JP6466152B2 - ホウ素含有鋼の熱処理方法 - Google Patents

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Description

本件出願に係る発明は、高周波誘導加熱法を用いて、ホウ素を0.0005質量%〜0.0040質量%含むホウ素含有鋼の熱処理方法に関するものである。
従来より、軸や歯車等の機械構造部品は、通常、熱間加工した鋼に、切削加工を施して製品形状に仕上げて製造されることが多い。製品としての機械構造部品は、強靱性や、耐摩耗性能、耐疲労強度特性に優れていることが要求されるが、切削加工前の鋼の強度が高いと、切削性が悪くなる。そこで、切削加工を行う場合には、前熱処理を行って、フェライト(α)面積率の高い組織や、球状化組織を形成して、被削性を向上させていた。これ以外にも、フェライト面積率が高い低炭素鋼を採用していた。そして、切削加工後に、焼入等の熱処理を行うことによって、機械構造部品の強度の向上を図っている。
しかしながら、焼入等の熱処理を行う際に、高周波誘導加熱法を採用すると、短時間加熱であるために、フェライト面積率が高い組織や、球状炭化物組織である場合には、オーステナイト化が不十分となり、不完全焼入組織となる問題がある。
そこで、従来では、完全焼入組織を形成するために、切削加工後に、前熱処理としてフェライト面積率を低くした調質組織を形成し、その後、高周波誘導加熱による焼入処理を行って、疲労強度の向上を図っていた。しかし、当該前熱処理による調質組織の形成は、製造工程の増加し、生産コストの高騰を招くと共に、作業が煩雑化する問題があった。
一方、当該調質工程を簡素化するものとして、炉加熱により長時間高温加熱を行うことで、完全焼入組織の形成を行う方法が採用されている。この際、鋼にホウ素を微量に添加することにより、鋼の焼入性を向上させることがよく知られている。鋼への当該ホウ素の添加は、コストの低減や省資源の観点から、従来より広く利用されている。特に、ホウ素の微量添加による焼入性の向上は、複雑な成分制御を不要とすることができる点から素材の調達性にも大きく寄与する。
例えば、特許文献1には、工数、時間、設備を削減することができ、耐摩耗性(硬さ)および強度を向上でき、必要な靱性を確保できる熱処理部材を製造することを目的として、「炭素量が0.301〜0.50重量%の中炭素ボロン鋼からなる材料を所定形状に成形して素材とする工程と、該素材に焼入れのみからなり焼もどしを省略した熱処理を施す工程とからなる熱処理部材の製造方法」が開示されている。当該特許文献1では、焼入れは、素材をAc3変態点以上の温度(たとえば、約900℃)に加熱して均一なオーステナイト組織とし、加熱直後に上記素材を約200℃以下まで急冷することにより行っている。この際、ホウ素の存在によって焼入における冷却の際に、オーステナイトからマルテンサイト変態時にフェライトの生成を抑制することが可能となって、焼入性を向上させることができる。
特開2001−335838号公報
しかしながら、特許文献1に開示された熱処理方法では、具体的な加熱処理時間については明記されていないが、炉内加熱によって均一なオーステナイト組織を形成するためには、Ac3変態点以上の温度までの昇温時間に2時間程度要し、さらに、当該温度を30分程度保持し、冷却には、10分程度を要する。ゆえに、従来の方法では、高周波誘導加熱による短時間加熱処理による焼入が困難となるような組織であったとしても、完全焼入組織を形成することができるものの、加熱処理時間に多大な時間を必要とするため、生産効率が低く、コストの高騰を招来する問題があった。ゆえに、市場からは、フェライト面積率が高い組織や、球状炭化物組織を有するようなそれ自体が被削性の良好な鋼についても、短時間で焼入処理を行うことができる熱処理方法の開発が望まれていた。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法を採用することで、前熱処理や、長時間の高温加熱を不要とし、短時間で良好な焼入組織の形成を可能とした。
すなわち、本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、ホウ素を0.0005質量%〜0.0040質量%含むホウ素含有鋼の熱処理方法であって、炭素が0.30質量%〜0.50質量%、ケイ素が0.15質量%〜0.35質量%、マンガンが0.60質量%〜0.90質量%、リンが0.030質量%以下、硫黄が0.035質量%以下であり、残部が鉄及び不可避的不純物からなる化学組成を備える当該ホウ素含有鋼を、高周波誘導加熱法を用いて、室温から1023K〜1373Kの範囲に設定した加熱温度に3秒〜10秒で上昇させ、当該加熱温度を1秒〜1800秒保持した後、30K/秒以上の速度で冷却することを特徴とする。
