JP2021021105A - 真空浸炭用高炭素熱延鋼板およびその製造方法並びに浸炭鋼部品 - Google Patents

真空浸炭用高炭素熱延鋼板およびその製造方法並びに浸炭鋼部品 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた冷間加工性および真空浸炭と水焼入れを組み合わせた熱処理を施すことによる部材の疲労強度の向上、さらには真空浸炭における過剰浸炭の抑制とそれによる疲労強度低減を防止できる、真空浸炭用高炭素熱延鋼板を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.10%以上0.30%以下、Si:0.20%以上0.80%以下、Mn:0.25%以上1.00%以下、P:0.03%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.10%以下、N:0.01%以下、Cr:0.05%以上0.80%以下およびB:0.0005%以上0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成と、フェライトおよびセメンタイトを含むミクロ組織を有し、該ミクロ組織は、フェライトの面積率が80%以上、フェライトの平均粒径が5μm以上25μm以下、全セメンタイト中の最大Cr濃度が23 質量%以下および、全セメンタイトの平均間隔が1.0μm以上とする。【選択図】なし

Description

本発明は、真空浸炭に供する真空浸炭用高炭素熱延鋼板、特に真空浸炭時の過剰浸炭がない耐過剰浸炭性に優れ、かつ冷間加工性にも優れる真空浸炭用高炭素熱延鋼板およびその製造方法並びに、当該熱延鋼板を用いてなる浸炭鋼部品に関する。
現在、自動車のギヤー、ダンパーなどの自動車の駆動系部品は、高負荷条件下で使用されるため、高耐摩耗性や高疲労強度が求められることに加えて、安価に製造することが要求されている。一般に、これらの部品の製造方法として、熱間鍛造材を用いた切削、接合および浸炭処理が行われてきた。しかしながら、安価に製造することのニーズも高いことから、JIS G4051に規定された機械構造用炭素鋼鋼材および機械構造用合金鋼鋼材である熱延鋼板(高炭素熱延鋼板)を、冷間加工によって所望の形状に加工した後、所望の硬度を確保するために浸炭油焼入れおよび高周波焼入れ等の焼入れ処理を行う技術の開発が進められてきた。また、JIS規格における、SPH270およびSAPH440のような軟質な鋼板を、冷間加工によって所望の形状に加工した後に、浸炭窒化およびさらにショットピーニングを施して製造される技術も開発されている。このため、素材となる熱延鋼板には優れた冷間加工性や焼入れ性が要求され、これまでに種々の鋼板が提案されている。
例えば、特許文献1には、重量%で、C:0.15〜0.9%、Si:0.4%以下、Mn:0.3〜1.0%、さらにCr:1.2%以下、あるいはTi:0.01〜0.05%、B:0.0005〜0.005%を含有することを特徴とし、球状化率80%以上、平均粒径0.4〜1.0μmの炭化物がフェライト中に分散した組織をもち、切欠き引張伸びが20%以上である、精密打抜き用高炭素鋼板が記載されている。
特許文献2には、質量%でC:0.2%以上、Ti:0.01〜0.05%、B:0.0003〜0.005%を含有することを特徴とし、炭化物の平均粒径が1.0μm以下、かつ0.3μm以下の炭化物の比率を20%以下とすることで、加工性を改善した高炭素鋼板が記載されている。
特許文献3には、質量%で、C:0.10〜1.2%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.1〜1.5%、S:0.0005〜0.05%、さらにTe:0.0005〜0.05%、さらにSe:0.0005〜0.05%、Sb:0.001〜0.05%、さらにCr:0.2〜2.0%、B:0.005%を含有し、フェライトとパーライトを主体とする組織からなり、フェライト結晶粒度が11番以上であることを特徴とする、冷間加工性と脱炭性を改善した機械構造用鋼が記載されている。
特許文献4には、質量%で、C:0.20〜0.40%、Si:0.10%以下、Mn:0.50%以下、B:0.0005〜0.0050%を含有し、さらにSb、Sn、Bi、Ge、Te、Seのうち1種以上を合計で0.002〜0.03%含有し、フェライトとセメンタイトからなり、前記フェライト粒内のセメンタイト密度が0.10個/μm以下であるミクロ組織を有し、硬さがHRBで75以下、全伸びが38%以上であることを特徴とする、焼入れ性および加工性に優れる高炭素熱延鋼板が記載されている。
特許文献5には、質量%で、C:0.20〜0.48%、Si:0.10%以下、Mn:0.50%以下、B:0.0005〜0.0050%を含有し、さらにSb、Sn、Bi、Ge、Te、Seのうち1種以上を合計で0.002〜0.03%含有し、フェライトとセメンタイトからなり、前記フェライト粒内のセメンタイト密度が0.10個/μm2以下であるミクロ組織を有し、硬さがHRBで65以下、全伸びが40%以上であることを特徴とする、焼入れ性および加工性に優れる高炭素熱延鋼板が記載されている。
特許文献6には、質量%で、C:0.20〜0.40%、Si:0.10%以下、Mn:0.50%以下、B:0.0005〜0.0050%を含有し、さらにSb、Sn、Bi、Ge、Te、Seのうち1種以上を合計で0.002〜0.03%含有し、B含有量に占める固溶B量の割合が70%以上であり、フェライトとセメンタイトからなり、前記フェライト粒内のセメンタイト密度が0.08個/μm以下であるミクロ組織を有し、硬さがHRBで73以下、全伸びが39%以上であることを特徴とする、高炭素熱延鋼板が記載されている。
特許文献7には、質量%で、C:0.15〜0.37%、Si:1%以下、Mn:2.5%以下、B:0.0010〜0.0050%、およびSb、Snのうち少なくとも1種:合計で0.003〜0.10%を含有し、かつ0.50≦(14[B])/(10.8[N])の関係を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト相とセメンタイトからなり、フェライト相の平均粒径が10μm以下、セメンタイトの球状化率が90%以上であるミクロ組織を有し、全伸びが37%以上あることを特徴とする、高炭素熱延鋼板が記載されている。
特許文献8には、質量%で、C:0.02〜0.30%未満、Si:0.005以上0.5%未満、Mn:0.01以上3.0%未満、Cr:0.005以上3.0%以下、さらにTi:0.010以上0.150%以下、B:0.0005以上0.01%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、フェライト結晶粒の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が、7.0以下であり、炭化物の平均円相当直径が5.0μm以下であり、アスペクト比が2.0以下である炭化物の個数割合が全炭化物に対して80%以上あり、フェライト結晶粒内に存在する炭化物の個数割合が、全炭化物に対して60%以上である、浸炭用鋼板が記載されている。
特許文献9には、質量%で、C:0.02〜0.30%未満、Si:0.005以上0.5%未満、Mn:0.01以上3.0%未満、Ti:0.010以上0.150%以下を含有し、さらにFeの一部に換えて、Cr:0.005以上3.0%以下を含有し、さらにB:0.0005以上0.01%以下を加えることもでき、残部がFe及び不純物からなり、1000μm2あたりの炭化物の個数が、100個以下であり、アスペクト比が2.0以下である炭化物の個数割合が、全炭化物に対して10%以上であり、炭化物の平均円相当直径が、5.0μm以下であり、フェライトの平均結晶粒径が10μm以下である、浸炭用鋼板が記載されている。
特開2009−299189号公報 特開2005−344194号公報 特許4012475号公報 特開2015−017283号公報 特開2015−017284号公報 WO2015/146173号公報 特許5458649号公報 WO2019−044970 WO2019−044971
近年、例えばトランスミッションのダンパーの部品や歯車では、高負荷条件下での使用が求められることから、従来の浸炭焼入れでは耐摩耗性および疲労強度が不足することが課題となっていた。加えて、更なる生産性向上(生産時間の短縮化)も強く求められるようになっている。そこで、大気より酸素濃度が低い浸炭雰囲気中において、オーステナイト化温度以上に加熱して表層に浸炭層を形成する浸炭工程、すなわち真空浸炭と、水焼入れを適用して所望の硬さを得る工程とを組み合わせた製造方法も開発されている。この真空浸炭は、ガス浸炭に比べて粒界酸化が発生しないために、高い疲労強度をもつ浸炭処理品を得ることができると言われている。一方で、真空浸炭は、鋼板表面の炭素濃度が高くなりやすく、真空浸炭に必須な炭素の拡散期に、特に鋭角形状を有する部品では拡散場の重なりが発生するため、過剰浸炭が起こりやすくなる。例えば、歯車の歯端などのエッジ部では、先端の炭素濃度が平面部と比較して高くなりやすく、粒界に炭化物が生成した場合、高い表面硬度が得られても炭化物に囲まれた領域が巨大な欠陥として作用し、疲労強度が低下する懸念がある。さらに真空浸炭前にCr濃度が高い鋼板では、真空浸炭後表層炭素濃度が高くなりセメンタイトが析出しやすくなる。というのも、Crはセメンタイト中に濃化しやすいが、鋼中拡散速度が遅いことから一旦高いCr濃度域が存在すると、浸炭後、高Cr濃度域が残るため、浸炭後にセメンタイトが発生しやすくなる。そのため、熱処理前のセメンタイト中の最大Cr濃度を制御することは、過剰浸炭の抑制には重要な方法である。
