JP5248901B2 - 電子写真用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真用トナーに関する。
トナーに要求される主な特性として挙げられる低温定着性に対する試みとして、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルを含有するトナーが検討されているが、さらに保存性を改良する観点から、脂肪酸アミド化合物を含有するトナーが報告されている(特許文献1〜3等参照)。
特開2006−113473号公報 特開2007−65620号公報 特開2007−328043号公報
しかしながら、現在の高速化に伴いさらなる低温定着性の向上が求められている。また、電子写真技術の普及により様々な環境において利用されるため、高湿環境下等のより厳しい環境においても安定した保存性(保存安定性)を有するトナーが求められている。
本発明の課題は、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有する電子写真用トナーであって、低温定着性及び保存安定性に優れた電子写真用トナーを提供することにある。
本発明は、結着樹脂を含有してなる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂が結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有してなり、トナーを加熱保持試験に供した際の結晶成長速度を、式(A):
Figure 0005248901
〔式中、Gは結晶成長速度(sec-1)、GOは結晶核数因子(sec-1)、Eは分子拡散の活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数[8.31(J/mol・K)]、Thはトナーの加熱保持温度(K)、Tgは示差走査熱量測定におけるトナーのガラス転移点(K)、Kは核生成エネルギー(J/mol)、Tcは示差走査熱量測定におけるトナーの吸熱の最高ピーク温度(K)を示す〕
で表す場合において、核生成エネルギー(K)が150〜400J/molであり、結晶核数因子(G0)が10〜1000sec-1である電子写真用トナーに関する。
本発明の電子写真用トナーは、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有し、低温定着性及び保存安定性に優れるという効果を奏するものである。
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂として結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有し、トナーを加熱保持試験に供した際の結晶成長速度を後述の式(A)で表す場合において、核生成エネルギーと結晶核数因子が特定の範囲にある点に大きな特徴を有するものである。即ち、本発明者らが、結着樹脂の結晶性とトナーの低温定着性及び保存安定性との関係について詳細に検討した結果、単に結晶性を高めればよいのではなく、加熱保持温度を変数として有する結晶成長速度式において、特定の核生成エネルギーと結晶核数因子を有するトナーのみが、低温定着性と保存安定性を両立できることが判明した。トナーの加熱保持条件は、後述の実施例に記載の通りである。
前記結晶成長速度(G)は、式(A):
Figure 0005248901
〔式中、Gは結晶成長速度(sec-1)、G0は結晶核数因子(sec-1)、Eは分子拡散の活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数[8.31(J/mol・K)]、Thはトナーの加熱保持温度(K)、Tgは示差走査熱量測定におけるトナーのガラス転移点(K)、Kは核生成エネルギー(J/mol)、Tcは示差走査熱量測定におけるトナーの吸熱の最高ピーク温度(K)を示す〕
で表される結晶成長速度式から算出されるものであり、この結晶成長速度式は、例えば、高分子学の分野において汎用されている式である(高分子機能材料シリーズ 第3巻 高分子物性の基礎 高分子学会(編)(共立出版、1993年)264頁参照)。
ここで、G0は結晶核の数に関する因子であり、G0が小さすぎると結晶が生成しにくく、フィラー効果が弱いため、トナーの保存安定性に劣る。一方、G0が大きすぎると結晶が過剰に生成し、フィラー効果が強すぎて、トナーの保存安定性に優れるが、低温定着性が悪化する。したがって、トナーの保存安定性及び低温定着性の両立の観点から、結晶核数因子(G0)は、10〜1000sec-1であり、好ましくは10〜450sec-1である。また、核生成エネルギー(K)は、結晶の生成エネルギーに相当し、小さいほど結晶が生成しやすいが、結晶が過剰に生成し、フィラー効果が強すぎると、低温定着性が悪化する。一方。Kが大きすぎると結晶が生成しにくく、フィラー効果が弱いため、保存安定性に劣る。かかる観点から、核生成エネルギー(K)は、150〜400J/molであり、好ましくは200〜400J/molである。なお、KとG0は解析によって算出される数値である。
本発明のトナーは、結着樹脂として結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有する。
樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計における吸熱の最高ピーク温度との比、即ち〔軟化点/吸熱の最高ピーク温度〕によって表わされ、一般にこの値が1.5を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満の時は結晶性が低く非晶部分が多い。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。本発明において、「結晶性ポリエステル」とは、〔軟化点/吸熱の最高ピーク温度〕が0.6〜1.5、好ましくは0.8〜1.2であるポリエステルをいい、「非晶質ポリエステル」とは、〔軟化点/吸熱の最高ピーク温度〕が1.5より大きいか、0.6未満、好ましくは1.5より大きいポリエステルをいう。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。
