JP5361045B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法、及び該方法により得られる静電荷像現像用トナーに関する。
近年、トナー用結着樹脂として、低温定着性の向上に有効な結晶性ポリエステルが注目されており、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂が併用されている。そして、さらに低温定着性を向上する目的で可塑剤を併用する技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、トナー画像を記録媒体に転写したあとの転写部材又は中間転写体上に付着する転写残トナーを、クリーニング部材によって効率よく除去して、転写定着部又は中間転写体に対するクリーニング性を高めることができる画像形成装置に使用できるトナーとして、可塑剤を含有するトナーが開示されている。特許文献2には、高速定着を可能として高速印刷に対応し得るようにし、ホットオフセットを発生しにくく高品質で高安定な画像を得ることができる画像形成装置に用いるトナーとして、可塑剤を含有するトナーが開示されている。そして、特許文献1及び特許文献2には、トナーの保存時に樹脂と可塑剤とが独立して存在した状態(相溶していない状態)におかれることにより優れた耐熱保存性を有し、定着時の加熱により、樹脂と可塑剤とが速やかに相溶し、高いレベルでの低温定着性を実現することが記載されている。
一方、可塑剤としては、ポリ乳酸等の生分解性樹脂用の可塑剤として、二塩基酸とポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとの特定のエステルが特許文献3で報告されているが、トナー分野では用いられていない。
特開2007−249061号公報 特開2008−3538号公報 特開2006−176748号公報
しかしながら、トナーの低温定着性を向上する目的でトナーの結着樹脂として結晶性ポリエステルと非晶質樹脂を併用すると、これらの樹脂の相溶が起こり、定着温度未満の比較的低温でもトナーが軟化し易くなり、耐久性が低下する傾向がある。
本発明の課題は、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂とを併用する静電荷像現像用トナーであって、広範囲な定着温度領域を有し、さらに耐久性にも優れる静電荷像現像用トナーの製造方法、及び該方法により得られる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、結晶性ポリエステルを含有する結着樹脂に特定の可塑剤を使用し、加熱処理工程を加えることにより、広範囲な定着温度領域を有し、さらに耐久性にも優れる静電荷像現像用トナーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕 結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を主成分として含有する結着樹脂と、該結着樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部の式(I):
1O(EO)m−COR3COO−(EO)n2 (I)
(式中、R1及びR2は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、R3は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R1とR2は同一でも異なってもよい。EOはオキシエチレン基、m及びnはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5、かつ1≦m+n≦8の数である)
で表される化合物A及び/又は3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキル(炭素数1〜10)エステルとを溶融混練する工程、及び、該工程で得られた溶融混練物を50〜80℃の温度で0.5〜24時間行う、加熱処理する工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法により得られる静電荷像現像用トナー
に関する。
本発明の方法により、広範囲な定着温度領域を有し、耐久性にも優れる静電荷像現像用トナーを得ることができる。
本発明は、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を主成分として含有する結着樹脂を溶融混練する工程、及び前記工程で得られた溶融混練物を加熱処理する工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、溶融混練工程において、前記結着樹脂を、特定の可塑剤とともに溶融混練する点に1つの特徴を有する。本発明の発現機構は不明なるも、以下のように推定される。結晶性ポリエステルが非晶質樹脂と相溶すると結晶性ポリエステルの結晶性が低下し、その相溶した部分で局所的に結着樹脂のガラス転移点が低下し、その部分でトナー同士が融着し易くなり、トナーの耐久性が低下する。しかし、特定の可塑剤を使用して加熱処理することにより、可塑剤による可塑化によって結晶性ポリエステルが非晶質樹脂と相溶した部分から結晶性ポリエステルの再結晶化が起こり易くなり、耐久性の低下が抑制されると推定される。
本発明に用いられる可塑剤は、式(I):
1O(EO)m−COR3COO−(EO)n2 (I)
(式中、R1及びR2は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、R3は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R1とR2は同一でも異なってもよい。EOはオキシエチレン基、m及びnはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5、かつ1≦m+n≦8の数である)