従って、所望の疲労強度を得るには、真空浸炭において粒界での炭化物生成を抑制することも重要である。上記の諸課題に対して、従来の特許文献記載の技術では、下記の理由から諸課題を解決することは難しい。
特許文献1に記載される技術は、C含有量:0.15〜0.9重量%の中・高炭素鋼板において、まず精密打抜き時のせん断面率と局部延性の指標の一つである切欠き引張伸びが密接な相関関係にあり、それらは炭化物の分散形態(球状化率、炭化物の平均粒径)に大きく依存することを見出した。さらに炭化物を球状化し、平均粒径を大きくしても炭化物の分散形態を制御することで、部品成形後に施される焼入れ焼き戻し等の熱処理を阻害しない範囲で精密打抜き性が十分に改善されることを提案したものである。ただし、この特許では真空浸炭において鋭角形状でCの拡散場が重なりやすい状態で表層のC濃度を小さくすることはできない。加えて鋼板のセメンタイト中のCr濃度を制御することはできないため、真空浸炭後に表面のC濃度が高くなり、セメンタイト析出を抑制すること(過剰浸炭防止効果)ができない。
特許文献2に記載される技術は、セメンタイトの平均粒径を1μm以下にすることで焼入れ時セメンタイトが十分に溶けて所定の焼入れ硬さが得られることと、0.3μm以下の微細炭化物を20%以下に制御することで大きさの異なる炭化物がほぼランダムに分布し、加工が全領域で均等に歪を分担することで加工性を高めることを提案している。この特許においてもセメンタイト中のCr濃度を制御することはできず、真空浸炭後に表面の炭素濃度が高くなるため、セメンタイト析出を抑制すること(過剰浸炭防止効果)ができない。
特許文献3では、球状化焼鈍の代わりに熱間圧延後に徐冷して軟質化する方法では鋼種によって脱炭層が形成され、最終製品での表面硬度が確保できない問題に対してTe、Se、S、Sb等の微量元素を表面偏析することで鋼材表面での脱炭反応を抑制する方法を提案している。しかしながら、この特許においても真空浸炭後に表面の炭素濃度を制御して、セメンタイト析出を抑制することができない。
特許文献4から6では、鋼強化元素MnおよびSiをできる限り低減するに加えて、フェライト粒内のセメンタイト密度を小さくすることで、鋼板の硬さを小さく、所定の伸びを達成できることと、さらにSb、Sn、Bi、Ge、Te、Seを添加することで、例えば窒素雰囲気で焼鈍した場合においても、浸窒を防止し、固溶Bを確保することができて高い焼入れ性を得ることを提案している。しかしながら、この特許においても熱処理前の鋼板におけるセメンタイト中のCr濃度を制御することはできず、真空浸炭後に表面の炭素濃度が高くなり、セメンタイト析出を抑制すること(過剰浸炭防止効果)ができない。
特許文献7では、BとNの含有量[B]、[N](質量%)が、所定の関係を満足し、かつSb、Snのうち少なくとも1種を所定量添加することで、焼入れ処理時に空気を混合してカーボンポテンシャルを制御した雰囲気中で長時間加熱してもB窒化物が生成されず、固溶Bを確保できるため焼入れ性を確保でき、さらにフェライトの平均粒径と球状化率を制御することにより冷間加工性を高める方法を提案している。しかしながら、この特許においても熱処理前の鋼板におけるセメンタイト中のCr濃度を制御することはできず、真空浸炭後に表面のC濃度が高くなるため、セメンタイト析出を抑制すること(過剰浸炭防止効果)ができない。
次に、特許文献8には、鋼板中に存在する粒内のセメンタイト数を粒界のセメンタイト数に対して高くすることで、加工時に粒界を伝播経路とする亀裂の伸展を抑制し、フェライト結晶粒の{100}<011>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値を所定の値以下に制御することで穴広げ加工時の亀裂の発生しにくくして穴広げ性が向上することを提案している。しかしながら、この特許においても熱処理前の鋼板におけるセメンタイト中のCr濃度を制御することはできず、真空浸炭後に表面のC濃度が高くなるため、セメンタイト析出を抑制すること(過剰浸炭防止効果)ができない。
特許文献9では、鋼板の炭化物の個数密度を低減し、かつTi添加によりフェライト結晶粒の微細化により、均一伸びと局部伸びの両特性を向上することが提案されている。しかしながら、この特許においても熱処理前の鋼板におけるセメンタイト中のCr濃度を制御することはできず、真空浸炭後に表面のC濃度が高くなるため、セメンタイト析出を抑制すること(過剰浸炭防止効果)ができない。
本発明は上記した従来の諸問題に鑑み、優れた冷間加工性および真空浸炭と水焼入れを組み合わせた熱処理を施すことによる部材の疲労強度の向上、さらには真空浸炭における過剰浸炭の抑制とそれによる疲労強度低減を防止できる、真空浸炭用高炭素熱延鋼板およびその製造方法と、その鋼板を用いて真空浸炭処理を施して製造してなる浸炭鋼部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った。すなわち、高炭素熱延鋼板の冷間加工性と鋼板組織の関係、該鋼板の真空浸炭における過剰浸炭の抑制、および真空浸炭後の焼入れ後における所望の硬度確保のための成分組成、鋼板組織の関係、並びに所定の鋼板組織を得るための製造条件について、検討し以下の知見を得た。
(a)焼入れ前の高炭素熱延鋼板における硬度(硬さ)、および全伸び(以下、単に伸びと称する場合もある)には、フェライトの平均粒径が5μm以上25μm以下、全セメンタイトの平均間隔が1μm以上とすることにより、引張強さTSが420MPa以下、全伸び(El)が39%以上、穴広げ率80%以上を得ることができる。
(b)浸炭前の鋼板中のセメンタイト中の最大Cr濃度を23質量%以下にすることにより、前記鋼板に真空浸炭を行う際、鋭角形状の部品においてもセメンタイトの析出を抑制することができ、十分な疲労強度を達成できる。すなわち、セメンタイト中の最大Cr濃度が23質量%超になると、60°の鋭角形状をもつ部品では、真空浸炭中にはより表層のC濃度が高くなりやすく、セメンタイトが析出しやすくなる。さらに鋭角な形状の部品、例えば45°の鋭角形状の部品では、真空浸炭中にはより表面側のC濃度が高くなりやすく、よりセメンタイトが析出しやすくなる。このような、さらに高い耐過剰浸炭性が求められる場合には、セメンタイト中最大Cr濃度を17質量%以下とすることにより、45°の鋭角形状の部品でもセメンタイトの析出が抑制できる。さらに鋭角な形状の部品、例えば30°以下の鋭角形状の部品では、真空浸炭中にはより表層のC濃度が高くなりやすく、よりセメンタイトが析出しやすくなる。このような、さらに高い耐過剰浸炭性が求められる場合には、セメンタイト中の最大Cr濃度を14質量%以下にすることにより、30°以下の鋭角形状の部品でもセメンタイトの析出が抑制できる。さらに、SbおよびSnのうち1種を鋼中に所定量添加することでも、表層のC濃度の増加を抑えられて、60°未満の鋭角(特に45°以下)形状の部品でもセメンタイト析出を大幅に低減することが可能である。
(c)所定の組織を確保するための製造条件として、鋼を1050〜1270℃の温度域で1h以上保持し、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延し、終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延し、その後平均冷却速度:20℃/s以上で750℃まで1次冷却し、平均冷却速度:10℃/s以上で巻取温度まで2次冷却し、巻取温度:580℃超〜700℃で巻き取り常温まで冷却した後、焼鈍として、
(i)Ac変態点以上Ac変態点以下に加熱して当該温度域で0.5h以上保持し、次いで1〜20℃/hの平均冷却速度でAr変態点未満に冷却して、600℃以上Ar変態点未満の温度域で10h以上保持するか、または
(ii)600℃以上Ac変態点以下の温度域で1h以上40h以下を保持する、
ことにより、所定の組織を確保できる。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、以下を要旨とするものである。
[1]質量%で、
C:0.10%以上0.30%以下、
Si:0.20%以上0.80%以下、
Mn:0.25%以上1.00%以下、
P:0.03%以下、
S:0.010%以下、
sol.Al:0.10%以下、
N:0.01%以下、
Cr:0.05%以上0.80%以下および
B:0.0005%以上0.0050%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成と、フェライトおよびセメンタイトを含むミクロ組織と、を有し、該ミクロ組織は、
フェライトの面積率が80%以上、
フェライトの平均粒径が5μm以上25μm以下、
全セメンタイト中の最大Cr濃度が23質量%以下および
全セメンタイトの平均間隔が1.0μm以上
である真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[2]前記フェライトの平均粒径が10μm以上25μm以下および
前記全セメンタイトの平均間隔が5.0μm以上
