JP5489497B2 - 焼入性に優れたボロン鋼鋼板の製造方法 - Google Patents

焼入性に優れたボロン鋼鋼板の製造方法 Download PDF

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本発明は、良好な加工性と焼入性を兼備し、自動車部品をはじめとする各種機械部品に適したボロン鋼の鋼板およびその製造方法に関する。
少量のBを添加した炭素鋼(ボロン鋼)は焼入性に優れることから、板厚中心部まで十分に焼きが入る(マルテンサイト組織となる)ことが要求される種々の部品用途において、低コスト材として使用されている。ボロン鋼の焼鈍鋼板は、打抜き、曲げなどのプレス成形や、鍛造、切削などの工程により所定の部品形状に加工されたのち、焼入れ・焼戻し、浸炭焼入れ等の熱処理を施して使用される。したがって、素材であるボロン鋼鋼板には加工性、焼入性、および用途に応じた熱処理後の特性が要求される。
しかしながら、ボロン鋼鋼板には以下のような問題が生じている。
(i)鋼板の製造段階、あるいは部品成形後の焼入れ時に施される高温加熱によって、鋼材表層部の固溶Bが減少する(脱B)。
(ii)脱Bによって表層部の焼入性が低下し、焼入れの際に異常層を生じて表面硬さが低下する。
(iii)特に板厚が大きい場合、焼入れ時の冷却速度が低下するため、表面硬さの低下が顕著になる。場合によっては板厚中心部付近の断面硬さも低下して素材そのものの強度が不足することもある。
表面硬さの低下について、これまでにも対応策が提案されている。例えば特許文献1には、C含有量が0.15〜0.35重量%のボロン鋼を使用し、保護雰囲気中で雰囲気ガスのカーボンポテンシャルを素材炭素量より0.04〜0.25%高く設定し、部品表面を微浸炭させた後、焼入れすることにより、脱Bによる表面部の焼入性低下を補う手法が開示されている。しかし、この方法では浸炭処理のための設備が必要となる。また、高周波焼入れ、電子ビーム焼入れなど、短時間加熱の局部焼入れにはこの手法は適用できない。
また、特許文献2には、C含有量が0.1〜0.3質量%のボロン鋼を使用し、Ti、Nbの炭窒化物を微細析出させることによって浸炭時における粗大粒の発生を防止し、さらにCr、Moを添加して脱Bによる焼入性低下を補い、表面から深さ0.2〜0.7mmに生成する不完全焼入れ組織の生成を防止している。しかし、この方法ではTi、Nbの炭窒化物を微細析出させるために800〜500℃の温度範囲を1℃/sec以下の冷却速度で徐冷する必要があり、製造性に劣る。また、浸炭を施さない焼入れ時に問題となる異常層については考慮されていない。
特開昭57−94516号公報 特開2001−303172号公報
上記のように、ボロン鋼の焼入れ時における表面硬さ低下に対しては、浸炭処理を施して対応することが多い。しかし、浸炭処理は設備投資、処理時間、処理コストにおいて問題があり、安価な部品が要求される用途では必ずしも容易に採用できるものではない。
本発明はこのような現状に鑑み、浸炭に頼ることなく、通常の焼入れ処理によって部品表層部の高い焼入れ硬さが得られ、かつ加工性の良いボロン鋼鋼板を提供しようというものである。
上記目的は、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.50〜1.60%、Cr:0.05〜1.50%、Ti:0.01〜0.30%、B:0.0005〜0.0050%、P:0.03%以下、S:0.01%以下であり、必要に応じてMo:0.3%以下、Ni:2.0%以下の1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物、かつ下記(1)式で定義されるX値が24以上である組成を有する焼鈍鋼板であって、鋼板の断面組織において、表面からの深さが25〜75μmの表層部領域における炭化物の面積率Asと、板厚中心位置を含む板厚方向長さ50μmの中心部領域における炭化物の面積率Acの比As/Acが0.90以上である鋼板表面の焼入性に優れたボロン鋼鋼板によって達成される。
X=5.5C1/2(1+0.6Si)(1+4.1Mn)(1+0.5Ni)(1+2.3Cr)(1+3.1Mo) …(1)
ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入され、無添加元素の元素記号の箇所には0(ゼロ)が代入される。
本発明の対象となる鋼板の板厚は、例えば1〜12mmである。
