JP6068291B2 - 軟質高炭素鋼板 - Google Patents
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Description
1.2≦(Mn/55)/(Cr/52)≦2.0・・・・・・・(1)
ただし、(1)式における符号MnおよびCrは、いずれも、鋼中における各元素の含有量(質量%)を示す。
炭化物分散間隔θsp(μm)={106/(3.14×平均θn)}0.5×2.3・・(1)
ここで、θnは、鋼帯表層から板厚1/4深さの部位の領域を、断面研磨後ナイタールにて腐食し走査型電子顕微鏡で2000倍に拡大観察して100×100μmの視野を16分割し、測定した炭化物粒数の数値を1mm2の領域での個数に換算した値で単位はn/mm2、さらに16視野の平均値を平均θn(n/mm2)とする。
1.0×θsp+1.0<d(μm)<1.0×θsp+10.0・・・・(2)
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.65〜1.0%、
Si:0.10〜0.60%、
Mn:0.10〜1.0%、
Al:0.01〜0.1%、
P:0.03%以下(0%を含まない)、
S:0.01%以下(0%を含まない)、
をそれぞれ含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、 深さt/4(t:板厚、以下同じ。)の位置に存在するフェライト結晶粒に関し、
板面方位が(123)面から10°以内のフェライト結晶粒の面積率が20%以上であるとともに、
前記深さt/4の位置に存在するフェライト結晶粒の平均粒径が3〜50μmであることを特徴とする軟質高炭素鋼板である。
成分組成が、さらに、
Ca:0.05%以下(0%を含まない)、
REM:0.05%以下(0%を含まない)、
Mg:0.02%以下(0%を含まない)、
Li:0.02%以下(0%を含まない)、
Pb:0.5%以下(0%を含まない)、
Bi:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種
を含むものである請求項1または2に記載の軟質高炭素鋼板である。
成分組成が、さらに、
Cr:0.05〜1.0%、
を含むものである請求項11〜3のいずれか1項に記載の軟質高炭素鋼板である。
上述したとおり、本発明鋼板は、鋼中の集合組織形態をより厳密に制御することを特徴とする。
フェライト組織を構成するフェライト結晶粒の平均粒径は、鋼板の加工性(絞り加工性、曲げ加工性、プレス加工性)を向上させるとともに、加工後の表面性状を満足させるため、3〜50μmの範囲であることが必要である。フェライト結晶粒が細かくなりすぎると、変形抵抗が高くなりすぎるため、その平均粒径は3μm以上、好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上とする。一方、フェライト結晶粒が粗大化しすぎると、靱性、疲労特性などが劣化するとともに、結晶方位を制御しても、曲げ加工性や張出などのプレス成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易いため、その平均粒径は50μm以下、好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下とする。なお、上記と同様、板厚方向でフェライト結晶粒のサイズ分布が存在するが、板厚の1/4の深さ位置を代表位置としてフェライト結晶粒の平均粒径を規定した。
フェライト結晶粒の板面方位は、SEM−EBSP[Electron Back Scattering Patternと、EBSD(Electron Back Scattering Diffraction)によって、測定・解析される。SEM装置としては、例えば日本電子社製SEM(JEOLJSM5410)、EBSP測定・解析システムとして、例えばEBSP:TSL社製(OIM)を各々用いる。また、結晶粒の大きさにもよるが試料の測定領域は300〜1000μm×300〜1000μmとし、測定ステップ間隔は例えば1〜3μmとする。このようにして同定した各フェライト結晶粒の結晶方位より、上記各理想面方位から10°以内の方位のものを集計して合計面積を求め、測定領域の面積で除すことにより、各理想面方位ごとの面積率を求めた。
上記フェライト結晶粒の平均粒径は、上記SEM−EBSPと、その測定条件を用い、所定の測定領域内に観察される各フェライト結晶粒の最大直径を各々測定し、それらの平均値を平均粒径として求めた。
C:0.65〜1.0%