である前記[1]に記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[3]前記フェライトの平均粒径が5μm以上10μm未満および
前記全セメンタイトの平均間隔が1.0μm以上5.0μm未満
である前記[1]に記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[4]引張強さが420MPa以下および全伸びが39%以上である前記[1]から[3]のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[5]穴広げ率が80%以上である前記[1]から[4]のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[6]質量%で、さらに
Ti:0.06%以下
を含有する前記[1]から[5]のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[7]質量%で、さらに、
SbおよびSnのいずれか1種または2種以上を合計で0.002%以上0.030%以下を含有する前記[1]から[6]のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[8]前記鋼板の表面から板厚方向へ10nm以内の領域において、SbおよびSnのいずれか1種または2種以上の合計濃度が母材濃度の10倍(質量%)以上である前記[7]に記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[9]質量%で、さらに、
Ni:0.0005%以上2.50%以下、
Mo:0.0005%以上0.25%以下、
Ta:0.0005%以上0.1%以下、
W:0.0005%以上0.1%以下、
Cu:0.0005%以上0.1%以下、
Nb:0.0005%以上0.1%以下、
V:0.0005%以上0.1%以下および
Ca:0.0005%以上0.1%以下
のいずれか1種以上を含有する前記[1]から[8]のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
[10]前記[1]から[9]のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板の製造方法であって、
前記[1]、[6]、[7]または[9]に記載の成分組成を有する鋼素材を、1050〜1270℃の温度域で1h以上保持し、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延し、終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延し、その後平均冷却速度:20℃/s以上で750℃まで1次冷却し、平均冷却速度:10℃/s以上で巻取温度まで2次冷却し、巻取温度:580℃超〜700℃で巻き取り常温まで冷却した後、焼鈍として、(i)または(ii)の処理を施す、真空浸炭用高炭素熱延鋼板の製造方法。
(i)Ac変態点以上Ac変態点以下に加熱して当該温度域で0.5h以上保持し、次いで1〜20℃/hの平均冷却速度でAr変態点未満に冷却して、600℃以上Ar変態点未満の温度域で10h以上保持する。
(ii)600℃以上Ac変態点以下の温度域で1h以上40h以下保持する。
[11]前記[2]、[4]から[9]のいずれかに記載の高炭素熱延鋼板の製造方法であって、
前記[1]、[6]、[7]または[9]に記載の成分組成を有する鋼素材を、1050〜1270℃の温度域で1h以上保持し、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延し、終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延し、その後平均冷却速度:20℃/s以上で750℃まで1次冷却し、平均冷却速度:10℃/s以上で巻取温度まで2次冷却し、巻取温度:580℃超〜700℃で巻き取り常温まで冷却した後、Ac変態点以上Ac変態点以下に加熱して当該温度域で0.5h以上保持し、次いで1〜20℃/hの平均冷却速度でAr変態点未満に冷却して、600℃以上Ar変態点未満の温度域で10h以上保持する、真空浸炭用高炭素熱延鋼板の製造方法。
[12]前記[3]から[9]のいずれかに記載の高炭素熱延鋼板の製造方法であって、
前記[1]、[6]、[7]または[9]に記載の成分組成を有する鋼素材を、1050〜1270℃の温度域で1h以上保持し、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延し、終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延し、その後平均冷却速度:20〜65℃/s以下で750℃まで1次冷却し、平均冷却速度:10〜65℃/s以下で巻取温度まで2次冷却し、巻取温度:580℃超〜700℃で巻き取り常温まで冷却した後、600℃以上Ac変態点以下の温度域で1h以上40h以下を保持することを特徴とする真空浸炭用高炭素熱延鋼板の製造方法。
[13]前記[1]から[9]のいずれかに記載の熱延鋼板を浸炭処理してなる鋼部品であって、
浸炭層と非浸炭層からなり、該両層の組織はいずれもマルテンサイトであり、10μm以上のセメンタイトが存在しないことを特徴とする浸炭鋼部品。
本発明によれば、優れた伸び特性と穴広げ性を両立して冷間加工性を確保し、さらに真空浸炭における耐過剰浸炭性および焼入れ性に優れる高炭素熱延鋼板並びに当該鋼板を用いてなる浸炭鋼部品を提供することができる。当該部品は、ギヤーやトランスミッションの中のダンパーなどの駆動系向けなどの自動車用部品に適用することにより、高い疲労強度を確保することができ、かつ安定した品質が要求される自動車用部品の製造に大きく寄与でき、産業上格段の効果を奏する。
以下に、本発明の高炭素熱延鋼板およびその製造方法と、当該鋼板を用いてなる浸炭鋼部品とについて詳細に説明する。
[成分組成]
まず、本発明の高炭素熱延鋼板の成分組成につき、各元素量の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成の含有量の単位である「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
C:0.10%以上0.30%以下
Cは、焼入れ後の強度を得るために重要な元素である。C量が0.10%未満の場合、成形した後の熱処理によって所望の硬度が得られないため、C量は0.10%以上にする必要がある。しかし、C量が0.30%以上では硬質化し、冷間加工性や熱処理後の靭性が劣化する。したがって、C量は0.10%以上0.30%以下とする。形状が複雑でプレス加工の難しい部品の冷間加工に用いる場合には、C量は0.25%以下、さらには0.20%以下とすることが好ましい。
Si:0.20%以上0.80%以下
Siは、耐過剰浸炭性を高める元素である。Si量が0.20%未満になると、真空浸炭工程において、鋼板表層のC濃度が高くなる傾向があり、特に、鋭角な形状をもつ部品ではCの拡散場が重なるため、鋼板表層のC濃度が高くなってセメンタイトが析出する。この粗大なセメンタイトは疲労破壊の起点となるため、疲労特性の低下を招くことになる。従って、Siは0.20%以上とする。より好ましくは0.25%以上、0.30%超である。一方、Siは固溶強化により強度を上昇させる元素である。Si量の増加とともに鋼板が硬質化し、伸びが不足することになるため、Si量は0.80%以下とする。より好ましくは0.75%以下、0.65%以下である。
Mn:0.25%以上1.00%以下
Mnは、焼入れ性を高める元素であり、過剰に添加すると耐過剰浸炭性を阻害する。Mn量が1.00%を超えると真空浸炭工程において、鋼板表層の炭素濃度が高くなり、例えば60°の鋭角形状をもつ部材ではC拡散場の重なりにより表層のC濃度が高くなるため、旧オーステナイト粒界上に粗大なセメンタイトが析出する。このセメンタイトは疲労破壊の起点となるため、疲労特性の低下を招く。このため、Mn量は1.00%以下とする。好ましくは0.90%以下、0.75%以下、さらに好ましくは0.65%以下である。一方、0.25%未満になると水焼入れのような冷却速度が高い焼入れ工程においてフェライト変態が生じることがあり焼入れ後所定の硬度が出ない場合があるため、Mn量は0.25%以上とする。好ましくは0.30%以上である。
P:0.03%以下
Pは、固溶強化により強度を上昇させる元素である。P量が0.03%を超えて増加すると鋼板が硬質化し、鋼板の伸びが低下し、また粒界偏析することにより焼入れ後の靱性を阻害する。したがって、P量は0.03%以下とする。より高い伸びを得るには、P量は0.02%以下が好ましい。Pは鋼板の伸びを低下させるため、P量は少ないほど好ましい。なお、過度にPを低減すると精錬コストが増大するため、P量は0.005%以上が好ましい。より好ましくは0.007%以上である。
S:0.010%以下
Sは、硫化物を形成し、鋼板の伸びおよび熱処理後の靭性を低下させるため、低減しなければならない元素である。S量が0.010%を超えると、鋼板の伸びおよび焼入れ後の靭性が著しく劣化する。したがって、S量は0.010%以下とする。優れた冷間加工性および焼入れ後の靭性を得るには、S量は0.005%以下が好ましい。Sは、冷間加工性および焼入れ後の靭性を低下させるため、さらには0.001%以下が好ましい。なお、過度にSを低減すると精錬コストが増大するため、S量は0.0005%以上が好ましい。
