JP5624830B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、静電荷像現像用トナーに関する。
複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等の電子写真方式を利用した画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を均一に帯電させる帯電装置と、帯電された像担持体の表面を露光することによって、前記像担持体の表面に静電潜像を形成させる露光装置と、前記静電潜像が形成された像担持体の表面にトナーを供給することによって、前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、前記トナー像を構成するトナーを、前記像担持体から記録媒体へ転写する転写装置と、転写されたトナー像を加熱及び加圧することによって紙等の記録媒体に定着させる定着装置等を備える。このような画像形成装置は、上記各装置によって、上述したように、トナー像を記録媒体に転写し、その後、そのトナー像を記録媒体に定着させることによって、画像を記録媒体上に形成する。
また、画像形成装置としては、高速化や高画質化等の高性能化が求められている。このような高性能化の要求を満たすために、画像形成装置を改良するだけではなく、画像形成装置に用いられるトナーについても、高性能化が求められている。
特に、高速で画像を形成させても、トナー像を記録媒体に好適に定着でき、定着不良による画像の欠陥の発生が抑制される等の、定着性に優れたトナーが求められている。このためには、トナーとして好適に定着できる温度の幅が広いことや、低い定着温度でも、充分に定着できる低温定着性に優れていること等が求められている。
上述したような電子写真方式を利用した画像形成装置は、高画質な画像を形成するために、使用するトナーとして、様々なものが検討されている。例えば、トナーの定着性等を高めるために、トナーを構成する成分の物性やその組成比等を検討することが考えられる。具体的には、例えば、トナーの低温定着性を高めるためには、軟化点の低い結着樹脂を用いることが考えられる。そうすることによって、低温定着性を高められるものの、定着時にトナー像が定着装置を構成する定着ローラ等に付着するオフセット現象が発生しやすくなる傾向があった。このようなトナーは、現像装置内で保存されている際に比較的高温な環境にさらされると、トナーがかたまってしまうブロッキング現象も発生しやすくなる傾向があった。すなわち、トナーの耐熱保存性に優れたものではなかった。
また、電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられるトナーとしては、種々の画像濃度を達成するために、記録媒体上に転写させたトナー量を多くしても、好適に定着することができることが求められる。
また、上記低温定着性等を達成するために、トナーを構成する成分の物性やその組成比等を検討するだけではなく、さらに、トナーの、動的粘弾性等の熱力学特性を検討することも考えられる。具体的には、例えば、特許文献1〜3に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、高分子量樹脂組成物と低分子量樹脂組成物とを有する結着樹脂組成物及び着色剤を少なくとも含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該結着樹脂組成物及びこれを構成する高分子量樹脂組成物と低分子量樹脂組成物の各々の損失弾性率と貯蔵弾性率の比である損失正接が50〜150℃の範囲で極大となる温度及び極小となる温度が少なくともひとつ以上存在し、かつ、高分子量樹脂組成物、低分子量樹脂組成物、及び結着樹脂組成物の各損失正接が極大となる温度、前記各損失正接が極小となる温度が、所定の関係を満たす静電荷像現像用トナーが記載されている。
また、特許文献2には、結着樹脂100重量部、着色剤1乃至150重量部及び低軟化点物質5〜40重量部を少なくとも有する静電荷像現像用トナーであり、該トナーは、温度60℃における貯蔵弾性率と温度80℃における貯蔵弾性率との比が80以上であり、温度155℃における貯蔵弾性率と温度190℃における貯蔵弾性率との比が0.95乃至5である静電荷像現像用トナーが記載されている。
また、特許文献3には、結着樹脂(a)、着色剤及びワックスを少なくとも含有するトナー母粒子(A)の表面に、表面層(B)を有するカプセル型のトナー粒子を有するトナーであって、前記結着樹脂(a)はポリエステル樹脂(a1)を主成分とする樹脂であり、前記表面層(B)の量は、前記トナー母粒子(A)に対し、1.0質量%以上15.0質量%以下であり、前記トナーの粘弾性測定において、温度(T)に対する貯蔵弾性率G’(T)(dN/m)の常用対数LogG’((T)/(dN/m))をF(T)とした場合、温度50℃以上150℃以下の範囲において、温度に対する変化率dF(T)/dTの最小値をとる温度Toが温度60℃以上100℃以下の範囲に存在し、前記最小値が−0.15(℃−1)より小さいトナーが記載されている。
特開平8−278662号公報 特開平9−34163号公報 特開2008−268353号公報
特許文献1によれば、定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性、流動性のいずれの性能にも優れ、特に多量のコピーを連続して一度にとっても初期より最後の1枚まで良好な定着性を発揮することが開示されている。
また、特許文献2によれば、低温定着性がより向上し、幅広い温度域で一定のグロスを持った画像が得られ、且つ寒冷時においても電源投入直後から良好な定着性を示す高画質な画像を得ることができることが開示されている。
また、特許文献3によれば、帯電性、現像性、転写性、クリーニング性といった電子写真特性に求められる特性を満足できるトナーを提供することができることが開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載のトナーは、動的粘弾性等の熱力学特性を調整することによって、低温定着性を向上させることができたとしても、低温定着性等の定着性の向上と、ブロッキング現象の発生の抑制等の、トナーの耐熱保存性の向上とを両立できるものではなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、定着性及び耐熱保存性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明者等は、トナーの、動的粘弾性等の熱力学特性に基づく温度、示差走査熱量計等で測定される熱分析に基づく温度、及びフローテスタで測定される温度等に着目し、定着性を向上させ、さらに、耐熱保存性を向上させることができる条件を鋭意検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
本発明の一態様に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、離型剤及び着色剤を含有するトナー母粒子を含み、前記トナーの、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線が、前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度以上の温度域にショルダーを有し、前記ショルダーの温度をTsとし、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度をTfbとし、前記トナーの、フローテスタで測定した軟化点温度をTmとした場合、下記式(1)を満たし、前記Tfbが、70〜95℃であることを特徴とするものである。
Tfb < Ts <Tm (1)
このような構成によれば、定着性及び耐熱保存性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することができる。
このことは、以下のことによると考えられる。
まず、トナーの貯蔵弾性率が低いと、トナーは、紙等の記録媒体に対して、定着しやすくなると考えられる。そして、前記トナーの、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線が、ガラス転移温度より高い温度域にショルダーを有する。そして、トナーの温度が、このショルダーの温度Tsを超えると、トナーの貯蔵弾性率が急激に低下する。すなわち、前記ショルダーの温度Tsが、前記トナーの、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgより高いので、ゴム状態のトナーの貯蔵弾性率が、前記Tsを超えることでさらに急激に低下する。このような貯蔵弾性率が急激に低下したトナーは、紙等の記録媒体に対して、好適に定着できると考えられる。よって、トナーの温度が前記ショルダーの温度Tsを超えて、貯蔵弾性率が急激に低下すれば、好適に定着できると考えられるので、比較的低い定着温度でも、充分に定着できる低温定着性に優れ、定着が可能な温度幅が広くなると考えられる。すなわち、定着性を向上させることができると考えられる。
また、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfb及びフローテスタで測定した軟化点温度Tmは、前記トナーの軟化状態に依存すると考えられる。
トナーの温度が、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbを超えると、前記離型剤の溶融や前記結着樹脂のガラス転移等によって、トナーの軟化が開始されると考えられる。そして、前記ショルダーの温度Tsが、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbより高いので、トナーの軟化開始が、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下より起こりやすく、具体的には、例えば、トナーからの離型剤の染み出しや前記結着樹脂のガラス転移等が、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下より起こりやすいと考えられる。このことから、トナーが記録媒体に定着する際には、前記離型剤の染み出しや前記結着樹脂の軟化等が好適に行われることにより、トナーの流動性が定着に適したものとなり、定着性が高まると考えられる。そして、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbが、70〜95℃であるので、トナーが記録媒体に定着する際には、前記離型剤の染み出しや前記結着樹脂の軟化等が、定着に適したものとなると考えられる。
