JP2011225938A - 穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】析出強化フェライトとベイナイトの混合組織を用いて穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】鋼に、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.01〜0.20%以下を含有させ、鋼組織をフェライト相とベイナイト相からなるものとし、熱延後の冷却を制御して、フェライト相の40%以上の領域における相間界面析出の析出面の面間隔が20nm以上60nm以下として、TiやNbの炭窒化物を相間界面析出によりフェライト相中に析出させて、フェライトを析出硬化する。
【選択図】図1

Description

本発明は、主としてプレス加工されて使用される自動車等の足回り部品や構造材料に好適な伸びと穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法に関するものである。
自動車の車体構造に使用される鋼板には高いプレス加工性と強度が要求される。プレス加工性と高強度とを兼備した高強度薄鋼板として、フェライト・マルテンサイト組織、フェライト・ベイナイト組織からなるもの、あるいは組織中に残留オーステナイトを含有するものなどが知られている。
なかでも、フェライトとベイナイトからなる混合組織鋼板は穴拡げ性と伸びを高いレベルで両立することが可能である。フェライトとベイナイトからなる混合組織において、フェライト相を球状、粗大化することで、穴拡げ性を劣化させることなく伸びを確保し、加えて、フェライト相を析出強化することで強度を確保する技術として、特許文献1〜3に開示されたものがある。
ところが、今日の自動車の更なる軽量化、部品の複雑形状化の要求に対応するためには、従来よりも高い穴拡げ性、加えて、曲げ成形の指標となる局部延性に優れた混合組織鋼板が要求されている。
一方で、単相組織や混合組織におけるフェライト相中の析出物を高強度かつ熱的安定性を達成させるために2種類以上の複合炭化物生成元素からなる超格子構造を形成することを開示した特許文献4がある。しかしながら、上記の達成のためには巻取り処理中に析出をさせる必要があり、第二相の制御に制約が生じ、強度低下または伸びの低下が避けられない。
さらに、特許文献5には、フェライト相と硬質第二相(マルテンサイト、残留オーステナイト)からなる組織において、フェライト相に熱延後の冷却中に合金炭化物を析出させることでフェライト相を強化した鋼に関わる技術が開示されている。しかしながら、析出物の分散に起因する局部延性や打ち抜き加工性の劣化が懸念される。
特開2002−180188号公報 特開2002−180189号公報 特開2002−180190号公報 特開2003−321740号公報 特開2009−84648号公報
R. W. K. Honeycombe: Metall. Trans. A, 7A, (1976), 915.
本発明は、従来の問題点を解決するためになされたものであって、非特許文献1に示されるように、オーステナイトからフェライトへの変態中にその相界面において主に粒界拡散にて起こる析出現象(以後、相間界面析出と記載する)によって析出分布が制御された析出強化フェライトとベイナイトの混合組織を用いて、穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
穴拡げ性は組織の均一性に依存する特性である。組織内の硬度差の少ないフェライト相とベイナイト相の混合組織が一般に高い穴拡げ性と伸びを両立できるといわれている。このとき、高延性で高強度を達成するには、フェライト相の分率と硬さを増加させることがポイントとなる。
これまで、析出強化を使ったフェライト相の強化が検討されているが、ベイナイト相特性を巻き取り条件にて制御するためには、フェライト相の析出制御は巻取り前の熱延の冷却処理中に実施しなくてはならない。これまで、析出物のサイズ制御に関わる技術は検討されているものの、これだけでは、効果的な穴拡げ性の向上効果は得ることができず、さらには、同じく高強度鋼板の加工性として重要な、曲げ特性や局部延性の改善も不十分であった。
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、析出物のサイズに加え、析出物分布(配列)の制御こそが、局部延性の向上につながり、結果として、曲げ性や効果的な穴拡げ性の改善を達成できることを見出した。また、その析出物の分布の制御方法についても、鋭意検討を重ねた結果、極めて限られた温度域における、徐冷と急冷の組み合わせによって達成できることを見出して、この発明を完成するに至った。
