JP5426107B2 - 電子写真用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真用トナーに関する。
トナーに要求される主な特性として挙げられる低温定着性に対する試みとして、結着樹脂として結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有したトナーが多数検討されている。
特許文献1には、好ましくは結晶性ポリエステルと非結晶性ポリエステルとを含有するポリエステル系樹脂と、ポリオレフィン系ワックスと、両末端にアルキル基を有する脂肪酸アマイドとを含有するトナー用樹脂組成物であって、両末端にアルキル基を有する脂肪酸アマイドの含有量が、ポリオレフィン系ワックスの含有量よりも少ないことを特徴とするトナー用樹脂組成物を含有し、低温定着性、耐高温オフセット性及び耐ブロッキング性に優れ、良好な発色を行うことができるトナーが開示されている。
特許文献2には、結晶性ポリエステル、非晶質ポリエステル、着色剤及び広角X線回折の2Θが14〜26度の範囲にピークを有する結晶核剤を含有してなり、前記結晶核剤として、結晶核剤(A):融点が前記結晶性ポリエステルの融点以上、融点+100℃以下である脂肪酸アミド、結晶核剤(B):平均粒径が1〜200nmであるキナクリドン化合物、及び結晶核剤(C):前記結晶性ポリエステルの原料モノマーにおいて、アルコール成分中の含有量が20モル%以上のアルコールの少なくとも1種に対する溶解度が、50℃において0.2重量%以上であり、融点が前記結晶性ポリエステルの融点+5℃以上である化合物(ただし、脂肪酸アミド及びキナクリドン化合物は除く)からなる群より選択された少なくとも1種を含有し、低温定着性及び保存性のいずれにも優れたトナーが開示されている。
特許文献3には、結着樹脂として軟化点が90〜120℃のポリエステル樹脂、添加剤として脂肪酸アマイド及びシリコーンオイルを含有し、光沢、透明性、ブロッキング性が良好でシリコーンオイル等のオフセット防止液を供給しない加熱ローラー定着法でトナーを定着した際に、オフセット現象やシートの巻き付き現象を発生しない、定着温度幅が広く、良好な定着性を有し、画像濃度が高く、カブリ等の汚れが少ない、光沢や混色時の透明性が良好で、紙やオーバーヘッドプロジェクター用シートに転写した際の色再現性が良好なフルカラートナーが開示されている。
特開2006−220754号公報 特開2006−113473号公報 特開2000−29242号公報
しかしながら、結晶性ポリエステルを結着樹脂として含有すると、トナーの飽和帯電量が低下し、カブリが発生しやすく、トナーの導電性が増加した振る舞いを示す傾向にある。
本発明の課題は、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂とを含有する電子写真用トナーであって、帯電性に優れた電子写真用トナーを提供することにある。
本発明は、結着樹脂及びアミド化合物を含有してなる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂が結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を含有してなり、前記アミド化合物が、式(I):
1−CONH−X−NHCO−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数12〜22のヒドロキシアルキル基、Xは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基である)
で表される化合物である、電子写真用トナーに関する。
本発明の電子写真用トナーは、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂とを含有し、帯電性にも優れるという効果を奏するものである。
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂として結晶性ポリエステルと非晶質樹脂とを含有し、さらに、式(I):
1−CONH−X−NHCO−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数12〜22、好ましくは炭素数16〜20のヒドロキシアルキル基、Xは炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基又はフェニレン基である)
で表されるアミド化合物を含有するものである。式(I)で表されるアミド化合物は、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物であり、水酸基は炭素数12〜22のアルキル基の両末端に有していることが好ましい。かかるアミド化合物は、帯電量の飽和値は高いものの、帯電の立ち上がりが悪く、ゴーストの原因となりやすい。しかしながら、本発明では、結晶性ポリエステルと併用することにより、飽和帯電量の確保と帯電の立ち上がり性の両立が可能となり、ゴーストやカブリの発生も抑制される。アミド化合物により本発明の効果が奏される理由は不明なるも、水酸基を有するアミド化合物はブリードアウト等によりトナー表面に局在しやすい傾向があるため、トナー表面部分で行われた帯電の電荷が、結晶性ポリエステルの効果によりトナー内部に速やかに電荷が移行するため、トナー表面での帯電が連続的に行われ、帯電立ち上がり性と飽和帯電量の増加につながっているものと推測される。
式(I)で表されるアミド化合物としては、エチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。トナーの帯電性及び帯電の立ち上がり性の観点から、エチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アミド及びヘキサメチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アミドが好ましい。
式(I)で表されるアミド化合物の融点は、帯電立ち上がり性と飽和帯電量の観点から、100℃以上が好ましく、100℃〜220℃がより好ましく、120〜190℃がさらに好ましく、130〜180℃がよりさらに好ましい。
式(I)で表されるアミド化合物の含有量は、結晶性ポリエステル100重量部に対して、0.1〜60重量部が好ましく、0.5〜50重量部がより好ましく、2.5〜25重量部がさらに好ましい。
本発明のトナーは、結着樹脂として結晶性ポリエステルと非晶質樹脂とを含有する。
樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計における吸熱の最高ピーク温度との比、即ち〔軟化点/吸熱の最高ピーク温度〕によって表わされ、一般にこの値が1.5を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満の時は結晶性が低く非晶部分が多い。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。本発明において、「結晶性ポリエステル」とは、〔軟化点/吸熱の最高ピーク温度〕が0.6〜1.5、好ましくは0.8〜1.2であるポリエステルをいい、「非晶質樹脂」とは、〔軟化点/吸熱の最高ピーク温度〕が1.5より大きいか、0.6未満、好ましくは1.5より大きい樹脂をいう。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。
