JP2017105069A - 透明導電性フィルム積層体、及びそれを含むタッチパネル - Google Patents

透明導電性フィルム積層体、及びそれを含むタッチパネル Download PDF

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Abstract

【課題】斜め方向から観察した場合でも、外光の反射によって生じる虹ムラを十分抑制できる透明導電性フィルム積層体、及びそれを含むタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明導電膜6と第一透明樹脂フィルム4と接着剤層8と第二透明樹脂フィルム9とをこの順で有する透明導電性フィルム積層体であって、前記第一透明樹脂フィルム4は、面内位相差値R0が150nm以下であり、前記第二透明樹脂フィルム9は、面内位相差値R0が10000nm以上、遅相軸に対して方位角45°の方向に法線方向から極角30°で傾斜させた方向における位相差値R30が10000nm以上であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電膜と複数の透明樹脂フィルムとを有する透明導電性フィルム積層体、及びそれを含むタッチパネルに関する。
最近では、タブレット、スマートフォン、タッチパネル付きPCの普及により、屋外で電子機器を扱う機会が増えている。屋外にてディスプレイを見る際に偏光サングラスを着用した状態で見ることも多く、その際にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた透明導電性フィルムを使用していると、PETフィルム自体の面内位相差(一般的には1000〜2000nm)により虹ムラが発生し、ディスプレイの視認性を大きく低下させるという問題があった。
このため、位相差値の小さい基材(ポリシクロオレフィンなど)を用いた透明導電膜の開発が進められてきた。しかし、ポリシクロオレフィンなどは、材料強度が弱いなどのデメリットがあり、安価で強度の高い材料の使用が検討されている。また、他の材料を用いて位相差を小さくするために、厚みを薄くすると、製造時や部材を加工する際のハンドリング性が低下するという問題もある。
このような理由から、特許文献1には、面内位相差値が4000nm以上の延伸したポリエステル等からなる透明樹脂フィルムを基材とする透明導電性フィルムが提案されている。この透明導電性フィルムによると、偏光サングラスを通じて視認した場合にも、色むらが生じにくくなる。
また、同様の効果を得る目的で、特許文献2には、面内位相差値が3000nm以上の高レタデーションフィルムと、面内位相差値が3000nm未満の低レタデーションフィルムとを積層した基材を有する透明導電性フィルムが開示されている。
特開2004−214069号公報 特開2014−157238号公報
しかしながら、特許文献2のように、高レタデーションフィルムと低レタデーションフィルムとを積層した場合、正面から観察した際の虹ムラは改善されるものの、斜め方向(極角が30〜60°)から観察すると、外光の反射によって生じる虹ムラが発生することが判明した。
そこで、本発明の目的は、斜め方向から観察した場合でも、外光の反射によって生じる虹ムラを十分抑制できる透明導電性フィルム積層体、及びそれを含むタッチパネルを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高レタデーションフィルムの面内位相差値R0と斜め方向の位相差値R30とを所定の範囲内とし、かつ低レタデーションフィルムの面内位相差値R0を所定の範囲内とすることにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の透明導電性フィルム積層体は、透明導電膜と第一透明樹脂フィルムと接着剤層と第二透明樹脂フィルムとをこの順で有する透明導電性フィルム積層体であって、前記第一透明樹脂フィルムは、面内位相差値R0が150nm以下であり、前記第二透明樹脂フィルムは、面内位相差値R0が10000nm以上、遅相軸に対して方位角45°の方向に法線方向から極角30°で傾斜させた方向における位相差値R30が10000nm以上であることを特徴とする。なお、本発明における各種の物性値は、実施例等において採用する方法により測定される値である。
一般的に使用される、二軸延伸されたポリエステル系樹脂フィルムは、面内位相差が1000〜2000nm程度であり、これを透明導電性フィルム積層体の基材に用いると、波長分散によって偏光を非偏光化する効果が不十分となり、虹ムラが生じてしまう。これに対して、面内位相差を3000nm以上にすると、波長分散の影響を少なくして、偏光を非偏光化する効果が大きくなるが、本発明のように、各位相差値R0、R0、R30を適切な範囲とすることで、実施例の結果が示すように、斜め方向から観察した場合でも、外光の反射によって生じる虹ムラを十分抑制できる。
その理由の詳細は明確でないが、次のように考えられる。つまり、法線方向から傾斜した方向では、第二透明樹脂フィルムの位相差値が面内位相差値から変化するが、斜め方向(極角が30〜60°)から観察すると、極角の変化による位相差値への影響が大きくなり、特に外光の反射によって生じる虹ムラが発生し易くなる。これに対して、本発明のように、面内位相差値R0だけでなく、遅相軸に対して方位角45°の方向に法線方向から極角30°で傾斜させた方向における位相差値R30を10000nm以上とすることで、斜め方向からの光に対しても十分な位相差値を確保することができるため、全ての方位角で斜め方向から観察した場合でも、外光の反射によって生じる虹ムラを抑制できると考えられる。
