JP2017129714A - 磁性トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を兼ね備えることが可能な磁性トナーを提供する。【解決手段】磁性トナーは、複数のトナー粒子を含有する。トナー粒子は、結着樹脂と磁性粉と帯電制御剤とを含む。帯電制御剤は、帯電性の官能基を有する樹脂である。結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを含む。磁性粉の含有量は、結着樹脂100質量部に対して40質量部以上である。非結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPaと、結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPcと、帯電制御剤の溶解度パラメータSPqとが、数式(1)、数式(2)及び数式(3)を満たす。SPa−SPq≧+0.50・・・(1)、SPc−SPq≧+0.50・・・(2)0.20≦|SPa−SPc|≦0.70・・・(3)【選択図】なし

Description

本発明は、磁性トナーに関する。
画像形成装置に用いられる磁性トナーは、一定以上の磁性の保持を必要とする傾向にある。現像スリーブの現像領域への磁性トナーの搬送及び現像スリーブ上での磁性トナーによる薄層(トナー薄膜)の形成のためである。磁性の強さは、例えば、磁性トナーに含まれる磁性粉の添加量によって決定される。磁性粉の添加量が多くなると、記録媒体への磁性トナーの定着性が低下する場合がある。また、磁性粉は導電性を有するため、磁性粉の添加量は磁性トナーの帯電量に影響を与え易い。そのため、磁性トナー粒子に対する磁性粉の添加量は、制限される傾向にある。したがって、磁性粉の添加量を一定に保持しつつ、画像の品質を向上させることが望まれる。
例えば、特許文献1には、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とを含む結着樹脂と、離型剤とを少なくとも含有するトナーが記載されている。このトナーでは、結晶性樹脂の融解温度と離型剤の融解温度との差の絶対値が5℃以下である。また、非結晶性樹脂、結晶性樹脂及び離型剤の溶解度パラメータSP値をそれぞれSP(a)、SP(c)及びSP(w)としたとき、SP(a)>SP(c)>SP(w)であり、SP(a)とSP(c)との差が0.75以上1.44以下である。
特開2014−44366号公報
しかし、特許文献1に記載のトナーは、熱的特性(例えば、グロス、溶融ムラのような画像差の低減)を有するものの、トナーの帯電安定性は不十分であった。このため、特許文献1に記載のトナーは、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を兼ね備えることが困難である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を兼ね備えることができる磁性トナーを提供することを目的とする。
本発明の磁性トナーは、複数のトナー粒子を含有する。前記トナー粒子は、結着樹脂と磁性粉と帯電制御剤とを含む。前記帯電制御剤は、帯電性の官能基を有する樹脂である。前記結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを含む。前記磁性粉の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対して40質量部以上である。前記非結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPaと、前記結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPcと、前記帯電制御剤の溶解度パラメータSPqとが、数式(1)、数式(2)及び数式(3)を満たす。
SPa−SPq≧+0.50・・・(1)
SPc−SPq≧+0.50・・・(2)
0.20≦|SPa−SPc|≦0.70・・・(3)
本発明によれば、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を兼ね備えることが可能な磁性トナーを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定しない。
<第一実施形態:磁性トナー>
第一実施形態に係る磁性トナー(以下、単に「トナー」と記載することがある)は、静電潜像現像用トナーである。第一実施形態に係るトナーは、多数のトナー粒子から構成される粉体である。第一実施形態に係るトナーは、例えば、電子写真装置(画像形成装置)で用いることができる。
電子写真装置では、トナーを含む現像剤を用いて静電潜像を現像する。現像工程では、感光体に形成された静電潜像に、帯電したトナーを付着させてトナー像を形成する。そして、続く転写工程では、感光体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナー像を加熱及び加圧して、記録媒体にトナー像を定着させる。
第一実施形態に係るトナーは、次に示す構成(A)を有する。
構成(A):帯電制御剤は、帯電性の官能基を有する樹脂である。非結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPaと、結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPcと、帯電制御剤の溶解度パラメータSPqとが、数式(1)、数式(2)及び数式(3)を満たす。
SPa−SPq≧+0.50・・・(1)
SPc−SPq≧+0.50・・・(2)
0.20≦|SPa−SPc|≦0.70・・・(3)
本発明で規定する「結晶性ポリエステル樹脂」に示すような「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを示す。具体的には、「結晶性」とは、昇温速度10℃/分で測定した際の吸熱ピークの半値幅が15℃以下であることを意味する。一方、吸熱ピークの半値幅が15℃を超えるポリエステル樹脂又は明確な吸熱ピークが認められないポリエステル樹脂は、非結晶性(非晶質)であることを意味する。
本発明で規定する溶解度パラメータδ(以下、SP値と記載することがある)とは、Fedorsの提案したSP値であり、数式(I)で表される。
δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2・・・(I)
数式(I)中、Ecohは、分子構造の凝集エネルギーを表し、Vは分子の体積を表す。
以下、結晶性ポリエステル樹脂を例として挙げ、SP値を調整する因子について説明する。結晶性ポリエステル樹脂のSP値は、結晶性ポリエステル樹脂に置換基を導入することにより調整することができる。より詳細には、結晶性ポリエステル樹脂への置換基の導入は、例えば、置換基の種類又は置換基の導入する数により調整することができる。
一般に、SP値が小さいほど結晶性ポリエステル樹脂の疎水性が強く、SP値が大きいほど結晶性ポリエステル樹脂の親水性が強くなる。結晶性ポリエステル樹脂のSP値を低下させるためには、例えば、疎水性の置換基を導入することで調整できる。疎水性の置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基が挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂のSP値を増加させるためには、例えば、親水性の置換基を導入することで調整できる。親水性の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基又はアミノ基が挙げられる。同様にして、非結晶性ポリエステル樹脂及び帯電制御剤のSP値を制御することができる。