Cは、鋼板の強度を確保するうえで重要な元素であり、0.65%以上含有させ、所要の強度を確保する。本発明で対象とする部品では、0.65%未満では、焼入れ性が低下し、機械構造用高強度鋼板としての強度が得られないので、下限を0.65%とする。1.0%を超えると、靭性や加工性を確保する熱処理に長時間を要することになるので、上限を1.0%とする。好ましくは0.68〜0.95%、より好ましくは、0.70〜0.90%である。
Siは、脱酸剤として作用し、また焼入れ性の向上に有効な元素である。本発明で対象とする部品では、0.10%未満では、添加効果が得られないので、下限を0.10%とする。0.60%を超えると、熱間圧延時のスケール疵に起因する表面性状の劣化を招くので、上限を0.60%とする。好ましくは、0.15〜0.55%、より好ましくは0.20〜0.50%である。
Mnは、製鋼過程において脱酸および脱硫の作用を有する元素である。さらに、焼入れ性の向上に有効な元素である。0.10%未満では、添加効果が得られないので、下限を0.10%とする。1.0%を超えると、焼入れ、焼戻し後の衝撃特性を助長するとともに、Mn系の介在物量が増加し、冷間加工性、耐疲労特性を劣化させる。上限を1.0%とする。好ましくは、0.15〜0.9%、より好ましくは、0.2〜0.85%である。
Alは、製鋼過程において脱酸に有効な元素であり、またNの固定に有効な元素である。また本発明における介在物の形態を制御するために必要な添加物質である。これらの効果を得るために、鋼材中のAl含有量は0.01質量%以上とすることが必須であり、好ましくは0.015質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上である。また、Alの含有量が0.1質量%を超えると靭性を低下させ、割れが発生しやすくなるので不適であり、好ましくは0.09質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下である。
Pは不可避の不純物元素であり、結晶粒界に偏析して冷間加工性を劣化させる。そこで、Pの含有量は冷間加工性の観点から極力低減することが望ましいが、極端な低減は製鋼コストの増加を招くため、工程能力を考慮して、0.03%以下(0%を含まない)、好ましくは0.02質量%以下(0%を含まない)である。
SもPと同様に不可避的不純物であり、FeSとして結晶粒界に膜状に析出し、加工性を劣化させる元素である。また、Sは、非金属介在物を形成し、加工性や、熱処理後の靭性を阻害する原因となる。さらに熱間脆性を引き起こす作用もある。そこで、変形能を向上させる観点から、本発明ではS含有量を0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下とする。ただし、S含有量を0にすることは工業上困難である。なお、Sは、打抜き加工性、被削性を向上させる効果も有するため、その観点からは、0.0003質量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.0005質量%以上である。
これらの元素は、いずれも、介在物を球状化させ、冷間加工性、耐疲労特性の劣化を低減させる効果がある。本発明の鋼材が、これらの元素を含有する場合、それぞれ1種を単独で含有してもよいし、2種以上を同時に含有していてもよい。これらの元素の含有量は、下記の範囲で選択される。
Caは、MnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めるとともに、打抜き加工性、被削性の向上に寄与する元素である。本発明の鋼材が、Caを含有する場合、Caの含有量は、0.0005%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.001質量%以上である。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、上限を0.05%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.03%、特に好ましくは0.01%である。
REMは、Caと同様にMnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めるとともに、打抜き加工性、被削性の向上に寄与する元素である。本発明の鋼材が、REMを含有する場合、REMの含有量は、0.0005%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.001%以上である。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、上限を0.05%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.03%、特に好ましくは0.01%である。
