JP2011225938A - 穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼に、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.01〜0.20%以下を含有させ、鋼組織をフェライト相とベイナイト相からなるものとし、熱延後の冷却を制御して、フェライト相の40%以上の領域における相間界面析出の析出面の面間隔が20nm以上60nm以下として、TiやNbの炭窒化物を相間界面析出によりフェライト相中に析出させて、フェライトを析出硬化する。
【選択図】図1
Description
なかでも、フェライトとベイナイトからなる混合組織鋼板は穴拡げ性と伸びを高いレベルで両立することが可能である。フェライトとベイナイトからなる混合組織において、フェライト相を球状、粗大化することで、穴拡げ性を劣化させることなく伸びを確保し、加えて、フェライト相を析出強化することで強度を確保する技術として、特許文献1〜3に開示されたものがある。
ところが、今日の自動車の更なる軽量化、部品の複雑形状化の要求に対応するためには、従来よりも高い穴拡げ性、加えて、曲げ成形の指標となる局部延性に優れた混合組織鋼板が要求されている。
さらに、特許文献5には、フェライト相と硬質第二相(マルテンサイト、残留オーステナイト)からなる組織において、フェライト相に熱延後の冷却中に合金炭化物を析出させることでフェライト相を強化した鋼に関わる技術が開示されている。しかしながら、析出物の分散に起因する局部延性や打ち抜き加工性の劣化が懸念される。
これまで、析出強化を使ったフェライト相の強化が検討されているが、ベイナイト相特性を巻き取り条件にて制御するためには、フェライト相の析出制御は巻取り前の熱延の冷却処理中に実施しなくてはならない。これまで、析出物のサイズ制御に関わる技術は検討されているものの、これだけでは、効果的な穴拡げ性の向上効果は得ることができず、さらには、同じく高強度鋼板の加工性として重要な、曲げ特性や局部延性の改善も不十分であった。
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、析出物のサイズに加え、析出物分布(配列)の制御こそが、局部延性の向上につながり、結果として、曲げ性や効果的な穴拡げ性の改善を達成できることを見出した。また、その析出物の分布の制御方法についても、鋭意検討を重ねた結果、極めて限られた温度域における、徐冷と急冷の組み合わせによって達成できることを見出して、この発明を完成するに至った。
(1) 鋼組織がフェライト相とベイナイト相からなり、前記フェライト相中に炭窒化物が相間界面析出により析出されており、前記フェライト相の40%以上の領域における相間界面析出の析出面の面間隔が20nm以上60nm以下であることを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(2) 前記相間界面析出の列内の平均炭窒化物サイズが6nm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(3) 前記相間界面析出の面内の析出物密度が1×108個/mm2以上、5×109個/mm2以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
Nb:0.01%以上、0.10%以下、
Ti:0.01%以上、0.20%以下、
の1種または2種を含有する鋼組成を有し、前記炭窒化物がNbとTiの1種または2種を含む炭窒化物であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(5) さらに、質量%にて、
C:0.01%以上、0.1%以下、
Si:0.005%以上、2.0%以下、
Al:0.010%以上、2.0%以下、
Mn:0.3%以上、3.0%以下、
P:0.08%以下、
S:0.010%以下、
N:0.010%以下、
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする上記(4)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(7) 鋼組成中にさらに、Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を、質量%にて、0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする上記(5)または(6)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(8) 鋼組成中にさらに、質量%にて、Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、B:0.0003%以上、0.007%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(5)〜(7)の何れかに記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(10) 上記(9)に記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法において、更に、連続鋳造後、そのまま、または、再加熱により、熱延前のスラブ温度を1100℃以上とし、次いで、粗圧延を1050℃以上で終了し、熱延仕上げ温度をAr3以上、970℃以下として熱間圧延を行い、引き続き800℃以上の温度域を10℃/sec以上の平均冷却速度で冷却することを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
この効果は、熱延板の組織を著しく壊す後工程での熱処理を行わない限り継続させることができる。すなわち、熱延鋼板のみならず、これを原板とする熱延めっき鋼板においても同様の効果を得ることができる。
さらに、フェライト相を十分に硬くし、局部延性を向上させるためには、上記した20nm以上60nm以下の面間隔を持つ領域が、フェライト相の40%以上存在することが必要である。この値未満では、フェライト相の硬化が不十分で局部延性の向上効果を十分に得ることができない。
また、析出面内の炭窒化物の析出物密度も重要であり、鋼板の強度を確保するためには、1×108個/mm2以上であることが望ましい。析出物密度が1×108個/mm2未満では、析出面が少ないために最弱面となり、応力の集中を引き起こすことで局部延性の低下をおこす。一方で、5×109個/mm2超では、多量の析出物が析出面の脆化を引き起こし局部延性の低下を引き起こすため、5×109個/mm2以下とする。
Nb、Tiは、相間界面析出によって微細な炭窒化物を析出して鋼を強化するために有効な元素である。相間界面析出によって、Ti、Nbとも0.01%未満では析出能が低く、狙いの析出分布を得ることができない。一方で、Nbで0.10%、Tiで0.20%を超えても、熱延前の加熱においての析出物溶解が不十分で、相間界面析出量に優位性が出ないばかりでなく、解け残りの粗大炭窒化物が局部延性を劣化させる。
Nは、AlN等を析出して結晶粒を微細化するのに有効であるが、Nが0.010%を超えて含有すると固溶窒素が残存して延性が低下することとなるので、上限を0.010%とする。なお、精錬時のコストの問題から下限を0.0010%とするのが望ましい。
