の膜厚を計測して、その平均値を出すことで平均膜厚を測定できる。
架橋処理コラーゲン膜の膜厚のバラツキは、平均膜厚の±30%以内であることが好ましい。膜厚のバラツキが30%を超えると、膜に強度の強い部分と強度の弱い部分とが混在し、引張強度などの機械的強度が低下する原因となることがある。
膜厚のバラツキは、以下の方法によって測定することができる。マイクロメータを用いて、最低5点の膜厚を計測して、その標準偏差を算出することでバラツキを数値化できる。
(非線維化架橋処理コラーゲン膜の物性)
以下に、線維化架橋処理コラーゲン膜と異なる非線維化架橋処理コラーゲン膜の物性について説明する。
非線維化架橋処理コラーゲン膜の表面粗さは、極めて低いものであるが、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは20nm以下であり、最も好ましくは10nm以下である。30nmを超えると、コラーゲン分子だけではなく線維が混合していることがある。非線維化架橋処理コラーゲン膜の表面粗さが小さく表面が滑らかであるのは、コラーゲン細線維を含まず、表面にコラーゲン線維による凹凸の構造が現れないからである。表面が滑らかであることによって、非線維化架橋処理コラーゲン膜は、光を散乱せずに透過性の優れた膜である。
表面粗さは、以下の方法によって測定することができる。市販のカンチレバー及び原子間力顕微鏡を用いて表面粗さを測定できる。測定範囲を4μmとして、一定速度(0.7Hzから1.2Hz)で走査させ、高さ像(立体像)を計測する。更に原子間力顕微鏡に付随しているソフトウェアで面粗さ(表面粗さ)を計算することで得られる。
非線維化架橋処理コラーゲン膜の透過率(透明度)は、極めて高いものであり、例えば、細胞培養用のポリスチレンのプレートの透過率に近いものである。非線維化架橋処理コラーゲン膜の透過率は、480〜700nmのいずれかの波長における透過率が90%以上でもよいが、500〜700nmの範囲において90%以上であることが好ましく、480〜700nmの範囲において、90%以上であることが更に好ましい。
透過率を測定する膜厚は、特に限定されるものではないが、例えば1μm〜1mmの膜厚の範囲において90%以上の透過率を示す。
透過率は、以下の方法によって測定することができる。非線維化架橋処理コラーゲン膜を細胞培養皿(ポリスチレンディッシュ)に貼り付け、例えばパワースキャンHT(DSファーマバイオメディカル)により波長300〜700nmの範囲でスキャンを行うことによって測定することができる。透過率は、吸光度(O.D.)から次の式、透過率=1/10^O.D.×100で算出することができる。
《架橋》
本発明の成形体に含まれる架橋処理コラーゲン膜は、コラーゲン膜(以下「コラーゲン膜」とは、線維化コラーゲンゲルを乾燥して得られる線維化コラーゲン膜、又はコラーゲン酸性溶液を乾燥して得られる非線維化コラーゲン膜を指す)を液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理することにより、得ることができる。ここで、液体の存在下とは、架橋処理中にコラーゲン膜の表面全体が液体によって覆われている状態を指し、例えば湿潤状態であってもよいが、好ましくはコラーゲン膜全体が水溶液中に浸漬した状態である。従って、コラーゲン膜の表面全体が液体によって覆われている状態である限り、液体の容量も限定されるものではないが、液体の容量がコラーゲン膜の容量に対して2〜100が好ましく、10〜50がより好ましい。
架橋処理は、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって行うが、これら架橋処理を2種以上組み合わせてもよい。これらのうち、透過力が高く、均一に架橋させることができるγ線照射が好ましい。架橋処理においては、高強度の膜が得られるように、照射線量を適宜設定すればよい。なお、線量率が固定の線源を用い、照射時間等の条件を適宜設定すれば、所定の照射線量を簡便に得ることができる。例えば、コバルト60線源を用いた場合、照射線量5〜75kGyで架橋処理を行うことができるが、照射強度は5〜50kGyが好ましく、10〜50kGyがより好ましく、15〜30kGyが更に好ましい。
照射条件を適宜設定すれば架橋処理と同時に滅菌も行うことができるため、架橋中及び架橋後の密封状態を保つように包装体を適宜選択すれば、滅菌済み製品として市場に流通させることもできる。
(液体)
本発明の架橋処理に用いるコラーゲン膜を浸漬する液体は、水を含んでいる限りにおいて限定されるものではなく、例えば水又は緩衝液などの水性溶媒を挙げることができる。更に、水又は緩衝液に、有機溶媒を添加した水性溶媒を用いることもできる。
コラーゲンは、酸性条件では可溶性であり、適度なイオン強度及び適度なpH(中性からアルカリ性)において線維化する。従って、線維化コラーゲン膜を浸漬する液体(水性溶媒)のpHは好ましくはpH3.0〜10.0であり、具体的には塩を含む中性塩水溶液、又はアルカリ性塩水溶液が好ましい。中性塩水溶液またはアルカリ性塩水溶液は、線維化コラーゲン膜が溶解し難いものであることが好ましいが、比較的溶解し易い水溶液を用いたとしても、水溶液との接触後速やかに架橋処理すればよい。前記中性塩水溶液のpHは、例えば6.0〜8.0であり、アルカリ性塩水溶液のpHは、例えば8.0〜10.0の範囲である。
より具体的には、緩衝液として、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、又はクエン酸緩衝液等を用いることができる。また、それらの生理食塩水であるPBS、D−PBS、トリス緩衝生理食塩水、又はHEPES緩衝生理食塩水を用いてもよい。
一方、非線維化コラーゲン膜を浸漬する液体は、線維化を防ぐために、酸性の水性溶媒が好ましい。前記液体(水性溶媒)のpHは、好ましくはpH2.0〜6.0であり、より好ましくはpH3.0〜5.0である。
例えば、酸性の水性溶媒としては、二酸化炭素が溶解した、酸性水、酸性緩衝液、又は有機溶媒添加酸性水性溶媒などを挙げることができる。前記酸性水、酸性緩衝液、又は有機溶媒添加酸性水性溶媒は、水、緩衝液若しくは有機溶媒添加水性溶媒に二酸化炭素をバブリングする方法、又は水、緩衝液若しくは有機溶媒添加水性溶媒にドライアイスを投入する方法によって作製することができる。二酸化炭素の溶解量は、特に限定されないが、pHを3.0〜5.0とする溶解量が好ましい。
また、酸性の緩衝液の場合、二酸化炭素を含まないものを用いることもでき、酸性緩衝液としては、例えば酢酸緩衝溶液、クエン酸緩衝溶液、又は塩酸を挙げることができる。
《架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体》
本発明の成形体は、架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含んでもよい。架橋処理コラーゲン膜は、前記の線維化架橋処理コラーゲン膜、又は非線維化架橋処理コラーゲン膜を用いることができる。また、架橋処理コラーゲン多孔体としては、線維化架橋処理コラーゲン多孔体、又は非線維化架橋処理コラーゲン多孔体を用いることができる。
従って、積層体の組み合わせとしては、線維化架橋処理コラーゲン膜及び線維化架橋処理コラーゲン多孔体、線維化架橋処理コラーゲン膜及び非線維化架橋処理コラーゲン多孔体、非線維化架橋処理コラーゲン膜及び線維化架橋処理コラーゲン多孔体、又は非線維化架橋処理コラーゲン膜及び非線維化架橋処理コラーゲン多孔体の4つの組み合わせを挙げることができる。
架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体は、特に限定されるものではないが、例えばコラーゲン膜と、線維化コラーゲンゲル若しくはコラーゲン酸性溶液とを接触させた接触物を、液体の存在下で架橋処理することによって得ることができる。架橋処理方法については、前記「《架橋》」における「コラーゲン膜」を「接触物」に読み替えればよい。また、用いる液体も前記「(液体)」に記載のものと同様のものを用いればよく、具体的には、積層体の多孔体が線維化架橋処理コラーゲン多孔体の場合は前記線維化コラーゲン膜に好適な液体と同様のものを、非線維化架橋処理コラーゲン多孔体の場合は前記非線維化コラーゲン膜に好適な液体と同様のものを用いればよい。
《架橋処理コラーゲン多孔体の物性》
前記積層体に含まれる架橋処理コラーゲン多孔体(線維化架橋処理コラーゲン多孔体、又は非線維化架橋処理コラーゲン多孔体)の物性は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、以下の物性を有するものが好ましい。
(気孔率)
架橋処理コラーゲン多孔体は、例えば気孔率80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、最も好ましくは90%以上である。気孔率が80%以上であると、多孔体内部への細胞や組織の侵入性に優れているからである。
(水浸透性)
架橋処理コラーゲン多孔体は、適当な水浸透性を有することが好ましい。この水浸透性は、細胞培養を行う際に、多孔体の中にまで細胞が侵入できるかどうかの目安として重要であるからである。
(粘弾性特性)
架橋処理コラーゲン多孔体の弾性値は、特に限定されるものではないが、2.0kPa〜10MPaが好ましく、20kPa〜2MPaがより好ましい。2.0kPa〜10MPaであることによって、細胞を播種した際に多孔体内部への侵入性及び操作性に優れているからである。
架橋処理コラーゲン多孔体の粘性値は、特に限定されるものではないが、1.0〜500kPaが好ましく、1.5〜100kPaがより好ましい。1.0〜500kPaであることによって、細胞を播種した際に内部への侵入性及び操作性に優れているからである。
(平均孔径)
架橋処理コラーゲン多孔体の平均孔径は、特に限定されるものではないが、50〜500μmが好ましく、80〜300μmがより好ましい。50〜500μmであることによって、細胞や組織が材料内部に侵入しやすく、細胞培養基材や移植材料として最適であるからである。
架橋処理コラーゲン多孔体の平均孔径は、水銀圧入法又は走査型電子顕微鏡観察によって、測定することができる。以下に走査型電子顕微鏡観察による平均孔径の測定法を記載する。作製した多孔体を任意の高さで断面を作製し、帯電防止のため、白金などによるコーティング(20nm以下)を行う。観察の際には、加速電圧10kV以下で行う。倍率は、1000倍以下が好ましく、100個以上の孔径を計測する。これにより、孔径の分布を計算し、その平均値を求めることで平均孔径を測定することが可能である。
(ポリエチレングリコール誘導体)
