JP2017141479A - 焼入れ中炭素鋼部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、この中炭素鋼部品は焼入れ性が低く、焼入れの際に不完全な焼入れ組織(例えば、微細パーライトなど)が生成することがある。そして、この不完全な焼入れ組織は、焼入れ後の中炭素鋼部品(以下、「焼入れ中炭素鋼部品」と略す。)の靱性を低下させる原因となる。
そこで、製造コストの上昇及び加工性の低下を抑えつつ焼入れ性を高めるために、極少量のBを添加した炭素鋼が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
ここで、本明細書において「焼入れ中炭素鋼部品」とは、焼入れは行われているが、焼戻しは行われていない中炭素鋼部品のことを意味する。また、「中炭素鋼部品」とは、中炭素鋼を素材とする鋼板から形成された部品のことを意味する。
なお、本発明は、焼き戻しが行われていない焼入れままの中炭素鋼部品を主な対象としているが、焼入れ中炭素鋼部品に焼戻しを行ってもよいことは言うまでもない。
まず、中炭素鋼板の組成について説明する。
本発明では、C含有量が0.15質量%〜0.25質量%の中炭素鋼を対象とする。
Cは、炭素鋼において最も基本となる合金元素であり、その含有量によって焼入れ硬さ及び炭化物量が大きく変動する。C含有量が0.15質量%未満では、各種機械部品として使用可能な強度(焼入れ硬さ)を得ることができない。一方、C含有量が0.25質量%を超えると、焼入れままで(焼戻しを行わない状態で)実用上十分な靱性を得ることができない。C含有量は、好ましくは0.16質量%〜0.24質量%、より好ましくは0.17質量%〜0.23質量%である。
Siは、脱酸剤として作用する合金元素である。Si含有量が0.02質量%未満では、当該作用を十分に得ることができない。一方、Si含有量が0.5質量%を超えると、焼入れままで実用上十分な靱性を得ることができない。Si含有量は、好ましくは0.03質量%〜0.4質量%、より好ましくは0.04質量%〜0.3質量%である。
Mnは、焼入れ性を向上させる合金元素である。Mn含有量が0.2質量%未満であると、焼入れ性が不十分となる。一方、Mn含有量が2.0質量%を超えると、鋼板が硬質化してしまい、加工性が低下する。Mn含有量は、好ましくは0.3質量%〜1.5質量%、より好ましくは0.4質量%〜1.0質量%である。
Bは、焼入れ性を向上させる合金元素である。また、Bは、焼入れの際にMs点以下で起こるベイナイト変態を抑制(その結果、セメンタイト析出を伴うベイナイト組織の生成を抑制する)する作用も有する。B含有量が0.0005質量%未満であると、焼入れ性が不十分となる。一方、B含有量が0.01質量%を超えて添加してもBの効果は飽和する上、靭性低下を招く場合がある。B含有量は、好ましくは0.001質量%〜0.008質量%、より好ましくは0.002質量%〜0.006質量%である。
Tiは、鋼中に溶け込んだNがBと結合してBNとなることを抑制する合金元素である。すなわち、Tiは、鋼中に溶け込んだNを窒化物として固定することにより、焼入れ性の向上をもたらす有効B量を確保させることができる。Ti含有量が0.01質量%未満であると、上記の効果が十分に得られない。一方、Ti含有量が0.3質量%を超えると、経済的に不利になると共に、鋼板の加工性も低下する。Ti含有量は、好ましくは0.01質量%〜0.2質量%、より好ましくは0.01質量%〜0.1質量%である。
P及びSは、靱性を低下させる合金元素である。そのため、靱性を向上させるためには、出来る限り低減することが好ましい。各種機械部品として使用される焼入れ中炭素鋼部品の靱性を確保する場合、P及びSの合計量が0.03質量%までは許容される。P及びSの合計量は、好ましくは0.025質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下である。
Crは、焼入れ中炭素鋼部品の強度を向上させる合金元素であり、必要に応じて添加される。Cr含有量が1.5質量%を超えると、コストが上昇すると共に、鋼板の加工性も低下する。Cr含有量は、好ましくは0.01質量%〜1.3質量%、より好ましくは0.1質量%〜1.0質量%である。
