<本発明の第1の態様の変性ポリブタジエン>
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンは、
25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が、1.3以上5.0以下であり、
分子量分布(Mw/Mn)が、2.0以上4未満であり、
コールドフロー速度(CF)が、5.5mg/min以下である。
前記のとおり、リニアリティの指標として、従来、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比であるTcp/ML1+4が用いられており、Tcp/ML1+4が大きい程、分岐度が小さくリニアリティ(線状性)が大きいと考えられる。本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンは、Tcp/ML1+4が1.3以上と比較的大きく、且つコールドフロー速度(CF)が5.5mg/min以下と小さい。このような変性ポリブタジエンは従来にはなかったものであり、後述するように、特定の触媒を用いて重合を行うことにより得ることが可能となった。
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンのTcp/ML1+4は、1.3以上であり、好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは1.7以上である。また、本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンのTcp/ML1+4は、5.0以下であり、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.0以下である。
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンのコールドフロー速度(CF)は、5.5mg/min以下であり、好ましくは5.0mg/min以下であり、より好ましくは4.8mg/min以下であり、特に好ましくは4.6mg/min以下である。
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、2.0以上であり、好ましくは2.3以上であり、特に好ましくは2.5以上である。また、本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)は、4未満であり、好ましくは3.8以下であり、より好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.2以下である。
上記のような物性値を満たす本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンは、低燃費性、低発熱性、反撥弾性、機械強度、耐摩耗性などにおいて優れた特性を有すると共に、コールドフロー特性にも優れ、すなわち保存(貯蔵)安定性にも優れている。
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンの100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは25以上60以下である。本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンのML1+4は、より好ましくは30以上であり、特に好ましくは35以上である。また、本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンのML1+4は、より好ましくは57以下であり、特に好ましくは55以下である。
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、好ましくは50000以上300000以下であり、より好ましくは100000以上250000以下である。本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは300000以上700000以下であり、より好ましくは350000以上600000以下である。
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンは、シス−1,4−構造含有率が90%以上であることが好ましい。本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンのシス−1,4−構造含有率は、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、さらに好ましくは94.5%以上、特に好ましくは95%以上または95%超である。
また、本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンの固有粘度(トルエン中25℃で測定した固有粘度)[η]としては、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは1〜7、特に好ましくは1.2〜5に制御することができる。
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンは、共重合体であってもよく、ブタジエンモノマー以外に、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又は、スチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等の他のモノマーを少量(例えば、10モル%以下の量で)使用して共重合してもよい。
本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンは、優れた特性を有し、且つ保存(貯蔵)安定性にも優れているため、種々の用途に好適に用いることができ、例えば、ゴム用途、特にタイヤ用ゴム組成物に好適に用いることができる。本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンを含むタイヤ用ゴム組成物は、特に、低燃費タイヤに好適に用いることができる。本発明の第1の態様の変性ポリブタジエンを含むゴム組成物は、ゴムベルト、ゴムクローラ、ゴルフボール、履物、防舷材などにも好適に用いることができる。
<本発明の第2の態様の変性ポリブタジエン>
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンは、
水素添加された変性ポリブタジエンの13C−NMR測定から求められる、ブタジエンモノマーユニット10,000個あたりの長鎖分岐点の数(但し、長鎖分岐点とは、2つ以上のブタジエンユニットから形成される炭素数6以上の分岐鎖が主鎖に結合している分岐点である。)が、9個以下であり、
変性ポリブタジエンの流動パラフィン50質量%溶液と10質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性の測定から求められる、濃度換算G’’、濃度換算G’についてX=G’’/C2=20,000Paになる時のY=G’/C2(但し、Cは溶液濃度を表す。)と定義されるYの比[Y(50%)/Y(10%)(但し、Y(50%)は流動パラフィン50質量%溶液の測定値から求められる値、Y(10%)は流動パラフィン10質量%溶液の測定値から求められる値である。)]が、2より大きい。
ここで、上記のY(50%)/Y(10%)は、分子のリニアリティ(線状性)の指標である。変性ポリブタジエンの分岐度が小さくリニアリティが高いと、Y(50%)とY(10%)の差は小さく、すなわち、Y(50%)/Y(10%)は1に近くなり、分岐度が大きくリニアリティが低いと、Y(50%)/Y(10%)は大きくなる。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンは、Y(50%)/Y(10%)が2より大きい一方で、長鎖分岐点の数が9個以下で少ない。このような変性ポリブタジエンは従来にはなかったものであり、後述するように、特定の触媒を用いて重合を行うことにより得ることが可能となった。
そして、上記のような物性値を満たす本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンは、低燃費性、低発熱性、反撥弾性、機械強度、耐摩耗性などにおいて優れた特性を有すると共に、コールドフロー特性にも優れ、すなわち保存(貯蔵)安定性にも優れている。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの13C−NMR測定から求められる、ブタジエンモノマーユニット10,000個あたりの長鎖分岐点の数は、9個以下であり、好ましくは8以下である。また、本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの13C−NMR測定から求められる、ブタジエンモノマーユニット10,000個あたりの長鎖分岐点の数は、特に限定されないが、好ましくは2以上である。長鎖分岐点の数を求める方法については、実施例において具体的に説明する。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの流動パラフィン50質量%溶液と10質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性の測定から求められる、濃度換算G’’、濃度換算G’についてX=G’’/C2=20,000Paになる時のY=G’/C2(但し、Cは溶液濃度を表す。)と定義されるYの比[Y(50%)/Y(10%)]は、2より大きく、好ましくは2.3以上であり、特に好ましくは2.5以上である。また、本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンのY(50%)/Y(10%)は、特に限定されないが、好ましくは4.5以下であり、より好ましくは4.0以下であり、特に好ましくは3.8以下である。Y(50%)/Y(10%)を求める方法については、実施例において具体的に説明する。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンのコールドフロー速度(CF)は、特に限定されないが、好ましくは5.5mg/min以下であり、より好ましくは5.0mg/min以下であり、より好ましくは4.8mg/min以下であり、特に好ましくは4.6mg/min以下である。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、好ましくは50000以上300000以下であり、より好ましくは100000以上250000以下である。本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは300000以上700000以下であり、より好ましくは350000以上600000以下である。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.3以上であり、特に好ましくは2.5以上である。また、本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは4未満であり、より好ましくは3.8以下であり、より好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.2以下である。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは25以上60以下である。本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンのML1+4は、より好ましくは30以上であり、特に好ましくは35以上である。また、本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンのML1+4は、より好ましくは57以下であり、特に好ましくは55以下である。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンのTcp/ML1+4は、好ましくは1.3以上であり、より好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは1.7以上である。また、本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンのTcp/ML1+4は、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.0以下である。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンは、シス−1,4−構造含有率が90%以上であることが好ましい。本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンのシス−1,4−構造含有率は、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、さらに好ましくは94.5%以上、特に好ましくは95%以上または95%超である。