本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、ホウ素を0.0005質量%〜0.0040質量%含むホウ素含有鋼に対して、高周波誘導加熱法を用いて、室温から1023K〜1373Kの範囲に設定した加熱温度に3秒〜10秒で上昇させ、当該加熱温度を1秒〜1800秒保持した後、30K/秒以上の速度で冷却することにより行うため、焼入れに要する時間を従来と比べて、大幅に短縮することが可能となり、生産効率の向上を図ることができる。また、本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、前組織の状態にかかわらず、良好な焼入組織を形成することができるため、従来のようなフェライト面積率が高い組織や球状炭化物組織を有する加工性の良好な鋼について特に有用となる。
従って、本件発明は、良好な焼入組織を形成するために、従来のような調質のための前熱処理や、長時間の高温加熱処理を不要とすることができ、省エネ、及び、低コストの観点で特に優れている。
本件発明における熱処理サイクルの模式図である。 実施例及び比較例として用いた供試材の前組織の顕微鏡写真である。 実施例及び比較例として用いた供試材のジョミニー試験の結果を示す図である。 実施例及び比較例として用いた供試材のCCT線図である。 実施例についてのTTA線図である。 比較例についてのTTA線図である。 実施例と比較例の重ねて示したTTA線図である。
以下に、本件発明に係る「ホウ素含有鋼の熱処理方法の形態」について詳述する。本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、ホウ素を0.0005質量%〜0.0040質量%含むホウ素含有鋼の熱処理方法である。以下、本件発明に係る熱処理方法の対象となるホウ素含有鋼について述べた後、本件発明に係る熱処理方法について説明する。
1.ホウ素含有鋼
本件発明に係る熱処理方法において用いるホウ素含有鋼は、少なくともホウ素を0.0005質量%〜0.0040質量%含む鋼を採用する。また、当該ホウ素含有鋼として、炭素が0.30質量%〜0.50質量%、ケイ素が0.15質量%〜0.35質量%、マンガンが0.60質量%〜0.90質量%、リンが0.030質量%以下、硫黄が0.035質量%以下であり、残部が鉄及び不可避的不純物からなる化学組成を備えるホウ素含有鋼を用いる。当該化学組成を備えた鋼の一例として、S35C(JIS G4051)にホウ素を0.0005質量%〜0.0040質量%で含む炭素鋼を挙げることができる。
ホウ素:ホウ素は、炭素鋼中のオーステナイト粒界に偏在することにより、粒界エネルギーを低下させて、フェライトの生成を抑制し、粒界強化を図ることにより疲労特性及び強度を改善する効果を有する重要な元素である。また、当該ホウ素は、微量の添加によって、より焼入性を向上させて鋼の硬化層深さを高める元素でもある。焼入性と硬化層の強度を確保するため、ホウ素の含有量は、0.0005質量%以上とすることが好ましい。一方、ホウ素が過剰に添加されると、その効果が飽和すると共に、靱性が低下してしまうため、上限を0.0040質量%とすることが好ましい。
炭素:軸や歯車等の高強度が要求される機械構造用鋼材における炭素含有量は、0.30質量%〜0.50質量%であることが好ましい。合金成分としての炭素は、焼入れ後の鋼の強度を確保すると共に、焼入れ後の硬化層硬さを確保するために必要な元素である。しかしながら、0.30質量%未満では、その硬さが不十分であり、0.50質量%を超えると、焼入れによって形成された硬化層が脆性破壊を起こすため、靱性が低下する。よって、本実施の形態では、炭素の含有量を0.30質量%〜0.50質量%とすることが好ましい。
ケイ素:ケイ素は、焼戻しの軟化抵抗性の向上に大きく寄与する元素であり、十分な効果を得るためには、0.15質量%以上必要である。一方で、過剰にケイ素を含有させると、切削加工性を低下させるため、ケイ素の含有量の上限を0.35質量%とすることが好ましい。
マンガン:軸や歯車等の高強度が要求される機械構造用鋼材におけるマンガン含有量は、0.60質量%〜0.90質量%であることが好ましい。マンガンは、焼入性を向上させて鋼の芯部硬さや硬化層深さを高める元素である。本実施の形態のように所定の硬さが要求される軸や歯車等の機械構造用鋼材に用いるためには、炭素鋼中に0.60質量%以上のマンガンを含有させることが必要となる。一方で、過剰にマンガンを添加すると、焼入性が過剰となり、靱性が劣化して加工性も低下するため、マンガン含有量の上限を0.90質量%とした。