即ち、本発明の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板及びその製造方法の要旨は、以下のとおりである。
(1) 鋼組織がフェライト相とベイナイト相からなり、前記フェライト相中に炭窒化物が相間界面析出により析出されており、前記フェライト相の40%以上の領域における相間界面析出の析出面の面間隔が20nm以上60nm以下であることを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(2) 前記相間界面析出の列内の平均炭窒化物サイズが6nm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(3) 前記相間界面析出の面内の析出物密度が1×108個/mm2以上、5×109個/mm2以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(4) 質量%にて、
Nb:0.01%以上、0.10%以下、
Ti:0.01%以上、0.20%以下、
の1種または2種を含有する鋼組成を有し、前記炭窒化物がNbとTiの1種または2種を含む炭窒化物であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(5) さらに、質量%にて、
C:0.01%以上、0.1%以下、
Si:0.005%以上、2.0%以下、
Al:0.010%以上、2.0%以下、
Mn:0.3%以上、3.0%以下、
P:0.08%以下、
S:0.010%以下、
N:0.010%以下、
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする上記(4)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(6) 鋼組成中にさらに、質量%にて、V:0.005%以上、0.10%以下、Mo:0.02%以上、0.5%以下、Cr:0.1%以上、5.0%以下、W:0.01%以上、5.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(5)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(7) 鋼組成中にさらに、Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を、質量%にて、0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする上記(5)または(6)に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(8) 鋼組成中にさらに、質量%にて、Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、B:0.0003%以上、0.007%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(5)〜(7)の何れかに記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
(9) 上記(1)〜(8)の何れかに記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法であって、熱間圧延後の冷却の際に、780℃以下、620℃以上の間の温度範囲において、1.5秒以上の空冷を行い、更に、800℃以下、600℃以上の温度範囲の空冷以外の領域の平均冷却速度が15℃/秒以上となるように冷却を行い、450℃以上、650℃未満の温度で巻き取ることを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
(10) 上記(9)に記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法において、更に、連続鋳造後、そのまま、または、再加熱により、熱延前のスラブ温度を1100℃以上とし、次いで、粗圧延を1050℃以上で終了し、熱延仕上げ温度をAr3以上、970℃以下として熱間圧延を行い、引き続き800℃以上の温度域を10℃/sec以上の平均冷却速度で冷却することを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
本発明の高強度薄鋼板は、フェライト相中の析出物による析出強化により、充分な強度を確保できる。加えて、ベイナイト相との混合組織化により、高い穴拡げ性を確保しつつ、混合組織特有の高い延性を得ることが可能となる。また、本発明の根本となる、相間界面析出を使った析出物の分布制御にて、短時間でフェライト相中に均一に析出物を分散させることが可能となり、局部延性の著しい上昇とこれに起因する効果的な穴拡げ率の向上が高強度鋼において可能とできる。
