JP2012180541A - 加工性に優れた浸炭用鋼板および機械構造部材 - Google Patents

加工性に優れた浸炭用鋼板および機械構造部材 Download PDF

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Abstract

【課題】加工性に優れ、かつ低いカーボンポテンシャルでの浸炭焼入れにおいて表層部で高い焼入れ硬さが得られるボロン鋼の鋼板を提供する。
【解決手段】C:0.10〜0.50質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.20〜1.8質量%、Cr:0.20〜2.0質量%、P:0.02質量%以下、S:0.02質量%以下、Ti:0.01〜0.20質量%、Al:0.002〜0.10質量%、B:0.0005〜0.0050質量%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、炭化物がフェライト中に分散しており、その炭化物間の平均距離が0.8μm以上であり、下記式(1)で定義されるX値が40以下であり、下記式(2)で定義されるY値が30以上であり、かつ硬さが150HV以下である加工性に優れた浸炭用鋼板。
X=30C+30Si+20Mn+5Cr+150S+80Ti−1.5炭化物間平均距離・・・(1)
Y=5C+22Mn+32Cr・・・(2)
【選択図】図2

Description

本発明は、良好な加工性と焼入性を兼備し、自動車部品をはじめとする各種機械部品に適した浸炭用ボロン鋼の鋼板に関する。
少量のBを添加した炭素鋼(ボロン鋼)は焼入性に優れることから、板厚中心部まで十分に焼きが入る(マルテンサイト組織となる)ことが要求される種々の部品用途において、低コスト材として使用されている。ボロン鋼の焼鈍鋼板は、打抜き、曲げなどのプレス成形や、鍛造、切削などの工程により所定の部品形状に加工された後、浸炭焼入れ等の熱処理を施して使用される。したがって、素材であるボロン鋼鋼板には、加工性、焼入性、および用途に応じた熱処理後の特性が要求される。
耐摩耗性が要求される部品では表面硬さを高めるために浸炭するが、ボロン鋼鋼板を浸炭焼入れした場合、逆に硬さが低下することがある。通常の浸炭(カーボンポテンシャルが0.8%以上、有効硬化深さが1mm以上、表面硬さが700HV以上)では、表面硬さ低下は現れ難いが、カーボンポテンシャル(C.P.)が0.8%未満の軽微な浸炭により表面硬さ500〜650HV程度を狙った場合に表面硬さ低下が起こりやすい。
ボロン鋼鋼板における表面硬さ低下の原因は、以下(1)〜(3)のように考えられる。
(1)鋼板の製造段階、あるいは部品成形後の焼入れ時に施される高温加熱によって、鋼材表層部の固溶Bが減少する(脱B現象)。
(2)脱Bによって表層部の焼入性が低下し、焼入れの際に表層部分に不完全焼入れ組織を生じて表面硬さが低下する。
(3)特に板厚が大きい場合、焼入れ時の冷却速度が低下するため、表面硬さの低下が顕著になる。
不完全焼入れ組織の生成を防止する手法が、これまでにも提案されている。
例えば、特許文献1は、C含有量が0.1〜0.3質量%のボロン鋼を使用し、TiおよびNbの炭窒化物を微細析出させることによって浸炭時における粗大粒の発生を防止し、さらにCrおよびMoを添加して脱Bによる焼入性低下を補い、表面から深さ0.2〜0.7mmに生成する不完全焼入れ組織の生成を防止している。しかし、特許文献1では、TiおよびNbの炭窒化物を微細析出させるために800〜500℃の温度範囲を1℃/秒以下の冷却速度で徐冷する必要があり、製造性に劣る。
特許文献2は、C含有量が0.10〜0.30質量%のボロン鋼を使用し、MnおよびCr含有量の上限を1.5質量%としている。しかし、特許文献2では、MnやCrを上限程度まで添加することにより脱B部の焼入性は補完できるが、固溶強化元素であるこれらの元素は加工性を大きく低下させてしまう。一方、特許文献2で、MnおよびCr含有量が少ない場合には、脱Bによる焼入性の低下を補完することが困難となる。Niの添加は素材コスト上昇に繋がる。