本発明における結晶性ポリエステルは、α,ω−直鎖アルカンジオールを含有したアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られたポリエステルであることが好ましい。
α,ω−直鎖アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、結晶性を高める観点から、なかでも炭素数2〜8のジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
α,ω−直鎖アルカンジオールの含有量は、結晶性を高める観点から、アルコール成分中、90〜100モル%が好ましく、95〜100モル%がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中では、炭素数2〜8のジカルボン酸化合物が好ましく、フマル酸がより好ましい。なお、脂肪族ジカルボン化合物とは、前記の如く、脂肪族ジカルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステルを指すが、これらの中では、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、結晶性を高める観点から、カルボン酸成分中、90〜100モル%が好ましく、95〜100モル%がより好ましい。
なお、結晶性ポリエステルにおける脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比(脂肪族ジカルボン酸化合物/α,ω−直鎖アルカンジオール)は、製造安定性の観点から、さらにα,ω−直鎖アルカンジオールが多い場合には、真空反応時に蒸発により樹脂の分子量を容易に調整できる観点から、0.9以上1.0以下が好ましく、0.95以上1.0以下がより好ましい。
結晶性ポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒、重合禁止剤等を用いて、120〜230℃の温度で縮重合させること等により得られる。具体的には、樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。なお、結晶性の高いポリエステルを得るにはより高分子量化することが好ましく、反応液粘度が高くなるまで反応させるのがより好ましい。
結晶性ポリエステルの数平均分子量は、トナーの保存安定性及び生産性の観点から、2000〜4000が好ましく、2200〜3500がより好ましく、2300〜3000がさらに好ましいが、非晶質ポリエステルのアルコール成分として、脂肪族アルコールを用いる場合においては、トナーの耐ホットオフセット性の観点から、6000〜9000が好ましい。
結晶性ポリエステルの示差走査熱量測定による吸熱の最高ピーク温度は、トナーの低温定着性、保存安定性及び耐久性の観点から、110〜140℃が好ましく、110〜130℃がより好ましく、110〜120℃がさらに好ましい。
結晶性ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、70〜140℃が好ましく、90〜130℃がより好ましく、90〜120℃がさらに好ましい。軟化点を調整する方法としては、例えば脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整する方法、反応温度、触媒の量、減圧下で長時間脱水反応を行う等のエステル化の反応条件を変更する方法が挙げられる。具体的には、脂肪族ジカルボン酸化合物の割合を増加させたり、反応温度の上昇、触媒量の増加、脱水反応時間の延長等を行ったりすることにより数平均分子量を大きくすることができる。また、前記記載の逆にすると小さくなる傾向がある。また、前述した通り、軟化点と吸熱の最高ピーク温度の比を調整するには、脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整したり、反応温度を上げる、触媒量を増やす、減圧下、長時間脱水反応を行う等の反応条件を調整したりすることにより達成できる。
非晶質ポリエステルのアルコール成分としては、式(I):
Figure 0005248901
(式中、R1O及びOR1はオキシアルキレン基であり、R1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
これらの中では、ポリエステルの非晶質化及びトナーの帯電性と耐久性の観点からは、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
カルボン酸成分に含まれるジカルボン酸化合物としては、フマル酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の炭素数2〜30、好ましくは2〜8の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;、これらの酸の無水物、及び酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらの中では、トナーの低温定着性の観点から、脂肪族ジカルボン酸化合物好ましく、フマル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、40〜90モル%が好ましく、50〜85モル%がより好ましい。
また、3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、トナーの耐ホットオフセット性の観点から、カルボン酸成分中、10〜50モル%が好ましく、15〜30モル%がより好ましい。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整等のために、適宜含有されていてもよい。
