JP2009058844A - トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル樹脂を含有するバインダー樹脂と、ワックスと、荷電制御剤と、着色剤と、を含有する原料を用い正帯電性静電荷像現像用トナーを製造する製造方法であって、バインダー樹脂とワックスと荷電制御剤と着色剤とを加熱及び混練し混練物とする加熱混合ステップと、混練物を粉砕して粉砕物とする粉砕ステップと、粉砕物を気流中で流動状態にて加熱処理し球形化する球形化処理ステップと、を含み、荷電制御剤が、所定の含む第4級アンモニウム塩基含有共重合体を含み、該ポリエステル樹脂のフローテスター4mm降下温度(℃)と荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(℃)とが、T4c<T4r+10℃を満たす製造方法である。
【選択図】図2
Description
かかるトナーは、電子写真方式を利用した複写機(コピー装置)やプリンター等において既に多くのものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1においては、「電子写真は、光学像を静電荷電のような電子性の潜像に変換したのち、この静電潜像上に着色した帯電性トナー粒子を現像させて可視画像とし、さらにトナーを紙上に転写させたのち、加熱、圧力などにより定着させて複写物を得る記録技術であって、操作性、迅速性、最終画像の安定性に優れるために、複写機のほか、レーザープリンター、ファクシミリなどに広く応用されている。トナー粒子としては、熱可塑性樹脂に磁性粉を分散した磁性トナーが広く用いられている。磁性トナーは、熱可塑性樹脂に、磁性粉、ワックス、帯電制御剤などを配合し、加熱混合機を用いて溶融混練し、磁性粉を分散させたのち、室温まで冷却した材料を粉砕機で粉砕し、さらに分級することによりサイズを揃えて使用される。さらに、トナーの流動性、耐久性を高める目的で、シリカなどの無機微粉末を添加されることが多い。磁性トナーは、含有される磁性粉の粒径、樹脂との混合割合、分散状態により帯電特性、磁化特性が大きく変化する。加熱混合機として押出機を用いると、粒径が細かく、凝集力の強い磁性粉を使用したとき、磁性粉の分散が不良となりやすく、トナー粒子の帯電量分布がブロードになり、ブローオフ帯電量値が低くなる。画像性においても、印刷枚数の増加に伴って画像濃度が低下するという問題が生じていた。また、ワックスは、トナーの紙上への定着過程において、定着機に備えられた熱ローラーからの離型剤としてトナー中に添加され、ワックス含有量を多くするほど耐オフセット性が向上する。加熱混合機としてバッチ式密閉混練機を用いると、ワックスの含有量を増やしたとき、ワックスの分散が不良となりやすく、磁性トナーの流動性、耐ブロッキング性、耐環境安定性が低下したり、トナー製造装置内及び電子写真プロセス内のトナー付着など数々の問題が生じていた」(特許文献1中の段落番号0002)ものが開示されている。また、本出願人もこれまでトナーに関し特許出願を行っている(特許文献2〜5)。
即ち、かかるトナーは、良好な画像を得るためには静電気力によって静電潜像上にトナー粒子がうまく現像される必要があり、これを実現するにはトナーが十分な荷電量を有すると共にその荷電を所定の時間内保持することが必要とされる。このような高荷電量かつ高荷電保持性といった高い帯電性能をトナーに付与するには、トナーを構成する構成成分たるバインダー樹脂、着色剤、外添剤等の材料固有の摩擦荷電性を利用することも考えられるが、一般的には、かかる材料固有の摩擦荷電性により得られる帯電性能(荷電量及び荷電持続性)のみでは良好な画像形成が達成できないこともある(具体的には、このような材料固有の摩擦荷電性により得られる帯電性能のみでは、画像に白地カブリが生じたり、画像が不鮮明になる傾向がある。)。
従来から用いられてきた正荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、各種のアジン化合物、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系顔料などの色素や、第4級アンモニウム塩化合物などが挙げられる。一方、従来からトナーに用いられてきたバインダー樹脂の多くは、その材料固有の摩擦荷電性が負極性であるものが多いため、正帯電性トナーとするためには荷電制御剤を多量に配合する必要があり、原料が高価になり、また充分に分散させることが難しく、さらにこれら低分子の荷電制御剤は加熱により昇華したり分解・劣化することがあるため、トナー粒子の帯電性が充分かつ安定とはいえず、印字中に白地カブリや転写メモリなどの問題が発生する場合もあった。
また、特許文献7に開示されている懸濁重合法における荷電制御剤(帯電制御剤)の親水性調整によって、高帯電の正帯電性トナーが得られる。しかしながら、この方法は水中で造粒を行う懸濁重合法に特有の方法であり粉砕法に応用できない。
該ポリエステル樹脂のフローテスター4mm降下温度(T4r:単位℃)と、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)と、が、次の(式1)を満たすものである、正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(式1)T4c<T4r+10℃
(1)バインダー樹脂中の前記ポリエステル樹脂の含有率が、80重量%以上である、上記製造方法。
(2)ワックスのフローテスター4mm降下温度(T4w:単位℃)が、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)よりも高いものである、上記製造方法。
(3)ワックスの融点(Tmw:単位℃)が、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)と次の(式2)又は(式3)を満たすものである、上記製造方法。
(式2)Tmw>T4cー10℃
(式3)Tmw=T4cー10℃
(4)前記混練物中の荷電制御剤の含有量が1〜15重量%であり、かつ前記混練物中のワックスの含有量が1〜10重量%である、上記製造方法。
該ポリエステル樹脂のフローテスター4mm降下温度(T4r:単位℃)と、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)と、が、次の(式1)を満たすものである、正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法である。
(式1)T4c<T4r+10℃