sol.Al:0.10%以下
sol.Al量が0.10%を超えると、焼入れ処理の加熱時にAlNが生成されてオーステナイト粒が微細化し過ぎる。これにより、冷却時にフェライト相の生成が促進され、組織がフェライトとマルテンサイトとなり、焼入れ後の硬さが低下する。したがって、sol.Al量は、0.10%以下とする。好ましくは0.06%以下とする。なお、sol.Alは、脱酸の効果を有しており、十分に脱酸するためには、0.005%以上とすることが好ましい。
N:0.01%以下
N量が0.01%を超えると、AlNの形成により焼入れ処理の加熱時にオーステナイト粒が微細化し過ぎ、冷却時にフェライト相の生成が促進され、焼入れ後の硬度が低下する。したがって、N量は、0.01%以下とする。より好ましくは0.008%以下である。さらに好ましくは、0.006%以下である。なお、下限はとくに規定しないが、Nは、AlN、Cr系窒化物およびBNを形成し、これにより、焼入れ処理の加熱時にオーステナイト粒の成長を適度に抑制して、焼入れ後の靭性を向上させる元素である。このため、N量は0.0005%以上が好ましい。
Cr:0.05%以上0.80%以下
Crは、焼入れ性を高める元素であり、過剰に添加すると耐過剰浸炭性を阻害する。すなわち、Cr量が0.80%を超えると、真空浸炭工程において、表層のC濃度が高くなり、例えば60°の鋭角形状をもつ部材ではC拡散場の重なりにより鋼板表層のC濃度が高くなるため、旧オーステナイト粒界上に粗大なセメンタイトが析出する。このセメンタイトは疲労破壊の起点となるため、疲労特性の低下を招く。このため、Cr量は0.80%以下とする。より鋭角な形状では、さらにC拡散場の重なりでC濃度が高くなるため、一層セメンタイトの析出を抑制することが有利であり、0.60%以下が好ましい。さらに好ましくは0.50%以下、0.40%以下、0.20%以下である。一方、鋼中のCr量が0.05%未満であると、特に浸炭焼入れにおいて表層でフェライトが発生しやすくなり、完全焼入れ組織が得られず硬度低下が起きるため、0.05%以上とする。好ましくは、0.08%以上である。
B:0.0005%以上0.0050%以下
本発明においてBは、焼入れ性を高め、Pの粒界偏析を抑制する重要な元素である。B量が0.0005%未満の場合、十分な効果が認められないため、B量は0.0005%以上とする必要がある。好ましくは0.0010%以上である。一方、B量が0.0050%超えの場合、Bによるフェライト結晶粒微細化で伸びが低下する。このため、B量は0.0050%以下とする。好ましくは0.0040%以下である。
上記以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
以上の必須含有元素で、本発明の高炭素熱延鋼板は目的とする特性が得られる。なお、本発明の高炭素熱延鋼板は、例えば加工性や焼入れ性および耐過剰浸炭性をさらに向上させることを目的として、必要に応じて下記の元素をさらに含有することができる。
Ti:0.06%以下
Tiは、焼入れ性を高めるために有効な元素である。CrおよびBの含有のみでは焼入れ性が不十分な場合に、Tiを含有することで、焼入れ性を向上させることができる。Ti量が0.005%未満では、その効果が認められないため、Tiを含有する場合、0.005%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.007%以上である。一方、Ti量が0.06%を超えて含有すると、焼入れ前の鋼板が硬質化して伸びが損なわれるため、Tiを含有する場合、0.06%以下とする。好ましくは0.04%以下である。
SbおよびSnのいずれか1種または2種を合計で0.002%以上0.030%以下
SbおよびSnは、鋼板の表層に濃化することから鋼板表層からの過剰浸炭を抑制するのに有効な元素である。60°よりさらに鋭角な(特に45°以下)形状の部品では、真空浸炭中にC拡散場の重なりにより鋼板表層のC濃度が高くなりやすく、セメンタイトが析出しやすくなる。そのため、より高い耐過剰浸炭性が求められる場合においてもSbおよびSnのうちの少なくとも1種を鋼中に所定量添加することは有効である。これにより鋼板表層のC濃度の増加が抑えられ、45°以下の鋭角形状の部品でもセメンタイト析出を大幅に低減することが可能である。これら元素の1種または2種の合計が0.002%未満の場合、上記の効果が十分に認められないため、含有させる場合は1種または2種の合計で0.002%以上とする。さらに好ましくは、0.005%以上である。一方、これらの元素の1種または2種の合計で0.030%を超えて含有しても、過剰浸炭防止効果は飽和する。また、これらの元素は、粒界に偏析する傾向があるため、1種または2種の合計で0.030%超えとすると、含有量が高くなりすぎ、粒界脆化を引き起こす可能性がある。したがって、SbおよびSnのうち少なくとも1種を含有する場合、これらの元素の1種または2種の合計の含有量は、0.030%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.020%以下である。
Ni:0.0005〜2.50%
Niは靱性の向上や焼入れ性の向上に効果の高い元素である。0.0005%未満では添加効果がないため、下限を0.0005%とする。2.50%超では、添加効果が飽和する上にコスト増加も招くため、上限を2.50%とする。さらに好ましい範囲は1.00%以下であり、最も好ましくは0.10%以下である。
Mo:0.0005〜0.25%
Moは焼入れ性の向上と、焼戻し軟化抵抗改善に有効な元素である。0.0005%未満では添加効果が小さいので、下限を0.0005%とする。0.25%を超えると添加効果は飽和するため、上限を0.25%とする。さらに好ましくは0.10%以下、0.05%以下であり、最も好ましくは0.03%以下である。
Ta:0.0005〜0.1%
TaはNbと同様に炭窒化物を形成し、焼入れ前加熱時の結晶粒の異常粒成長防止や結晶粒の粗大化防止、焼戻し軟化抵抗改善に有効な元素である。0.0005%未満では添加効果が小さいので、下限を0.0005%とする。また、0.1%を超えると添加効果が飽和し、また焼入れ硬度を低下させることになるため、上限を0.1%に規定する。さらに好ましくは0.05%以下であり、最も好ましくは0.03%以下である。
W:0.0005〜0.1%
WはNb、Vと同様に、炭窒化物を形成し、焼入れ前加熱時のオーステナイト粒の異常粒成長防止や焼戻し軟化抵抗改善に有効な元素である。0.0005%未満では添加効果が小さいので、下限を0.0005%に規定する。0.1%を超えると添加効果が飽和し、また、焼入れ硬度を低下させることになるため、上限を0.1%に規定する。さらに好ましくは0.05%以下であり、最も好ましくは0.03%以下である。
Cu:0.0005〜0.1%
Cuは焼入れ性の確保に有効な元素である。0.0005%未満では添加効果が十分に確認されないため、下限を0.0005%とする。0.1%超では、熱延時の疵が発生しやすくなり歩留りを落とすなど製造性を劣化させるので、上限を0.1%とする。さらに好ましい範囲は0.05%以下である。
Nb:0.0005〜0.1%
Nbは、炭窒化物を形成し、焼入れ前加熱時の結晶粒の異常粒成長の防止や靱性改善、焼戻し軟化抵抗改善に有効な元素である。0.0005%未満では含有させる効果は十分に発現しないため、下限を0.0005%とすることが好ましい。一方で、0.1%を超えると含有させる効果が飽和するだけでなく、Nb炭化物により母材の引張強さの増加に伴い伸びを低下させることになる。このため、上限を0.1%とすることが好ましい。さらに好ましくは0.05%以下であり、最も好ましくは0.03%以下である。
V:0.0005〜0.1%
VはNbやTaと同様に、炭窒化物を形成し、焼入れ前加熱時の結晶粒の異常粒成長防止および靱性改善、焼戻し軟化抵抗改善に有効な元素である。0.0005%未満では添加効果は十分に発現しないため、下限を0.0005%とする。0.1%を超えると添加効果が飽和するだけでなく、V炭化物により鋼板の引張強さの増加に伴い伸びを低下させることになるため、上限を0.1%とする。さらに好ましくは0.05%以下であり、最も好ましくは0.03%以下である。
Ca:0.0005〜0.1%
Caは鋼を脱硫するのに有効であり、そのためには、0.0005%以上で添加する。一方、Ca添加量は多すぎると、低融点で粗大なAlとCaの酸化物が形成され、また複合酸硫化物がCaを吸収して粗大化しやすくなる。これらの粗大な酸化物は疲労破壊の起点となりやすいため、上限を0.1%に規定する。さらに好ましくは0.05%以下であり、最も好ましくは0.03%以下である。
[ミクロ組織]
次に、本発明の高炭素熱延鋼板のミクロ組織の限定理由について説明する。
本発明では、ミクロ組織は、フェライトおよびセメンタイトを含み、フェライトの面積率が80%以上、フェライトの平均粒径が5μm以上25μm以下、全セメンタイト中の最大Cr濃度が23質量%以下および、全セメンタイトの平均間隔が1.0μm以上である。
本発明の高炭素熱延鋼板が有するミクロ組織は、フェライトおよびセメンタイトを含み、好ましくはフェライトおよびセメンタイトからなる。本発明の高炭素熱延鋼板の組織は、上記したフェライトとセメンタイト以外に、パーライト、ベイナイトなどの残部組織が生成されてもよい。残部組織の合計の面積率が5%以下であれば、本発明の効果を損ねるものではないため、含有しても構わない。以下に、ミクロ組織における要件について、その限定理由を要件毎に説明する。