また、本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンの固有粘度(トルエン中25℃で測定した固有粘度)[η]としては、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは1〜7、特に好ましくは1.2〜5に制御することができる。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンは、共重合体であってもよく、ブタジエンモノマー以外に、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又は、スチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等の他のモノマーを少量(例えば、10モル%以下の量で)使用して共重合してもよい。
本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンは、優れた特性を有し、且つ保存(貯蔵)安定性にも優れているため、種々の用途に好適に用いることができ、例えば、ゴム用途、特にタイヤ用ゴム組成物に好適に用いることができる。本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンを含むタイヤ用ゴム組成物は、特に、低燃費タイヤに好適に用いることができる。本発明の第2の態様の変性ポリブタジエンを含むゴム組成物は、ゴムベルト、ゴムクローラ、ゴルフボール、履物、防舷材などにも好適に用いることができる。
<本発明の第3の態様の変性ポリブタジエン>
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンは、
水素添加された変性ポリブタジエンの13C−NMR測定から求められる、ブタジエンモノマーユニット10,000個あたりの長鎖分岐点の数(但し、長鎖分岐点とは、2つ以上のブタジエンユニットから形成される炭素数6以上の分岐鎖が主鎖に結合している分岐点である。)が、9個以下であり、
コールドフロー速度(CF)が、5.5mg/min以下である。
前記のとおり、分子のリニアリティ(線状性)の指標として、従来、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比であるTcp/ML1+4が用いられているが、Tcp/ML1+4が大きく、すなわち、分岐度が小さくリニアリティが高いと考えられる変性ポリブタジエンは、比較的高いコールドフローを示す傾向があった。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンは、長鎖分岐点の数が9個以下で少なく、且つコールドフロー速度(CF)が5.5mg/min以下と小さい。このような変性ポリブタジエンは従来にはなかったものであり、後述するように、特定の触媒を用いて重合を行うことにより得ることが可能となった。
そして、上記のような物性値を満たす本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンは、低燃費性、低発熱性、反撥弾性、機械強度、耐摩耗性などにおいて優れた特性を有すると共に、コールドフロー特性にも優れ、すなわち保存(貯蔵)安定性にも優れている。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンの13C−NMR測定から求められる、ブタジエンモノマーユニット10,000個あたりの長鎖分岐点の数は、9個以下であり、好ましくは8以下である。また、本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンの13C−NMR測定から求められる、ブタジエンモノマーユニット10,000個あたりの長鎖分岐点の数は、特に限定されないが、好ましくは2以上である。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンのコールドフロー速度(CF)は、5.5mg/min以下であり、好ましくは5.0mg/min以下であり、より好ましくは4.8mg/min以下であり、特に好ましくは4.6mg/min以下である。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、好ましくは50000以上300000以下であり、より好ましくは100000以上250000以下である。本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは300000以上700000以下であり、より好ましくは350000以上600000以下である。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.3以上であり、特に好ましくは2.5以上である。また、本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは4未満であり、より好ましくは3.8以下であり、より好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.2以下である。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンの100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは25以上60以下である。本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンのML1+4は、より好ましくは30以上であり、特に好ましくは35以上である。また、本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンのML1+4は、より好ましくは57以下であり、特に好ましくは55以下である。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンのTcp/ML1+4は、好ましくは1.3以上であり、より好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは1.7以上である。また、本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンのTcp/ML1+4は、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.0以下である。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンは、シス−1,4−構造含有率が90%以上であることが好ましい。本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンのシス−1,4−構造含有率は、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、さらに好ましくは94.5%以上、特に好ましくは95%以上または95%超である。
また、本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンの固有粘度(トルエン中25℃で測定した固有粘度)[η]としては、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは1〜7、特に好ましくは1.2〜5に制御することができる。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンは、共重合体であってもよく、ブタジエンモノマー以外に、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又は、スチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等の他のモノマーを少量(例えば、10モル%以下の量で)使用して共重合してもよい。
本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンは、優れた特性を有し、且つ保存(貯蔵)安定性にも優れているため、種々の用途に好適に用いることができ、例えば、ゴム用途、特にタイヤ用ゴム組成物に好適に用いることができる。本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンを含むタイヤ用ゴム組成物は、特に、低燃費タイヤに好適に用いることができる。本発明の第3の態様の変性ポリブタジエンを含むゴム組成物は、ゴムベルト、ゴムクローラ、ゴルフボール、履物、防舷材などにも好適に用いることができる。
<本発明の第4の態様の変性ポリブタジエン>
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンは、
25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)が、1.3以上であり、
変性ポリブタジエンの流動パラフィン50質量%溶液と10質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性の測定から求められる、濃度換算G’’、濃度換算G’についてX=G’’/C2=20,000Paになる時のY=G’/C2(但し、Cは溶液濃度を表す。)と定義されるYの比[Y(50%)/Y(10%)(但し、Y(50%)は流動パラフィン50質量%溶液の測定値から求められる値、Y(10%)は流動パラフィン10質量%溶液の測定値から求められる値である。)]が、2より大きい。
ここで、上記のY(50%)/Y(10%)は、分子のリニアリティ(線状性)の指標である。変性ポリブタジエンの分岐度が小さくリニアリティが高いと、Y(50%)とY(10%)の差は小さく、すなわち、Y(50%)/Y(10%)は1に近くなり、分岐度が大きくリニアリティが低いと、Y(50%)/Y(10%)は大きくなる。
一方、前記のとおり、分子のリニアリティ(線状性)の指標として、従来、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比であるTcp/ML1+4が用いられており、Tcp/ML1+4が大きい程、分岐度が小さくリニアリティが高いと考えられる。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンは、Tcp/ML1+4が1.3以上で大きい(すなわち、分岐度が小さくリニアリティが高いことを示す)一方で、Y(50%)/Y(10%)が2より大きい(すなわち、分岐度が大きくリニアリティが低いことを示す)。このような変性ポリブタジエンは従来にはなかったものであり、後述するように、特定の触媒を用いて重合を行うことにより得ることが可能となった。