また本発明では、上記のボロン鋼鋼板の製造方法として、
1150〜1320℃に加熱されたスラブを仕上温度800〜900℃で熱間圧延したのち、仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間を30sec以下として、巻取温度500〜650℃で巻取り、その後、酸洗を施して熱延酸洗鋼板とする工程(熱延酸洗工程)、
前工程で得られた鋼板を600℃以上Ac1未満の温度範囲で0.5h以上均熱保持して焼鈍する工程(焼鈍工程)、
を有する手法が提供される。
前記焼鈍工程に代えて、
前工程で得られた鋼板を(Ac1−30℃)以上Ac1未満の温度範囲で0.5h以上均熱保持したのち、Ac1以上(Ac1+50℃)の温度範囲で0.5〜20h均熱保持し、その保持温度から少なくとも(Ar1−10℃)までを冷却速度5〜30℃/hで徐冷するヒートパターンで焼鈍する工程(焼鈍工程)、
を採用することがより効果的である。
また、前記熱延酸洗工程と焼鈍工程の間に、
前工程で得られた鋼板を冷間圧延する工程(冷延工程)、
を入れることができる。
本発明のボロン鋼鋼板は、従来のボロン鋼鋼板に比べ表層部の焼入性に優れ、また加工性(延性)も良好である。鋼板製造段階および部品製造段階において新たな製造工程を伴うこともないので、製造コストの上昇も抑えられる。したがって本発明は、自動車部品をはじめとする各種機械部品の用途において、ボロン鋼の普及に寄与しうる。
本発明例と比較例2についてΔHVとX値の関係を示したグラフ。 本発明例と比較例3についてΔHVとT.ELの関係を示したグラフ。 表面硬さおよび板厚中心部硬さに及ぼす板厚の影響を示したグラフ。
発明者らの検討によれば、ボロン鋼に特有の脱B現象そのものを防止することは現状の製造プロセスにおいて極めて困難であり、脱Bが生じること自体はある程度許容することが得策である。一方、炭素鋼材の製造プロセスでは、通常、鋼材表層部の炭素も減少する(脱C)。そこで発明者らは詳細な検討の結果、ボロン鋼の表層部焼入性に関し、以下の知見を得た。
[1]脱Bによって生じる焼入性の低下は、化学組成を厳密にコントロールすることにより補完できる。
[2]通常の鋼板製造工程において、脱Cは熱延工程の仕上圧延終了後、巻取までの間に最も生じやすい。上記[1]の組成面での対策を講じた上で、熱延工程で不可避的に生じる脱Cをできるだけ軽減することにより、浸炭等のC濃化手段に頼ることなく、表層部焼入性を十分に確保することができる。
本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。以下、本発明を特定するための事項について説明する。
〔化学組成〕
本明細書において鋼組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.10〜0.40%
Cは機械構造用部品としての芯部強度を確保するために必要な元素である。十分な強度を確保するためには0.10%以上のC含有量が必要である。ただし、C含有量が多くなると焼鈍後の加工性が低下する。本発明では、自動車部品をはじめとする各種機械部品に幅広く適用できる加工性を持たせることを考慮して、C含有量は0.40%以下の範囲とする。
Si:0.50%以下
Siは脱酸効果があるが、過剰に添加すると加工性を低下させる。また焼鈍時に粒界酸化層の形成を助長し、調質後の部材の疲労特性を低下させる。そのためSi含有量は0.5%以下とする。
Mn:0.50〜1.60%
Mnは脱酸・脱硫、および焼入性の向上に有効であり、これらの作用を十分に発揮させるために0.50%以上のMn含有量を確保する。ただし、過剰のMn含有は焼鈍材を硬質化させ、加工性の低下を招く要因となるので、Mn含有量は1.60%以下の範囲に制限される。
Cr:0.05〜1.50%
Crは焼入性を向上させ、強度や耐摩耗性を向上させる作用を有する。ただし0.05%未満ではその作用は十分に発揮されない。一方、過剰のCr添加は焼鈍材を硬質化させ、加工性の低下を招く要因となる。またCrは炭化物を安定化させる作用を有するので、Cr含有量が多いとAc1点以上への加熱を利用した焼鈍を施しても炭化物を固溶させるのに長時間を要する。種々検討の結果、Cr含有量は1.50%以下の範囲に制限される。
Ti:0.01〜0.30%