で表される化合物A及び/又は3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキル(炭素数1〜10)エステルである。これらを用いることにより、加熱処理工程において結晶性ポリエステルの再結晶化が促進され、耐久性に優れる静電荷像現像用トナーが得られる。化合物Aと3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキル(炭素数1〜10)エステルは、それぞれ単独で用いられていても併用されていてもよいが、分子の運動性の向上による結晶性ポリエステルの可塑性向上の観点からは、化合物Aが好ましく、非晶質樹脂との相溶性の観点からは、3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキル(炭素数1〜10)エステルが好ましい。
式(I)において、R1及びR2は同一でも異なってもよい炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示すが、トナー表面における化合物Aの耐ブリード性の観点から、炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。R3は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示すが、結晶性ポリエステルとの親和性の観点から、炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。EOはオキシエチレン基を示す。m及びnはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5、1≦m+n≦8の数であるが、4≦m+n≦8が好ましく、化合物Aのトナーからの耐揮発性の観点から、6≦m+n≦8がより好ましく、結晶性ポリエステルとの親和性及び耐揮発性の観点から、mとnはそれぞれ、3が好ましい。
1及びR2の炭素数が4以下で、R3の炭素数が3以下であると結着樹脂との相溶性が良好で、続く加熱処理工程においてもブリードが起こりにくい観点から好ましい。また、R3が不飽和結合を含まないと樹脂の弾性率が下がり好ましい。エチレンオキサイドの総付加モル数m+nは1以上、好ましくは6以上であると耐揮発性が良好で、加工時の揮発が小さく、良好な作業性が得られ、8以下であるとブリードが起こりにくい観点から好ましい。エチレンオキサイドの分布は、狭い方が好ましい。
化合物Aの平均分子量は、結晶性ポリエステルとの親和性、トナー表面における化合物Aの耐ブリード性及び化合物Aのトナーからの耐揮発性の観点から、250以上が好ましく、250〜700がより好ましく、300〜600がさらに好ましく、330〜500がよりさらに好ましい。
化合物Aの好ましい具体例として、マロン酸、コハク酸又はグルタル酸から選ばれる二塩基酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとのエステル等を挙げることができ、これらの中では、結晶性ポリエステルとの親和性及び化合物Aのトナーからの耐揮発性の観点から、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルがより好ましい。これらの化合物は単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。
化合物Aの製造方法は特に限定されず、例えば、パラトルエンスルホン酸一水和物、硫酸等の酸触媒や、ジブチル酸化スズ等の金属触媒の存在下、炭素数3〜5の飽和二塩基酸又はその無水物と、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとを直接反応させるか、炭素数3〜5の飽和二塩基酸の低級アルキルエステルとポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとをエステル交換することにより得られる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、飽和二塩基酸、及び触媒としてパラトルエンスルホン酸一水和物を、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル/飽和二塩基酸/パラトルエンスルホン酸一水和物(モル比)=2〜4/1/0.001〜0.05になるように反応容器に仕込み、トルエン等の溶媒の存在下又は非存在下に、常圧又は減圧下、温度100〜130℃で脱水を行うことにより化合物Aが得られる。溶媒を用いないで、減圧で反応を行う方法が好ましい。
また、3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキル(炭素数1〜10)エステルとしては、例えば、式(II):
Figure 0005361045
(式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基を示す)
で表される化合物が好ましい。式(II)で表される化合物は3価の芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルであるが、4価以上についても、置換基の数が異なるだけで同様の化合物が例示される。
3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキル(炭素数1〜10)エステルの市販品としては、式(IIa):
Figure 0005361045
(式中、R5は−n-C817又は−n-C1021を示す)
で表される3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルからなる「トリメックスN-08」(花王株式会社製、塩化ビニル樹脂用可塑剤、式(IIa)において、R5が−n-C817である化合物とR5が−n-C1021である化合物との混合物)、式(IIb):
Figure 0005361045
(式中、R6は−CH2-CH(C25)-C49を示す)
で表される3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキルエステルからなる「トリメックスT-08」(花王株式会社製、塩化ビニル樹脂用可塑剤)等が挙げられる。
化合物A及び3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキル(炭素数1〜10)エステルの融点は、結晶性ポリエステルとの親和性の観点から、-30〜20℃が好ましく、-20〜10℃がより好ましく、-10〜5℃がさらに好ましい。