該多価カルボン酸類としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族カルボン酸類、マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類などのそれぞれのカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸の低級アルキルエステルなどの化合物が挙げられる。これらの多価カルボン酸類は、単独で用いることもでき、2種類以上を併用して用いることもできる。これらの多価カルボン酸類の中でも芳香族カルボン酸ないしその無水物、低級アルキルエステルを使用することが好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのごとき脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAのごとき脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のごとき芳香族ジオール類などが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いることもでき、2種類以上を併用して用いることもできる。なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、その無水物やエステル、モノアルコールなどの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えて、重合末端のヒドロキシル基、及び/又はカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整することができる。
ポリエステル樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸類とを常法に従って縮合反応させることにより、製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸類とを、窒素等の不活性ガスの存在下で150〜250℃程度の温度で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の物性値に達した時点で反応を停止させ、冷却することにより、目的とする反応物を得ることができる。このようなポリエステル樹脂の合成は、触媒を添加して行うこともできる。使用するエステル化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイドのごとき有機金属や、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシドなどが挙げられる。また、使用するカルボン酸成分が低級アルキルエステルである場合には、エステル交換触媒を使用することができる。エステル交換触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マグネシウムのごとき金属酢酸塩、酸化亜鉛、酸化アンチモンのごとき金属酸化物、テトラブチルチタネートのごとき金属アルコキシド、などが挙げられる。触媒の添加量については、原材料の総量に対して0.01〜1重量%の範囲とするのが好ましい。なお、このような縮重合反応において、特に分岐、または架橋ポリエステル樹脂を製造するためには、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸類またはその無水物、及び/又は、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを必須の合成原料として用いればよい。
また、用いるポリエステル樹脂のガラス転移点Tgは40〜75℃であることが好ましい(ただし、ここのTgの測定条件は、島津製作所製の型番DSCー60を用い、樹脂サンプル約10mgをメルトクエンチ後、加熱速度毎分15℃にて加熱して得られたDSC曲線のショルダーオンセット値として測定したものをいう。)。そして、用いるポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムKOHのmg数であり、単位はmgKOH/gであり、ここでは滴定法により測定した。)は、あまり高いとトナーの正帯電性を損なうことから、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下である(酸価の下限は特にないが、通常、0以上である。)。
バインダー樹脂中のポリエステル樹脂以外の他の樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンーノルボルネン共重合体などの環状オレフィン共重合体、ジエン系樹脂、シリコーン系樹脂、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、ポリスチレン、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンーマレイン酸共重合体、スチレンー(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリビニルブチラールなどを挙げることができる。該他の樹脂を該ポリエステル樹脂と併用する場合、バインダー樹脂のT4温度が110〜180℃の範囲、バインダー樹脂の流出終了温度Tendが130〜210℃の範囲、バインダー樹脂のガラス転移温度が40〜75℃の範囲になるようにされるのが好ましい。なお、これらバインダー樹脂のT4温度は、後述するポリエステル樹脂のフローテスター4mm降下温度(T4r:単位℃)と同様に測定すればよく、流出終了温度Tendは、バインダー樹脂のT4温度を測定するフローテスター4mm降下温度測定においてピストンが下がりきった時の温度である。そして、バインダー樹脂のガラス転移温度は、上述したポリエステル樹脂のガラス転移点Tgと同様に測定すればよい(具体的には、島津製作所製の型番DSCー60を用い、サンプル約10mgをメルトクエンチ後、加熱速度毎分15℃にて加熱して得られたDSC曲線のショルダーオンセット値として測定すればよい。)。
ワックスの融点(Tmw:単位℃)は、あまり低いとトナーの保存性が低下する可能性があり、逆にあまり高いと定着離型剤としての効果が低下する可能性があるので、これらを両立する範囲とされることが好ましく、具体的には、好ましくは60〜160℃であり、より好ましくは100〜150℃である。
但し、式(I)中、R1は水素原子又はメチル基である。
そして、式(II)中、R2は水素原子又はメチル基であり、R3はアルキレン基であり、R4、R5及びR6はそれぞれ異なっても同一でもよいアルキル基である。R3が示す「アルキレン基」と、R4、R5及びR6が示すそれぞれ異なっても同一でもよい「アルキル基」とは、次の通りである。即ち、ここの「アルキル基」及び「アルキレン基」はそれぞれ、直鎖状、分岐鎖状もしくは環式の脂肪族炭化水素基であり、アルキル基の例にはメチル、エチル、n−もしくはiso−プロピル、n−,sec−,iso−もしくはtert−ブチル、n−,sec−,iso−もしくはtert−アミル、n−,sec−,iso−もしくはtert−ヘキシル、n−,sec−,iso−もしくはtert−オクチル、n−,sec−,iso−もしくはtert−ノニル等炭素原子数1〜10個のものが包含され、中でも低級アルキル基(炭素原子数が10個以下、好ましくは5個以下である。)が好適であり、アルキレン基としては例えばエチレン、プロピレン等炭素原子数2〜3個の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