特許文献3は、C含有量が0.10〜0.30質量%のボロン鋼を使用し、非浸炭部の組織を、フェライトを10〜70面積%含むマルテンサイトからなる二相組織とすることで、熱処理によるひずみが小さい歯車用鋼材を提案している。しかし、特許文献3では、熱処理後の金属組織においてフェライトが存在するため、疲労特性や衝撃靭性などの低下が考えられる。
特許文献4は、C含有量が0.10〜0.40質量%のボロン鋼を使用し、表層部の炭化物の面積率と板厚中心部の炭化物の面積率との比を0.90以上とし、合金成分により算出されるX値を24以上とすることで、表層部の焼入れ不良層を改善している。しかし、特許文献4では、表層部の焼入れ性を向上させるために、MnおよびCrを過剰に添加する必要がある。一方、MnおよびCrの過剰な添加により、伸びフランジ加工、打抜き加工、曲げ加工など種々の冷間加工性が低下する。
特開2001−303172号公報 特開平04−297521号公報(特許3024245号) 特開2001−032036号公報(特許3989138号) 特開2010−215961号公報
このように、従来技術により不完全焼入れ組織(フェライトやベイナイト)の生成を防止する手法が種々提案されているが、カーボンポテンシャル(C.P.)が低い、すなわち軽微な浸炭焼入れを施した場合の表面硬さ低下に対する対策は未だ不十分であるという課題があった。
従って、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、加工性に優れ、かつ低いカーボンポテンシャルでの浸炭焼入れにおいても表層部で目標どおりの焼入れ硬さが得られるボロン鋼の鋼板を提供しようというものである。
まず、本発明者らは、ボロン鋼に特有の脱B現象そのものを防止することは現状の製造プロセスにおいて極めて困難であり、脱Bが生じること自体はある程度許容することが得策であろうと考えた。この観点に立ち、本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、ボロン鋼の伸びフランジ性および表層部焼入性に関し、以下の知見を得た。
(1)伸びフランジ性(局部延性)の確保と、脱Bによって生じる焼入性低下の防止とは、化学組成を厳密にコントロールすることにより両立できる。
(2)金属組織において、球状化している炭化物の量と炭化物の距離をコントロールすることで伸びフランジ性をさらに高めることができる。
本発明者らは、上記(1)の化学組成および上記(2)の金属組織での対策を講じることで、ボロン鋼の伸びフランジ性を確保しつつ表層部焼入性を十分に確保することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.10〜0.50質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.20〜1.8質量%、Cr:0.20〜2.0質量%、P:0.02質量%以下、S:0.02質量%以下、Ti:0.01〜0.20質量%、Al:0.002〜0.10質量%、B:0.0005〜0.0050質量%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、炭化物がフェライト中に分散しており、その炭化物間の平均距離が0.8μm以上であり、下記式(1)で定義されるX値が40以下であり、下記式(2)で定義されるY値が30以上であり、かつ硬さが150HV以下である加工性に優れた浸炭用鋼板である。
X=30C+30Si+20Mn+5Cr+150S+80Ti−1.5炭化物間平均距離・・・(1)
Y=5C+22Mn+32Cr・・・(2)
本発明によれば、加工性に優れ、かつ低いカーボンポテンシャルでの浸炭焼入れにおいて表層部で高い焼入れ硬さが得られるボロン鋼の鋼板を提供することができる。
実施例で得られた伸びフランジ加工品の斜視図である。 伸びフランジ加工性とX値との関係を示すグラフである。 伸びフランジ加工性と切り欠き引張伸び(Elv値)との関係を示すグラフである。 表面から深さ100μmの位置における焼入れ硬さとY値との関係を示すグラフである。 表面からの深さと焼入れ硬さとの関係を示すグラフである。
以下、本発明の浸炭用鋼板について詳細に説明する。
〔化学組成〕