そして、上記のような物性値を満たす本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンは、低燃費性、低発熱性、反撥弾性、機械強度、耐摩耗性などにおいて優れた特性を有すると共に、コールドフロー特性にも優れ、すなわち保存(貯蔵)安定性にも優れている。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンのTcp/ML1+4は、1.3以上であり、好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは1.7以上である。また、本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンのTcp/ML1+4は、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.0以下である。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンの流動パラフィン50質量%溶液と10質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性の測定から求められる、濃度換算G’’、濃度換算G’についてX=G’’/C2=20,000Paになる時のY=G’/C2(但し、Cは溶液濃度を表す。)と定義されるYの比[Y(50%)/Y(10%)]は、2より大きく、好ましくは2.3以上であり、特に好ましくは2.5以上である。また、本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンのY(50%)/Y(10%)は、特に限定されないが、好ましくは4.5以下であり、より好ましくは4.0以下であり、特に好ましくは3.8以下である。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンのコールドフロー速度(CF)は、特に限定されないが、好ましくは5.5mg/min以下であり、より好ましくは5.0mg/min以下であり、より好ましくは4.8mg/min以下であり、特に好ましくは4.6mg/min以下である。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、好ましくは50000以上300000以下であり、より好ましくは100000以上250000以下である。本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは300000以上700000以下であり、より好ましくは350000以上600000以下である。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.3以上であり、特に好ましくは2.5以上である。また、本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは4未満であり、より好ましくは3.8以下であり、より好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.2以下である。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンの100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは25以上60以下である。本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンのML1+4は、より好ましくは30以上であり、特に好ましくは35以上である。また、本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンのML1+4は、より好ましくは57以下であり、特に好ましくは55以下である。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンは、シス−1,4−構造含有率が90%以上であることが好ましい。本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンのシス−1,4−構造含有率は、より好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、さらに好ましくは94.5%以上、特に好ましくは95%以上または95%超である。
また、本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンの固有粘度(トルエン中25℃で測定した固有粘度)[η]としては、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは1〜7、特に好ましくは1.2〜5に制御することができる。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンは、共重合体であってもよく、ブタジエンモノマー以外に、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又は、スチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等の他のモノマーを少量(例えば、10モル%以下の量で)使用して共重合してもよい。
本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンは、優れた特性を有し、且つ保存(貯蔵)安定性にも優れているため、種々の用途に好適に用いることができ、例えば、ゴム用途、特にタイヤ用ゴム組成物に好適に用いることができる。本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンを含むタイヤ用ゴム組成物は、特に、低燃費タイヤに好適に用いることができる。本発明の第4の態様の変性ポリブタジエンを含むゴム組成物は、ゴムベルト、ゴムクローラ、ゴルフボール、履物、防舷材などにも好適に用いることができる。
<変性ポリブタジエンの製造方法>
本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、及び第4の態様の変性ポリブタジエン(以下、「本発明の変性ポリブタジエン」という)は、例えば、次のようにして製造することができる。ただし、本発明の変性ポリブタジエンは、以下の製造方法により製造されるものに限定されない。
変性ポリブタジエン重合用触媒としては、下記一般式(1)で表される非メタロセン型金属化合物(A)、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物、又はアルモキサン(B)、並びに周期律表第2族、12族、及び13族から選ばれる元素の有機金属化合物(C)が好適に用いられる。これらを用いてブタジエンを重合させ、得られたポリブタジエンをさらに変性剤により変性させることで、変性ポリブタジエンを得ることができる。
(但し、R1、R2、R3はそれぞれ、水素又は炭素数1〜12の置換基を表す。Oは酸素原子を表し、MはGd(ガドリニウム原子)、Tb(テルビウム原子)、Dy(ジスプロシウム原子)、Ho(ホルミウム原子)、Er(エルビウム原子)、又はTm(ツリウム原子)を表す。)
一般式(1)のR1〜R3における炭素数1〜12の置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの飽和炭化水素基、ビニル基、1−プロペニル基、及びアリル基などの不飽和炭化水素基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、及びエチルシクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基、並びにフェニル基、ベンジル基、トルイル基、及びフェネチル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。さらに、それらにヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボメトキシ基、カルボエトキシ基、アミド基、アミノ基、アルコキシ基、及びフェノキシ基などが任意の位置に置換されているものも含まれる。中でも、炭素数1〜12の飽和炭化水素基が好ましく、特に炭素数1〜6の飽和炭化水素基が好ましい。
一般式(1)のR1〜R3は、R2は水素又は炭素数1〜12の置換基(好ましくは飽和炭化水素基)、R1とR3は炭素数1〜12の置換基(好ましくは飽和炭化水素基)であることが好ましい。特に、R2は水素又は炭素数1〜6の置換基(好ましくは飽和炭化水素基)、R1とR3は炭素数1〜6の置換基(好ましくは飽和炭化水素基)であることが好ましい。
MがGd(ガドリニウム原子)である一般式(1)の非メタロセン型金属化合物(A)の具体例としては、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ガドリニウム、トリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ガドリニウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ガドリニウム、トリス(3,5−ヘプタンジオナト)ガドリニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ガドリニウム、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)ガドリニウム、トリス(1,5−ジシクロペンチル−2,4−ペンタンジオナト)ガドリニウム、トリス(1,5−ジシクロヘキシル−2,4−ペンタンジオナト)ガドリニウムなどが挙げられる。
中でも、好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ガドリニウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ガドリニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ガドリニウムなどが挙げられる。特に好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ガドリニウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ガドリニウムが挙げられる。
MがTb(テルビウム原子)である一般式(1)の非メタロセン型金属化合物(A)の具体例としては、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム、トリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム、トリス(3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)テルビウム、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)テルビウム、トリス(1,5−ジシクロペンチル−2,4−ペンタンジオナト)テルビウム、トリス(1,5−ジシクロヘキシル−2,4−ペンタンジオナト)テルビウムなどが挙げられる。
中でも、好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)テルビウムなどが挙げられる。特に好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウムが挙げられる。
MがDy(ジスプロシウム原子)である一般式(1)の非メタロセン型金属化合物(A)の具体例としては、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)ジスプロシウム、トリス(1,5−ジシクロペンチル−2,4−ペンタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(1,5−ジシクロヘキシル−2,4−ペンタンジオナト)ジスプロシウムなどが挙げられる。
