JP2017071859A - 非調質鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度でありながら、高い靭性を有し、さらには高周波焼入れ性が良好な非調質鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.25〜0.38%、Si:0.18〜0.35%、Mn:1.5%超、2.2%以下、Cr:0.30〜1.0%、Mo:0.004〜0.05%、Al:0.020〜0.060%、V:0.080〜0.25%、Ti
:0.005〜0.020%およびN:0.008〜0.020%を、次式(1)を満足して含有し、残部がFeお
よび不可避的不純物からなる成分組成にすると共に、
鋼組織を、体積率で、ベイナイト相:85%以上、残留オーステナイト:2〜7%、残部:マルテンサイトとし、さらに引張強さを950MPa以上とする。
0.11≦[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3 ≦ 0.27 --- (1)
但し、[%M]は、[ ]内の元素Mの含有量(質量%)
【選択図】なし

Description

本発明は、非調質鋼およびその製造方法に関し、特に熱間鍛造後の熱処理の必要なしに、高い強度と共に、高い靭性を得ようとするものである。従って、本発明は、高い強度と高い靱性を必要とする自動車の足廻り部品や建設機械の油圧部品等に用いてとりわけ有用なものである。
また、本発明の非調質鋼は、高周波焼入れなどの表面硬化処理が施される部品に適用して好適なものである。
従来、ステアリングナックル、アッパーアーム等の自動車の足廻り部品や、ロッドエンド等の建設機械の油圧部品には、高強度、高靱性が要求される。このため、これらの部品には、素材として機械構造用炭素鋼であるS43C、S45C、S48Cなどを用い、熱間鍛造により成形後、焼入れ焼もどし等の熱処理(以下、調質と記す)を施し、さらに部品によっては高周波焼入れを行って必要な特性を確保していた。
しかしながら、これらの熱処理は莫大なエネルギーを必要とすることから、省エネルギーの社会的要請に応えるために、熱間鍛造による成形ままの状態にて必要な特性が得られる非調質鋼の開発が近年盛んに行われている。
例えば、特許文献1には、Cを0.20〜0.50質量%程度含有する中炭素鋼に0.03〜0.20質量%のVを添加した非調質鋼が提案されている。この非調質鋼は、熱間鍛造後の冷却過程で析出するVの炭窒化物がフェライト生地を強化することにより、調質することなく必要な強度を得るものである。
しかしながら、従来から提案されている非調質鋼は、粗大なフェライト・パーライト組織を有するものであり、靱性が中炭素鋼の調質材に比べて低いという欠点を有していた。また、優れた特性を得るための鍛造条件(加熱温度、鍛造温度、冷却速度等)の範囲が狭いため、新製品製造の立上げ時には最適製造条件を得るためのテストが必要であった。さらに、立上げ後も安定して優れた特性を確保するためには、鍛造条件を厳しく管理する必要があった。
最近では、これらの問題点を解決するために、鍛造条件に対する依存性が小さい低Cフェライト・ベイナイト型非調質鋼の開発が進められている(例えば特許文献2、特許文献3)。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の低Cフェライト・ベイナイト型非調質鋼は、鍛造条件の温度依存性は小さいものの、ベイナイト単相では強度が不足するため、フェライトをある程度のバランスで析出させる必要があった。
また、局所的に強度を上げたい場合には、従来の機械構造用炭素鋼では高周波焼入れの実施が可能であったが、低炭素鋼ではこの処理は望めない。
また、ベイナイト単相組織に近づけると共に、高周波焼入れ性も考慮した鋼の開発も進められている(例えば特許文献4)。この鋼は、高炭素化と主要合金の調整により、残留オーステナイトの微細分散ならびに組織の微細化を図ることで、高強度および高靭性を得ようとするものである。
しかしながら、炭素量を機械構造用鋼並みに高めてベイナイト組織とした場合には、残留オーステナイトの微細分散は可能なものの、その絶対量が多すぎ、また島状マルテンサイト(MA−constituent)が多く含まれるようになるために、思ったほどの靭性向上が得られないだけでなく、高周波焼入れした場合に均一な焼入れ層を得ることが難しかった。
特許第5304507号公報 特許第2743116号公報 特許第3241897号公報 特許第3196006号公報
本発明は、上述した従来の調質炭素鋼および非調質鋼の問題点を考慮して開発されたもので、高強度でありながら、高い靭性を有し、さらには従来の調質鋼よりも高周波焼入れ性が良好な非調質鋼を、その有利な製造方法と共に提供することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の目的の下に、熱間鍛造非調質鋼について鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