非晶質ポリエステルにおけるアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度で行うことができるが、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、酸化ジブチル錫、オクチル酸錫(II)等のエステル化触媒の存在下で行うことが好ましい。
エステル化触媒の反応系における存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部が好ましく、0.1〜0.8重量部がより好ましい。
非晶質ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から、100〜170℃が好ましく、120〜150℃がより好ましい。
非晶質ポリエステルのガラス転移点は、トナーの低温定着性と耐久性の観点から、40〜70℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。酸価は、5〜60mgKOH/gが好ましく、10〜30mgKOH/gがより好ましい。
非晶質ポリエステルの数平均分子量は、トナーの耐ホットオフセット性の観点から、2000〜4000が好ましく、2300〜3500がより好ましい。
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
本発明において結着樹脂は、結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステルを主成分として含有するが、結晶性ポリエステルの含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂中、5〜40重量%が好ましく、5〜35重量%がより好ましく、15〜30重量%がさらに好ましい。
非晶質ポリエステルの含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂中、60〜99重量%が好ましく、65〜95重量%が好ましく、70〜85重量%がより好ましい。
結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルの重量比(結晶性ポリエステル/非晶質ポリエステル)は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、5/95〜40/60が好ましく、15/85〜30/70がより好ましい。
本発明における結着樹脂には、結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステル以外に、他の結着樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。他の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等のポリエステル以外の結着樹脂等が挙げられる。結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステルの総含有量は、特に限定されないが、トナーの低温定着性の観点から、結着樹脂中、95重量%以上が好ましく、99重量%以上がより好ましい。
結着樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、80〜170℃以上が好ましく、100〜160℃がより好ましい。なお、本発明において結着樹脂の軟化点は、結着樹脂を構成する樹脂の物性に、樹脂の含有割合を乗じて得られる加重平均値である。
さらに、本発明における結着樹脂以外のトナー原料として、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が、適宜用いられていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾイエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナー、フルカラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、パラフィンワックス等の石油ワックス、アルコール系ワックス等のワックス、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステル系ワックスが挙げられ、これらのワックスは単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。離型剤の含有量は、トナーの定着性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれであってもよく、これらが併用されていてもよい。正帯電性荷電制御剤としては、二グロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等が挙げられる。荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部が好ましく、0.2〜4.0重量部がより好ましい。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
従って、本発明のトナーは、結着樹脂を含むトナー原料を溶融混練する工程、及び得られた混練物を粉砕する工程を含む方法により製造することが好ましい。
トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。結着樹脂及び必要に応じて用いられる着色剤、離型剤、荷電制御剤等のトナー原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供することが好ましい。
溶融混練後、得られた混練物を粉砕可能な硬度に達するまで冷却し、粉砕工程に供する。
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ジェットミル、衝突板式ミル、回転型機械ミル等が挙げられる。
粉砕工程後、適宜、分級工程、篩工程等を行って、トナーの粒径を調整することが好ましい。
分級工程に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよい。