構成(A)は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の並立に有益である。構成(A)を有するトナーでは、SPaとSPcとSPqとが数式(1)、数式(2)及び数式(3)を満たす。このため、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と帯電制御剤とが分散する傾向にある。すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂中で、結晶性ポリエステル樹脂と帯電制御剤とがドメインとして良好に分散し易い。よって、構成(A)を有するトナーは、結晶性ポリエステル樹脂及び磁性粉による電荷の放出性を抑制し、電荷の保持性及び電荷の放出性をバランスよく備えることで、適度に帯電量を保持することができる。したがって、構成(A)を有するトナーは、帯電安定性に優れる。また、構成(A)を有するトナーでは、結晶性ポリエステル樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂中で良好に分散した状態で結着樹脂の溶融開始部となる。よって、構成(A)を有するトナーは、磁性粉による低温定着性の低下を抑制し、耐熱性及び溶融性をバランスよく備える。したがって、構成(A)を有するトナーは、低温定着性及び耐熱保存性に優れる。以上から、構成(A)を有するトナーは、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を並立することができる。
トナーの低温定着性、耐熱保存性又は帯電安定性を更に向上させるためには、トナーは、構成(A)に加えて、次に示す構成(B)、(C)及び(D)を有することが好ましい。
構成(B):高化式フローテスターで測定される溶融粘度10,000Pa・sにおいて、非結晶性ポリエステル樹脂の温度Taと、結晶性ポリエステル樹脂の温度Tcと、帯電制御剤の温度Tqとが、数式(4)及び数式(5)を満たす。
Tc<Tq<Ta・・・(4)
Ta−Tc<+40℃・・・(5)
構成(C):透過型電子顕微鏡によるトナー粒子の断面観察で得られる結晶性ポリエステル樹脂の分散径が0.1μm以下である。
構成(D):透過型電子顕微鏡によるトナー粒子の断面観察で得られる帯電制御剤の分散径が0.1μm以上である。
温度Ta、Tc及びTqは、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製「CFT−500D」)で測定される片対数グラフから読み取ることができる。具体的には、測定試料を高化式フローテスターにセットし、所定の条件で試料を溶融流出させる。これにより、複数の温度における溶融粘度のデータが得られる。得られたデータから横軸を温度とし縦軸を溶融粘度の対数としてプロットし片対数グラフを得る。得られた片対数グラフから一次回帰直線を作成し、一次回帰直線と溶融粘度10,000Pa・sとの交点における温度を得る。なお、温度Ta、Tc及びTqの測定方法は、実施例で詳細に説明する。
構成(B)は、トナーの低温定着性及び帯電安定性の向上に有益である。構成(B)を備えるトナーでは、Ta、Tc及びTqは、数式(4)及び(5)を満たす。Ta及びTcが数式(4)を満たすと、結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂との溶融粘度の差が過剰に大きくならない。また、結晶性ポリエステル樹脂が結着樹脂において分散し易い。Ta、Tc及びTqが数式(5)を満たすと、帯電制御剤が結着樹脂において分散し易い。したがって、構成(B)を有するトナーは、低温定着性及び帯電安定性を向上させ易い。
結晶性ポリテル樹脂の分散径は、トナー粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、日本電子株式会社製「JSM−6700F」)で撮影した画像から測定される。結晶性ポリエステル樹脂の分散径は、画像から測定される最長径の平均値である。結晶性ポリエステル樹脂の分散径の測定方法は、実施例で詳細に説明する。同様にして、帯電制御剤の分散径も測定される。帯電制御剤の分散径は、画像から測定される分散径の平均値である。
構成(C)は、トナーの低温定着性の向上に有益である。構成(C)を有するトナーでは、結晶性ポリエステル樹脂の分散径は、0.10μm以下であり、0.01μm以上0.10μm以下であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の分散径が0.10μm以下であると、結晶性ポリエステル樹脂が結着樹脂中に良好に分散し、低温定着機能を発揮する傾向にある。よって、構成(C)を有するトナーは、低温定着性を向上させ易い。また、結晶性ポリエステル樹脂の分散径が0.01μm以上であると、結晶性ポリエステル樹脂が結着樹脂中でドメインとして存在し易い。
構成(D)は、トナーの帯電安定性の向上に有益である。構成(D)を有するトナーでは、帯電制御剤の分散径は0.10μm以上である。帯電制御剤の分散径が0.10μm以上であると、帯電制御剤が結着樹脂中にドメインとして存在するため、帯電制御機能を発揮する傾向にある。よって、構成(D)を有するトナーは、帯電安定性を向上させ易い。また、帯電制御剤の分散径は、2.00μm以下であることが好ましく、1.00μm以下であることがより好ましい。帯電制御剤の分散径が2.00μm以下であると、磁性トナーが帯電制御剤を保持し易い。その結果、磁性トナーから脱離した帯電制御剤に起因する画像形成装置内の部材への付着を抑制し易い。
磁性粉の含有量はトナー粒子100質量部に対して40質量部以上であり、40質量以上60質量以下であることが好ましい。磁性粉の含有量がトナー粒子100質量部に対して60質量以下であると、形成画像の画像濃度が低下しにくい。
以下、トナー粒子について説明する。更に、トナーの製造方法を説明する。なお、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
<1.トナー粒子>
既に述べたように、トナー粒子は、結着樹脂と磁性粉と帯電制御剤とを含む。トナー粒子は更に内添剤を含んでよい。以下、結着樹脂、磁性粉、帯電制御剤及び内添剤を説明する。
<1−1.結着樹脂>
結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含む。以下、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を説明する。
<1−1−1.結晶性ポリエステル樹脂>
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合又は共縮重合によって得られる。アルコール成分としては2価又は3価以上のアルコールを使用できる。2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジ1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリ1,2−プロパンジオール又はポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレンビスフェノールA又はポリオキシプロピレンビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
これらのアルコール成分の中では、ポリエステル樹脂の結晶化を促進しやすいため、炭素原子数2以上8以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素原子数が2以上8以下であるα,ω−アルカンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオールが更に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、アルコール成分中の炭素原子数2以上10以下の脂肪族ジオールの割合が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。同様に、アルコール成分に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