(1) C量は高周波焼入れ硬さを確保するためにある程度必要であるが、高すぎると前述した理由によって靭性が急激に劣化する。
(2) 組織中のベイナイト率を高めると残留オーステナイトがある程度存在するが、微量の残留オーステナイトが微細に分散していた方が、むしろ強度低下を抑えられ、その上、靭性を高いまま維持できる。
(3) 低炭素ベイナイト鋼のC量を単純に高めていくと、強度が高くなるに伴って靱性は低下してしまうが、C量の上昇と共に、Mn,Mo,Crのバランスを取ることで、ベイナイト組織を維持しながら強度を高められ、さらには靭性の低下を抑えられる。
(4) フェライトが混在しないので高周波焼入れ深さも断面内で均一になり、かつ焼入れ層の硬さばらつきも抑えられる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.成分組成が、質量%で、C:0.25〜0.38%、Si:0.18〜0.35%、Mn:1.5%超、2.2%以下、Cr:0.30〜1.0%、Mo:0.004〜0.05%、Al:0.020〜0.060%、V:0.080〜0.25%
、Ti:0.005〜0.020%およびN:0.008〜0.020%を、下記式(1)を満足して含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
鋼組織が、体積率で、ベイナイト相:85%以上、残留オーステナイト:2〜7%、残部:マルテンサイトからなり、
引張強さが950MPa以上である
ことを特徴とする非調質鋼。

0.11≦[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3 ≦ 0.27 --- (1)
但し、[%M]は、[ ]内の元素Mの含有量(質量%)
2.前記成分組成は、さらに、質量%で、S:0.08%以下、Pb:0.30%以下およびCa:0.01%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする前記1に記載の非調質鋼。
3.前記成分組成は、さらに、質量%で、Sb:0.0100%以下、Cu:1.00%以下、Ni:1.00%以下およびNb:0.080%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする前記1または2に記載の非調質鋼。
4.成分組成が、質量%で、C:0.25〜0.38%、Si:0.18〜0.35%、Mn:1.5%超、2.2%以下、Cr:0.30〜1.0%、Mo:0.004〜0.05%、Al:0.020〜0.060%、V:0.080〜0.25%、Ti:0.005〜0.020%およびN:0.008〜0.020%を、下記式(1)を満足して含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1300℃に加熱した後、熱間鍛造を行い、その後、0.3〜7℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする非調質鋼の製造方法。

0.11≦[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3 ≦ 0.27 --- (1)
但し、[%M]は、[ ]内の元素Mの含有量(質量%)
5.前記成分組成は、さらに、質量%で、S:0.08%以下、Pb:0.30%以下およびCa
:0.01%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする前記4に記載の非調質鋼の製造方法。
6.前記成分組成は、さらに、質量%で、Sb:0.0100%以下、Cu:1.00%以下、Ni:1.00%以下およびNb:0.080%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする前記4または5に記載の非調質鋼の製造方法。
本発明によれば、熱間鍛造後の熱処理を必要とすることなく、高い強度と共に高い靭性が得られ、さらには高周波焼入れ性にも優れた非調質鋼を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の非調質鋼について、鋼の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の説明において、各元素の含有量(%)は、特に断りのないかぎり質量%を意味するものである。
C:0.25〜0.38%