Tiは鋼中のNと結合してTiNとして析出する。このためTiは、BNの析出を防止して焼入性の向上に有効な固溶Bを確保する上で有効である。またTiは焼入れ時のオーステナイト結晶粒径を微細化させる作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるためには0.01%以上のTi含有が必要である。ただし、Ti含有量が多くなるとTiCが過剰に析出し、加工性を低下させる。検討の結果、Ti含有量は0.30%以下の範囲とする。
B:0.0005〜0.0050%
Bは微量の添加によって焼入性を著しく向上させる元素である。鋼中に存在するBのうち、焼入性の向上に有効な固溶B量を十分に確保するためには、0.0005%以上のBを含有させる必要がある。ただし、過剰のB含有は鋼の靭性を阻害する要因となるので、B含有量は0.0050%以下の範囲とする。
P:0.03%以下
Pは鋼の靭性に悪影響を与える元素であり、含有量は少ないほうが望ましいが、本発明の成分系では0.03%まで許容される。
S:0.01%以下
Sも鋼の靭性に悪影響を与える元素であり、含有量は少ないほうが望ましいが、本発明の成分系では0.01%まで許容される。
Mo:0.3%以下
Moは焼入性を向上させる元素である。またNiとの複合添加で鋼の強度・靭性を高める作用を有する他、特殊炭化物を形成することによって耐摩耗性を向上させる作用もある。このため、本発明では必要に応じてMoを含有させることができる。これらの作用を十分に得るためには0.05%以上のMo含有量を確保することがより効果的である。ただしMoは高価な元素であり、Moを添加する場合は0.3%以下の範囲で行う。
Ni:2.0%以下
Niは焼入性・靭性を向上させる元素であり、本発明では必要に応じて添加することができる。その作用を十分に得るためには0.5%以上のNi含有量を確保することがより効果的である。ただし、あまり多量に添加してもコストに見合った靭性改善効果は期待できない。Niを添加する場合は2.0%以下の範囲で行う。
本発明では各合金成分の含有量が上記の範囲において、さらに下記(1)式で定義されるX値が24以上となるように成分調整されていることが重要である。
X=5.5C1/2(1+0.6Si)(1+4.1Mn)(1+0.5Ni)(1+2.3Cr)(1+3.1Mo) …(1)
このX値は、本発明の成分系において、脱Bが生じることを前提とした場合の、表層部の焼入性を評価する指標である。発明者らは詳細な検討の結果、このX値が24以上となる成分組成に調整したとき、通常の焼入れ処理後の断面硬さにおいて、表層部の硬さ低下が顕著に抑制できることを見出した。
〔金属組織〕
本発明のボロン鋼鋼板は、フェライトマトリクス中に炭化物が分散した焼鈍組織を有しており、かつ鋼板断面の表層部において脱Cが抑制されている。脱Cの程度は、表層部と板厚中心部の炭化物量を比較することによって知ることができる。発明者らの検討によれば、前述の成分組成を有する鋼において、表面からの深さが50μm程度の位置における炭化物量が、板厚中心部に対して90%以上に維持されていれば、焼入れ後に問題となる表層部の硬さ低下は顕著に改善されることがわかった。
本発明では、鋼板断面における表層部の炭化物量の指標として、表面からの深さが25〜75μmの領域における炭化物の面積率As(%)を採用する。また、板厚中心部の炭化物量の指標として、板厚中心位置を含む板厚方向長さ50μmの領域における炭化物の面積率Ac(%)を採用する。そして、表層部と中心部の炭化物面積率の比As/Acによって脱Cの程度を評価する。このAs/Ac値が0.90以上であるとき、前述の限定された化学組成との相乗効果により、焼入れ後の表層部の硬化不足(中央部に対する硬さ低下)が顕著に抑制される。その際、良好な加工性も維持される。
以下、本発明のボロン鋼鋼板を得るための製造方法を例示する。
〔熱延酸洗工程〕
熱延前のスラブ加熱温度は一般的な炭素鋼と同様に1150〜1320℃とすればよい。熱延仕上温度は800〜900℃とする。800℃を下回ると変形抵抗が大きくなり通板性が低下し、また巻取温度500℃以上を確保することが難しくなる。900℃を超えるとオーステナイト粒径が粗大化して熱延材の靱性が低下する。巻取温度は500〜650℃とする。500℃を下回ると熱延材が硬化して製造性が低下する。650℃を上回ると初析フェライトの量が増加し、セメンタイトの分布が不均一になることに加え、パーライトのラメラー間隔が大きくなるため焼鈍によるセメンタイトの球状化が困難になり、焼鈍後の加工性が低下する。