なお、ここにいう第4級アンモニウム塩基含有共重合体の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法により、試料をテトラヒドロフランに溶解し、ポリスチレンスタンダードを用いて作成した検量線によって測定された値をいう。
なお、荷電制御剤中の前記第4級アンモニウム塩基含有共重合体以外の成分としては、例えば、トリブチルベンジルアンモニウムー1ーヒドロキシー4ーナフトスルホン酸塩、ニグロシン、グアニジン化合物、トリフェニルメタン染料、第四級アンモニウム塩等を挙げることができる。
製造工程は、原料を加熱及び混練し混練物とする加熱混合ステップと、加熱混合ステップにて調製された混練物を粉砕して粉砕物とする粉砕ステップと、粉砕ステップにて得られた粉砕物を気流中で流動状態にて加熱処理し球形化する球形化処理ステップと、を少なくとも含む。
これら加熱混合ステップと粉砕ステップと球形化処理ステップとは、従来からトナーを製造する際に行われてきたものである。
バインダー樹脂、ワックス、荷電制御剤及び着色剤は本方法において用いる原料の必須成分であるので、少なくともこれらバインダー樹脂、ワックス、荷電制御剤及び着色剤を混合し原料とする。該原料は加熱及び混練され混練物とされる。なお、該混練物中の荷電制御剤の含有量は1〜15重量%とされることが好ましく、該混練物中のワックスの含有量は1〜10重量%とされることが好ましい。荷電制御剤の混練物中の含有量が1重量%未満の場合は、製造されるトナーが十分な帯電量を有さず(荷電制御剤がトナー表面を覆いきれないものと考えられる。)、15重量%超えると十分な分散が得られずトナー耐久性が悪化(多くの枚数に印刷した場合の印刷品質が低下する。)するためである。また、ワックスの混練物中の含有量が1重量%未満の場合は定着時にホットオフセットの問題が生じ得、10重量%超えると十分な分散が得られず、ワックスがトナー表面にしみだす問題が生じ得る。また、これらバインダー樹脂、ワックス、荷電制御剤及び着色剤以外のものも原料に配合されてもよい。
原料を加熱及び混練する際は、原料が十分均一になるように混練すればよい。
このような原料を加熱及び混練し混練物とする方法は、いかなる方法が用いられてもよく何ら制限されるものではないが、例えば、バンバリーミキサーや二軸混練押出機を加熱混合ステップを実施する装置として例示することができる。
混練物を粉砕し粉砕物とする方法は、いかなる方法が用いられてもよく何ら制限されるものではないが、例えば、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー等の衝撃式粉砕機、ロッドミル、ボールミル等の打撃式粉砕機、カウンタージェットミル、衝突板式ミル等の圧縮空気源を利用したジェット式粉砕機等を粉砕ステップを実施する装置として例示することができる。粉砕ステップは、粉砕物の粒径や粒度分布が体積基準中位径(ベックマン・コールター社製、精密粒度分布測定装置、Multisizer3にて測定した値)が5〜10μm程度になるように行われる。
また、加熱混合ステップにて加熱混練された混練物は、そのままでは粉砕しにくいことが多いので、通常、加熱混合ステップの後、混練物を粉砕しやすくするため、混練物を冷却(混練物が脆性破壊を起こすようにするため、例えば、室温下にて冷却する。)する冷却ステップを、粉砕ステップの前に設ける(即ち、加熱混合ステップと粉砕ステップとの間に冷却ステップを設ける。)ことが多い。
粉砕物は、通常、粉砕時に生じた粒子(通常、脆性破壊によって粉砕されるので粒子は角が尖っていたり、歪な形状をしている。)を気流中で流動状態にて加熱処理することで球形化(球に近い形状にする)する。即ち、粒子を気流中で流動状態にて加熱処理すると、粒子の少なくとも一部が融解することで表面張力によって球に近い形状に変化する。従って、球形化処理ステップにおける加熱温度及び加熱時間は、加熱温度が高くなると円形度が高くなり(1に近づく)、加熱時間が長くなると円形度が高くなる(1に近づく)。なお、円形度とは、粒子が球形にどの程度近いかを示す指標であり、具体的には、トナー粒子の平面への投影像において、粒子の投影像の周囲長Lrと、粒子の投影像の投影面積Sと、を測定し、粒子の投影像の投影面積Sと同じ面積を有する円の周囲長Li(=(4πS)0.5)を算出し、(円形度)=(Li/Lr)にて算出され、円形度が1に近いほど粒子が球形に近いことを示す。また、平均円形度とは、複数のトナー粒子に関し各粒子の円形度を合計し粒子数で除した算術平均値であり、本発明において球形化処理ステップ後の粒子の平均円形度は好ましくは0.940〜0.980であり、より好ましくは0.950〜0.980であり、最も好ましくは0.960〜0.980である(なお、平均円形度を0.940以上にするには、通常、球形化処理ステップにおける加熱温度が200℃以上が必要になることが多い。なお、粉砕ステップで得られ未球形化の粉砕物の円形度は、粉砕ステップの条件等に応じて変化するが、通常、0.890〜0.930程度である。)。このように球形化処理ステップにより加熱処理し球形化されたトナーの体積基準中位径は、5〜10μm程度である。
なお、粉砕ステップにて得られた粉砕物をそのまま球形化処理ステップに供してもよいが、球形化処理ステップ後の粒子の粒度分布を狭くしたり(粒度をそろえる)、球形化処理ステップにて効果的に球形化させるため等に、粉砕ステップにて得られた粉砕物を分級(粉砕物のうち所望の粒径を有するものだけ選別する)する分級ステップにかけた後、球形化処理ステップに供する(即ち、粉砕ステップと球形化処理ステップとの間に分級ステップを設ける。)ようにしてもよい。
球形化処理ステップに供される装置としては、粉砕物を気流中で流動状態にて加熱処理し球形化することができれば何ら制限されるものではなく種々のものを使用することができるが、例えば、容器内部において下方から上方に向けて所定温度の熱風を流通させ、該容器内部にて粉砕物を気流(熱風)中で流動状態にて加熱し球形化させるものを例示することができる。
ここにフローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)とは、JIS K7199に規定するキャピラリレオメーターを用い、シリンダ内径11.329mm、キャピラリーダイの内径1mm及び長さ10mmとし、シリンダー内に測定する試料(樹脂)を1.0g充填し、ピストンに加重196Nを加え、80℃から6℃/分で昇温し、オフセット法にてピストンが4mm降下したときの温度(℃)をいう。
