JPH0598357A - 焼き戻し省略型高炭素薄鋼板の製造方法 - Google Patents

焼き戻し省略型高炭素薄鋼板の製造方法

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JPH0598357A
JPH0598357A JP25808591A JP25808591A JPH0598357A JP H0598357 A JPH0598357 A JP H0598357A JP 25808591 A JP25808591 A JP 25808591A JP 25808591 A JP25808591 A JP 25808591A JP H0598357 A JPH0598357 A JP H0598357A
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JP
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steel
quenching
steel sheet
toughness
formability
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Application number
JP25808591A
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English (en)
Inventor
Kiyoshi Fukui
清 福井
Eigo Yagi
英剛 八木
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 チェーン、シートベルト金具製造用に適する
焼入・焼戻の省略可能な安価な材料を提供する。 【構成】C:0.15 〜0.40%としてセメンタイトの析出を
抑え、B添加によって焼入性を確保し、さらにオーステ
ナイト粒の異常成長を抑制すべくAlN 、TiN の析出を利
用する。300 ℃以下での時効処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高炭素薄鋼板の製造方
法、特に自動車部品(例:クラッチ用皿バネ)、事務機
器用チェーン、自動車用強度部材 (シートベルト金具)
等の用途に好適な、冷間加工性、焼入れ性、そして熱処
理後靱性に優れた高炭素薄鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、チェーン部品、自動車部品等と
して用いられる高炭素薄鋼板はJIS G3311 に規定される
S30〜70CMあるいはSK3〜5の高炭素冷延鋼板を素材と
し、これを成形加工した後、焼入れ・焼戻し、オーステ
ンパ等の熱処理により硬化することにより製造される。
このような材料では、引張強度で1400MPa 以上(HRC硬度
=42〜46) の強度確保、焼入れ性確保および焼戻し後の
靱性向上のために炭素を重量比で0.4 %超添加すること
が必要であった。
【0003】しかし、このような高炭素鋼では強度の上
昇にともない、切欠感受性の増大による靱性劣化が生
じ、これを防ぐため注意深い焼戻し処理が必要であり、
そのうえ、焼戻し脆性域では著しい靱性劣化がみられる
ことなどから、これら脆化温度域での焼戻しを回避しな
ければならず、ために強度設定にはC量、合金成分量の
調整を十分注意して行う必要があった。また、このと
き、0.4 %超とC量が高い場合には、焼入れ、オーステ
ンパ等の熱処理を受けた際に焼入れ歪による寸法の変化
が生じ、これによる精度劣化を防止するためにプレステ
ンパー等煩雑な焼戻し処理が必要となっていた。
【0004】さらに、かかる高炭素鋼は焼入れ等の熱処
理前の成形性が低く、深絞り、小径曲げ等の複雑な成形
が困難である。この成形性の向上には成形前の冷間圧延
および焼鈍条件を調整して対応しているが、これにも限
界があり、またコスト高は免れない。一方、0.4 %以下
の炭素量の鋼では比較的これらの成形性は良好である
が、焼入れ性が悪く、板厚の大きな成品あるいは複雑な
形状に成形された成品では焼入れ後のマルテンサイト組
織、あるいはオーステンパ後のベイナイト組織が均一に
確保できない等の弊害があった。そこで、これら熱処理
前の成形性に優れかつ、熱処理後に安定した焼入れ組織
が得られ、また焼入れ、オーステンパ等の熱処理後の靱
性にも優れた高強度鋼板が要求されていた。
【0005】この問題を打開するため中炭素域の鋼種に
B (ボロン) を添加し、成形性と焼入れ性を両立し得る
鋼種として、FORMARLY STANDARD SEA ALLOY STEELS中の
SAE10B20〜SAE10B40等の鋼種が提案されており、またそ
の薄鋼板の製造方法 (特願平2−90764 号) が発明され
たが、焼入れままでは降伏強さ(YS)が低くバネ特性が不
安定であったり、使用温度の上昇に伴ないYSが変化する
等の問題があった。
【0006】さらに浸炭用合金鋼であるSCM420の成形性
を向上させる目的の鋼種として「日新製鋼技報」45号p.
