JP2016169433A - 冷間加工性と浸炭熱処理後の靱性に優れる浸炭用鋼板 - Google Patents
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- C21D8/02—Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment during manufacturing of plates or strips
Abstract
【解決手段】板厚が2〜10mmであり、成分組成が、質量%で、C:0.05〜0.30%、Mn:0.3〜3.0%、Al:0.015〜0.1%、N:0.003〜0.030%をそれぞれ含み、残部は鉄および不可避的不純物からなり、鋼組織が、フェライトと炭化物からなり、前記フェライトについて、長軸/短軸で定義されるアスペクト比が3以下のフェライト結晶粒の個数が全フェライト結晶粒の個数の60%以上であるとともに、前記全結晶粒の平均結晶粒径が3〜50μmの範囲であり、かつ、前記炭化物について、前記長軸/短軸で定義されるアスペクト比が2以下の炭化物の個数が全炭化物の個数の80%以上であるとともに、前記全炭化物の平均円相当直径が0.6μm以下である浸炭用鋼板。
【選択図】なし
Description
板厚が2〜10mmであり、
成分組成が、
質量%で、
C :0.05〜0.30%、
Mn:0.3〜3.0%、
Al:0.015〜0.1%、
N :0.003〜0.030%をそれぞれ含み、
残部は鉄および不可避的不純物からなり、
鋼組織が、
フェライトと炭化物からなり、
前記フェライトについて、長軸/短軸で定義されるアスペクト比が3以下のフェライト結晶粒の個数が全フェライト結晶粒の個数の60%以上であるとともに、前記全結晶粒の平均結晶粒径が3〜50μmの範囲であり、かつ、
前記炭化物について、前記長軸/短軸で定義されるアスペクト比が2以下の炭化物の個数が全炭化物の個数の80%以上であるとともに、前記全炭化物の平均円相当直径が0.6μm以下である
ことを特徴とするものである。
上記第1発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
Cr:0%超3.0%以下、
Mo:0%超1.0%以下、
Ni:0%超3.0%以下よりなる群から選択される少なくとも1種
を含むものである。
上記第1または第2発明において、
前記不可避的不純物のうち、Si:0.5%以下、P:0.030%以下、S:0.035%以下であるものである。
上記第1〜第3発明のいずれか1つの発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
Cu:0%超2.0%以下、
Co:0%超5%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである。
上記第1〜第4発明のいずれか1つの発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
V:0%超0.5%以下、
Ti:0%超0.1%以下、
Nb:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである。
上記第1〜第5発明のいずれか1つの発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
Ca:0%超0.08%以下、
Zr:0%超0.08%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである。
上記第1〜第6発明のいずれか1つの発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
Sb:0%超0.02%以下
を含むものである。
上記第1〜第7発明のいずれか1つの発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
REM:0%超0.05%以下、
Mg:0%超0.02%以下、
Li:0%超0.02%以下、
Pb:0%超0.5%以下、
Bi:0%超0.5%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである。
まず、本発明鋼板は、板厚が2〜10mmのものを対象とする。板厚が2mm未満では、構造体としての剛性が確保できなくなる。一方、板厚が10mmを超えると、本発明で規定する組織形態を達成することが難しく、所望の効果が得られなくなる。好ましい板厚は3〜9mm、さらに好ましい板厚は4〜7mmである。
<C :0.05〜0.30%>