上記において、前記第一透明樹脂フィルムは、厚み方向位相差値Rthが2000nm以下であることが好ましい。第一透明樹脂フィルムの厚み方向位相差値Rthが小さいことにより、第一透明樹脂フィルムにおける、極角の変化による位相差値への影響を少なくすることができるため、斜め方向から観察した場合の虹ムラの抑制効果がより確実に得られると考えられる。
また、前記第二透明樹脂フィルムは、長尺体又は矩形状の枚葉体であり、長辺又は短辺に対して配向軸が10〜45°の角度を有することが好ましい。透明導電性フィルムは、液晶セルなどの矩形の光学表示装置に積層して使用されることが多く、また前記光学表示装置からの光はその長辺に平行又は垂直の偏光であることが多い。このため、本発明では、第二透明樹脂フィルムの配向軸が長辺又は短辺に対して10〜45°の角度を有することで、偏光に対して10〜45°の角度で遅相軸を配置し易くなり、透明樹脂フィルムにより偏光を円偏光化する作用が大きくなり、十分な虹ムラの抑制効果が得られ易くなる。
また、前記第一透明樹脂フィルムと前記透明導電膜との間には、少なくとも1層の光学調整層を有することが好ましい。光学調整層により屈折率を制御できるため、透明導電膜をパターン化した際のパターン形成部とパターン開口部との反射率差を低減することができ、透明導電膜パターンが見えにくく、タッチパネル等の表示装置において視認性が良好になる。
前記第一透明樹脂フィルム又は前記第二透明樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に、硬化樹脂層を有することが好ましい。硬化樹脂層は、搬送時の傷付き等を防止するためのハードコート層として機能し、表面に凹凸を生じさせることでアンチブロッキング層としても機能させることができる。
一方、本発明のタッチパネルは、本発明の透明導電性フィルム積層体を含むことを特徴とする。本発明の透明導電性フィルム積層体を用いることにより、斜め方向から観察した場合でも、外光の反射によって生じる虹ムラを十分抑制できるタッチパネルを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルム積層体の模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルム積層体の模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルム積層体の模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルム積層体の模式的断面図である。
<積層体の構造>
本発明の透明導電性フィルム積層体は、図1〜図3に示すように、透明導電膜6と第一透明樹脂フィルム4と接着剤層8と第二透明樹脂フィルム9とをこの順で有するを有するものであり、第一透明樹脂フィルム4と透明導電膜6との間には、少なくとも1層の光学調整層7を有することが好ましい。また、図2〜図3に示すように、第一透明樹脂フィルム4又は第二透明樹脂フィルム9の少なくとも一方の表面に、アンチブロッキング層3やハードコート層5などの硬化樹脂層を有していてもよい。更に、透明導電性フィルム積層体は、図4に示すように、第二透明樹脂フィルム9の透明導電膜6が設けられていない面側に、粘着剤層2と保護フィルム1とをこの順で有していてもよく、その場合、キャリアフィルム10が、粘着剤層2と保護フィルム1とから構成されている。
(第一透明樹脂フィルム)
第一透明樹脂フィルムとしては、位相差が所定の範囲内になるものであれば、透明性を有する各種のプラスチックフィルムをいずれも使用することができる。
当該プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリシクロオレフィン、ポリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。これら材料の中でも、スパッタリング時の耐熱性や、位相差を所定の範囲内に制御し易い観点から、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネートを用いることが好ましい。
特に、第一透明樹脂フィルムとしては、十分な強度を有し、材料費が安価で生産性も良好な観点から、二軸延伸されたポリエステル系樹脂フィルムが好ましく用いられる。「二軸延伸された」とは、少なくとも2方向にフィルムの延伸が行われていることを指し、2方向延伸は同時又は逐次の何れでもよい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル、変性ポリエステル、およびそれらのブレンドから選択されるポリエステル系樹脂が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、カルボン酸成分とポリオール成分との縮合重合により得たものを使用することができる。
カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、1,4−ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4′−オキシ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、ゼバシン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸が挙げられる。カルボン酸成分は、エステル、塩化物、酸無水物のような誘導体であってもよく、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチルおよびテレフタル酸ジフェニルを含む。カルボン酸成分は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ポリオール成分としては、代表的には二価アルコールが挙げられる。二価アルコールとしては、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールが挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、4,4′−チオジフェノール、4,4′−メチレンジフェノール、4,4′−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4′−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4′−イソプロピリデンフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(2,6−シクロロフェノール)2,5−ナフタレンジオールおよびp−キシレンジオールが挙げられる。ポリオール成分は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
好ましいカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。好ましいポリオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
ポリエステルの構造は、以上のようなモノマーの組合せにより決定される。したがって、好ましいポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ならびに、これらの共重合体、ブレンドおよび変性体が挙げられる。
第一透明樹脂フィルムは、二軸延伸された長尺状のフィルム(長尺体)として製造される。本明細書において「長尺状」とは、幅に対する長さの比が10以上の細長形状をいう。透明樹脂フィルムの幅に対する長さの比は、好ましくは30以上であり、より好ましくは100以上である。1つの実施形態においては、透明樹脂フィルムはロール状に巻回された長尺体であり、また、別の実施形態においては、透明樹脂フィルムは矩形状の枚葉体である。
第一透明樹脂フィルムは、その配向軸が、長辺又は短辺に対して何れの角度を有していてもよいが、生産性の観点から、長辺又は短辺に対して配向軸が平行であることが好ましい。
第一透明樹脂フィルムの面内位相差R0は、虹ムラの抑制効果をより高める観点から、0〜150nmであり、好ましくは10〜130nmであり、より好ましくは20〜110nmである。
ここで、面内位相差R0(R0、R0)は、23℃における波長590nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。R0は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:R0=(nx−ny)×dによって求められる。ここで、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは面内で遅相軸と直交する方向の屈折率である。
第一透明樹脂フィルムの厚み方向位相差Rthは、虹ムラの抑制効果をより高めると共に、十分な強度を得る観点から、好ましくは2000nm以下であり、より好ましくは
350〜950nmであり、更に好ましくは300〜900nmである。
ここで、厚み方向位相差Rth(Rth)は、23℃における波長590nmの光で測定したフィルムの厚み方向位相差である。Rthは、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。ここで、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。
本発明では、位相差の比R0/Rthも重要であり、虹ムラの抑制効果をより高めると共に、十分な強度を得る観点から、位相差の比R0/Rthは、0.01〜0.5が好ましく、0.02〜0.47がより好ましく、0.04〜0.45が更に好ましい。
第一透明樹脂フィルムは、80℃で240時間加熱後の寸法収縮率が好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。
第一透明樹脂フィルムは、X線回折法(XRD)で測定される結晶化度が好ましくは25%以上であり、より好ましくは30%以上である。結晶化度の上限は、例えば70%である。結晶化度がこのような範囲であれば、延伸後のフィルムを加熱した際にフィルムが収縮せず、また、位相差や配向角などの光学特性が変化し難いという利点がある。
第一透明樹脂フィルムの厚みは、上記のような面内位相差と厚み方向位相差とを得ると共に、ハンドリング性を高める観点から、5〜50μmが好ましく、7μm〜40μmがより好ましく、10〜30μmが更に好ましい。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは65℃〜80℃であり、より好ましくは70℃〜75℃である。ガラス転移温度が過度に低いと、所望の寸法収縮率が得られない場合がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10000〜100000であり、より好ましくは15000〜50000である。このような重量平均分子量であれば、成形時の取り扱いが容易であり、かつ、優れた機械的強度を有するフィルムが得られ得る。