以上の工程によりトナーが得られるが、さらに得られたトナー表面に疎水性シリカ等の無機微粒子や樹脂微粒子を外添してもよい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、2〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましく、3〜9μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
以上の方法により、本発明のトナーを得ることができるが、本発明において、前記G0及びKを調整する手段としては、例えば、以下の(a)〜(f)の方法が挙げられる。
(a) トナー原料として芳香族アミド化合物を用いることにより、G0が大きくなり、Kが小さくなり、その分散性を高めることにより、さらにG0が大きくなる傾向がある。
トナー原料として、結晶核剤となる芳香族アミド化合物を用いることにより、結晶が析出しやすくなり、さらに、芳香族アミド化合物のトナー中への分散性を高めることにより、G0が大きくなる。芳香族アミド化合物の添加量が同じあれば、分散性を変えても、Kはほとんど変わらない。
芳香族アミド化合物としては、式(II):
2−CONH−X−NHCO−R3 (II)
(式中、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数5〜12のシクロアルキル基、Xは式(IIa):
Figure 0005248901
又は式(IIb):
Figure 0005248901
で表される基である)
で表される化合物が好ましい。式(II)で表される芳香族アミド化合物は、2つのアミド結合間に芳香族環を1つ以上有しており、この特定の芳香族アミド化合物と、結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステルとの相互作用により、芳香族環と結晶性ポリエステル構造とが規則的に配列する(スタッキングを起こす)ことが推測され、結晶性ポリエステルの結晶化が起こりやすくなるものと推察される。
式(II)で表される芳香族アミド化合物の具体例としては、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド、N,N’-ジシクロオクチル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド、N,N’-ジシクロドデシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド、N,N’-ジシクロヘキシル-4,4'-ビフェニルジカルボキサミド等が挙げられる。
式(II)で表される芳香族アミド化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部が好ましく、0.5〜3.0重量部がより好ましく、1.0〜2.0重量部がさらに好ましい。
芳香族アミド化合物のトナー中の分散性を高める手段としては、
(a1) 芳香族アミド化合物を結晶性ポリエステルの製造中に反応系に添加する方法、
(a2) トナー原料の溶融混練工程を、非晶質ポリエステルと芳香族アミド化合物とを含むトナー原料を溶融混練する第一混練工程、及び該工程で得られた混練物と結晶性ポリエステルとを含むトナー原料を溶融混練する第二混練工程の2段階で行う方法、
(a3) トナー原料の溶融混練に、より混練シェアの高い混練機、例えば、前述のオープンロール型混練機を使用する方法
等が挙げられる。
方法(a1)において、芳香族アミド化合物は、シェアを高め分散性を高める観点から、触媒の存在下で原料モノマーを反応させた後、反応率(理論流出水に対する測定流出水の割合)が90%以上となった時点で、反応系に添加することが好ましい。この場合、芳香族アミド化合物の配合量は、結晶性ポリエステルの原料モノマーの総量100重量部に対して、1.0〜10重量部が好ましい。
方法(a2)において、芳香族アミド化合物の配合量は、非晶質ポリエステル100重量部に対して、10〜50重量部が好ましく、15〜40重量部がより好ましく、20〜30重量部がさらに好ましい。
第一混練工程、第二混練工程で使用する混練機は特に限定されないが、第一混練工程では、一軸又は二軸の押出機等の高い混練シェアのかかる混練機を使用することが好ましい。
着色剤、荷電制御剤等の添加剤は、第一混練工程及び第二混練工程のいずれの工程で配合してもよく、さらに第二混練工程の後にそれらの添加剤を配合する第三混練工程を設けてもよいが、生産効率の観点から、第二混練工程で配合することが好ましい。
方法(a3)で用いられるより混練シェアの高い混練機としては、オープンロール型混練機等が挙げられる。
オープンロール型混練機としては、混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂に添加剤を効率よく高分散させることができることから、ロールの軸方向に沿って設けられた供給口と混練物排出口を備えた連続式オープンロール型混練機を用いることが好ましい。
トナー原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後、オープンロール型混練機に供することが好ましく、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよいが、操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
連続式オープンロール型混練機とは、混練部がオープン型であるものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが望ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、分散性の観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが望ましい。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