30に記載されたN22CB 等のB添加型鋼種があるが、この
鋼種は浸炭用にCrが添加されているため880 ℃程度の比
較的高い温度で1h 以上の長時間の均熱プロセスが必要
となっていた。またこれらB添加型鋼種では、「日新製
鋼技報」52号p.1 に記されているように、焼鈍、熱処理
等の加熱過程で、BNや、M23(CB)6を形成するため焼入れ
性や熱処理後の靱性阻害が問題となっていた。しかも、
これらの報文に記載されたN22CB 鋼種はCr添加量が高
く、オーステナイト化温度域に加熱した際に、セメンタ
イトの分解に時間を要するため、安定した焼入れ性の確
保には比較的長時間のオーステナイト域での均熱が必要
であった。
【0007】
【発明が解決すべき課題】このように、C:0.4 %超とし
た高炭素鋼では、熱処理前の成形性が悪く、焼入れ後に
焼戻し処理は不可避であり、コスト上昇は避けられなか
った。しかし、C:0.4 %以下として成形性と焼入れ性と
の両立を図っても、今度は機械的特性の劣化が避けられ
ず、これら諸特性をいずれも満足する材料を開発するこ
とは困難と考えられていた。特に、靱性さらには焼入れ
性改善には高温での長時間均熱が必要とされており、コ
スト上昇は避けられなかった。かくして、本発明の目的
は、冷間加工性、焼入れ性、そして熱処理後靱性のいず
れにも優れた高炭素薄鋼板の安価な製造方法を提供する
ことである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる課題
を解決すべく種々検討を重ね、研究開発を続けたとこ
ろ、次のような知見を得た。 1) 熱処理前の成形性確保のため、成形性阻害要因であ
るセメンタイトの体積分率抑制を目的としてC量の上限
を重量比で0.4 %とすることにより、熱延鋼板での伸び
値はS55Cクラスで20%以下であったのに対し、本発明鋼
では22%以上を有し、従来用いられている熱延高炭素鋼
板よりも、曲げ、絞り等の成形性が良好であり、一方冷
延鋼板の場合、例えば圧下率30〜80%の範囲で冷間圧延
し、箱焼鈍した後の伸び値は、S55CM クラスで30%以下
であったのに対し35〜40%まで向上する。このとき、TS
×ELバランスは16000MPa・%以上となり、S55CM クラス
より軟質であって、十分な成形性は確保される。
【0009】2) このとき、S55CM クラス並の焼入れ性
を確保するために、0.0003%以上のBを添加し、またこ
のBによる焼入れ性を確保するために、好ましくは0.1
%を上限として0.005 %以上のTiを添加する。このと
き、Bが過剰に添加された場合、熱間圧延あるいは成形
加工後の焼入れ等最終熱処理においてBNが形成され、最
終成品の靱性が阻害されたり、さらに箱焼鈍工程におい
てM23(CB)6を形成し、靱性を著しく劣化するため添加量
の上限を0.0030%とする。
【0010】3) さらに、成形加工後焼入れ等の熱処理
を施す場合、打ち抜き、小径曲げ等の強加工を受けた部
分ではオーステナイト化温度域で均熱した際にオーステ
ナイト粒が異常成長し、熱処理後の靱性を劣化する。こ
の対策としてAlN 、TiN の析出物を熱間圧延時、あるい
は成形後の熱処理時に析出させるとオーステナイト粒の
異常成長が効果的に抑制され、この析出条件としては、
BとAl、Tiとの間でB添加量が、Ti無添加の場合、0.00
32%−0.014 ×sol.Al%、Ti添加の場合、0.0032%−0.
014 ×sol.Al%−0.29×Ti%をそれぞれ上限として0.00
03%以上であることを満足する必要がある。
【0011】4) 焼入れ方法は水焼入れ、油焼入れでも
問題なく、さらに300 ℃以下、好ましくは250 ℃以下の
適当な温度で時効処理を行うことで転位の固着作用によ
り降伏応力が50MPa 以上増大する。また、鋼中炭素量が
低く、焼入れ、時効処理後の靱性が大きいことから、焼
戻し処理を省略できる。
【0012】本発明はかかる知見に基づいてなされても
のであって、その要旨とする点は、重量割合にて、 C:0.15 〜0.40%、Si≦0.35%、Mn:0.6〜1.50%、P≦
0.030 %、 S: ≦0.020 %、 sol.Al:0.01 〜0.20%、N:0.0020
〜0.012 %、 B: 0.0003〜0.0030%、かつB≦0.0032−0.014 ×sol.