Cは、強度を確保するために必要な元素であり、かつ高周波焼入れの際には表面硬さを高める働きがある。その効果を発揮させるには0.25%以上の含有が必要である。しかしながら、0.38%を超えてCを含有させると残留オーステナイトの量が増えすぎて靱性が低下するので、C量の上限は0.38%とした。
Si:0.18〜0.35%
Siは、鋼の溶製時、すなわち製鋼工程において脱酸剤として有用であり、0.18%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.35%を超えてSiを含有させると靱性が低下するので、Si量の上限は0.35%とした。
Mn:1.5%超、2.2%以下
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させて組織をベイナイト化するのに有用な元素である。しかしながら、Mnの含有量が1.5%以下であると焼入れ性が不足し、ベイナイトの生成量が少
なくなり、十分な強度および靱性が得られなくなるので、Mnは1.5%超含有させるものと
した。一方、2.2%を超えてMnを含有させると焼入れ性が高くなり過ぎると共に残留オー
ステナイトの生成が促進される結果、靭性が低下するだけでなく疲労限度も低下するので、Mnの上限は2.2%とした。
Cr:0.30〜1.0%
Crは、Mnと同様に組織をベイナイト化するのに必要な元素である。しかしながら、Cr含有量が0.30%未満ではこの効果が不十分であり、一方1.0%を超えると残留オーステナイ
トの生成を促進し、疲労限度が低下するので、Cr量は0.30〜1.0%の範囲とした。
Mo:0.004〜0.05%
Moは、組織をベイナイト化するとともにベイナイトラスを微細化させて靱性を向上させ、かつ残留オーステナイト量の抑制を図る上で必要な元素である。しかしながら、0.004%未満のMo含有では上記の効果が不十分になるため、Mo量の下限は0.004%とした。一方、0.05%を超えてMoを含有させるとコスト高になると共に、残留オーステナイトの生成が抑制され、衝撃値ならびに疲労限度が低下するので、Mo量の上限は0.05%とした。
Al:0.020〜0.060%
Alは、強力な脱酸効果を持つ元素であるが、含有量が0.020%未満では十分な脱酸効果
が認められなくなるので、Al量の下限は0.020%とした。一方、0.060%を超えてAlを含有させるとその添加効果が飽和するだけでなく、介在物過多により疲労限度を低下させるので、Al量の上限は0.060%とした。
V:0.080〜0.25%
Vは、CおよびNとの親和力が強く、鋼中において炭窒化物として析出する。そして、ベイナイト変態時にかかる炭窒化物が析出すると、強度が向上するだけでなく、ベイナイトラスを微細化させて靱性が向上する。しかしながら、V含有量が0.080%未満ではその
効果が不十分であり、一方0.25%を超えて含有させると析出物過多により衝撃値が低下するため、V量は0.080〜0.25%の範囲とした。
Ti:0.005〜0.020%
Tiは、鋼中において炭窒化物として析出し、ピン止め効果によりオーステナイト結晶粒を微細化する効果があり、その効果はAl、Vの炭窒化物に比べて大きい。従って、靱性をさらに向上させるために有効な元素である。この効果を得るためには、Tiは少なくとも0.005%以上含有させる必要がある。一方、Tiを0.020%を超えて含有させるとこの効果が飽和するだけでなく、Tiの炭窒化物が成長し、疲労寿命を劣化させるため、Ti量の上限は0.020%とした。
N:0.008〜0.020%
Nは、Al,V,Ti等と窒化物あるいは炭窒化物を形成する。特にTiと結合して靱性を向上させる。そのためには0.008%以上のNが必要である。しかし、0.020%を超えて含有させると、その効果は飽和するだけでなく、製造時に鋼中に欠陥が生じやすくなると共に、精錬コストが高くなる。よって、N量の上限は0.020%とした。
以上、本発明の基本成分について説明したが、本発明では、必要に応じて、さらに以下に示す各成分を適宜添加することが可能である。
S:0.08%以下、Pb: 0.30%以下およびCa:0.01%以下のうちから選んだ1種または2種以上
S,Pb,Caはいずれも、被削性の改善に有効な元素であり、必要に応じて添加されるものである。この効果を得るためには、それぞれ0.01%以上、0.05%以上、0.0005%以上で含有されることが好ましい。しかしながら、多量に含有させてもその効果が飽和するだけでなく、むしろ靱性を低下させるので、上限をそれぞれ0.08%、0.30%、0.01%とした。なお、Sは不可避的不純物としても含まれるため、下限は設定しない。
Sb:0.0100%以下、Cu:1.00%以下、Ni:1.00%以下およびNb:0.080%以下のうちから選んだ1種または2種以上