第一透明樹脂フィルムには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理(易接着層)を施して、第一透明樹脂フィルム上に形成される光学調整層、硬化樹脂層、透明導電膜等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、光学調整層等を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、第一透明樹脂フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
(第二透明樹脂フィルム)
第二透明樹脂フィルムとしては、位相差が所定の範囲内になるものであれば、透明性を有する各種のプラスチックフィルムをいずれも使用することができる。
当該プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリシクロオレフィン、ポリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
これら材料の中でも、位相差を所定の範囲内に制御し易い観点から、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネートが好ましい。特に、第二透明樹脂フィルムとしては、十分な強度を有し、材料費が安価で生産性も良好な観点から、二軸延伸されたポリエステル系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
第二透明樹脂フィルムとして使用されるポリエステル系樹脂は、第一透明樹脂フィルムとして例示したポリエステル系樹脂を何れも使用することができる。
第二透明樹脂フィルムは、二軸延伸された長尺状のフィルムとして製造される。本明細書において「長尺状」とは、幅に対する長さの比が10以上の細長形状をいう。第二透明樹脂フィルムの幅に対する長さの比は、好ましくは30以上であり、より好ましくは100以上である。1つの実施形態においては、第二透明樹脂フィルムはロール状に巻回されている。
第二透明樹脂フィルムは、その配向軸が、長辺又は短辺に対して10〜45°の角度を有することが好ましく、20〜45°の角度がより好ましく、30〜45°の角度が最も好ましい。なお、本発明の透明導電性フィルムは、第二透明樹脂フィルムの配向軸が、表示装置から出射される直線偏光の振動方向に対して、10〜80°の角度で配置されることが好ましく、20〜70°の角度で配置されることがより好ましく、30〜60°の角度で配置されることが更に好ましい。
このため、長尺状のフィルムの遅相軸の方向がフィルムの幅方向の全域にわたって長尺方向に対して30°〜60°の範囲、好ましくは38°〜52°の範囲、より好ましくは43°〜47°の範囲にあり、さらに好ましくは遅相軸方向が長尺方向に対して45°程度の角度をなしている。第二透明樹脂フィルムは、斜め延伸を含む製造方法を適用することにより、優れた軸精度で斜め方向に遅相軸を有する第二透明樹脂フィルムを得ることができる。
第二透明樹脂フィルムの遅相軸と、第一透明樹脂フィルムの遅相軸とは、何れの角度で配置することも可能である。但し、生産性等の観点より、両者の遅相軸のなす角度は、25〜75°が好ましく、30〜65°がより好ましい。
第二透明樹脂フィルムの面内位相差R0は、10000nm以上であり、フィルム強度の観点から、好ましくは10000〜20000nmであり、より好ましくは10000〜15000nmである。
第二透明樹脂フィルムの遅相軸に対して方位角45°の方向に法線方向から極角30°で傾斜させた方向における位相差値R30は10000nm以上であり、フィルム強度
の観点から、好ましくは11000〜20000nmであり、より好ましくは12000〜18000mである。
位相差値R30は、23℃における波長590nmの光で測定したフィルムの位相差であり、実際に、遅相軸に対して方位角45°の方向に法線方向から極角30°で傾斜させた方向における位相差を、偏光・位相差測定システムにより測定して決定される。
第二透明樹脂フィルムの厚みは、上記のような位相差値R0とR30を得ると共に、積層体としてのハンドリング性を高める観点から、75〜250μmが好ましく、1000〜225μmがより好ましく、125〜200μmが更に好ましい。
ポリエステル系樹脂は、任意の適切な方法によりフィルムに成形され得る。得られたポリエステル系樹脂フィルムは、縦および横の二軸に延伸する方法で、二軸延伸フィルムとすることができる。その際、特開2015−72376号公報に開示されているように、斜め延伸を含む製造方法に供することにより、斜め方向に配向軸を有する第二透明樹脂フィルムを好適に得ることができる。
つまり、延伸対象のフィルムの左右端部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持すること(工程A:把持工程);該フィルムを予熱すること(工程B:予熱工程);該左右のクリップのクリップピッチをそれぞれ独立して変化させて、該フィルムを斜め延伸すること(工程C:延伸工程);必要に応じて、該左右のクリップのクリップピッチを一定とした状態で、該フィルムを熱処理して結晶化させること(工程D:結晶化工程);および、該フィルムを把持するクリップを解放すること(工程E:解放工程);を含む、斜め延伸を含む製造方法により、本発明で使用する第二透明樹脂フィルムを好適に製造することができる。
第二透明樹脂フィルムを製造する際に、位相差値R30を所定の範囲に制御するためには、nx、ny、nzがnx−ny<{nx−nz}、nx<{ny−nz}の関係となるように、二軸延伸の条件を調整することが好ましい。