Al、 残部が実質的にFeから成る鋼組成を有する板厚6mm以下
の熱延鋼板を、塑性加工後、Ac3 〜950 ℃の温度域にて
均熱してから、水中あるいは油中に焼入れしその後、焼
入れ温度以上320 ℃以下の温度域で時効処理を行うこと
を特徴とする、成形性と靱性に優れた焼き戻し省略型高
炭素薄鋼板の製造方法である。
【0013】本発明の別の態様によれば、上記鋼組成
は、さらに重量割合で、Ti:0.005〜0.1 %を含有し、B
の上限を0.0032−0.014 ×sol.Al−0.029 ×Tiとしても
よい。本発明は、その別の面によれば、上記のいずれか
の鋼組成を有する板厚4mm以下の冷鋼板を、塑性加工
後、Ac3 〜950 ℃の温度域にて均熱してから、水中ある
いは油中に焼入れし、焼入れ温度以上300 ℃以下の温度
域で時効処理を行うことを特徴とする、成形性と靱性に
優れた焼き戻し省略型高炭素薄鋼板の製造方法である。
【0014】さらに別の面によれば、本発明は、上述の
いずれかの鋼組成を有する鋼を、圧下率30〜80%の冷間
加工と箱焼鈍により、板厚4mm以下でTS×El≧16000MPa
%の鋼板とし、塑性加工後、Ac3 〜950 ℃の温度域にて
均熱後、水中あるいは油中に焼入れしその後、焼入れ温
度以上300 ℃以下の温度域で時効処理を行うことを特徴
とする、成形性と靱性に優れた焼き戻し省略型高炭素薄
鋼板の製造方法である。
【0015】
【作用】次に、本発明において上記のように成分範囲お
よび製造処理条件の数値限定を行った理由について下記
に示す。まず、本発明において鋼組成を上記のように成
分限定を行った理由は次の通りである。
【0016】(a) C:鋼板に所望の強度と焼入れ性を付
加するためにC添加量は0.15%以上とする。また、熱処
理時にオーステナイト化温度域に均熱した際に、比較的
低い温度で均一なオーステナイトを確保し、さらに焼入
れ後に1400MPa 以上の強度を確保するためには、C量は
0.20%以上が望ましい。
【0017】しかし、0.40%を超えてCを添加すると焼
入れ後の強度が2000MPa を超え、靱性が著しく劣化す
る。また、この靱性低下を抑制するためには比較的高温
で、かついわゆる焼戻し脆性域と呼ばれる温度域を除い
た温度での焼戻し処理が必要となる。
【0018】これに対して0.40%以下、特に0.30%以下
のC量では焼入れままでも引張強度は1800MPa 以下であ
り、0.40%以上の鋼種の、焼入れ・焼戻し後の耐衝撃性
が焼入れままでも確保することができる。以上の結果、
本発明鋼板のC添加量の範囲を0.15〜0.40%、好ましく
は0.20〜0.30%と限定する。
【0019】(b) Si:脱酸材等として必然的に若干量の
添加が必要となるが、0.35%を超えて含有させると熱間
圧延後、熱間圧延・焼鈍後、あるいは冷間圧延・焼鈍後
の鋼板強度が増大し、本発明の意図するところの成形性
の確保が困難となる。そこで、本発明ではSi添加量の上
限を0.35%と限定する。
【0020】(c) Mn:本発明では、C添加量が一般にシ
ートベルト金具やチェーンに用いられている高C鋼板よ
りもC含有量が低めとなっている。このため、絞り成
形、曲げ成形により焼入れの入りにくい部分が生じた場
合、部分的にパーライトやトルースタイトが形成され、
著しく強度および靱性が劣化する場合がある。そこで、
このような部分の発生を抑えるために焼入れ性を増大さ
せる目的からMnを0.60%以上添加する。また、1.50%を
超えてMnを添加した場合、焼入れ状態での強度が1800MP
a を超え、靱性も劣化することからMn添加量は1.50%以
下とする。
【0021】(d) P:熱処理後の鋼板の靱性を向上させ
る目的でP含有量は低いほど好ましい。このため、P含
有量は0.030 %以下と定めたが、望ましくは0.020 %以
下に制限するのがよい。
【0022】(e) S:熱処理後の鋼板の耐衝撃性の向上
を目的として、S含有量は極力低く抑える必要がある。
また、MnS の過剰な形成は最終成品の耐疲労特性を劣化
することから、S含有量は0.020 %以下と定めたが、望
ましくは0.010 %以下に制限するのがよい。
【0023】(f) sol.Al:Alは鋼の脱酸材として必要に
応じて添加される成分であるが、この他AlN を生成し熱
処理時のオーステナイト粒の異常成長を抑制し、さらに
このN固着効果によりBNの生成を抑制してBによる焼入