この効果は、熱延板の組織を著しく壊す後工程での熱処理を行わない限り継続させることができる。すなわち、熱延鋼板のみならず、これを原板とする熱延めっき鋼板においても同様の効果を得ることができる。
本発明の鋼板と比較例の鋼板の穴拡げ性を比較して示す図である。 本発明の鋼板と比較例の鋼板の局部延性を比較して示す図である。
本発明の高強度薄鋼板は、穴拡げ性を高めるフェライト相とベイナイト相の混合組織において、フェライト相中の析出物の分散状態に着目したもので、鋭意検討を重ねた結果、以下に説明するような特定の分散状態のときに、強度と局部延性、穴拡げ性を高いレベルで両立できることを見出した。
本発明においては、組織はフェライト相とベイナイト相の混合組織とする。このような混合組織とすることで、伸びと穴拡げ性を高いレベルで達成できる。このとき、第二相をマルテンサイトとすると、穴拡げ性が著しく劣化し、ベイナイト単相やフェライト単相では伸びの劣化を招く。
フェライト相中に析出する炭窒化物の分散は本発明において最も重要である。炭窒化物は、分散制御を容易に行うために、少なくとも相間界面析出により析出させるようにする。このとき、周期的に析出の起こる析出面の面間隔は、20nm以上、60nm以下とする。20nm未満で析出させる場合、高密度に析出するため、伸びが劣化するか、析出面内の析出物密度を著しく低下させるために、析出面が局部的に弱くなり、局部延性の低下を起こす。一方で、60nm超では、フェライト相の強化が不十分で、希望の強度を確保することができない。
さらに、フェライト相を十分に硬くし、局部延性を向上させるためには、上記した20nm以上60nm以下の面間隔を持つ領域が、フェライト相の40%以上存在することが必要である。この値未満では、フェライト相の硬化が不十分で局部延性の向上効果を十分に得ることができない。
相間界面析出により析出する炭窒化物の平均サイズは6nm以下とすることが望ましい。平均サイズが6nm超では、析出物の密度が十分に確保できず、鋼の強度が低下する。
また、析出面内の炭窒化物の析出物密度も重要であり、鋼板の強度を確保するためには、1×108個/mm2以上であることが望ましい。析出物密度が1×108個/mm2未満では、析出面が少ないために最弱面となり、応力の集中を引き起こすことで局部延性の低下をおこす。一方で、5×109個/mm2超では、多量の析出物が析出面の脆化を引き起こし局部延性の低下を引き起こすため、5×10個/mm以下とする。
炭窒化物を形成するには、合金元素として、NbまたはTiのいずれか、または両方を含むようにする。Nb、Tiはフェライト相中での炭窒化物の析出の駆動力が高い元素であり、添加量によって、析出面の面間隔、析出面の面内析出物密度を制御しやすくする。また、Ti、Nbによる炭窒化物は析出強化能も高いため、これらを含有する炭窒化物とする。但し、Ti、Nbを含有していれば、その他の炭化物生成元素が含有されていても、その駆動力を大きく低下させることはないので本発明の効果を損なうことはない。
以下に本発明の高強度薄鋼板で用いる鋼の化学成分について説明する。含有量の%は、質量%である。
Nb、Tiは、相間界面析出によって微細な炭窒化物を析出して鋼を強化するために有効な元素である。相間界面析出によって、Ti、Nbとも0.01%未満では析出能が低く、狙いの析出分布を得ることができない。一方で、Nbで0.10%、Tiで0.20%を超えても、熱延前の加熱においての析出物溶解が不十分で、相間界面析出量に優位性が出ないばかりでなく、解け残りの粗大炭窒化物が局部延性を劣化させる。
Cは、穴拡げ性を劣化させる元素であるため添加量が低いことが望ましい。しかしながら炭窒化物を生成し、強度を高めるのに有効な元素である。Cの含有量が0.01%未満では強度を十分高めることができない。一方、0.10%を超えると延性の低下が大きくなるので、Cの範囲は、0.01%以上、0.10%以下とする。なお、穴拡げ性の要求が高い場合にはCの上限は、0.05%とするのが望ましい。
Siは、有害な炭化物の生成を押さえフェライト相を生成させるのに有効な元素である。しかし、2.0%を超える添加により延性が低下するほか化成処理性も低下するので、Siの添加量は2.0%以下とする。なお、化成処理性の要求が高い場合には、Siは1.3%以下とするのが望ましい。また、Siは脱酸のために添加されるが、0.01 %未満では脱酸効果が十分でないので、Siの下限は、0.005%以上とするのが望ましい。