また、トナーの温度が、フローテスタで測定した軟化点温度Tmを超えると、トナーの流動性が高くなり、トナーの貯蔵弾性率の低下や離型剤の染み出し等が充分であれば、定着可能な軟化状態に近づくと考えられる。そして、前記ショルダーの温度Tsが、前記トナーの、フローテスタで測定した軟化点温度Tmより低いので、定着可能になると想定される温度に近づくと、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下が充分に起こっている。このことから、トナーの温度が、トナーの貯蔵弾性率の低下や離型剤の染み出し等が充分であれば、定着可能な状態になると想定される温度になった際には、前記離型剤の染み出しが好適に行われ、さらに、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下も起こっているので、好適に定着できると考えられる。
また、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が、前記ショルダーの温度Tsより低いので、トナーからの離型剤の染み出しが、トナーのガラス転移より起こりにくいと考えられる。このことから、ガラス状態のトナーからの、前記離型剤の染み出しの発生を抑制できると考えられる。よって、トナーの定着時以外の前記離型剤の染み出しによって、トナーがかたまってしまうブロッキング現象の発生を抑制できると考えられる。すなわち、トナーの耐熱保存性を向上させることができると考えられる。
以上のことから、得られた静電荷像現像用トナーは、定着性及び耐熱保存性に優れたものになると考えられる。
また、前記静電荷像現像用トナーにおいて、下記式(2)を満たすことが好ましい。
Tm − Tfb ≦ 30 (2)
このような構成によれば、定着性により優れた静電荷像現像用トナーを提供することができる。
このことは、以下のことによると考えられる。
定着時におけるトナーの軟化状態にむらが発生することを抑制できることによると考えられる。このことから、トナーの温度が、トナーの貯蔵弾性率の低下や離型剤の染み出し等が充分であれば、定着可能な状態になると想定される温度になった際には、前記離型剤の染み出しが好適に行われ、さらに、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下も起こっているというような関係を好適に満たすことができると考えられる。よって、定着性のより優れたものになると考えられる。
また、前記静電荷像現像用トナーにおいて、前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度をTgとした場合、下記式(3)を満たすことが好ましい。
Tfb − Tg ≧ 10 (3)
このような構成によれば、耐熱保存性により優れた静電荷像現像用トナーを提供することができる。
このことは、以下のことによると考えられる。
前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度Tgが、前記Tfbより10℃以上低いので、トナーからの離型剤の染み出しが、トナーのガラス転移より起こりにくいと考えられる。このことから、ガラス状態のトナーからの、前記離型剤の染み出しの発生を抑制できると考えられる。よって、トナーの定着時以外の前記離型剤の染み出しによって、トナーがかたまってしまうブロッキング現象の発生をより抑制できると考えられる。すなわち、トナーの耐熱保存性をより向上させることができると考えられる。
本発明によれば、定着性及び耐熱保存性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することができる。
トナーの貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線におけるショルダーについて説明するためのグラフである。 トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfb及び軟化点温度Tmについて説明するためのグラフである。 本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置の全体構成の一例を示す概略断面図である。 前記画像形成装置の像担持体及び現像装置周辺を拡大して示す概略断面図である。
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(単に「トナー」とも称する。)は、結着樹脂、離型剤及び着色剤を含有するトナー母粒子を含み、前記トナーの、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線が、前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度以上の温度域にショルダーを有し、前記ショルダーの温度をTsとし、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度をTfbとし、前記トナーの、フローテスタで測定した軟化点温度をTmとした場合、下記式(1)を満たし、前記Tfbが、70〜95℃であることを特徴とするものである。
Tfb < Ts <Tm (1)
このような静電荷像現像用トナーは、定着性及び耐熱保存性に優れている。
なお、定着性に優れているとは、記録媒体上に形成されたトナー像を定着ローラで定着させる際、定着ローラにトナー像のトナーが付着しにくく、トナー像が記録媒体に好適に定着することをいう。具体的には、比較的低い定着温度でも、好適に定着できる低温定着性に優れ、好適に定着できる温度幅が広いこと等をいう。
また、トナーの耐熱保存性に優れているとは、トナーを保存、例えば、現像装置内が比較的高温の状態で保存したときであっても、トナーに含まれる離型剤(ワックス)のブリードが少ない等のトナー変質が少ないことをいう。具体的には、現像装置内等で、トナーがかたまってしまうブロッキング現象が発生しない耐ブロッキング性に優れていること等が挙げられる。
また、静電荷像現像用トナーは、定着性に優れているので、定着時に、定着ローラにトナー像のトナーが付着しにくく、定着後の記録媒体が、定着ローラへ付着しにくいと考えられる。よって、静電荷像現像用トナーは、定着性及び耐熱保存性だけではなく、分離性にも優れていると考えられる。分離性に優れているとは、定着後の記録媒体が、定着ローラへ付着しにくく、前記記録媒体と前記定着ローラとが好適に分離すること、すなわち、定着ローラへの巻き付きによるジャムの発生が少ないことをいう。具体的には、例えば、記録媒体上に転写して載せるトナーの量が多くても、定着後の記録媒体の定着ローラへの巻き付きが発生しないこと等が挙げられる。
前記静電荷像現像用トナーが、定着性及び耐熱保存性に優れている理由は、以下のことによると考えられる。
まず、トナーの貯蔵弾性率が低いと、トナーは、紙等の記録媒体に対して、定着しやすくなると考えられる。そして、前記トナーの、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線が、ガラス転移温度より高い温度域にショルダーを有する。そして、トナーの温度が、このショルダーの温度Tsを超えると、トナーの貯蔵弾性率が急激に低下する。すなわち、前記ショルダーの温度Tsが、前記トナーの、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度Tgより高いので、ゴム状態のトナーの貯蔵弾性率が、前記Tsを超えることでさらに急激に低下する。このような貯蔵弾性率が急激に低下したトナーは、紙等の記録媒体に対して、好適に定着できると考えられる。よって、トナーの温度が前記ショルダーの温度Tsを超えて、貯蔵弾性率が急激に低下すれば、好適に定着できると考えられるので、比較的低い定着温度でも、充分に定着できる低温定着性に優れ、定着が可能な温度幅が広くなると考えられる。すなわち、定着性を向上させることができると考えられる。
また、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfb及びフローテスタで測定した軟化点温度Tmは、前記トナーの軟化状態に依存すると考えられる。
トナーの温度が、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbを超えると、前記離型剤の溶融や前記結着樹脂のガラス転移等によって、トナーの軟化が開始されると考えられる。そして、前記ショルダーの温度Tsが、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbより高いので、トナーの軟化開始が、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下より起こりやすく、具体的には、例えば、トナーからの離型剤の染み出しや前記結着樹脂のガラス転移等が、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下より起こりやすいと考えられる。このことから、トナーが記録媒体に定着する際には、前記離型剤の染み出しや前記結着樹脂の軟化等が好適に行われることにより、トナーの流動性が定着に適したものとなり、定着性が高まると考えられる。そして、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbが、70〜95℃であるので、トナーが記録媒体に定着する際には、前記離型剤の染み出しや前記結着樹脂の軟化等が、定着に適したものとなると考えられる。
また、トナーの温度が、フローテスタで測定した軟化点温度Tmを超えると、トナーの流動性が高くなり、トナーの貯蔵弾性率の低下や離型剤の染み出し等が充分であれば、定着可能な軟化状態に近づくと考えられる。そして、前記ショルダーの温度Tsが、前記トナーの、フローテスタで測定した軟化点温度Tmより低いので、定着可能になると想定される温度に近づくと、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下が充分に起こっている。このことから、トナーの温度が、トナーの貯蔵弾性率の低下や離型剤の染み出し等が充分であれば、定着可能な状態になると想定される温度になった際には、前記離型剤の染み出しが好適に行われ、さらに、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下も起こっているので、好適に定着できると考えられる。