Cは、最終的に得られる浸炭(もしくは浸炭窒化)焼入れ部品としての芯部強度を確保するうえで欠くことのできない元素であり、0.05%未満では十分な強度が得られなくなる。しかし、過剰に含有させると靭性が劣化するほか、被削性や冷間鍛造性が低下して加工性を損なうので0.30%を上限とする。Cの好ましい含有量は0.08〜0.25%の範囲である。
Mnは、溶鋼の脱酸に有効な元素であり、その効果を有効に発揮させるには0.3%以上含有させなければならないが、過度に含有させると、冷間加工性や被削性に悪影響を与えるとともに、結晶粒界への偏析量の増大によって粒界強度を低下させ、ひいては衝撃特性に悪影響を及ぼすようになるので、3.0%以下に抑えなければならない。Mnの好ましい含有量は0.5〜2.0%の範囲である。
Alは鋼材の脱酸材として鋼中に含まれてくる元素であり、鋼中のNと結合してAlNを生成し、結晶粒の粗大化を防止する作用を有している。こうした効果を有効に発揮させるには0.015%以上含有させなければならないが、その効果は0.1%程度で飽和し、それを超えると酸素と結合して非金属系介在物となり、衝撃特性等に悪影響を及ぼすようになるので、0.1%を上限と定めた。 好ましくは0.08%以下であり、さらに好ましくは0.06%以下、特に好ましくは0.04%以下である。
Nは鋼中でAl,V,Ti,Nb等と結合して窒化物を生成し、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有しており、その効果は0.003%以上含有させることによって有効に発揮される。好ましくは、0.005%以上である。しかし、それらの効果は約0.030%で飽和し、それ以上に含有させると窒化物が介在物となって物性に悪影響を及ぼすようになるので、それ以上の添加は避けなければならない。好ましくは0.02%以下であり、さらに好ましくは0.015%以下である。
Siは、強化元素あるいは脱酸性元素として有効に作用する反面、粒界酸化を助長して曲げ疲労特性を劣化させるとともに冷間鍛造性にも悪影響を及ぼす。したがってこうした障害をなくすにはその含有量を0.5%以下に抑えなければならず、特に高レベルの曲げ疲労特性が求められるときは、その含有量を0.1%以下に抑えることが望まれる。こうした観点から、Siのより好ましい含有量は0.02〜0.1%の範囲である。
Pは結晶粒界に偏析して靭性を低下させるので、その上限は0.030%と定めた。Pのより好ましい含有量は0.020%以下、さらに好ましくは0.010%以下である。
SはMnSを生成し、被削性の向上に寄与するが、本発明を歯車等に適用する場合は、縦目の衝撃特性だけでなく横目の衝撃特性も重要であり、横目の衝撃特性向上には異方性の低減が必要となり、そのためにはS含有量を0.035%以下に抑えなければならない。Sのより好ましい含有量は0.025%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。
Mo:0%超1.0%以下、
Ni:0%超3.0%以下よりなる群から選択される少なくとも1種>
これらの元素は、焼入性を高めあるいは焼入れ組織を微細化する作用を有する点で有用元素であり、特にCrは優れた焼入性向上効果を有しており、またMoは不完全焼入れ組織の低減と焼入性の向上、さらには粒界強度の向上に有効に作用し、さらにNiは焼入れ後の組織を微細化して耐衝撃性の向上に寄与する。こうした効果は、好ましくはCr:0.2%程度以上、Mo:0.08%程度以上、Ni:0.2%程度以上のうち少なくとも1種を含有させることによって有効に発揮されるが、Cr量が3.0%を超えるとCrが炭化物を生成して粒界偏析を起こし、粒界強度を低下させて靭性に悪影響を及ぼし、Moの上記効果は約1.0%で飽和し、またNiの上記効果も3.0%で飽和するので、それ以上の添加は経済的に全く無駄である。
Co:0%超5%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種>
Cuは耐食性の向上に有効に作用する元素であり、その効果は好ましくは0.3%以上含有させることによって有効に発揮されるが、その効果は2.0%で飽和するのでそれ以上の含有は無駄である。なおCuを単独で含有させると、鋼材の熱間加工性が悪くなる傾向があるので、こうした弊害を回避するには、熱間加工性向上効果を有するNiを前記含有量の範囲で併用することが望ましい。
Ti:0%超0.1%以下、
Nb:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種>
これらの元素はCやNと結合して炭化物や窒化物を生成し、結晶粒を微細化して靭性(耐衝撃性)の向上に寄与するが、それぞれ上限値付近でその効果は飽和し、かえって被削性や冷間加工性に悪影響を及ぼすおそれがでてくるので、それぞれ上限値以下に抑えなければならない。これら元素の添加効果を有効に発揮させるための好ましい下限値はV:0.03%程度、Ti:0.005%程度およびNb:0.005%程度である。