高回転側ロールの原料投入側端部温度は100〜160℃が好ましく、低回転側ロールの原料投入側端部温度は35〜100℃が好ましい。
高回転側ロールと低回転側ロールにおける、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差は、添加剤の分散性の観点から、0〜50℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/minであることが好ましく、4〜50m/minがより好ましい。低回転側ロールの周速度は1〜90m/minが好ましく、2〜60m/minがより好ましく、2〜50m/minがさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高めるために、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
(b) 結晶性ポリエステルの分子量を高めることにより、G0及びKが大きくなる。
結晶性ポリエステルの分子量を高める手段としては、高分子量化した結晶性の高いポリエステルを得るためには、前記のように脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整したり、反応温度を上げる、触媒量を増やす、減圧下、長時間脱水反応を行う等の反応条件を選択すればよい。なお、高出力のモーターを用いて、高分子量化した結晶性の高いポリエステルを製造することもできるが、製造設備を特に選択せずに製造する際には、原料モノマーを非反応性低粘度樹脂や溶媒とともに反応させる方法も有効な手段である。
(c) 非晶質ポリエステルのアルコール成分として、脂肪族アルコールを用いることにより、Kが小さくなる。
脂肪族アルコールとしては、非晶質化を高める観点から、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロパンジオール等の分岐鎖の脂肪族ジオールが好ましい。脂肪族アルコールの含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。
非晶質ポリエステルのアルコール成分として、脂肪族アルコールを用いる場合、得られるポリエステルの非晶性を高める観点から、芳香族カルボン酸化合物を用いることが好ましい。芳香族カルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。
なお、非晶質ポリエステルアルコール成分として、脂肪族アルコールを用いる場合においては、数平均分子量の高い、具体的には数平均分子量が6000〜9000の結晶性ポリエステルと組み合わせて使用することが好ましい。
(d) 結晶性ポリエステル中に結晶核剤となるアミド化合物、好ましくはアミド結合を3個以上有する分子量1000以下のアミド化合物を分散させることにより、G0が大きくなり、Kが小さくなる。
前記アミド結合を3個以上有する分子量1000以下のアミド化合物は、ポリエステルとの化学的相互作用の観点から、アミド結合を3個以上、好ましくは3〜6個、より好ましくは4〜5個有していることが望ましく、分子量は1000以下、好ましくは200〜600であることが望ましい。なお、3個以上のアミド結合は連結している必要はなく、各々単独で存在していてもよい。
また、前記アミド化合物は、トナーの帯電安定性の観点から、芳香環を有するアミド化合物であることが好ましい。芳香環を有することで、構造的に電荷を保持しやすくなると考えられ、トナーの帯電安定性がより改善される結果となる。
これらの具体的な化合物としては、式(IIIa):
Figure 0005248901
(分子量:438)
で表される芳香族アミド化合物、式(IIIb):
Figure 0005248901
(分子量:414)
で表される芳香族アミド化合物、式(IIIc):
Figure 0005248901
(分子量:382)
で表される芳香族アミド化合物、及び式(IIId):
Figure 0005248901
(分子量:442)
で表される芳香族アミド化合物等の2個のアミド結合が隣接した構造を有する化合物等が挙げられる。これらの化合物は、結晶性ポリエステルとの間に水素結合を形成すると考えられ、これが、トナーの保存安定性、帯電安定性を改善させると推察されるが、なかでも、保存安定性及び帯電性の観点から、式(IIIa)で表される芳香族アミド化合物、すなわち、セバシン酸ビス(2-ベンゾイルヒドラジン)が好ましい。
前記アミド結合を3個以上有する分子量1000以下のアミド化合物は、シェアを高め分散性を高める観点から、触媒の存在下で原料モノマーを反応させた後、反応率(理論流出水に対する測定流出水の割合)が90%以上となった時点で、反応系に添加することが好ましい。この場合、アミド化合物の配合量は、結晶性ポリエステルの原料モノマーの総量100重量部に対して、1.0〜10重量部が好ましい。
(e) トナー原料として、結晶核剤となるタルクを用いることにより、G0が大きくなり、Kが小さくなる。
タルクの数平均粒径は、トナー中への分散性の観点から、50nm〜3μmが好ましく、0.1〜1.5μmがより好ましい。
タルクの配合量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上1.0重量部未満が好ましい。
(f) 着色剤として銅顔料を使用しないトナーにおいては、結晶性ポリエステル中に結晶核剤となる銅顔料を分散させることにより、G0が大きくなり、Kが小さくなる。
銅顔料としては、銅フタロシアニン顔料が好ましい。
銅顔料は、分散性を高める観点から、触媒の存在下で原料モノマーを反応させた後、反応率(理論流出水に対する測定流出水の割合)が90%以上となった時点で、反応系に添加することが好ましい。この場合、銅顔料の配合量は、結晶性ポリエステルの原料モノマーの総量100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。
一方、G0を小さくする方法として、前述の記載とは逆の手段をとればよい。すなわち、結晶核剤の分散状態を悪化させる方法等が挙げられる。また、Kを大きくする方法として、結晶性ポリエステルの分子量を高めること等が挙げられる。