本方法において、バインダー樹脂に用いるポリエステル樹脂のフローテスター4mm降下温度(T4r:単位℃)と、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)と、が、式1(T4c<T4r+10℃)を満たすことによって、本方法により、従来から用いられている荷電制御剤(本方法に用いる前記荷電制御剤は、前述のように特開昭63−60458号に開示された第4級アンモニウム塩基含有共重合体(共重合体(B))と同様のものを用いる従来から用いられている荷電制御剤である。)を使用し、ポリエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を用いた粉砕法において、荷電制御剤の使用量を抑えつつ、高い転写率と高い帯電性能を有するトナーを製造することができる。また、高い帯電性能をトナーに与えることは、帯電量を増大させると共に帯電時間を延長することができるので、転写率を向上させカブリを減少させることができる。
なお、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)は、通常、110〜145℃であり、ポリエステル樹脂のフローテスター4mm降下温度(T4r:単位℃)は、通常、115〜165℃であることが多い。このT4cを高くするには、荷電制御剤を構成する分子の分岐を増加させたり、分子量を増加させるようにすればよい。また、T4rを高くするには、ポリエステル樹脂の分子の分岐を増加させたり、分子量を増加させるようにすればよい。
球形化ステップを行うことにより、トナーの形状を球形に近づけることで、転写率を向上すると同時に、トナー粒子の表面近傍における分散状態の変化をもたらし、球形化ステップを経たあとのトナー粒子表面近傍の各材料分散状態は、球形化ステップにおける高温下での各材料の粘性の大小関係と、各材料間の相溶性、親和性によって決まるものと本発明者は推測する。
式1を満たすことでポリエステル樹脂よりも荷電制御剤の方が、球形化処理ステップにおける高温下では粘性が低いため、球形化処理ステップにおいてトナー粒子の表面に荷電制御剤がしみだして該表面を覆うと本発明者は推測する。荷電制御剤は、トナー粒子の表面においてとりわけ効果的に機能するので、トナー表面を覆うように該表面に高濃度で存在する本発明における荷電制御剤は、高い帯電性能をトナーに与えることができ、換言すれば、ポリエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を用いた粉砕法に比し、荷電制御剤の使用量を抑えても高い帯電性能を有するトナーを本方法では製造することができるものと考えられる(本方法では、荷電制御剤をそれがうまく機能するトナー粒子表面に局在化させることで、少量の荷電制御剤を使用しても高い帯電性能をトナーに与えることができるものと考えられる。)。また、バインダー樹脂に用いるポリエステル樹脂と、前記荷電制御剤に含まれる第4級アンモニウム塩基含有共重合体と、の作用としては、バインダー樹脂に用いるポリエステル樹脂と荷電制御剤に含まれる第4級アンモニウム塩基含有共重合体とが完全には相溶せず、適度に細かく島状の分散状態となり、熱処理時に適度に分離して表面を覆いやすいものと推測され、式1を満たすことと相俟って、荷電制御剤として有効な第4級アンモニウム塩基含有共重合体を、ポリエステル樹脂を含むバインダー樹脂にて形成されたトナーの粒子表面にうまくしみださせて該表面を荷電制御剤が覆うことを促進するものと考えられる。
なお、ワックスのフローテスター4mm降下温度(T4w:単位℃)も、前述したフローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)に従って測定したものをいう。ワックスのフローテスター4mm降下温度(T4w:単位℃)と、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)と、が、式:T4w>T4cを満たすことで、荷電制御剤の使用量を抑えつつ高い帯電性能を有するトナーを一層うまく製造することができる。
式:T4w>T4cを満たすことで荷電制御剤の使用量を抑えつつ高い帯電性能を有するトナーをうまく製造することができる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は、式:T4w>T4cを満たすことでワックスが荷電制御剤よりも球形化処理ステップにおける高温下では流動性が低いため、球形化処理ステップにおいてワックスがトナー粒子の表面にしみださないので(トナー表面を覆うように該表面に存在する荷電制御剤の外面をワックスが覆わないため)、ワックスによる荷電制御剤の機能阻害が生じないか又は減少するためではないかと推測する。なお、これは本発明者の推測であり、本発明がこの推測された理由により限定されるものではない。
なお、T4wは、通常、110〜160℃程度であり、種々のT4wを有するワックスが市販されているので適宜それらを選択使用するようにしてよいが、通常、T4wを高くするにはワックスの分子量を大きくすればよく、T4wを低くするにはワックスの分子量を小さくすればよい。
・Tmw>T4cー10℃ (式2)
・Tmw=T4cー10℃ (式3)
ここにワックスの融点(Tmw:単位℃)は、島津製作所製の型番DSCー60を用い、ワックスサンプル約10mgをメルトクエンチ後、加熱速度毎分15℃にて加熱して得られたDSC曲線の吸熱ピークとして測定したものをいう。
上記のようにTmwが(T4cー10℃)以上であれば((式2)又は(式3)を満たす)、荷電制御剤の使用量を抑えつつ高い帯電性能を有するトナーを一層うまく製造することができる。
Tmwが(T4cー10℃)以上であれば荷電制御剤の使用量を抑えつつ高い帯電性能を有するトナーをうまく製造することができる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は、Tmwが(T4cー10℃)以上であればワックスが荷電制御剤よりも球形化処理ステップにおける高温下では流動性が低いため、球形化処理ステップにおいてワックスがトナー粒子の表面にしみださないので(トナー表面を覆うように該表面に存在する荷電制御剤の外面をワックスが覆わないため)、ワックスによる荷電制御剤の機能阻害が生じないか又は減少するためではないかと推測する。なお、これは本発明者の推測であり、本発明がこの推測された理由により限定されるものではない。
なお、Tmwは、通常、70℃〜160℃程度であり、種々のTmwを有するワックスが市販されているので適宜それらを選択使用するようにしてよいが、通常、Tmwを高くするにはワックスの分子量を大きくすればよく、Tmwを低くするにはワックスの分子量を小さくすればよい。
本方法により製造され得る本トナーにおいては、上述の如く、ポリエステル樹脂を含有するバインダー樹脂を用いた粉砕法によって製造された従来のトナーに比し、荷電制御剤が、トナー表面を覆うように該表面に高濃度で存在するものと推測される(なお、上述と同様、これは本発明者の推測であり、本発明がこの推測された理由により限定されるものではない。)。トナー表面を覆うように表面に高濃度で存在する本トナーにおける荷電制御剤は、高い帯電性能をトナーに与えることができ、換言すれば、本トナーは、従来のトナーに比して同量の荷電制御剤を有していても高帯電性能を有する。なお、荷電制御剤がトナー表面を覆うように存在することは、本トナー(具体的には、後述の実施例1により得られたトナー)を球形化処理ステップの後、(外添なしで)画像評価すると、コピー機の感光ドラム表面にトナー由来の成分が少量融着する(フィルミング)が、この融着した成分をFT−IR(フーリエ変換型赤外分光)にて分析測定したところ、荷電制御剤が主成分であることが明らかになったことから強く示唆される。