第二透明樹脂フィルムには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理(易接着層)を施して、第二透明樹脂フィルム上に形成される光学調整層、硬化樹脂層、透明導電膜等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、光学調整層等を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、第二透明樹脂フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
(接着剤層)
接着剤層は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型、自然硬化型などの硬化型接着剤、又は感圧型接着剤(粘着剤)により形成することができるが、活性エネルギー線硬化型接着剤を使用するのが好ましい。なお、感圧型接着剤としては、後述する粘着剤を使用することができる。
活性エネルギー線硬化型接着剤層の形成には、例えば、ラジカル硬化型接着剤が好適に用いられる。ラジカル硬化型接着剤としては、電子線硬化型、紫外線硬化型等の活性エネルギー線硬化型の接着剤を例示できる。特に短時間で硬化可能な、活性エネルギー線硬化型が好ましく、さらには低エネルギーで硬化可能な紫外線硬化型接着剤が好ましい。
紫外線硬化型接着剤としては、大きくラジカル重合硬化型接着剤とカチオン重合型接着剤に区分出来る。その他、ラジカル重合硬化型接着剤は熱硬化型接着剤として用いることができる。
ラジカル重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物が挙げられる。これら硬化性成分は、単官能または二官能以上のいずれも用いることができる。またこれら硬化性成分は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1−20)アルキルエステル類が挙げられる。
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2−イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5−ノルボルネン−2−イル−メチル(メタ)アクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメチル−ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)等が挙げられる。
また、前記以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド(SP値22.9)、N−エトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー等が挙げられる。また、アクリロイルモルホリン等の窒素含有モノマー等が挙げられる。
また、前記ラジカル重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性二重結合を複数個有する化合物を例示することができ、当該化合物は、架橋成分として接着剤成分に混合することもできる。かかる架橋成分になる硬化性成分としては、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、アロニックスM−220(東亞合成社製)、ライトアクリレート1,9ND−A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE−4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学社製)、SR−531(Sartomer社製)、CD−536(Sartomer社製)等が挙げられる。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
ラジカル重合硬化型接着剤は、前記硬化性成分を含むが、前記成分に加えて、硬化のタイプに応じて、ラジカル重合開始剤を添加する。前記接着剤を電子線硬化型で用いる場合には、前記接着剤にはラジカル重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型、熱硬化型で用いる場合には、ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤の使用量は硬化性成分100重量部あたり、通常0.1〜10重量部程度、好ましくは、0.5〜3重量部である。また、ラジカル重合硬化型接着剤には、必要に応じて、カルボニル化合物などで代表される電子線による硬化速度や感度を上がる光増感剤を添加することもできる。光増感剤の使用量は硬化性成分100重量部あたり、通常0.001〜10重量部程度、好ましくは、0.01〜3重量部である。
カチオン重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物等が例として挙げられる。
また、接着剤層を形成には、水系の硬化型接着剤として、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。このような水系接着剤からなる接着剤層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。