中でも、好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ジスプロシウムなどが挙げられる。特に好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウムが挙げられる。
MがHo(ホルミウム原子)である一般式(1)の非メタロセン型金属化合物(A)の具体例としては、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウム、トリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウム、トリス(3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ホルミウム、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)ホルミウム、トリス(1,5−ジシクロペンチル−2,4−ペンタンジオナト)ホルミウム、トリス(1,5−ジシクロヘキシル−2,4−ペンタンジオナト)ホルミウムなどが挙げられる。
中でも、好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ホルミウムなどが挙げられる。特に好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウムが挙げられる。
MがEr(エルビウム原子)である一般式(1)の非メタロセン型金属化合物(A)の具体例としては、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム、トリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム、トリス(3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)エルビウム、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)エルビウム、トリス(1,5−ジシクロペンチル−2,4−ペンタンジオナト)エルビウム、トリス(1,5−ジシクロヘキシル−2,4−ペンタンジオナト)エルビウムなどが挙げられる。
中でも、好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)エルビウムなどが挙げられる。特に好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウムが挙げられる。
MがTm(ツリウム原子)である一般式(1)の非メタロセン型金属化合物(A)の具体例としては、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム、トリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム、トリス(3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ツリウム、トリス(2,4−ヘキサンジオナト)ツリウム、トリス(1,5−ジシクロペンチル−2,4−ペンタンジオナト)ツリウム、トリス(1,5−ジシクロヘキシル−2,4−ペンタンジオナト)ツリウムなどが挙げられる。
中でも、好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ツリウムなどが挙げられる。特に好ましくは、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム、トリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウムが挙げられる。
非メタロセン型金属化合物(A)は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(B)成分である非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物において、非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリイル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、トリフェニル(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
一方、カチオンとしては、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、フェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
カルベニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリ置換フェニルカルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルベニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンを挙げることができる。
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、トリ(i−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。
ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、テトラ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン、テトラ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのアリールホスホニウムカチオンを挙げることができる。
イオン性化合物(B)としては、上記で例示した非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる。
中でも、イオン性化合物(B)としては、含ホウ素化合物が好ましく、その中でも特に、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(フルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが好ましい。イオン性化合物(B)は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(B)成分である非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物の代わりに、アルモキサン(アルミノキサン)を用いてもよい。アルモキサンとしては、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R’)O−)n(R’は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である。)で示される鎖状アルモキサン、あるいは環状アルモキサンが挙げられる。R’としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソブチル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。アルモキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム並びにその混合物などが挙げられる。それらの中でも、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルモキサンを好適に用いることができる。
アルモキサンの製造に用いられる縮合剤としては、典型的なものとして水が挙げられるが、この他に上記有機アルミニウム化合物が縮合反応する任意のもの、例えば無機物などの吸着水やジオールなどが挙げられる。
上記(C)成分である周期律表第2族、12族、13族から選ばれる元素の有機金属化合物としては、例えば、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム等が用いられる。これらの化合物の中で好ましいのは、ジアルキルマグネシウム;アルキルマグネシウムクロライド、アルキルマグネシウムブロマイドなどのアルキルマグネシウムハライド;ジアルキル亜鉛;トリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド;アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライドなどの有機アルミニウムハロゲン化合物;ジアルキルアルミニウムハイドライドなどの水素化有機アルミニウム化合物などである。
具体的な化合物としては、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ヘキシルマグネシウムクロライド、オクチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムアイオダイド、ヘキシルマグネシウムアイオダイドなどのアルキルマグネシウムハライドを挙げることができる。
さらに、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジオクチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、エチルヘキシルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウムを挙げることができる。
さらに、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジヘキシル亜鉛、ジオクチル亜鉛、ジデシル亜鉛などのジアルキル亜鉛を挙げることができる。
さらに、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムを挙げることができる。
さらに、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどの有機アルミニウムハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキハイドライドなどの水素化有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
これらの周期律表第2族、12族、13族から選ばれる元素の有機金属化合物(C)は、単独で用いることもできるが、2種類以上併用することも可能である。
中でも好ましくは、13族元素の有機金属化合物であり、その中でも有機アルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。特に好ましくは、トリエチルアルミニウムである。
本発明の変性ポリブタジエン重合用触媒の(A)成分(非メタロセン型金属化合物)、(B)成分(非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物)及び(C)成分(周期律表第2族、12族及び13族から選ばれる元素の有機金属化合物)の割合は、特に限定されるものではないが、(B)成分の量は、(A)成分1モル当たり0.5〜10モルが好ましく、1〜5モルが特に好ましい。(C)成分の量は、(A)成分1モル当たり10〜10000モルが好ましく、50〜7000モルが特に好ましい。
本発明においては、上述した(A)、(B)及び(C)成分を備える触媒を用いて重合を行うことができるが、上記以外にも本発明の効果を妨げない範囲で、得られる変性ポリブタジエンの分子量調節剤などを添加することができる。
分子量調節剤としては、水素、水素化金属化合物、及び水素化有機金属化合物から選ばれる化合物を用いることができる。