なお、本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLnまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、より好ましくはLaおよび/またはCeを含有するのがよい。
Mgは、Caと同様にMnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めるとともに、打抜き加工性、被削性の向上に寄与する元素である。本発明の鋼材が、Mgを含有する場合、Mgの含有量は、0.0002%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0005%以上である。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、上限を0.02%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.015%、特に好ましくは0.01%である。
Liは、Caと同様にMnSなどの硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めることができ、また、Al系酸化物を低融点化して無害化して、打抜き加工性、被削性の向上に寄与する元素である。本発明の鋼材が、Liを含有する場合、Liの含有量は、0.0002%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0005%以上である。しかし、過剰に含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、上限を0.02%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.015%、特に好ましくは0.01%である。
Pbは、被削性を向上させるために有効な元素である。本発明の鋼材が、Pbを含有する場合、好ましくは0.005%以上、さらに好ましくは0.01%以上を含有させることができる。しかし、過剰に含有させると、圧延疵の発生等の製造上の問題を生じるため、上限を0.5%とすることが好ましく、好ましくは0.4%、さらに好ましくは0.3%である。
Biは、Pbと同様に、打抜き加工性、被削性を向上させるために有効な元素である。本発明の鋼材が、Biを含有する場合、好ましくは0.005%以上、さらに好ましくは0.01%以上を含有させることができる。しかし、過剰に含有させても被削性向上の効果が飽和するため、上限を0.5%とすることが好ましく、好ましくは0.4%、さらに好ましくは0.3%である。
本発明の鋼材は、上記必須の成分および許容成分に加えて、さらに必要に応じて、下記の(a)〜(e)のグループから選ばれる少なくとも1種を含有することができる。
(a)Cr
(b)Cu、Snから選ばれる少なくとも1種
(c)Ni、Mo、Nb、Vよりなる群から選ばれる少なくとも1種
(d)B
(e)N
これらの元素の含有量は、下記の範囲で選択される。
Crは、焼入れ性の向上に有効な元素であり、結晶粒界の強度を高めることにより鋼の変形能を向上させる作用を有する元素である。必要に応じて、好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.06%以上含有させることができる。しかし、Crを過剰に含有させると、変形抵抗が増大し、冷間加工性が低下する虞があるため、その含有量は、1.0%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.9%以下、特に好ましくは0.8%以下である。
Cuは、焼入れ性の確保に有効な元素であるが、本発明では少ないほどよい。0.2%を超えると、硬くなり過ぎ、冷間加工性が劣化するので、上限を0.2%とする。好ましくは、0.19%以下、より好ましくは0.18%以下である。
Snは、不可避不純物であり、本発明では少ないほどよい。0.1%を超えると、硬くなり過ぎ、冷間加工性が劣化するので、上限を0.1%とする。好ましくは、0.09%以下、より好ましくは0.08%以下である。
Niは、靭性の向上や、焼入れ性の向上に有効な元素であるが、本発明では少ないほどよい。0.2%を超えると、介在物も多くなり、性能を劣化させる。より好ましい上限値は0.18%以下、より好ましくは、0.15%以下である。
Moは、焼入れ性の向上と、焼戻し軟化抵抗性の向上、加工後の鋼材の硬さおよび変形能を増加させる作用を有する有効な元素であるが、本発明では、少ないほどよい。Moが過剰に含有すると、冷間加工性が劣化するおそれがあるため、0.1%以下(0%を含まない)とすることが好ましく、さらに好ましくは0.09%以下、特に好ましくは0.08%以下である。
