JP5316242B2 - 熱処理用鋼材 - Google Patents
熱処理用鋼材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5316242B2 JP5316242B2 JP2009139359A JP2009139359A JP5316242B2 JP 5316242 B2 JP5316242 B2 JP 5316242B2 JP 2009139359 A JP2009139359 A JP 2009139359A JP 2009139359 A JP2009139359 A JP 2009139359A JP 5316242 B2 JP5316242 B2 JP 5316242B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- steel
- heat treatment
- less
- steel material
- content
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Description
ここで、耐摩耗特性を向上させる方法としては、鋼中に炭化物等の硬質な物質を分散させる方法や、鋼材に熱処理を施すことによって鋼材の硬さを高める方法が採用されている。
その結果、Cr、Mo含有鋼材について、CrおよびMoの含有量を所定の範囲とすることにより、鋼中に一般に存在する炭化物の再固溶により十分な焼入性を確保するとともに、Cr、Mo含有鋼材に特有の炭化物の再固溶を著しく抑制することができ、この再固溶されずに残留した炭化物(以下、「残留炭化物」ともいう。)により、鋼部品の耐摩耗特性が著しく向上することを新たに知見した。
(A)Cr、Mo含有鋼材に含まれる炭化物には、一般の炭素鋼で観察されるセメンタイト(M3C)の他にM23C6が観察される。ここで、Mは、Cr、Mo、MnおよびFeからなる。
(D)上記耐摩耗特性向上作用を得るには、熱処理用鋼材について、X線回折試験におけるM23C6の(422)面のピーク強度(IM)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(IM/Iθ)を0.5以上とすればよく、このようにして得られるCr、Mo含有鋼材は、熱処理における炭化物の再固溶が効果的に抑制され、熱処理後において多くの残留炭化物が確保されるため、得られる鋼部品について良好な耐摩耗特性の確保が可能となる。
(1)質量%で、C:0.51%以上0.7%以下、Si:0.19%以上0.5%以下、Mn:0.2%以上1.2%以下、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cr:0.6%以上1.5%以下、Mo:0.05%以上0.5%以下およびsol.Al:0.2%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、X線回折試験におけるM23C6(ここで、Mは、Cr、Mo、MnおよびFeからなる。)の(422)面のピーク強度(IM)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(IM/Iθ)が0.5以上であることを特徴とする熱処理用鋼材。
1.鋼の化学組成
本発明に係る鋼の化学組成について説明する。以下の説明において、鋼の化学組成を示す%は、特に断りがない限り質量%を意味する。
Cは、熱処理後の鋼材の強度を決定する重要な元素である。C含有量が0.4%未満では、熱処理後の鋼材の強度が低く、本発明が対象とする鋼部品に必要とされる高強度が得られない。したがって、C含有量は0.4%以上とする。一方、C含有量が0.7%超では、熱処理後の強度が高くなり過ぎて靱性の劣化が顕著となる。したがって、C含有量は0.7%以下とする。
Siは、一般に不純物として含有される元素であるが、焼入れ性を向上させる作用を有するので、積極的に含有させてもよい。しかしながら、Si含有量が0.5%超では、熱処理前の鋼材の強度上昇にともなう加工性劣化が顕著になる。したがって、Si含有量は0.5%以下とする。
Mnは、焼入れ性を向上させる作用を有する元素であり、熱処理後の鋼材の強度を確保するのに有効な元素である。Mn含有量が0.2%未満では、焼入れ性向上作用を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.2%以上とする。一方、Mn含有量が1.2%超では、熱処理前の鋼材の強度上昇にともなう加工性劣化が顕著になったり、熱処理後の鋼材の強度上昇にともなう靱性劣化が顕著になったりする。このため、Mn含有量は1.2%以下とする。好ましくは0.8%以下である。
Pは、不純物として含有される元素であり、熱処理後の鋼材の靱性を低下させる作用を有する。したがって、P含有量は低いほど好ましい。P含有量が0.05%を超えると熱処理後の鋼材の靭性劣化が顕著となる。したがって、P含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.03%以下であり、さらに好ましくは0.015%以下である。
Sは、不純物として含有される元素であり、熱処理後の鋼材の靱性を低下させる作用を有する。したがって、S含有量は低いほど好ましい。S含有量が0.02%を超えると熱処理後の鋼材の靭性劣化が顕著となる。したがって、S含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。
Crは、Cr、Mo含有鋼材特有の炭化物であるM23C6の安定性を高め、熱処理後における鋼材の耐摩耗特性を向上させる作用を有する重要な元素である。Cr含有量が0.6%未満では上記作用による効果を充分に得られない場合がある。したがって、Cr含有量は0.6%以上とする。一方、Cr含有量が1.5%超では、熱処理前の鋼材の加工性を向上させるために施す球状化焼鈍において炭化物の球状化が阻害されるため、熱処理前の鋼材の加工性を球状化焼鈍によって向上させることが困難になる。したがって、Cr含有量は1.5%以下とする。好ましくは1.2%以下である。