本発明における結晶性ポリエステルは、α,ω−直鎖アルカンジオールを含有したアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られたポリエステルであることが好ましい。
α,ω−直鎖アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、なかでも炭素数2〜8のジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
α,ω−直鎖アルカンジオールの含有量は、アルコール成分中、90〜100モル%が好ましく、95〜100モル%がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中では、炭素数2〜8のジカルボン酸化合物が好ましく、フマル酸がより好ましい。なお、脂肪族ジカルボン化合物とは、前記の如く、脂肪族ジカルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステルを指すが、これらの中では、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、90〜100モル%が好ましく、95〜100モル%がより好ましい。
なお、結晶性ポリエステルにおける脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比(脂肪族ジカルボン酸化合物/α,ω−直鎖アルカンジオール)は、製造安定性の観点から、さらにα,ω−直鎖アルカンジオールが多い場合には、真空反応時に蒸発により樹脂の分子量を容易に調整できる観点から、0.9以上1.0未満が好ましく、0.95以上1.0未満がより好ましい。
結晶性ポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒、重合禁止剤等を用いて、120〜230℃の温度で縮重合させること等により得られる。具体的には、樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。なお、結晶性の高いポリエステルを得るにはより高分子量化することが好ましく、反応液粘度が高くなるまで反応させるのがより好ましい。高分子量化した結晶性の高いポリエステルを得るためには、前記のように脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整したり、反応温度を上げる、触媒量を増やす、減圧下、長時間脱水反応を行う等の反応条件を選択すればよい。なお、高出力のモーターを用いて、高分子量化した結晶性の高いポリエステルを製造することもできるが、製造設備を特に選択せずに製造する際には、原料モノマーを非反応性低粘度樹脂や溶媒とともに反応させる方法も有効な手段である。
結晶性ポリエステルの数平均分子量は、トナーの保存性及び生産性の観点から、2,000〜10,000が好ましく、5,000〜10,000がより好ましく、6,000〜9,000がさらに好ましい。
また、トナーの耐久性の観点から、結晶性ポリエステルは高分子量成分をある程度含有しているのが好ましいことから、結晶性ポリエステルの重量平均分子量は、8,000〜150,000が好ましく、9,000〜150,000がより好ましく、30,000〜120,000がさらに好ましい。
結晶性ポリエステルの示差走査熱量計における吸熱の最高ピーク温度は、トナーの定着性、保存性及び耐久性の観点から、110〜140℃が好ましく、110〜130℃がより好ましく、110〜120℃がさらに好ましい。
結晶性ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、70〜140℃が好ましく、90〜130℃がより好ましく、90〜120℃がさらに好ましい。軟化点を調整する方法としては、例えば脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整する方法、反応温度、触媒の量、減圧下で長時間脱水反応を行う等のエステル化の反応条件を変更する方法が挙げられる。具体的には、脂肪族ジカルボン酸化合物の割合を増加させたり、反応温度の上昇、触媒量の増加、脱水反応時間の延長等を行ったりすることにより数平均分子量を大きくすることができる。また、前記記載の逆にすると小さくなる傾向がある。また、前述した通り、軟化点と吸熱最高ピーク温度の比を調整するには、脂肪族ジカルボン酸化合物とα,ω−直鎖アルカンジオールのモル比を調整したり、反応温度を上げる、触媒量を増やす、減圧下、長時間脱水反応を行う等の反応条件を調整したりすることにより達成できる。
本発明における非晶質樹脂は、好ましくは、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と芳香環を有する芳香族カルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるものであり、例えば、非晶質ポリエステルが例示される。
アルコール成分には、トナーの帯電性と耐久性の観点から、式(II):
Figure 0005426107
(式中、R3O及びOR3はオキシアルキレン基であり、R3はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、アルコール成分中、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%含有されている。なお、本明細書において、結着樹脂が2種以上の非晶質樹脂を含有する場合、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のアルコール成分中の含有量とは加重平均含有量を意味し、上記範囲内であることが望ましい。
式(II)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられる。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
カルボン酸成分には、フマル酸等の前記結晶性ポリエステルの原料に例示された脂肪族ジカルボン酸化合物や、芳香環を有する芳香族カルボン酸化合物を含むジカルボン酸化合物を用いることができるが、剛直な構造により溶融混練物の結晶化率を高く保持する観点から、芳香環を有する芳香族カルボン酸化合物をカルボン酸成分中、50モル%以上含有することが好ましく、70〜90モル%含有することがより好ましい。なお、本明細書において、結着樹脂が2種以上の非晶質樹脂を含有する場合、芳香族カルボン酸化合物のカルボン酸成分中の含有量とは、加重平均含有量を意味し、上記範囲内であることが望ましい。