れ性向上を促進する働きがある。これらの効果に対して
有効なsol.Al量は0.01%以上であるが、0.20%を超えて
はコストアップになり、鋼板の硬化をもたらすことから
上限を0.20%とした。
【0024】(g) N:Nの添加は鋼の硬度や引張強度の
向上に効果があり、AlN あるいはTiN を形成することに
よりオーステナイト粒の微細化をはかり、耐衝撃性向上
や、巻取り等における曲げ割れの防止に効果がある。こ
の効果を得るためNの添加量は、0.0020%以上である。
しかし、過度の添加は成形加工時の材料強度の増大につ
ながり、成形性を劣化させる。また、AlN 、TiN による
固着能力を超えて固溶Nが残留しBの焼入れ性向上効果
を阻害するため、上限を0.0120%とする。さらに、オー
ステナイト粒を微細化しかつ、BNの生成を抑制し得る適
正範囲としては0.0030〜0.0080%の範囲にNを限定する
ことが望ましい。
【0025】(h) B:成形性向上のため本発明ではC量
を0.40%以下と限定しているが、この場合深絞り成形、
小径曲げ加工等による複雑な加工部分では、未焼入れ部
が生じる場合があり、ここでは部分的にパーライトやト
ルースタイトが形成され著しく強度および靱性が劣化す
る。そこで、このような部分の発生を抑えるために焼入
れ性を増大させる目的からBを添加するが、この時焼入
れ性の向上に有効な添加量の下限は0.0003%以上であ
る。また、0.0030%を超えてのBの添加は、焼入れ性上
昇効果が飽和する他、過剰なBの添加がM23(CB)6を形成
し、熱処理後の靱性を劣化し、さらにBNの析出の増大も
靱性を劣化する。以上の知見によりB添加量の上限を0.
0030%とする。またこの時、添加BとNとの結合による
BN形成を防止するため、sol.Al、Tiとの添加バランスを
考慮する必要がある。BNは比較的低い温度で生成するこ
とからこれよりも高い温度で生成するAlN 、TiN により
固溶Nを固着し、BNの生成を抑制する。このときの添加
量の上限はAl単独添加の場合、B量の上限は0.0032%−
0.014 ×sol.Al%、Al、Ti複合添加の場合にはB量の上
限は0.0032%−0.014 ×sol.Al%−0.029 ×Ti%とする
のがよい。
【0026】(i) Ti:本発明では、Tiは必要に応じて添
加する。sol.Alの項にも示したようにBによる焼入れ性
向上を促進するためオーステナイト中の固溶Nとの結合
によるBNの生成を抑制する必要がある。このため、上記
のAlN でのN固着が不十分な場合、TiによるTiN 生成に
より固溶Nを固着し、BN生成を抑制する。このとき、Ti
N 生成に要する添加量の下限は0.005 %以上で、0.1 %
超では成形時に固溶Tiにより強度が上昇し成形性が阻害
される。また、成形加工後熱処理を実施した成品では生
成したTiN を起点とする破壊が生じ易く靱性確保のため
にも上限を0.1 %とする必要がある。次に、本発明にお
いてそれぞれ製造プロセスを上述のように限定した理由
を以下に述べる。
【0027】(j) 成品板厚範囲 本発明範囲の成分系の場合、C量が0.40%以下であるの
で焼入れ性を確保するためには、FORMARLY STANDARD SE
A ALLOY STEELS中のSAE10B20〜SAE10B40等のデータから
板厚上限を6.0 mm以下とする。さらに、冷延鋼板として
は、板厚精度を±0.05mm以内とするため、30%以上の圧
下率で冷間圧延することが必要であり、さらに冷延鋼板
として小径曲げ等の優れた成形性を付与するには板厚が
過度に大きい場合、曲げ割れ等の不都合が生じる。この
ため冷延鋼板としては最大板厚を4.0 mmと限定する。
【0028】(k) 冷延圧下率範囲 本発明によって製造される鋼板の特徴は、優れた焼入れ
性の他に熱処理前の優れた成形性があげられる。この成
形性を確保するためには、熱延鋼板としてもあるいは単
に冷延鋼板としてもよいが、より一層の成形性を得るに
は冷間圧延集合組織の発達を目的として、30%以上の圧
下率を与えることが望ましい。このような冷間圧延を行
うことで、熱処理前のTS×ELバランスは16000MPa・%以
上となり、平均r値も0.95以上となる。しかし過度の圧
下率増大は冷延中の耳割れ発生をともない破断の原因と
なることから圧下率の上限を80%とする。
【0029】(l) 焼鈍条件:焼鈍は、鋼中パーライトの