カルボン酸成分としては2価又は3価以上のカルボン酸を使用できる。2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、アルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸(例えば、n−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸又はイソドデセニルコハク酸)のような2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸又はエンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物又は低級アルキルエステルのようなエステル形成性誘導体に変形して用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数が1以上6以下であるアルキル基を意味する。
これらのカルボン酸成分の中では、ポリエステル樹脂の結晶化を促進しやすいことから、炭素原子数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素原子数が2以上16以下であるα,ω−アルカンジカルボン酸がより好ましい。また、カルボン酸成分には、更に1価のカルボン酸を含んでもよい。1価のカルボン酸としては、例えば、ステアリン酸が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、カルボン酸成分中の炭素原子数2以上16以下の脂肪族ジカルボン酸が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。同様に、カルボン酸成分に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー粒子100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が1質量部以上15質量部以下であると、トナーの低温定着性が向上し、かつトナーが負に帯電しにくくなる。
トナーの低温定着性を向上させ、高温で定着を行う際のオフセットの発生を効果的に抑制するために、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、0.98以上1.05以下であることが好ましい。
<1−1−2.非結晶性ポリエステル樹脂>
非結晶性ポリエステル樹脂を調製する場合、得られるポリエステル樹脂の結晶化を抑制する必要がある。ポリエステル樹脂の結晶化抑制方法は、特に限定されないが、一般的な結晶化抑制方法として、例えば以下の方法(イ)〜(ハ)が挙げられる。
方法(イ):結晶性ポリエステル樹脂の結晶化を促進するアルコール及びカルボン酸を少量だけ使用するか、使用しない方法。
方法(ロ):アルコール及びカルボン酸として、それぞれ2種以上の化合物を使用する方法。
方法(ハ):ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のようなアルコール又は、アルキル置換コハク酸のようなカルボン酸を使用して結晶化を抑制する方法。
これらの結晶化抑制方法の中では、単量体の種類が少なく非結晶性ポリエステル樹脂の調製が容易であることから、方法(ハ)がより好ましい。方法(ハ)では、アルコール(例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物)及びカルボン酸(例えば、アルキル置換コハク酸)の使用量を増やすほど結晶化を抑制しやすい。しかし、これらの単量体の使用量は、得られるポリエステルの結晶性指数と、他の物性とを考慮して、適宜調整されることが好ましい。なお、非結晶性ポリエステル樹脂は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
非結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー粒子100質量部に対して30質量部以上90質量部以下であることが好ましく、35質量部以上85質量部以下であることがより好ましい。
結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂を含んでもよい。このような樹脂としては、例えば、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸系樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、又はビニルアルコール系樹脂が挙げられる。
<1−2.磁性粉>
磁性粉としては、例えば、強磁性金属、複数種の強磁性金属の合金、強磁性金属を主成分とした磁性粉、コバルト若しくはニッケルを酸化鉄にドーピングした磁性粉、強磁性金属元素を含まないが熱処理により強磁性を示すようになる合金又は二酸化クロムが挙げられる。強磁性金属としては、例えば、鉄、コバルト又はニッケルが挙げられる。鉄は、酸化鉄(例えば、マグネタイト又はフェライト)の形態で使用されてもよい。磁性粉は、これらの磁性粉の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。トナー粒子の帯電量を調整し易いことから、磁性粉としては、マグネタイトが好ましい。
磁性粉には、磁性粉の結着樹脂への分散性及び磁性粉の耐久性を向上させるために、表面処理が行われてもよい。磁性粉を表面処理する場合、表面処理剤の例としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、シアネート系樹脂又はウレタン樹脂が挙げられる。表面処理剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<1−3.帯電制御剤>
帯電制御剤は、帯電性の官能基を有する樹脂(例えば、カチオン性共重合体)である。帯電性の官能基としては、例えば、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩又はカルボキシル基を挙げることができる。帯電性の官能基を有する樹脂としては、例えば、樹脂の繰り返し単位中に帯電性の官能基を有する樹脂が挙げられる。このような樹脂としては、例えば、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル酸系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル酸系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル酸系樹脂、カルボキシル基を有するスチレンアクリル酸系樹脂及びカルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの帯電性の官能基を有する樹脂のうち、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂又は4級アンモニウム塩を有するアクリル酸系樹脂が好ましい。これらの樹脂は、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。また、これらの樹脂は、1種単独であっても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