一方、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbが、前記ショルダーの温度Tsより高い場合、すなわち、Ts<Tfb<Tmの場合、定着性が低下する傾向がある。特に、定着温度が高いときの定着性が低下する傾向がある。すなわち、定着が可能な温度幅において、高温側が狭くなる傾向がある。このことは、以下のことによると考えられる。まず、Ts<Tfb<Tmの場合、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbが高すぎるか、前記ショルダーの温度Tsが低すぎるかの少なくともいずれかであり、前記Tfbが、70〜95℃であることから、前記ショルダーの温度Tsが低すぎると考えられる。このことから、定着温度が高いときの定着性が低下する傾向があると考えられる。
また、前記トナーの、フローテスタで測定した軟化点温度Tmが、前記ショルダーの温度Tsより低い場合、すなわち、Tfb<Tm<Tsの場合、定着性が低下する傾向がある。特に、定着温度が低いときの定着性が低下する傾向がある。すなわち、定着が可能な温度幅において、低温側が狭くなる傾向がある。このことは、以下のことによると考えられる。まず、Tfb<Tm<Tsの場合、フローテスタで測定した軟化温度Tmが低すぎるか、前記ショルダーの温度Tsが高すぎるかの少なくともいずれかであり、前記Tfbが、70〜95℃であり、さらに、前記Tmは前記Tfbより高いことから、前記ショルダーの温度Tsが高すぎると考えられる。このことから、定着温度が低いときの定着性が低下する傾向があると考えられる。
また、前記Tfbが低すぎる場合、定着性が低下する傾向がある。特に、定着温度が高いときの定着性が低下する傾向がある。すなわち、定着が可能な温度幅において、高温側が狭くなる傾向がある。このことは、以下のことによると考えられる。まず、前記Tfbが低すぎる場合、前記Tmも低くなる傾向があると考えられる。そして、前記式(1)を満たすためには、前記ショルダーの温度Tsが低すぎることになると考えられる。このことから、定着温度が高いときの定着性が低下する傾向があると考えられる。
また、前記Tfbが高すぎる場合、定着性が低下する傾向がある。特に、定着温度が低いときの定着性が低下する傾向がある。すなわち、定着が可能な温度幅において、低温側が狭くなる傾向がある。このことは、以下のことによると考えられる。まず、前記Tfbが高すぎる場合、前記式(1)を満たすためには、前記ショルダーの温度Tsが高すぎることになると考えられる。このことから、定着温度が低いときの定着性が低下する傾向があると考えられる。
また、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度が、前記ショルダーの温度Tsより低いので、トナーからの離型剤の染み出しが、トナーのガラス転移より起こりにくいと考えられる。このことから、ガラス状態のトナーからの、前記離型剤の染み出しの発生を抑制できると考えられる。よって、トナーの定着時以外の前記離型剤の染み出しによって、トナーがかたまってしまうブロッキング現象の発生を抑制できると考えられる。すなわち、トナーの耐熱保存性を向上させることができると考えられる。
以上のことから、得られた静電荷像現像用トナーは、定着性及び耐熱保存性に優れたものになると考えられる。また、得られた静電荷像現像用トナーは、上述したように、定着性に優れるので、分離性にも優れると考えられる。
なお、前記ショルダーの温度Tsとは、図1に示すような、前記トナーの、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線のショルダーSの温度Ts、すなわち、前記温度依存性曲線の傾きが大きく変わる点の温度Tsである。具体的には、図1に示すように、前記温度依存性曲線の傾きが大きく変わる前の曲線の接線と、変わった後の曲線の接線との交点に対応した温度が温度Tsである。図1は、トナーの貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線におけるショルダーについて説明するためのグラフである。ここでの温度依存性曲線は、具体的には、動的粘弾性測定装置を用いて、静電荷像現像用トナーに、所定の周波数の振動を与え、所定の昇温速度で昇温させた際に得られる貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線である。具体的には、以下のように測定した貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線である。
まず、前記トナーをペレット化する。より具体的には、例えば、測定対象物であるトナー0.2gを秤量し、その秤量したトナーを、所定の形状の型に入れる。そして、プレス機を用いて、前記型に入れたトナーに対して、20MPaの圧力を加える。そうすることによって、直径10mm厚さ1mmの円柱状にペレット化されたトナーが得られる。
そして、動的粘弾性測定装置を用いて、そのペレット化されたトナーの貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線を測定する。具体的には、動的粘弾性測定装置に、そのペレット化されたトナーをセットし、前記トナーを所定の温度まで加熱させて、前記トナーを溶融させる。その後、所定の温度まで冷却させる。そして、所定の周波数の振動を与え、所定の昇温速度で、所定の測定終了温度まで加熱しながら、各温度における貯蔵弾性率G’を測定することにより、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線を作成する。
前記動的粘弾性測定装置としては、特に限定されず、一般的な動的粘弾性測定装置を用いることができる。具体的には、アントンパール社製の粘弾性測定装置(Physica MCR301)等が挙げられる。また、前記周波数としては、一般的な測定条件であれば、特に限定されないが、例えば、1Hz等が挙げられる。すなわち、前記温度依存性曲線としては、例えば、動的粘弾性測定装置を用いて、前記トナーに1Hzの振動周波数を与えた際に得られる貯蔵弾性率の温度依存性曲線等が挙げられる。また、前記昇温速度としては、一般的な測定条件であれば、特に限定されないが、例えば、2℃/分等が挙げられる。また、最初にトナーを溶融させる温度は、前記トナーが完全に溶融すれば、特に限定されないが、例えば、120℃等が挙げられる。そして、溶融後、貯蔵弾性率G’を測定する前のトナーの温度は、特に限定されないが、ガラス転移温度Tg等の存在を確認するためにも、Tg以下であることが好ましい。具体的には、例えば、45℃等が挙げられる。また、測定終了温度は、特に限定されないが、トナーの溶融まで確認することができる温度であることが好ましい。具体的には、例えば、200℃等が挙げられる。すなわち、測定温度幅が、45〜200℃であることが好ましい。
また、前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121−1987に準拠の方法で測定した温度である。具体的には、例えば、以下のようにして測定した値である。まず、測定試料である前記トナーを10mg秤量して、これをアルミニウムパンに入れる。一方、基準物質(レファレンス)であるアルミナをアルミニウムパンに入れる。そして、示差走査熱量計を用いて、測定試料と基準物質との間の熱量の差を計測する。この計測によって得られたチャートのガラス転移に相当する吸熱点の低温側の肩と高温側の肩との中間点の温度をガラス転移温度Tgとする。なお、示差走査熱量計は、特に限定されず、具体的には、示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製DSC−200)等が挙げられる。
また、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfb及びフローテスタで測定した軟化点温度Tmは、以下のようにして求められる値である。
まず、前記トナーをペレット化する。より具体的には、例えば、測定対象物であるトナー1.5gを秤量し、その秤量したトナーを、円柱状の孔が形成された型に入れる。その孔の中に、プランジャを挿入し、プランジャの上から加圧機によって、4MPaの圧力を加える。そうすることによって、円柱状にペレット化されたトナーが得られる。
そして、フローテスタを用いて、そのペレット化したトナーの流動特性を評価する。具体的には、ペレット化したトナーを、所定の昇温速度で昇温させ、その昇温によって溶融したトナーがノズルから流出できるような状態で、フローテスタに備えられるプランジャにより、所定の荷重をかける。より具体的には、得られたペレット化したトナーを、昇温速度4℃/分で昇温させ、その昇温によって溶融したトナーが、直径1mm長さ1mmのノズルから流出できるような状態で、フローテスタに備えられるプランジャにより、3MPaの荷重をかける。その際、図2に示すような、プランジャの降下量と温度との関係を示すグラフを作成する。図2に示すように、プランジャが降下し始めたときの温度を流出開始温度Tfbとする。また、図2に示すように、プランジャが完全に降下した降下量をhとした場合において、プランジャの降下量がhの半分(h/2)の時の温度を軟化点温度Tmとする。なお、図2は、トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfb及び軟化点温度Tmについて説明するためのグラフである。
また、前記フローテスタとしては、特に限定されず、一般的なフローテスタを用いることができる。具体的には、例えば、フローテスタ(株式会社島津製作所製のCFT−500D)等が挙げられる。
また、前記ショルダーの温度Tsは、上記式(1)を満たせば、特に限定されないが、90〜105℃であることが好ましい。
また、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbは、上記式(1)を満たせば、特に限定されないが、70〜95℃であることが好ましい。
また、前記トナーの、フローテスタで測定した軟化点温度Tmは、上記式(1)を満たせば、特に限定されないが、100〜130℃であることが好ましい。
また、前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfb及びフローテスタで測定した軟化点温度Tmは、上記式(1)を満たせば、特に限定されないが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
Tm − Tfb ≦ 30 (2)