Sbは、熱処理時の表層の脱炭を抑制して強度を向上させる効果がある。その効果は0.0005%以上で発現するため、Sbを含有する場合にはその含有量が0.0005%以上であることが好ましい。一方、Sbの含有量が0.0100%を超えてもその効果は飽和してしまい、コストがかさむだけであるため、上限を0.0100%とした。
Cuは、強度を高めるのに有効な元素であり、含有されていてもよい。その効果は、0.05%以上で発現するため、Cuを含有する場合にはその含有量が0.05%以上であることが好ましい。一方、Cuの含有量が1.00%を超える場合、合金コスト増となることに加え、熱間圧延または熱間鍛造の際に表面傷が発生しやすくなるため、上限を1.00%とした。
Niは、強度と靭性を共に向上させる元素であり、含有されていてもよい。その効果は0.05%以上で発現するため、Niを含有する場合にはその含有量が0.05%以上であることが好ましい。一方、Niの含有量が1.00%を超えてもその効果が少なくなるばかりでなく、コストも増大するため、上限を1.00%とした。
Nbは、強度を向上させる効果がある。その効果はNb含有量が0.005%以上で有効であるため、Nbを含有する場合にはその含有量が0.005%以上であることが好ましい。一方、Nbの含有量が0.080%を超えてもその向上効果が少なくなるばかりでコスト増となってしまう。よって、Nb含有量の上限を0.080%とした。
以上説明した元素以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
さらに、本発明では、C、Mn、CrおよびMoの含有量について、以下の式(1)を満足させる必要がある。
0.11≦[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3 ≦ 0.27 --- (1)
式(1)中の[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3は、ベイナイト組織の靭性の指標となるものであり、C含有量に対してMn、Cr、Mo量を一定範囲でコントロールすることで靭性を高められ、さらに残留オーステナイトの発生量を7%以下に抑えることができる。
ここに、[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3で算出される値が0.11に満たないと、靱性が低下する。一方、[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3で算出される値が0.27を超えると、残留オーステナイトが増加するため、やはり靱性が低下する。
次に、本発明では、鋼組織を以下のように限定する。
ベイナイト体積率:85%以上、残留オーステナイト体積率:2〜7%、残部組織:マルテンサイト
引張強さ:950MPa以上で高靭性の鋼を得るには、ベイナイト相を体積率で85%以上にする必要がある。また、靭性を低下させないためには、上記成分範囲とした上で残留オーステナイト量を2〜7%にコントロールする必要がある。これにより残留オーステナイトの微細分散化が図れ、靭性向上に効果が出る。
ここに、ベイナイト相の体積率が85%に満たないと、強度または靱性が低下するという不利が生じる。
また、残留オーステナイト量が2%に満たないと、靱性が低下し、一方残留オーステナイト量が7%を超えると、靱性が低下すると共に、高周波焼入れ深さのバラツキが大きくなる。
また、急速加熱する高周波焼入れにおいて均一な焼入れ組織を得るには、残部はフェライトではなく、炭素がマトリックス中に固溶したマルテンサイト組織でなければならない。
なお、ベイナイトおよび残留オーステナイトのみで鋼組織が構成されていてもよく、この場合、マルテンサイトの体積率は0%となる。
以上説明した鋼組織は、鋼素材を熱間鍛造して部品形状へと成形する際に、熱間鍛造時の加熱温度および鍛造後の冷却速度を調整することで得ることができる。具体的には、以下の加熱温度、冷却速度条件を満足させる必要がある。
加熱温度:1100〜1300℃
熱間鍛造を行うに当たっての加熱温度が低いと、上記した鋼組織は得られなくなる。すなわち、加熱温度が1100℃未満であると、フェライトが発生しやすくなり、ベイナイト組織の体積率:85%以上を満足できない。一方、加熱温度は高いほど良いが、エネルギーコストの上昇を抑制する観点から1300℃を上限とする。
熱間鍛造後の冷却速度:0.3〜7℃/s
熱間鍛造後の冷却速度が、0.3℃/s未満では、鋼組織がフェライト・パーライトとなり強度が低下する。一方、熱間鍛造後の冷却速度が7℃/sを超えると、ベイナイトを主体とする鋼組織となるが、残留オーステナイトとマルテンサイトの総量が多くなりすぎるためにベイナイト組織が85%より少なくなり、靱性が低下する。
なお、熱間鍛造後の冷却速度は、950℃〜350℃までの範囲の平均冷却速度を意味する。
<実施例1>