水素化金属化合物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、ボラン、水素化アルミニウム、水素化ガリウム、シラン、ゲルマン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ナトリウムアルミニウムなどが挙げられる。
また、水素化有機金属化合物としては、メチルボラン、エチルボラン、プロピルボラン、ブチルボラン、フェニルボランなどのアルキルボラン;ジメチルボラン、ジエチルボラン、ジプロピルボラン、ジブチルボラン、ジフェニルボランなどのジアルキルボラン;メチルアルミニウムジハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライド、プロピルアルミニウムジハイドライド、ブチルアルミニウムジハイドライド、フェニルアルミニウムジハイドライドなどのアルキルアルミニウムジハイドライド;ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジノルマルブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;メチルシラン、エチルシラン、プロピルシラン、ブチルシラン、フェニルシラン、ジメチルシラン、ジエチルシラン、ジプロピルシラン、ジブチルシラン、ジフェニルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、トリフェニルシランなどのシラン類;メチルゲルマン、エチルゲルマン、プロピルゲルマン、ブチルゲルマン、フェニルゲルマン、ジメチルゲルマン、ジエチルゲルマン、ジプロピルゲルマン、ジブチルゲルマン、ジフェニルゲルマン、トリメチルゲルマン、トリエチルゲルマン、トリプロピルゲルマン、トリブチルゲルマン、トリフェニルゲルマンなどのゲルマン類などが挙げられる。
これらの中でも、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライドが好ましい。
本発明においては、各触媒成分を無機化合物、又は有機高分子化合物に担持して用いることもできる。
本発明の変性ポリブタジエンの製造方法において、上記触媒成分[(A)、(B)及び(C)成分]の添加順序は、特に制限はないが、例えば次の順序で行うことができる。
(1)不活性有機溶媒中、モノマーの存在下又は不存在下に(C)成分を添加し、(A)成分と(B)成分を任意の順序で添加する。
(2)不活性有機溶媒中、モノマーの存在下又は不存在下に(C)成分を添加し、上述した分子量調節剤を添加した後、(A)成分と(B)成分を任意の順序で添加する。
(3)不活性有機溶媒中、モノマーの存在下又は不存在下に(A)成分を添加し、(C)成分と上述した分子量調節剤を任意の順序で添加した後、(B)成分を添加する。
(4)不活性有機溶媒中、モノマーの存在下又は不存在下に(B)成分を添加し、(C)成分と上述した分子量調節剤を任意の順序で添加した後、(A)成分を添加する。
(5)不活性有機溶媒中、モノマーの存在下又は不存在下に(C)成分を添加し、(A)成分と(B)成分を任意の順序で添加した後、上述した分子量調節剤を添加する。
ここで、最初に添加するモノマーは、モノマーの全量であっても、一部であってもよい。
前記のとおり、本発明の変性ポリブタジエンは、1,3−ブタジエン以外に、他のモノマーを少量使用して共重合してもよい。原料となる1,3−ブタジエン以外のモノマーとしては、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又は、スチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等が挙げられる。これらのモノマー成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合方法は、特に制限はなく、1,3−ブタジエンなどのモノマーそのものを重合溶媒とする塊状重合(バルク重合)、又は溶液重合などを適用できる。溶液重合での溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素、上記のオレフィン化合物やシス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素等が挙げられ、中でも、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、あるいは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好適に用いられる。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は−30〜150℃の範囲が好ましく、0〜100℃の範囲がさらに好ましく、10〜80℃の範囲が特に好ましい。重合時間は1分〜12時間が好ましく、3分〜5時間がさらに好ましく、5分〜1時間が特に好ましい。
本発明の変性ポリブタジエン重合用触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、(A)成分(金属化合物)の濃度が、1〜100μmol/Lであることが好ましく、2〜50μmol/Lであることが特に好ましい。
所定時間重合を行った後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。このようにして、本発明の変性ポリブタジエンを得ることができる。
ある実施態様においては、MがGd(ガドリニウム原子)である前記一般式(1)で表される非メタロセン型金属化合物(A)を含む触媒を用いて、1,3−ブタジエンを重合して得られた変性ポリブタジエンは除くことができる。
本発明で用いられる変性方法としては、公知のもののいずれも用いることができる。その中でも、活性な重合末端の反応性を利用し、カーボンブラックやシリカ等の充填剤と相互作用のある官能基を導入することで、充填剤の分散性を向上せしめようとする変性手法(末端変性)であることが好ましい。
本発明で用いられる変性剤としては、公知の変性剤いずれも用いることができる。その中でも、非金属元素から構成される変性剤が好ましい。その中でも、反応して重合末端と変性剤を結合することのできる置換基を有する化合物が好ましく、具体的には、カルボニル基、ニトリル基、ハロゲン基、エポキシ基等を有する化合物が好ましく、カルボニル化合物がより好ましい。さらに、フィラーとの相互作用の観点から、変性剤としては、アミノ基及び/またはアルコキシ基を有するカルボニル化合物、ハロゲン化ベンジル化合物が好ましく、アミノ基を有する芳香族カルボニル化合物がより好ましい。これらの変性剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基を有するカルボニル化合物としては、アミノベンゾフェノン化合物が好ましく、またアミノ基が炭素原子数1〜6のアルキル基と結合したアルキルアミノ基であることも好ましい。その具体的な化合物の例としては、4−ジメチルアミノアセトフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、4−ジエチルアミノプロピオフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−ジブチルアミノベンゾフェノン、4−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4−ジビニルアミノベンズアルデヒド等が挙げられる。これらの化合物の中で、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンや4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましく、特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
アルコキシ基を有するカルボニル化合物としては、アルコキシベンゾフェノン化合物が好ましく、またアルコキシ基の炭素数が1〜6であることも好ましい。その具体的な化合物の例としては、4−メトキシアセトフェノン、4−エトキシアセトフェノン、4−プロポキシアセトフェノン、4−ブトキシアセトフェノン、4−ペントキシアセトフェノン、4−ヘキシロキシアセトフェノン、2,4−ジメトキシアセトフェノン、2,4−ジエトキシアセトフェノン、2,4−ジプロポキシアセトフェノン、2,4−ジブトキシアセトフェノン、3,4−ジメトキシアセトフェノン、3,4−ジエトキシアセトフェノン、3,4−ジプロポキシアセトフェノン、3,4−ジブトキシアセトフェノン、2−メトキシベンゾフェノン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−エトキシベンゾフェノン、3−エトキシベンゾフェノン、4−エトキシベンゾフェノン、2−プロポキシベンゾフェノン、3−プロポキシベンゾフェノン、4−プロポキシベンゾフェノン、2−ブトキシベンゾフェノン、3−ブトキシベンゾフェノン、4−ブトキシベンゾフェノン、3,3’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジエトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジエトキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの化合物の中で、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンや4,4’−ジエトキシベンゾフェノンが好ましく、特に4,4’−ジメトキシベンゾフェノンが好ましい。
また、カルボニル化合物の芳香族アルデヒド化合物としては、アルコキシ基を有する芳香族アルデヒド化合物が好ましい。その具体的な化合物の例としては、メトキシベンズアルデヒド、エトキシベンズアルデヒド、プロポキシベンズアルデヒド、ブトキシベンズアルデヒド、ベラトルムアルデヒド、2,4−ジメトキシベンズアルデヒド、3,5−ジメトキシベンズアルデヒド、ジエトキシベンズアルデヒド、エトキシメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒド、ヘリオトロピン等が挙げられる。これらの化合物の中で、特にベラトルムアルデヒド及びヘリオトロピンが好ましい。
ハロゲン化ベンジル化合物としては、アルコキシ基を有するハロゲン化ベンジル化合物(アルコキシベンジルハライド化合物)が好ましい。その具体的な化合物の例としては、メトキシベンジルクロライド、メトキシベンジルブロマイド、メトキシベンジルアイオダイド、エトキシベンジルクロライド、エトキシベンブロマイド、エトキシベンジルアイオダイド、ジメトキシベンジルクロライド、ジメトキシベンジルブロマイド、ジメトキシベンジルアイオダイド、ジエトキシベンジルクロライド、ジエトキシベンジルブロマイド、ジエトキシベンジルアイオダイド、ピペロニルクロライド、ピペロニルブロマイド、ピペロニルアイオダイド等が挙げられる。これらの化合物の中で、特にメトキシベンジルクロライド、ジメトキシベンジルブロマイド及びピペロニルクロライドが好ましい。
本発明で用いることができる変性剤としては、他に、キノン化合物、チアゾール化合物、スルフェンアミド化合物、ジチオカルバミン酸エステル化合物、チウラム化合物、イミド化合物、チオイミド化合物、分子内に少なくとも1つのオキシラン基を有するアミン化合物、ヒドラジンとアルデヒド及び/又ケトンとの縮合生成物であるアジン化合物、N−置換アミノケトン化合物、N−置換アミノアルデヒド化合物、N−置換ラクタム化合物、N−置換尿素化合物、イソシアネート化合物、1−オキサ−2−シラシクロアルカン化合物、シクロペルオキシド化合物、フェノキシシラン化合物、アルコキシシラン化合物などのアルコキシ基を有する有機珪素化合物などが挙げられる。
キノン化合物としては、例えば、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン、クロラニル、ブロマニル、クロラニル酸、ブロマニル酸、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノンなどが挙げられる。