Zr:0%超0.08%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種>
Caは、硬質の介在物を柔軟な介在物で包み込み、またZrはMnSを球状化させ、いずれも被削性の向上に寄与するほか、両元素ともMnSの球状化による異方性の低減によって横目の衝撃特性を高める作用を有しているが、それらの効果はそれぞれ0.08%で飽和するので、それぞれ0.08%以下、さらには0.05%以下、特に0.01%以下とすることが推奨される。なおこれらの元素の上記効果を有効に発揮させるための好ましい下限値は、Ca:0.0005%程度(さらには0.001%程度)、Zr:0.002%程度である。
Sbは、粒界酸化を抑制して曲げ疲労強度を高めるうえで有効な元素であるが、その効果は0.02%で飽和するので、それ以上の添加は経済的に無駄である。該Sbの添加効果を有効に発揮させるための好ましい下限値は0.001%程度である。
Mg:0%超0.02%以下、
Li:0%超0.02%以下、
Pb:0%超0.5%以下、
Bi:0%超0.5%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種>
REMは、Caと同様にMnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めるとともに、被削性の向上に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、REMは、0.0005%以上、さらには0.001%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、0.05%以下、さらには0.03%以下、特に0.01質量%以下が推奨される。
なお、本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLnまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有するのがよい。
上述したとおり、本発明鋼板は、フェライト中に炭化物を分散した鋼組織とするものであるが、特に、フェライト結晶粒につき、等軸化の程度とサイズをそれぞれ特定範囲に制御するとともに、炭化物につき、球状化の程度とサイズをそれぞれ特定範囲に制御することを特徴とする。
本発明鋼板は、後記「好ましい製造方法」のところで説明するように、例えばフェライト+パーライト主体組織の熱延板をさらに球状化焼鈍することにより製造されるものであることから、鋼組織は、フェライト中に炭化物(主としてセメンタイト)が分散(析出)したものとなる。
フェライト結晶粒の形状が等軸粒であることが、伸びフランジ性(穴広げ性)の向上と、熱処理後における表面から深い部分である板厚中心部の硬さ(内部硬さ)の確保の両立に必要である。このため、等軸粒である、アスペクト比(長軸/短軸)が3以下のフェライト結晶粒の個数を、全フェライト結晶粒の個数の60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上とする。
フェライト結晶粒が大きくなりすぎると、表面性状が悪化し、表面割れを起こすとともに、穴広げ性が劣化する。このため、全フェライト結晶粒の平均結晶粒径を、50μm以下、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下とする。一方、下限値については、フェライト結晶粒は微細になるほど特性は良くなるが、圧延能力や冷却能力を高くする必要があり、生産性を低下させる。このため、全フェライト結晶粒の平均結晶粒径は3μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上とする。
炭化物が偏平化したり、粗大化したりすると、打抜き加工時に打ち抜き断面にき裂を発生させて部品になった際の品質低下につながるほか、さらに穴広げ加工をした場合にも破壊の起点となることから、炭化物を球状化かつ微細化する必要がある。このため、球状炭化物である、アスペクト比(長軸/短軸)が2以下の炭化物の個数を、全炭化物の個数の80%以上、好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上とするとともに、全炭化物の平均円相当径を0.6μm以下、好ましくは0.55μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下とする。