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の高強度薄鋼板を製造するに際しては、熱間圧延後、所定の温度域の冷却制御によって、相間界面析出の分布制御が可能であることを見出した。具体的には、800℃以下、600℃以上の領域において変態速度は大きく変化し、これにより、相界面析出分布は大きく変化することを利用する。
空冷する時間は、それが1.5秒未満では相間界面析出の発生領域が十分ではなく、局部延性の向上効果が得られないことから、1.5秒以上とする。空冷時間が長いとパーライトが生成されるため、空冷時間は15秒以下であることが望ましい。
加えて、この相間界面析出の効果は第二相を制御することで作用が強くなる。具体的には、巻取り温度を450℃から650℃未満とし、第二相をベイナイト化することで組織最適化と相間界面析出による組織硬度差の低減の相乗効果により穴拡げ性と局部延性が上昇する。このとき、450℃未満では硬質なベイナイトまたはマルテンサイト変態が起こり、局部延性、穴拡げ性が劣化する。一方で、650℃以上では、析出物の粗大化、パーライト相の発生により強度、局部伸びが低下する。
熱間圧延前のスラブは、連続鋳造後そのまま、または、再加熱により1100℃以上とする。一方、1300℃超ではスケールの生成が大きくなって鋼板の表面性状を良好なものとすることができないため、1300℃以下であることが望ましい。再加熱温度が1100℃未満では、炭窒化物の溶解が不十分で、強度と局部延性の低下を起こす。その後、仕上げ温度が低い粗圧延から仕上げ圧延前までに炭窒化物の析出が起こり、強度の低下を引き起こすため、粗圧延は1050℃以上で終了する。
冷却後は、上記のように650℃未満、450℃以上の温度範囲で巻き取って、熱延鋼板とする。なお、熱延後は、めっきなどの表面処理を必要に応じて実施する。
以上によって、本発明の高強度薄鋼板を製造することができる。
表1に示した成分組成を有する溶鋼を製造し、冷却凝固後の鋼片を1200℃まで再加熱し、1080℃にて粗圧延を終了し、表2、3に示す条件にて熱延を実施した。なお、800℃までの平均冷却速度は50℃/秒とした。
得られた鋼板の組織を観察するとともに、特性を調べ、その結果を表2、3に示した。
相間界面析出の面間隔の測定、及び、20nm以上60nm以下の面間隔を持つ領域の発生率(相間界面析出発生率)の測定は、ランダムにフェライト粒を抽出し、結晶粒中の相間界面析出をSTEMにて観察し、上記の面間隔を満たす領域の割合を測定する。この測定を少なくとも50粒子以上行い、これを平均することで発生率を計算した。
穴拡げ試験は、穴径10mm、クリアランス12%で打ち抜きを行ったサンプルを頂点角60°のポンチにて穴を押し上げ、亀裂が板厚を貫通したところの穴径d1から
穴拡げ率(%)=(d1−10)/10×100
にて求めた。
RA=−(ln(t/t0)+ln(w/w0))
を、L,C,45°のそれぞれの方向に対して求め、
局部延性=(RA(L方向)+RA(C方向)+2×RA(45方向))/4
から求めた。
表2、3に製造条件及び得られた鋼板の特性を示すが、A2は巻取温度が上限を超えており、B2は巻取温度が下限を下回り、D2は仕上げ温度がAr3以下となっている。G2は空冷時間が下限を下回っており、相間界面析出領域の発生率が低い。K2、K3はそれぞれ、空冷開始温度が上限、下限を満足しておらず、前者は相間界面析出発生率、析出物サイズ、密度、後者は相間界面析出発生率、密度が範囲外にある。P2は800℃から600℃までの冷却速度が下限を下回っており、析出物サイズと密度が範囲外にある。
Claims (10)
- 鋼組織がフェライト相とベイナイト相からなり、前記フェライト相中に炭窒化物が相間界面析出により析出されており、前記フェライト相の40%以上の領域における相間界面析出の析出面の面間隔が20nm以上60nm以下であることを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
- 前記相間界面析出の列内の平均炭窒化物サイズが6nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
- 前記相間界面析出の面内の析出物密度が1×108個/mm2以上、5×109個/mm2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
- 質量%にて、
Nb:0.01%以上、0.10%以下、
Ti:0.01%以上、0.20%以下、
の1種または2種を含有する鋼組成を有し、前記炭窒化物がNbとTiの1種または2種を含む炭窒化物であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。 - さらに、質量%にて、
C:0.01%以上、0.10%以下、
Si:0.005%以上、2.0%以下、
Al:0.010%以上、2.0%以下、
Mn:0.3%以上、3.0%以下、
P:0.08%以下、
S:0.010%以下、
N:0.010%以下、
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする請求項4に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。 - 鋼組成中にさらに、質量%にて、
V:0.005%以上、0.10%以下、Mo:0.02%以上、0.5%以下、Cr:0.1%以上、5.0%以下、W:0.01%以上、5.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。 - 鋼組成中にさらに、
Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を、質量%にて、0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする請求項5または6に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。 - 鋼組成中にさらに、質量%にて、
Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、B:0.0003%以上、0.007%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。 - 請求項1〜8の何れかに記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法であって、
熱間圧延後の冷却の際に、780℃以下、620℃以上の間の温度範囲において、1.5秒以上の空冷を行い、更に、800℃以下、600℃以上の温度範囲の空冷以外の領域の平均冷却速度が15℃/秒以上となるように冷却を行い、450℃以上、650℃未満の温度で巻き取ることを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。 - 請求項9に記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法において、更に、連続鋳造後、そのまま、または、再加熱により、熱延前のスラブ温度を1100℃以上とし、次いで、粗圧延を1050℃以上で終了し、熱延仕上げ温度をAr3以上、970℃以下として熱間圧延を行い、引き続き800℃以上の温度域を10℃/sec以上の平均冷却速度で冷却するこことを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
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