更に、帯電性の官能基を有する樹脂は、他の樹脂と組み合わせてもよい。例えば、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂又は4級アンモニウム塩を有するアクリル酸系樹脂は、スチレン樹脂と溶融混合又は溶解混合して組み合わせてもよい。
以下、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル酸系樹脂又は4級アンモニウム塩を有するアクリル酸系樹脂(以下、カチオン性共重合体(A)と記載することがある)を説明する。カチオン性共重合体(A)は、スチレン単量体(M1)及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル単量体の4級アンモニウム塩(M3)とを共重合して得られる。
スチレン単量体(M1)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン又はp−クロロスチレンが挙げられる。これらのうち、スチレンが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル又は(メタ)アクリル酸ステアリルが挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸ブチル又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル単量体の4級アンモニウム塩(M3)は、充分に正荷電性を付与できることから、一般式(II)で示される化合物が好ましい。
Figure 2017129714
一般式(II)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はアルキレン基を表し、R3、R4及びR5は各々独立してアルキル基を表す。R2の表すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が挙げられる。これらのうち、エチレン基が好ましい。R3、R4及びR5の表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基又はt−ブチル基が挙げられる。これらのうち、メチル基が好ましい。
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル又は(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチルが挙げられる。これらのうち、安価であることから、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが好ましい。
カチオン性共重合体(A)の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルを常法にしたがって、パラトルエンスルホン酸アルキルエステルを用いて第4級化して(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルの4級アンモニウム塩(M3)とする。その後、4級アンモニウム塩(M3)とスチレン単量体(M1)及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)とを混合し、重合開始剤の存在下に共重合させる。
パラトルエンスルホン酸アルキルエステルとしては、例えば、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル又はパラトルエンスルホン酸プロピルが挙げられる。これらのうち、容易に4級化できることから、パラトルエンスルホン酸メチルが好ましい。パラトルエンスルホン酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルとを反応させる場合は、パラトルエンスルホン酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルの単位1モル当り、0.8モル以上1.5モル以下であることが好ましく、1.0モル以上1.2モル以下であることがより好ましい。
共重合の方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合又は乳化重合が挙げられる。これらのうち、溶融重合が好ましい。溶融重合が好ましい理由は、例えば、得られる共重合体の質量平均分子量の制御が比較的容易であり、反応操作が容易であるからである。溶液重合で使用する溶剤としては、例えば、ケトン系溶剤(より具体的には、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン等)、アルコール系溶剤(より具体的には、ノルマルブタノール又はイソブタノール等)、エステル系溶剤(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸イソブチル等)又は芳香族炭化水素溶剤(より具体的には、トルエン又はキシレン等)が挙げられる。これらのうち、共重合体の溶解性の点から、ケトン系溶剤又はアルコール系溶剤が好ましい。
重合開始剤としては、例えば、過酸化物系開始剤(より具体的には、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジベンゾイルパーオキサイド等)又はアゾ系開始剤(より具体的には、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等)が使用される。重合開始剤は、単量体の合計質量100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
カチオン性共重合体(A)においては、スチレン単量体(M1)単位と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルの4級アンモニウム塩(M3)単位の合計質量を100質量部とした場合、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルの4級アンモニウム塩(M3)単位の含有量が0.5質量部以上35質量部以下であることが好ましく、1質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルの4級アンモニウム塩(M3)単位の含有量が0.5質量部以上であれば、トナーの帯電性を充分に確保でき、35質量部以下であれば、結着樹脂に対する相溶性が向上し、トナーの耐湿性も向上する。
カチオン性共重合体(A)は、質量平均分子量が1,500以上100,000以下であることが好ましく、3,000以上50,000以下であることがより好ましい。カチオン性共重合体(A)の質量平均分子量がこのような範囲であると、高湿度環境下であっても帯電性が低下しにくく、定着時に定着ロールの表面にトナーが付着し残留するといったオフセットが発生しにくい。また、トナーとした際における結着樹脂との相溶性、分散性が良好であるとともに、トナーをキャリアとともに使用した場合でも、トナー粒子がつぶれるようなスペント化が進行しにくい。
スチレン樹脂(B)は、スチレン単量体の単独重合体である。スチレン単量体としては、カチオン性共重合体(A)を形成するスチレン単量体(M1)と同様のものが使用される。スチレン樹脂(B)の質量平均分子量は1,000〜10,000であることが好ましく、2,000以上8,000以下であることがより好ましい。スチレン樹脂(B)の質量平均分子量が1,000以上であれば、容易にスチレン樹脂(B)を製造でき、10,000以下であれば、トナーのコールドオフセットが起こりにくい。
カチオン性共重合体(A)とスチレン樹脂(B)とを溶融混合する方法(以下、この方法のことを溶融混合法と記載することがある)としては、カチオン性共重合体(A)とスチレン樹脂(B)とを熱混練する方法などが挙げられる。熱混練機としては、例えば、プラストミル、加熱ロール、ニーダー又はエクストルーダーが挙げられる。溶融混合の際の加熱温度は、90℃以上170℃以下であることが好ましい。加熱温度が90℃以上であれば、カチオン性共重合体(A)とスチレン樹脂(B)とを充分に溶融混合させ易い。加熱温度が170℃以下であれば、カチオン性共重合体(A)又はスチレン樹脂(B)が劣化しにくい。