ただし、仕上圧延後、巻取までの間において、仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間を30sec以下とすることが重要である。熱間圧延設備では通常、仕上圧延後、巻取までの間はランアウトテーブル上にて鋼板の表面が直接大気に暴露されており、700℃以上での暴露時間が30secを超えると、表層の脱Cが進行し、合金元素添加により焼入性を改善しても十分な表面硬さが得られない。すなわち、この過程での冷却が、前述のAs/Ac値を0.90以上とするために極めて重要である。また、高温での暴露時間が長くなると鋼板表面のスケールが過剰に厚くなることがあり、脱スケールに要するコストの増加につながる。冷却手段としては水冷が一般的である。
巻取後は、通常の手法にて酸洗に供される。
〔冷延工程〕
板厚調整のために必要に応じて冷間圧延を行うことができる。
〔焼鈍工程〕
前工程において酸洗を終え、必要に応じて冷間圧延が施された鋼板は、焼鈍に供される。
シンプルな焼鈍方法としては、鋼板を600℃以上Ac1未満の温度範囲で0.5h以上均熱保持する方法が採用できる。これにより、パーライト中の層状炭化物を分断し、球状化して加工性を付与する。保持時間は概ね48h以下とすればよい。均熱保持とは、板厚中心部まで所定の温度範囲に保持されることをいう。
さらに加工性の改善に有効な焼鈍として、(a)前工程で得られた鋼板を(Ac1−30℃)以上Ac1未満の温度範囲で0.5h以上均熱保持したのち、(b)Ac1以上(Ac1+50℃)の温度範囲で0.5〜20h均熱保持し、(c)その保持温度から少なくとも(Ar1−10℃)までを冷却速度5〜30℃/hで徐冷するヒートパターンを採用することができる。(a)の加熱保持は概ね24h以下とすればよい。(a)のあとに(b)の加熱を行うことによって、微細な炭化物を溶解させると共に、炭化物の一部を残存させる。その後(c)の冷却過程で上記の残存した炭化物を核として炭化物を成長させ、炭化物を球状かつ粗大にする。この徐冷は変態が完了するまで実施することが望ましく、徐冷の終了温度は、工業的には(Ar1−10℃)から(Ar1−80℃)までの間で設定すればよい。その後の冷却速度は任意に設定して構わない。
ここで、Ac1は昇温過程におけるA1点(オーステナイト変態開始点)、Ar1は降温過程におけるA1点(フェライト+セメンタイト変態完了点)である。
以上のようにして本発明のボロン鋼鋼板が得られる。
〔加工、焼入れ焼戻し〕
上記のようにして得られた本発明のボロン鋼鋼板は、一般的な手法により、所定の機械部品に加工され、その後、焼入れ焼戻し処理に供される。焼入れに際しては、特に浸炭等の特殊な雰囲気加熱を行わなくてよい。
表1に示す組成の鋼を溶製し、各鋼とも、加熱温度1150〜1320℃、仕上温度810〜870℃、巻取温度550〜610℃、仕上温度から700℃までの滞在時間15〜30secの条件で熱間圧延を施し、酸洗し、その後、710℃、均熱保持40hのシンプルなヒートパターンでの焼鈍を施し、板厚5.0mmのボロン鋼鋼板(供試材)を得た。なお、製造条件はいずれも本発明で規定する適正条件である。
Figure 0005489497
各供試材について、圧延方向および板厚方向に平行な断面(L断面)を光学顕微鏡で観察し、前述の表層部の炭化物面積率As(%)、中心部の炭化物面積率Ac(%)を求めた。その際、各供試材のAsおよびAcの測定において、それぞれ50μm×50μmの観察視野を無作為に5視野選択して各視野について炭化物面積率を測定し、その平均値をその供試材のAsおよびAcとし、As/Ac値を求めた。
加工性を評価するために、供試材からJIS13B号引張試験片を作製し、引張試験を行って全伸びT.EL(%)を求めた。また、JIS13B号引張試験片の平行部中央の両エッジ部分に2mmVノッチを形成した切り欠き引張試験片を作製し、引張試験を行って切り欠き引張伸びElv(%)を求めた。これらの引張試験では引張方向が圧延方向に一致している。また標点間距離はT.ELを求める試験片で50mm、Elvを求める切り欠き試験片で10mmとした。
供試材から切り出した試験片に焼入れ処理を施した。焼入れ条件は、ソルトバス炉中で900℃で15min均熱保持したのち、60℃の油中に焼入れする方法とした。焼入れ後の試料について、表面硬さHs(HV)および板厚中心部の断面硬さHc(HV)を測定した。それぞれ無作為に選択した10点の測定値を平均することによりその供試材のHsおよびHcとした。そしてΔHV=Hc−Hsを算出した。これらの結果を表2に示す。