(ポリエステル樹脂Aの合成)
無水トリメリット酸45モル、テレフタル酸225モル、イソフタル酸30モル、ネオペンチルグリコール153モル、ビスフェノールAプロピレンオキシド誘導体(以下、「BPPO」という。)60モル、エチレングリコール96モルを蒸留浴を有するオートクレーブに仕込み、エステル化反応せしめた後、酸成分に対し500ppmの三酸化アンチモンを加え、3トルの真空化でグリコールを系外へ除去しながら縮合反応を行いポリエステル樹脂Aを得た。
ポリエステル樹脂Aを分析したところ、ガラス転移点Tg=63℃、フローテスター4mm降下温度T4r=135℃、酸価=3.8mgKOH/gであった。
(ポリエステル樹脂Bの合成)
無水トリメリット酸15モル、3ーメチルグルタル酸30モル、テレフタル酸135モル、イソフタル酸120モル、BPPO210モル、エチレングリコール93モルを蒸留浴を有するオートクレーブに仕込み、エステル化反応せしめた後、酸成分に対し500ppmの三酸化アンチモンを加え、3トルの真空化でグリコールを系外へ除去しながら縮合反応を行いポリエステル樹脂Bを得た。
ポリエステル樹脂Bを分析したところ、ガラス転移点Tg=64℃、フローテスター4mm降下温度T4r=125℃、酸価=1.2mgKOH/gであった。
なお、ポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂Bのいずれに関しても、ガラス転移点Tgは島津製作所製の型番DSCー60によって樹脂サンプル約10mgをメルトクエンチ後、加熱速度毎分15℃にて加熱して得られたDSC曲線のショルダーオンセット値として測定し、酸価は樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムKOHのmg数を滴定法により測定し、フローテスター4mm降下温度T4rはJISK7199に規定するキャピラリレオメーターを用いて後で詳述するようにして測定した。
原料としては、以下のa〜dを混合し調製した。
a)バインダー樹脂
後述の実施例1〜3及び比較例1、2においては、上記のようにして合成したポリエステル樹脂をバインダー樹脂(該ポリエステル樹脂100重量%)として用いた(結着樹脂:PEs)。なお、実施例1〜3及び比較例1については、上記のポリエステル樹脂Aを用い、そして比較例2については、上記のポリエステル樹脂Bを用いた。
また、比較例3及び比較例4については、三井化学社製の型番CPR−200として市販されているスチレンーブチルアクリレート共重合樹脂(St−Ac)を用いた(結着樹脂:St−Ac)。このスチレンーブチルアクリレート共重合樹脂(St−Ac)のガラス転移点温度Tg=54℃であり、フローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)は135℃であった。なお、スチレンーブチルアクリレート共重合樹脂(St−Ac)のガラス転移点温度Tgの測定条件は、島津製作所製の型番DSCー60を用い、樹脂サンプル約10mgをメルトクエンチ後、加熱速度毎分15℃にて加熱して得られたDSC曲線のショルダーオンセット値として測定した。
三井化学株式会社製の商品名「三井HI−WAX」(型番:NP−055)を用いた。
c)荷電制御剤(CCR)
特開昭63−60458号に開示された第4級アンモニウム塩基含有共重合体(共重合体(B))と同様のものであるので、ここでは詳細な説明は省略する。
なお、実施例1、比較例1、比較例3及び比較例4においてはフローテスター4mm降下温度T4c=110℃の同一の荷電制御剤(以下、「CCR110」という。)を用い、実施例2においてはフローテスター4mm降下温度T4c=130℃の荷電制御剤(以下、「CCR130」という。)を用い、そして実施例3及び比較例2においてはフローテスター4mm降下温度T4c=140℃の同一の荷電制御剤(以下、「CCR140」という。)を用いた。CCR110、CCR130及びCCR140のいずれも、第4級アンモニウム塩基含有共重合体の繰り返し単位を示す上記の式(I)及び式(II)におけるR1(式(I)中)は水素原子であり、R2(式(II)中)はメチル基(CH3)であり、R3(式(II)中)はエチレン基(C2H4)であり、R4、R5及びR6(3者いずれも式(II)中)はメチル基(CH3)である。また、いずれの実施例及び比較例も、荷電制御剤は、上記の式(I)及び式(II)にて示される繰り返し単位を含む第4級アンモニウム塩基含有共重合体CCR(CCR110、CCR130及びCCR140の別はあるが、いずれも第4級アンモニウム塩基含有共重合体CCRである。)のみを含む(ここでは荷電制御剤は第4級アンモニウム塩基含有共重合体CCR100%である。)。これらCCR110、CCR130及びCCR140それぞれの調製方法は、次の通りである。
・CCR110:攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した容量2リットルのフラスコにメチルエチルケトン400gを仕込み、さらにスチレン420g、アクリル酸ブチル(以下、「BA」という。)120g、メタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムサルフェイト(以下、「MTAS」という。)60gのモノマー混合物及びアゾビスイソブチロニトリル12gを仕込み、攪拌、窒素導入下80℃で10時間溶液重合を行い、重合反応終了後に減圧加熱炉に移してメチルエチルケトンを脱溶剤して共重合体(CCR110)を得た。該共重合体の分子量を測定したところ約18000であった。また、得られたCCR110が構成する第4級アンモニウム塩基含有共重合体(質量M)中の上記式(I)にて示される繰り返し単位の質量(質量m1)の割合(m1/M)は0.7であり、得られたCCR110が構成する第4級アンモニウム塩基含有共重合体(質量M)中の上記式(II)にて示される繰り返し単位の質量(質量m2)の割合(m2/M)は0.1である。
・CCR130:攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した容量2リットルのフラスコにメチルエチルケトン400gを仕込み、さらにスチレン450g、BA90g、MTAS60gのモノマー混合物及びアゾビスイソブチロニトリル12gを仕込み、攪拌、窒素導入下80℃で10時間溶液重合を行い、重合反応終了後に減圧加熱炉に移してメチルエチルケトンを脱溶剤して共重合体(CCR130)を得た。該共重合体の分子量を測定したところ約24000であった。また、得られたCCR130が構成する第4級アンモニウム塩基含有共重合体(質量M)中の上記式(I)にて示される繰り返し単位の質量(質量m1)の割合(m1/M)は0.5であり、得られたCCR130が構成する第4級アンモニウム塩基含有共重合体(質量M)中の上記式(II)にて示される繰り返し単位の質量(質量m2)の割合(m2/M)は0.1である。