Alは、脱酸剤として添加される。この目的のためにはAlは0.010%以上添加する必要がある。一方、Alを添加すると、Siと同様にフェライト相を生成させる効果があり、この点から添加してもよい。ただし、2.0%を超える添加は脆化を招くため、その上限を2.0%とした。なお、化成処理性の要求が高い場合には、1.5%以下とするのが望ましい。
Mnは、焼入れ性を高めて鋼を強化するのに有効な元素である。Mnが0.3%未満では、強度を十分高めることができない。しかし、Mnが3.0%を超えると、焼入れ性が必要以上に高まりフェライト相を十分に確保できず、相間界面析出を得ることができないためMnの添加量は3.0%以下とする。
Pは含有量が多いと粒界へ偏析するために、局部延性を劣化させるとともに溶接性を劣化させる。従って、上限を0.08%とする。なお、Pをいたずらに低減させることは、精錬時のコストアップにつながるので、下限は0.001%とするのが望ましい。
Sは、MnSを形成して局部延性、溶接性を著しく劣化させる元素である。従って、上限を0.010%とする。また、精錬コストの問題から下限を0.0005%とするのが望ましい。
Nは、AlN等を析出して結晶粒を微細化するのに有効であるが、Nが0.010%を超えて含有すると固溶窒素が残存して延性が低下することとなるので、上限を0.010%とする。なお、精錬時のコストの問題から下限を0.0010%とするのが望ましい。
鋼はさらに、V、Mo、Cr、Wの1種または2種以上を含有することができる。これらは、TiやNbと複合にて炭窒化物を生成させる元素である。この目的のためには、V:0.005%以上、Mo:0.02%以上、Cr:0.1%以上、W:0.01%以上、の1種または2種以上を含有させるのがよい。しかし、V:0.10%超、Mo:0.5%超、Cr:5.0%超、W:5.0%超を添加しても、強度上昇の効果は飽和するのみならず、局部延性の低下をもたらすこととなる。したがって、V:0.10%以下、Mo:0.5%以下、Cr:5.0%以下、W:5.0%以下を上限とする。
鋼はさらに、Ca、Mg、Zr、REM(希土類元素)の1種または2種以上を、単独または合計で0.0005%以上、0.05%以下含有することができる。Ca、Mg、Zr、REMは、硫化物や酸化物の形状を制御して局部延性や穴拡げ性を向上させる。この目的のためには、これらの元素の1種または2種以上を単独または合計で0.0005%以上添加するのがよい。しかし、過度の添加は加工性を劣化させるため、その上限を0.05%とした。
鋼はさらに、Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、B:0.0003%以上、0.007%以下の1種または2種以上を含有することができる。これらの元素は焼入れ性を向上させて鋼の強度を高めることができるが、Cu:0.04%未満、Ni:0.02%未満、B:0.0003%未満では焼入れ性が弱く、高温でフェライト形成を促すために、必要な相間界面析出を得ることができない。一方で、この範囲を超えた添加では、焼き入れ性が強くなりすぎて、相間界面析出に必要なフェライト変態を遅らせてしまう。
鋼は、以上の元素のほかSn、Asなどの不可避的に混入する元素を含み、残部鉄からなる。
本発明の高強度薄鋼板は、組織がフェライトを主体とするフェライト・ベイナイトからなる。フェライトの量が少ないと延性の低下が大きくなるため、フェライト相分率を30%以上とすることが望ましい。また、ベイナイトを存在させ、混合組織化を図ることで強度と延性を両立することが可能となる。この効果を利用するためには5%以上のベイナイトとすることが望ましい。なお、ベイナイトには少量の残留オーステナイトを含む場合がある。また、不可避的にパーライトを含む場合があるが、パーライトは5%以下であれば材質を著しく劣化させることはないので、5%以下であることが望ましい。
以下に本発明に係る高強度薄鋼板の製造方法について説明する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の高強度薄鋼板を製造するに際しては、熱間圧延後、所定の温度域の冷却制御によって、相間界面析出の分布制御が可能であることを見出した。具体的には、800℃以下、600℃以上の領域において変態速度は大きく変化し、これにより、相界面析出分布は大きく変化することを利用する。
必要な相間界面析出を実現するためには780℃以下、620℃以上の温度域で空冷を実施する必要がある。これより高い温度での実施では、析出面の面間隔が大きくなりすぎて、強度の低下を引き起こす。一方、これより低い温度での実施では、変態速度が高くなりすぎてしまい、面間隔が小さくなりすぎるか、相間界面析出が起こらないため、局部延性や伸びが劣化する。