本発明により得られたトナーは、一成分現像用トナー及びキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーのいずれにも用いることができるが、耐熱性がより要求される一成分現像用トナーとしてより好適に用いられる。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出する温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後昇温速度10℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。
〔樹脂及びトナーのガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、降温速度100℃/minで−10℃まで冷却した試料を3分間放置し、その後、昇温速度60℃/minで25℃まで昇温し2分間保持して、昇温速度10℃/minで測定を開始する。ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間の最大傾斜を示す接線との交点の温度を、ガラス転移点とする。
〔トナーの吸熱の最高ピーク温度(Tc)〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/分で160℃まで昇温し、降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。0℃で2分間放置し、その後、昇温速度10℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
〔樹脂の数平均分子量〕
以下の方法により得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布を示すチャートから、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、非晶質ポリエステルはテトラヒドロフラン中に、結晶性ポリエステルはクロロホルム中に溶解する。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業社製、FP-200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶解液として非晶質ポリエステルの測定にはテトラヒドロフランを、結晶性ポリエステルの測定にはクロロホルムを毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製の2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス社製の2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:CO-8010(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
〔タルクの数平均粒径〕
レーザー回折型粒径測定機(HORIBA製、LA-920)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、数平均粒径を測定する。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
本明細書において、トナーの体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になるトナーの粒径を意味する。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5重量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個のトナー粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
結晶性ポリエステルの製造例1
表1に示す原料モノマー、オクチル酸錫(II)8g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.5重量部)及びt-ブチルカテコール(TBC)1g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.05重量部)を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、160℃で5時間かけて反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。さらに、8.3kPaにて3時間反応させて、樹脂aを得た。
結晶性ポリエステルの製造例2
表1に示す原料モノマー及びt-ブチルカテコール(TBC)1g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.05重量部)を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、160℃で5時間かけて反応させた後、200℃に昇温して、オクチル酸錫(II)8g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.5重量部)を添加し、さらに8.3kPaにて3時間反応させて、樹脂bを得た。
結晶性ポリエステルの製造例3
表1に示す原料モノマー、オクチル酸錫(II)8g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.5重量部)及びt-ブチルカテコール(TBC)1g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.05重量部)を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、160℃で5時間かけて反応させ、反応率(理論流出水に対する測定流出水の割合)が90%以上となった時点で、それぞれ、表1に示す結晶核剤を添加した。その後、200℃に昇温して1時間反応させ、8.3kPaにて3時間反応させて、樹脂c〜fを得た。