ここに、「炭化物」は、主にFe3Cの構造をもつセメンタイトであるが、CrやV、Ti、Nb等が含有される場合は、これらの元素を固溶するセメンタイトやVC、TiC、NbCをも含むものとする。ただし、後述のSEM観察による炭化物サイズの測定において観察できない微細なVC、TiC、NbCなど(円相当径0.1μm未満)は含まないものとする。なお、このような円相当径が0.1μm未満の微細な炭化物は上記した打ち抜き加工性や穴広げ性に影響を及ぼすものでもない。
上記フェライト結晶粒について、最大フェレ径、最小フェレ径を測定し、その比(長軸/短軸)をアスペクト比と定義した。
上記走査型電子顕微鏡による撮像を画像解析することにより全フェライト結晶粒について個々の重心直径を求め、この重心直径を全結晶粒の個数で算術平均したものを、全フェライト結晶粒の平均結晶粒径とした。
板厚の1/4深さ面を研磨およびエッチングしてSEM(走査型電子顕微鏡)試験片を作製し、8000倍の画像を4視野撮影し、写りこんだ炭化物のうち、画像解析ソフト(「Image−Pro Plus」 Media Cybernetics社製)によって、円相当径が0.1μm以上のものの全粒子のアスペクト比(長軸/短軸)および円相当直径を測定し、アスペクト比が2.0以下の粒子および全粒子の各個数をカウントしてその比率を算出するとともに、円相当直径の平均値を算出した。
本発明鋼板は、例えば、上記成分組成を有する原料鋼を溶解、鋳造してスラブとし、スラブまま、または、表面面削したスラブを、加熱、熱間粗圧延、仕上げ圧延の各工程を経て得られた熱延コイル上がり材としての熱延板を用い、この中間材としての熱延板にさらに球状化焼鈍を施した球状化材として製造することができる。その後、表面状態や板厚精度等の必要条件に応じて、さらに、酸洗、スキンパスを施してもよい。
まず、溶存酸素量と全酸素量を調整した溶鋼に、所定の順番で所定の合金元素を添加することによって、所望の酸化物を生成させることができる。特に本発明では、粗大な酸化物が生成しないように、溶存酸素量を調整した後、全酸素量を調整することが極めて重要である。
熱間圧延前の加熱は1150〜1300℃で行う。この加熱によりオーステナイト単相とする。これにより固溶元素(V、Nbなどの添加元素を含む)は、オーステナイトに固溶させる。加熱温度が1150℃未満ではオーステナイトに固溶できず、粗大な炭化物が形成されるため疲労特性改善効果が得られない。一方、1300℃を超える加熱温度は操業上困難である。また、添加元素としてTiが含まれる場合、炭化物のうち最も溶体化温度の高いTiを固溶させる点でも、TiCの溶体化温度以上1300℃以下が必要である。加熱温度のより好ましい下限は1200℃である。
粗圧延では、本発明で規定する所定形状の等軸粒の存在割合を確保するため、再結晶オーステナイトの組織制御を行う。粗圧延温度は、以後の仕上げ圧延の温度確保も考慮して900〜1200℃とし、粗圧延でのオーステナイト粒の微細化、繰り返し再結晶化させることで、所定形状の等軸粒の存在割合を制御することができる。粗圧延温度は、より好ましくは900〜1100℃、さらに好ましくは900〜1000℃である。
熱間圧延は、仕上げ圧延温度が800℃以上になるように行う。仕上げ圧延温度を低温化しすぎるとフェライト変態が高温で起るようになり、フェライト中の析出炭化物が粗大化するため、一定以上の仕上げ圧延温度が必要である。仕上げ圧延温度は、オーステナイト粒を粗大化してベイナイトの粒径を大きくするため、850℃以上とするのがより好ましい。
熱間仕上げ圧延の入り側温度と出側温度の差を150℃以下とする。この温度差が150℃を超える場合は、仕上げ圧延前の温度が高い場合であり、結晶粒(オーステナイト粒)が粗大になるとともに、仕上げ圧延中に生成する再結晶粒も大きくなりやすい。また入側と出側の温度差が大きい場合は、仕上げ圧延中に生成する再結晶組織が不均一になりやすく、アスペクト比が大きい結晶粒が残存しやすい。これらの理由により、アスペクト比が3以下の結晶粒の個数が全結晶粒の個数の60%未満となる。この温度差は、より好ましくは100℃以下である。
上記仕上げ圧延終了後、5s以内に20℃/s以上の冷却速度(急冷速度)で急冷し、580℃以上670℃未満の温度(急冷停止温度)で急冷を停止する。フェライト変態の開始温度を低温化することによりフェライト中に形成される析出炭化物を微細化するためである。冷却速度(急冷速度)が20℃/s未満ではパーライト変態が促進され、または、急冷停止温度が580℃未満ではパーライト変態またはベイナイト変態が促進され、冷間加工性が低下する。一方、急冷停止温度が670℃以上になるとフェライト中の析出炭化物が粗大化してしまい、耐疲労特性が確保できない。急冷停止温度は、好ましくは600〜650℃、さらに好ましくは610〜640℃である。