セメンタイトを球状化するため箱焼鈍により行う。この
とき、焼鈍温度は特に規定はしないが、650 〜740 ℃に
て1h 以上均熱するのが望ましい。また、箱焼鈍の効率
を考慮して加熱冷却速度の下限は20℃/hとし、上限はセ
メンタイトの球状化が阻害されないよう100 ℃/hとする
のが望ましい。以上の条件で行う箱焼鈍により、これら
鋼板の強度×伸びバランスは16000MPa・%以上が確保で
きる。
【0030】(m) 塑性加工:ここに規定する塑性加工と
は、打抜き、プレス成形の他、打抜き性の向上を目的と
して行う圧延ロールによる塑性歪等の付与加工等も包含
する。
【0031】(n) 焼入れ条件:オーステナイト化温度条
件は、焼入れ組織中にフェライト組織の残留がないよう
にAc3 温度以上で均熱する必要がある。しかし、この温
度域で長時間均熱を行った場合、オーステナイト粒が異
常成長し、靱性を著しく阻害する場合がある。さらに、
熱処理コスト低減の意味からも均熱時間を比較的短い時
間とすることが望ましい。しかし、セメンタイトが分解
して均一なオーステナイトを形成するには、1分以上均
熱することが望ましく、この適正温度としてはAc3 +50
℃以上の温度がよい。しかし、熱効率、熱処理炉寿命の
観点から上限を950 ℃とする必要があり、さらに成品の
焼入れ歪防止の目的からは900 ℃以下とするのが望まし
い。
【0032】焼入れ時の冷媒は、焼入れ後の洗浄工程の
簡略化を目的として水あるいは油が用いられる。また冷
媒温度は合金成分に対応して、注意深く調整されるが、
均一なマルテンサイト組織を確保するためオーステナイ
ト域からの冷却速度を50〜1000℃/secとするのが好まし
い。また焼入れ時の歪発生を防止する目的で過度の急冷
も望ましくない。このため、例えば水温は0〜100 ℃、
油温は0〜180 ℃の範囲で適宜調整すればよい。
【0033】(o) 時効処理:これらの鋼板は、焼入れま
まの状態ではマルテンサイト変態により導入された転位
が十分固着されておらず、このため焼入れ状態でのYSが
低く、バネ特性が不安定であるほか使用温度の上昇にと
もないYSが変化する等、高炭素鋼板部品として使用する
上で不適当な性質がある。このため、必要に応じてTSを
低下させずにYSのみを増大する目的で焼入れ温度以上、
300 ℃以下の温度範囲で時効処理を行うものとする。従
来焼戻し処理ではセメンタイトの析出を目的として400
〜600℃の温度で30分以上均熱するが、本発明での時効
処理とは、マルテンサイト中の自由転移を固着するため
のもので、低温かつ短時間で処理されるものである。こ
の際、時効時間は15〜30min とするのがよい。さらに、
望ましい温度範囲としては、150 〜250 ℃が提唱され
る。以上の知見に基づく本発明の実施例を以下に示す。
【0034】
【実施例】
(実施例1)本例では、表1に示す各鋼組成を有する供試
材を溶製し、熱間圧延および冷間圧延を行い、冷間圧延
・焼鈍後の機械的性質と焼入れ時効処理後の強度に対す
るC量の影響を評価した。製造条件は同じく表1の注に
示す。表1に示す鋼組成を有するC量の異なる7種の鋼
板を冷間圧延・焼鈍後、および焼入れ時効処理後の各供
試材の機械的特性を表1中に示した。図1はそのうち冷
間圧延・焼鈍後の引張り強さおよび伸びのデータをグラ
フで示すものである。
【0035】この結果、本発明のC量を下回る鋼Aで
は、冷間圧延・焼鈍後の強度は軟質で、伸びも44%以上
であるが、焼入れ後の強度はTSで1300MPa を下回り、製
品としての強度が問題となる。
【0036】これに対し、0.18%C以上の試料では冷間
圧延・焼鈍状態で37%以上の伸びを維持しながら、焼入
れ時効後の強度はいずれもTSで1300MPa 以上を有する。
しかし、0.4 %超のC量の試料では冷間圧延・焼鈍後の
伸びが37%以下と劣化する。本発明で規制する範囲のC
量では、冷間圧延・焼鈍後の良好な伸びと焼入れ時効処
理後の高強度が両立することが分かる。
【0037】(実施例2)本例では、時効処理温度の降伏
強度および引張強度に対する影響を評価した。表2に示
す各鋼種H〜Jについて下記条件で焼入れまでを行って
から、焼入れ後の時効処理を7水準の温度範囲で行っ
た。
【0038】すなわち、本発明の対象となる鋼H〜Jに
対して、板厚4.0 mmの熱延鋼板を、2.5 mmへ冷間圧延
し、710 ℃×18h の球状化焼鈍を行った。これら鋼板を