Moは、Cr、Mo含有鋼材特有の炭化物であるM23C6の安定性を高め、熱処理後における鋼材の耐摩耗特性を向上させる作用を有する重要な元素である。さらに、焼戻し脆性を抑制する作用も有するので、熱処理後の鋼材の靭性を向上させるのに有効な元素である。Mo含有量が0.05%未満では、上記作用による効果を充分に得られない場合がある。したがって、Mo含有量は0.05%以上とする。一方、Mo含有量が0.5%超では、上記作用による効果は飽和していたずらにコスト上昇を招く。したがって、Mo含有量は0.5%以下とする。
Alは、溶鋼を脱酸する作用を有する元素であるので、積極的に含有させてもよい。しかしながら、sol.Al含有量が0.2%超では、上記作用による効果は飽和していたずらにコスト上昇を招く。また、AlはA3点を上昇させる作用を有するので、熱処理に要する加熱条件の高温・長時間化を招いて熱処理を困難にする。したがって、sol.Al含有量は0.2%以下とする。好ましくは0.1%以下である。溶鋼の脱酸にはSiを用いることもできるので、sol.Al含有量の下限は特に規定する必要はない。しかし、脱酸能力はSiよりもAlの方が高いので、sol.Al含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
CuおよびNiは、任意元素であり、焼入れ性を向上させる作用を有し、熱処理後の鋼材の強度を確保するのに有効であるので、1種または2種を含有させてもよい。しかしながら、それぞれ1.0%を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和していたずらにコスト上昇を招く。したがって、それぞれの含有量は1.0%以下とする。
Ti、NbおよびVは、任意元素であり、焼入れ性を向上させる作用を有し、さらに炭化物や窒化物を形成して熱処理中のオーステナイト粒成長を抑制して熱処理後の鋼材の靭性を向上させる作用を有するので、1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰な含有は微細な炭化物の析出を促し、熱処理前の鋼材の強度上昇にともなう加工性劣化が顕著になる。したがって、それぞれの元素の含有量は0.10%未満とする。好ましくは、0.05%未満である。
C/(Cr×Mo)(ここで、各元素記号は、各元素の鋼中の含有量(単位:質量%)を示す。)の値を3.0未満とすることにより、熱処理後の鋼材について耐摩耗特性の向上に寄与するM23C6の生成を効果的に促進することができ、Cr、Mo含有鋼材の熱処理中における炭化物の再固溶を効果的に抑制し、残留炭化物を効果的に確保することが容易となる。したがって、C、CrおよびMoは下記式(1)を満足するように含有させることが好ましい。
C/(Cr×Mo)<3.0 (1)
これにより、M23C6の生成を効果的に促進することが可能となり、熱処理後の鋼材の耐摩耗特性を飛躍的に向上させることが容易になる。
本発明では、Cr、Mo含有鋼材特有の炭化物であり、熱処理において再固溶が遅延するM23C6の生成を促進し、熱処理後において多量の残留炭化物を確保することにより、熱処理後の鋼材について高い耐摩耗特性を具備させることを可能にする。
本発明の熱処理用鋼材は、上記化学組成およびX線回折試験におけるM23C6とセメンタイトとのピーク強度比を満足するものであれば、如何なる製造方法によって製造されてもかまわない。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.51%以上0.7%以下、Si:0.19%以上0.5%以下、Mn:0.2%以上1.2%以下、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cr:0.6%以上1.5%以下、Mo:0.05%以上0.5%以下およびsol.Al:0.2%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、X線回折試験におけるM23C6(ここで、MはCr、Mo、MnおよびFeからなる。)の(422)面のピーク強度(IM)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(IM/Iθ)が0.5以上であることを特徴とする熱処理用鋼材。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.0%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱処理用鋼材。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.10%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.10%未満からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理用鋼材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009139359A JP5316242B2 (ja) | 2009-06-10 | 2009-06-10 | 熱処理用鋼材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009139359A JP5316242B2 (ja) | 2009-06-10 | 2009-06-10 | 熱処理用鋼材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010285643A JP2010285643A (ja) | 2010-12-24 |
JP5316242B2 true JP5316242B2 (ja) | 2013-10-16 |
Family
ID=43541566