前記コラーゲン膜の架橋処理は、ポリエチレングリコール誘導体の存在下で行うことも好ましい。ポリエチレングリコール誘導体は、一般式(1)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して−COOH、−OH、−SH、−NH、−NH−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=CH、及び−CO−C(CH)=CHからなる群から選択される基であり、Yは、単結合、酸素原子(O)、場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基、又は鎖中に酸素原子を含む場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、Zは、単結合、又は場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、そしてnは1〜500の整数である)で表されるポリエチレングリコール誘導体である。
又はRは、前記の基である限りにおいて限定されるものではないが、好ましくは−SH、−NH、−NH−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=CH、又は−CO−C(CH)=CHである。
Yは限定されるものではないが、好ましくは、単結合、酸素原子(O)、鎖中に酸素原子を含む炭素数1〜5のアルキレン基である。鎖中に酸素原子を含む炭素数1〜5のアルキレン基に含まれる酸素原子の数は限定されるものではないが、好ましくは2以下であり、より好ましくは1である。酸素原子はアルキレン基の主鎖の任意の位置に含まれてもよいが、重合部分に直接結合することが好ましい。従って、鎖中に酸素原子を含む炭素数1〜5のアルキレン基としては、例えば(R)−CH−O−、(R)−CH−CH−O−、(R)−CH−CH−CH−O−を挙げることができる。
Zは限定されるものではないが、好ましくは単結合、又は炭素数1〜5のアルキレン基である。炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、又はブチレン基を挙げることができる。
本明細書において、「場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基」とは、アルキレン基の水素原子が、置換されたアルキレン基を意味する。置換基は限定されるものではないが、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜2のアルキル基である。
具体的なポリエチレングリコール誘導体としては、ポリエチレングリコールビスアミン、ポリエチレングリコールビスカルボキシオキソプロピルアミノ、ポリエチレンジチオール、ポリエチレングリコールジアクリレート、又はポリエチレングリコールジメタクリレートを挙げることができる。
前記ポリエチレングリコール誘導体の分子量は、特に限定されるものではないが、1,000〜15,000が好ましく、2,000〜13,000がより好ましく、4,000〜10,000が更に好ましい。分子量が1,000〜15,000であることにより架橋距離が長くなり、強度を向上させることが可能だからである。
本発明の成形体の物性は特に限定されるものではないが、例えば、以下の物性を有するものが好ましい。
(溶解率)
本発明の成形体は、細胞培養液や体液等により分解し難く且つ収縮又は膨張し難いという優れた特性を有するものである。細胞培養液や体液等により分解し難いという特性は、例えば、コラーゲン成形体を37℃のPBSに浸漬した条件下において、GPCによってPBS中の分子量分布を測定することによって、または、本発明の成形体の溶解率を測定することによって評価することができる。例えば、本発明の成形体をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)中に37℃で5日間浸漬した場合の溶解率を測定する方法が挙げられ、溶解率は特に限定されるものではないが10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは7質量%であり、更に好ましくは5質量%である。
(面積変化率)
また、本発明の成形体の収縮又は膨張し難いという特性は、例えば、本発明の成形体をD−PBS中に37℃で、5日間浸漬した後の浸漬前に対する面積変化率を求めることによって評価することができる。面積変化率は特に限定されるものではないが、5%以内であれば、細胞培養液や体液等により収縮又は膨張し難いと判断する目安となる。面積変化率は4%以内であることがより好ましく、3%以内であることが更に好ましい。
《変性温度》
コラーゲンは一般的に、温度が上昇するとコラーゲンの3重らせん構造が破壊されて、ゼラチンとなるが、この3重螺旋構造が破壊される温度を変性温度と言う。
本発明の成形体に含まれる架橋処理コラーゲン膜または架橋処理コラーゲン多孔体の変性温度は、その構造により架橋する前のコラーゲンの変性温度と比較すると有意に上昇しているものである。すなわち、本発明の成形体は、温度に対しても耐性を有しているともいえる。
本発明の成形体に含まれる架橋処理コラーゲン膜または架橋処理コラーゲン多孔体の変性温度は、特に限定されるものではないが、架橋する前のコラーゲンの変性温度より、好ましくは3℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは8℃以上高いものである。好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上、最も好ましくは25℃以上高いものである。変性温度が、高いことにより熱への耐性が高まり、本発明の用途が広がるからである。上限は特に限定されないが、200℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
本発明の成形体には、本発明の成形体の機能が維持される限りにおいて、架橋処理コラーゲン膜及び架橋処理コラーゲン多孔体に加えて、その他原料を含有することができる。その他原料としては、コラーゲン、多糖類(例えばセルロース、澱粉(スターチ)、マンナン、アガロース、デキストラン、デキストリン、アミロペクチン、アミロース、プルラン、キサンガム、グアールガム、アルギン酸、キチン若しくはキトサン、セルロース、カードラン又はそれらの誘導体)、ヒアルロン酸、デルタマン硫酸、ヘパリン、ヘパランリ硫酸、ケラタン硫酸、又はコンドロイチン硫酸などを挙げることができる。
その他原料の含有量は特に限定されるものではないが、架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体の合計量に対して、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が最も好ましい。30質量%を超えると、力学的特性の低下が生じるためである。
架橋処理コラーゲン膜または架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体にその他原料を含有させて本発明の成形体とする方法については、本発明の成形体の機能が維持される限りにおいて特に制限は無く、例えば、架橋処理コラーゲン膜又は架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体をその他原料の溶解液に含浸、塗布又は噴霧した後、乾燥する方法が挙げられる。
《コラーゲン》
ここで、架橋処理コラーゲン膜及び架橋処理コラーゲン多孔体の作製に用いる出発原料としてのコラーゲン、並びに、その他原料として含有させることができるコラーゲンについて説明する。
前記コラーゲンは、特に限定されるものではないが、例えばI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、IX型コラーゲン、X型コラーゲン、XI型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン、XX型コラーゲン、XXI型コラーゲン、XXII型コラーゲン、XXIII型コラーゲン、XXIV型コラーゲン、XXV型コラーゲン、XXVI型コラーゲン、XXVII型コラーゲン、XXVIII型コラーゲン又はこれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
前記のコラーゲンのうち、例えばI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、及びV型コラーゲンは線維型コラーゲンであるが、いずれも原料として使用することができる。更に、これらのコラーゲンのうち、実際に汎用されているのは、I型コラーゲン又はII型コラーゲンである。これらのコラーゲンは、精製・分離するための原料を大量に入手することが可能であり、産業上の利用に適している。
コラーゲンを取得する動物種も、特に限定されるものではなく、例えば、哺乳類由来コラーゲン(例えば、ウシ由来コラーゲン、ブタ由来コラーゲン、ヒツジ由来コラーゲン、ヤギ由来コラーゲン、又はサル由来コラーゲン)、鳥類由来コラーゲン(例えば、ニワトリ由来コラーゲン、ガチョウ由来コラーゲン、アヒル由来コラーゲン、又はダチョウ由来コラーゲン)、爬虫類由来コラーゲン(例えば、ワニ由来コラーゲン)、両生類由来コラーゲン(例えば、カエル由来コラーゲン)、魚類由来コラーゲン(例えば、テラピア由来コラーゲン、タイ由来コラーゲン、ヒラメ由来コラーゲン、チョウザメ由来コラーゲン、サメ由来コラーゲン、又はサケ由来コラーゲン)、又は無脊椎動物由来コラーゲン(例えば、クラゲ由来コラーゲン)、を挙げることができる。またコラーゲンを得る部位も限定されるものではなく、例えば、皮膚、骨、皮、筋肉、軟骨、鱗、又は浮袋を挙げることができる。更に様々な細胞から抽出・精製されたコラーゲン、遺伝子組み換え操作により製造される人工コラーゲン、又はコラーゲンの側鎖に他の官能基が結合した修飾コラーゲンなども挙げることができる。前記修飾コラーゲンとしては、例えばメチル化コラーゲン、エチル化コラーゲン、プロピル化コラーゲン、スクシニル化コラーゲン、エステル化コラーゲン、メチルエステル化コラーゲン、エチルエステル化コラーゲン、又はアシル化コラーゲンを挙げることができる。
本発明に用いるコラーゲンの1例として、魚類由来コラーゲンについて以下に説明する。魚類由来コラーゲンとしては、特に限定されるものではないが、I型又はII型のコラーゲンを挙げることができる。I型コラーゲンとしては、魚鱗由来コラーゲンが好ましい。魚類の鱗由来のコラーゲンは、他のコラーゲンと比較して線維化しやすく、線維形成速度が著しく速いからである。更に、魚鱗由来コラーゲンから得られた線維化コラーゲン膜は線維間の相互作用が強いため、特に高い機械強度が得られると考えられる。魚類由来コラーゲンを取得する魚類の種類としては、例えば、テラピア、ゴンズイ、ラベオ・ロヒータ、カトラ、コイ、雷魚、ピラルク、タイ、ヒラメ、サメ、及びサケなどを挙げることができるが、変性温度の観点から、水温の高い川、湖沼、又は海に生息する魚類が好ましい。このような魚類として、具体的には、オレオクロミス属の魚類を挙げる事ができ、特にはテラピアが好ましい。オレオクロミス属の魚類からは、変性温度が比較的高いコラーゲンを取得でき、例えば日本や中国で食用として養殖されているナイルテラピア(Oreochromis niloticus)は入手が容易であり、大量のコラーゲンを取得することができる。