・CCR140:攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した容量2リットルのフラスコにメチルエチルケトン400gを仕込み、さらにスチレン480g、BA60g、MTAS60gのモノマー混合物及びアゾビスイソブチロニトリル12gを仕込み、攪拌、窒素導入下80℃で10時間溶液重合を行い、重合反応終了後に減圧加熱炉に移してメチルエチルケトンを脱溶剤して共重合体(CCR140)を得た。該共重合体の分子量を測定したところ約32000であった。また、得られたCCR140が構成する第4級アンモニウム塩基含有共重合体(質量M)中の上記式(I)にて示される繰り返し単位の質量(質量m1)の割合(m1/M)は0.8であり、得られたCCR140が構成する第4級アンモニウム塩基含有共重合体(質量M)中の上記式(II)にて示される繰り返し単位の質量(質量m2)の割合(m2/M)は0.1である。
d)着色剤
キャボット社(キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク)製の商品名カーボンブラック「Regalー330」を用いた。
バインダー樹脂として各実施例及び比較例1、2にて用いたポリエステル樹脂と、バインダー樹脂として比較例3、4で使用したSt−Acと、荷電制御剤(CCR)と、ワックスと、のフローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)はいずれも次のようにして測定した。
JIS K7199に規定するキャピラリレオメーターを用い、シリンダ内径11.329mm、キャピラリーダイの内径1mm及び長さ10mmとし、シリンダー内に測定する試料を1.0g充填し、ピストンに加重196Nを加え、80℃から6℃/分で昇温し、オフセット法にてピストンが4mm降下したときの温度をT4とした。
用いたワックス(三井化学株式会社製の商品名「三井HI−WAX」(型番:NP−055))の融点Tmwは、島津製作所製の型番DSCー60を用い、ワックスサンプル約10mgをメルトクエンチ後、加熱速度毎分15℃にて加熱して得られたDSC曲線の吸熱ピークとして測定した。その結果、融点Tmw=141℃であった。
ここでは図1に示すように、実施例1〜3と、比較例1〜4と、の合計7例を行った。
実施例1〜3と、比較例2、3と、の計5例については、次のような工程を行った。
(原料)→予備混合→溶融混練→冷却→一次粉砕→二次粉砕→前分級
→前処理外添→球形化処理→後処理外添→篩い→(トナー)→評価
また、比較例1及び比較例4においては、前処理外添及び球形化処理を行っておらず、これらでは、(原料)→予備混合→溶融混練→冷却→一次粉砕→二次粉砕→前分級→後処理外添→篩い→(トナー)→評価の手順にて行った。
なお、上記した「溶融混練」が本発明にいう加熱混合ステップに該当し、上記した「一次粉砕」及び「二次粉砕」が本発明にいう粉砕ステップに該当し、上記した「球形化処理」が本発明にいう球形化処理ステップに該当する。
実施例1〜3と比較例1〜4との合計7例について、製造条件を図1にまとめた。図1は、各例それぞれに応じ、用いたバインダー樹脂の種類及びT4r(単位:℃)、用いた荷電制御剤の種類及びT4c(単位:℃)、球形化処理ステップの有無、(T4r+10)(単位:℃)、T4w(単位:℃)、Tmw(単位:℃)、(T4cー10)(単位:℃)についてまとめたものである。具体的には、図1中のバインダー樹脂の種類において「A」と記載されている例はバインダー樹脂としてポリエステル樹脂Aを用い(ポリエステル樹脂Aが100%)、図1中のバインダー樹脂の種類において「B」と記載されている例はバインダー樹脂としてポリエステル樹脂Bを用い(ポリエステル樹脂Bが100%)、そして図1中のバインダー樹脂の種類において「St−Ac」と記載されている例はバインダー樹脂として上記のスチレンーブチルアクリレート共重合樹脂(三井化学社製、型番CPR−200)を用いたことを示している。図1中、バインダー樹脂のT4rは、各例にて用いたバインダー樹脂のフローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)を示している。図1中、荷電制御剤の種類において「CCR110」と記載されている例は荷電制御剤として上記のCCR110を用い(CCR110が100%)、荷電制御剤の種類において「CCR130」と記載されている例は荷電制御剤として上記のCCR130を用い(CCR130が100%)、そして荷電制御剤の種類において「CCR140」と記載されている例は荷電制御剤として上記のCCR140を用いた(CCR140が100%)ことをそれぞれ示している。図1中、荷電制御剤のT4cは、各例にて用いた荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)を示している。加えて、図1中、球形化処理ステップの有無は、球形化処理(球形化処理ステップ)を行ったか否かを示しており、「有」は球形化処理(球形化処理ステップ)を行ったことを示し、「無」は球形化処理(球形化処理ステップ)を行っていないことを示している。図1中、(T4r+10)は、上述のバインダー樹脂のフローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)に10℃を加えた値を示し、T4w(=142℃)は用いたワックスのフローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)を示し、Tmwは用いたワックスの融点を示し、そして(T4cー10)は、上述の荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4:単位℃)から10℃を減じた値を示している。
実施例及び比較例の具体的な配合は、実施例1〜3と比較例1〜4との合計7例のいずれも次の通りであった。
・バインダー樹脂:35.2kg(88重量部)
・ワックス:0.8kg(2重量部)
・荷電制御剤:2.0kg(5重量部)
・着色剤:2.0kg(5重量部)
三井鉱山株式会社製のヘンシェルミキサ(内容量150リットル)の(150リットルヘンシェルミキサ)型番FMー150L/Iを用い、これらバインダー樹脂、ワックス、荷電制御剤及び着色剤を毎分1200回転にて3分間混合した。
このように実施例及び比較例のいずれも、後述の(2)溶融混練における混練物は40.0kg(35.2+0.8+2.0+2.0)となり、その中の荷電制御剤2.0kgの含有量は5.0重量%(2.0×100/40.0)(1〜15重量%)であり、かつその混練物中のワックスの含有量は2.0重量%(0.8×100/40.0)(1〜10重量%)であった。
株式会社池貝の二軸押し出し混練機(型番:PCM−43)を用い、溶融混練し混練物とした。
(3)冷却
押し出された溶融混練物は、ただちに三井鉱山株式会社製のベルトドラムフレーカー(型番:MDB40−50)で急冷した。