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009139359A Active JP5316242B2 (ja) | 2009-06-10 | 2009-06-10 | 熱処理用鋼材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5316242B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7123618B2 (ja) | 2018-05-09 | 2022-08-23 | 株式会社Lixil | トイレシステム |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5868099B2 (ja) * | 2011-09-27 | 2016-02-24 | 山陽特殊製鋼株式会社 | 靭性、耐磨耗性に優れる鋼 |
CN103898412B (zh) * | 2014-03-14 | 2016-08-17 | 山西太钢不锈钢股份有限公司 | 一种汽车离合器膜片弹簧用热轧带钢及其制造方法 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH02209452A (ja) * | 1989-02-09 | 1990-08-20 | Nippon Seiko Kk | 転動部品用鋼及びこれを用いた転動部品 |
JPH0853735A (ja) * | 1994-08-11 | 1996-02-27 | Daido Steel Co Ltd | 軸受用鋼 |
JP2000328172A (ja) * | 1999-05-13 | 2000-11-28 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 深絞り面内異方性の小さい高炭素冷延鋼帯とその製造方法 |
-
2009
- 2009-06-10 JP JP2009139359A patent/JP5316242B2/ja active Active
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7123618B2 (ja) | 2018-05-09 | 2022-08-23 | 株式会社Lixil | トイレシステム |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2010285643A (ja) | 2010-12-24 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US9523402B2 (en) | Stainless steel brake disc and method for production thereof | |
JP5423806B2 (ja) | 高靱性耐摩耗鋼およびその製造方法 | |
TWI404808B (zh) | 淬火性優異之硼添加鋼板及製造方法 | |
JP6017341B2 (ja) | 曲げ性に優れた高強度冷延鋼板 | |
JP4808828B2 (ja) | 高周波焼入れ用鋼及び高周波焼入れ鋼部品の製造方法 | |
WO2016148037A1 (ja) | 冷間加工性と浸炭熱処理後の靱性に優れる浸炭用鋼板 | |
JP2005290547A (ja) | 延性および伸びフランジ性に優れた高炭素熱延鋼板およびその製造方法 | |
CN108315637B (zh) | 高碳热轧钢板及其制造方法 | |
TWI557239B (zh) | 高碳熱軋鋼板及其製造方法 | |
JP6244701B2 (ja) | 焼入れ性および加工性に優れる高炭素熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP6065121B2 (ja) | 高炭素熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP5729213B2 (ja) | 熱間プレス部材の製造方法 | |
JP2017179596A (ja) | 高炭素鋼板およびその製造方法 | |
JP3738004B2 (ja) | 冷間加工性と浸炭時の粗大粒防止特性に優れた肌焼用鋼材とその製造方法 | |
JP5521931B2 (ja) | 高周波焼入れ性優れた軟質中炭素鋼板 | |
JP3738003B2 (ja) | 冷間加工性と浸炭時の粗大粒防止特性に優れた肌焼用鋼材およびその製造方法 | |
JP5316242B2 (ja) | 熱処理用鋼材 | |
JP4556770B2 (ja) | 浸炭用鋼およびその製造方法 | |
JP6390685B2 (ja) | 非調質鋼およびその製造方法 | |
JP2009256769A (ja) | 浸炭用鋼材の製造方法 | |
JP7229827B2 (ja) | 高炭素鋼板の製造方法 | |
JP5316058B2 (ja) | 熱処理用鋼材 | |
JP5884781B2 (ja) | 焼入れ性および加工性に優れる高炭素熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP2008202090A (ja) | 制動安定性に優れた高耐熱ブレーキディスクの製造方法 | |
TWI815504B (zh) | 冷軋鋼板、鋼製零件、冷軋鋼板的製造方法以及鋼製零件的製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20120425 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20121011 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20121011 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20130226 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130430 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20130611 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20130624 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 5316242 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |