JP6569561B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Description
トナーが、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む。トナーの貯蔵弾性率温度依存性曲線(縦軸:貯蔵弾性率、横軸:温度)においては、温度69℃以上93℃以下かつ貯蔵弾性率1.00×106Pa以上1.00×107Pa以下の範囲にショルダーが存在し、温度180℃の貯蔵弾性率が1.00×103Pa以上1.00×104Pa以下である。フローテスターで測定されたトナーの軟化点は、115℃以上125℃以下である。なお、貯蔵弾性率温度依存性曲線の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
・温度60℃以上の領域にショルダーが存在する。以下、温度60℃以上の領域に存在するショルダーを高温ショルダーと記載し、温度60℃未満の領域に存在するショルダーを低温ショルダーと記載する。
・高温ショルダーの温度(以下、ショルダー温度TSと記載する)が69℃以上93℃以下である。
・高温ショルダーの貯蔵弾性率(以下、貯蔵弾性率G’Sと記載する)が1.00×106Pa以上1.00×107Pa以下である。
・温度180℃の貯蔵弾性率(以下、貯蔵弾性率G’180と記載する)が1.00×103Pa以上1.00×104Pa以下である。
(結着樹脂)
トナー母粒子では、一般に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナー母粒子全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナー母粒子はアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナー母粒子はカチオン性になる傾向が強くなる。
トナー母粒子は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナー母粒子は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
トナー母粒子は、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナー母粒子は、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれら金属の1種以上を含む合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
トナー母粒子の表面に外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子を含む粉体)を付着させてもよい。例えば、トナー母粒子(粉体)と外添剤(粉体)とを一緒に攪拌することで、物理的な力でトナー母粒子の表面に外添剤が付着(物理的結合)する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
前述の基本構成を有するトナーを容易かつ好適に製造するためには、例えば、次に示す溶融混練工程、粉砕工程、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を含むトナーの製造方法が好ましい。
以下、溶融混練工程の一例について説明する。溶融混練工程では、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含むトナー材料(例えば、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤)を混合して、混合物を得る。続けて、得られた混合物を溶融混練し、溶融混練物を得る。トナー材料の混合には、混合装置(例えば、FMミキサー)を好適に使用できる。混合物の溶融混練には、二軸押出機、三本ロール混練機、又は二本ロール混練機を好適に使用できる。なお、トナー材料としては、結着樹脂及び着色剤を含むマスターバッチを用いてもよい。
以下、粉砕工程の一例について説明する。まず、ドラムフレーカーのような冷却固化装置を用いて溶融混練物を冷却することにより固化する。続けて、第1の粉砕装置を用いて、得られた固化物を粗粉砕する。その後、得られた粗粉砕物を、第2の粉砕装置を用いてさらに粉砕し、所望の粒子径を有する粉体を得る。
粉砕工程の後、例えば水を用いてトナー母粒子を洗浄してもよい。トナー母粒子の洗浄方法としては、例えば、トナー母粒子を含む分散液を固液分離して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を回収し、回収されたウェットケーキ状のトナー母粒子を水で洗浄する方法が好ましい。また、トナー母粒子の洗浄方法としては、トナー母粒子を含む分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が好ましい。
洗浄工程の後、トナー母粒子を乾燥してもよい。例えば、乾燥機(より具体的には、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、又は減圧乾燥機等)を用いてトナー母粒子を乾燥することができる。乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制するためには、スプレードライヤーを用いてトナー母粒子を乾燥することが好ましい。スプレードライヤーを用いる場合には、例えば、外添剤(より具体的には、シリカ粒子等)が分散した分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と後述の外添工程とを同時に行うことが可能になる。
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。混合機を用いて、トナー母粒子に外添剤が埋め込まれないような条件でトナー母粒子と外添剤とを混合することで、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。測定装置を用いて試料の吸熱曲線を測定することにより、試料のTg及びMpを求めた。具体的には、試料(例えば、ポリエステル樹脂)約15mgをアルミ皿(アルミニウム製の容器)に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN1)。その後、測定部の温度を150℃から10℃まで10℃/分の速度で降温させた。続けて、測定部の温度を再び10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得た。得られた吸熱曲線から、試料のMp及びTgを読み取った。吸熱曲線中、融解熱による最大ピーク温度が試料のMp(融点)に相当する。また、吸熱曲線中、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、トナー)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(縦軸:ストローク、横軸:温度)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTmを読み取った。
(結晶性ポリエステル樹脂の合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコ内に、表2に示すアルコール成分(成分1)及び酸成分(成分2)と、1,4−ベンゼンジオール2.5gとを入れた。例えば、結晶性ポリエステル樹脂A1の合成では、アルコール成分として、1,6−ヘキサンジオール1360g(95モル部)及びBPA−PO(ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物)220g(5モル部)を添加し、酸成分として、フマル酸2100g(100モル部)を添加した(表2参照)。
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコ内に、表3に示すアルコール成分(成分1)及び酸成分(成分2)と、酸化ジブチル錫4gとを入れた。例えば、非結晶性ポリエステル樹脂B1の合成では、アルコール成分として、BPA−PO(ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物)1750g(35モル部)及びBPA−EO(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物)1620g(33モル部)を添加し、酸成分として、n−ドデセニル無水コハク酸270g(5モル部)、テレフタル酸1000g(20モル部)、及び無水トリメリット酸300g(7モル部)を添加した(表3参照)。