魚類由来コラーゲンを取得する魚の部位も、限定されるものではない。例えば、鱗、皮、骨、軟骨、ひれ、筋肉及び臓器(例えば、浮き袋)等を挙げることができるが、鱗が好ましい。鱗は、魚臭の原因となる脂質が少ないからである。また、魚類の鱗由来のコラーゲンは、細胞との接着性に優れているからである。特に、魚鱗由来のコラーゲンは、分子間の相互作用が強いと考えられ、強度の高い成形体を得ることができる。
また、II型の魚類由来コラーゲンとして、チョウザメ由来コラーゲンを挙げることができる。チョウザメは、チョウザメ亜目(Acipenseroidei)に属し、2科6属27種に分類されている。2つの科はチョウザメ科(2亜科、4属、25種)とヘラチョウザメ科(2属、2種)とに分類される。
チョウザメ科のAcipenserinae亜科のチョウザメ属(Acipenser属)には、Acipenser baeri、Acipenser brevirostrum、Acipenser dabryanus(ダブリーチョウザメ)、Acipenser fulvescens(レイクチョウザメ)、Acipenser gueldenstaedti(ロシアチョウザメ)、Acipenser medirostris(ミドリチョウザメ)、Acipenser mikadoi(ミカドチョウザメ)、Acipenser naccarii(アドリアチョウザメ)、Acipenser nudiventris、Acipenser oxyrinchus、Acipenser persicus(ペルシャチョウザメ)、Acipenser ruthenus(コチョウザメ)、Acipenser schrencki(アムールチョウザメ)、Acipenser sinensis(カラチョウザメ)、Acipenser stellatus、Acipenser sturio(バルトチョウザメ)、及びAcipenser transmontanus(シロチョウザメ)の17種が含まれる。チョウザメ科のAcipenserinae亜科のPseudoscaphirhynchus属には、Pseudoscaphirhynchus fedtschenkoi、Pseudoscaphirhynchus hermannii、及びPseudoscaphirhynchus kaufmanniの3種が含まれる。チョウザメ科のAcipenserinae亜科のScaphirhynchus属には、Scaphirhynchus albus、Scaphirhynchus platorynchus、及びScaphirhynchus suttkusiの3種が含まれる。また、チョウザメ科のHusinae亜科のダウリアチョウザメ属(Huso属)には、Huso huso(オオチョウザメ)、及びHuso douricus(ダウリアチョウザメ)の2種が含まれる。
ヘラチョウザメ科には、ヘラチョウザメ属(Polyodon)のPolyodon spathula(ヘラチョウザメ)及びハシナガチョウザメ属(Psephurus)のPsephurus gladius(シナヘラチョウザメ)の2種が含まれる。
また、養殖種としてオオチョウザメの雌とコチョウザメの雄を人工交配して作出されたベステル(Acipenser ruthenus×Huso huso)、その他、人工交配して作出されたチョウザメも含まれる。
本発明に用いる魚類由来コラーゲンを得るためのチョウザメは限定されるものではないが、ベステル又はアムールチョウザメが好ましい。また、II型の魚類由来コラーゲンを抽出する組織も特に限定されるものではないが、吻部軟骨又は脊索が好ましい。
《コラーゲンの取得》
コラーゲンの取得法は、特に限定されることはなく、常法に従えばよい。例えば、特許文献2(特開2006−257014号公報)又は特許文献3(特開2010−193808号公報)等に記載の方法を挙げることができる。取得法の一態様を鱗の例で簡単に説明すると、酸によって脱灰した鱗をペプシン等のプロテアーゼを用いて処理することによりコラーゲンをアテロ化し、必要に応じて塩析等の精製処理を行うことで、酸性溶液で可溶化する可溶化コラーゲンを取得することができる。また、市販の可溶化コラーゲン製品を用いてもよく、例えば魚鱗由来のものとしては、多木化学株式会社製の「セルキャンパス AQ−03A」(コラーゲン濃度が0.30〜0.36%、pH3.0〜5.0の無色透明のコラーゲン溶液)や「セルキャンパス FD−08G」(コラーゲンの凍結乾燥体)が好適である。
[2]コラーゲン成形体の製造方法
本発明の成形体の製造方法によれば、<1>線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体、<2>線維化架橋処理コラーゲン膜と線維化架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体、<3>線維化架橋処理コラーゲン膜と非線維化架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体、<4>非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体、<5>非線維化架橋処理コラーゲン膜と線維化架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体、及び<6>非線維化架橋処理コラーゲン膜と非線維化架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体を製造することができる。
以下に、上記<1>〜<6>の製造方法を説明する。
なお、以下では、<2>と<3>を合わせて、「線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体」と称することがある。また、<5>と<6>を合わせて、「非線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体」と称することがある。
[2−1]線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法(前記<1>)
本発明の線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法は、(1)コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン溶液を成形器内に入れ、コラーゲンを線維化することによって、線維化コラーゲンゲルを成形する工程(以下、成形工程(1)と称することがある)、(2)前記線維化コラーゲンゲルを、水混和性有機溶媒濃度を段階的に高めた水混和性有機溶媒と水との混合液に順次浸漬して脱塩する工程(以下、脱塩工程(2)と称することがある)、(3)前記脱塩した線維化コラーゲンゲルを乾燥し線維化コラーゲン膜を得る工程(以下、乾燥工程(3)と称することがある)、及び(4)前記線維化コラーゲン膜を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程(以下、架橋工程(4)と称することがある)、を含む。成形工程(1)、脱塩工程(2)、乾燥工程(3)、及び架橋工程(4)は、この順番で行うことが好ましいが、線維化架橋処理コラーゲン膜が得られる限りにおいて限定されるものではなく、架橋工程(4)を脱塩工程(2)の前に行うことも可能である。すなわち、成形工程(1)、架橋工程(4)、脱塩工程(2)、乾燥工程(3)の順番に行うことにより、線維化架橋処理コラーゲン膜を得ることができる。実施例4に示すように、脱塩工程(2)及び/又は乾燥工程(3)の前に架橋工程(4)を行った線維化架橋処理コラーゲン膜は、高い引張強度を示す。従って、線維化架橋処理コラーゲン膜の引張強度の向上の観点において、脱塩工程(2)及び/又は乾燥工程(3)の前に架橋工程(4)を行うことが好ましい。これらの成形工程(1)、脱塩工程(2)、乾燥工程(3)、及び架橋工程(4)は、前記<2>と<3>を合わせて説明する、以下の[2−2]線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法における各工程と基本的に共通である。
[2−2]線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法(前記<2>及び<3>)
本発明の線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法は、(1)コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン溶液を成形器内に入れ、コラーゲンを線維化することによって、線維化コラーゲンゲルを成形する工程、(2)前記線維化コラーゲンゲルを、水混和性有機溶媒濃度を段階的に高めた水混和性有機溶媒と水との混合液に順次浸漬して脱塩する工程、(3)前記脱塩した線維化コラーゲンゲルを乾燥し線維化コラーゲン膜を得る工程、(3a)(A)前記線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下の多孔体作製用線維化コラーゲンゲルとを接触させる工程、若しくは(B)前記線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が5.0質量%以下の多孔体作製用コラーゲン酸性溶液とを接触させる工程(以下、接触工程(3a)と称することがある)、(3b)前記接触物を凍結乾燥して積層体を得る工程(以下、凍結乾燥工程(3b)と称することがある)、及び(4)前記積層体を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程を含む。前記成形工程(1)、脱塩工程(2)、乾燥工程(3)、接触工程(3a)、凍結乾燥工程(3b)、及び架橋工程(4)は、この順番で行うことが好ましいが、積層体が得られる限りにおいて、その順番及び回数は限定されるものではなく、例えば1回目の架橋工程(4)を脱塩工程(2)の前に行い、更に凍結乾燥工程(3b)の後に2回目の架橋工程(4)を行うことも可能である。すなわち、成形工程(1)、架橋工程(4)、脱塩工程(2)、乾燥工程(3)、接触工程(3a)、凍結乾燥工程(3b)、及び架橋工程(4)の順番に行うことにより、積層体を得ることができる。線維化架橋処理コラーゲン膜の引張強度の向上の観点において、脱塩工程(2)及び/又は乾燥工程(3)の前に、線維化架橋処理コラーゲン膜の架橋を行ことが好ましい。
本製造方法によって、線維化架橋処理コラーゲン膜及び線維化架橋処理コラーゲン多孔体の組み合わせの積層体を含むコラーゲン成形体、又は線維化架橋処理コラーゲン膜及び非線維化架橋処理コラーゲン多孔体の組み合わせの積層体を含むコラーゲン成形体を製造することができる。
以下に、「[2−1]線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法」及び「[2−2]線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法」の工程について説明する。
《成形工程(1)》