カチオン性共重合体(A)とスチレン樹脂(B)とを溶解混合する方法(以下、この方法のことを溶解混合法と記載することがある)は、より具体的には、カチオン性共重合体(A)とスチレン樹脂(B)とを溶媒に溶解させた後に溶媒を除去する方法である。このような溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ノルマルブタノール、イソブタノール、酢酸エチル、酢酸イソブチル、トルエン又はキシレンが挙げられる。溶解時には、溶解を促進するために、80℃以上140℃以下に加熱することが好ましい。溶媒除去時には、除去を促進するために、減圧することが好ましい。
カチオン性共重合体(A)は、カチオン性共重合体(A)とスチレン樹脂(B)との合計質量100質量部に対して、スチレン樹脂(B)の含有量が10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、20質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。スチレン樹脂(B)が10質量%以上であると、長時間経過後の帯電性の低下を防止し易く、90質量%以下であると、充分な帯電性を確保し易い。
帯電制御剤には、必要に応じて、公知の4級アンモニウム塩や、ニグロシン系化合物などが含まれていてもよい。
帯電制御剤の体積固有抵抗は4×1010Ω・cm以上40×1010Ω・cm以下であることが好ましい。帯電制御剤の体積固有抵抗が4×1010Ω・cm以上であれば、充分な帯電性を発揮し易く、40×1010Ω・cm以下であれば、帯電性が過剰になりにくい。体積固有抵抗は、以下の方法で測定された値である。帯電制御剤の粉体を、直径20mm、厚さ3mmの円筒状のペレットに加圧成型する。次いで、このペレットを測定試料として、コンダクタンスG(1/Ω)を測定周波数1kHzで測定する。このコンダクタンスGから数式(III)を用いて、体積固有抵抗ρ(Ω・cm)を求める。
ρ=(1/G)×(S/L)・・・(III)
数式(III)中、Sはペレットの断面積(cm2)を表し、Lはペレットの長さ(cm)を表す。
正帯電性の帯電制御剤の使用量は、トナー全量を100質量部とする場合に、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。
<1−4.内添剤>
トナーの内添剤としては、例えば、離型剤が挙げられる。以下、離型剤について説明する。トナーは離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えばトナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としては、例えば、ワックスが好ましい。ワックスとしては、例えば、エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス又はモンタンワックスが挙げられる。エステルワックスとしては、例えば、合成エステルワックス又は天然エステルワックス(より具体的には、カルナウバワックス又はライスワックス等)が挙げられる。これらの離型剤は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの離型剤のうち、エステルワックスがより好ましく、合成エステルワックスが更に好ましい。
合成エステルワックスを製造する方法は、化学合成法であれば特に限定されない。例えば、合成エステルワックスは、酸触媒の存在下でのアルコールとカルボン酸との反応や、カルボン酸ハライドとアルコールとの反応のような公知の方法を用いて合成することができる。なお、合成エステルワックスの原料は、例えば、天然油脂から製造される長鎖脂肪酸のように天然物に由来するものでもよい。また、合成エステルワックスとしては、合成品として市販されているものを用いてもよい。
トナーの低温定着性を向上し、かつ高温オフセットの発生を抑制するために、離型剤の融点は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。離型剤の融点は、前述した結晶性ポリエステル樹脂の融点と同様にして、測定することができる。
<2.トナーの製造方法>
次に、トナーの製造方法を説明する。トナーの製造方法は、特に限定されないが、本実施形態に係るトナーの好適な製造方法について説明する。トナーの製造法は、例えば、準備工程と、トナー粒子作製工程とを含む。
<2−1.準備工程>
既に上述したように、準備工程は、例えば、結着樹脂を準備する。結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を調製し、準備する。
結晶性ポリエステル樹脂の調製の具体例を以下に記載する。アルコール及びカルボン酸を所定の割合で混合し、単量体の混合物を得る。次いで、単量体の混合物を攪拌しながら、窒素雰囲気下で190℃以上250℃以下まで昇温する。昇温した温度を維持し、単量体を重合反応させることで、結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
非結晶性ポリエステル樹脂の調製の具体例を以下に記載する。アルコール及びカルボン酸を所定の割合で混合し、単量体の混合物を得る。次いで、単量体の混合物を攪拌しながら、窒素雰囲気下で180℃以上220℃以下まで昇温する。昇温した温度で維持し単量体を重合反応させることで、非結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
<2−2.トナー粒子作製工程>
トナー粒子作製工程は、結着樹脂と磁性粉と帯電制御剤とを含むトナー粒子を作製する工程である。トナー粒子作製工程は、非結晶性ポリエステル樹脂中に、結晶性ポリエステル樹脂、磁性粉及び帯電制御剤を良好に分散できれば特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。公知の方法としては、例えば、溶融混練法又は凝集法が挙げられる。トナー粒子作製工程では、任意の成分(例えば、離型剤)をトナー粒子中に分散させてもよい。
溶融混練法によるトナー粒子作製工程は、例えば、混合工程と混練工程とを含む。混合工程は、結着樹脂、磁性粉、帯電制御剤及び任意成分(例えば、離型剤)を混合して混合物を得る工程である。混練工程は、得られた混合物を溶融混練し、混練物を得る工程である。溶融混練法によるトナー粒子作製工程は、更に、粉砕工程と分級工程とを含んでもよい。粉砕工程は、得られた混練物を粉砕する工程である。分級工程は、粉砕した混練物を分級して、所望の粒子径のトナー粒子を得る工程である。トナー粒子の生産性又は着色剤の分散性の観点から、溶融混練法が好ましい。
凝集法によるトナー粒子作製工程は、例えば、凝集工程と合一化工程とを含む。凝集工程は、トナー粒子を構成する成分を含む微粒子を、水性媒体中で凝集させて凝集粒子を形成させる工程である。合一化工程は、凝集粒子に含まれる成分を、水性媒体中で合一化させてトナー粒子を形成させる工程である。トナー粒子の調製方法として凝集法を用いる場合、形状が均一であり、粒子径の揃ったトナー粒子を得やすい。
トナー粒子作製工程は、更に、洗浄工程と乾燥工程とを含んでもよい。洗浄工程は、水性媒体を用いてトナー粒子を洗浄する工程である。好適な洗浄方法としては、トナー粒子を水性媒体に分散させ、トナー粒子を含む水性分散液を調製する。調製された水性分散液から、固液分離によりトナー粒子をウェットケーキとして回収し、得られるウェットケーキを、水性媒体を用いて洗浄する方法又はトナー粒子を含む水性分散液中のトナー粒子を沈降させ、上澄み液を水性媒体と置換し、置換後にトナー粒子を水性媒体に再分散させる方法が挙げられる。