Nbは、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や靭性改善に有効な元素であるが、本発明では、少ないほどよい。0.1%を超えると、冷間加工性、耐疲労特性を劣化させるので、上限を0.1%とする。好ましくは、0.08%以下である。
Vは、Nbと同様に、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や靭性改善に有効な元素あるが、本発明では、少ないほどよい。0.01%を超えると、炭化物が生成し焼入れ硬度が低下するので、上限を0.01%とする。好ましくは、0.009%以下である。
Bを含有する場合、Bは、Nとの親和力が強く、Nと共存してN化合物を形成し、鋼の結晶粒を微細化し、冷間加工後に得られる加工品の靱性を向上させ、また、耐割れ性を向上させる役割を有する元素であるが、本発明では化合物量を低減させる必要があることから、少ないほどよく、0.005%以下(0%を含まない)とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0001〜0.0035%、特に好ましくは0.0002〜0.002%である。
Nは、Nは窒化物を形成する元素であり、本発明では極力低減させることが必要である。また連続鋳造における鋳片曲げ矯正時に窒化物が析出すると、鋳片が割れることがあるので、上限を0.01%とする。少ないほど好ましいが、0.001%未満に低減するのは、精錬コストの増加を招くので、下限を0.001%とする。好ましくは、0.004〜0.007%である。
[溶鋼の調製]
まず、溶存酸素量と全酸素量を調整した溶鋼に、所定の順番で所定の合金元素を添加することによって、所望の酸化物を生成させることができる。特に本発明では、粗大な酸化物が生成しないように、溶存酸素量を調整した後、全酸素量を調整することが極めて重要である。
熱間圧延前の加熱は1150〜1300℃で行う。この加熱によりオーステナイト単相とする。これにより固溶元素(V、Nbなどの不純物含む)は、オーステナイトに固溶させる。加熱温度が1150℃未満ではオーステナイトに固溶できず、粗大な炭化物が形成されるため疲労特性改善効果が得られない。一方、1300℃を超える温度は操業上困難である。また、不純物としてTiが含まれる場合、炭化物のうち最も溶体化温度の高いTiを固溶させる点でも、TiCの溶体化温度以上1300℃以下が必要である。加熱温度の好ましい下限は1150℃、さらに好ましい下限は1200℃である。
熱間圧延は、仕上げ圧延温度が800℃以上になるように行う。仕上げ圧延温度を低温化しすぎるとフェライト変態が高温で起るようになり、フェライト中の析出炭化物が粗大化するため、一定以上の仕上げ圧延温度が必要である。仕上げ圧延温度は、オーステナイト粒を粗大化してベイナイトの粒径を大きくするため、850℃以上とするのがより好ましい。なお、仕上げ圧延温度の上限は温度確保が難しいため、1000℃とする。
上記仕上げ圧延終了後、5s以内に20℃/s以上の冷却速度(急冷速度)で急冷し、580℃以上670℃未満の温度(急冷停止温度)で急冷を停止する。フェライト変態の開始温度を低温化することによりフェライト中に形成される析出炭化物を微細化するためである。冷却速度(急冷速度)が20℃/s未満ではパーライト変態が促進され、または、急冷停止温度が580℃未満ではパーライト変態またはベイナイト変態が促進され、冷間加工性が低下する。一方、急冷停止温度が670℃以上になるとフェライト中の析出炭化物が粗大化してしまい、耐疲労特性が確保できない。急冷停止温度は、好ましくは600〜650℃、さらに好ましくは610〜640℃である。
上記急冷停止後は、5℃/s以上20℃/s未満の冷却速度(緩冷速度)で緩冷する。緩冷速度を5℃/s以上とすることで、熱延中における初析フェライトの形成を抑制し、フェライト中の析出炭化物を適度に微細化させること、熱延板での結晶粒組織を制御することにより、最終鋼板における集合組織形態を制御するためである。緩冷速度が5℃/s未満では、初析フェライトの形成量が多くなり、粗大粒が生成するとともに、最終鋼板で粗大粒が生成し、炭化物の不均一状態を生じ、冷間加工性を劣化させる。
上記緩冷後、550℃超650℃以下で巻き取る。巻取り温度が650℃超では、表面酸化スケールが多く形成され、表面性状が劣化し、一方550℃未満では、マルテンサイトが多く形成され、冷間加工性が低下する。
上記の熱間圧延後、冷間圧延前に軟質化と炭化物の球状化を目的に焼鈍を行う。軟質化焼鈍は、H2:15〜20容積%雰囲気で、鋼板を室温からAc1〜Ac1+50℃まで加熱した後、10時間以上保持して行う。この10時間以上の保持により、炭化物の球状化を促進するとともに、微細ラメラを、オーステナイト中に溶解させる。上記10時間以上の保持後、鋼板は、400℃程度まで10℃/h以上で冷却する。