成形工程(1)は、コラーゲンの濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン溶液を成形器内に入れ、コラーゲンを線維化することによって、線維化コラーゲンゲルを成形する工程である。コラーゲンの濃度は、0.5質量%以上であれば、限定されるものではないが、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。
コラーゲンを線維化させる方法は、コラーゲンの濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下である限りにおいて特に限定されることはなく、常法に従えばよい。一般に広く知られている方法としては、コラーゲンを溶解させた酸性溶液を適度なイオン強度及びpHとすることでコラーゲンを線維化させる方法である。線維化には、適当な緩衝液を添加してpHを中性付近にする方法が簡便である。緩衝液としては前記作用を有するものであれば特に限定はされず、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等が例示でき、それらの生理食塩水であってもよい。例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)、トリス緩衝生理食塩水、HEPES緩衝生理食塩水等である。これらのうち、特に生体系用途に用いる場合は、D−PBSが好ましい。pH及びイオン強度は、適宜決定することが可能であるが、例えばコラーゲンを溶解させた酸性溶液にD−PBSの2.5〜10倍程度の濃縮液を添加して、コラーゲンを線維化させる方法が挙げられる。
コラーゲンの線維化を膜形成に適した成形器内で行うことにより、線維化コラーゲンゲルを得る。例えば、細胞培養用ウェルプレートに適した膜を作製する場合は、円形に成形できるシリコン製成形器を用いることが好ましい。線維化コラーゲンゲルの調製法の具体例としては、コラーゲンの酸性溶液とD−PBSとを混合した後、成形器内に注入してもよいし、D−PBSを入れた成形器内にコラーゲンの酸性溶液を注入し、成形器内で両溶液を混合してもよい。その後、適度な温度で一定時間保持することによって線維化させる。コラーゲンの酸性溶液の注入量は、必要とする膜厚に応じて適宜調整すればよい。また、線維化における温度及び時間条件についても、目的とする線維化度に応じて適宜設定すればよいが、例えば保持温度は変性温度未満であることが好ましく、具体的には25〜40℃であるのが好ましい。また保持する時間は0.5〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましく、1〜6時間が更に好ましい。
なお、線維化中は上面をシールで覆うなどして水分の蒸発を防ぐための措置を採ることが望ましい。
《脱塩工程(2)》
脱塩工程(2)は、前記線維化コラーゲンゲルを、水混和性有機溶媒濃度を段階的に高めた水混和性有機溶媒と水との混合液に順次浸漬して脱塩する工程である。
前記成形工程(1)で得られた線維化コラーゲンゲルを、水混和性有機溶媒濃度を段階的に高めた水混和性有機溶媒と水との混合液に順次浸漬することにより脱塩する(以下、段階脱塩法と称する)。なお、この脱塩方法では水分も除去することができる。段階脱塩法は、組織切片作成に一般に用いられている手法であり、一例を挙げると、1段回目は水混和性有機溶媒/水が容量比で50/50の混合液(以下、50/50のように表記する)に線維化コラーゲンゲルを浸漬し、2段回目は70/30、3段階目は90/10、4段階目は100/0に順次浸漬する方法である。なお、水混和性有機溶媒/水の混合液の種類と浸漬時間は適宜設定し、効率的に脱塩することが望ましい。本工程では、線維化コラーゲンゲル中の水分が水混和性有機溶媒と完全に置換されることが望ましい。
ここで、水混和性有機溶媒とは、水と任意の割合で相溶する有機溶媒を指し、例えば、炭素数1〜4の低級アルコール、アセトン、アセトニトリル等が例示でき、これらのうち2種以上を用いてもよい。上記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等を例示することができる。上記例示した水混和性有機溶媒のうち、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが好ましく、特に生体系用途への適用を考慮するとエタノールが好ましい。
《乾燥工程(3)》
乾燥工程(3)は、脱塩した線維化コラーゲンゲルを乾燥し、線維化コラーゲン膜を得る工程である。乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば、自然乾燥、通風乾燥、真空乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。
脱塩した線維化コラーゲンゲルは、例えば以下のように乾燥させることができる。面方向の通気性を遮断した状態で乾燥させて線維化コラーゲン膜を得る。ここで、面方向とは膜の上面と下面のことであり、面方向の通気性を遮断した状態で側面からのみ脱媒させることにより、面方向の強度を高くすることができる。通気性を遮断するための被覆材としては膜との密着性が高く且つ膜から剥離しやすい平滑なものであることが望ましく、例えば、ポリスチレン、シリコン、ポリエステル、ポリプロピレン、ガラス等を例示することができるが、これらのうちポリスチレンが特に好ましい。乾燥方法としては、脱媒することができ且つ膜強度の低下が少ない方法であれば特に制限はない。例えば前記脱塩工程における最後の有機溶媒が揮発性のアルコールの場合、常温でアルコールが揮発するため、脱塩した線維化コラーゲンゲルは自然乾燥により容易に乾燥することができる。
《接触工程(3a)》
接触工程(3a)は、線維化コラーゲン膜と、線維化コラーゲンゲルまたはコラーゲン酸性溶液との接触物を作製するための工程である。なお、線維化コラーゲンゲルから線維化コラーゲン多孔体を作製することが可能であり、コラーゲン酸性溶液から非線維化コラーゲン多孔体を作製することができる。線維化コラーゲン膜及び多孔体用コラーゲン液(線維化コラーゲンゲル、又はコラーゲン酸性溶液)を接触させ積層化させる方法として、例えば、(i)多孔体用コラーゲン液を成形器内に入れた後、当該溶液上に線維化コラーゲン膜を載置する方法、(ii)線維化コラーゲン膜を成形器内に入れた後、多孔体用コラーゲン液を注入する方法、(iii)上記(i)の上から更に多孔体用コラーゲン液を注入する方法、(iv)上記(ii)の上に更に線維化コラーゲン膜を載置する方法、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、上記(i)又は(iv)のように、多孔体用コラーゲン液の上に線維化コラーゲン膜を載置する場合、当該膜は多孔体用コラーゲン液中に沈み込むことはほとんど無く、多孔体用コラーゲン液の上面に保持されることが一般的である。ところで、線維化コラーゲン膜と多孔体用コラーゲン液との接触部分では、線維化コラーゲン膜の一部が溶解する場合があり、これが結着性の向上に寄与するものと考えられる。
積層体作製工程(3a)は、多孔体用コラーゲン液が、線維化コラーゲンゲルであるか、又はコラーゲン酸性溶液であるかによって、以下の(A)又は(B)の2つの工程に分けることができる。
(A)多孔体作製用線維化コラーゲンゲル
前記線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下の線維化コラーゲンゲルとを接触させることによって線維化コラーゲン膜と線維化コラーゲンゲルとの接触物を得ることができる。ところで、線維化コラーゲン膜と線維化コラーゲンゲルとの接触部分では、線維化コラーゲン膜の一部が溶解する場合があり、これが結着性の向上に寄与するものと考えられる。なお、前記接触物は、線維化コラーゲン膜と線維化コラーゲン多孔体との積層体の前駆体とも云えるものである。
コラーゲンを線維化させる方法は、コラーゲンの濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下である限りにおいて特に限定されることはなく、常法に従えばよい。一般に広く知られている方法としては、コラーゲンを溶解させた酸性溶液を適度なイオン強度及びpHとすることでコラーゲンを線維化させる方法である。コラーゲンの線維化を多孔体形成に適した成形器内で行うことにより、線維化コラーゲンゲルを得ることができる。線維化に伴う、緩衝液、pH、イオン強度、成形器の選択、温度、及び時間等は前記の「成形工程(1)」の線維化コラーゲン膜の製造方法に準じて行うことができる。
線維化コラーゲンゲルは、後述の凍結乾燥により線維化コラーゲン多孔体となる。
(B)多孔体作製用コラーゲン酸性溶液
前記線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が5.0質量%以下のコラーゲン酸性溶液とを接触させ、そして積層体化することによって線維化コラーゲン膜とコラーゲン酸性溶液との接触物を得ることができる。なお、コラーゲン濃度の下限は0.5質量%であることが好ましい。ところで、線維化コラーゲン膜とコラーゲン酸性溶液との接触部分では、線維化コラーゲン膜の一部が溶解する場合があり、これが結着性の向上に寄与するものと考えられる。なお、前記接触物は、線維化コラーゲン膜と、非線維化コラーゲン多孔体との積層体の前駆体とも云えるものである。
本工程においては、酸性液にコラーゲンを溶解することによってコラーゲン酸性溶液を得ることができる。酸性液は、水性溶媒に二酸化炭素を溶解させて調製する二酸化炭素酸性液でもよく、水性溶媒に無機酸又は有機酸を溶解して調製する酸性液でもよい。二酸化炭素酸性液は、例えば、水性溶媒に二酸化炭素をバブリングする方法、又は水性溶媒にドライアイスを投入する方法によって作製することができる。二酸化炭素の溶解量は、特に限定されないが、コラーゲンを溶解させるためには、溶媒のpHを2〜4とすることが好ましい。従って、pH4以下になるように、二酸化炭素を溶解させることが望ましい。
また、酸性液を調製するための無機酸又は有機酸は、特に限定されるものでないが、pHを4以下にできる酸が好ましく、特には積層体形成後に酸を除去することができる揮発性の酸が好ましい。具体的には塩酸、酢酸、又は炭酸が好ましい。
本明細書において、水性溶媒は水、又は水と有機溶媒とを混合した溶媒を意味する。水性溶媒に含まれる有機溶媒としては水と混和し、コラーゲンを溶解することができれば特に限定されるものではないが、好ましくは低級アルコールであり、例えば炭素数1〜4の低級アルコール(すなわち、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、又はtert−ブチルアルコール)を用いることができる。このような低級アルコールは、製造にかかるコストが比較的低廉である。
また、コラーゲン酸性溶液は、コラーゲンと、二酸化炭素、無機酸、又は有機酸とを水性溶媒に同時に溶解することによって調製することも可能である。
《凍結乾燥工程(3b)》