化合物A及び/又は3価以上の芳香族多価カルボン酸のアルキル(炭素数1〜10)エステルの使用量は、結着樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部であり、好ましくは0.1〜4重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
本発明の製造方法の溶融混練工程においては、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂とを主成分として含有する結着樹脂を溶融混練する。また、本明細書において「主成分」とは、結着樹脂中の含有量が95重量%以上である成分のことをいう。
樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち軟化点/吸熱の最高ピーク温度で表わされ、一般にこの値が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満の時は結晶性が低く非晶部分が多い。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。本発明において、「結晶性樹脂」とは、軟化点/吸熱の最高ピーク温度の値が0.6〜1.4、好ましくは0.8〜1.2である樹脂をいい、「非晶質樹脂」とは、軟化点/吸熱の最高ピーク温度の値が1.4より大きいか、0.6未満、好ましくは1.4より大きい樹脂をいう。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。
本発明における結晶性ポリエステルは、α,ω−直鎖アルカンジオールと脂肪族ジカルボン酸化合物とを縮重合させて得られるものが好ましい。
α,ω−直鎖アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、なかでも1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中ではフマル酸が好ましい。なお、脂肪族ジカルボン化合物とは、前記の如く、脂肪族ジカルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステルを指すが、これらの中では、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
なお、本発明の結晶性ポリエステルにおける脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比(脂肪族ジカルボン酸化合物/α,ω−直鎖アルカンジオール)は、製造安定性の観点から、さらにα,ω−直鎖アルカンジオールが多い場合には、真空反応時に蒸発により樹脂の分子量を容易に調整できる観点から、0.9以上1.0未満が好ましく、0.95以上1.0未満がより好ましい。
α,ω−直鎖アルカンジオールと脂肪族ジカルボン酸化合物は、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒、重合禁止剤等を用いて、120〜230℃の温度で反応させること等により縮重合させることができる。具体的には、樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。
エステル化触媒の反応系における存在量は、α,ω−直鎖アルカンジオールと脂肪族ジカルボン酸化合物の総量100重量部に対して、0.03〜1重量部が好ましく、0.05〜0.8重量部がより好ましい。
結晶性ポリエステルの数平均分子量は、トナーの保存安定性及びトナー製造時の粉砕性等の生産性の観点から、5,000〜10,000が好ましく、6,000〜9,000がより好ましい。本明細書において、樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。数平均分子量を調整する方法として、例えば脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整する方法や、反応温度、触媒の量、減圧下で長時間脱水反応を行う等のエステル化の反応条件を調整する方法が挙げられる。具体的には、脂肪族ジカルボン酸化合物の割合を増加させたり、反応温度の上昇、触媒量の増加、脱水反応時間の延長等を行ったりすることにより数平均分子量を大きくすることができる。また、前記記載の逆にすると数平均分子量が小さくなる傾向がある。
また、トナーの耐久性の観点から、結晶性ポリエステルは高分子量成分をある程度含有しているのが好ましいことから、結晶性ポリエステルの重量平均分子量は、40,000〜150,000が好ましく、50,000〜120,000がより好ましい。重量平均分量を調整する方法は前述の数平均分子量の調整方法と同様な方法が挙げられる。
結晶性ポリエステルの示差走査熱量計における吸熱の最高ピーク温度は、トナーの定着性、保存性及び耐久性の観点から、110〜140℃、好ましくは110〜130℃、より好ましくは110〜120℃である。本明細書において、吸熱の最高ピーク温度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。吸熱の最高ピーク温度を調整する方法としては、例えば数平均分子量を調整する方法が挙げられ、数平均分子量を大きくすると吸熱の最高ピーク温度が大きくなる傾向があり、数平均分子量を小さくすると小さくなる傾向がある。
結晶性ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、70〜140℃が好ましく、90〜130℃がより好ましく、90〜120℃がさらに好ましい。本明細書において、軟化点は、後述の実施例に記載の方法により測定される。軟化点を調整する方法としては、例えば脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整する方法、反応温度、触媒の量、減圧下で長時間脱水反応を行う等のエステル化の反応条件を変更する方法が挙げられる。具体的には、脂肪族ジカルボン酸化合物の割合を増加させたり、反応温度の上昇、触媒量の増加、脱水反応時間の延長等を行ったりすることにより数平均分子量を大きくすることができる。また、前記記載の逆にすると小さくなる傾向がある。また、前述した通り、軟化点と吸熱最高ピーク温度の比を調整するには、脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整したり、反応温度を上げる、触媒量を増やす、減圧下、長時間脱水反応を行う等の反応条件を調整したりすることにより達成できる。