リン:リンは、鋼の熱間加工性や靱性を低下させる不純物である。よって、炭素鋼中のリンの含有量は少ない方が好ましい。特に、リンの含有量が、0.03質量%を超えると、焼入れの硬化層の靱性低下が著しくなる。よって、リン含有量は、0.03質量%以下とすることが好ましい。
硫黄:硫黄は、不純物として含有される元素である。当該硫黄は、添加することによりマンガンと結合して、MnSを形成し、被削性、中でも切り屑処理性を高める作用を有する。しかしながら、硫黄の含有量が多くなってMnSの生成量が多くなりすぎると、被削性は改善されても、疲労強度の低下を招き、特に、硫黄の含有量が0.035質量%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。よって、本実施の形態では、硫黄含有量の上限を0.035質量%とした。
なお、本件発明において用いられる炭素鋼は、本発明の特性を阻害させない範囲であれば、機械構造用鋼材としての用途に応じて他の成分、例えば、モリブデン、バナジウム、ニオブ、ニッケル、クロム、チタン、テルル、カルシウム、マグネシウム、ジルコニウム等の成分を含むものを用いてもよい。
本実施の形態では、処理対象となるホウ素含有鋼が、上述したようなホウ素を所定の範囲で含むものであれば、その組織に特に限定はない。すなわち、本件発明における熱処理方法は、特に被削性が良好なものとして、処理対象となる鋼の前組織の状態が、フェライト面積率が40%以上の高い組織であっても、球状炭化物組織であってもよい。
2.熱処理方法
次に、本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法について図1の熱処理サイクルの模式図を参照して述べる。なお、本件発明に係る熱処理方法の一連の工程の前後におけるその他の工程に関しては、任意の工程であることを、念のために明記しておく。
本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、上述した成分組成のホウ素含有鋼を高周波誘導加熱法を用いて、所定の周波数で高周波誘導加熱し、室温から1023K〜1373Kの範囲に設定した加熱温度に3秒〜10秒で上昇させ、当該加熱温度で1秒〜1800秒保持した後、30K/秒以上の速度で冷却することを特徴とする。
本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、高周波誘導加熱法を採用する。当該高周波誘導加熱法による熱処理は、一般的な熱処理に比べて、加熱速度が速く、加熱対象である鋼の表面を迅速に加熱することができるからである。
本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、3秒〜10秒の昇温時間と、1秒〜1800秒の加熱温度の保持時間とで完全な焼入組織を形成すべく、加熱温度を1023K〜1373Kの範囲に設定する必要がある。当該加熱温度が1023K未満の場合には、昇温時間3秒〜10秒及び保持時間1秒〜1800秒の限られた時間内で完全な焼入れ組織を形成することが困難となり、所望の硬さを安定して得ることができなくなるからである。一方、加熱温度が1373Kを超えた場合には、結晶粒度が粗大化して、均一にオーステナイト化することができなくなり、十分な焼入れ効果を得ることができなくなるからである。この場合、製品の硬さの低下を招く傾向が生じやすいからである。
また、本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、冷却速度を30K/秒以上とする必要がある。当該冷却速度が30K/秒未満の場合には、組織中にフェライトとパーライトの組織やベイナイト組織が生成しやすくなり、製品の疲労特性や靱性が低下する傾向があるからである。なお、本実施の形態では、詳細は後述するように、連続冷却変態曲線(CCT曲線)のフェライトとパーライトのノーズ及びベイナイトのノーズに係らない範囲の冷却速度として30K/秒以上を挙げている。よって、冷却中に組織内にフェライトとパーライト組織や、ベイナイトの組織が生成されなければよいため、冷却速度の上限値に特に限定はない。
以上詳述したように、本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、ホウ素を0.0005質量%〜0.0040質量%含むホウ素含有鋼に対して、高周波誘導加熱法を用いて、室温から1023K〜1373Kの範囲に設定した加熱温度に3秒〜10秒で上昇させ、当該加熱温度を1秒〜1800秒保持した後、30K/秒以上の速度で冷却することにより行うため、従来と比べて焼入れに要する時間を大幅に短縮することが可能となり、生産効率の向上を図ることができる。また、本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法は、前組織の状態にかかわらず、良好な焼入組織を形成することができるため、従来のようなフェライト面積率が高い組織や球状炭化物組織を有する加工性の良好な鋼について特に有用となる。