[フェライトの面積率:80%以上]
フェライトの面積率は、80%未満では冷間加工性が劣位となり、特に加工度の高い部品で冷間加工が難しくなる場合があるため、80%以上とする、より好ましくは85%以上である。
[フェライトの平均粒径:5μm以上25μm以下]
フェライトの平均粒径は、5μm未満では冷間加工前の強度が増加し、冷間加工性が劣化するため、5μm以上とする。より好ましくは6μm以上である。一方、25μmを超えると、鋼板強度が低下する。また、一般に焼入れ処理を行って表面硬度を高くして製品にするが、熱処理方法によっては、内側まで焼入れされず鋼板強度が疲労強度に影響するケースもあり、ある程度鋼板の強度が必要である。そのため、フェライト平均粒径は、25μm以下とする。より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
ここで、鋼板により高い伸び(42%以上)を付与する観点からは、フェライトの平均粒径を10μm以上25μm以下とすることが好ましい。
また、フェライト粒界が多くなると優先的にセメンタイトが粒界に析出しやすくなるため粗大なセメンタイトが生成しにくくなる。特に、2μm以上の粗大なセメンタイトを抑制して90%以上の穴広げ率を確保するには、フェライトの平均粒径は5μm以上10μm未満であることが好ましい。
[鋼板中の全セメンタイト中の最大Cr濃度が23質量%以下]
真空浸炭のオーステナイト域での加熱時において、鋼板中のセメンタイトは溶解する。Cの拡散は速いため、浸炭保持時間はセメンタイトが溶解するには十分な時間であるが、Crの拡散は極めて遅く、保持時間中にはセメンタイト中に溶解していたCrは拡散できず、拡散期後にもCr濃度が高いところが存在する。Crはセメンタイトに溶け込みやすい元素であるため、高Cr濃度の領域が存在すると、浸炭後にセメンタイトが析出しやすいサイトとなる。浸炭前の鋼板において、最大Cr濃度が23質量%超のセメンタイトが存在すると、真空浸炭後にセメンタイトが析出しやすくなるため、鋼板中の全セメンタイト中の最大Cr濃度を23質量%以下とする。さらに好ましくは、17質量%以下、14質量%以下、10質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
[全セメンタイトの平均間隔1.0μm以上]
穴広げ性の向上には局部延性を高める必要があり、ボイドの連結を抑制することが重要である。ボイドは、フェライトと粗大なセメンタイトの界面で発生しやすく、ボイドの連結を抑制するには全セメンタイト相互の間隔を1.0μm以上とする必要がある。その結果80%以上の穴広げ率を確保できる。
一方で粗大すぎるセメンタイトが存在すると、セメンタイトとフェライトとの界面から生じた割れを基点として板厚方向に割れが伝播する。その結果、穴広げ性が低下するおそれがあるため、粗大なセメンタイトを発生させないという観点からは、平均間隔は20.0μm以下とすることが好ましい。なお、セメンタイトの平均間隔は、セメンタイトの自由行程とする。
ここで、鋼板において42%以上の高い伸びと90%以上の穴広げ率を確実に実現するには、上記したフェライト結晶粒径を10μm以上とする必要があり、そのためには、全セメンタイトの平均間隔を5.0μm以上とすることが好ましい。
また、粗大なセメンタイトが存在すると、板厚方向に割れが伝播して穴広げ性が低下するため、粗大なセメンタイトを存在させない必要がある。特に、2μm以上の粗大なセメンタイトを存在させないためには、全セメンタイトの平均間隔は1.0μm以上5.0μm未満であることが好ましい。
なお、上述のフェライトの平均粒径、セメンタイトの円相当直径およびフェライトの面積率等は、後述する実施例に記載の方法でそれぞれ測定することができる。
さらに、ミクロ組織において、次の好適条件を満足することが、機械的特性(延性)を向上するのに有効である。
[フェライト粒内のセメンタイトの個数に対するフェライト粒界のセメンタイトの個数の比率が0.5以上]
通常、焼入れ前に存在するセメンタイト径は、円相当直径で0.2〜6.0μm程度であり、フェライト粒内と粒界に存在している。フェライト粒内に微細なセメンタイトが多数存在すると、局部延性は高くなり、穴広げ性は向上する。一方で、フェライト粒内にセメンタイトが多数存在すると、焼鈍工程においてフェライト粒の成長が抑制されてフェライト粒が微細化したり、また組織が不均一化し、伸びが低下する。従って、穴広げ性を確保しつつ、優れた伸び性を得るには、フェライト粒内のセメンタイトの個数に対するフェライト粒界のセメンタイトの個数の比率を0.5以上とすることが好ましい。好ましくは、0.7以上、さらに好ましくは1.0以上である。
[セメンタイトの平均粒子径が0.2μm以上2.5μm以下]
まず、セメンタイトの平均粒子径とは、平均円相当直径のことである。このセメンタイトの平均粒子径が大きいと、引張変形時に割れが発生し、高い伸びを得ることができない。そのため、平均粒子径は2.5μm以下とするとすることが好ましい。さらに好ましくは2.0μm以下である。一方で、平均粒子径が0.2μm未満になると、析出強化に効く0.1μm以下のセメンタイトが増加し、鋼板が硬質化し伸びが低下するため、平均粒子径は0.2μm以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.3μm以上とする。
[Sb、Snの鋼板表層における濃化]
また、上記したように、必要に応じてSbおよびSnのいずれか1種を添加する場合に、鋼板の表面から板厚方向へ10nm以内の領域において、SbおよびSnのいずれか1種または2種以上の合計濃度が母材濃度の10倍以上であることが好ましい。
さらに、Sb、Snは鋼板表層に濃化することで鋼板表層からの過剰浸炭を抑制する効果があるため、60°より鋭角な(特に45°以下)形状を有する部品を真空浸炭処理する場合に、セメンタイト析出を抑制する効果がある。鋼板表面から10nm以内の領域においてSbおよびSnのうち1種または2種以上の合計濃度が母材濃度の10倍未満では、上記の効果は発現しにくくなる。なお、SbおよびSnのいずれかを鋼板表層に濃化するには、例えば、スラブ加熱温度を1050〜1270℃とするとよい。
[機械特性]
本発明の高炭素熱延鋼板は、ギヤー、トランスミッションのダンパーなどの自動車用部品を冷間プレスで成形するため、優れた冷間加工性が必要である。また、焼入れ処理により硬度を大きくして、耐磨耗性を付与、高い疲労特性を出す必要がある。そのため、本発明の高炭素熱延鋼板は、鋼板の引張強さを420MPa以下とし、かつ全伸び(El)を39%以上、穴広げ率を80%以上とすることで、優れた冷間加工性を有するとともに、優れた焼入れ性(焼入れ性、耐過剰浸炭性)を両立させることができる。
なお、上述の引張強さ、全伸び(El)、穴広げ性は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
[製造方法]
本発明の高炭素熱延鋼板は、上記に従う成分組成の鋼を素材とし、該鋼素材を、1050〜1270℃の温度域で1h以上保持し、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延し、終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延し、その後平均冷却速度:20℃/s以上で750℃まで1次冷却し、平均冷却速度:10℃/s以上で巻取温度まで2次冷却し、巻取温度:580℃超〜700℃で巻き取り常温まで冷却した後、焼鈍として、(i)または(ii)の工程を経ることにより製造される。
(i)Ac変態点以上Ac変態点以下に加熱して当該温度域で0.5h以上保持し、次いで1〜20℃/hの平均冷却速度でAr変態点未満に冷却して、600℃以上Ar変態点未満の温度域で10h以上保持する。
(ii)600℃以上Ac1変態点以下の温度域で1h以上40h以下を保持する。
以下、本発明の高炭素熱延鋼板の製造方法における限定理由について説明する。なお、説明において、温度に関する「℃」表示は、鋼板表面あるいは鋼素材の表面における温度を表すものとする。
本発明において、鋼素材の製造方法は、特に限定する必要はない。例えば、本発明の高炭素鋼を溶製するには、転炉、電気炉どちらも使用可能である。転炉等の公知の方法で溶製された高炭素鋼は、造塊−分塊圧延または連続鋳造によりスラブ等(鋼素材)とされる。スラブは、通常、加熱された後、熱間圧延(熱間粗圧延、仕上圧延)される。
例えば、連続鋳造で製造されたスラブの場合は、そのままあるいは温度低下を抑制する目的で保熱して、圧延する直送圧延を適用してもよい。なお、熱間圧延では、仕上圧延終了温度を確保するため、バーヒータ等の加熱手段により被圧延材の加熱を行ってもよい。
[スラブ加熱温度:1050〜1270℃の温度域で1h以上保持]
スラブ加熱中に、鋼中のCr濃度を均一にし、SbおよびSnを添加した場合はSbおよびSnを鋼板表面に濃化させる必要がある。加熱温度が高温すぎるとスケールにより表面状態が劣化し、また、SbおよびSnを添加した場合は、表面に濃化したSbおよびSnの濃化層が剥離してしまうため、上限は1270℃とした。一方、加熱温度が1100℃未満になると、Crの拡散速度が低下することで所定の時間では鋼中のCr濃度が均一にならない。また、SbおよびSnを添加した場合は、SbおよびSnの表層への濃化が遅くなり、表層全域において所定量で濃化しないため、下限を1050℃とした。保持時間が1h未満になると、Crが十分に拡散できず、鋼中のCr濃度が均一にならない。また、SbおよびSnを添加した場合は、SbおよびSnが表層全域において所定量濃化しないため、1h以上とした。一方、5h以上加熱すると、SbおよびSnを添加した場合にSbおよびSnの表層への濃化は飽和し、また表面が酸化して表面状態が劣化するため、5h以下が好ましい。
[980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延]
熱間粗圧延において、オーステナイト域で再結晶を繰り返すことにより、結晶粒が微細化する。この段階での結晶粒が粗大すぎると、拡散速度の速い結晶粒界が少なくなり、Crの拡散が十分に行われない。従って、仕上げ圧延前の鋼においてできるだけCrの偏析を小さくすることによって、仕上げ圧延後の冷却中にパーライト変態する際に、低いCr濃度を有するセメンタイトが得られるため、焼鈍後のセメンタイト中の最大Cr濃度も所定の値以下に制御できる。そのためには、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上とする必要がある。なお、粗圧延におけるトータル圧下率は82〜90%であることが好ましい。より好ましくは、83〜88%である。
[終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延]
仕上圧延終了温度がAr変態点未満では、熱間圧延後および焼鈍後に粗大なフェライト粒が形成され、伸びが著しく低下する。このため、仕上圧延終了温度は、Ar変態点以上とする。好ましくは(Ar変態点+20℃)以上とする。なお、仕上圧延終了温度の上限は、特に規定する必要はないが、仕上圧延後の冷却を円滑に行うためには、1000℃以下とすることが好ましい。
また、上述したAr変態点は、フォーマスター試験などによる冷却時の熱膨張測定や電気抵抗測定による実測により決定することができる。
[仕上圧延後の1次冷却における平均冷却速度:20℃/s以上で750℃まで冷却]
仕上圧延後の、750℃までの平均冷却速度は、球状化焼鈍後のセメンタイト粒度分布に影響する。巻取りに続く焼鈍工程後に所定のセメンタイト粒度分布を得るためには、焼鈍工程前に均一なフェライトおよびパーライト組織とする必要がある。平均冷却速度が20℃/s未満では、均一なフェライトおよびパーライト組織が得られなくなる。また、不均一なパーライトでは、セメンタイトが存在する領域で局所的にCr濃度が高くなるため、焼鈍後のセメンタイト中のCr濃度が所定濃度以上になる。従って、仕上圧延後の1次平均冷却速度は、20℃/s以上にする。上限については特に規定する必要はないが、150℃/sを超えるとパーライト組織が微細すぎて焼鈍後フェライト粒内に残りやすく、上記したフェライト粒内のセメンタイトの個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率を所定範囲内にすることが難しくなるため、好ましくは150℃/s以下である。より好ましくは100℃/s以下である。
なお、焼鈍として、上記した焼鈍(ii)を選択する場合、仕上圧延後の1次平均冷却速度が65℃/s超になると、パーライト組織が微細すぎて焼鈍後フェライト粒内に残りやすく、所定のフェライト粒内のセメンタイトの個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率を所定範囲内にすることが難しくなるため、65℃/s以下とすることが好ましい。
一方、焼鈍として、上記した焼鈍(i)を選択する場合には、仕上げ圧延後の冷却速度が大きくパーライトが微細となっても、その微細パーライトは1段目の焼鈍中に生成するオーステナイト相に溶解するため、焼鈍後のセメンタイトの分布には影響を与えにくい。
[2次冷却における平均冷却速度:10℃/s以上で巻取温度まで冷却]
2次平均冷却速度が10℃/s未満では、ラメラーの粗大なパーライト組織が生成され、焼鈍工程後に所定のセメンタイト粒度分布が得られず、またラメラーが粗大なパーライトではセメンタイトが存在する領域で局所的にCr濃度が高くなり、焼鈍後のセメンタイト中のCr濃度が所定濃度以上になるため、2次平均冷却速度は10℃/s以上とする。上限については特に規定する必要はないが、150℃/sを超えるとパーライト組織が微細すぎて焼鈍後フェライト粒内に残りやすく、フェライト粒内のセメンタイトの個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率を所定範囲内にすることが難しくなるため、好ましくは150℃/s以下である。より好ましくは100℃/s以下である。
なお、焼鈍として、上記した焼鈍(ii)を選択する場合、2次平均冷却速度が65℃/s超では、パーライト組織が微細すぎて焼鈍後フェライト粒内に残りやすく、所定のフェライト粒内のセメンタイトの個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が得られないため、65℃/s以下とすることが好ましい。
一方、焼鈍として、上記した焼鈍(i)を選択する場合には、仕上げ圧延後の冷却速度が大きくパーライトが微細となっても、その微細パーライトは1段目の焼鈍中に生成するオーステナイト相に溶解するため、焼鈍後のセメンタイトの分布には影響を与えにくい。
[巻取温度:580℃超〜700℃]
仕上圧延後の熱延鋼板は、コイル形状に巻き取られる。巻取温度が高すぎると、熱延鋼板でラメラーの粗大なパーライト組織が生成され、焼鈍工程後にセメンタイトが存在する領域で局所的にCr濃度が高くなり、焼鈍後のセメンタイトのCr濃度が所定濃度以上になるため、巻取温度の上限を700℃とする。好ましくは690℃以下である。一方、巻取温度が低すぎると熱延鋼板が硬質化するため、好ましくない。したがって、巻取温度の下限を580℃超とする。好ましくは600℃以上である。
上記のようにコイル状に巻き取った後、常温まで冷却し、酸洗処理を施しても良い。酸洗処理後に、以下に示す焼鈍(i)または(ii)を行う。
[焼鈍(i)]
2段階での焼鈍を行う焼鈍(i)における各条件の限定理由について述べる。
[Ac変態点以上Ac3変態点以下に加熱して当該温度域で0.5h以上保持(1段目の焼鈍)]
熱延鋼板をAc変態点以上の焼鈍温度に加熱することにより、鋼板組織のフェライトの一部をオーステナイトに変態させ、フェライト中に析出していた微細な炭化物を溶解させ、Cをオーステナイト中に固溶させる。一方、オーステナイトに変態せずに残ったフェライトは高温で焼鈍されるため、転位密度が減少して軟化する。また、フェライト中には溶解しなかった比較的粗大な炭化物(未溶解炭化物)が残存するが、オストワルド成長によりさらに粗大になる。焼鈍温度がAc変態点未満では、オーステナイト変態が生じないため、炭化物をオーステナイト中に固溶させることができない。また、本発明では、Ac変態点以上での保持時間が0.5h未満では微細な炭化物を十分に溶解することができない、このため、1段目の焼鈍として、Ac変態点以上に加熱して0.5h以上保持することとする。一方、1段目の焼鈍温度がAc3変態点超になると焼鈍後に棒状のセメンタイトが多数得られて所定の伸びが得られないため、Ac3変態点以下とする。また、保持時間は10h以下とすることが好ましい。なお、焼鈍の際の雰囲気ガスは、窒素、水素、窒素と水素の混合ガスのいずれも使用できる。
[平均冷却速度1〜20℃/hでAr変態点未満に冷却]
上記した1段目の焼鈍の後、2段目の焼鈍の温度域であるAr変態点未満に、1〜20℃/hの平均冷却速度で冷却する。冷却途中に、オーステナイト→フェライト変態に伴いオーステナイトから吐き出されるCが、フェライトとオーステナイトの界面や未溶解炭化物を核生成サイトとして、比較的粗大な球状炭化物として析出する。この冷却においては、パーライトが生成しないように冷却速度を調整する必要がある。1段目の焼鈍後、2段目の焼鈍までの冷却速度が、1℃/h未満では生産効率が悪いため、該冷却速度は1℃/h以上とする。一方、20℃/hを超えて大きくなると、パーライトが析出し、硬度が高くなるため、20℃/h以下とする。
[600℃以上Ar変態点未満の温度域で10h以上保持(2段目の焼鈍)]
上記した1段目の焼鈍後、所定の冷却速度で冷却してAr変態点未満の温度域で保持することで、オストワルド成長により、粗大な球状炭化物をさらに成長させ、微細な炭化物を消失させる。Ar変態点未満での保持時間が10h未満では、炭化物を十分に成長させることができず、焼鈍後の強度が大きくなりすぎる。このため、2段目の焼鈍はAr変態点未満で20h以上保持とする。なお、2段目の焼鈍温度は炭化物を十分成長させるため600℃以上とする。好ましくは660℃以上であり、また、保持時間は生産効率の観点から、35h以下とすることが好ましい。
上記2段目の焼鈍後の冷却は、基本的に常温まで炉冷とする。ここで、50℃/hを超える冷却速度の場合には、セメンタイトの球状化が不十分となり、アスペクト比の大きいセメンタイトが残り鋼板の延性を阻害する可能性があるため、50℃/h以下が好ましく、より好ましくは1〜30℃/hである。
[焼鈍(ii)]
1段階での焼鈍を行う焼鈍(ii)における各条件の限定理由について述べる。
[焼鈍温度:600℃以上Ac変態点未満の温度域で保持]