本発明における非晶質樹脂としては、例えば、非晶質ポリエステル、非晶質ポリエステルポリアミド、非晶質スチレン−アクリル樹脂等が挙げられるが、結晶性ポリエステルとの相溶性の観点から、非晶質ポリエステルが好ましい。
非晶質ポリエステルとしては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と芳香環を有する芳香族カルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるものが好ましい。
アルコール成分には、トナーの帯電性と耐久性の観点から、式(III):
Figure 0005361045
(式中、R7O及びOR7はオキシアルキレン基であり、R7はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、アルコール成分中、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%含有されている。なお、本明細書において、結着樹脂が2種以上の非晶質樹脂を含有する場合、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のアルコール成分中の含有量とは加重平均含有量を意味し、上記範囲内であることが望ましい。
式(III)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられる。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
カルボン酸成分には、フマル酸等の前記結晶性ポリエステルの原料に例示された脂肪族ジカルボン酸化合物や、芳香環を有する芳香族カルボン酸化合物を含むジカルボン酸化合物を用いることができるが、剛直な構造により溶融混練物の結晶化率を高く保持する観点から、芳香環を有する芳香族カルボン酸化合物をカルボン酸成分中、50モル%以上含有することが好ましく、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%含有される。なお、本明細書において、結着樹脂が2種以上の非晶質樹脂を含有する場合、芳香族カルボン酸化合物のカルボン酸成分中の含有量とは、加重平均含有量を意味し、上記範囲内であることが望ましい。
芳香族カルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸化合物、これらの酸の無水物、及びこれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等のカルボン酸化合物が挙げられる。これらのなかでは、環境安定性及び耐久性の観点から、テレフタル酸が好ましい。
芳香族カルボン酸化合物以外の他のカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、樹脂の分子量調整やトナーの耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
非晶質樹脂におけるアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度で行うことができるが、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、エステル化触媒、例えば、オクチル酸錫の存在下で行うことが好ましい。
エステル化触媒の反応系における存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部が好ましく、0.1〜0.8重量部がより好ましい。
また、本発明において、非晶質樹脂は、トナーの低温定着性及び耐オフセット性の観点から、軟化点が好ましくは10℃以上、より好ましくは10〜60℃異なる2種類の非晶質ポリエステルからなることが好ましい。低軟化点ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは80〜120℃、より好ましくは90〜120℃であり、高軟化点ポリエステルの軟化点は、耐オフセット性の観点から、好ましくは120〜150℃、より好ましくは120〜140℃である。なお、3種以上の樹脂からなる場合は、含有量が多い方から2種が上記を満たすことが好ましく、例えば、多い順における2番目と3番目が同じ含有量の時は1番多いものと2番目のどちらかが上記を満たすことが好ましい。
高軟化点ポリエステルと低軟化点ポリエステルとの重量比(高軟化点ポリエステル/低軟化点ポリエステル)は、1/9〜9/1が好ましく、2/8〜8/2がより好ましい。また、高軟化点ポリエステル/低軟化点ポリエステルは、トナーの耐久性をさらに向上させる場合は、8/2〜5/5が好ましく、トナーの低温定着性をさらに向上させる場合は、4/6〜2/8が好ましい。
非晶質樹脂が2種以上の非晶質ポリエステルからなる場合、トナーの低温定着性の観点から、平均軟化点は100〜140℃であることが好ましく、110〜130℃であることがより好ましい。本明細書において、平均軟化点とは加重平均軟化点のことをいい、各軟化点は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
非晶質樹脂のガラス転移点は、トナーの低温定着性と耐久性の観点から、40〜70℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。酸価は、5〜25mgKOH/gが好ましく、5〜20mgKOH/gがより好ましい。本明細書において、ガラス転移点及び酸価は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
なお、本発明において、非晶質樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