C:0.10〜0.50質量%
Cは、自動車部品をはじめとする機械構造部材として必要な硬さを確保するためには重要な合金成分であり、0.10質量%以上のC含有量で所望の硬さが得られる。しかし、0.50質量%を超える多量のCが含まれると、焼入性および焼入れ硬さは十分確保されるが、鋼板の伸びフランジ性が著しく低下する。
Si:0.5質量%以下
Siは、延性に対して影響の大きい元素の1つである。Siを過剰に添加すると固溶強化作用によりフェライトが硬化し、成形加工時に割れ発生の原因となる。またSi含有量が増加すると製造工程で鋼板表面にスケール疵が発生する傾向を示し、表面品質の低下を招く。さらには、浸炭加熱中に粒界酸化が起こり疲労寿命の低下に繋がる。そのため、本発明においては、Si含有量の上限を0.5質量%に設定した。
Mn:0.20〜1.8質量%
Mnは、焼入れ加熱後の冷却過程でフェライト変態を抑制し、比較的遅い冷却速度でもマルテンサイト主体の組織にすることにより、鋼材の焼入れ性を高める。Mnは、強靭化にも有効な合金成分である。しかし、0.20質量%未満のMn含有量では焼入れ性が大幅に低下し、冷却中にパーライト、上部ベイナイト等の高温生成物が形成され、自動車部品をはじめとする機械構造部材として必要な焼入れ硬さが得られなくなる。逆に、1.8質量%を超える多量のMnが含まれると、フェライトが硬化し、伸びフランジ性が劣化する。
Cr:0.20〜2.0質量%
Crは、焼入れ性の改善に有効な合金成分であり、0.20質量%以上の含有量でCrの添加効果が顕著になる。これに対し、0.20質量%未満のCr含有量では、硬さが不足するばかりか、焼入れ時の冷却速度依存性が大きくなるため、焼入れ硬さが不安定になり易い。逆に、2.0質量%を超える多量のCrが含まれると、加工性が著しく劣化する。
P:0.02質量%以下
Pは、延性や靭性を劣化させる元素であり、0.02質量%を超えるP含有量では焼入れ後において旧オーステナイト粒界の靭性が劣化し、熱処理後の部品の疲労特性が低下する。そのため、本発明においては、P含有量の上限を0.02質量%に設定した。
S:0.02質量%以下
Sは、伸びフランジ性を支配する極めて重要な要因である。すなわち、Sは、MnS系の介在物を生成して特に局部的な延性を劣化させる。伸びフランジ加工では、生成したMnSが破断の起点になり、割れが発生し易くなる。そのため、本発明においては、S含有量を0.02質量%以下、好ましくは0.005質量%以下に規制する。
Ti:0.01〜0.20質量%
Tiは、溶鋼の脱酸調整に添加される成分であるが、脱窒作用も呈する。
また、鋼板に固溶しているNを窒化物として固定するので、焼入れ性を改善する有効B量を高める。更に、炭窒化物を形成し、焼入れ加熱時に結晶粒の粗大化を防止する作用を呈する。これらの作用を安定して得るためには、0.01質量%以上のTi含有量が必要である。しかし、0.20質量%を超える多量のTiが含まれると、経済的に不利になるばかりか、伸びフランジ性を劣化させる原因ともなる。
Al:0.002〜0.10質量%
Alは、溶鋼の脱酸剤として使用される成分であり、Nを固定する作用も呈する。このような作用は、0.002質量%以上のAl含有量で顕著になる。しかし、0.10質量%を超える多量のAlが含まれると、鋼の清浄度が損なわれ、表面疵が発生し易くなり、鋼板の表面品質を低下させる原因となる。
B:0.0005〜0.0050質量%
Bは、極微量の添加で鋼材の焼入れ性を大幅に向上させる。また、粒界の歪みエネルギーを低下させることによって粒界を強化する作用を呈する。自動車部品をはじめとする機械構造部材として必要な硬さを安定して得るためにも、必要な合金成分である。このようなBの添加効果は、0.0005質量%以上の含有量で顕著になる。しかし、0.0050質量%を超えるBを添加しても、その効果が飽和し、逆に靭性を劣化させる欠点が生じる。
X値:40以下
各合金元素が前述の範囲に入っている場合でも、MnS系介在物、フェライト硬さ、球状化炭化物の粒径や炭化物間平均距離が複雑に関連して鋼板の伸びフランジ性に多大な影響を及ぼす。本発明では各合金成分の含有量が上記の範囲において、さらに下記式(1)で定義されるX値が40以下となるように成分調整されていることが重要である。