880 ℃×25min の条件で均熱後、20℃の水中へ焼入れ
し、さらに50〜350℃で20min 均熱する時効処理を行
い、そのときのYSとTSを調査し、結果を図2に示す。
【0039】この結果、150 〜250 ℃にかけて時効処理
を行った場合TSは低下するが、YSは上昇し、本発明の特
徴である優れたバネ特性を示していることが分かる。こ
れに対し、本発明の範囲を超えた350 ℃の時効処理を行
った供試材ではYSは低下する。この結果、図2に示すよ
うに本発明範囲の時効処理温度では、焼入れままよりも
高いYSが確保され、またTSの低下も小さい。
【0040】(実施例3)本例では、Si、Mn、P、S、T
i、B等の影響を評価した。表3、4に示す各鋼組成を
有する供試材について熱間圧延材 (板厚 3.2mm) はその
まゝ焼入れし、また冷延材 (板厚 1.0mm) については表
3、4記載の温度で16時間の箱焼鈍および焼入処理を行
って、それぞれ得られた供試材について機械的特性を評
価した。表中、焼入れ前の成形性とあるのは熱延鋼板で
は熱延まゝ材についての成形性であり、冷延鋼板では焼
鈍後の冷延材についての成形性である。
【0041】結果を同じく表3、4にまとめて示す。上
述の各合金元素が本発明の範囲を超え、あるいは下回っ
た場合、成形性、焼入れ・時効後の強度の両立が困難で
あるが、本発明の範囲内では熱処理前の優れた成形性
と、焼入れ後の高強度との双方が確保できる鋼板が得ら
れることが分かる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【発明の効果】本発明による、薄鋼板は、焼鈍後の成形
性が良好で、かつ熱処理後の靱性に優れ、さらに従来靱
性向上のために必要とされていた焼入れ後の焼戻しを省
略し得る生産性にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例の結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/06 38/14

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量割合にて、 C:0.15 〜0.40%、Si≦0.35%、Mn:0.6〜1.50%、P≦
    0.030 %、 S: ≦0.020 %、 sol.Al:0.01 〜0.20%、N:0.0020
    〜0.012 %、 B:0.0003 〜0.0030%、ただし、B≦0.0032−0.014 ×
    sol.Al、 残部が実質的にFeから成る鋼組成を有する板厚6mm以下
    の熱延鋼板を、塑性加工後、Ac3 〜950 ℃の温度域にて
    均熱後、水中あるいは油中に焼き入れしその後、焼き入
    れ温度以上300 ℃以下の温度域で時効処理を行うことを
    特徴とする、成形性と靱性に優れた焼き戻し省略型高炭
    素薄鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記鋼組成が、さらに、Ti:0.005〜0.1
    %を含み、B≦0.0032−0.014 ×sol.Al−0.029 ×Tiで
    ある、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の鋼組成を有する
    板厚4mm以下の冷延鋼板を、塑性加工後、Ac3 〜950 ℃
    の温度域にて均熱してから、水中あるいは油中に焼き入
    れし、焼き入れ温度以上300 ℃以下の温度域で時効処理
    を行うことを特徴とする、成形性と靱性に優れた焼き戻
    し省略型高炭素薄鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載の鋼組成を有する
    鋼を、圧下率30〜80%の冷間圧延と箱焼鈍により、板厚
    4mm以下でTS×El≧16000MPa%の鋼板とし、塑性加工
    後、Ac3 〜950 ℃の温度域にて均熱してから、水中ある
    いは油中に焼き入れしその後、焼き入れ温度以上300 ℃
    以下の温度域で時効処理を行うことを特徴とする、成形
    性と靱性に優れた焼き戻し省略型高炭素薄鋼板の製造方
    法。
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