凍結乾燥工程は、前記接触物を凍結乾燥することにより積層体を得る工程である。凍結乾燥は、水分を含んだものを凍結し、真空下(0.1〜3mmHg)で氷を昇華させることによって、乾燥する方法である。凍結乾燥を行うことにより、前記線維化コラーゲンゲル、又は前記コラーゲン酸性溶液は、多孔体化し、それぞれ線維化コラーゲン多孔体、又は非線維化コラーゲン多孔体(以下、「コラーゲン多孔体」と総称することがある)となることができる。凍結乾燥を行うことにより、コラーゲン線維、コラーゲン細線維などを破壊することなく、多孔体化することが可能である。
《架橋工程(4)》
架橋工程(4)は、前記乾燥工程(3)で得られた線維化コラーゲン膜、又は凍結乾燥工程(3b)で得られた線維化コラーゲン膜とコラーゲン多孔体との積層体(以下、両者を「乾燥体」と総称することがある)を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程である。
本発明の成形体の製造方法における架橋工程は、前記「《架橋》」の項目に記載の方法に従って、行うことができる。
具体的には、以下のように架橋工程を行うことができる。前記液体の存在下とは、架橋処理中に乾燥体の表面全体が液体によって覆われている状態を指し、例えば湿潤状態であってもよいが、好ましくは乾燥体全体が水溶液中に浸漬した状態である。従って、乾燥体の表面全体が液体によって覆われている状態である限り、液体の容量も限定されるものではないが、液体の容量がコラーゲン成形体の容量に対して2〜100が好ましく、10〜50がより好ましい。また、液体の種類も、上述に従い、線維化架橋処理コラーゲン多孔体又は非線維化架橋処理コラーゲン多孔体のいずれを作製するかにより適宜選択すればよい。
架橋工程(4)は、前記一般式(1)で表されるポリエチレングリコール誘導体の存在下で行ってもよい。ポリエチレングリコール誘導体を添加する液として、架橋工程において線維化コラーゲン膜、又は積層体を浸漬する液体、前記コラーゲン溶液、前記多孔体作製用線維化コラーゲンゲル、前記多孔体作製用コラーゲン酸性溶液、又はそれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができるが、前記液体が好ましい。
以下に、非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体、及び非線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法について説明する。
[2−3]非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法(前記<4>)
本発明の非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法は、(1)酸性液にコラーゲンを溶解し、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン酸性溶液を得る工程(以下、コラーゲン溶解工程(1)と称することがある)、(2)前記コラーゲン酸性溶液を成形器に入れ、成形する工程(以下、成形工程(2)と称することがある)、(3)前記成形されたコラーゲン酸性溶液(以下、「非線維化コラーゲン膜の前駆体」と称することがある)を乾燥し非線維化コラーゲン膜を得る工程(以下、乾燥工程(3)と称することがある)、及び(4)前記非線維化コラーゲン膜を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程(以下、架橋工程(4)と称することがある)、を含む。コラーゲン溶解工程(1)、成形工程(2)、乾燥工程(3)、及び架橋工程(4)は、この順番で行うことが好ましいが、非線維化架橋処理コラーゲン膜が得られる限りにおいて限定されるものではなく、架橋工程(4)を乾燥工程(3)の前に行うことも可能である。すなわち、コラーゲン溶解工程(1)、成形工程(2)、架橋工程(4)、及び乾燥工程(3)の順番に行うことにより、非線維化架橋処理コラーゲン膜を得ることができる。非線維化架橋処理コラーゲン膜の引張強度の向上の観点において、乾燥工程(3)の前に架橋工程(4)を行うことが好ましい。これらのコラーゲン溶解工程(1)、成形工程(2)、乾燥工程(3)、及び架橋工程(4)は、前記<5>と<6>を合わせて説明する、以下の[2−4]非線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法における各工程と基本的に共通である。
[2−4]非線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法(前記<5>及び<6>)
本発明の非線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法は、(1)酸性液にコラーゲンを溶解し、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン酸性溶液を得る工程、(2)前記コラーゲン酸性溶液を成形器に入れ、成形する工程、(3)非線維化コラーゲン膜の前駆体を乾燥し非線維化コラーゲン膜を得る工程、
(3a)(A)前記非線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下の多孔体作製用線維化コラーゲン溶液とを接触させる工程、若しくは(B)前記非線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が5.0質量%以下の多孔体作製用コラーゲン酸性溶液とを接触させる工程(以下、接触工程(3a)と称することがある)、(3b)前記接触物を凍結乾燥して積層体を得る工程(以下、凍結乾燥工程(3b)と称することがある)、及び(4)前記積層体を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程、を含む。
前記コラーゲン溶解工程(1)、成形工程(2)、乾燥工程(3)、接触工程(3a)、凍結乾燥工程(3b)、及び架橋工程(4)は、この順番で行うことが好ましいが、積層体が得られる限りにおいて、その順番及び回数は限定されるものではなく、例えば1回目の架橋工程(4)を乾燥工程(3)の前に行い、更に凍結乾燥工程(3b)の後に2回目の架橋工程(4)を行うことも可能である。すなわち、コラーゲン溶解工程(1)、成形工程(2)、架橋工程(4)、乾燥工程(3)、接触工程(3a)、凍結乾燥工程(3b)、及び架橋工程(4)の順番に行うことにより、積層体を得ることができる。非線維化架橋処理コラーゲン膜の引張強度の向上の観点において、乾燥工程(3)の前に線維化架橋処理コラーゲン膜の架橋を行ことが好ましい。
本製造方法によって、非線維化架橋処理コラーゲン膜及び線維化架橋処理コラーゲン多孔体の組み合わせの積層体を含むコラーゲン成形体、又は非線維化架橋処理コラーゲン膜及び非線維化架橋処理コラーゲン多孔体の組み合わせの積層体を含むコラーゲン成形体を製造することができる。
以下に、非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体、及び非線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体の製造方法の工程について説明する。
《コラーゲン溶解工程(1)》
コラーゲン溶解工程(1)は、酸性液にコラーゲンを溶解し、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン酸性溶液を得る工程である。コラーゲン酸性溶液のコラーゲン濃度は、0.5質量%以上であれば、限定されるものではないが、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。
コラーゲン溶解工程においては、酸性液にコラーゲンを溶解させ、コラーゲン酸性溶液を得ることができる。酸性液は、水性溶媒に二酸化炭素を溶解させて調製する二酸化炭素酸性液でもよく、水性溶媒に無機酸又は有機酸を溶解して調製する酸性液でもよい。二酸化炭素酸性液は、例えば、水性溶媒に二酸化炭素をバブリングする方法、又は水性溶媒にドライアイスを投入する方法によって作製することができる。二酸化炭素の溶解量は、特に限定されないが、コラーゲンを溶解させるためには、溶媒のpHを2〜4とすることが好ましい。従って、pH4以下になるように、二酸化炭素を溶解させることが望ましい。
また、酸性液を調製するための無機酸又は有機酸は、特に限定されるものでないが、pHを4以下にできる酸が好ましい。また、積層体形成後に酸を除去することができる揮発性の酸が好ましい。具体的には塩酸、酢酸、又は炭酸が好ましい。
また、コラーゲン酸性液は、コラーゲンと、二酸化炭素、無機酸、又は有機酸とを水性溶媒に同時に溶解することによって調製することも可能である。
《成形工程(2)》
成形工程(2)は、コラーゲン酸性溶液を成形器に入れ、非線維化コラーゲン膜の前駆体を成形する工程である。
例えば、細胞培養用ウェルプレートに適した膜を作製する場合は、円形に成形できるシリコン製成形器を用いることが好ましい。コラーゲン酸性溶液の注入量は、必要とする膜厚に応じて適宜調整すればよい。また、温度及び時間条件についても、適宜設定すればよいが、例えば保持温度は25〜40℃であるのが好ましく、保持する時間は0.5〜12時間であるのが好ましく、1〜6時間であるのがより好ましい。なお、成形中は上面をシールで覆うなどして水分の蒸発を防ぐための措置を採ることが望ましい。
《乾燥工程(3)》
乾燥工程(3)は、非線維化コラーゲン膜の前駆体を乾燥させる工程である。乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば、自然乾燥、通風乾燥、真空乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等が挙げられ、前記「《乾燥工程(3)》」に記載の方法に従って行うことができる。
例えば、非線維化コラーゲン膜の前駆体の乾燥は、以下の通り行うことができる。乾燥は、前駆体の上面から水性溶媒を蒸発させることによって、行うことができる。また、ゲルの上面及び下面を、水性溶媒が通過しない平滑なプレートなど覆い、側面からのみ徐々に脱水させることにより行うことができる。また、平滑なプレートで覆うことによって、得られる非線維化コラーゲン膜の膜厚を均一にすることができ、機械的強度を上昇させることが可能である。プレートは、特に限定されるものではないが、ポリスチレン、シリコーン、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル又はガラスを挙げることができるが、これらのうち剥離性の良いポリスチレンが好ましい。
《接触工程(3a)》