X=30C+30Si+20Mn+5Cr+150S+80Ti−1.5炭化物間平均距離・・・(1)
伸びフランジ性の指標としてのX値が40以下となる合金設計を採用したとき、局部延性が向上し、部品製造の際に要求される伸びフランジ加工性を満足する鋼材となる。
ここで、式(1)において、各元素の項には、それぞれの成分の含有率の値(質量%)を代入する。炭化物間平均距離は、μm単位の値を代入する。
Y値:30以上
Y値は、鋼板表面における脱B部分の焼入れ性を現す指標であり、焼入れ性を向上させるC、MnおよびCr含有量を適正化すると共に、必要な焼入れ硬さを得るためのC、MnおよびCr含有量の決定に使用される。本発明では各合金成分の含有量が上記の範囲において、さらに下記式(2)で定義されるY値が30以上となるように成分調整されていることが重要である。
Y=5C+22Mn+32Cr・・・(2)
Y値が30以上となる合金設計を採用したとき、鋼板表面の焼入れ硬さが安定して得られる。
ここで、式(2)において、各元素の項には、それぞれの成分の含有率の値(質量%)を代入する。
〔金属組織〕
炭化物間の平均距離:0.8μm以上
本発明の浸炭用鋼板は、フェライトマトリクス中に炭化物が分散した焼鈍組織を有している。本発明者らの検討によれば、炭化物間平均距離は、伸びフランジ性等の局部延性を支配する因子として特に重要なものであり、炭化物間平均距離を0.8μm以上としたとき、従来の鋼板では実現が難しかった高い伸びフランジ加工性を付与することが可能であることが分かった。鋼板中の炭化物間平均距離が0.8μm未満であると、成形加工時に炭化物を起点として生成したミクロボイドの連結・成長を容易にし、そのようなミクロ的な欠陥の存在に敏感な局部延性が著しく低下する。したがって、本発明においては、鋼板の炭化物間平均距離を0.8μm以上に規定した。
なお、炭化物間平均距離は、鋼板断面における炭化物の面積率fおよび平均炭化物粒径D(μm)を次式に代入して求まるLの値(μm)をいう。
L=((π/(4×f))(1/2)−1)×D・・・(3)
ここで、炭化物の面積率fは、鋼板のC含有量をC(質量%)とするとき、f=C/6.67で求まる値である。これはC含有量が6.67質量%のとき100%セメンタイト(f=1)であるとして、セメンタイト面積率を実際のC含有量に比例した値で表したものである。例えば鋼板のC含有量が0.36質量%の場合、f=0.36/6.67=0.054となる。
また平均炭化物粒径Dは、鋼板断面の金属組織観察において、観察視野内の個々の炭化物について測定した円相当径を全測定炭化物について平均した値をいう。具体的には個々の炭化物について面積を測定し、その面積から円相当径を算出する。面積の測定は画像処理装置を用いて行うことができる。そして測定した全ての炭化物の円相当径の総和を求め、その総和を測定炭化物の総数で除した値を平均炭化物粒径D(μm)とする。数値の信頼性を高めるために、観察視野は測定炭化物総数が300個以上となる領域とする。
この炭化物間の距離は、焼鈍工程における加熱保持温度を高く設定するほど、熱延パーライトの分断・球状化が進行し、微細な炭化物がフェライトマトリックス中に固溶して消失するので、残存した炭化物間の距離は大きくなる。逆に、保持温度が小さいほど炭化物間平均距離を小さくすることができる。加熱保持の時間の長短によっても焼鈍後における炭化物間の距離は変化するが、時間よりも温度の影響が大きい。保持時間が0.5時間未満であると、熱延パーライトの分断・球状化の進行が足らず焼鈍後の組織が不適当となる。
〔機械的性質〕
硬さ:150HV以下
硬さ(ビッカース硬さ)は、加工性を示す最も簡便な指標である。軟質なものほど延性が高く加工性に優れている。伸びフランジ性の優れた鋼板を得るためには、150HV以下とする必要がある。
以下、本発明の浸炭用鋼板の製造方法について説明する。
〔熱延酸洗工程〕