Figure 0005248901
非晶質ポリエステルの製造例1
表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー、オクチル酸錫(II)10g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.5重量部)及びt-ブチルカテコール(TBC)1g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.05重量部)を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、200℃で8時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに表2に示す無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させた後、40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂Aを得た。
非晶質ポリエステルの製造例2
表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びオクチル酸錫(II)10g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.5重量部)を室温の冷水を通水した還流冷却管を上部に装備した98℃の温水を通水した分溜管、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で8時間かけて反応させた。さらに210℃にて表2に示す無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させた後、40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂Bを得た。
Figure 0005248901
実施例1〜4、6〜11及び比較例1〜5
表3に示す樹脂からなる結着樹脂100重量部、カルナバワックス 1号(加藤洋行社製)2.0重量部、カーボンブラック「Regal 330」(キャボット社製)4.0重量部、荷電制御剤「T-77」(保土谷化学工業社製)0.5重量部、及び表3に示す結晶核剤をヘンシェルミキサーで十分混合した後、ヘンシェルミキサーで十分混合した。混合した後、表3に示す混練条件で溶融混練した。
〔混練条件A〕
混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機(池貝鉄工社製、PCM-30-30)を用いて溶融混練した。バレル設定温度は90℃(混練温度 125〜140℃)、スクリュー回転速度は200r/min、混合物の供給速度は10kg/時、平均滞留時間は約18秒であった。
〔混練条件B〕
減算式スクリューフィーダーを用い、連続式2本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)に、10kg/hの投入速度で、ロール端から約10cmのところに設けた原料投入口から連続的に投入した。なお、混練機の運転条件は、前ロール回転数を75r/min(周速度:32.97m/min)、後ロール回転数を50r/min(周速度:21.98m/min)、前ロールの加熱媒体温度は、混練の上流側を100℃、下流側を85℃、後ロールの冷却媒体温度は、混練の上流側及び下流側をともに35℃に設定し、また、2本のロールは並行に配置し、その間隙は0.1mmとした。
得られた混練物を冷却、粗粉砕した後、I-2型粉砕機(日本ニューマチック社製)で粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8.5μmのトナー粒子(分級物)を得た。
得られたトナー粒子(分級物)100重量部に対して、外添剤として疎水性シリカ「TS-530」(キャボット社製)0.65重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
実施例5
樹脂A 80重量部と結晶核剤としてアミド化合物A 20重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、単軸押出機ラボプラストミル(東洋精機製作所社製、タイプ30C150)にて、設定温度150℃、スクリュー回転:50r/minで、10分間溶融混練した(第一混練工程)。
樹脂A 4重量部とアミド化合物A 1重量部からなる混練物5.0重量部と、樹脂A 76重量部、樹脂a 20重量部、カルナバワックス 1号(加藤洋行社製)2.0重量部、カーボンブラック「Regal 330」(キャボット社製)4.0重量部、及び荷電制御剤「T-77」(保土谷化学工業社製)0.5重量部とを、混練条件Aで溶融混練し(第二混練工程)、以降、実施例1と同様にして、トナーを得た。
〔結晶成長速度(G)の解析〕
以下の方法により、実施例及び比較例で得られたトナーを加熱保持試験に供し、その際の結晶成長速度(G)を解析した。結果を表3に示す。
(1) 加熱保持試験
試料(トナー)を、レオメーター(ARES、TAインスツルメント社製)のセルにセットし、160℃で5分間溶融させた後、50℃まで20℃/minで冷却した後、同温度で20時間加熱保持する
。加熱保持の間、レオメーターにより貯蔵弾性率(G’)を測定する(Strain:0.05%、周波数:6.28rad/sec)。同様に、60℃、70℃、80℃、90℃まで、20℃/minで冷却した後、同温度で20時間保持する。
(2) 結晶成長速度(G)の測定
加熱保持を開始した時間(t0)でのG’を0、所定の温度で20時間加熱保持後の時間(tend)でのG’を1として、t0からtendまでG’の変化を0から1までで表す。これをG’の規格化とする。
加熱保持温度Th(50℃)にて規格化した値が0.5に到達するまでの時間を半結晶化時間(t50half)とする。そして、t50halfの逆数を、加熱保持温度Th(50℃)に対する結晶成長速度Gと定義する。同様に加熱保持温度Thが60℃、70℃、80℃、90℃のとき、各加熱保持温度Thにおける対応結晶成長速度Gを求める。