上記式(1)を満たした上で、さらに、上記式(2)を満たすことによって、優れた耐熱保存性を維持したままで、定着性により優れたものとなる。
このことは、以下のことによると考えられる。
定着時におけるトナーの軟化状態にむらが発生することを抑制できることによると考えられる。このことから、トナーの温度が、トナーの貯蔵弾性率の低下や離型剤の染み出し等が充分であれば、定着可能な状態になると想定される温度になった際には、前記離型剤の染み出しが好適に行われ、さらに、トナーの貯蔵弾性率の急激な低下も起こっているというような関係を好適に満たすことができると考えられる。よって、定着性のより優れたものになると考えられる。また、前記Tmと前記Tfbとの差が小さすぎると、定着が可能な温度幅が狭くなる可能性がある。
また、前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度をTgとした場合、下記式(3)を満たすことが好ましい。
Tfb − Tg ≧ 10 (3)
上記式(1)を満たした上で、さらに、上記式(3)を満たすことによって、優れた定着性を維持したままで、耐熱保存性がより優れたものとなる。
このことは、以下のことによると考えられる。
前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度Tgが、前記Tfbより10℃以上低いので、トナーからの離型剤の染み出しが、トナーのガラス転移より起こりにくいと考えられる。このことから、ガラス状態のトナーからの、前記離型剤の染み出しの発生を抑制できると考えられる。よって、トナーの定着時以外の前記離型剤の染み出しによって、トナーがかたまってしまうブロッキング現象の発生をより抑制できると考えられる。すなわち、トナーの耐熱保存性をより向上させることができると考えられる。
また、前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度Tgは、特に限定されず、上記関係を満たすことが好ましいが、50〜60℃であることがより好ましい。前記ガラス転移温度Tgが低すぎると、トナーの耐熱保存性が低下する可能性がある。また、前記ガラス転移温度Tgが高すぎると、トナーの定着性に悪影響がでる可能性がある。
また、前記ショルダーの貯蔵弾性率G’sは、前記各温度が上記式(1)を満たせば、特に限定されないが、10〜10Paであることが好ましい。前記貯蔵弾性率G’sが低いと、紙等の記録媒体へ好適に定着できる定着可能な温度幅が広くなる。定着時において、紙等の記録媒体を狭持する圧力が高い条件では、前記貯蔵弾性率G’sが低すぎると、トナーの凝集力が不充分となり、耐オフセット性が低下する可能性がある。また、前記貯蔵弾性率G’sが高すぎると、紙等の記録媒体へ好適に定着できる定着可能な温度幅が狭くなる可能性がある。
前記静電荷像現像用トナーは、上記のような構成であれば、特に限定されない。具体的には、まず、前述したように、結着樹脂、離型剤及び着色剤を含有するトナー母粒子を含むものである。また、前記トナー母粒子としては、トナー母粒子として使用可能な形態のものであれば、特に限定されない。また、その粒子径としては、具体的には、例えば、体積平均粒子径で、4.5〜9μmであることが好ましい。
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、従来からトナー母粒子の結着樹脂として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等のポリスチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ビニルエーテル系樹脂;N−ビニル系樹脂等が挙げられる。この中でも、ポリエステル系樹脂が、比較的軟化点が低く、低温定着性に優れ、非オフセット温度範囲が広い点から好ましく用いられる。また、前記結着樹脂としては、上記各結着樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合又は共縮重合によって得られるもの等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のものが挙げられる。
前記アルコール成分としては、ポリエステル系樹脂を合成するためのアルコールとして使用可能なものであれば、特に限定されない。また、前記アルコール成分としては、分子内に水酸基が2個以上のアルコール(2価以上のアルコール)が含まれている必要がある。前記アルコール成分として用いられるもののうち、2価のアルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類等が挙げられる。また、前記アルコール成分として用いられるもののうち、3価以上のアルコールとしては、具体的には、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。また、前記アルコール成分としては、上記各成分を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記カルボン酸成分としては、ポリエステル系樹脂を合成するためのカルボン酸として使用可能なものであれば、特に限定されない。また、前記カルボン酸成分としては、カルボン酸だけではなく、カルボン酸の、酸無水物や低級アルキルエステル等も含まれる。そして、前記カルボン酸成分としては、カルボン酸の分子内に水酸基を2個以上有するカルボン酸(2価以上のカルボン酸)が含まれている必要がある。前記カルボン酸として用いられるもののうち、2価のカルボン酸としては、具体的には、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸等が挙げられる。アルキルコハク酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等が挙げられ、アルケニルコハク酸としては、例えば、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等が挙げられる。また、前記カルボン酸として用いられるもののうち、3価以上のカルボン酸としては、具体的には、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等が挙げられる。また、前記カルボン酸成分としては、上記各成分を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体でも、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。前記共重合モノマーとしては、p−クロロスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のオレフィン系炭化水素(アルケン);塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル等のアクリル酸エステル;メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。また、前記共重合モノマーとしては、上記各モノマーを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記結着樹脂としては、定着性の観点から、上記のような熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂のみである必要はなく、架橋剤や熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂に組み合わせて用いてもよい。このように結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、トナーの用紙への定着時における定着性の低下を抑制しつつ、耐オフセット性を向上させることができる。
前記熱硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、シアネート樹脂等のシアネート系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(離型剤)
前記離型剤(ワックス)としては、前記トナーの、動的粘弾性等の熱力学特性に基づく温度、示差走査熱量計等で測定される熱分析に基づく温度、及びフローテスタで測定される温度等が上記式(1)を満たすものであれば、特に限定なく用いることができる。また、前記離型剤としては、前記トナーの、示差走査熱量計で測定した最大吸熱ピーク温度Twが、60〜90℃となるようなものであることが好ましい。
前記離型剤としては、具体的には、例えば、従来からトナー母粒子の離型剤として用いられているもの等が挙げられる。より具体的には、例えば、カルナバワックスやサトウキビワックス、木ワックス等の植物性ワックス;蜜ワックスや昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックスなどの動物性ワックス;フィッシャートロプシュ(以下、「FT」と記すことがある)ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス等の合成炭化水素系ワックス等が挙げられる。これらの中でも、示差走査熱量計で測定した吸熱ピーク温度(DSC吸熱ピーク温度)が、60〜90℃であるワックスであることが好ましい。具体的には、合成エステルワックス(日油株式会社製のWEP−3、DSC吸熱ピーク温度:70℃)等が好ましく用いられる。
前記離型剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部添加することが好ましい。前記添加量が少なすぎる場合には、離型剤を添加したことによる効果が得られにくい可能性がある。また、前記添加量が多すぎる場合には、定着時以外の、トナーからの離型剤の染み出しを充分に抑制できず、トナーの耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
(着色剤)