乾燥工程は、トナー粒子を乾燥する工程である。トナー粒子を乾燥させる好適な方法としては、乾燥機(例えば、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥機又は減圧乾燥機)を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子の凝集を抑制するため、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
以上、本実施形態に係るトナーを説明した。本実施形態に係るトナーは、低温定着性及び帯電安定性に優れる。このため、本実施形態に係るトナーは、種々の画像形成装置で好適に使用することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
[1.結晶性ポリエステル樹脂の調製]
[1−1.結晶性ポリエステル樹脂C1]
4つ口フラスコを反応容器として用いた。この4つ口フラスコは、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を備える容量2Lの反応容器である。表1に示す量(モル比)の、アルコールモノマーとして1,10−デカンジオール及び酸モノマーとしてセバシン酸を反応容器に仕込んだ。更に触媒としてジオクチル酸錫を、モノマー総量100質量部に対して1質量部反応容器に投入した。反応容器をマントルヒーター上に置き、窒素導入管より窒素ガスを反応容器内に導入して、反応容器内を窒素雰囲気とした。次いで、常圧下で、単量体の混合物を攪拌しながら反応容器の内温を140℃に昇温し、同温度で攪拌を継続して水を留去しながら6時間重合反応を行った。次いで、反応容器内の内温を200℃まで昇温速度10℃/時間で昇温しつつ反応させた。次いで、反応容器内の内温が200℃に到達してから2時間反応させた。その後、反応容器内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させた。反応容器内の内容物をバットに取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリエステル樹脂C1を得た。なお、表1に結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いた原料とその配合組成比をまとめた。表2に結晶性ポリエステル樹脂の諸物性をまとめた。
Figure 2017129714
Figure 2017129714
[1−2.結晶性ポリエステル樹脂C2〜C9]
結晶性ポリエステル樹脂C2〜C9は、表1に記載のアルコールモノマー及び酸モノマーの種類、並び配合組成を変更した以外は、結晶性ポリエステル樹脂C1の調製方法と同様にして調製した。
[2.非結晶性ポリエステル樹脂の調製]
[2−1.非結晶性ポリエステル樹脂A1]
4つ口フラスコを反応容器として用いた。この4つ口フラスコは、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を備える容量2Lの反応容器であ表3に示す量(モル比)の、ビスフェノールA−エチレンオキサイド2モル付加物(以下、BPA−EOと記載することがある)及びビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物(以下、BPA−POと記載することがある)、並びに酸モノマーとしてテレフタル酸、アルケニルコハク酸及びトリメリット酸を反応容器に仕込んだ。更に触媒としてジブチル錫を、モノマー総量100質量部に対して1.5質量部反応容器に投入した。反応容器をマントルヒーター上に置き、窒素導入管より窒素ガスを反応容器内に導入して、反応容器内を窒素雰囲気とした。次いで、常圧下で、単量体の混合物を攪拌しながら反応容器の内温を180℃に素早く昇温した。次いで、反応容器の内温を、180℃から210℃まで10℃/時間の速度で昇温し、水を留去しながら重合反応を行った。次いで、反応容器内の内温が210℃に到達してから反応容器内の圧力を5kPaまで減圧した。反応容器内の温度210℃及び圧力5kPaで、重縮合反応を行った。その結果、非結晶性ポリエステル樹脂A1を得た。なお、表3は、非結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いた原料とその配合組成比を示す。表4は、非結晶性ポリエステル樹脂の諸物性を示す。
Figure 2017129714
Figure 2017129714
[2−2.非結晶性ポリエステル樹脂A2〜A5]
非結晶性ポリエステル樹脂A2〜A5は、表3に記載のアルコールモノマー及び酸モノマーの種類、並びに配合組成を変更した以外は、非結晶性ポリエステル樹脂A1の調製方法と同様にして調製した。
[3.帯電制御剤の調製]
[3−1.帯電制御剤Q1]
[3−1−1.カチオン性共重合体(A−1)の調製]
4つ口フラスコを反応容器として用いた。この4つ口フラスコは、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を備える容量2Lの反応容器である。溶媒としてイソブタノール180gを反応容器内に仕込んだ。更に、メタクリル酸ジエチルアミノエチル18gとパラトルエンスルホン酸メチル18gとを反応容器内に投入した。反応容器をマントルヒーター上に置き、窒素導入管より窒素ガスを反応容器内に導入して、反応容器内を窒素雰囲気とし、反応容器内の温度を80℃に昇温した。反応容器内の温度を80℃に維持して、反応容器内の混合物を攪拌しながら、1時間4級化反応を行った。次いで、反応容器内に窒素を導入しながら、スチレン210g、アクリル酸ブチル72g及び過酸化物系開始剤としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富株式会社製)12gを反応容器内に加えた。反応容器内の温度を95℃まで昇温し、95℃(重合温度)を維持しながら反応容器内の内容物を3時間攪拌した。その結果、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液を、反応容器内の温度140℃及び減圧(10kPa以下)の条件で、加熱及び乾燥させた。その結果、溶剤分を除去した樹脂を得た。樹脂を解砕してカチオン性共重合体(A−1)を得た。得られたカチオン性共重合体におけるスチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(M2)と、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル単量体の4級アンモニウム塩(M3)との共重合比(モル%)は、(M1+M2):M3=88.7:11.3であった。
[3−1−2.スチレン樹脂(B−1)の調製]
オートクレーブを反応容器として用いた。この反応容器は、窒素導入管、攪拌器及び温度計を備える容量1Lの反応容器である。反応容器内に、部分鹸化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製「ゴーセノール(登録商標)GH−20」)0.2gを仕込んだ。更に、反応容器内にスチレンモノマー100gと、環酸化物系ベンゾイルパーオキサイド(日油株式会社製「ナイパーBW」)15gとを含む混合物を投入した。反応容器内の内容物を攪拌しながら、反応容器内の温度を130℃に昇温して、懸濁重合を1時間行った。懸濁重合の後、反応容器内の内容物を濾過、洗浄、脱水及び乾燥した。その結果、スチレン樹脂(B−1)を得た。得られたスチレン樹脂(B−1)の質量平均分子量は、8,000であった。
[3−1−3.帯電制御剤Q1の調製]