上記のようにして得た熱延鋼板に、焼鈍(セメンタイトの球状化焼鈍)を施す。焼鈍温度がAc変態点以上であると、オーステナイトが析出し、焼鈍後の冷却過程において粗大なパーライト組織が形成され、不均一な組織となる。このため、焼鈍温度は、Ac変態点未満とする。好ましくは(Ac変態点−10℃)以下である。なお、所定のセメンタイト分散状態を得るには、焼鈍温度は600℃以上とする必要があり、好ましくは700℃以上である。なお、雰囲気ガスは、窒素、水素、窒素と水素の混合ガスのいずれも使用できる。また、焼鈍における保持時間は、0.5〜40時間とすることが好ましい。焼鈍温度における保持時間が0.5時間未満であると、焼鈍の効果が乏しく、本発明の目標とする組織が得られず、その結果、本発明の目標とする鋼板の硬度および伸びが得られない。したがって、焼鈍温度における保持時間は1.0時間以上が好ましい。より好ましくは5時間以上である。一方、焼鈍温度における保持時間は、40時間以下とすることが好ましい。より好ましくは35時間以下である。
上記焼鈍後の冷却は、基本的に常温まで炉冷とする。ここで、50℃/hを超える冷却速度の場合には、セメンタイトの球状化が不十分となり、アスペクト比の大きいセメンタイトが残り鋼板の延性を阻害する可能性があるため、50℃/h以下が好ましく、より好ましくは1〜30℃/hである。
なお、上述したAc変態点およびAc変態点はそれぞれ、加熱時のフェライトからオーステナイトへの変態開始温度および終了温度である。Ar変態点およびAr変態点はそれぞれ、冷却時のオーステナイトからフェライトへの変態開始温度および終了温度である。これらは、特に限定するものではないが、フォーマスター試験などによる加熱冷却時の熱膨張や電気抵抗の実測にて決定することができる。
次に、浸炭処理してなる浸炭鋼部品の規定理由について述べる。
[上記浸炭層と非浸炭層のいずれもマルテンサイト組織]
例えば、ギヤーやトランスミッションのダンパーで高面圧をかけられた状態で使用する場合において、高い疲労特性や耐摩耗性を必要とするため、浸炭層と非浸炭層のいずれもマルテンサイトからなり、非浸炭層があることで所望の靱性が得られる。
[10μm以上のセメンタイトが存在しないこと]
10μm以上のセメンタイトが存在すると疲労における破壊の起点となるため、10μm以上のセメンタイトは存在しない必要がある。
浸炭鋼部品の硬度分布については特に規定は説明していないが、下記に示す硬度分布および組織とすることが好ましい。Cr添加量を調整してBを添加した鋼板からなる浸炭鋼部品を、大気より酸素濃度が低い浸炭雰囲気中においてオーステナイト化温度以上に加熱して表層に浸炭層を形成する浸炭工程と、該浸炭工程に引き続き、マルテンサイト変態する冷却速度よりも遅い冷却速度により前記鋼部品を冷却し、かつ冷却による組織変態が完了する温度以下まで前記鋼部品を冷却する工程と、高密度エネルギーによって前記鋼部品における所望部分をオーステナイト領域まで加熱した後にマルテンサイト変態する冷却速度以上の冷却速度により冷却する焼入れ工程を行う処理を前記鋼部品に行うことにより、表面硬度が800HV以上となる浸炭層を表層から内側100μm(第1層)に有し、その内側に硬度が450HV以上で800HV未満となる浸炭層(第2層)を400μm以上有し、さらに上記浸炭層の内側の内部硬度が380HV以上600HV未満となる非浸炭層(母相)を有し、浸炭層および非浸炭層の組織はいずれもマルテンサイトであり、円相当径10μm以上のセメンタイトが存在しない浸炭鋼部品となる。
表1に示す鋼番A〜Xの成分組成を有する鋼を溶製し、次いで表2および3に示す製造条件に従って、熱間圧延を行った。次いで、酸洗し、表2および表3に示す焼鈍温度および焼鈍時間にて焼鈍を施して、板厚3.0mmの熱延焼鈍板を製造した。
このようにして得られた熱延鋼板から試験片を採取し、下記のように、ミクロ組織、引張強さ、伸び、穴広げ性および真空浸炭後の耐過剰浸炭性および硬度分布を求めた。なお、表1に示すAc変態点、Ac変態点、Ar変態点およびAr変態点はフォーマスター試験により求めたものである。
(I)ミクロ組織
熱延鋼板のミクロ組織は、板幅中央部から採取した試験片(大きさ:3mmt×10mm×10mm)を切断研磨後、ナイタール腐食を施し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、1/4板厚の3箇所で1000倍の倍率で撮影した。撮影した組織写真を画像処理により各相(フェライト、セメンタイト、パーライトなど)を特定した。
また、SEM画像から画像解析ソフトを用いて、フェライトとフェライト以外の領域とを二値化して、フェライトの面積率を求めた。
また、撮影した組織写真について、JIS G 0551に定められた結晶粒度の評価方法(切断法)を用いて、フェライトの平均粒径を求めた。
さらに、撮影した組織写真について、平均セメンタイト径を評価した。
平均セメンタイト径は、各セメンタイトの面積を測定し、次式(1)のとおり円相当直径dに換算したものを平均して求めた。
d=(4S/π)1/2 ・・・(1)
ここで、S:各セメンタイトの面積
また、組織写真からフェライト粒内に存在するセメンタイト数とフェライト粒界に存在するセメンタイト数を測定してフェライト粒界に存在するセメンタイト数をフェライト粒内に存在するセメンタイト数で除してフェライト粒内に存在するセメンタイトに対するフェライト粒界に存在するセメンタイト数の比率を求めた。
全セメンタイトの平均間隔は、SEM画像から画像解析ソフトを用いて、セメンタイトとセメンタイト以外の領域とを二値化して、セメンタイトの面積率を求め、面積率(体積率)と上記で求めたセメンタイト平均径により、次式(2)ref 1)から平均自由行程として求めた。
平均自由行程={1.81(f-1/2)−1.63}dp/2・・・(2)
f:セメンタイトの体積割合(面積割合)、
dp:セメンタイトの平均粒子直径
ref 1) 金属便覧改訂6版,p.319
鋼板中のセメンタイトのCr濃度は、以下のとおり求めた。
セメンタイトが析出した鋼板の断面において、FE-EPMAを用いて、50μm×50μmの領域で特性X線強度マッピングを行い、C、Crの元素分布を求めた。次に、前記マッピングにおいてCの高い領域をセメンタイトと判断し、前記領域で得られたCrのカウント数をセメンタイト中のCr濃度と定義した。EPMAの測定条件は、加速電圧:9kV、照射電流:5×10−8Aとして、定量分析にはZAF補正計算法を用いた。すなわち、分析試料から測定された特性X線強度と、99%以上のCr量を有する標準試料の特性X線の強度比である相対強度とを求め、原子番号補正ref2)、吸収補正ref2)および蛍光励起補正ref2)を実施し、定量分析を行った。
ref2) 表面分析技術選書 電子プローブ・マイクロアナライザー,第6章,p.167
鋼板表層のSb濃度の評価には、X線光電子分光法(XPS)を用いた。まず、全結合エネルギー範囲(ワイドスキャン)を測定し、C、O、その他鉄および鉄中の元素を検出する。Sbの3d5/2ピークはSbの状態によってはO1sピークと重なることがあるため、次のように分離した。
(1)最初にFe、O、その他の鉄中の元素のメインピークの面積を計算し、この面積を相対感度係数で徐し、全元素の原子濃度を算出した。このとき、Oのピーク面積は、Sbを含むようにエネルギー範囲(527〜538ev)を決定する。正確にはOのピークではなく、O+Sbのピークとなる。
(2)エネルギー範囲を525〜540evとしてOピークを中心とした結合エネルギー範囲でOとSbのピークを再測定する(ナロースキャン)。Oのピークは酸化物(528.9ev)および水酸化物(531.9ev)と、金属Sbである3d5/2(528.2ev)および3d3/2(537.6ev)にピーク分離し、金属Sbのピークとそれ以外のピークの比で前記(1)で求めたO原子濃度をOとSbに分離する。
(3)前記(1)および(2)で求めたSbおよびFe、Fe中の添加元素の合計濃度を100%とするように正規化する。
(4)前記(1)〜(3)の方法で求めたSb濃度を質量%に換算する。
なお、試料表面に炭素のコンタミネーションとして多量に検出されFe、Sbのピークが認められない場合には、このコンタミネーションを除去するため、イオン銃で表面をクリーニングする。イオン銃の条件は本願を規定するものではないが、Arを用いれば良く、例えば、10mA、3kVの条件で、40s〜110s間クリーニングすることができる。また、XPSの測定条件は、本願を規定するものではないが、例えばAlのX線を用いて測定条件(電圧10kV、光電子の取り出し角度35°)で測定することができる。
(II)鋼板の引張強さと伸び
熱延鋼板から、圧延方向に対して0°の方向(L方向)に切り出したJIS5号引張試験片を用いて、10mm/分で引張試験を行い、公称応力公称歪曲線を求め、最大応力を引張強さとした。また、破断したサンプルを突き合わせて全伸びを求めた。その結果を、伸び(El)とした。
(III)鋼板の穴広げ性
JISZ2256に記載されている方法に従って、穴広げ試験を行った。125mm角の鋼板の中央部にクリアランス12±1%となるように10mmφの穴を打ち抜き、打ち抜きばりを上になるよう鋼板をセットして円錐パンチで下から押し上げて、1か所でも破断(板厚方向において割れ貫通)した時の穴の径Dを測定し、次式(3)にて穴広げ率を求める。なお、試験を3回行った時の平均値としている。
穴広げ率(%)=(D-10)/10×100 ・・・(3)