前記着色剤としては、トナーとして所望の色になるように、公知の顔料や染料を用いることができる。具体的には、例えば、色に応じて、以下のような着色剤が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー180等が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。赤色顔料として、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド238等が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー顔料)等が挙げられる。緑色顔料としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等が挙げられる。白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。この中でも、例えば、以下の着色剤が好ましい。ブラックトナーの着色剤としては、カーボンブラックが好ましい。イエロートナーの着色剤としては、C.I.ピグメントイエロー180が好ましい。シアントナーの着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー顔料)が好ましい。そして、マゼンタトナーの着色剤としては、C.I.ピグメントレッド238が好ましい。
前記着色剤の含有量としては、着色剤の種類によっても異なるが、好適な画像濃度を達成するためにも、例えば、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、2〜5質量部であることがより好ましい。
(電荷制御剤)
前記トナー母粒子には、トナーの摩擦帯電性等の帯電性を制御するために、電荷制御剤を含有させることが一般的である。そして、トナーの帯電極性等に応じて、正電荷制御剤及び負電荷制御剤が必要に応じて組み合わせて用いられる。また、前記電荷制御剤としては、従来からトナー母粒子の電荷制御剤として用いられているものであれば、特に限定なく用いられる。
前記正電荷制御剤としては、具体的には、例えば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロールイド等の4級アンモニウム塩;分子内に4級アンモニウム塩を有する樹脂またはオリゴマー;分子内にカルボン酸塩を有する樹脂またはオリゴマー;分子内にカルボキシル基を有する樹脂またはオリゴマー等が挙げられる。
また、前記負電荷制御剤としては、具体的には、例えば、有機金属錯体、その塩、及びキレート化合物等が挙げられる。前記有機金属錯体、及びその塩としては、具体的には、例えば、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体、及びこれらの塩が挙げられる。また、前記キレート化合物としては、具体的には、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジ−ターシヤリーブチルサリチル酸クロム等が挙げられる。
また、前記電荷制御剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。前記電荷制御剤の含有量が少なすぎる場合、所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となり、形成画像にかぶりが発生しやすくなる可能性がある。また、前記電荷制御剤の含有量が多すぎる場合、トナーがチャージアップし易く形成画像の画像濃度の低下を招くことがある。
(添加剤)
前記静電荷像現像用トナーは、上述したように、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線がショルダーを有し、前記ショルダーの温度Tsが、上記式(1)を満たせば、特に限定されない。具体的には、例えば、前記静電荷像現像用トナーに含有される前記トナー母粒子に、前記結着樹脂、前記離型剤、及び前記着色剤以外の他の成分(添加剤)を含有させてもよい。前記添加剤としては、前記トナー母粒子に含有させることによって、上記構成のトナーが得られるものであれば、特に限定されず、具体的には、後述するような線形樹脂等が挙げられる。
(線形樹脂)
前記線形樹脂としては、上記構成のトナーが得られるものであれば、特に限定されない。前記線形樹脂とは、一般に長い直鎖状の主鎖とそれに結合した比較的短い側鎖とからなる構造を有する樹脂である。
前記線形樹脂を含有する場合には、以下のようになると考えられる。
前記ショルダーの温度Tsは、含有する線形樹脂の、示差走査熱量計で測定した最大吸熱ピーク温度(溶融温度)Tmに依存すると考えられる。そして、前記線形樹脂は、トナーを製造する際、例えば、トナー母粒子を構成する各成分を溶融混練する際に、前記結着樹脂に分散し、得られたトナーに分散した状態で結晶化すると考えられる。その結晶化した線形樹脂は、前記線形樹脂の溶融温度Tm付近までは、前記結着樹脂の分子鎖の自由運動を拘束し、前記結着樹脂の軟化を抑制する効果を発揮すると考えられる。このことにより、トナーがブロッキング現象を起こすことを抑制する等の耐熱保存性を向上させると考えられる。また、トナーの温度が前記線形樹脂の溶融温度Tmを超えると、前記線形樹脂の貯蔵弾性率が急激に低下するだけではなく、前記結着樹脂の軟化を抑制する効果も低下すると考えられる。よって、トナーの貯蔵弾性率が急激に低下し、トナーの定着性を向上させると考えられる。
また、前記線形樹脂としては、具体的には、例えば、線形ポリエステル樹脂等が挙げられる。前記線形ポリエステル樹脂は、例えば、主として、2価のアルコールと2価のカルボン酸との縮重合等によって得られるもの等が挙げられる。前記2価のアルコールとしては、特に限定されず、前記結着樹脂として用いられうるポリエステル系樹脂の原料として挙げた2価のアルコールと同様のものが挙げられる。また、前記2価のカルボン酸としては、特に限定されず、前記結着樹脂として用いられうるポリエステル系樹脂の原料として挙げた2価のカルボン酸と同様のものが挙げられる。
また、前記線形樹脂の含有量は、トナー母粒子を構成する各成分の種類等によっても異なるが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。前記線形樹脂の含有量が少なすぎると、前記線形樹脂が発揮する効果が充分に発揮できず、前記ショルダーを有するトナーが得られない可能性がある。また、前記線形樹脂の含有量が多すぎると、トナーの貯蔵弾性率G’が低下しすぎるため、所望の定着性能が得られない可能性がある。特に高温領域での貯蔵弾性率G’が低下するため、ホットオフセット性能が悪化するという可能性がある。
(製造方法)
また、前記トナー母粒子の製造方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、粉砕法や重合法等が挙げられる。前記粉砕法による前記トナー母粒子の製造方法としては、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、上記の、結着樹脂及び着色剤等のトナー母粒子を構成する各成分を混合機等で混合する。前記混合機としては、公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル、ハイブリダイゼーションシステム、コスモシステム等が挙げられる。この中でも、ヘンシェルミキサが好ましい。
次に、得られた混合物を混練機等で溶融混練する。前記混練機としては、公知のものを使用でき、例えば、2軸押出機等の押出機、三本ロールミル、ラボブラストミル等が挙げられ、押出機が好適に用いられる。また、溶融混練時の温度としては、前記結着樹脂の軟化点以上であって、前記結着樹脂の熱分解温度未満の温度であることが好ましい。
次に、得られた溶融混練物を冷却機で冷却して固形物とし、その固形物を粉砕機等で粉砕する。前記冷却機としては、公知のものを使用でき、例えば、ドラムフレーカ等が挙げられる。また、前記粉砕機としては、公知のものを使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機(ジェットミル)等の気流式粉砕機、ターボミル等の機械式粉砕機や衝撃式粉砕機等が挙げられ、ターボミルが好適に用いられる。
最後に、得られた粉砕物を分級機等で分級する。分級することによって、過粉砕物や粗粉を除去することができ、所望のトナー母粒子を得ることができる。前記分級機としては、公知のものを使用でき、例えば、エルボージェット分級機等の旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)等の風力分級機や遠心力分級機等が挙げられ、風力分級機が好適に用いられる。
<外添剤>
前記静電荷像現像用トナーは、上述したように、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線がショルダーを有し、前記ショルダーの温度Tsが、上記式(1)を満たしていればよく、例えば、前記トナー母粒子のみからなるものであってもよいし、前記トナー母粒子に外添剤を外添して得られるものであってもよい。すなわち、前記トナー母粒子に外添剤を外添して得られたトナーの場合、前記トナー母粒子に外添工程を施す。
前記外添工程としては、従来公知の外添工程であれば、限定なく用いることができる。具体的には、例えば、前記トナー母粒子に外添剤を添加し、攪拌機等で攪拌させることによって、前記トナー母粒子の表面に外添剤を付着又は固着させる工程である。
前記外添剤としては、トナーの外添剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、及びマグネタイト粒子等の金属酸化物粒子、ステアリン酸亜鉛粒子、ステアリン酸マグネシウム粒子、ステアリン酸カルシウム粒子等の金属石鹸粒子、樹脂粒子、及び前記金属酸化物粒子や前記金属石鹸粒子で表面処理された樹脂粒子等が挙げられる。この中でも、シリカ粒子が、流動性、帯電性、及び研磨性に優れる点から好ましい。また、前記外添剤としては、上記外添剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記外添剤の添加量は、前記トナー母粒子100質量部に対して、0.2〜3質量部であることが好ましい。
前記攪拌機としては、従来公知の攪拌機を限定なく使用できる。具体的には、例えば、タービン型攪拌機、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ等の一般的な攪拌機等が挙げられ、ヘンシェルミキサが好適に用いられる。
[現像剤]
前記静電荷像現像用トナーを含有する現像剤としては、前記静電荷像現像用トナーを含み、キャリアを含まない1成分現像剤であってもよいし、前記静電荷像現像用トナーとキャリアとを含む2成分現像剤であってもよいが、2成分現像剤が好適に用いられる。ここでは、2成分現像剤について説明する。すなわち、本実施形態に係る現像剤は、前記静電荷像現像用トナーとキャリアとを含むものである。
(キャリア)
前記キャリアとしては、現像剤のキャリアとして用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、フェライトキャリアや、キャリアコア材である磁性体粒子の表面を樹脂で被覆したもの等が挙げられる。キャリアコア材として、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属、これらの合金、希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライト等のソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物、これらの混合物等の磁性体材料を、焼結及びアトマイズ等を行うことによって製造した磁性体粒子が挙げられる。
上述のようにして得られたキャリアコア材の表面を被覆する表面コート剤として、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の結着樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。この中でも、帯電安定性及び耐久性に優れている点から、シリコーン樹脂が好ましい。また、表面コート剤は、上記各表面コート剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の結着樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂との混合物等が挙げられる。
前記キャリアの粒子径は、体積中心径で、20〜200μmの範囲内であることが好ましく、30〜150μmの範囲内であることがより好ましい。なお、ここでの体積中心径は、例えば、電子顕微鏡による測定、レーザ回折散乱法等による測定、及び一般的な粒度計等を用いた測定によって、計測することができる。キャリアの見掛け密度は、磁性材料を主体とする場合は磁性体の組成や表面構造等によっても相違するが、一般に3〜8g/cmの範囲内であることが好ましい。
前記電子写真用トナーとキャリアとを含む2成分現像剤中のトナー濃度は、1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。トナー濃度が低すぎると、画像濃度が薄くなりすぎる可能性がある。また、トナー濃度が高すぎると、現像装置内でトナー飛散が発生し、機内汚れや転写紙上の所望しない箇所にトナーが付着する不具合等が発生する可能性がある。よって、トナー濃度を上記範囲内にすることによって、高い画像濃度を得、さらに、現像装置内でトナー飛散が発生し、機内汚れや転写紙等の背景部分にトナーが付着する不具合を抑制することができる。
本実施形態に係る現像剤は、前記電子写真用トナーを前記キャリアと適切な割合で混合した2成分現像剤であり、例えば、後述の画像形成装置で使用することができる。
[画像形成装置]
前記静電荷像現像用トナーや前記電子写真用現像剤を用いる画像形成装置としては、電子写真方式の画像形成装置であれば、特に限定されない。その電子写真方式の画像形成装置の一例としては、例えば、後述するような、中間転写ドラムを備えたカラー画像形成装置等が挙げられる。なお、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置は、周面上にトナー像を形成させるための像担持体と、前記像担持体に対向して、複数配置され、それぞれが前記像担持体の周面に異なる色のトナーを供給して、各色に対応するトナー像を前記像担持体の周面上に形成させるための複数の現像装置と、前記像担持体に対向して配置され、前記各現像装置によって前記像担持体の周面上に形成された各色に対応するトナー像を順次転写することによって、その周面上に複数色のトナーからなるカラートナー像を形成させ、形成されたトナー像を記録媒体に転写する中間転写体とを備え、前記トナーとして、前記静電荷像現像用トナーを用いるものである。
図3は、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いる画像形成装置1の全体構成の一例を示す概略断面図である。前記画像形成装置1は、図1に示すように、後述する、感光体ドラム2、帯電装置3、露光装置4、複数の現像装置5、及び中間転写ドラム6等を備えた画像形成部、給紙部7、搬送ベルト8、定着部9、及び排紙部10等を備える。前記画像形成装置1は、まず、前記感光体ドラム2、前記帯電装置3、前記露光装置4、及び複数の現像装置5等からなる画像形成部によって、画像データ等に基づくトナー像が形成され、その形成されたトナー像を、前記給紙部7から給紙された用紙に対して、前記中間転写ドラム6を介して転写する。その後、トナー像が転写された用紙を、前記搬送ベルト8によって、前記定着部9に搬送し、前記定着部9によって、用紙に転写されたトナー像を用紙に定着させる定着処理を施す。最後に、前記定着部9で定着処理の施された用紙を、前記排紙部10に排紙する。そうすることによって、前記画像形成装置1は、画像データ等に基づく画像を形成するものである。
前記画像形成部は、電子写真方式によって用紙に所定のトナー像を形成するものであり、上述したように、感光体ドラム2、帯電装置3、露光装置4、複数の現像装置5、及び中間転写ドラム6等を備える。
前記感光体ドラム2は、その周面上に、複数色のトナーからなるトナー像を形成させるための像担持体である。前記感光体ドラム2としては、画像形成装置に備えられる感光体ドラムであれば、特に限定されないが、例えば、有機感光体(OPC)ドラムやアモルファス(a−Si)感光体ドラム等が挙げられる。
前記帯電装置3は、前記感光体ドラム2の周面を均一に帯電させるためのものである。前記帯電装置3としては、画像形成装置に備えられる帯電装置であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、帯電ローラを備え、その帯電ローラに所定の帯電バイアス電圧を印加することによって、感光体ドラムの周面を帯電させる接触帯電方式の帯電装置等が挙げられる。
前記露光装置4は、前記帯電装置3によって均一に帯電された感光体ドラム2の周面上に、画像データ等に基づくレーザ光又はLED光を照射し、感光体ドラム2の周面上に画像データに基づく静電潜像を形成させるためのものである。前記露光装置4としては、画像形成装置に備えられる露光装置であれば、特に限定されず、例えば、いわゆるレーザ走査ユニット等が挙げられる。
前記現像装置5は、静電潜像が形成された感光体ドラム2の周面上にトナーを供給することによって、前記静電潜像に基づくトナー像を形成する、すなわち、前記静電潜像に基づく現像を行うためのものである。また、前記現像装置5は、カラー画像を形成するために、複数配置され、それぞれが、前記感光体ドラム2の周面に対向して配置されている。それぞれの現像装置が、カラー画像を構成する複数の色のうちの一色に対応した現像装置である。具体的には、例えば、感光体ドラム2の回転方向上流側から、イエロートナーで現像するイエロー用現像装置5a、マゼンタトナーで現像するマゼンタ用現像装置5b、シアントナーで現像するシアン用現像装置5c、ブラックトナーで現像するブラック用現像装置5dを配置する。そして、各現像装置5(5a、5b、5c、5d)には、各色に対応した現像を行う現像装置本体51(51a、51b、51c、51d)と、各色に対応するトナーを収容するトナー容器50(50a、50b、50c、50d)と、前記トナー容器50に収容されたトナーを前記現像装置本体51に補給する補給ローラ52(52a、52b、52c、52d)とを備える。具体的には、イエロー用現像装置5aには、イエロー現像を行う現像装置本体51aと、イエロートナーを収容するトナー容器50aと、前記トナー容器50aに収容されたイエロートナーを前記現像装置本体51aに補給する補給ローラ52aとを備える。
また、前記現像装置5の現像装置本体51は、図4に示すような構成である。なお、図4は、前記画像形成装置1の感光体ドラム2及び現像装置5周辺を拡大して示す概略断面図である。ここでは、イエロー用現像装置5aの現像装置本体51aを例に挙げて説明するが、他の現像装置5の現像装置本体51も同様である。
前記現像装置本体51aは、現像ローラ53、現像剤規制部材54、第1のミキサ55、及び第2のミキサ59等を備える。前記現像ローラ53は、周面に現像剤を担持して搬送することにより、前記感光体ドラム2の周面に予め形成された静電潜像をトナー像として顕像化(現像)するためのものである。また、前記現像ローラ53は、内部に位置固定された磁石が配置されており、この磁石の磁力により、その周面に現像剤を担持することができる。また、前記現像剤規制部材54は、内部に磁石を配置して磁気シールドを形成し、現像するときのみ、前記現像ローラ53の、感光体ドラム2側に対向した位置に現像剤を移行させるように構成されたものである。第1のミキサ55及び第2のミキサ59は、前記補給ローラ52aから補給されたイエロートナーを前記現像ローラ53に搬送しながら、キャリアとともに攪拌し、イエロートナーを帯電させるためのものである。前記現像装置本体51aは、前記第1のミキサ55及び前記第2のミキサ59によって、帯電されたイエロートナーを含む現像剤を前記現像ローラ53に搬送する。そして、搬送された現像剤を前記現像剤規制部材54で搬送タイミングを規制されながら、現像ローラ53によって、イエロー現像させる。
前記中間転写ドラム6は、所定のバイアス電圧を印加することによって、その周面上に、前記感光体ドラム2上に現像させたトナー像を転写(1次転写)させる。そして、この1次転写を各トナーに対して繰り返すことによって、前記中間転写ドラム6の周面上に色重ねを行う。すなわち、前記各現像装置5によって形成された各色に対応するトナー像を順次重ね合わせて、複数色のトナーからなるトナー像を形成させる。よって、前記中間転写ドラム6は、その周面上に、複数色のトナーからなるトナー像を形成させるためのものである。その後、前記中間転写ドラム6に対向して設けられる2次転写ローラ6aに所定のバイアス電圧を印加することによって、前記中間転写ドラム6の周面上に形成された複数色のトナーからなるトナー像を記録媒体に転写(2次転写)させる。また、前記中間転写ドラム6に対向して設けられるクリーニングローラ6bによって、2次転写で未転写となったトナーを前記中間転写ドラム6から除去する。また、前記2次転写ローラ6a及び前記クリーニングローラ6bは、各色が完全に重ねられるまで中間転写ドラム6から退避できる、不図示の退避機能が設けられている。なお、前記画像形成装置1は、前記感光体ドラム2に対向して設けられるクリーニング装置31によって、1次転写で未転写となったトナーを前記感光体ドラム2から除去する。