本発明において結着樹脂は、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を主成分として含有するが、結晶性ポリエステルの含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂中、1〜35重量%であり、5〜35重量%が好ましい。
非晶質樹脂の総含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂中、65〜99重量%が好ましく、65〜95重量%が好ましい。
結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の重量比(結晶性ポリエステル/非晶質樹脂)は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、5/95〜35/65が好ましい。
本発明における結着樹脂には、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂以外に、他の結着樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。他の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等のポリエステル以外の結着樹脂等が挙げられる。結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂の総含有量は、特に限定されないが、トナーの低温定着性の観点から、結着樹脂中、95重量%以上が好ましく、99重量%以上がより好ましい。
さらに、本発明における結着樹脂以外のトナー原料として、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が、適宜用いられていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾイエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナー、のいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、パラフィンワックス等の石油ワックス、アルコール系ワックス等のワックス、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステル系ワックスが挙げられ、これらのワックスは単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。離型剤の含有量は、定着性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれであってもよく、これらが併用されていてもよい。正帯電性荷電制御剤としては、二グロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等が挙げられる。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部が好ましく、0.2〜4.0重量部がより好ましい。
溶融混練においては、結着樹脂等のトナー原料を均一に混合した後、溶融混練することが好ましく、トナー原料の混合は、結着樹脂等の全ての原料を一度に混合する方法であっても、分割して混合する方法であってもよい。
トナー原料の混合に用いられる混合機としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等が挙げられるが、分散性の観点から、ヘンシェルミキサーが好ましい。
トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂に添加剤を効率よく高分散させることができることから、ロールの軸方向に沿って設けられた供給口と混練物排出口を備えた連続式オープンロール型混練機を用いることが好ましい。
トナー原料の混合物は、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよいが、操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
連続式オープンロール型混練機とは、溶融混練部がオープン型であるものをいい、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが望ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、分散性の観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが望ましい。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
高回転側ロールの原料投入側端部温度は100〜160℃が好ましく、低回転側ロールの原料投入側端部温度は35〜100℃が好ましい。
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点から、20〜60℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましく、30〜50℃であることがさらに好ましい。低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、離型剤分散性の観点から、0〜50℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/minであることが好ましく、4〜50m/minがより好ましい。低回転側ロールの周速度は1〜90m/minが好ましく、2〜60m/minがより好ましく、2〜50m/minがさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高めるために、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
かくして、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を含有する結着樹脂と前記可塑剤とを含むトナー原料の溶融混練物が得られる。