熱延前のスラブ加熱温度は一般的な炭素鋼と同様に1150〜1350℃とすればよい。熱延仕上温度は800〜900℃とする。800℃を下回ると変形抵抗が大きくなり通板性が低下する。900℃を超えるとオーステナイト粒径が粗大化して熱延材の靱性が低下する。巻取温度は500〜700℃とする。500℃を下回ると熱延材が硬化して製造性が低下する。700℃を上回ると初析フェライトの量が増加し、セメンタイトの分布が不均一になることに加え、パーライトのラメラー間隔が大きくなるため焼鈍によるセメンタイトの球状化が困難になり、焼鈍後の加工性が低下する。巻取後は、通常の手法にて酸洗に供される。その後、必要に応じて、板厚調整のために冷間圧延を行うことができる。
〔焼鈍工程〕
前工程において酸洗を終え、必要に応じて冷間圧延が施された鋼板は、焼鈍に供される。シンプルな焼鈍方法としては、鋼板を650〜740℃の温度範囲で0.5h以上均熱保持する方法が採用できる。これにより、パーライト中の層状炭化物を分断し、球状化して加工性を付与する。保持時間は概ね50h以下とすればよい。均熱保持とは、板厚中心部まで所定の温度範囲に保持されることをいう。
上記のようにして得られた本発明の浸炭用鋼板は、一般的な手法により、所定の機械部品に加工され、その後、カーボンポテンシャル(C.P.)が0.2%以上0.8%未満の浸炭雰囲気による浸炭焼入れ処理に供される。
カーボンポテンシャルは、浸炭ガスと平衡する材料中のFe表面のC%であり、浸炭ガスの組成や温度により所望のC.P.となるように調整することが一般的に行われている。
表1に示す組成の鋼を溶製し、各鋼とも、スラブ加熱温度1230℃、熱延の仕上温度850℃、巻取温度600℃の条件で熱間圧延を施し、酸洗し、その後、710℃、均熱保持40hのヒートパターンでの焼鈍を施し、板厚5.0mmの鋼板(供試材)を得た。ただし、No.8とNo.16のみ、焼鈍条件を580℃、均熱保持25hとした。
Figure 2012180541
Figure 2012180541
局部延性を評価するために、切り欠き引張伸びElvを評価した。まず、供試材から、供試材の圧延方向と試験片の長さ方向が一致するようにJIS5号試験片を切り出し、試験片の平行部の長手方向中央部の両エッジ部分に、開き角45度、深さ2mmのVノッチを加工して、これを切り欠き引張試験片とした。標点間距離は5mmとした。
この試験片により引張試験を行い、破断後の標点間距離を測定して試験前の標点間距離に対する伸び率(%)を求め、これを切り欠き引張伸びElvとした。Elv値は、局部延性を示す指標であり、通常の引張試験で、全伸び−均一伸びとして求められる局部伸びに比較して、より適切に局部延性を定量的に評価できる。結果を表1に示す。切り欠き引張伸びElv(%)が高いほど局部延性が高い材料である。
伸びフランジ加工性の評価は、次のように行った。
まず、供試材から直径150mmの円盤を打抜きし、これを伸びフランジ加工用の素板(ブランク材)とした。次に、伸びフランジ加工に先立って、この素板の中心部に直径25mmの打抜き穴を設けた。この穴を初期穴として直径40mmのパンチを押し込み、高さ40mmの縦壁を加工する伸びフランジ加工を行った。なお、このとき、初期穴を打抜くときに生成したかえり(バリ)は、伸びフランジ加工の際にはパンチ側となるようにセットした。得られた伸びフランジ加工品の概略図を図1に示す。
フランジ上部端面における加工割れの有無を評価した。評価は、割れがないものを評点5、割れ長さが板厚に対して10%未満を評点4、割れ長さが板厚に対して10%以上25%未満を評点3、割れ長さが板厚に対して25%以上50%未満を評点2、割れ長さが50%以上を評点1とした。結果を表1に示す。
合金成分が発明範囲内であってもX値が40を超えているNo.31、No.40およびNo.51は、切り欠き引張伸びが低下し、伸びフランジ加工においてフランジ上部端面に割れが発生した。また、合金元素が上限を超えているNo.9、No.13、No.14、No.26、No.29、No.30、No.35、No.48およびNo.50や、炭化物間平均距離が0.8μm未満であるNo.8、No.16およびNo.24や、素材硬さが150HVを超えるNo.2、No.5、No.6、No.23、No.32、No.33、No.36、No.41、No.42、No.43およびNo.46についても切り欠き引張伸びが低下し、伸びフランジ加工で割れが生じた。