空冷する時間は、それが1.5秒未満では相間界面析出の発生領域が十分ではなく、局部延性の向上効果が得られないことから、1.5秒以上とする。空冷時間が長いとパーライトが生成されるため、空冷時間は15秒以下であることが望ましい。
さらに、800℃以下、600℃以上の温度域において相間界面析出の析出状況は大きく変化するため、この間の冷却速度は非常に重要である。空冷域を除く、この間の平均冷却速度は15℃/秒以上であることが必要である。この速度未満だと面間隔、析出物サイズ、面内析出物密度が組織間で大きく変化し、組織の不均一性から穴拡げ性や局部延性が劣化する。
加えて、この相間界面析出の効果は第二相を制御することで作用が強くなる。具体的には、巻取り温度を450℃から650℃未満とし、第二相をベイナイト化することで組織最適化と相間界面析出による組織硬度差の低減の相乗効果により穴拡げ性と局部延性が上昇する。このとき、450℃未満では硬質なベイナイトまたはマルテンサイト変態が起こり、局部延性、穴拡げ性が劣化する。一方で、650℃以上では、析出物の粗大化、パーライト相の発生により強度、局部伸びが低下する。
本発明においては、以上のように熱延条件により制御可能なものであり、鋳造条件により影響を受けるもではない。例えば、鋳造方法やスラブ厚の違いによる影響は少なく、常法にしたがってスラブを製造すればよい。
熱間圧延前のスラブは、連続鋳造後そのまま、または、再加熱により1100℃以上とする。一方、1300℃超ではスケールの生成が大きくなって鋼板の表面性状を良好なものとすることができないため、1300℃以下であることが望ましい。再加熱温度が1100℃未満では、炭窒化物の溶解が不十分で、強度と局部延性の低下を起こす。その後、仕上げ温度が低い粗圧延から仕上げ圧延前までに炭窒化物の析出が起こり、強度の低下を引き起こすため、粗圧延は1050℃以上で終了する。
次いで、仕上げ温度をAr3以上、970℃以下としてスラブを熱間圧延する。仕上げ温度が、Ar3未満では(α+γ)2相域圧延となり、延性の低下をもたらすからであり、970℃を超えるとオーステナイト粒径が粗大になって、フェライト相分率が小さくなって、延性が低下するからである。
熱間圧延後の冷却は仕上げ圧延後、800℃以上の温度域の平均冷却速度を10℃/秒とする。あまり、冷却速度が低いと相間界面析出の発生温度域に達する前にフェライト変態、パーライト変態が起こってしまい、強度が低下する。
冷却後は、上記のように650℃未満、450℃以上の温度範囲で巻き取って、熱延鋼板とする。なお、熱延後は、めっきなどの表面処理を必要に応じて実施する。
以上によって、本発明の高強度薄鋼板を製造することができる。
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
表1に示した成分組成を有する溶鋼を製造し、冷却凝固後の鋼片を1200℃まで再加熱し、1080℃にて粗圧延を終了し、表2、3に示す条件にて熱延を実施した。なお、800℃までの平均冷却速度は50℃/秒とした。
得られた鋼板の組織を観察するとともに、特性を調べ、その結果を表2、3に示した。
析出物の観察は薄膜サンプルを作成し、加速電圧200kVのFE-TEMを用いて、STEMモードにて行った。
相間界面析出の面間隔の測定、及び、20nm以上60nm以下の面間隔を持つ領域の発生率(相間界面析出発生率)の測定は、ランダムにフェライト粒を抽出し、結晶粒中の相間界面析出をSTEMにて観察し、上記の面間隔を満たす領域の割合を測定する。この測定を少なくとも50粒子以上行い、これを平均することで発生率を計算した。
引張特性は、JIS5号引張試験片のC方向引張にて評価した。
穴拡げ試験は、穴径10mm、クリアランス12%で打ち抜きを行ったサンプルを頂点角60°のポンチにて穴を押し上げ、亀裂が板厚を貫通したところの穴径d1から
穴拡げ率(%)=(d1−10)/10×100
にて求めた。
局部延性は、JIS5号試験片を用いて、引張試験を行い、破断後のサンプルの断面の板厚t、板幅wを測定し、元板厚t0、元板幅w0から、
RA=−(ln(t/t0)+ln(w/w0))
を、L,C,45°のそれぞれの方向に対して求め、
局部延性=(RA(L方向)+RA(C方向)+2×RA(45方向))/4
から求めた。
鋼A〜gのうち、比較鋼であるaはMnの上限、bはSの上限を満足していない。c、dはそれぞれ、Cの上限、下限を満足していない。eはTi、Nbの添加量が共に下限を下回っている。f、gはそれぞれTi、Nbの上限を満足していない。