また、前記給紙部7は、給紙カセット7a、及び給紙ローラ70等を備えている。前記給紙カセット7aは、前記画像形成装置1の図3に示す下側に、前記画像形成装置1から挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙を貯留する。前記給紙ローラ70は、前記給紙カセット7aに貯留されている用紙を1枚ずつ送り出す。また、前記画像形成装置1は、レジストローラ対60によって、前記給紙ローラ70によって送り出された用紙を一時待機させた後、所定のタイミングで前記画像形成部に供給する。具体的には、前記中間転写ドラム6と2次転写ローラ6aとの間の2次転写ニップに供給する。また、前記給紙部7は、前記画像形成装置1の図3に示す右側面に取り付けられる手差しトレイ7bをさらに備えている。この手差しトレイ7bから、一枚ずつ用紙をレジストローラ対60に送り出してもよい。
前記搬送ベルト8は、画像形成部でトナー像が転写された用紙、すなわち、2次転写を受けた用紙を定着部9に搬送するためのものである。
前記定着部9は、画像形成部でトナー像が転写された用紙、すなわち、2次転写された用紙を、加熱ローラと加圧ローラとからなる1対のローラによって挟み込んで、加熱及び加圧することによって、用紙上にトナー像を定着させるものである。
前記排紙部10は、前記定着部9によって定着処理が施された用紙の印字面を上にして排紙するフェイスアップトレイ10aと、印字面を下にして排紙するフェイスダウントレイ10bと備えている。
前記画像形成装置1は、以上のような画像形成動作によって、用紙上に画像形成を行う。そして、このような画像形成装置では、前記静電荷像現像用トナーを用いるので、高画質な画像を形成することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
[静電荷像現像用トナー]
まず、静電荷像現像用トナーの製造に用いる線形樹脂(線形ポリエステル樹脂)の合成方法について説明する。
(線形樹脂:線形ポリエステル樹脂Aの合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を備えた四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール132質量部(1.12モル部)と、1,10−デカンジカルボン酸230質量部(1.0モル部)と、縮合触媒としての酸化ジブチル錫1質量部及びハイドロキノン0.3質量部とを入れ、窒素雰囲気下、200℃、常圧下で、水を留去しながら、5時間攪拌させた。そうすることによって、1,6−ヘキサンジオールと1,10−デカンジカルボン酸とを反応させた。その後、5〜20mmHg(約666.6〜2666.4Pa)に減圧させた状態で攪拌することによって、前記反応を継続させた。その際、反応の継続時間(攪拌時間)が、得られた樹脂の、DSCで測定した最大吸熱ピーク温度(溶融温度)Tmが所望の温度になるように調整した。その後、前記反応によって得られた液体から、未反応分を減圧留去し、洗浄し、乾燥させた。そうすることによって、線形樹脂が得られた。なお、前記反応によって得られた線形樹脂を、線形ポリエステル樹脂Aとした。
得られた線形ポリエステル樹脂Aの、示差走査熱量計で測定した最大吸熱ピーク温度(溶融温度)Tmは、83℃であった。
また、前記線形樹脂の、示差走査熱量計で測定した最大吸熱ピーク温度(溶融温度)Tmは、JIS K 7121−1987に準拠の方法で測定した温度である。具体的には、まず、測定試料である前記線形樹脂を10mg秤量して、これをアルミニウムパンに入れる。一方、基準物質(レファレンス)であるアルミナをアルミニウムパンに入れる。そして、示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製DSC−200)を用いて、昇温速度30℃/分で常温から200℃まで昇温させた後に、降温速度10℃/分で常温まで冷却させ、さらに、昇温速度10℃/分で常温から200℃まで昇温させる。その2度目の昇温の際の、測定試料と基準物質との間の熱量の差を計測する。この計測によって得られたチャートの、最大吸熱ピークの頂点温度を最大吸熱ピーク温度Tmとする。
(線形樹脂:線形ポリエステル樹脂Bの合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を備えた四つ口フラスコに、1,4−ブタンジオール132質量部(1.12モル部)と、1,10−デカンジカルボン酸230質量部(1.0モル部)と、縮合触媒としての酸化ジブチル錫1質量部及びハイドロキノン0.3質量部とを入れ、窒素雰囲気下、200℃、常圧下で、水を留去しながら、5時間攪拌させた。そうすることによって、1,4−ブタンジオールと1,10−デカンジカルボン酸とを反応させた。その後、5〜20mmHg(約666.6〜2666.4Pa)に減圧させた状態で攪拌することによって、前記反応を継続させた。その際、反応の継続時間(攪拌時間)が、得られた樹脂の、DSCで測定した最大吸熱ピーク温度(溶融温度)Tmが所望の温度になるように調整した。その後、前記反応によって得られた液体から、未反応分を減圧留去し、洗浄し、乾燥させた。そうすることによって、線形樹脂が得られた。なお、前記反応によって得られた線形樹脂を、線形ポリエステル樹脂Bとした。
得られた線形ポリエステル樹脂Bの、示差走査熱量計で測定した最大吸熱ピーク温度(溶融温度)Tmは、95℃であった。なお、前記Tmは、上述と同様の方法により得られた値である。
次に、静電荷像現像用トナーの製造に用いる結着樹脂(ポリエステル樹脂)の合成方法について説明する。なお、結着樹脂として合成するポリエステル樹脂は、上記線形ポリエステル樹脂と異なり、分岐を有するものである。
(結着樹脂:ポリエステル樹脂の合成)
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1960gと、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物780gと、ドデセニル無水コハク酸257gと、テレフタル酸770gとからなる原料モノマーを、酸化ジブチル錫4gとともに反応容器に入れ、窒素雰囲気下、所定温度で8時間、攪拌した。さらに、8.3kPaの条件で1時間、攪拌した。その後、180℃で、得られるポリエステル樹脂の酸価が所望の値になるように、無水トリメリット酸を前記反応容器内に添加し、10℃/時の昇温速度で210℃まで昇温させながら、攪拌した。そうすることによって、ポリエステル樹脂が得られた。この得られたポリエステル樹脂を結着樹脂として用いた。
なお、反応時の温度を調整することによって、得られたポリエステル樹脂の、示差走査熱量計で測定した最大吸熱ピーク温度(溶融温度)Tmが、120℃のもの(結着樹脂A)、110℃のもの(結着樹脂B)、135℃のもの(結着樹脂C)、105℃のもの(結着樹脂D)、及び145℃のもの(結着樹脂E)をそれぞれ調製した。
[実施例1]
(トナーの製造)
まず、結着樹脂として、上記結着樹脂A100質量部、着色剤として、カーボンブラック(三菱化学株式会社製のMA−100)5質量部、離型剤として、合成エステルワックス(日油株式会社製のWEP−3、DSC吸熱ピーク温度:70℃)2.5質量部、電荷制御剤として、4級アンモニウム塩化合物(オリエント化学工業株式会社製のボントロンP−51)5質量部、前記線形ポリエステル樹脂A10質量部を、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製の20B)を用いて、回転数2500rpmの条件で、5分間混合した。その後、得られた混合物を2軸押出機(株式会社池貝製のPCM−30)を用いて、回転数200rpm、シリンダ温度120℃、投入量6kg/時の条件で溶融混練した。そして、得られた溶融混練物を、ドラムフレーカ(日本コークス工業株式会社製)を用いて、板厚約2mmになるように冷却した。そして、冷却された混練物を、ターボミル(ターボ工業株式会社製のT−250型)で粉砕し、エルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製のEJ−L−3)で分級処理した。そうすることによって、体積平均粒子径8μmのトナー母粒子が得られた。なお、トナー母粒子の体積平均粒子径は、粒度計(ベックマンコールター株式会社製のマルチサイザー3)によって、測定した。
次に、得られたトナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製のRA200)1質量部、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製のNA50H)0.8質量部を添加し、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製の20B型)を用いて、回転数2000rpm、ジャケット制御温度25℃の条件で、2分間混合した。そうすることによって、トナー(外添剤が外添されたトナー母粒子)が得られた。
得られたトナーの、ショルダーの温度Tsは、90℃であった。また、得られたトナーの、トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度Tfb及びフローテスタで測定した軟化点温度Tmは、それぞれ85℃、109℃であった。また、得られたトナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度Tgは、55.1℃であった。よって、前記Tsが前記Tg以上であり、Tfb<Ts<Tmであり、さらに、前記Tfbが70〜95℃の範囲内であった。
なお、前記ショルダーの温度Tsは、以下のようにして求めた値である。
まず、測定対象物であるトナー0.2gを秤量し、その秤量したトナーを、所定の形状の型に入れる。そして、プレス機を用いて、前記型に入れたトナーに対して、20MPaの圧力を加えた。そうすることによって、直径10mm厚さ1mmの円柱状にペレット化されたトナーが得られた。
そして、動的粘弾性測定装置であるアントンパール社製の粘弾性測定装置(Physica MCR301)に、そのペレット化されたトナーをセットし、前記トナーを120℃まで加熱させて、前記トナーを溶融させた後、45℃まで冷却させた。そして、その冷却したトナーに印加する振動の周波数を1Hzとし、昇温速度2℃/分、測定温度幅40〜200℃の条件で、各温度における測定対象物であるトナーの貯蔵弾性率G’を測定した。その測定により得られた前記トナーの、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線のショルダーの温度を、上記Tsとした。なお、ショルダーの温度Tsは、前記温度依存性曲線の傾きが大きく変わる前の曲線の接線と、変わった後の曲線の接線との交点の温度とした。