接触工程(3a)は、非線維化コラーゲン膜と、線維化コラーゲンゲルまたはコラーゲン酸性溶液との接触物を作製するための工程である。なお、線維化コラーゲンゲルから線維化コラーゲン多孔体を作製することが可能であり、コラーゲン酸性溶液から非線維化コラーゲン多孔体を作製することができる。非線維化コラーゲン膜及び多孔体用コラーゲン液(線維化コラーゲンゲル又はコラーゲン酸性溶液)を接触させ積層化させる方法として、例えば、(i)多孔体用コラーゲン液を成形器内に入れた後、当該溶液上に非線維化コラーゲン膜を載置する方法、(ii)非線維化コラーゲン膜を成形器内に入れた後、多孔体用コラーゲン液を注入する方法、(iii)上記(i)の上から更に多孔体用コラーゲン液を注入する方法、(iv)上記(ii)の上に更に非線維化コラーゲン膜を載置する方法、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、上記(i)又は(iv)のように、多孔体用コラーゲン液の上に非線維化コラーゲン膜を載置する場合、当該膜はコラーゲン液中に沈み込むことはほとんど無く、多孔体用コラーゲン液の上面に保持されることが一般的である。ところで、線維化コラーゲン膜と多孔体用コラーゲン液との接触部分では、非線維化コラーゲン膜の一部が溶解する場合があり、これが結着性の向上に寄与するものと考えられる。多孔体用コラーゲン液が、線維化コラーゲンゲルであるか、又はコラーゲン酸性溶液であるかによって、以下の(A)又は(B)の2つの工程に分けることができる。
(A)多孔体作製用線維化コラーゲンゲル
本工程は、線維化コラーゲン膜に代えて、非線維化コラーゲン膜を用いることを除いては、前記「(A)多孔体作製用線維化コラーゲンゲル」に記載の方法に従って行うことができる。
(B)多孔体作製用コラーゲン酸性溶液
本工程も、線維化コラーゲン膜に代えて、非線維化コラーゲン膜を用いることを除いては、前記「(B)多孔体作製用コラーゲン酸性溶液」に記載の方法に従って行うことができる。
《架橋工程(4)》
架橋工程(4)は、前記乾燥工程(3)で得られた非線維化コラーゲン膜、又は凍結乾燥工程(3b)で得られた非線維化コラーゲン膜とコラーゲン多孔体との積層体を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程である。
本発明のコラーゲン成形体の製造方法における架橋工程は、前記[2−2]線維化架橋処理コラーゲン膜及び架橋処理コラーゲン多孔体を含むコラーゲン成形体の製造方法の「架橋工程(4)」に記載の方法に従って、行うことができる。
架橋工程(4)は、前記一般式(1)で表されるポリエチレングリコール誘導体の存在下で行ってもよい。ポリエチレングリコール誘導体を添加する液として、架橋工程において非線維化コラーゲン膜、又は積層体を浸漬する液体、コラーゲン膜作製用コラーゲン酸性溶液、前記多孔体作製用線維化コラーゲンゲル、及び前記多孔体作製用コラーゲン酸性溶液、又はそれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができるが、前記液体が好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
なお、実施例において%は、特に断らない限り全て質量%(重量%)を示す。また、特に断らない限り化合物はすべて試薬を用いた。
《実施例1》
コラーゲンとして、テラピアの鱗から製造された多木化学(株)製「セルキャンパス FD−08G」スポンジ品をpH3のHCl溶液に溶解し、コラーゲン濃度が1.1%の無色透明溶液(以下、「コラーゲン溶液A」という)を調製した。コラーゲン溶液Aの9容量部と10倍濃い濃度に作製したD−PBSの1容量部とを混合し、この混合液0.79mLをシリコン製の成形器(直径20mm、高さ2.5mm)に注入し、水分の蒸発を防ぐためにスライドグラスで上面を覆い、25℃・12時間保持して線維化コラーゲンゲルを得た。当該線維化コラーゲンゲルを、エタノール/水の容量比が50/50の混合液(以下、50/50のように表記する)、70/30、90/10、100/0に順次浸漬して、脱塩した後、膜の上下面をポリスチレン板で覆い、側面のみから脱媒させることにより乾燥させて線維化コラーゲン膜を得た。
得られた線維化コラーゲン膜は、引張強度は47MPa、平均膜厚は45μmであった。また、線維化コラーゲン膜の重量を体積で除した密度は0.66g/cmであった。
次に、当該線維化コラーゲン膜をD−PBSに浸漬した状態で、25kGyのγ線照射を行うことにより、線維化架橋処理コラーゲン膜からなるコラーゲン成形体を作製した。
得られたコラーゲン成形体の膜厚は103μm、面積変化率は3.8%(収縮)、引張強度は2.09MPaであった。また、溶出試験による溶出率は3%であった。
《実施例2》
γ線照射を10kGyとした以外は、実施例1の操作を繰り返し、線維化コラーゲン膜からなるコラーゲン成形体を作製した。得られたコラーゲン成形体の膜厚は100μm、面積変化率は0.2%(膨潤)、引張強度は3.7MPaであった。また、溶出試験による溶出率は4%であった。
〔比較例1〕
乾燥させた線維化コラーゲン膜をそのままγ線照射した以外は、実施例1と同様にして架橋線維化コラーゲン膜からなるコラーゲン成形体を作製した。得られたコラーゲン成形体の膜厚は45μmであったが、面積変化率は37℃のD−PBSに浸漬した時点で膜が溶解し始め、3時間後には完全に溶解したため測定できなかった。また、引張強度も1日間のD−PBS浸漬によって膜が脆弱になったため、測定不能であった。また、溶出試験による溶出率は12%であった。
《評価方法》
前記実施例1、実施例2、及び比較例1のコラーゲン成形体の物性は、以下の方法により測定した。
[膜厚の測定法]
実施例1及び実施例2のコラーゲン成形体については、架橋処理後にD−PBSから取り出した湿潤状態のコラーゲン成形体の5箇所の膜厚をマイクロメーターにより計測し、その平均値を求めた。一方、実施例1の架橋処理前の線維化コラーゲン膜及び比較例1のコラーゲン成形体については、乾燥状態で同様に膜厚を測定し、その平均値を求めた。
[面積変化率試験]
コラーゲン成形体をD−PBS中に37℃、5日間浸漬した後、角度を変えて3箇所計測した直径から算出した面積の平均値と、浸漬前に同様に算出した面積の平均値との差を求め、これを浸漬前の面積の平均値で除し、面積変化率として算出した。
[引張強度試験]
コラーゲン成形体をD−PBS中に20℃、1日間浸漬し、D−PBSから取り出した後20分以内に、乾燥させること無く湿潤状態のままで、引張強度測定機(Orientec社製「STA−1150」)により引張強度を測定した。具体的には、ロードセル間の距離が10mmとなるように膜の両端を固定し、0.5mm/分の速度で引張り、破断時の応力を測定した。引張強度の計算は以下の式により求めた。
(式)f=P/S
但し、f:引張強度(MPa)、P:最大荷重(N)、S:断面積(mm
膜5個の平均値を引張強度とした。
[溶出試験]
コラーゲン成形体を6wellプレートに配し、PBS溶液5mL中に37℃で5日間浸漬した。5日後、上澄みのみをサンプリングし、80℃で1日間乾燥した後、重量を測定し、溶出率を算出した。
[GPCによる分子量分布測定]
コラーゲン成形体を20mLのPBSに浸漬し、37℃で5日間インキュベートした。インキュベート後、上澄みを回収しサンプルとした。得られたサンプルの分子量分布を下記の条件で測定し、結果を図2に示した。
・装置:(株)島津製作所製 高速液体クロマトグラフ LC−20Aシステム
・検出器:RI検出器 RID−10A 温度25℃
・カラム:Shodex PROTEIN KW−803
・カラムオーブン:25℃
・流量:1.0mL/min
・溶離液:PBS
・サンプル量:20μL
図2より、25kGy照射の実施例1及び10kGy照射の実施例2ではクロマトグラフの変化が少なかったのに対し、未照射の比較例1はピークが2つ検出され、そのうちの1つはゼラチンに相当する分子量ピークであった。このことより、37℃で5日間のPBS浸漬によって、実施例1及び実施例2のコラーゲン成形体はほとんど分解しなかった又は分解したとしてもわずかな量にとどまったのに対し、比較例1のコラーゲン成形体は分解しやすいものであることが分かった。
《実施例3》
湿潤状態でγ線照射をしない以外は、実施例1の操作を繰り返し、線維化コラーゲン膜を作製した。一方、実施例1に記載のコラーゲン溶液Aを成形器内に入れ、前記線維化コラーゲン膜をコラーゲン溶液Aの上に載置し、しばらく静置して積層体化させた。なお、載置した前記線維化コラーゲン膜は、コラーゲン溶液Aの上面に保持された状態で積層体化した。
次いで、前記積層体を−35℃で約2時間凍結乾燥し、積層体を得た(図3)。乾燥後の積層体は、膜側が緻密構造を有し、反対面には多孔構造を有するものであった(図5)。
次に、当該積層体をD−PBSに浸漬した。このとき、多孔体部分の気泡を平先ピンセットで脱気した。これを25kGyのγ線照射を行うことにより、線維化架橋処理コラーゲン膜と非線維化架橋処理コラーゲン多孔体との積層体からなるコラーゲン成形体を作製した。
当該コラーゲン成形体を37℃条件のD−PBSに24時間浸漬しても殆ど変形は確認されなかった(図4)。
《実施例4》
実施例1と同様の方法で作製した線維化コラーゲンゲルをD−PBSに浸漬させ、25kGyのγ線照射を行うことにより、線維化架橋処理コラーゲンゲルを作製した。これを実施例1と同様のエタノール/水の混合液にて、脱塩した後、側面のみから脱媒させることにより、乾燥させて線維化架橋処理コラーゲン膜からなるコラーゲン成形体を得た。引張強度測定は、D−PBSに浸漬した状態で行った。その結果、21.1±4.6MPaであった。
《実施例5》
実施例1と同様の方法で、図6に示すダンベル型形状(高さ2.5mm)に加工した成形器を用いて線維化コラーゲンゲルを作製した。当該線維化コラーゲンゲル(5個)を、全コラーゲン分子数の10倍モル量のポリエチレングリコールジアクリレート(分子量2,000)を混合した20mLのD−PBSに浸漬させた。25kGyのγ線照射を行い、線維化架橋処理コラーゲンゲルを作製した。これを実施例1と同様のエタノール/水の混合液にて、脱塩した後、側面から脱水させることにより、乾燥させて線維化架橋処理コラーゲン膜からなるコラーゲン成形体を得た。引張強度測定は、D−PBSに浸漬した状態で行った。その結果、35.4±1.6MPaであった。
《実施例6》
全コラーゲン分子数の5倍モル量のポリエチレングリコールジアクリレート(分子量2,000)をD−PBSに混合した以外は、実施例1と同様の方法で、成形器を図6に示すダンベル型形状(高さ2.5mm)に加工した線維化コラーゲンゲルを作製した。当該線維化コラーゲンゲルを、エタノール/水の容量比が50/50の混合液(以下、50/50のように表記する)、70/30、90/10、100/0に順次浸漬して、脱塩した後、膜の上下面をポリスチレン板で覆い、側面のみから脱媒させることにより乾燥させて線維化コラーゲン膜を得た。当該線維化コラーゲン膜をD−PBSに浸漬した状態で、25kGyのγ線照射を行うことにより、線維化架橋処理コラーゲン膜からなるコラーゲン成形体を得た。引張強度測定は、D−PBSに浸漬した状態で行った。その結果、23.8±2.6MPaであった。
これらの結果は、ポリエチレングリコールをコラーゲン成形体に混合することで、架橋密度が向上し、その引張強度を劇的に向上させることを示していた。
本発明のコラーゲン成形体、及び本発明の架橋方法及び本発明の製造方法によって得られたコラーゲン成形体は、液体中で溶解しにくく、液体中で収縮、又は膨潤などの変化が起こりにくい。従って、液体や生体中でも用いられる、細胞培養基材、再生医療用の足場材料、移植用材料、創傷被覆材、癒着防止材、又は薬物輸送担体等に効果的に用いることができる。