Figure 0005489497
表2からわかるように、本発明例のものはAs/Ac値が0.90以上を満たし、ΔHVは100以下と、表面硬さの低下が少なく、かつT.ELが33%以上、Elvが38%以上という良好な加工性を兼ね備えていた。これに対し、比較例1と表示した鋼種AはX値が小さく焼入性が低いために十分な焼入れ硬さが得られていない。比較例2と表示した鋼種B、F、GはX値が小さいために表面硬さの低下が著しく、ΔHVが大きくなっている。図1に本発明例と比較例2についてΔHVとX値の関係を示す。X≧24の本発明例はΔHVが比較例2に比べて明らかに小さくなっている。比較例3と表示した鋼種D、I、M、Rは合金元素量が本発明の規定範囲の上限を超えているものであり、ΔHVは小さい反面、加工性(特に切り欠き伸び)が低下している。図2に本発明例と比較例3についてΔHVとT.ELの関係を示す。本発明例のものは、焼入れ時の表面硬さ低下が抑制され、かつ比較例3に比べて焼鈍材の延性に優れている。
表1の鋼種Jを用いて、熱延条件の影響を調査した。熱延の仕上温度、巻取温度、および仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間を種々変えて熱間圧延を行い、その後、実施例1と同様、710℃、均熱保持40hのシンプルなヒートパターンでの焼鈍を施し、板厚5.0mmのボロン鋼鋼板(供試材)を得た。得られた供試材について、実施例1と同様の手法でAs/Ac、T.EL、Elvを求めた。また、供試材から切り出した試験片を用いて実施例1と同様の手法で焼入れ処理を施し、ΔHVを求めた。結果を表3に示す。
Figure 0005489497
表3からわかるように、本発明例のものは、As/Ac値が0.90以上を満たし、ΔHVが小さく、かつT.ELが33%以上、Elvが38%以上という良好な加工性を兼ね備えていた。これに対し条件4では仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間が長すぎたため脱Cが進行し、焼入れ後の表面硬さの低下ΔHVが大きくなった。条件5では巻取温度が本発明の規定範囲より高いために炭化物の分布が不均一となり、加工性が低下した。条件8では仕上温度が高いために仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間が長くなり、脱Cが進行してΔHVが大きくなった。
表1の鋼種H、K、Mを用いて、焼鈍条件の影響を調査した。各鋼種とも熱延加熱温度1230〜1320℃、仕上温度850℃、巻取温度590〜630℃、仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間20〜30secの条件で熱延を行い、酸洗して板厚5.0mmの熱延酸洗鋼板を得た。これらについて、以下の2通りの条件で焼鈍を施しボロン鋼鋼板(供試材)を得た。
〔条件A〕710℃で均熱保持40h
〔条件B〕(a)700℃で均熱保持20h→(b)760℃で均熱保持10h→(c)650℃まで10℃/hで冷却、その後、炉冷
焼鈍条件Bにおいて、(a)の700℃は(Ac1−30℃)以上Ac1未満の範囲にあり、(b)の760℃はAc1以上(Ac1+50℃)の温度範囲にあり、(c)の650℃は(Ar1−10℃)以下(Ar1−80℃)以上の温度範囲にある。
焼鈍後の供試材について断面中心硬さ、T.EL、Elvを測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0005489497
表4からわかるように、いずれの鋼種においても条件Bで焼鈍を施したものは、条件Aのものと同等またはそれ以上の加工性を示した。
表1の鋼種F(比較例)および鋼種K、L(本発明例)を用いて板厚の影響を調査した。各鋼種とも熱延加熱温度1230〜1320℃、仕上温度850℃、巻取温度590〜630℃、仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間20〜30secの条件で熱延を行って板厚を2〜10mmとし、酸洗して種々の板厚の熱延酸洗鋼板を得た。その後、実施例1と同様の条件で焼鈍、および焼入れを施し、焼入れ後の表面硬さおよび板厚中心部の断面硬さを調べた。図3にその結果を示す。