(IV)耐過剰浸炭性
耐過剰浸炭性については大気より酸素濃度が低い浸炭雰囲気中においてオーステナイト化温度以上に加熱して表層に浸炭層を形成する浸炭工程において、浸炭期を930℃で浸炭時間が26分、拡散期を930℃で95分とし、平坦な試験片の表面C濃度が0.6%となるように浸炭を実施した。表4および5に示す条件で、60°、45°、30°の形状となる試験片の先端部分におけるセメンタイト析出の有無により評価した。評価方法は試験片の先端部分を切り出し板面から研磨してナイタール腐食を施し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、500倍の倍率で撮影した。各試験片の先端を中心として半径50μmの領域において、◎はセメンタイトの析出はなし、○は10μm以上のセメンタイトの析出はなし、×は10μm以上セメンタイト析出ありとして評価した。60°の形状で○および◎のものを合格としている。より好ましくは45°の形状で○および◎のものであり、さらに好ましくは30°の形状で○および◎のものである。なお、ここでのセメンタイト径は、撮影した組織写真について個々のセメンタイト径を評価した。セメンタイト径は楕円と想定して長径と短径を用いて面積を求め、次式(4)にて円相当直径dに換算した。
d=2(r×r1/2 ・・・(4)
ここで、r:各セメンタイトの長径
:各セメンタイトの短径
(V)浸炭後水焼入れ後の鋼板硬度分布(浸炭焼入れ性)
熱延鋼板について、大気より酸素濃度が低い浸炭雰囲気中においてオーステナイト化温度以上に加熱して表層に浸炭層を形成する浸炭工程において、浸炭期を930℃で浸炭期26分、拡散期930℃で95分とし、平坦な試験片の表面C濃度が0.6%となるように浸炭焼入れ処理を行い、860℃で30分保持した後、徐冷した。その後900℃に加熱して10s均熱保持後、マルテンサイト変態する冷却速度以上の冷却速度により冷却した。鋼板表面からの深さ0.1mmの位置と深さ1.5mmの位置まで0.1mm間隔にて硬度を荷重1kgfの条件下で測定し、浸炭焼入れ時の表層0.1mmの硬度(HV)と硬度が450HV以上800HV未満の第2層(mm)の距離と、さらにその内側に位置する母相の硬さとを求めた。
そして、上記(V)より得られた結果から、表2および3に示す条件で焼入れ性評価を行った。鋼板表面からの深さ0.1mmの位置における硬度が800HV以上、第2層の距離が0.4mm、母相の硬さが380HV以上あるものを焼入れ性が十分であると評価できる(焼入れ性○)。それ以外のものは焼入れ性が不合格(×)と判定し、焼入れ性に劣ると評価した。
Figure 2021021105
Figure 2021021105
Figure 2021021105
Figure 2021021105
Figure 2021021105

Claims (13)

  1. 質量%で、
    C:0.10%以上0.30%以下、
    Si:0.20%以上0.80%以下、
    Mn:0.25%以上1.00%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.010%以下、
    sol.Al:0.10%以下、
    N:0.01%以下、
    Cr:0.05%以上0.80%以下および
    B:0.0005%以上0.0050%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成と、フェライトおよびセメンタイトを含むミクロ組織と、を有し、該ミクロ組織は、
    フェライトの面積率が80%以上、
    フェライトの平均粒径が5μm以上25μm以下、
    全セメンタイト中の最大Cr濃度が23質量%以下および
    全セメンタイトの平均間隔が1.0μm以上
    である真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  2. 前記フェライトの平均粒径が10μm以上25μm以下および
    前記全セメンタイトの平均間隔が5.0μm以上
    である請求項1に記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  3. 前記フェライトの平均粒径が5μm以上10μm未満および
    前記全セメンタイトの平均間隔が1.0μm以上5.0μm未満
    である請求項1に記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  4. 引張強さが420MPa以下および全伸びが39%以上である請求項1から3のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  5. 穴広げ率が80%以上である請求項1から4のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  6. 質量%で、さらに
    Ti:0.06%以下
    を含有する請求項1から5のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  7. 質量%で、さらに、
    SbおよびSnのいずれか1種または2種以上を合計で0.002%以上0.030%以下を含有する請求項1から6のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  8. 前記鋼板の表面から板厚方向へ10nm以内の領域において、SbおよびSnのいずれか1種または2種以上の合計濃度が母材濃度の10倍(質量%)以上である請求項7に記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  9. 質量%で、さらに、
    Ni:0.0005%以上2.50%以下、
    Mo:0.0005%以上0.25%以下、
    Ta:0.0005%以上0.1%以下、
    W:0.0005%以上0.1%以下、
    Cu:0.0005%以上0.1%以下、
    Nb:0.0005%以上0.1%以下、
    V:0.0005%以上0.1%以下および
    Ca:0.0005%以上0.1%以下
    のいずれか1種以上を含有する請求項1から8のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の真空浸炭用高炭素熱延鋼板の製造方法であって、
    請求項1、6、7または9に記載の成分組成を有する鋼素材を、1050〜1270℃の温度域で1h以上保持し、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延し、終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延し、その後平均冷却速度:20℃/s以上で750℃まで1次冷却し、平均冷却速度:10℃/s以上で巻取温度まで2次冷却し、巻取温度:580℃超〜700℃で巻き取り常温まで冷却した後、焼鈍として、(i)または(ii)の処理を施す、真空浸炭用高炭素熱延鋼板の製造方法。
    (i)Ac変態点以上Ac変態点以下に加熱して当該温度域で0.5h以上保持し、次いで1〜20℃/hの平均冷却速度でAr変態点未満に冷却して、600℃以上Ar変態点未満の温度域で10h以上保持する。
    (ii)600℃以上Ac変態点以下の温度域で1h以上40h以下保持する。
  11. 請求項2、4から9のいずれかに記載の高炭素熱延鋼板の製造方法であって、
    請求項1、6、7または9に記載の成分組成を有する鋼素材を、1050〜1270℃の温度域で1h以上保持し、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延し、終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延し、その後平均冷却速度:20℃/s以上で750℃まで1次冷却し、平均冷却速度:10℃/s以上で巻取温度まで2次冷却し、巻取温度:580℃超〜700℃で巻き取り常温まで冷却した後、Ac変態点以上Ac変態点以下に加熱して当該温度域で0.5h以上保持し、次いで1〜20℃/hの平均冷却速度でAr変態点未満に冷却して、600℃以上Ar変態点未満の温度域で10h以上保持する、真空浸炭用高炭素熱延鋼板の製造方法。
  12. 請求項3から9のいずれかに記載の高炭素熱延鋼板の製造方法であって、
    請求項1、6、7または9に記載の成分組成を有する鋼素材を、1050〜1270℃の温度域で1h以上保持し、980〜1080℃の温度域での圧下率:40%以上で粗圧延し、終了温度:Ar変態点以上で仕上圧延し、その後平均冷却速度:20〜65℃/s以下で750℃まで1次冷却し、平均冷却速度:10〜65℃/s以下で巻取温度まで2次冷却し、巻取温度:580℃超〜700℃で巻き取り常温まで冷却した後、600℃以上Ac変態点以下の温度域で1h以上40h以下保持する、真空浸炭用高炭素熱延鋼板の製造方法。
  13. 請求項1から9のいずれかに記載の熱延鋼板を浸炭処理してなる鋼部品であって、
    浸炭層と非浸炭層からなり、該両層の組織はいずれもマルテンサイトであり、10μm以上のセメンタイトが存在しないことを特徴とする浸炭鋼部品。
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