(3) 式(A)で表される結晶成長速度GにおけるK及びG0の算出
(3-a) 式(A):
Figure 0005248901
〔式中、Gは結晶成長速度(sec-1)、G0は結晶核数因子(sec-1)、Eは分子拡散の活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数[8.31(J/mol・K)]、Thはトナーの加熱保持温度(K)、Tgは示差走査熱量測定におけるトナーのガラス転移点(K)、Kは核生成エネルギー(J/mol)、Tcは示差走査熱量測定におけるトナーの吸熱の最高ピーク温度(K)を示す〕
で表される結晶成長速度式を、加熱保持温度Thの関数とみなし、下記式(B)で表されるln式に変換する。
Figure 0005248901
(3-b) Eを含む項(セグメント拡散速度項)をAと置き、式(B)をさらに下記式(C)に変形する。
Figure 0005248901
(3-c) lnG−lnAをy軸、Tc/RTh(Tc−Th)をx軸とし、lnG−lnAをThの関数とみなし、各加熱保持時間Thと対応する結晶成長速度Gを代入する。そして、lnG−lnAの値(y軸)と横軸(x軸)において、傾きのR2(相関係数)が最も高くなるときのE値(分子拡散の活性化エネルギー(E)と定義する)をJournal of Applied Polymer Science, Vol.91, p.3595 (2004)、Macromolecules 2003, 36, p.6653に記載の方法に従って求める。
(3-d) 得られた直線関係の式において、傾きが核形成に必要な核生成エネルギー(K)、y切片が結晶核数因子(G0)の対数となり、K及びG0を算出することができる。
試験例1〔低温定着性〕
非磁性一成分現像方式のフルカラー画像形成装置「MICROLINE 5400」(沖データ社製)にトナーを実装し、標準の現像バイアスで2cm×12cmのベタ画像部(トナー付着量:0.5mg/cm2)を有する未定着画像を得た。装置外での定着が可能なように改良した複写機「AR-505」(シャープ社製)の定着機(定着速度:100mm/sec)を用い、定着温度を90℃から180℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、未定着画像を定着させた。
定着画像に「ユニセロハンテープ」(三菱鉛筆社製、幅:18mm、JIS Z-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後のベタ画像の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に70%を超える定着温度を最低定着温度として、低温定着性を評価した。結果を表3に示す。最低定着温度が低いほど、低温定着性が良好であることを示す。なお、定着試験に用いた紙は「CopyBond SF-70NA」(シャープ社製、75g/m2)である。
試験例2〔保存安定性〕
20mL容のポリビンにトナー4gを入れ、温度55℃の環境下で48時間放置した。放置後、以下の方法によりパウダーテスター(ホソカワミクロン社製)でトナーの凝集度を測定し、保存安定性を評価した。結果を表3に示す。凝集度が低いほど、保存安定性が良好であることを示す。
〔凝集度の測定方法〕
パウダーテスターの振動台に、3種の異なる目開き(250μm、149μm、74μm)の篩を、上段250μm、中段149μm、下段74μmの順でセットし、上段の篩にトナー4gを乗せ、1mmの振動幅で60秒間振動させて、各篩上に残存したトナーの重量(g)を測定する。
測定したトナー重量を次式に当てはめて計算し、凝集度(重量%)を求める。
凝集度(重量%)=a+b+c
a=(上段の篩に残存したトナーの重量(g))/4×100
b=(中段の篩に残存したトナーの重量(g))/4×100×(3/5)
c=(下段の篩に残存したトナーの重量(g))/4×100×(1/5)
Figure 0005248901
以上の結果から、実施例1〜11では、比較例1〜5と比べて、低温定着性及び高温高湿下での保存安定性のいずれにも優れていることが分かる。
本発明の電子写真用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 結着樹脂を含有してなる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂が結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有してなり、トナーを加熱保持試験に供した際の結晶成長速度を、式(A):
    Figure 0005248901
    〔式中、Gは結晶成長速度(sec-1)、GOは結晶核数因子(sec-1)、Eは分子拡散の活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数[8.31(J/mol・K)]、Thはトナーの加熱保持温度(K)、Tgは示差走査熱量測定におけるトナーのガラス転移点(K)、Kは核生成エネルギー(J/mol)、Tcは示差走査熱量測定におけるトナーの吸熱の最高ピーク温度(K)を示す〕
    で表す場合において、核生成エネルギー(K)が150〜400J/molであり、結晶核数因子(G0)が10〜1000sec-1である電子写真用トナー。
  2. 結晶性ポリエステルの含有量が、結着樹脂中、5〜40重量%である、請求項1記載の電子写真用トナー。
  3. 結着樹脂を含むトナー原料を溶融混練する工程、及び得られた混練物を粉砕する工程を含む方法により得られる、請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
  4. さらに、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドを含有してなる、請求項1〜3いずれか記載の電子写真用トナー。
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