表1−1および表1−2に示す成分組成のインゴットを、熱間圧延により直径:36mmの丸棒とし、これらを1250℃に加熱後、直径:25mmの丸棒に熱間鍛造して空冷した。このときの冷却速度は0.5℃/sであった。なお、表1−1および表1−2中で、Sの含有量が0.010%未満であるものは、Sが不可避的不純物として含有されているものである。
空冷後の丸棒を試験材とし、各供試材の試験材を用いて、ミクロ組織、残留オーステナイト量、引張強さ、疲労限度および衝撃値を後述する方法にて測定した。また、後述する方法にて高周波焼入れ性の評価も行った。
Figure 2017071859
Figure 2017071859
ミクロ組織、残留オーステナイト量、引張強さ、疲労限度および衝撃値の測定方法は次のとおりである。
(1) ミクロ組織は、鋼材断面を研磨、腐食を行った後、光学顕微鏡にて観察して写真撮影を行い、得られた画像を画像処理を行ってベイナイト分率、マルテンサイト分率、フェライト分率を求めた。
(2) 残留オーステナイト量はX線回折法にて測定した。
(3) 引張強さは、丸棒よりJIS 4号引張り試験片を採取し、引張速度1mm/sにて引張試験を行って測定した。
(4) 疲労限度は、8mmφの平滑試験片を採取し、小野式回転曲げ疲労試験により107回まで破断せずに到達した最高応力を求めた。
(5) 衝撃値は、10mm角でノッチが3mm幅深さ2mmのUノッチのシャルピー試験片を採取し、−50℃に冷却保持後にシャルピー衝撃試験を行うことで測定した。
また、高周波焼入れ性は、次のようにして評価した。
周波数:200Hzにて、各鋼で予め断面内の一方向測定において2mmを超える有効硬化層深さが得られる条件を探して設定し、焼入れした後、160℃にて焼戻しを1時間行った。その後、円柱の高さ方向に垂直方向の断面を切り出し、この断面円内の硬化層深さをビッカース硬度計にて荷重:2.94N(300gf)で、90°ピッチで断面円の中心方向へ4方向より測定した。そして、4方向の有効硬化層深さのばらつきを標準偏差σを求めることで評価した。
上記した試験結果および評価結果を表2−1および表2−2に示す。
Figure 2017071859
Figure 2017071859
表2−1および表2−2から明らかなように、発明例である鋼No.1〜33は、いずれも950MPa以上の引張強度を有し、また衝撃値、疲労限度ともに高い値を示している。さらに、有効硬化層深さのばらつきも標準偏差σで0.1mm以内である。
これに対し、比較例である鋼No.34〜53は、発明例に比較すると、引張強さ、疲労限度、衝撃特性および高周波焼入れ性のいずれかが劣っている。
鋼No.34は、C含有量が低いために引張強さが950MPaに到達せず、疲労限度も低かった。また、残部組織にフェライトが析出したため衝撃値が低下した。さらに、高周波焼入れ後の表面硬さも低下し、硬化層深さのばらつきも大きい。
鋼No.35は、C含有量が高いために残留オーステナイトが多くなりすぎて衝撃値が低下した。
鋼No.36は、Si含有量が低いために脱酸がなされておれず、多数の酸化物が鋼内に存在しており、そのため疲労限度が低下した。
鋼No.37は、Si含有量が高いために靭性が劣化し、衝撃値が低くなった。
鋼No.38は、Mn含有量が低く、そのためベイナイト量が不足し、フェライトも析出したため、衝撃値が低下した。
鋼No.39は、Mn含有量が高く、そのため残留オーステナイト量が本発明の規定範囲より高くなり、そのため靭性が低下して疲労限度とともに衝撃値が低くなった。
鋼No.40は、Cr含有量が低く、そのためベイナイト量が少なくなり、フェライトも析出し、靭性が低下したため衝撃値が低くなった。
鋼No.41は、Cr含有量が高く、そのために残留オーステナイト量が高くなりすぎて疲労限度を低下させると共に、衝撃値も低下した。
鋼No.42は、Mo含有量が低く、そのために靭性が不足して衝撃値が低くなった。
鋼No.43は、Mo含有量が高く、残留オーステナイト量が少なくなり衝撃値が低下した。
鋼No.44はAl%が低く、酸化物系介在物が多く存在しており、疲労限度が低下した。
鋼No.45はAl%が高く、窒化物が大きくなりすぎたために衝撃値が低下した。
鋼No.46はTi%が低く、結晶粒が大きくなり衝撃値が低下した。
鋼No.47はTi%が高く、Tiの窒化物が多く存在しすぎた為に疲労限度が低下した。
鋼No.48はV%が低く、衝撃値が低下した。
鋼No.49はV%が高く、V析出物が多くなりすぎた為に衝撃値が低下した。
鋼No.50はN%が低く、結晶粒が大きくなり、衝撃値が低下した。
鋼No.51はN%が高く、鋼中に欠陥が多くなりすぎたために衝撃値が低下した。
鋼No.52は、(1)式の値が低く、残留オーステナイト量が多くなりすぎたために衝撃値が低下した。