図3からわかるように、比較例である鋼種Fにおいて板厚が5mm以上になると表面硬さの低下が大きくなり、7mm以上になると板厚中心部の断面硬さも低下する。これに対し、本発明例の鋼種K(X値=31)では板厚7mmまで、表面硬さ、板厚中心部硬さともにほとんど低下しない。さらにX値が大きい鋼種L(X値=35)では板厚10mmまで、表面硬さ、板厚中心部硬さともにほとんど低下しない。このように、本発明の規定範囲内にある鋼板は従来よりも肉厚が大きい部材へ適用しても、焼入れ後の表面および板厚中心部硬さの低下を抑制できる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.50〜1.60%、Cr:0.05〜1.50%、Ti:0.01〜0.30%、B:0.0005〜0.0050%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、残部がFeおよび不可避的不純物、かつ下記(1)式で定義されるX値が24以上である組成を有するスラブを1150〜1320℃に加熱、仕上温度800〜900℃で熱間圧延したのち、仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間を10〜30secとして、巻取温度500〜650℃で巻取り、その後、酸洗を施して熱延酸洗鋼板とする工程(熱延酸洗工程)、
    前工程で得られた鋼板を600℃以上Ac1未満の温度範囲で0.5h以上均熱保持して焼鈍することにより、鋼板の断面において、表面からの深さが25〜75μmの表層部領域における炭化物の面積率Asと、板厚中心位置を含む板厚方向長さ50μmの中心部領域における炭化物の面積率Acの比As/Acが0.90以上である焼鈍組織とする工程(焼鈍工程)、
    を有する鋼板表面の焼入性に優れたボロン鋼鋼板の製造方法。
    X=5.5C 1/2 (1+0.6Si)(1+4.1Mn)(1+0.5Ni)(1+2.3Cr)(1+3.1Mo) …(1)
    ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入され、無添加元素の元素記号の箇所には0(ゼロ)が代入される。
  2. 質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.50〜1.60%、Cr:0.05〜1.50%、Ti:0.01〜0.30%、B:0.0005〜0.0050%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、残部がFeおよび不可避的不純物、かつ下記(1)式で定義されるX値が24以上である組成を有するスラブを1150〜1320℃に加熱し、仕上温度800〜900℃で熱間圧延したのち、仕上温度から700℃までの温度域の滞在時間を30sec以下として、巻取温度500〜650℃で巻取り、その後、酸洗を施して熱延酸洗鋼板とする工程(熱延酸洗工程)、
    前工程で得られた鋼板を(Ac1−30℃)以上Ac1未満の温度範囲で0.5h以上均熱保持したのち、Ac1以上(Ac1+50℃)の温度範囲で0.5〜20h均熱保持し、その保持温度から少なくとも(Ar1−10℃)までを冷却速度5〜30℃/hで徐冷するヒートパターンで焼鈍することにより、鋼板の断面において、表面からの深さが25〜75μmの表層部領域における炭化物の面積率Asと、板厚中心位置を含む板厚方向長さ50μmの中心部領域における炭化物の面積率Acの比As/Acが0.90以上である焼鈍組織とする工程(焼鈍工程)、
    有する、鋼板表面の焼入性に優れたボロン鋼鋼板の製造方法。
    X=5.5C 1/2 (1+0.6Si)(1+4.1Mn)(1+0.5Ni)(1+2.3Cr)(1+3.1Mo) …(1)
    ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入され、無添加元素の元素記号の箇所には0(ゼロ)が代入される。
  3. 前記スラブが、質量%で、さらにMo:0.3%以下、Ni:2.0%以下の1種以上を含有する組成を有するものである、請求項1または2に記載のボロン鋼鋼板の製造方法。
  4. 前記熱延酸洗工程と焼鈍工程の間に、
    前工程で得られた鋼板を冷間圧延する工程(冷延工程)、
    を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のボロン鋼鋼板の製造方法。
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