V、Nb及びMoは、結晶粒の微細化に有効な合金元素であり、必要に応じて添加される。これらの元素が0.3質量%を超えると、その効果が飽和すると共に、コストが上昇する。これらの元素の含有量は、好ましくは0.01質量%〜0.25質量%、より好ましくは0.1質量%〜0.2質量%である。
上記の成分以外の残部は、Fe及び不可避的不純物である。ここで、不可避的不純物とは、O、Nなどの除去することが難しい成分のことを意味する。これらの成分は、鋼材を溶製する段階で不可避的に混入する。
成形加工の種類としては、特に限定されず、精密打ち抜きなどの打ち抜き加工、伸びフランジ加工、曲げ加工などが挙げられる。
焼入れの際、Ms点(マルテンサイト変態開始温度)以下で起こるベイナイト変態を抑制するために、焼入強烈度H値が0.09cm−1〜0.16cm−1の焼入剤(好ましくは焼入油、特に鉱油)を用いて冷却する。ここで、本明細書において「焼入強烈度H値」とは、80℃における値を意味する。焼入剤の焼入強烈度H値が0.09cm−1未満であると、冷却速度が遅くなすぎてしまい、ベイナイト変態が起こる結果、焼入れ中炭素鋼部品の靱性が低下する。一方、焼入剤の焼入強烈度H値が0.16cm−1を超えると、冷却速度が遅くなすぎてしまい、中炭素鋼部品が熱変形し易くなる。
焼入剤としては、焼入強烈度H値が上記範囲のものであれば特に限定されず、市販の各種製品を用いることができる。また、焼入剤は、複数の製品を混合することによって製造してもよい。
下記の表1に示す組成を有する中炭素冷延鋼板(厚さ1.5mm)を作製した後、JIS4号サイズVノッチ試験片を切り出した。次に、この試験片をソルトバスにおいて900℃で15分均熱処理した後、表2に示すH値を有する80℃の焼入剤(鉱油)に浸漬することによって焼入れした。
焼入れした試験片について、JIS Z2241に準拠した室温20℃のシャルピー衝撃試験によって衝撃値を測定した。衝撃値は、機械部品などにおける使用を考慮すると、50J/cm2以上であることが望ましい。
また、JIS Z2244に準拠した室温20℃のビッカース硬さ試験によって硬さを測定した。硬さは、機械部品などにおける使用を考慮すると、400HV以上であることが望ましい。
また、試験片の断面を鏡面研磨した後、電解エッチングし、電子顕微鏡によって金属組織を観察し、ベイナイト組織の混入の有無を評価した。
上記の評価結果を表2に示す。
これに対してサンプルNo.1(比較例)は、Bを添加しなかったため、靱性が低下した。このサンプルの金属組織の評価によると、ベイナイト組織が混入しており、ベイナイト変態が起こったと考えらえる。そして、靭性の低下は、ベイナイト組織中のセメンタイト粒子による擬へき開破面の形成によって生じたものと推定される。
また、サンプルNo.3(比較例)は、焼入剤の焼入強烈度H値が低かったため、冷却速度が遅くなりすぎてしまい、靱性及び強度の両方が低下した。このサンプルの金属組織の評価によると、ベイナイト組織が混入しており、ベイナイト変態が起こったと考えらえる。
また、サンプルNo.6(比較例)は、Cの含有量が少なすぎたため、焼入れままでは靱性が低くなった。
Claims (4)
- C:0.15〜0.25質量%、Si:0.02〜0.5質量%、Mn:0.2〜2.0質量%、B:0.0005〜0.01質量%、Ti:0.01〜0.3質量%、P及びS:0.03質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる中炭素鋼板から形成される中炭素鋼部品を焼入れする際に、焼入強烈度H値が0.09〜0.16cm−1の焼入剤を用いて冷却することを特徴とする焼入れ中炭素鋼部品の製造方法。
- 前記中炭素鋼板が、Crを1.5質量%以下さらに含有することを特徴とする請求項1に記載の焼入れ中炭素鋼部品の製造方法。
- 前記中炭素鋼板が、V、Nb及びMoからなる群から選択される少なくとも1種を0.3質量%以下さらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の焼入れ中炭素鋼部品の製造方法。
- ビッカース硬さが400HV以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の焼入れ中炭素鋼部品の製造方法。
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