また、フローテスタで測定した流出開始温度Tfbとフローテスタで測定した軟化点温度Tmは、以下のようにして求めた値である。まず、測定対象物であるトナー1.5gを秤量し、その秤量したトナーを、円柱状の孔が形成された型に入れた。その孔の中に、プランジャを挿入し、プランジャの上から加圧機によって、4MPaの圧力を加えた。そうすることによって、円柱状にペレット化されたトナーが得られた。そして、フローテスタ(株式会社島津製作所製のCFT−500D)を用いて、そのペレット化したトナーの流動特性を評価した。具体的には、ペレット化したトナーを、昇温速度4℃/分で昇温させ、その昇温によって溶融したトナーが、直径1mm長さ1mmのノズルから流出できるような状態で、フローテスタに備えられるプランジャにより、3MPaの荷重をかけた。その際、図2に示すような、プランジャの降下量と温度との関係を示すグラフを作成した。図2に示すように、プランジャが降下し始めたときの温度を流出開始温度Tfbとした。また、図2に示すように、プランジャが完全に降下した降下量をhとした場合において、プランジャの降下量がhの半分(h/2)の時の温度を軟化点温度Tmとした。
また、前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度Tgは、JIS K 7121−1987に準拠の方法で測定した温度である。具体的には、まず、測定試料である前記トナーを10mg秤量して、これをアルミニウムパンに入れる。一方、基準物質(レファレンス)であるアルミナをアルミニウムパンに入れる。そして、示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製DSC−200)を用いて、昇温速度10℃/分で常温から200℃まで昇温させた後に、降温速度10℃/分で常温まで冷却させ、さらに、昇温速度10℃/分で常温から200℃まで昇温させる。その2度目の昇温の際の、測定試料と基準物質との間の熱量の差を計測する。この計測によって得られたチャートの、ガラス転移に相当する吸熱点の低温側の肩と高温側の肩との中間点の温度をガラス転移温度Tgとする。
(実施例2〜4、及び比較例1〜5)
実施例2〜4、及び比較例1〜5は、結着樹脂及び線形樹脂として、表1に示すものを用い、その含有量を表1に示す含有量に変更したこと以外、実施例1と同様にして、静電荷像現像用トナーを製造した。また、実施例2〜4、及び比較例1〜5に係るトナー温度特性(Tfb、Ts、Tm、Tg)は、実施例1と同様の方法により測定し、表1に示す。また、線形樹脂の欄の「−」は、線形樹脂を含有していないことを示す。すなわち、比較例5に係る静電荷像現像用トナーは、線形樹脂を含有していないものである。また、Tsの欄の「−」は、ショルダーが確認できないことを示す。
Figure 0005624830
[評価]
得られたトナー及び現像剤については、以下のような方法で評価した。
(定着性)
まず、京セラミタ株式会社製のカラー複合機(KM−C850)を評価機として用いた。そして、得られた各トナーを補給用トナー及び現像剤の作成に用いた。補給用トナーは、トナー容器50に収容され、現像装置本体51内のトナーが現像に用いて消費され、現像装置内の現像剤のトナー濃度(T/C)が規定値以下になった場合に、トナー容器50に収容されたトナーを現像装置本体51に補給するために用いられる。また、トナー濃度(T/C)が5%となるようにキャリアとトナーを混合した現像剤を作成する。なお、この現像剤は、現像装置本体51に収容される。このような条件で、温度20〜23℃、相対湿度50〜65%RHの、常温常湿環境下で画像形成して、下記の評価を行った。なお、キャリアとしては、KM−C850に用いられているキャリアをそのまま用いた。そして、前記評価機を用いて、画像濃度1.3以上のソリッド画像部を形成させた。その際、定着温度としては、120〜200℃の間で、5℃の間隔で複数振って設定し、定着温度の異なる前記ソリッド画像部が形成された用紙を複数用意した。
そして、種々の温度で定着させた画像の定着性を以下のように評価した。
具体的には、まず、得られたソリッド画像部の画像濃度を、反射濃度計(Gretag Macbeth社製のRD−19A:SpectroEyeLT)を用いて測定した。その後、画像を定着させた用紙の、画像を定着させた面上に、500gの分銅を載置し、その分銅の自重を前記用紙にかけたまま、前記ソリッド画像部上をその分銅を5往復擦る、こすり試験を行った。前記こすり試験後の画像の画像濃度を前記と同様の方法で測定した。得られた各画像濃度から、下記式(I)に従って、定着率を算出した。
定着率(%) = (こすり試験後の画像濃度) / (こすり試験前の画像濃度) × 100 (I)
一方、オフセット現象が発生しているか否かを目視で確認した。具体的には、前記ソリッド画像部から用紙の搬送方向下流側に定着ローラ1周分後の用紙上に画像汚れが発生しているか否かを目視で確認した。なお、定着温度が低すぎる場合に画像汚れが発生する現象をコールドオフセットと呼び、定着温度が高すぎる場合に画像汚れが発生する現象をホットオフセットと呼ぶ。
以上の評価から、コールドオフセットの発生を確認できず、前記定着率が90%以上を確保できる最低の定着温度を、定着下限温度とした。そして、ホットオフセットの発生を確認できず、前記定着率が90%以上を確保できる最高の定着温度を、定着上限温度とした。定着上限温度と定着下限温度との差分を、定着温度幅とした。
そして、定着温度幅が30℃を超えれば、「○」と評価し、30℃以下であれば、「×」と評価した。
(耐熱保存性)
まず、得られた各トナーを5g秤量して、20mlのポリ容器中に密閉した。密閉したポリ容器を、槽内温度を58℃に設定したオーブン内に入れ、24時間放置する熱処理を施した。
その後、熱処理したポリ容器からトナーを取り出した。そして、取り出したトナーを400メッシュの篩にかけた。その際、トナーの自重により篩を通過したトナーの重量と篩上に残存したトナーの重量とを測定した。そして、測定した重量を用いて、下記式(4)により、通過率(%)を算出した。
通過率(%) = 篩を通過したトナーの重量(g) / (篩を通過したトナーの重量(g) + 篩上に残存したトナーの重量(g)) ×100 (4)
そして、得られた通過率が80%以上であれば、「○」と評価し、得られた通過率が80%未満50%以上であれば、「△」と評価し、得られた通過率が50%未満であれば、「×」と評価した。
各評価結果は、表2に示す。
Figure 0005624830
表1及び表2からわかるように、トナー温度特性(Tfb、Ts、Tm、Tg)が、上記式(1)を満たし、TsがTg以上であり、さらに、Tfbが、70〜95℃の範囲内である場合(実施例1〜4)は、Tfbが70℃未満である場合(比較例1)、Tfbが95℃を超える場合(比較例2)、及び上記式(1)を満たさない場合(比較例3〜5)と比較して、定着性及び耐熱保存性に優れたトナーであった。具体的には、Tfbが70℃未満である場合(比較例1)は、定着温度が高いときの定着性が低下し、定着が可能な温度幅において、高温側がせまくなった。また、Tfbが95℃を超える場合(比較例2)は、定着温度が低いときの定着性が低下し、定着が可能な温度幅において、低温側がせまくなった。また、Ts<Tfb<Tmの場合(比較例3)は、定着温度が高いときの定着性が低下し、定着が可能な温度幅において、高温側がせまくなった。さらに、耐熱保存性も低下した。また、Tfb<Tm<Tsの場合(比較例4)は、定着温度が低いときの定着性が低下し、定着が可能な温度幅において、低温側がせまくなった。また、前記トナーの、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線にショルダーが確認できない場合(比較例5)は、定着性及び耐熱保存性が低下した。
1 画像形成装置
2 感光体ドラム
3 帯電装置
4 露光装置
5 現像装置
6 中間転写ドラム
7 給紙部
8 搬送ベルト
9 定着部
10 排紙部
50 トナー容器
51 現像装置本体
52 補給ローラ
53 現像ローラ
54 現像剤規制部材
55 第1のミキサ
59 第2のミキサ
60 レジストローラ対
70 給紙ローラ

Claims (4)

  1. 静電荷像現像用トナーであって、
    結着樹脂、離型剤及び着色剤を含有するトナー母粒子を含み、
    前記トナー母粒子は、前記結着樹脂、前記離型剤及び前記着色剤以外の他の成分として、1,10−デカンジカルボン酸を用いて合成された線形ポリエステル樹脂を含み、
    前記結着樹脂が、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物と、ドデセニル無水コハク酸と、テレフタル酸と、無水トリメリット酸とを用いて合成された、分岐を有するポリエステル樹脂を含み、
    前記トナーの、貯蔵弾性率G’の温度依存性曲線が、前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度以上の温度域にショルダーを有し、
    前記ショルダーの温度をTsとし、
    前記トナーの、フローテスタで測定した流出開始温度をTfbとし、
    前記トナーの、フローテスタで測定した軟化点温度をTmとした場合、下記式(1)を満たし、
    前記Tfbが、70〜95℃であり、
    前記ショルダーの温度Tsが、90〜105℃であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
    Tfb < Ts < Tm (1)
  2. 下記式(2)を満たす請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
    Tm − Tfb ≦ 30 (2)
  3. 前記トナーの、示差走査熱量計で測定したガラス転移温度をTgとした場合、下記式(3)を満たす請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
    Tfb − Tg ≧ 10 (3)
  4. 前記トナーの、フローテスタで測定した軟化点温度Tmが、100〜130℃である請求項1〜のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
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