上記の鋼板を酸洗し、その後、12%以上の圧下率で冷間圧延を施す。冷間加工率(冷延率)が高いほど、炭化物が球状化しやすくなる。
冷間圧延後、軟質化と炭化物の球状化を目的に焼鈍を行う。軟質化焼鈍は、H2:15〜20容積%雰囲気で、鋼板を室温からAc1〜Ac1−50℃まで加熱した後、10時間以上保持して行うか、または、Ac1〜Ac1+50℃まで加熱した後、5時間以上保持して行う。Ac1点の下で行うか、上で行うかは、板厚、コイルのサイズにより異なるが、要求される球状化、軟質化度合い、およびコイル内の均一性によって選択される。この熱処理により炭化物の球状化を促進するとともに、微細ラメラを、オーステナイト中に溶解させる。上記10時間以上の保持後、鋼板は、600℃まで10℃/h以下の速度で冷却する。これにより炭化物の球状化を促進させる、600〜400℃までは、15℃/h以下の速度で冷却する。これは、コイル内を均一に冷却することによりコイルつぶれなどの形状を安定化させるためである。その後、400℃以下では、コイル内の温度分布が均一に冷却できるのであれば、水冷等により高い冷却速度(50℃〜100℃/h程度以上など)で冷却してよい。
ビッカース硬さ試験機を用いて、荷重:1000g、測定位置:鋼板表面部を測定回数:5回の条件で、ビッカース硬さ(Hv)を測定し、硬さが低くなりすぎると耐摩耗性が劣化し、硬さが高くなりすぎると加工性が劣化することから、160〜200Hvのものを合格とした。
鋼板のせん断加工試験を行い、その破断面で、割れが発生した場合を×、目視できる1mm程度のクラックが見られる場合を△、クラックは発生していないが、30μmを超えるバリが発生しているものを○、バリの発生が小さいもの(30μm以下)を◎とし、◎または○のものを合格とした。
成形する部品の種類や形状によって、圧延、絞り、張り出し、曲げなど種々の加工形態が存在するが、鋼板の冷間加工性(成形性)を統一的に評価するための指標として、「降伏比」を用いた。さらに、成形性の板面内異方性を評価するため、「圧延方向の降伏比」と「圧延方向に直角な方向の降伏比」の差を用いた。
降伏比は、[降伏点]/[引張強さ]で定義されるので、「降伏比」が低いということは、引張強さと降伏点との差が大きく、一様伸びを示す応力の範囲が広いので、塑性加工されやすい、すなわち、冷間加工性に優れていることを意味する。
本発明では、圧延方向の降伏比が0.80以下のものを合格とした。好ましくは0.78以下、さらに好ましくは0.76以下である。
また、成形性の評価としては、板面内の異方性も小さいことが好ましい。圧延方向の降伏比と圧延方向に直角な方向(圧延直角方向)の降伏比との差を0.1未満、さらには0.08以下、特に0.06以下とすることが推奨される。
Claims (4)
- 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.65〜1.0%、
Si:0.10〜0.60%、
Mn:0.10〜0.63%、
Al:0.01〜0.1%、
P:0.03%以下(0%を含まない)、
S:0.01%以下(0%を含まない)、
をそれぞれ含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、
深さt/4(t:板厚、以下同じ。)の位置に存在するフェライト結晶粒に関し、
板面方位が(123)面から10°以内のフェライト結晶粒の面積率が20%以上であるとともに、
前記深さt/4の位置に存在するフェライト結晶粒の平均粒径が3〜50μmであり、
表面硬さが160Hv以上200Hv以下であることを特徴とする軟質高炭素鋼板。 - 前記深さt/4の位置に存在するフェライト結晶粒に関し、
さらに、板面方位が(001)面から10°以内のフェライト結晶粒の面積率が20%以下である請求項1に記載の軟質高炭素鋼板。 - 成分組成が、さらに、
Ca:0.05%以下(0%を含まない)、
REM:0.05%以下(0%を含まない)、
Mg:0.02%以下(0%を含まない)、
Li:0.02%以下(0%を含まない)、
Pb:0.5%以下(0%を含まない)、
Bi:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項1または2に記載の軟質高炭素鋼板。 - 成分組成が、さらに、
Cr:0.05〜1.0%、
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の軟質高炭素鋼板。
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