チアゾール化合物としては、例えば、メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾールジスルフィド、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
スルフェンアミド化合物としては、例えば、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどが挙げられる。
ジチオカルバミン酸エステル化合物としては、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸2−ベンゾチアゾイルエステル、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ピペコリンジチオカルバミン酸ピペコリン塩などが挙げられる。
チウラム化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられる。
イミド化合物としては、例えば、フタルイミド、ピロメリット酸ジイミドなどが挙げられる。
チオイミド化合物としては、例えば、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、N−(フェニルチオ)フタルイミドなどが挙げられる。
分子内に少なくとも1つのオキシラン基を有するアミン化合物としては、例えば、t−ブチルグリシジルアミン、N,N−ジグリシジルアニリンなどが挙げられる。
ヒドラジンとアルデヒド及び/又ケトンとの縮合生成物であるアジン化合物としては、例えば、ホルムアルデヒドアジン、アセトアルデヒドアジン、ベンズアルデヒドアジン、2−ピリジンカルボキシアルデヒドアジン、テトラヒドロフラン−3−カルボキシアルデヒドアジン、N−メチル−2−ピロールカルボキシアルデヒドアジン、アセトンアジン、2−アセチルピリジンアジンなどが挙げられる。
N−置換アミノケトン化合物としては、例えば、4−ジメチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
N−置換アミノアルデヒド化合物としては、例えば、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒドなどが挙げられる。また、上記N−置換アミノアルデヒド化合物に対応するN−置換アミノチオアルデヒド化合物を用いることもできる。
N−置換ラクタム化合物としては、例えば、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ω−ラウロラクタムなどが挙げられる。また、上記N−置換ラクタムに対応するN−置換チオラクタム化合物を用いることもできる。
N−置換尿素化合物としては、例えば、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、上記N−置換環状尿素化合物に対応するN−置換環状チオ尿素化合物を用いることもできる。
イソシアネート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアナート、テトラメチレン1,4−ジイソシアナート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、トルエン2,4−および2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシネナート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられる。また、上記イソシアネート化合物に対応するイソチオシアネート化合物を用いることもできる。
1−オキサ−2−シラシクロアルカン化合物としては、例えば、2,2−ジメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジフェニル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン、2,2,4−トリメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン、2,2,4−トリメチル−1−オキサ−4−アザ−2−シラシクロヘキサンなどが挙げられる。
シクロペルオキシド化合物としては、例えば、ジメチルジオキシラン、1,2−ジオキソラン、1,2−ジオキサン、1,2,4−トリオキシン、1,2−ジオキソカン、3,3,5,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソノナンなどが挙げられる。
フェノキシシラン化合物としては、例えば、ビニルトリフェノキシシラン、メチルトリフェノキシシランなどが挙げられる。
変性反応の実施に際しては、ブタジエンの重合反応に引き続いて、変性剤を添加したのち、重合停止剤を添加し、反応生成物中に残留している溶媒や未反応モノマーをスチームストリッピング法や真空乾燥法などで除去する方法、あるいは、重合停止剤を添加したのち、変性剤を添加する方法などが挙げられる。重合停止剤の種類によっては、重合体が変性剤と反応する部位の活性を低下させることがあるため、重合停止前に変性剤を添加する方法が好ましい。
変性反応に使用する有機溶媒としては、それ自身がポリブタジエンと反応しないものであれば、いずれの溶媒も使用できる。通常は、ポリブタジエンの製造に用いた溶媒と同じものがそのまま用いられる。その具体例としては、ベンゼン、クロルベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタンなどの炭素原子数5〜10の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、テトラリン、デカリンなどの脂環族炭化水素系溶媒などを挙げることができる。また、塩化メチレンやテトラヒドロフランなども使用することができる。
変性反応の反応溶液の温度(反応温度)は、0〜100℃の範囲にあることが好ましく、10〜90℃の範囲にあることが更に好ましく、特に30〜90℃の範囲にあることが好ましい。変性剤がアルコキシ基を有する有機珪素化合物の場合は、変性反応の反応溶液の温度は、特に50〜90℃の範囲にあることが好ましいことがある。温度が低すぎると変性反応の進行が遅くなり、温度が高すぎると重合体がゲル化しやすくなる。ある実施態様においては、変性反応の反応溶液の温度(反応温度)は、50℃以下、より好ましくは40℃以下、より好ましくは0〜30℃の範囲にあることが好ましいことがある。
変性反応の時間(反応時間)には特に制限はないが、1分〜5時間の範囲にあることが好ましく、3分〜1時間の範囲にあることがさらに好ましい。変性反応時間が短すぎると反応が充分進行しないことがあり、時間が長すぎると重合体がゲル化しやすくなる。
変性反応における反応溶液中のポリブタジエンの量は、溶媒1リットル当り、通常は2〜500g、好ましくは5〜300g、更に好ましくは10〜200gの範囲にあることが好ましい。変性剤がアルコキシ基を有する有機珪素化合物の場合は、変性反応における反応溶液中のポリブタジエンの量は、溶媒1リットル当り、通常は5〜500g、好ましくは20〜300g、更に好ましくは30〜200gの範囲にあることが好ましい。
変性反応における変性剤の使用量は、ポリブタジエン100gに対して、通常は0.01〜150ミリモル、好ましくは0.1〜100ミリモル、更に好ましくは0.2〜50ミリモルの範囲にあることが好ましい。変性剤の使用量が少な過ぎると、変性ポリブタジエンに導入される変性基の量が少なくなり、変性効果が少なくなることがある。変性剤の使用量が多すぎると、変性ポリブタジエン中に未反応変性剤が残存し、その除去に手間がかかることがある。
本発明の変性ポリブタジエンの変性度は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を用いる手法により算出することができる。これについて、図1に基づいて詳細に説明する。
図1において、縦軸は、GPC測定によって得られたポリマーの274nmにおけるUV吸光度から得られるピーク面積値UVと、示差屈折率(RI)から得られるピーク面積値RIの比、UV/RIの値を示す。横軸は、(1/Mn)×104の値を示し、Mnは数平均分子量である。
図1において、Li−BR(未変性)は、Li系触媒によるリビングアニオン重合によって1,3−ブタジエンを重合したポリマーそのもののUV/RIの値を、異なる数平均分子量Mnのポリマーについてプロットしたもので、直線として近似することができる。また、Li−BR(変性)は、Li系触媒によるリビングアニオン重合によって重合した後、重合末端と所定の変性剤を反応させて変性したポリマーのUV/RIの値を、異なる数平均分子量Mnのポリマーについてプロットしたもので、直線として近似することができる。
リビングアニオン重合の場合は、ポリマー1分子と変性剤1分子が定量的に反応することから、ある数平均分子量(Mn1)におけるLi−BR(変性)のUV/RI値とLi−BR(未変性)のUV/RI値の差をAとする。これはその数平均分子量(Mn1)である1分子鎖に変性剤が1分子反応した場合のUV/RI値の変化量を示すため、この値を基準に変性度を算出することができる。
Li−BRと同様にして、ある数平均分子量(Mn1)である本発明の変性ポリブタジエンと、変性に用いたものと同じ方法で得られた未変性のポリブタジエンについて、それぞれUV/RI値を算出してその差をBとすると、本発明の変性ポリブタジエンの変性度は、以下の式(1)で表すことができる。
変性度 = B/A (1)
本発明の変性ポリブタジエンの変性度は、特に限定されるものではないが、0.1以上が好ましく、0.1を超えることがより好ましい。変性度が0.1未満では、変性による効果が十分でない場合がある。好ましい変性度においては、変性剤の極性官能基(アミノ基、水酸基、アルコキシ基等)とフィラー(充填剤)の極性官能基との相互作用により、ゴム組成物中でのフィラーの分散性を高めることができる。
<ゴム組成物(タイヤ用ゴム組成物)>
本発明の変性ポリブタジエンは、例えば、ゴム組成物、特にタイヤ用ゴム組成物に好適に用いることができる。
本発明のゴム組成物は、本発明の変性ポリブタジエン一種または二種以上を含むことを特徴とする。
具体的には、本発明の変性ポリブタジエンは、単独で、または他の合成ゴム若しくは天然ゴムとブレンドして配合し、必要ならばプロセス油で油展し、次いでカーボンブラックなどの充填剤、加硫剤、加硫促進剤その他の通常の配合剤を加えて加硫し、タイヤ、ホース、ベルト、その他の、各種工業用品等の機械的特性及び耐摩耗性が要求されるゴム用途に使用することができる。また、プラスチック材料の改質剤、例えば、耐衝撃性ポリスチレンの改質剤として使用することもできる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、本発明の変性ポリブタジエン一種または二種以上を含むことを特徴とし、本発明の変性ポリブタジエン(以下、「変性ポリブタジエン(α)」という)と、変性ポリブタジエン以外のジエン系重合体(以下、「ジエン系重合体(β)」という)と、ゴム補強剤(以下、「ゴム補強剤(γ)」という)とを含むことが好ましい。
タイヤ用ゴム組成物は、変性ポリブタジエン(α)と、(α)以外のジエン系重合体(β)とからなるゴム成分(α)+(β)と、ゴム補強剤(γ)とを含み、上記ゴム成分(α)+(β)100質量部に対して上記ゴム補強剤(γ)を30〜80質量部含有することが好ましい。すなわち、上記ゴム補強剤(γ)の配合量は、変性ポリブタジエン(α)と(α)以外のジエン系重合体(β)とからなるゴム成分(α)+(β)100質量部に対して好ましくは30〜80質量部、より好ましくは40〜70質量部である。また、タイヤ用ゴム組成物のゴム成分(α)+(β)の質量比は、変性ポリブタジエン(α)90〜5質量部、変性ポリブタジエン(α)以外のジエン系重合体(β)10〜95質量部であることが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物で用いられる変性ポリブタジエン以外のジエン系重合体(β)としては、加硫可能なゴムが好ましく、具体的には天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリイソプレン、ハイシスポリブタジエンゴム、ローシスポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を挙げることができる。タイヤ用ゴム組成物の場合には、ジエン系重合体(β)としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、及びポリイソプレンのうち少なくとも一種以上であることが好ましい。これらのゴムは単独で用いても、二種以上組合せて用いても良い。