伸びフランジ加工性をX値で整理すると、図2に示すように、X=30C+30Si+20Mn+5Cr+150S+80Ti−1.5炭化物間平均距離で定義されるX値が40以下になると加工割れがなく伸びフランジ性に優れていることが明らかである。
伸びフランジ加工性は、切欠き引張伸びElvとの間にも密接な相関関係をもつ。伸びフランジ加工性を切欠き引張伸びElv(%)で整理すると、図3に示すように、伸びフランジ加工性は、切欠き引張伸びElvが45%程度以上で良好となることが分かった。また、切欠き引張伸びElvが55%を超えると、割れを発生せず良好となることも分かった。
焼入れ性の評価は、図1に示す伸びフランジ加工品を用いて浸炭処理を行った。
浸炭処理は、カーボンポテンシャル(C.P.)が0.6%の浸炭雰囲気中に880℃で3時間保持し、続いて60℃の油中に焼入れた。この時の浸炭ガスは、H:40%、CO:20%、N:40%の組成に調整した混合ガスを用いた。浸炭焼入れ後の加工品について、板厚が5mmの部分(フランジ底部)より硬さおよび金属組織観察用試験片を切り出した。
硬さ測定は、板厚断面の表層から深さ100μmの位置における硬さを無作為に10点測定し平均した。また、金属組織観察は、鏡面研磨仕上げした後、2%ナイタルで腐食し光学顕微鏡にて観察し、焼入れ不良層の有無を判別した。
合金成分が発明範囲内であってもY値が30未満であるNo.1、No.4、No.6、No.12、No.17、No.18、No.19、No.38およびNo.46や、MnまたはCr含有量が下限以下であるNo.34およびNo.52には、表層から深さ100μmの位置における硬さが低く、不完全焼入れ組織が観察された。
表層から深さ100μmの位置における硬さをY値で整理すると、図4に示すように、Y値=5C+22Mn+32Crで定義されるY値が30以上になると、表層から深さ100μmの位置における硬さが安定して高い値を示すとともに、金属組織においてもフェライトやベイナイトが見られず、良好な焼入れ性を示すことが明らかである。
本発明例(No.21)と比較例(No.1)について、浸炭焼入れ後における板厚方向の硬さ分布を測定した一例を図5に示す。図5に示されるように、比較例の鋼板では、表面からの深さが50〜300μm付近で硬さが350Hv程度まで低下している領域が認められ、これが焼入れ不良による表面の硬さ不良である。これに対して本発明例の鋼板では、硬さ不良部が認められないことから、低いカーボンポテンシャルでの浸炭焼入れでも表層部で高い焼入れ硬さが得られていることが明らかである。
以上の実施例で示されたように、本発明は、合金成分およびその含有量を適正に調整し、X=30C+30Si+20Mn+5Cr+150S+80Ti−1.5炭化物間平均距離で規定されるX値を40以下とし、Y=5C+22Mn+32Crで規定されるY値を30以上とし、焼鈍材の硬さを150HV以下とすることで、優れた伸びフランジ加工性が得られ、浸炭加熱時に発生する板厚表層部分の脱Bによる焼入れ不良を改善することが可能である。

Claims (2)

  1. C:0.10〜0.50質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.20〜1.8質量%、Cr:0.20〜2.0質量%、P:0.02質量%以下、S:0.02質量%以下、Ti:0.01〜0.20質量%、Al:0.002〜0.10質量%、B:0.0005〜0.0050質量%、残部がFeおよび不可避的不純物であり、炭化物がフェライト中に分散しており、その炭化物間の平均距離が0.8μm以上であり、下記式(1)で定義されるX値が40以下であり、下記式(2)で定義されるY値が30以上であり、かつ硬さが150HV以下である加工性に優れた浸炭用鋼板。
    X=30C+30Si+20Mn+5Cr+150S+80Ti−1.5炭化物間平均距離・・・(1)
    Y=5C+22Mn+32Cr・・・(2)
  2. 請求項1に記載の浸炭用鋼板に、カーボンポテンシャルが0.2%以上0.8%未満である浸炭焼入れ処理を施して得られる機械構造部材。
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