鋼No.53、54は、(1)式の値が高く、残留オーステナイト量が多くなりすぎたために衝撃値が低下した。
<実施例2>
次に、表1中の鋼No.27に示す鋼組成のインゴットを、熱間圧延により直径:36mmの丸
棒とし、これを直径:25mmの丸棒に熱間鍛造した。熱間鍛造時の加熱温度と冷却速度は、表3に示す種々の条件にて行った。
得られた丸棒について、上述した実施例1と同様に、ミクロ組織、残留オーステナイト量、引張強さ、疲労限度および衝撃値を測定すると共に、高周波焼入れ性の評価を行った。
表3には、これらの結果を併せて示す。
Figure 2017071859
表3から明らかなように、熱間鍛造の際の加熱温度、冷却速度を本発明の範囲内としたNo.2〜6、9、10(発明例)はいずれも、950MPa以上の引張強度を有し、また衝撃値、疲労限度ともに高い値を示している。さらに、有効硬化層深さのばらつきも標準偏差σで0.1mm以内である。
これに対し、熱間鍛造後の冷却速度が低いNo.1は、ベイナイト量、残留オーステナイト量が低くフェライトが析出しているため、引張強さ、疲労限度、衝撃値が低い値を示しており、さらに有効硬化層深さのばらつきが大きかった。
また、熱間鍛造後の冷却速度が高いNo.7およびNo.8は、ベイナイト量が低くなり、衝撃値が低い。
No.11は、加熱温度を1050℃としての熱間鍛造を試みたが、熱間加工性が悪く、熱間鍛造時に割れが生じてしまい、成形できなかった。

Claims (6)

  1. 成分組成が、質量%で、C:0.25〜0.38%、Si:0.18〜0.35%、Mn:1.5%超、2.2%以下、Cr:0.30〜1.0%、Mo:0.004〜0.05%、Al:0.020〜0.060%、V:0.080〜0.25%、Ti:0.005〜0.020%およびN:0.008〜0.020%を、下記式(1)を満足して含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    鋼組織が、体積率で、ベイナイト相:85%以上、残留オーステナイト:2〜7%、残部:マルテンサイトからなり、
    引張強さが950MPa以上である
    ことを特徴とする非調質鋼。

    0.11≦[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3 ≦ 0.27 --- (1)
    但し、[%M]は、[ ]内の元素Mの含有量(質量%)
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、S:0.08%以下、Pb:0.30%以下およびCa:0.01%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の非調質鋼。
  3. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Sb:0.0100%以下、Cu:1.00%以下、Ni:1.00%以下およびNb:0.080%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の非調質鋼。
  4. 成分組成が、質量%で、C:0.25〜0.38%、Si:0.18〜0.35%、Mn:1.5%超、2.2%以下、Cr:0.30〜1.0%、Mo:0.004〜0.05%、Al:0.020〜0.060%、V:0.080〜0.25%、Ti:0.005〜0.020%およびN:0.008〜0.020%を、下記式(1)を満足して含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1300℃に加熱した後、熱間鍛造を行い、その後、0.3〜7℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする非調質鋼の製造方法。

    0.11≦[%C]−[%Mn]/18 −[%Cr]/24 −[%Mo]/3 ≦ 0.27 --- (1)
    但し、[%M]は、[ ]内の元素Mの含有量(質量%)
  5. 前記成分組成は、さらに、質量%で、S:0.08%以下、Pb:0.30%以下およびCa: 0.01%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の非調質鋼の製造方法。
  6. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Sb:0.0100%以下、Cu:1.00%以下、Ni:1.00%以下およびNb:0.080%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4または5に記載の非調質鋼の製造方法。

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