本発明のタイヤ用ゴム組成物で用いられるゴム補強剤(γ)としては、各種のカーボンブラック、シリカ、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム、タルク、マイカ等が挙げられる。タイヤ用ゴム組成物のゴム補強剤(γ)としては、カーボンブラック及びシリカのうち少なくとも一種以上であることが好ましい。ゴム補強剤も単独で用いても、二種以上組合せて用いても良い。
特にゴム補強剤(γ)としてシリカを用いる場合は、シランカップリング剤を添加剤として使用することもできる。添加剤として使用するシランカップリング剤は、一般式R4 nSiR5 4−nで表わされる有機珪素化合物で、R4はビニル基、アシル基、アリル基、アリルオキシ基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基、アルキル基、フェニル基、水素、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基などから選ばれる反応基を有する炭素数1〜20の有機基であり、R5は、クロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アミノ基などから選ばれる加水分解基であり、nは1〜3の整数を示す。上記のシランカップリング剤のR4としては、ビニル基及び/またはクロル基を含有するものが好ましい。
添加剤のシランカップリング剤の添加量としては、フィラー100質量部に対して0.2〜20質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましく、5〜15質量部が特に好ましい。上記の範囲よりも少ないと、スコーチの原因となることがある。また、上記の範囲よりも多いと、引張り特性、伸びの悪化の原因となることがある。
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、上記各成分を通常行われているバンバリー、オープンロール、ニーダー、二軸混練り機などを用いて混練りすることで得られる。
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物には、必要に応じて、加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸など、通常ゴム業界で用いられる配合剤を混練してもよい。
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウムなどの金属酸化物などを用いることができる。加硫剤は、ゴム成分(α)+(β)100質量部に対して0.5〜3質量部程度を配合することが好ましい。
加硫助剤としては、公知の加硫助剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などを用いることができる。
老化防止剤としては、アミン・ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、リサージュ、珪藻土等の無機充填剤、カーボンブラック、再生ゴム、粉末ゴム等の有機充填剤が挙げられる。
プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい。
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
変性ポリブタジエンの物性、組成物の物性等の測定・評価方法は以下の通りである。
(変性ポリブタジエンの評価)
ミクロ構造:赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス734cm−1、トランス967cm−1、ビニル910cm−1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
数平均分子量(Mn)並びに重量平均分子量(Mw):ポリスチレンを標準物質としてテトラヒドロフランを溶媒として温度40℃で、GPC(株式会社島津製作所製)法により行い、得られた分子量分布曲線から求めた検量線を用いて計算し、数平均分子量並びに重量平均分子量を求めた。
分子量分布:ポリスチレンを標準物質として用いたGPCから求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比であるMw/Mnによって評価した。
ムーニー粘度(ML1+4、100℃):JIS−K6300に従い、株式会社島津製作所製のムーニー粘度計を使用して100℃で1分間予熱したのち、4分間測定して変性ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4、100℃)として表示した。
トルエン溶液粘度(Tcp):得られた変性ポリブタジエン2.28gをトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS−Z8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計No.400を使用して、25℃で測定した。
コールドフロー速度(CF):得られた変性ポリブタジエンを50℃に保ち、内径6.0mmのガラス管で325mmHgの差圧により10分間吸引し、吸い込まれたポリマー重量を測定することにより、1分間当たりに吸引されたポリマー量(mg/min)として求めた。
変性ポリブタジエンの長鎖分岐点の数の測定:
p−キシレン100mLに製造した変性ポリブタジエン1gとp−トルエンスルホニルヒドラジド(p−TSH:水素発生剤)2.5mol当量とを添加し、150℃で5時間反応させた。その後、熱時ろ過・再沈殿(貧溶媒:メタノール)・洗浄(洗浄媒:エタノール)の工程を経て、水素化変性ポリブタジエンを得た。水素化反応の確認はFT−IRおよび1H−NMRを用いて行い、反応の進行を確認した。
変性ポリブタジエンは水素添加によって、その分岐構造を保持したまま、長鎖分岐(炭素数6以上の分岐鎖)と、vinyl−1,2構造に由来する短鎖分岐(エチル基)を有するポリエチレンに転換される。ここで、変性ポリブタジエンに含まれるcis−1,4、trans−1,4、vinyl−1,2構造と、水素添加後の構造を示す。
得られた水素化変性ポリブタジエン70mgをNMR測定管にサンプリングし、ODCB(オルトジクロロベンゼン)/C6D6(4/1(体積比))を0.7mL添加した後、封管した。その後、ヒーティングブロックとヒートガンを用いて、試料を加熱溶解することにより均一化し、13C−NMR測定に供した。
13C−NMR測定は、日本電子株式会社製、EX−400を使用して行った。
まず、短鎖分岐点(ビニル含量)の定量のために、測定温度130℃、積算回数54000回で13C−NMR(通常のシングルパルス)測定を行った。
この通常の13C−NMR測定では、重合体中に微量で存在する長鎖分岐点は、主鎖メチレンピークに起因するダイナミックレンジの問題で、定量することができないが、vinyl−1,2構造に基づく短鎖分岐点は、十分に定量できる。即ち、短鎖分岐点メチン炭素のピークのピーク面積と、主鎖メチレン炭素のピークのピーク面積の比率から、メチレン炭素数とメチン炭素数の量的関係が求まり、これからブタジエンモノマーユニットあたりの短鎖分岐点数(短鎖分岐点数/10,000モノマーユニット)を求めることができる。
水素化変性ポリブタジエンの13C−NMR(シングルパルス)スペクトルの主なピークとその化学シフトを以下の表に示す。化学シフトは、TMS(テトラメチルシラン)を基準とした値である。
主鎖メチレンのピーク面積S
M=ピーク群[M1,M2,M3]のピーク面積の和、
短鎖分岐点メチンのピーク面積S
B=ピーク[B1]のピーク面積、としたとき、
cis−1,4構造およびtrans−1,4構造に基づくメチレン炭素数は、S
M−S
B(に比例する数)となり、cis−1,4構造およびtrans−1,4構造のモノマーユニット数は、(S
M−S
B)/4(に比例する数)となる。
vinyl−1,2構造のモノマーユニット数、即ち短鎖分岐点の数は、S
B(に比例する数)となる。
よって、ブタジエンモノマーユニットあたりの短鎖分岐点数(短鎖分岐点数/1モノマーユニット)は、
SB/[(SM−SB)/4+SB]×100(mol%) (1)
として算出できる。
次いで、長鎖分岐点と短鎖分岐点の比率、長鎖分岐点の定量のために、測定温度130℃、観測範囲10〜42ppm、積算回数64000回で13C−NMR DEPT90°測定を行った。
DEPT(Distorsionless Enhancement by Polarization Transfer)法は、照射するパルス角(θ)に対する13C−NMRスペクトルの強度変化を用いて炭素の級数を区別する方法である。DEPT90°測定(θ=90°を与えるパルスを照射する)では、メチルおよびメチレン炭素のピークが消失または大きく減衰し、メチン炭素のピークを観察することができる。即ち、DEPT90°測定により、水素化重合体の主鎖のメチレン炭素に基づくピークを消失または大きく減衰させるので、通常のNMR測定で問題となるピーク強度の大きい主鎖メチレンピークに起因するダイナミックレンジの問題が解消される。その結果、重合体中に微量で存在する長鎖分岐点を高感度に検出することができる。
DEPT90°測定の結果、短鎖分岐点のメチン炭素と長鎖分岐点のメチン炭素は、異なるピークとして、定量可能な感度(強度、S/N比)で観測される。即ち、短鎖分岐点メチン炭素のピークのピーク面積と、長鎖分岐点のメチン炭素のピークのピーク面積の比から、短鎖分岐点数に対する長鎖分岐点数の比率(長鎖分岐点数/短鎖分岐点数)を求めることができる。
水素化変性ポリブタジエンの13C−NMR(DEPT90°)スペクトルの主なピークとその化学シフトを以下の表に示す。化学シフトは、TMS(テトラメチルシラン)を基準とした値である。
短鎖分岐点メチンのピーク面積(S
B *)=ピーク[B1
*]のピーク面積、
長鎖分岐点メチンのピーク面積(S
L)=ピーク[L]のピーク面積、としたとき、
短鎖分岐点数に対する長鎖分岐点数の比率(長鎖分岐点数/短鎖分岐点数)は、
S
L/S
B * (2)
として算出できる。
そして、上記式(1)で算出したブタジエンモノマーユニットあたりの短鎖分岐点数(短鎖分岐点数/1モノマーユニット)と、上記式(2)で算出した短鎖分岐点数に対する長鎖分岐点数の比率(長鎖分岐点数/短鎖分岐点数)から、ブタジエンモノマーユニット10,000個あたりの長鎖分岐点の数を算出することができる。
即ち、ブタジエンモノマーユニット10,000個あたりの長鎖分岐点の数は、
(長鎖分岐点数/短鎖分岐点数)×(短鎖分岐点数/1モノマーユニット)×10,000
として算出できる。
粘弾性測定(Y(50%)/Y(10%)の測定):
変性ポリブタジエン7.5gをトルエン200mlに溶解した。次いで、この溶液に流動パラフィン7.5gを添加し、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用い、60℃で8時間真空乾燥した。得られた変性ポリブタジエンの流動パラフィン50質量%溶液は15gであった。