芳香族カルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸化合物、これらの酸の無水物、及びこれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等のカルボン酸化合物が挙げられる。これらのなかでは、環境安定性及び耐久性の観点から、テレフタル酸が好ましい。
芳香族カルボン酸化合物以外の他のカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整や耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
非晶質樹脂におけるアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度で行うことができるが、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、エステル化触媒、例えば、オクチル酸錫の存在下で行うことが好ましい。
エステル化触媒の反応系における存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部が好ましく、0.1〜0.8重量部がより好ましい。
また、本発明において、非晶質樹脂は、トナーの低温定着性及び耐オフセット性の観点から、軟化点が好ましくは5℃以上、より好ましくは5〜60℃、さらに好ましくは10〜60℃異なる2種類の非晶質ポリエステルからなることが好ましい。低軟化点ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは80〜120℃、より好ましくは90〜120℃であり、高軟化点ポリエステルの軟化点は、耐オフセット性の観点から、好ましくは120〜150℃、より好ましくは120〜140℃である。なお、3種以上の樹脂からなる場合は、含有量が多い方から2種が上記を満たすことが好ましく、例えば、多い順における2番目と3番目が同じ含有量の時は1番多いものと2番目のどちらかが上記を満たすことが好ましい。
高軟化点ポリエステルと低軟化点ポリエステルとの重量比(高軟化点ポリエステル/低軟化点ポリエステル)は、1/9〜9/1が好ましく、2/8〜8/2がより好ましい。また、高軟化点ポリエステル/低軟化点ポリエステルは、トナーの耐久性をさらに向上させる場合は、8/2〜5/5が好ましく、トナーの低温定着性をさらに向上させる場合は、4/6〜2/8が好ましい。
非晶質樹脂が2種以上の非晶質ポリエステルからなる場合、トナーの低温定着性の観点から、平均軟化点は100〜140℃であることが好ましく、110〜130℃であることがより好ましい。本明細書において、平均軟化点とは加重平均軟化点のことをいい、各軟化点は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
非晶質樹脂のガラス転移点は、トナーの低温定着性と耐久性の観点から、40〜70℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。酸価は、5〜25mgKOH/gが好ましく、5〜20mgKOH/gがより好ましい。本明細書において、ガラス転移点及び酸価は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
なお、本発明において、非晶質樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
本発明において結着樹脂は、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂を主成分として含有するが、結晶性ポリエステルの含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂中、1〜35重量%が好ましく、5〜35重量%がより好ましく、15〜30重量%がさらに好ましい。
非晶質樹脂の総含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、結着樹脂中、65〜99重量%が好ましく、65〜95重量%が好ましく、70〜85重量%がより好ましい。
結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の重量比(結晶性ポリエステル/非晶質樹脂)は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、5/95〜35/65が好ましく、15/85〜30/70がより好ましい。
また、前記アミド化合物と結晶性ポリエステルとの重量比(アミド化合物/結晶性ポリエステル)は、トナーの帯電性と保存安定性の観点から、0.1/100〜60/100が好ましく、0.5/100〜50/100がより好ましく、2.5/100〜25/100がさらに好ましい。
前記アミド化合物と結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂の総量との重量比(アミド化合物/結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂の総量)は、トナーの帯電性と定着性の観点から、0.05/100〜25/100が好ましく、0.1/100〜20/100がより好ましく、0.5/100〜15/100がさらに好ましい。
本発明における結着樹脂には、結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂以外に、他の結着樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。他の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等のポリエステル以外の結着樹脂等が挙げられる。結晶性ポリエステル及び非晶質樹脂の総含有量は、特に限定されないが、トナーの低温定着性の観点から、結着樹脂中、95重量%以上が好ましく、99重量%以上がより好ましい。