冷却された混練物は、ホソカワミクロン社製の商品名「ロートプレックス」にて3mmの網目を通過するまで粗粉砕された。
(5)二次粉砕
一次粉砕された粗粉砕物は、ホソカワミクロン社製の商品名「カウンタージェットミルAFG−200」を用い、体積平均粒径7.5μm程度まで微粉砕した。なお、体積平均粒径は、ベックマン・コールター社製の商品名「マルチサイザー3」によって測定した。
二次粉砕された微粉砕物は、富士産業株式会社の商品名「風力分級機ミクロプレックス」を用い、体積平均粒径8.0μm(±0.2μm)(なお、±0.2は、個々の実施例又は比較例の間での分級スペックの許容誤差を示す。)かつ5μm以下の粒子数が12個数%以下になるよう分級し、分級微粉砕物とした。
(7)前処理外添
ここでの前処理外添は、後述する球形化処理(熱処理球形化)時における生産性を向上させるため、前分級された分級微粉砕物100重量部に対し、1重量部の日本アエロジル社製の商品名「アエロジル NA−50Y」を、三井鉱山株式会社製のヘンシェルミキサ(内容量20リットル)を用い毎分2400回転にて5分間混合し添加した。なお、比較例1及び比較例4においては、前述したように前処理外添を行っていない。
実施例1〜3及び比較例2、3においては、前処理外添されたものを日本ニューマチック工業株式会社製の型番SFS−3にて温度350℃の気流中で加熱し、平均円形度が0.960になるように球形化(熱処理球形化)した。なお、比較例1及び比較例4においては、前述したように球形化処理を行っていない。
(9)後処理外添
球形化処理されたトナー予備体は、後処理外添に付された。後処理外添は、流動性向上や帯電量調整を目的として、トナー予備体(実施例1〜3及び比較例2、3においては球形化処理されたものであり、比較例1及び比較例4においては前分球されたもの)に対して0.5重量%のキャボット社(キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク)製の商品名「Cabo−Sil TGー820」(外添剤)を、株式会社カワタ製の商品名「スーパーミキサー Piccolo」を用い、毎分3000回転にて5分間混合し添加した。
(10)篩い
後処理外添されたトナー予備体は、後処理外添にて生じた外添剤凝集物や混入した異物等を取り除くため、150meshの篩いにかけて、篩い下(篩い通過分)を評価用のトナーとした。
各実施例及び比較例により得られた評価用のトナーは、次の各評価をした。
イ)円形度
測定機としてシスメックス株式会社製の商品名「フロー式粒子像分析装置」(型番FPIAー2100)を用い、分散媒としてシスメックス株式会社製の商品名「セルシース」(水系)(シスメックス株式会社製の標準分散媒)を使用し、統計個数約5000個で評価用トナーの平均円形度を測定した。
ロ)帯電量(ブローオフ測定法)
評価用トナー4gと同和鉄粉社製の「フェライトキャリアDFC−150」96gとを手混合した現像剤100g(トナー比濃度4%)を100mlのポリ瓶(樹脂製瓶)に装入し、該瓶を回転数毎分280回転にて1分間回転させた後の現像剤を約0.20g採取及び秤量(この秤量値をN1(g)とする。)し、東芝ケミカル株式会社製の商品名「粉体帯電量測定装置 TB−200」を用いて電荷量を測定(測定した電荷量をQ1(単位μC)とする。)し、得られた電荷量Q1を、測定した純トナー重量(秤量した現像剤の重量N1(g)にトナー比濃度4%を乗じた値)にて除して、質量当たりの1分値の比荷電量(単位μC/g)を求めた。
さらに、該瓶を回転数毎分280回転にて29分間(上記の回転時間1分と合わせて30分間)回転させた後の現像剤を約0.20g採取及び秤量(この秤量値をN30(g)とする。)し、上記と同様に電荷量を測定(測定した電荷量をQ30(単位μC)とする。)し、得られた電荷量Q30を、測定した純トナー重量(秤量した現像剤の重量N30(g)にトナー比濃度4%を乗じた値)にて除して、質量当たりの30分値の比荷電量(単位μC/g)を求めた。
市販の正帯電感光体ドラムを搭載したプリンターを用い、黒ベタ(真っ黒の全面黒の原稿)を印字途中にプリンターを停止させ、感光ドラムの転写後の表面に粘着テープを貼着する。該粘着テープをドラム表面から剥離し、転写されていない残トナーを該粘着テープにはぎ取る。このドラム表面から剥離した粘着テープを白紙に貼着したものを評価サンプルとし、この粘着テープと同じ新品の粘着テープを白紙に貼着したものを対照サンプルとし、これら評価サンプルと対照サンプルとを、ミノルタカメラ株式会社製の商品名「色彩色差計」の型番CR−200によって測定した。CR−200の測定条件は、反射・散乱光をYxyモードにてY値を測定し、転写残=Y値(対照サンプル)ーY値(評価サンプル)として転写残(Y値差)を算出した。転写残が小さいことは、転写率が高いことを示す。
なお、転写残の数値範囲は、通常、次のような現象に対応するので、それぞれ○、△及び×を付し評価した。
・転写残1.0未満:○(外部要因で転写が悪化しても問題なし)
・転写残1.0〜3.0:△(極端に不利な条件(厚紙、低湿環境)で画像メモリの可能性あり)
・転写残3.0より大:×(画像メモリが通常条件で発生する)
市販の正帯電感光体ドラムを搭載したプリンターを用い、白紙(全面印字部分なしの真っ白の原稿)を印字させ、プリンタ通過後の紙の印字面を評価サンプルとし、この紙と同じ新品の紙の表面を対照サンプルとし、これら評価サンプルと対照サンプルとを、ミノルタカメラ株式会社製の商品名「色彩色差計」の型番CR−200によって測定した。CR−200の測定条件は、反射・散乱光をYxyモードにてY値を測定し、カブリ=Y値(対照サンプル)ーY値(評価サンプル)としてカブリ値(Y値差)を算出した。また、このカブリは、印刷開始した最初の一枚(Ini)と、印刷を開始し5000枚目(5K)と、の両方で測定した。なお、カブリとは、本来白紙になる部分がトナーで汚れてグレーになってしまう現象をいう。
また、カブリの数値範囲は、通常、次のような現象に対応するので、それぞれ○、△及び×を付し評価した。
・白地カブリ1.0未満:○(肉眼では真っ白に見え、カブリがあることを認識できない)
・白地カブリ1.0〜1.5:△(ルーペ等で白地カブリのトナーを確認可能であるが、実用上問題なし。)
・白地カブリ1.5より大:×(新品の紙と比較すればグレーに見え、肉眼で容易に認識できる。)
実施例2においては、ポリエステル樹脂Aを含有するバインダー樹脂(ここでは全部がポリエステル樹脂Aである。)と、ワックス(三井化学株式会社製の商品名「三井HI−WAX」(型番:NP−055))と、荷電制御剤たるCCR130と、着色剤(キャボット社製のカーボンブラック:Regalー330)と、を少なくとも含有する原料を用い正帯電性静電荷像現像用トナーを製造する製造方法であって、少なくともバインダー樹脂(ポリエステル樹脂A)とワックスと荷電制御剤(CCR130)と着色剤とを加熱及び混練し混練物とする加熱混合ステップと、加熱混合ステップにて調製された混練物を粉砕して粉砕物とする粉砕ステップと、粉砕ステップにて得られた粉砕物を気流中で流動状態にて加熱処理し球形化する球形化処理ステップと、を少なくとも含んでなり、荷電制御剤(CCR130)が、少なくとも上記式(I)及び式(II)にて示される繰り返し単位を含む第4級アンモニウム塩基含有共重合体を含み、ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A)のフローテスター4mm降下温度(T4r:単位℃)135℃と、荷電制御剤(CCR130)のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)130℃と、が、(式1)T4c<T4r+10℃を満たすものである、正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法である。