Claims (16)

  1. 線維化又は非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体であって、前記コラーゲン膜が、
    液体の存在下でγ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理することによって得られ、
    重量法による密度が0.4g/cm以上であり、そして
    湿潤下での引張強度が1MPa以上であることを特徴とする、
    コラーゲン成形体。
  2. 前記コラーゲン成形体が、架橋処理コラーゲン膜と線維化又は非繊維化架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含むコラーゲン成形体であって、
    前記架橋処理コラーゲン多孔体が、液体の存在下でγ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理することによって得られる、請求項1に記載のコラーゲン成形体。
  3. 前記架橋処理が、一般式(1)
    (式中、R及びRは、それぞれ独立して−COOH、−OH、−SH、−NH、−NH−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=CH、及び−CO−C(CH)=CHからなる群から選択される基であり、Yは、単結合、酸素原子(O)、場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基、又は鎖中に酸素原子を含む場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、Zは、単結合、又は場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、そしてnは1〜500の整数である)
    で表されるポリエチレングリコール誘導体の存在下での架橋処理である、請求項1又は2に記載のコラーゲン成形体。
  4. 前記ポリエチレングリコール誘導体の分子量が1,000〜15,000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコラーゲン成形体。
  5. 前記液体のpHが3.0〜10.0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコラーゲン成形体。
  6. 前記γ線照射の照射量が、5〜50kGyである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコラーゲン成形体。
  7. ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)中に37℃で5日間浸漬した場合の溶解率が10質量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコラーゲン成形体。
  8. ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)中に37℃で5日間浸漬した後の、浸漬前に対する面積変化率が5%以内である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコラーゲン成形体。
  9. (1)コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン溶液を成形器内に入れ、コラーゲンを線維化することによって、線維化コラーゲンゲルを成形する工程、
    (2)前記線維化コラーゲンゲルを、水混和性有機溶媒濃度を段階的に高めた水混和性有機溶媒と水との混合液に順次浸漬して脱塩する工程、
    (3)前記脱塩した線維化コラーゲンゲルを乾燥し線維化コラーゲン膜を得る工程、及び
    (4)前記線維化コラーゲン膜を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程、
    を含む線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法。
  10. (1)コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン溶液を成形器内に入れ、コラーゲンを線維化することによって、線維化コラーゲンゲルを成形する工程、
    (2)前記線維化コラーゲンゲルを、水混和性有機溶媒濃度を段階的に高めた水混和性有機溶媒と水との混合液に順次浸漬して脱塩する工程、
    (3)前記脱塩した線維化コラーゲンゲルを乾燥し線維化コラーゲン膜を得る工程、
    (3a)(A)前記線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下の多孔体作製用線維化コラーゲンゲルとを接触させる工程、若しくは、
    (B)前記線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が5.0質量%以下の多孔体作製用コラーゲン酸性溶液とを接触させる工程、
    (3b)前記接触物を凍結乾燥して積層体を得る工程、
    (4)前記積層体を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程
    を含む、線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含む請求項9に記載のコラーゲン成形体の製造方法。
  11. 前記乾燥工程(3)が、脱塩した線維化コラーゲンゲルを、上部及び下部を被覆して通気性を遮断した被覆上部と被覆下部との間に、非被覆の外周部を設け、当該外周部から脱媒して乾燥させる工程である、請求項9又は10に記載のコラーゲン成形体の製造方法。
  12. 前記液体、前記コラーゲン溶液、前記多孔体作製用線維化コラーゲンゲル、及び前記多孔体作製用コラーゲン酸性溶液からなる群から選択される少なくとも1つが、一般式(1)
    (式中、R及びRは、それぞれ独立して−COOH、−OH、−SH、−NH、−NH−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=CH、及び−CO−C(CH)=CHからなる群から選択される基であり、Yは、単結合、酸素原子(O)、場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基、又は鎖中に酸素原子を含む場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、Zは、単結合、又は場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、そしてnは1〜500の整数である)
    で表されるポリエチレングリコール誘導体を含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載のコラーゲン成形体の製造方法。
  13. (1)酸性液にコラーゲンを溶解し、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン酸性溶液を得る工程、
    (2)前記コラーゲン酸性溶液を成形器に入れ、成形する工程、
    (3)前記コラーゲン酸性溶液を乾燥し非線維化コラーゲン膜を得る工程、及び
    (4)前記非線維化コラーゲン膜を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程、
    を含む非線維化架橋処理コラーゲン膜を含むコラーゲン成形体の製造方法。
  14. (1)酸性液にコラーゲンを溶解し、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下のコラーゲン酸性溶液を得る工程、
    (2)前記コラーゲン酸性溶液を成形器に入れ、成形する工程、
    (3)前記コラーゲン酸性溶液を乾燥し非線維化コラーゲン膜を得る工程、
    (3a)(A)前記非線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が0.5質量%以上3.0質量%以下の多孔体作製用線維化コラーゲンゲルとを接触させる工程、若しくは
    (B)前記非線維化コラーゲン膜と、コラーゲン濃度が5.0質量%以下の多孔体作製用コラーゲン酸性溶液とを接触させる工程、
    (3b)前記接触物を凍結乾燥して積層体を得る工程、
    (4)前記積層体を、液体の存在下で、γ線照射、電子線照射、プラズマ照射、又はUV照射によって架橋処理する工程、
    を含む、非線維化架橋処理コラーゲン膜と架橋処理コラーゲン多孔体との積層体を含む請求項13に記載のコラーゲン成形体の製造方法。
  15. 前記液体、前記コラーゲン膜作製用コラーゲン酸性溶液、前記多孔体作製用線維化コラーゲンゲル、及び前記多孔体作製用コラーゲン酸性溶液からなる群から選択される少なくとも1つが、一般式(1)
    (式中、R及びRは、それぞれ独立して−COOH、−OH、−SH、−NH、−NH−CO−CH−CH−COOH、−CO−C=CH、及び−CO−C(CH)=CHからなる群から選択される基であり、Yは、単結合、酸素原子(O)、場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基、又は鎖中に酸素原子を含む場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、Zは、単結合、又は場合により置換されていることのある炭素数1〜5のアルキレン基であり、そしてnは1〜500の整数である)
    で表されるポリエチレングリコール誘導体を含む、請求項13又は14に記載のコラーゲン成形体の製造方法。
  16. 請求項9〜15のいずれか一項に記載の製造方法によって得ることのできるコラーゲン成形体。
JP2013097686A 2013-05-07 2013-05-07 コラーゲン成形体及びその製造方法 Active JP5633880B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013097686A JP5633880B2 (ja) 2013-05-07 2013-05-07 コラーゲン成形体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013097686A JP5633880B2 (ja) 2013-05-07 2013-05-07 コラーゲン成形体及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014218453A true JP2014218453A (ja) 2014-11-20
JP5633880B2 JP5633880B2 (ja) 2014-12-03