変性ポリブタジエン1.5gをトルエン200mlに溶解した。次いで、この溶液に流動パラフィン13.5gを添加し、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用い、60℃で8時間真空乾燥した。得られた変性ポリブタジエンの流動パラフィン10質量%溶液は15gであった。
得られた変性ポリブタジエンの流動パラフィン50質量%溶液と10質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性をそれぞれ測定した。測定は、直径25mmあるいは7.9mmのパラレルプレートを装着したTA Instruments社製ARESを用いて、窒素気流中で行った。測定周波数範囲は100〜0.01rad/sであり、測定温度は0℃、20℃、40℃、60℃、80℃、100℃である。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載の温度−時間の重ねあわせにより、広い周波数範囲におけるG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを得る。
得られたG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを用いて、X=G’’/C2=20,000Pa(濃度換算G’’)になる時の変性ポリブタジエンの流動パラフィン溶液濃度Cを求め、Y=G’/C2(濃度換算G’)を求めた。そして、流動パラフィン50質量%溶液の測定値から求められるY(Y(50%))と、流動パラフィン10質量%溶液の測定値から求められるY(Y(10%))の比(Y(50%)/Y(10%))を算出した。
(組成物の評価)
引張応力:JIS K6251に準拠して100%及び300%引張応力を測定し、表3に記載された比較例R1を100として指数表示した(指数は大きいほど良好)。
耐摩耗性(DIN摩耗試験):DIN摩耗試験は、JIS K6264−2に規定されている測定法に従い行った。表3に記載された比較例R1を100として指数表示した(指数は大きいほど良好)。
反撥弾性:JIS K6255に従い、ダンロップ・トリプソメーターを使用して室温で反撥弾性を測定し、表3に記載された比較例R1を100として指数表示した(指数は大きいほど良好)。
低発熱性・永久歪:JIS K6265に規定されている測定方法に準じて測定し、表3に記載された比較例R1を100として指数表示した(指数は大きいほど良好)。
低燃費性(tanδ(60℃)):粘弾性測定装置(GABO社製、EPLEXOR 100N)を用い、温度範囲−120℃〜100℃、周波数16Hz、動歪み0.3%で測定し、60℃におけるtanδを低燃費性の指標として用いた。表3に記載された比較例R1を100として指数表示した。低燃費性(tanδ)は小さいほうがよい。なお、表3中の指数は低燃費性がよいほど大きくなるように記載した。
(実施例1)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン溶媒500ml及び1,3−ブタジエン500mlからなる溶液を仕込んだ。次いで、トリエチルアルミニウム(TEAL)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)3.5mlを添加した。次に、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム(Tb(dpm)3)のシクロヘキサン溶液(0.010mol/L)0.40mlを添加した後、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.004mol/L)2.0mlを添加した。50℃で20分間重合した後、変性剤の4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのトルエン溶液(1mol/L)2.0mlを添加し、同温度で15分間変性反応を行った。老化防止剤を含むエタノール溶液6mlを添加し、変性反応を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、変性ポリブタジエンを回収した。次いで、回収した変性ポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。そして、合成した変性ポリブタジエンの物性測定を行った。重合条件、及び重合結果、合成した変性ポリブタジエンの物性の測定結果を表1に示した。
(実施例2)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン溶媒500ml及び1,3−ブタジエン500mlからなる溶液を仕込んだ。次いで、トリエチルアルミニウム(TEAL)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)2.5mlを添加した。次に、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム(Dy(dpm)3)のシクロヘキサン溶液(0.010mol/L)1.0mlを添加した後、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.004mol/L)5.0mlを添加した。30℃で25分間重合した後、変性剤の4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのトルエン溶液(1mol/L)2.0mlを添加し、同温度で15分間変性反応を行った。老化防止剤を含むエタノール溶液6mlを添加し、変性反応を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、変性ポリブタジエンを回収した。次いで、回収した変性ポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。そして、合成した変性ポリブタジエンの物性測定を行った。重合条件、及び重合結果、合成した変性ポリブタジエンの物性の測定結果を表1に示した。
(実施例3)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン溶媒500ml及び1,3−ブタジエン500mlからなる溶液を仕込んだ。次いで、トリエチルアルミニウム(TEAL)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)2.5mlを添加した。次に、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ホルミウム(Ho(dpm)3)のシクロヘキサン溶液(0.010mol/L)1.0mlを添加した後、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.004mol/L)5.0mlを添加した。40℃で25分間重合した後、変性剤の4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのトルエン溶液(1mol/L)2.0mlを添加し、同温度で15分間変性反応を行った。老化防止剤を含むエタノール溶液6mlを添加し、変性反応を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、変性ポリブタジエンを回収した。次いで、回収した変性ポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。そして、合成した変性ポリブタジエンの物性測定を行った。重合条件、及び重合結果、合成した変性ポリブタジエンの物性の測定結果を表1に示した。
(参考例1)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン溶媒545ml及びブタジエン550mlからなる溶液を仕込んだ。次いで、トリエチルアルミニウム(TEAL)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)3.4mlを添加した。次に、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジスプロシウム(Dy(dpm)3)のシクロヘキサン溶液(0.005mol/L)0.88mlを添加した後、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.004mol/L)2.2mlを添加した。50℃で20分間重合した後、変性反応を行うことなく、老化防止剤を含むエタノール溶液5mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで、回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。そして、合成したポリブタジエンの物性測定を行った。重合条件、及び重合結果、合成したポリブタジエンの物性の測定結果を表1に示した。
(比較例1)
JSR株式会社製、JSR BR01(Ni系触媒を用いて重合されたポリブタジエン)の物性の測定結果を表1に示した。
表1に示すとおり、実施例1〜3および参考例1で得られた変性ポリブタジエンまたは未変性ポリブタジエンは、分子のリニアリティ(線状性)の指標であるTcp/ML1+4が1.3以上5.0以下で比較的大きく、コールドフロー速度(CF)が5.5mg/min以下でコールドフロー特性にも優れている。
(実施例R1)
実施例1で合成した変性ポリブタジエンを用い、表2に示す配合処方に従って、プラストミルで天然ゴム、カーボンブラック(ISAF)、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤(住友化学株式会社製 アンチゲン6C)、オイル(株式会社ジャパンエナジー製 ナフテニックオイル)を加えて混練する一次配合を実施し、次いでロールにて加硫促進剤(大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーNS)、硫黄を添加する二次配合を実施することで、配合ゴムを作製した。更にこの配合ゴムを目的物性に応じて成型し、150℃にてプレス加硫して加硫物を作製し、その物性測定を行った。各種配合物の物性の測定結果を表3に示した。
(実施例R2)
実施例1に従って合成した変性ポリブタジエンに代えて、実施例2に従って合成した変性ポリブタジエンを用いた以外は実施例R1と同様にして配合ゴムを作製し、成型、プレス加硫した加硫物の物性測定を行った。各種配合物の物性測定結果を表3に示した。
(実施例R3)
実施例1に従って合成した変性ポリブタジエンに代えて、実施例3に従って合成した変性ポリブタジエンを用いた以外は実施例R1と同様にして配合ゴムを作製し、成型、プレス加硫した加硫物の物性測定を行った。各種配合物の物性測定結果を表3に示した。
(参考例R1)
実施例1に従って合成した変性ポリブタジエンに代えて、参考例1に従って合成したポリブタジエンを用いた以外は実施例R1と同様にして配合ゴムを作製し、成型、プレス加硫した加硫物の物性測定を行った。各種配合物の物性測定結果を表3に示した。
(比較例R1)
実施例1に従って合成した変性ポリブタジエンに代えて、ポリブタジエンとして比較例1のJSR株式会社製、JSR BR01を用いた以外は実施例R1と同様にして配合ゴムを作製し、成型、プレス加硫した加硫物の物性測定を行った。各種配合物の物性測定結果を表3に示した。
表2中の数値は、質量部である。
表3中の数値は、JSR株式会社製、JSR BR01を用いた比較例R1の各特性値を基準(100)としたときに、各項目についてそれぞれ指数表示したものである。数値が大きいほど特性が優れていることを示している。
表3に示すとおり、参考例1で得られたポリブタジエンを用いた参考例R1の組成物は、JSR株式会社製、JSR BR01を用いた比較例R1の組成物よりも、機械強度(引張応力)、反撥弾性、耐摩耗性、低発熱性、永久歪、低燃費性[tanδ(60℃)]に優れている。さらに、実施例1〜3で得られた変性ポリブタジエンを用いた実施例R1〜R3の組成物は、参考例1で得られたポリブタジエンを用いた参考例R1の組成物よりも、機械強度(引張応力)、反撥弾性、低発熱性、永久歪に優れる。