表2、3に製造条件及び得られた鋼板の特性を示すが、A2は巻取温度が上限を超えており、B2は巻取温度が下限を下回り、D2は仕上げ温度がAr3以下となっている。G2は空冷時間が下限を下回っており、相間界面析出領域の発生率が低い。K2、K3はそれぞれ、空冷開始温度が上限、下限を満足しておらず、前者は相間界面析出発生率、析出物サイズ、密度、後者は相間界面析出発生率、密度が範囲外にある。P2は800℃から600℃までの冷却速度が下限を下回っており、析出物サイズと密度が範囲外にある。
図1、2にこれらの材質を示すが、本発明の鋼板は、優れた穴拡げ性と局部延性をもつものであり、比較鋼に比べ、極めて高い値を示しており、本発明の目的を達成している。
Figure 2011225938
Figure 2011225938
Figure 2011225938

Claims (10)

  1. 鋼組織がフェライト相とベイナイト相からなり、前記フェライト相中に炭窒化物が相間界面析出により析出されており、前記フェライト相の40%以上の領域における相間界面析出の析出面の面間隔が20nm以上60nm以下であることを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  2. 前記相間界面析出の列内の平均炭窒化物サイズが6nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  3. 前記相間界面析出の面内の析出物密度が1×108個/mm2以上、5×109個/mm2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  4. 質量%にて、
    Nb:0.01%以上、0.10%以下、
    Ti:0.01%以上、0.20%以下、
    の1種または2種を含有する鋼組成を有し、前記炭窒化物がNbとTiの1種または2種を含む炭窒化物であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  5. さらに、質量%にて、
    C:0.01%以上、0.10%以下、
    Si:0.005%以上、2.0%以下、
    Al:0.010%以上、2.0%以下、
    Mn:0.3%以上、3.0%以下、
    P:0.08%以下、
    S:0.010%以下、
    N:0.010%以下、
    を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成を有することを特徴とする請求項4に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  6. 鋼組成中にさらに、質量%にて、
    V:0.005%以上、0.10%以下、Mo:0.02%以上、0.5%以下、Cr:0.1%以上、5.0%以下、W:0.01%以上、5.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  7. 鋼組成中にさらに、
    Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を、質量%にて、0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする請求項5または6に記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  8. 鋼組成中にさらに、質量%にて、
    Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、B:0.0003%以上、0.007%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法であって、
    熱間圧延後の冷却の際に、780℃以下、620℃以上の間の温度範囲において、1.5秒以上の空冷を行い、更に、800℃以下、600℃以上の温度範囲の空冷以外の領域の平均冷却速度が15℃/秒以上となるように冷却を行い、450℃以上、650℃未満の温度で巻き取ることを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
  10. 請求項9に記載の高強度薄鋼板を製造する製造方法において、更に、連続鋳造後、そのまま、または、再加熱により、熱延前のスラブ温度を1100℃以上とし、次いで、粗圧延を1050℃以上で終了し、熱延仕上げ温度をAr3以上、970℃以下として熱間圧延を行い、引き続き800℃以上の温度域を10℃/sec以上の平均冷却速度で冷却するこことを特徴とする穴拡げ性と局部延性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
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