上記で得られた溶融混練物は、粉砕してトナーとする粉砕トナーや、溶媒に粒子として分散させて得られる重合トナーに用いることができるが、本発明は、加熱処理後にトナーを熱処理する工程の必要がなく、加熱処理で調整した結晶性ポリエステルの結晶化率が保持される点で、粉砕トナーの製造に用いることが好ましい。
粉砕トナーの一般的なトナーの製造方法では、得られた溶融混練物を粉砕可能な硬度に達するまで冷却し、粉砕工程に供するが、本発明では、溶融混練する工程後、得られた溶融混練物を加熱処理する工程に供してから、粉砕工程を行うことが好ましい。
本発明において、加熱処理する工程は、トナー添加剤の分散維持と結着樹脂分子の再配列性によるトナーの耐久性向上の観点から、50〜80℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは60〜70℃の温度で、0.5〜24時間、好ましくは1〜10時間、より好ましくは3〜8時間行うことが望ましい。なお、この時間は当該温度範囲内となる累計の時間である。また、トナー添加剤の分散維持と結着樹脂分子の再配列性の観点から、加熱処理する工程の開始から終了までに当該温度範囲の上限値を超えないことが好ましい。
本発明では、加熱処理する工程を、前記温度で、かつ前記時間行うことにより、溶融混練物中の樹脂の再配列を促し、また特定の可塑剤によって再配列がさらに促進され、結着樹脂中のポリエステルの結晶性が向上し、一旦低下したガラス転移点の回復によりトナーの耐久性が向上するものと推定される。さらに、結晶性ポリエステルが非晶質樹脂と相溶した部分、即ち低ガラス転移点の部分は、粉砕の際、衝撃を吸収しやすく、粉砕効率の低下の原因となるが、本発明では、粉砕工程前の加熱処理する工程において結晶性ポリエステルと非晶質樹脂との相溶が抑制されるため、粉砕性も向上させることができる。
加熱処理する工程には、オーブン等を用いることができる。例えば、オーブンを用いる場合、溶融混練物をオーブン内で、一定温度に保持することにより、加熱処理する工程を行うことができる。
加熱処理する工程を行う態様は特に限定されないが、例えば、
態様1:溶融混練する工程後、得られた溶融混練物を冷却する際に、溶融混練物を前記加熱処理条件下に保持し、次いで粉砕可能な硬度に達するまで冷却し、粉砕工程等の次の工程に供する態様
態様2:溶融混練する工程後、得られた溶融混練物を粉砕可能な硬度まで一旦冷却した後、冷却した溶融混練物を前記加熱処理する工程に供し、次いで溶融混練物を再び冷却し、粉砕工程等の次の工程に供する態様
がある。本発明ではいずれの態様で加熱処理する工程を行ってもよいが、トナー中の添加剤の分散性の観点から、溶融混練工程後、溶融混練物を冷却した後、加熱処理工程を行う方法が好ましく、従って態様2が好ましい。溶融混練後、溶融混練物を冷却する温度は、好ましくは45℃以下、より好ましくは0〜45℃、さらに好ましくは0〜35℃である(この温度は溶融混練物の表面温度である)。冷却方法としては、溶融混練物を室温(35℃以下)に放置する方法、溶融混練物を冷却ロールにかけ圧延する方法等が挙げられる。
結着樹脂中の結晶性ポリエステルの含有量が多くなるに従い、溶融混練物の結晶化率は増加する傾向にある。しかし、結晶性ポリエステル中にも結晶構造を有さない部分、即ち、溶融混練で結晶化しない部分が存在し、かかる部分が溶融混練物中に多く存在するとそれを用いたトナーの耐久性に劣る傾向がある。そこで、加熱処理する工程により溶融混練物全体における結晶化を促進し結晶化率を大きくすることでトナーの耐久性が向上すると考えられる。
かくして、溶融混練物の加熱処理物が得られるが、加熱処理する工程を経た後の溶融混練物の結晶化率Yは、トナーの耐久性の観点から、加熱処理前の溶融混練物の結晶化率よりも大きいことが好ましく、また、結晶性ポリエステルの結着樹脂中の含有量X(重量%)との間に以下の関係:
好ましくは、Y/X≧14/5(=2.8)、
より好ましくは、Y/X≧16/5(=3.2)、
さらに好ましくは、Y/X≧7/2(=3.5)
を満たすことが望ましい。ただしYの上限値は100である。なお、本明細書において「結晶化率」とは、後述の「結晶化率」の測定方法で定義される値であり、使用する結晶性ポリエステルの結晶部分の割合に対して、溶融混練物において結晶部分が占める割合のことを意味すると考えられる。
加熱処理する工程後に得られた加熱処理物は、粉砕トナーにおいては、粉砕可能な硬度まで冷却した後、粉砕工程及び分級工程に供する。
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、加熱処理する工程後の加熱処理物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ジェットミル、衝突板式ミル、回転型機械ミル等が挙げられる。
分級工程に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよい。
以上の工程によりトナーが得られるが、さらに得られたトナー表面に疎水性シリカ等の無機微粒子や樹脂微粒子を外添してもよい。
本発明により得られるトナーの体積中位粒径(D50)は、画質及び帯電性の観点から、4.5〜6.5μmが好ましく、5.5〜6μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
本発明により得られたトナーは、一成分現像用トナー及びキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーのいずれにも用いることができるが、耐熱性がより要求される一成分現像用トナーとしてより好適に用いられる。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度及び融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後昇温速度50℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後昇温速度50℃/分で測定する。吸熱の最高ピーク温度と軟化点との差が20℃以内のときは、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線と、該ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点として読み取る。吸熱の最高ピーク温度と軟化点との差が20℃を超えるときは、吸熱の最高ピーク温度より低い温度で観測されるピークの温度以下のベースラインの延長線と、該ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点として読み取る。