フラスコを反応容器として用いた。このフラスコは、攪拌器、温度計を備える容量5Lの反応容器である。カチオン性共重合体(A−1)300gと、スチレン樹脂(B−1)(ヤスハラケミカル社製「SX−100」、質量平均分子量2,500)700gと、溶媒としてメチルエチルケトン1000gとを反応容器内に仕込んだ。反応容器をマントルヒーター上に置き、反応容器の内容物を攪拌しながら昇温した。反応容器内の溶媒が還流し始めたら、その溶媒を反応容器から排出させながら、反応容器内の温度を更に昇温した。反応容器内の温度が140℃になったところで、反応容器内の圧力が10KPa以下になるまで減圧し、溶媒を除去して、溶融した樹脂成分を得た。得られた樹脂成分を取出し、樹脂成分を冷却し、更に粉砕した。その結果、帯電制御剤Q1を得た。なお、表5は、帯電制御剤の調製に用いた原料とその配合組成比とを示す。表6は、帯電制御剤の諸物性を示す。
Figure 2017129714
Figure 2017129714
[3−2.帯電制御剤Q2〜4]
帯電制御剤Q2〜Q4は、スチレンモノマーの添加量100g、カチオン性共重合体の添加量300g及びスチレン樹脂の添加量700gを、それぞれ表5に記載のスチレンモノマーの添加量、カチオン性共重合体の添加量及びスチレン樹脂の添加量に変更した以外は、帯電制御剤Q1の調製と同様にして、帯電制御剤Q2〜Q4を調整した。
[4.トナーの調製]
[4−1.トナー1]
結晶性ポリエステル樹脂C1を5質量%、非結晶性ポリエステル樹脂A1を42質量%、帯電制御剤Q1を5質量%、磁性粉(戸田工業株式会社製「マグネタイト」)を45質量%及びワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)を3質量%の配合比率で、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20型」)を用いて混合した。次いで、2軸混練機(池貝鉄工株式会社製「PCM−30」)を用いて、温度100℃で混合物を混練した。粗粉砕機(ホソカワケミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、得られた混練物を一次粉砕した。次いで、得られた一次粉砕物を微粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「T−250」)を用いて、回転速度9,500rpmで得られた一次粉砕物を二次粉砕した。コアンダー効果を利用したエルボージェット分級機を用いて、得られた二次粉砕物を分級し、トナー母粒子を得た。FMミキサー(日本コークス株式会社製「FM−20型」)を用いて、得られたトナー母粒子に正帯電の疎水性シリカ(一次粒子径20nm)及び疎水性酸化チタン(一次粒子径300nm)を添加し、表面処理されたトナー1を得た。なお、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンは、トナー1に対する含有量がそれぞれ1質量%となるように、トナー母粒子に添加された。また、トナーの調製に用いたマグネタイトの個数平均粒径は0.25μmであった。トナーの調製に用いたマグネタイトの磁性特性は、796kA/m印加時の保持力が4.5kA/mであり、飽和磁化が82Am2/kgであり、残留磁化が4.5Am2/kgであった。マグネタイトの磁気特性は、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製「VSM−P7−15」)を用いて測定した。
[4−2.トナー2〜9及びトナーB1〜B6]
トナー2〜9及びトナーB1〜B6は、非結晶性ポリエステル樹脂A1、結晶性ポリエステル樹脂C1及び帯電制御剤Q1を、それぞれ表7に記載の非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び帯電制御剤に変更した以外は、トナー1の調製方法と同様にして、トナー2〜9及びトナーB1〜B6を調製した。
Figure 2017129714
[5.測定方法]
[5−1.結晶性ポリエステル樹脂及び帯電制御剤の分散径]
まず、評価用試料を調製した。試料(トナー)と樹脂(常温硬化性のエポキシ樹脂)とを混合して、トナーが十分分散した混合物を調製した。得られた混合物をトナーが十分分散した状態及び温度40℃で2日間放置し、硬化させた。これにより試料が樹脂に包埋した硬化物を得た。硬化物を四酸化オスミウムにて染色した。ミクロノーム(ライカ株式会社製「EMUC6」)を用いて、染色した硬化物から薄片状試料を調製した。得られた薄片状試料を評価用試料とした。透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて、倍率10,000倍で、評価用試料を撮影し、トナー粒子の断面の画像を得た。得られた画像における結晶性ポリエステル樹脂の最長径を測定した。得られた複数の最長径(測定数n=100)から平均値を得た。得られた平均値を結晶性ポリエステル樹脂の分散径とした。同様にして、帯電制御剤の分散径を得た。
[5−2.結晶性ポリエステル樹脂の温度Tc、非結晶性ポリエステル樹脂の温度Ta及び帯電制御剤の温度Tqの測定]
結晶性ポリエステル樹脂1.8gを10MPaの圧力で加圧成型し、直径1cmの円柱型の成型サンプル(体積1cm3)を作製した。作製した成型サンプルを測定用試料とした。高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に成型サンプルをセットした。以下の条件で測定用試料を溶融させて流出させた。このようにして複数の温度における溶融粘度を測定した。測定した溶融粘度から片対数プロット(横軸:温度、縦軸:溶融粘度の対数)を作成した。なお、測定は、温度23℃、湿度50%RHで行われた。
プランジャー荷重:20kg/cm2
ダイス細孔径:1mm
ダイスの長さ:1mm
昇温速度4.0℃/分
予熱温度:40℃
予熱時間:300秒(5分)
得られた片対数プロットから前述の読み取り方法に基づいて、結晶性ポリエステル樹脂の温度Tcを決定した。同様にして、非結晶性ポリエステル樹脂の温度Ta及び帯電制御剤の温度Tqを決定した。
[5−3.結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂の質量平均分子量の測定]
質量平均分子量(Mw)は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)を用いて測定した。試料(結晶性ポリエステル樹脂)をテトラヒドロフラン(THF)中に入れ、約1時間静置し、溶解させた。その後、サンプル前処理用フィルター(クラボウ社製クロマトディスク 25N 非水系 ポアサイズ0.45μm)を通過させた。得られたTHF可溶成分を、GPC測定用試料とした。樹脂成分が3mg/mLとなるように試料濃度を調整した。カラムをヒートチャンバー内で安定化させて、展開溶媒としてTHFを流速1mL/分で流した。このようなカラムに、得られた測定用試料を約50〜200μL注入して、測定した。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散スチレン樹脂標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出した。検量線作成用の標準スチレン樹脂試料としては、例えば、東ソー社製の分子量が3.84×106、1.09×106、3.55×105、1.02×105、4.39×104、9.10×103、2.98×103の標準スチレン樹脂試料を用いた。カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のスチレン樹脂ジェルカラムを複数本組み合わせて用いた。
[6.評価方法]
[6−1.トナーの低温定着温度の測定(低温定着性の評価)]