上記急冷停止後は、5℃/s以上20℃/s未満の冷却速度(緩冷速度)で緩冷する。緩冷速度を5℃/s以上とすることで、熱延中における初析フェライトの形成を抑制し、フェライト中の析出炭化物を適度に微細化させること、熱延板での結晶粒組織を制御することにより、最終鋼板における集合組織形態を制御するためである。緩冷速度が5℃/s未満では、初析フェライトの形成量が多くなり、粗大粒が生成するとともに、最終鋼板で粗大粒が生成し、炭化物の不均一状態を生じ、冷間加工性を劣化させる。
上記緩冷後、550℃超650℃以下で巻き取る。巻取り温度が650℃超では、表面酸化スケールが多く形成され、表面性状が劣化し、一方550℃未満では、マルテンサイトが多く形成され、冷間加工性が低下する。
球状化焼鈍の条件は、通常よりも低温・短時間とすることが必要である。すなわち、加熱温度は705〜740℃とし、保持時間は加熱温度に応じて2〜6時間とし、その後の680℃までの平均冷却速度は0.001〜0.01℃/sとするとよい。加熱温度が高すぎると、炭化物(主としてセメンタイト)が粗大化しやすく、一方加熱温度が低すぎるとパーライトが残存して炭化物のアスペクト比が大きくなりやすい。平均冷却速度が上記規定範囲内になるように途中で等温保持してもよい。平均冷却速度が0.01℃/sを超えると再生パーライトが生成して球状炭化物のアスペクト比が大きくなる。一方平均冷却速度が0.001℃/sを下回ると工業的に時間がかかりすぎるだけでなく、球状炭化物が粗大化しやすくなる。
カーボンポテンシャル(CP値)=0.8%のガス雰囲気中で、900℃×2.5h保持後さらに850℃×0.5h保持して浸炭処理を施した後、100℃で油焼き入れをし、その後160℃×2h保持して焼き戻し処理を施した後、空冷した。
そして、浸炭熱処理後の靱性を評価するため、上記各試験片についてシャルピー衝撃試験を実施し、衝撃値50J/cm2以上を合格とした。
また、浸炭熱処理後の材料強度を評価するため、内部硬さとして、ビッカース硬さ試験機を用いて、測定位置:上記各シャルピー試験片の長手方向端面から15mm位置の断面中央部を、荷重:10kg、測定回数:5回の条件で、ビッカース硬さ(Hv)を測定し、300Hv以上のものを合格とした。
Claims (8)
- 板厚が2〜10mmであり、
成分組成が、
質量%で、
C :0.05〜0.30%、
Mn:0.3〜3.0%、
Al:0.015〜0.1%、
N :0.003〜0.030%をそれぞれ含み、
残部は鉄および不可避的不純物からなり、
鋼組織が、
フェライトと炭化物からなり、
前記フェライトについて、長軸/短軸で定義されるアスペクト比が3以下のフェライト結晶粒の個数が全フェライト結晶粒の個数の60%以上であるとともに、前記全結晶粒の平均結晶粒径が3〜50μmの範囲であり、かつ、
前記炭化物について、前記長軸/短軸で定義されるアスペクト比が2以下の炭化物の個数が全炭化物の個数の80%以上であるとともに、前記全炭化物の平均円相当直径が0.6μm以下である
ことを特徴とする冷間加工性と浸炭熱処理後の靱性に優れる浸炭用鋼板。 - 成分組成が、質量%で、さらに、
Cr:0%超3.0%以下、
Mo:0%超1.0%以下、
Ni:0%超3.0%以下よりなる群から選択される少なくとも1種
を含むものである請求項1に記載の浸炭用鋼板。 - 前記不可避的不純物のうち、Si:0.5%以下、P:0.030%以下、S:0.035%以下である請求項1または2に記載の浸炭用鋼板。
- 成分組成が、質量%で、さらに、
Cu:0%超2.0%以下、
Co:0%超5%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸炭用鋼板。 - 成分組成が、質量%で、さらに、
V:0%超0.5%以下、
Ti:0%超0.1%以下、
Nb:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の浸炭用鋼板。 - 成分組成が、質量%で、さらに、
Ca:0%超0.08%以下、
Zr:0%超0.08%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の浸炭用鋼板。 - 成分組成が、質量%で、さらに、
Sb:0%超0.02%以下
を含むものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の浸炭用鋼板。 - 成分組成が、質量%で、さらに、
REM:0%超0.05%以下、
Mg:0%超0.02%以下、
Li:0%超0.02%以下、
Pb:0%超0.5%以下、
Bi:0%超0.5%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の浸炭用鋼板。
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