〔樹脂の平均分子量〕
以下の方法により得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布を示すチャートから、数平均分子量及び重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように樹脂をクロロホルム中に溶解する。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業社製、FP−200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶解液としてクロロホルムを毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレンを標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:CO−8010(東ソー社製)
分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー社製)
〔結晶化率〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料(約10mg)をそのまま1分間静止させ、その後昇温速度50℃/分で180℃まで測定する。次に、得られた熱曲線上の90〜120℃付近に現れる結晶融解に起因する吸熱ピークについて、該ピークの開始点温度以下のベースライン上の最もピークに近い点と該ピークの終点温度以上のベースライン上の最もピークに近い点とを結ぶ直線を引くことにより、ピーク面積を算出して、結晶融解に要する吸熱量とする。試料として、溶融混練物及びその原料の結晶性ポリエステルを用い、結晶性ポリエステルの結晶融解に要する吸熱量を求め、原料の結晶性ポリエステルの含有量(重量%)当たりの結晶融解に要する吸熱量を算出することにより、以下の式に従って、試料の結晶化率を算出する。
結晶化率(%)=溶融混練物の吸熱量/溶融混練物の原料の結晶性ポリエステルの含有量(重量%)当たりの吸熱量×100
〔化合物Aの平均分子量〕
JIS K0070に記載の方法で求めた鹸化価を用い、次式より計算で求めることができる。
平均分子量=56108×2/鹸化価
〔可塑剤の融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、室温から降温速度10℃/分で-50℃まで冷却した試料をそのまま1分間保持し、その後、モジュレート周期30秒、モジュレート振幅±1℃で150℃まで吸熱ピークを測定する。キネックス成分のノンリバースヒートフローに観測される吸熱ピークを可塑剤の融点とする。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させて分散液を得る。
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
結晶性ポリエステルの製造例1
表1に示す原料モノマー及びターシャルブチルカテコール(TBC)4.2g(α,ω−直鎖アルカンジオールと脂肪族ジカルボン酸化合物の総量100重量部に対して0.05重量部)を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した20リットル容の四つ口フラスコに入れ、160℃で5時間かけて反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。さらに、8.3kPaにて所望の分子量の樹脂が得られるまで反応させて、樹脂aを得た。
非晶質ポリエステルの製造例1
表1に示す原料モノマー及びオクチル酸錫18.6g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.2重量部)を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した20リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに210℃で、所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂Aを得た。
非晶質ポリエステルの製造例2
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びオクチル酸錫19.3g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.2重量部)を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した20リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに210℃にて表1に示す無水トリメリット酸を添加し、所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂Bを得た。
Figure 0005361045
可塑剤の製造例1
攪拌機、温度計、脱水管を備えた1Lフラスコにコハク酸75.2g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル251g、ジブチル酸化錫1.59gを仕込み、185℃で12時間反応させた。反応終了後、85%リン酸1.2gを加えて70℃で30分間加熱攪拌した後、キョワード600S(キョーワ化学工業(株)製)を添加して吸着処理を行い、加圧ろ過した。さらに、減圧で過剰のトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去した後、加圧ろ過を行い、平均分子量410、融点-1.45℃の化合物a(式(I)において、R1及びR2がメチル基、R3がエチレン基、m=n=3の化合物)を得た。