さらに、本発明における結着樹脂以外のトナー原料として、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が、適宜用いられていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾイエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナー、フルカラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、パラフィンワックス等の石油ワックス、アルコール系ワックス等のワックス、カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステル系ワックスが挙げられ、これらのワックスは単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。離型剤の含有量は、定着性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれであってもよく、これらが併用されていてもよい。正帯電性荷電制御剤としては、二グロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等が挙げられる。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部が好ましく、0.2〜4.0重量部がより好ましい。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、アミド化合物、着色剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することが出来る。トナーの体積中位粒径(D50)は、2〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
トナー表面は、外添剤により表面処理されていてもよい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子等が挙げられ、これらの中では、埋め込み防止の観点から、比重の小さいシリカが好ましい。
シリカは、環境安定性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。疎水化の方法は特に限定されず、疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン、シリコーンオイル、メチルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。疎水化処理剤の処理量は、無機微粒子の表面積当たり1〜7mg/m2が好ましい。
外添剤の平均粒径は、帯電性及び感光体への傷防止の観点から、3〜300nmが好ましく、5〜100nmがより好ましい。
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
外添剤による表面処理工程は、外添剤とトナーとをヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機、V型ブレンダー等を用いる乾式混合法が好ましい。外添剤は、あらかじめ混合して高速攪拌機やV型ブレンダーに添加してもよく、また別々に添加してもよい。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができるが、本発明の効果は、特に、規制ブレード等と現像ローラーとの間隙を通過させることによって、トナーの帯電を行う非磁性一成分現像方式において顕著に発揮される。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出する温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度及び融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後昇温速度50℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、降温速度100℃/minで−10℃まで冷却した試料を3分間放置し、その後、昇温速度60℃/minで25℃まで昇温し2分間保持して、昇温速度10℃/minで測定を開始する。ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間の最大傾斜を示す接線との交点の温度を、ガラス転移点とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
〔樹脂の平均分子量〕
以下の方法により得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布を示すチャートから、数平均分子量及び重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように樹脂をテトラヒドロフラン中に溶解する。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業社製、FP-200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレンを標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:CO-8010(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
〔アミド化合物の融点〕
JIS K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求める。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
本明細書において、トナーの体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になるトナーの粒径を意味する。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5重量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個のトナー粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔外添剤の平均粒径〕
一次粒子の平均粒径を下記式より求める。
平均粒径(nm)=6/(ρ×比表面積(m2/g))×1000
式中、ρは外添剤の真比重であり、例えば、シリカの真比重は2.2である。比表面積は、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。疎水化処理された外添剤の場合は、疎水化処理前の原体の比表面積とする。なお、上記式は、粒子径Rの球と仮定して、
比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)3×真比重
S(表面積)=4π(R/2)2
から得られる式である。
樹脂製造例1
表1に示す原料モノマー及びオクチル酸錫(II)20g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.2重量部)を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに210℃で軟化点が115℃に達するまで反応させて、非晶質ポリエステル(樹脂A)を得た。
樹脂製造例2