評価機としてプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−1370DN」)の改造機を用いた。この評価機は、定着装置をRoller−Roller方式の加熱加圧型に改造したプリンターである。評価機を用いて、線速200mm/秒、ニップ通過時間40ミリ秒、ニップ幅8mm、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、90g/m2の紙(A4サイズの評価用紙)に、大きさ25mm×25mm、印字率100%のソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を定着装置に通し、画像を形成した。得られた定着後の画像を折り曲げ、1kgの分銅にて5往復し、折り目の剥がれた幅が1mm未満となるか確認した。折り目の剥がれた幅が1mm未満となる画像をコールドオフセットが発生しない画像であると評価した。定着温度の設定範囲は100℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着装置の定着温度を100℃から徐々に上昇させて、コールドオフセットが発生せずにトナー(ソリッド画像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を決定した。得られた最低定着温度から、下記の基準に基づいてトナーの低温定着性を評価した。
○(良い):最低定着温度が145℃以下であった。
×(悪い):最低定着温度が145℃超であった。
[6−2.トナーの凝集度の測定(耐熱保存性の評価)]
試料(トナー)3gを容量20mLのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置することで、耐熱保存性評価用の試料を得た。その後、耐熱保存性評価用の試料を、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り2、時間30秒の条件で、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。篩別後に、篩上に残留した試料の質量を測定した。篩別前の試料の質量と、篩別後に篩上に残留した試料の質量とから、下記の数式(IV)にしたがってトナーの凝集度(質量%)を算出した。
凝集度(質量%)=(篩上に残留した試料の質量/篩別前の試料の質量)×100・・・(IV)
算出された凝集度から、下記基準にしたがってトナーの耐熱保存性を評価した。
○(良い):凝集度が10質量%以下であった。
×(悪い):凝集度が10質量%超であった。
[6−3.トナーの電荷減衰定数の変化率の測定(帯電安定性の評価)]
帯電減衰は、日本工業規格JIS61340−2−1で規定されている静電気電荷拡散法を用いて測定した。静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100型」)を用いて帯電減衰を測定した。上記測定装置及び試料(トナー)を常温常湿(NN、温度23℃、湿度50%RH)に12時間放置した。得られた試料を評価用試料とした。次いで、評価用試料を測定装置にセットした。評価用試料に7KVの帯電を与え、2秒後の電荷の保持状態を計測した。計測は、常温常湿環境下で実施された。トナー表面での電荷の保持状態の計測から、以下の数式(V)を用いて、電荷減衰定数αを求めた。
V=V0exp(−α√t)・・・(V)
数式(V)中、V0はトナーの初期表面電位(V)を表し、Vはトナーの表面電位(V)を表し、αは電荷減衰定数を表し、tは時間(秒)を表す。得られた電荷減衰定数をα(NN)とした。試料調製環境及び測定環境を、常温常湿(NN)環境から高温高湿(HH、温度32.5℃、湿度80%RH)環境に変更させた以外は、α(NN)の測定方法及び算出方法と同様にして、高温高湿環境での電荷減衰定数αを求めた。得られた電荷減衰定数をα(HH)とした。得られたα(NN)及びα(HH)から、以下の数式(VI)を用いて、電荷減衰定数の変化率を求めた。
変化率(%)=(α(HH)/α(NN))×100・・・(VI)
得られた変化率から、下記基準にしたがってトナーの帯電安定性を評価した。
○(良い):変化率が20%以下であった。
×(悪い):変化率が20%超であった。
各試料(実施例1〜9のトナー1〜9及び比較例1〜6のトナーB1〜B6)の低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性の評価結果を表10に示す。なお、表9中、「確認できなかった」とは、ドメインとして観察されなかったことを示す。
Figure 2017129714
Figure 2017129714
Figure 2017129714
表8に示すように、トナー1〜9では、SPa−SPqは+0.54以上であり、SPc−SPqは+0.57以上であり、|SPc−SPa|は0.20以上0.70以下であった。表10に示すように、トナー1〜9では、低温定着性、耐熱保存性、及び帯電安定性の評価結果がすべて○(良い)であった。
表8及び表10に示すように、トナーB1及びB5では、|SPc−SPa|は0.20未満であり、耐熱保存性の評価結果が×(悪い)であった。トナーB2、B3及びB6では、|SPc−SPa|は0.70より大きく、低温定着性の評価結果は×(悪い)であった。トナーB4及びB5では、SPc−SPq及びSPc−SPqは何れも+0.50未満であり、帯電安定性の評価結果は×(悪い)であった。
トナー1〜9は、トナーB1〜B6に比べ、低温定着性、耐熱保存性及び帯電安定性を兼ね備えることが示された。
本発明に係る磁性トナーは、画像形成装置(例えば、複写機又はプリンター)において画像を形成するために用いることができる。

Claims (5)

  1. 複数のトナー粒子を含有する磁性トナーであって、
    前記トナー粒子は、結着樹脂と磁性粉と帯電制御剤とを含み、
    前記帯電制御剤は、帯電性の官能基を有する樹脂であり、
    前記結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを含み、
    前記磁性粉の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対して40質量部以上であり、
    前記非結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPaと、前記結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータSPcと、前記帯電制御剤の溶解度パラメータSPqとが、数式(1)、数式(2)及び数式(3)を満たす、磁性トナー。
    SPa−SPq≧+0.50・・・(1)
    SPc−SPq≧+0.50・・・(2)
    0.20≦|SPa−SPc|≦0.70・・・(3)
  2. 高化式フローテスターで測定される溶融粘度10,000Pa・sにおいて、前記非結晶性ポリエステル樹脂の温度Taと、前記結晶性ポリエステル樹脂の温度Tcと、前記帯電制御剤の温度Tqとが、数式(4)及び数式(5)を満たす、請求項1に記載の磁性トナー。
    Tc<Tq<Ta・・・(4)
    Ta−Tc<+40℃・・・(5)
  3. 透過型電子顕微鏡による前記トナー粒子の断面観察で得られる前記結晶性ポリエステル樹脂の分散径が0.10μm以下である、請求項1又は2に記載の磁性トナー。
  4. 透過型電子顕微鏡による前記トナー粒子の断面観察で得られる前記帯電制御剤の分散径が0.10μm以上である、請求項1〜3の何れか一項に記載の磁性トナー。
  5. 前記結着樹脂は、4級アンモニウム基を有さず、
    前記帯電制御剤は、前記帯電性の前記官能基として4級アンモニウム基を有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の磁性トナー。
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