実施例3においては、ポリエステル樹脂Aを含有するバインダー樹脂(ここでは全部がポリエステル樹脂Aである。)と、ワックス(三井化学株式会社製の商品名「三井HI−WAX」(型番:NP−055))と、荷電制御剤たるCCR140と、着色剤(キャボット社製のカーボンブラック:Regalー330)と、を少なくとも含有する原料を用い正帯電性静電荷像現像用トナーを製造する製造方法であって、少なくともバインダー樹脂(ポリエステル樹脂A)とワックスと荷電制御剤(CCR140)と着色剤とを加熱及び混練し混練物とする加熱混合ステップと、加熱混合ステップにて調製された混練物を粉砕して粉砕物とする粉砕ステップと、粉砕ステップにて得られた粉砕物を気流中で流動状態にて加熱処理し球形化する球形化処理ステップと、を少なくとも含んでなり、荷電制御剤(CCR140)が、少なくとも上記式(I)及び式(II)にて示される繰り返し単位を含む第4級アンモニウム塩基含有共重合体を含み、ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A)のフローテスター4mm降下温度(T4r:単位℃)135℃と、荷電制御剤(CCR140)のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)140℃と、が、(式1)T4c<T4r+10℃を満たすものである、正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法である。
実施例1乃至3のいずれにおいても、バインダー樹脂中の前記ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A)の含有率が、80重量%以上(ここでは略100重量%)である。
実施例1乃至3のいずれにおいても、ワックスのフローテスター4mm降下温度(T4w:単位℃)が、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)よりも高いものである。
実施例1乃至3のいずれにおいても、ワックスの融点(Tmw:単位℃)が、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)と(式2)Tmw>T4cー10℃又は(式3)Tmw=T4cー10℃を満たすものである(ここではTmw>T4cー10℃を満たす。)。
実施例1乃至3のいずれにおいても、前記混練物(バインダー樹脂とワックスと荷電制御剤と着色剤とを混合し溶融混練した混練物)中の荷電制御剤(CCR)の含有量が1〜15重量%(ここでは5.0重量%)であり、かつ前記混練物中のワックスの含有量が1〜10重量%(ここでは2.0重量%)である。
例えば、特許文献7(特開平10−123763号)では、前述のように、懸濁重合法における荷電制御剤(帯電制御剤)の親水性調整によって、高帯電の正帯電性トナーが得られる。しかしながら、この方法は水中で造粒を行う懸濁重合法に特有の方法であり粉砕法に応用できないうえ、荷電制御剤の性質上環境安定性に欠き、連続印字によるトナー劣化に対する耐久性が不足する。このため、連続印字を行った後、高温状態で帯電性が下がると、ボタ落ちなどの画像不良が発生することがある。
これに対し、上述した実施例1乃至3に示した本方法によれば、結着樹脂(バインダー樹脂)としてプリンターの定着条件などに対して汎用性が高いポリエステル樹脂、荷電制御剤として従来の材料(上記式(I)及び式(II)にて示される繰り返し単位を含む第4級アンモニウム塩基含有共重合体)を用いた正帯電性静電荷像現像用トナーを、加熱処理して形状を制御しつつ、高くかつ安定し持続する帯電性能を付与し製造することができる。
Claims (6)
- ポリエステル樹脂を含有するバインダー樹脂と、ワックスと、荷電制御剤と、着色剤と、を少なくとも含有する原料を用い正帯電性静電荷像現像用トナーを製造する製造方法であって、
少なくともバインダー樹脂とワックスと荷電制御剤と着色剤とを加熱及び混練し混練物とする加熱混合ステップと、
加熱混合ステップにて調製された混練物を粉砕して粉砕物とする粉砕ステップと、
粉砕ステップにて得られた粉砕物を気流中で流動状態にて加熱処理し球形化する球形化処理ステップと、
を少なくとも含んでなり、
荷電制御剤が、少なくとも以下の式(I)及び式(II)にて示される繰り返し単位を含む第4級アンモニウム塩基含有共重合体を含み、
該ポリエステル樹脂のフローテスター4mm降下温度(T4r:単位℃)と、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)と、が、次の(式1)を満たすものである、正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法。
(式1)T4c<T4r+10℃ - バインダー樹脂中の前記ポリエステル樹脂の含有率が、80重量%以上である、請求項1に記載の正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法。
- ワックスのフローテスター4mm降下温度(T4w:単位℃)が、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)よりも高いものである、請求項1又は2に記載の正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法。
- ワックスの融点(Tmw:単位℃)が、荷電制御剤のフローテスター4mm降下温度(T4c:単位℃)と次の(式2)又は(式3)を満たすものである、請求項1又は2に記載の正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法。
(式2)Tmw>T4cー10℃
(式3)Tmw=T4cー10℃ - 前記混練物中の荷電制御剤の含有量が1〜15重量%であり、かつ前記混練物中のワックスの含有量が1〜10重量%である、請求項1乃至4のいずれか1に記載の正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 請求項1乃至5のいずれか1に記載の正帯電性静電荷像現像用トナーの製造方法により製造され得るトナー。
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