Family

ID=51937267

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013097686A Active JP5633880B2 (ja) 2013-05-07 2013-05-07 コラーゲン成形体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5633880B2 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015174094A1 (ja) * 2014-05-16 2015-11-19 国立大学法人名古屋大学 タンパク質膜の製造方法
JP2017149814A (ja) * 2016-02-23 2017-08-31 多木化学株式会社 表面加工コラーゲン成形体
JP2017147951A (ja) * 2016-02-23 2017-08-31 国立大学法人 新潟大学 細胞培養方法及び培養組織
JP2017149708A (ja) * 2016-02-23 2017-08-31 多木化学株式会社 縫合可能な線維化コラーゲン架橋膜
JP2018522091A (ja) * 2015-06-03 2018-08-09 セウォン セロンテック カンパニー リミテッドSewon Cellontech Co.,Ltd. 紫外線を用いたコラーゲンフィルムの製造方法、これを用いて製造されたコラーゲンフィルム、およびコラーゲンフィルムを用いて製造された生体材料
JP2019037303A (ja) * 2017-08-22 2019-03-14 多木化学株式会社 コラーゲン管状体
CN113773379A (zh) * 2021-09-13 2021-12-10 熹微(苏州)生物医药科技有限公司 一种制备聚乙二醇化类胶原蛋白的方法及其应用
CN115260772A (zh) * 2022-07-13 2022-11-01 浙江大学 一种多孔湿态天然发泡凝胶软材料、方法及在生鲜食品运输中的应用

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7133172B2 (ja) * 2017-08-10 2022-09-08 国立大学法人大阪大学 心筋組織-コラーゲンの自己可動膜

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03503371A (ja) * 1988-03-15 1991-08-01 イムデックス 内臓手術用パッチ
JP2003534858A (ja) * 2000-05-26 2003-11-25 コレティカ 組織工学用にデザインされた担体を製造するための水生動物起源のコラーゲンの使用並びにそれにより得られる担体及び生体材料
WO2012070679A1 (ja) * 2010-11-26 2012-05-31 国立大学法人東京工業大学 高強度コラーゲン線維膜及びその製造方法
WO2012070680A1 (ja) * 2010-11-26 2012-05-31 国立大学法人東京工業大学 コラーゲン非線維化成形体及びその製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03503371A (ja) * 1988-03-15 1991-08-01 イムデックス 内臓手術用パッチ
JP2003534858A (ja) * 2000-05-26 2003-11-25 コレティカ 組織工学用にデザインされた担体を製造するための水生動物起源のコラーゲンの使用並びにそれにより得られる担体及び生体材料
WO2012070679A1 (ja) * 2010-11-26 2012-05-31 国立大学法人東京工業大学 高強度コラーゲン線維膜及びその製造方法
WO2012070680A1 (ja) * 2010-11-26 2012-05-31 国立大学法人東京工業大学 コラーゲン非線維化成形体及びその製造方法

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6013057783; Bioscience, biotechnology, and biochemistry Vol.73, No.9, 20090923, p.1915-1921 *
JPN6013057788; J. Biomater. Sci. Polym. Ed. Vol.17, No.8, 2006, p.837-858 *
JPN6013057790; 吉田嵩ら: '放射線照射を用いたアパタイト/コラーゲン複合体における物理架橋の制御' 日本セラミックス協会年会講演予稿集 Vol.2013, 20130311, p.1P106 *
JPN6013057793; J. Biomed. Mater. Res. A. Vol.100A, No.11, 20120614, p.2960-2969 *
JPN6013057795; Macromol. Biosci. Vol.12, No.11, 201211, p.1490-1501 *

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015174094A1 (ja) * 2014-05-16 2015-11-19 国立大学法人名古屋大学 タンパク質膜の製造方法
JP2015218245A (ja) * 2014-05-16 2015-12-07 国立大学法人名古屋大学 タンパク質膜の製造方法
JP2018522091A (ja) * 2015-06-03 2018-08-09 セウォン セロンテック カンパニー リミテッドSewon Cellontech Co.,Ltd. 紫外線を用いたコラーゲンフィルムの製造方法、これを用いて製造されたコラーゲンフィルム、およびコラーゲンフィルムを用いて製造された生体材料
JP2017149814A (ja) * 2016-02-23 2017-08-31 多木化学株式会社 表面加工コラーゲン成形体
JP2017147951A (ja) * 2016-02-23 2017-08-31 国立大学法人 新潟大学 細胞培養方法及び培養組織
JP2017149708A (ja) * 2016-02-23 2017-08-31 多木化学株式会社 縫合可能な線維化コラーゲン架橋膜
JP2019037303A (ja) * 2017-08-22 2019-03-14 多木化学株式会社 コラーゲン管状体
CN113773379A (zh) * 2021-09-13 2021-12-10 熹微(苏州)生物医药科技有限公司 一种制备聚乙二醇化类胶原蛋白的方法及其应用
CN115260772A (zh) * 2022-07-13 2022-11-01 浙江大学 一种多孔湿态天然发泡凝胶软材料、方法及在生鲜食品运输中的应用
CN115260772B (zh) * 2022-07-13 2023-03-10 浙江大学 一种多孔湿态天然发泡凝胶软材料、方法及在生鲜食品运输中的应用

Also Published As

Publication number Publication date
JP5633880B2 (ja) 2014-12-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5633880B2 (ja) コラーゲン成形体及びその製造方法
Gupta et al. Preparation and characterization of in-situ crosslinked pectin–gelatin hydrogels
US9555164B2 (en) Method for preparing porous scaffold for tissue engineering
Lin et al. Synthesis and characterization of collagen/hyaluronan/chitosan composite sponges for potential biomedical applications
Muchová et al. Design of dialdehyde cellulose crosslinked poly (vinyl alcohol) hydrogels for transdermal drug delivery and wound dressings
Kim et al. Tissue response to implants of hyaluronic acid hydrogel prepared by microbeads
CN110041536B (zh) 功能性丝胶蛋白水凝胶及其制备方法和应用
Zeinali et al. Regeneration of full-thickness skin defects using umbilical cord blood stem cells loaded into modified porous scaffolds
WO2012070680A1 (ja) コラーゲン非線維化成形体及びその製造方法
Agostino et al. Semi-interpenetrated hydrogels composed of PVA and hyaluronan or chondroitin sulphate: chemico-physical and biological characterization
Ashraf et al. Fabrication and characterization of biaxially electrospun collagen/alginate nanofibers, improved with Rhodotorula mucilaginosa sp. GUMS16 produced exopolysaccharides for wound healing applications
Vilariño-Feltrer et al. Schwann-cell cylinders grown inside hyaluronic-acid tubular scaffolds with gradient porosity
Yang et al. Using type III recombinant human collagen to construct a series of highly porous scaffolds for tissue regeneration
Elango et al. Physicochemical and rheological properties of composite shark catfish (P angasius pangasius) skin collagen films integrated with chitosan and calcium salts
Sultana et al. Preparation and physicochemical characterization of nano-hydroxyapatite based 3D porous scaffold for biomedical application
Seifi et al. A novel multifunctional chitosan-gelatin/carboxymethyl cellulose-alginate bilayer hydrogel containing human placenta extract for accelerating full-thickness wound healing
CN107715181A (zh) 一种可生物降解的组织工程皮肤支架的制备方法
Ruggeri et al. Mycelium-based biomaterials as smart devices for skin wound healing
JP6429490B2 (ja) コラーゲン線維架橋多孔体
EP1504774A1 (en) Artificial extracellular matrix and process for producing the same
JP5935181B2 (ja) 創傷治癒用の生体材料およびその調製
JP5981421B2 (ja) 組織修復用の高密度フィブリル状コラーゲンマトリックスおよびその調製方法
Zhang et al. Preparation of smooth and macroporous hydrogel via hand-held blender for wound healing applications: In vitro and in vivo evaluations
Hosseini et al. Preparation of poly (vinyl alcohol)/chitosan-blended hydrogels: Properties, in vitro studies and kinetic evaluation
Husain et al. Synthesis of Hydrogel Films Based on PVA, PVP, Starch and Keratin extracted from chicken feathers wastes for the Potential biomedical applications

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140909

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141006

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5633880

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250