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びオクチル酸錫19.3g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.2重量部)を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した20リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに210℃にて表1に示す無水トリメリット酸を添加し、所望の軟化点に達するまで反応させて、非晶質ポリエステル(樹脂B)を得た。
樹脂製造例3
表1に示す原料モノマー及びオクチル酸錫18.6g(アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して0.2重量部)を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した20リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに210℃で、所望の軟化点に達するまで反応させて、結晶性ポリエステル(樹脂C、D)を得た。
Figure 0005426107
実施例1〜8及び比較例1〜4(実施例1〜4、7、8は参考例である)
表2に示す結着樹脂100重量部及び添加剤、負帯電性荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1重量部、カルナバワックス「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製)6重量部及び着色剤「ECB-301」(フタロシアニンブルー(ピグメント・ブルー 15:3)、大日精化社製)4.5重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
得られた混合物を、オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:140cm、有効ロール長:80cm)を用いて溶融混練した。連続式二本ロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度9m/min、低回転側ロール(バックロール)周速度6m/min、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が125℃及び混練物排出側が100℃であり、低回転側ロールの原料投入側が75℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は10kg/時間、平均滞留時間は約10分間であった。なお、実施例2は、得られた混練物を冷却ロールで圧延し、20℃以下に冷却した後、60℃のオーブン内にて24時間保存した。
得られた混練物を冷却ロールで圧延し、20℃以下に冷却した後、粗粉砕した後、流動槽式粉砕機(AFG:アルパイン社製)及びローター式分級機(TTSP:アルパイン社製)にて粉砕、分級を行い、体積中位粒径(D50)が5.5μmのトナー粒子を得た。
トナー粒子100重量部に、疎水性シリカ「RY-50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒子径 40nm)1重量部及び疎水性シリカ「H3004」(ワッカー社製、疎水化処理剤:ヘキサメチレンジシラザン、平均粒子径8nm)1重量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて外添した。
試験例1〔帯電性〕
トナー1.0gとキャリア(日本画像学会標準キャリアN-01)19.0gを50ml容のポリプロピレン容器に投入し、蓋をしてボールミルを用いて250r/minで1分間混合し、混合されたデベロッパーをQ/m-meter(Epping社製)を用いて帯電量(μC/g)の測定を行う。その後、さらに9分間ボールミルで混合を行い、同様に帯電量の測定を行う。1分後の帯電量をX(μC/g)、10分後の帯電量をY(μC/g)とし、帯電の立ち上がり性の指標として、X/Y×100を算出した。結果を表2に示す。
試験例2〔カブリ〕
有機感光体(OPC)を備えた非磁性一成分現像装置「MicroLine 5400」(沖データ社製)に各実施例及び各比較例のトナーを実装し、25℃。50%RH環境下に12時間放置した後、白紙印字(印字率0%)を行った。その後、感光体ドラム上に残存しているトナーをメンディングテープに移し取り、リファレンスとの画像濃度差ΔEを色差計「X-Rite」(X-Rite社製)にて測定し、カブリ(初期カブリ)を評価した。なお、ΔEが1.5未満であれば、良好であることを示す。結果を表2に示す。
試験例3〔ゴースト〕
カブリ測定後、ベタ画像を印字してゴーストの発生を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。結果を表2に示す。
〔評価基準〕
A:ゴーストがなく、均一なベタ画像が得られている。
B:一見均一な画像だが、よく見ると紙送りの初めの部分にゴーストに起因する若干の濃度段差が見られる。
C:紙送りの初めの部分にゴーストに起因する若干の濃度段差が見られる。
D:紙送りの初めの部分にゴーストに起因するはっきりとした濃度段差が見られる。
Figure 0005426107
以上の結果から、実施例1〜8では、比較例1〜4と比べて、飽和帯電量が高く、帯電の立ち上がり性にも優れており、カブリ、ゴーストの発生も抑えられていることが分かる。
本発明の電子写真用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 結着樹脂及びアミド化合物を含有してなる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂がα,ω−直鎖アルカンジオールを含有したアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られた結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステルを含有してなり、前記アミド化合物が、式(I):
    1−CONH−X−NHCO−R2 (I)
    (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数12〜22のヒドロキシアルキル基、Xは炭素数2〜12のアルキレン基である)
    で表される化合物であり、該式(I)で表されるアミド化合物の含有量が、前記結晶性ポリエステル100重量部に対して、25〜60重量部である、電子写真用トナー。
  2. アミド化合物の融点が、100℃以上である、請求項1記載の電子写真用トナー。
  3. 結晶性ポリエステルの重量平均分子量が8,000〜150,000である、請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
  4. 結晶性ポリエステルの含有量が、結着樹脂中、1〜35重量%である、請求項1〜3いずれか記載の電子写真用トナー。
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