実施例1〜9及び比較例1〜5(実施例7〜9は参考例である)
樹脂a 10重量部、樹脂A60重量部及び樹脂B 30重量部[X=10重量%]、表2に示す可塑剤、カルナバワックス「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製)3.5重量部、パラフィンワックス「HNP-9」(日本精鑞社製)2.5重量部、正帯電性荷電制御剤「BONTRON P-51」(オリエント化学社製)0.06重量部、負帯電性荷電制御剤「E304」(オリエント化学社製)0.25重量部及び着色剤「ECB-301」(フタロシアニンブルー15:3,大日精化社製)4.5重量部を、予めヘンシェルミキサーを用いて混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
〔混練条件例:オープンロール〕
オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:140cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本ロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度9m/min、低回転側ロール(バックロール)周速度6m/min、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は4kg/時間、上記混練機中の平均滞留時間は約10分間であった。
上記で得られた溶融混練物を冷却ロールで圧延し、20℃以下に冷却した後、オーブン内にて、表2に示す温度、時間で加熱処理した。
加熱処理後の加熱処理物を30℃まで冷却後、粗粉砕した後、ジェットミル粉砕機及び気流分級機(IDS:日本ニューマチック社製)にて粉砕、分級を行い、体積中位粒径(D50)5.5μmのトナーを得た。
試験例1〔定着性〕
非磁性一成分現像装置「Oki Microline 5400」(沖データ社製)に表2のトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印字面積:4.1cm×13.0cm、付着量:0.45±0.03mg/cm2)。得られた未定着画像について、「Microline3010」(沖データ社製)の外部定着機(定着速度:300mm/sec)を用いて、90℃から240℃へ5℃ずつ順次定着温度を上昇させながら、600r/minで用紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製のJ紙)に定着させた。オフセットの発生を目視にて観察し、オフセットが発生しない温度領域を調べた。結果を表2に示す。画像のない部分にトナーが転写されている部分がある(高温オフセット)又は画像部分のトナーの定着がされていない部分ある(低温オフセット)場合に、オフセットが発生したと判断した。この温度範囲が広いほど定着可能範囲が広くなり、連続印刷時等での定着温度の変化の観点から望ましい。また、この温度範囲の最低温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。
試験例2〔耐久性〕
非磁性一成分現像装置「Oki Microline 5400」(沖データ社製)のIDカートリッジにトナーを実装し、70r/min(36ppm相当)で空回し運転を行い、現像ローラ表面のムラスジ発生を目視にて観察し、ムラスジが発生するまでの時間を測定した。結果を表2に示す。なお、ムラスジとは現像ローラ上に付着しているトナー量にばらつきが発生している状態のことをいい、ムラスジの発生により、印字の際に画像濃度に濃淡が発生することになる。
Figure 0005361045
比較例1〜5と対比して、実施例1〜9は定着性及び耐久性のいずれにも良好であることが分かる。比較例5は可塑剤の含有量が多いため結晶化率の向上は著しいがトナーの結着樹脂全体の可塑化が大きく生じ、高温側の耐オフセット性及び耐久性が低下した。
本発明により得られる静電荷像現像用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (6)

  1. 結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を主成分として含有する結着樹脂と、該結着樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部の式(I):
    1O(EO)m−COR3COO−(EO)n2 (I)
    (式中、R1及びR2は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、R3は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R1とR2は同一でも異なってもよい。EOはオキシエチレン基、m及びnはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5、かつ1≦m+n≦8の数である)
    で表される化合物Aとを溶融混練する工程、及び、該工程で得られた溶融混練物を50〜80℃の温度で0.5〜24時間行う、加熱処理する工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
  2. 溶融混練工程後、溶融混練物を45℃以下に冷却した後、加熱処理工程を行う、請求項1記載の製造方法。
  3. 化合物Aの平均分子量が250以上である、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 結着樹脂との溶融混練に供する式(I)で表される化合物Aの量が、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜3重量部である、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
  5. 溶融混練物の加熱処理温度が60〜70℃である、請求項1〜4いずれか記載の製造方法。
  6. 請求項1〜いずれか記載の製造方法により得られる静電荷像現像用トナー。
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