従って、本件発明は、良好な焼入組織を形成するために、従来のような調質のための前熱処理や、長時間の高温加熱処理を不要とすることができ、省エネ、及び、低コストの観点で特に優れている。
次に、本件発明に係るホウ素含有鋼の熱処理方法の評価について、ホウ素を格別に添加していない炭素鋼との比較を通じて具体的に述べる。まずはじめに、供試材について述べる。
<供試材>
評価に用いる供試材としては、本件発明により得られるホウ素添加鋼と、ホウ素添加前の炭素鋼について、前組織の条件を合わせるため焼鈍を行い、図2に示すように、組織中のフェライト面積率を約45%にそろえたα+パーライト組織に調整をしたものを用いる。図2中、AFGSは、集合フェライトの粒径を示す。以下の表1に実施例としての供試材と、比較例としての供試材の化学成分を示す。表1における実施例はS35Cにホウ素を添加したホウ素添加鋼であり、比較例はホウ素を添加する前のS35C鋼である。
比較例の焼鈍処理熱サイクルは、比較例として用いるS35C鋼を1423Kまで昇温した後、4秒間保持する。その後1173Kまで、放冷した後、急冷し、再度1153Kまで昇温した後、1秒間保持し、その後保冷した。図2に示すように、比較例として用いた焼鈍処理したS35C鋼は、実施例としてのホウ素含有鋼とほぼ同等のフェライト面積率を有するα+パーライト組織を有するものとなり、AFGS(集合フェライトの粒径)もほぼ同等とした。
<ジョミニー試験>
まずはじめに、ホウ素を添加することにより得られる基本的な焼入性の向上効果を確認するため、実施例と同様の成分組成のホウ素含有鋼と、比較例としてのS35C鋼について、ジョミニー試験(一端焼入方法 JIS G 0561)を行った。
ジョミニー試験は、加熱炉を用いて、各供試材を室温から1143Kに設定した加熱温度に約7200秒で上昇させ、当該1143Kを約1800秒保持した後、5秒保冷して、一端噴水冷却によって360秒で冷却した。
当該ジョミニー試験の結果を図3に示す。図3に示すように、比較例としてのS35C鋼の硬さが400HV10となる表面からの距離は、4.0mmであるのに対し、実施例と同様の成分組成のホウ素含有鋼の硬さが400HV10となる表面からの距離は、8.5mmであった。また、焼入端部から1.5mmの位置における組織は、両者とも旧オーステナイト結晶粒度番号(G.S.No.。JIS G0551。供試材断面の1mmあたりの平均結晶粒数)が9.5であり差は認められなかった。よって、当該ジョミニー試験により、ホウ素含有鋼は、ホウ素を格別に含有していないS35C鋼と比べて、4.5mm焼入層が深くなり、ホウ素添加によって焼入性が向上する効果が確認できた。
<CCT線図>
次に、本件発明の熱処理方法により処理されたホウ素含有鋼の焼入性の向上効果を確認するため、実施例としてのホウ素含有鋼と、比較例としてのS35C鋼のそれぞれについて、高周波誘導加熱方式の変態点測定装置(Formastor−EDP、試験片形状:直径3mm×長さ10mm)を用いて連続冷却変態の測定を行い、CCT線図(Continuous−Cooling−Transformation diagram)を作成した。当該CCT線図は、実施例としてのホウ素含有鋼と、比較例としてのS35C鋼について、高周波焼き入れ法を用いて、室温から1273Kに設定した加熱温度に5秒で上昇させ、当該1273Kを10秒保持した後、10K/秒、20K/秒、30K/秒、50K/秒75K/秒、100K/秒、150K/秒のいずれかの冷却速度で冷却した。作成したCCT線図を図4に示す。
図4に示すように、焼入臨界冷却速度は、実施例としてのホウ素含有鋼も、比較例としてのS35C鋼も、共に約150K/sで同等であった。しかしながら、実施例としてのホウ素含有鋼のフェライト+パーライト(α+P)ノーズ先端の冷却速度は、約30K/秒であり、比較例としてのS35C鋼の約100K/sと比べて遅く、本願発明のホウ素含有鋼の熱処理方法によれば、フェライト+パーライト組織が生成しにくいことがわかった。これは、本願発明のホウ素含有鋼の熱処理方法である急速短時間加熱γ化であっても、ホウ素が含有されていることにより、フェライトの生成が抑制されたためと考えられる。また、上述したC.C.T.線図から、十分にマルテンサイト変態させて高強度化を図るためには、少なくとも冷却速度を30K/秒以上とすればよいことが確認できた。
<TTA線図>