容量5mLのサンプル瓶に、THF(テトラヒドロフラン)5mLと、試料(非結晶性ポリエステル樹脂)100mgとを入れて、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下で12時間静置した。続けて、シリンジを用いて、サンプル瓶内の上澄み液0.1mLをサンプルパン(アルミニウム製容器)に移した。続けて、そのサンプルパンを、熱重量測定装置(パーキンエルマー社製「Pyris1 TGA」、測定方式:下吊り式の天秤)にセットした。その後、熱重量測定装置の測定部(サンプルパン周辺)の温度をコントロールして、サンプルパン内のTHFを蒸発させた。詳しくは、熱重量測定装置において、熱風温度を35℃から速度35℃/分で100℃まで上昇させた後、熱風温度100℃で10分間保った。続けて、THFを蒸発させた後にサンプルパン内に残った固形分(THF溶解分)の質量M(単位:mg)を測定した。得られた質量Mは、上澄み液0.1mLについての測定値である。よって、THF5mLに投入した試料100mgのうち、THFに溶解した分は「質量M×50」(単位:mg)に相当する。また、試料(非結晶性ポリエステル樹脂)中のテトラヒドロフラン不溶分(THF不溶分)の割合(単位:質量%)は、「100−(質量M×50)」に相当する。
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、結着樹脂(各トナーに定められた、表1に示される結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂)と、着色剤(カーボンブラック:三菱化学株式会社製「MA−100」)5質量部と、離型剤(エステルワックス:日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−9」)4質量部と、電荷制御剤(4級アンモニウム塩:オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)1質量部とを混合した。例えば、トナーTA−1の製造では、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂A1を20質量部、非結晶性ポリエステル樹脂B1を100質量部、それぞれ添加した(表1参照)。
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、回転速度3000rpm、ジャケット温度20℃の条件で、トナー母粒子100質量部と、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」)1.5質量部と、導電性酸化チタン微粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)0.8質量部とを、2分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が付着した。その後、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−9)が得られた。
試料(トナー)0.2gをペレット成形機にセットし、試料に圧力4MPaを加えて、直径10mm、厚さ2mmの円柱状のペレットを得た。続けて、得られたペレットを測定装置にセットした。測定装置としては、レオメーター(アントンパール社製「PhysicaMCR−301」)を用いた。測定装置のシャフト(詳しくは、モーターで駆動されるシャフト)の先端には、測定治具(パラレルプレートPP10Dispo)を取り付けた。ペレットは、測定装置のプレート(詳しくは、ヒーターで加熱されるヒート台)上に載せた。プレート上のペレットを110℃まで加熱して、ペレット(トナーの塊)を一度溶融させた。トナー全体が溶融したところで、溶融したトナーに上から測定治具(パラレルプレートPP10Dispo)を密着させて、平行な2枚のプレート(上:測定治具、下:ヒート台)の間にトナーを挟んだ。そして、トナーを40℃まで冷却した。その後、測定装置を用いて、測定温度範囲40℃〜200℃、昇温速度2℃/分、振動周波数1Hzの条件で、試料(トナー)のG’温度依存性曲線(縦軸:貯蔵弾性率、横軸:温度)を測定した。そして、得られたG’温度依存性曲線から、高温ショルダーの有無、ショルダー温度TSと、貯蔵弾性率G’Sと、貯蔵弾性率G’180とを読み取った。
各試料(トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−9)の評価方法は、以下のとおりである。
現像剤用キャリア(FS−C5250DN用キャリア)100質量部と、試料(トナー)5質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
試料(トナー)2gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて、その容器を、55℃に設定された恒温器内に3時間静置した。その後、恒温器から取り出したトナーを室温(約25℃)まで冷却して、評価用トナーを得た。
凝集度=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−9の各々の評価結果を、表5に示す。表5は、定着性(最高定着温度及び最低定着温度)、耐熱保存性(凝集度)、及びグロス(光沢値)の各々の測定値を示している。
Claims (8)
- 結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
前記トナーの貯蔵弾性率温度依存性曲線においては、温度69℃以上93℃以下かつ貯蔵弾性率1.00×106Pa以上1.00×107Pa以下の範囲にショルダーが存在し、温度180℃の貯蔵弾性率が1.00×103Pa以上1.00×104Pa以下であり、
フローテスターで測定された前記トナーの軟化点は、115℃以上125℃以下であり、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂を合成するための酸成分としてフマル酸を含み、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂を合成するためのアルコール成分として1種以上のビスフェノール類を含む、静電潜像現像用トナー。 - 前記非結晶性ポリエステル樹脂中のテトラヒドロフラン不溶分の割合は15質量%以上25質量%以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂の量は、前記非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して15質量部以上25質量部以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂を合成するためのアルコール成分として1種以上のジオール類をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記トナー粒子は、前記非結晶性ポリエステル樹脂として、1種以上のビスフェノール類と1種以上の2価カルボン酸と1種以上の3価カルボン酸との重合体を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記非結晶性ポリエステル樹脂を合成するためのアルコール成分及び酸成分の総量に対して、前記1種以上の3価カルボン酸の量は、3モル%以上15モル%以下である、請求項5に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は0.90以上1.15未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
前記トナーの貯蔵弾性率温度依存性曲線においては、温度69℃以上93℃以下かつ貯蔵弾性率1.00×106Pa以上1.00×107Pa以下の範囲にショルダーが存在し、温度180℃の貯蔵弾性率が1.00×103Pa以上1.00×104Pa以下であり、
フローテスターで測定された前記トナーの軟化点は、115℃以上125℃以下であり、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂を合成するための酸成分としてセバシン酸を含む、静電潜像現像用トナー。
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