次に、本件発明による熱処理方法により処理されたホウ素含有鋼の焼入性の向上効果を確認するため、実施例としてのホウ素含有鋼と、比較例としてのS35C鋼のそれぞれについて、高周波誘導加熱方式の変態点測定装置(Formastor−EDP、試験片形状:直径3mm×長さ10mm)を用いてTTA線図(Time−Temperature−Austenitizing diagram)を作成した。当該TTA線図は、実施例としてのホウ素含有鋼と、比較例としてのS35C鋼について、高周波焼き入れ法を用いて、室温から各加熱温度Tに5秒で上昇させ、当該加熱温度Tを各保持時間t保持した後、0.5MPaのヘリウムガスを用いて急冷した。当該加熱温度Tは、1073K〜1373Kの間で50K刻みで7段階で変化させ、保持時間tを1秒、10秒、50秒の3段階で変化させて熱処理を行った。図5は実施例としてのホウ素含有鋼についての各条件下での試験片の15点平均値を用いた硬さ(HV0.1)と、旧オーステナイト結晶粒度番号を示し、図6は比較例としてのホウ素含有鋼についての各条件下での試験片の15点平均値を用いた硬さ(HV0.1)と、旧オーステナイト結晶粒度番号を示す。各図において、上限線はオーステナイト化粗粒域として結晶粒度番号が8.0を超える条件を示し、下限線はオーステナイト化不十分域として金属顕微鏡観察(400倍)で未溶解フェライトが見えなくなる条件を結んでいる。そして、これら上限線と下限線との間をオーステナイト化適切域として示している。比較を容易とするために、図7には、実施例の上限線及び下限線と、比較例の上限線及び下限線とを重ねて示す。
図7に示すように、実施例としてのホウ素含有鋼も比較例としてのS35C鋼も、上限線の位置に大きな差はない。よって、ホウ素含有鋼とS35C鋼との間では、本発明の熱処理方法を採用した場合に、結晶粒成長(粗大化)はほぼ同等であるといえる。これに対し、下限線は実施例としてのホウ素含有鋼の方が、比較例としてのS35C鋼と比べて、保持時間tが1秒〜50秒の範囲で150K〜100Kほど低温側に位置することがわかる。よって、本件発明の熱処理方法のように、急速短時間加熱範囲でのオーステナイト化(セメンタイトの分解と炭素の固溶拡散、およびオーステナイトへの相変態)はホウ素の添加によって、より低温から開始することが確認できた。なお、本実施例と比較例との間で、熱膨張線図でのAc1、Ac3変態点に差はみられなかった。
<シャルピー衝撃試験>
次に、本件発明に係る熱処理方法による焼入性を検証するために、実施例としてのホウ素含有鋼と、比較例としてのS35Cのそれぞれについて、シャルピー衝撃試験を行った。シャルピー衝撃試験は、実施例と比較例の供試材を、高周波焼き入れ法を用いて、室温から1273Kに設定した加熱温度に5秒で上昇させ、当該1273Kを10秒保持した後、急冷した。その後、各供試材について、株式会社東京衡機製造所製のシャルピー衝撃試験装置(容量294kN)を用いて、JIS Z 2242(1998)に準じてシャルピー衝撃試験を行った。試験条件は、供試材としてVノッチを形成した5.0×5.0×55mmを用い、試験温度を25.0℃(23±5℃)、1試料につき試験回数3回実施した。当該シャルピー衝撃試験の結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例としてのホウ素含有鋼のシャルピー衝撃値は、19.5J/cmであるのに対し、比較例としてのS35C鋼のシャルピー衝撃値は、9.3J/cmであり、実施例のホウ素含有鋼は、比較例のS35C鋼と比べて2倍程度高い値を示した。また、比較例としてのS35C鋼の延性破面率は、15.7%であるのに対し、実施例としてのホウ素含有鋼の延性破面率は、25.1%であった。この実験結果から、ホウ素を鋼に添加することにより、粒界強度が高まり、靱性が大幅に向上することがいえる。
本件発明にかかるホウ素含有鋼の熱処理方法によれば、前組織の状態にかかわらず、良好な焼入組織を形成することができるため、従来のようなフェライト面積率が高い組織や球状炭化物組織を有する加工性の良好な鋼について短時間で焼入処理を行う際に、特に有用となる。

Claims (1)

  1. ホウ素を0.0005質量%〜0.0040質量%含むホウ素含有鋼の熱処理方法において、
    炭素が0.30質量%〜0.50質量%、ケイ素が0.15質量%〜0.35質量%、マンガンが0.60質量%〜0.90質量%、リンが0.030質量%以下、硫黄が0.035質量%以下であり、残部が鉄及び不可避的不純物からなる化学組成を備える当該ホウ素含有鋼を、高周波誘導加熱法を用いて、室温から1023K〜1373Kの範囲に設定した加熱温度に3秒〜10秒で上昇させ、当該加熱温度を1秒〜1800秒保持した後、30K/秒以上の速度で冷却することを特徴とするホウ素含有鋼の熱処理方法。
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