前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。またポリビニルアルコール系樹脂としては、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が耐久性を向上させる点からより好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂に配合できる架橋剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物が好ましく使用できる。例えば、ホウ酸やホウ砂、カルボン酸化合物、アルキルジアミン類;イソシアネート類;エポキシ類;モノアルデヒド類;ジアルデヒド類;アミノ−ホルムアルデヒド樹脂;さらに二価金属、または三価金属の塩およびその酸化物が挙げられる。
前記硬化型接着剤層を形成する接着剤は、必要であれば適宜添加剤を含むものであっても良い。添加剤の例としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、エチレンオキシドで代表される接着促進剤、透明保護フィルムとの濡れ性を向上させる添加剤、アクリロキシ基化合物や炭化水素系(天然、合成樹脂)などに代表され、機械的強度や加工性などを向上させる添加剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤(金属化合物フィラー以外)、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止割、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤等の安定剤等が挙げられる。
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
また、接着剤層の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5μm、さらに好ましくは0.3〜4μmである。
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層は、前記第一透明樹脂フィルム又は前記第二透明樹脂フィルムの一方の第1主面側に設けられた第1の硬化樹脂層と、反対側の第2主面側に設けられた第2の硬化樹脂層とを含む。透明樹脂フィルムは、透明導電膜の形成や透明導電膜のパターン化または電子機器への搭載などの各工程で傷が入りやすいので、上記のように、透明樹脂フィルムの両面に第1の硬化樹脂層と第2の硬化樹脂層とを形成することが好ましい。
硬化樹脂層は、硬化型樹脂を硬化させることにより得られた層である。用いる樹脂としては、硬化樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できるが、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられる。これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく硬化樹脂層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂であり、より好ましくはアクリル系樹脂である。
硬化樹脂層は粒子を含んでいてもよい。硬化樹脂層に粒子を配合することにより、硬化樹脂層の表面に隆起を形成することができ、透明導電性フィルムに耐ブロッキング性を好適に付与することができる。
上記粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスチックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子やシリコーン系粒子などがあげられる。前記粒子は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系粒子が好ましい。有機系粒子としては、屈折率の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
粒子の最頻粒子径は、硬化樹脂層の隆起の突出度や隆起以外の平坦領域の厚みとの関係などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。なお、透明導電性フィルムに耐ブロッキング性を十分に付与し、かつヘイズの上昇を十分に抑制するという観点から、粒子の最頻粒子径は0.1〜3μmが好ましく、0.5〜2.5μmがより好ましい。なお、本明細書において、「最頻粒子径」とは、粒子分布の極大値を示す粒径をいい、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPTA−3000S」)を用いて、所定条件下(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)で測定することによって求められる。測定試料は、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させたものを用いる。
粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.05〜1.0重量部であることが好ましく、0.1〜0.5重量部であることがより好ましく、0.1〜0.2重量部であることがさらに好ましい。硬化樹脂層中の粒子の含有量が小さいと、硬化樹脂層の表面に耐ブロッキング性や易滑性を付与するのに十分な隆起が形成され難くなる傾向がある。一方、粒子の含有量が大きすぎると、粒子による光散乱に起因して透明導電性フィルムのヘイズが高くなり、視認性が低下する傾向がある。また、粒子の含有量が大きすぎると、硬化樹脂層の形成時(溶液の塗布時)に、スジが発生し、視認性が損なわれたり、透明導電膜の電気特性が不均一となったりする場合がある。
硬化樹脂層は、各硬化型樹脂と必要に応じて加える粒子、架橋剤、開始剤、増感剤などを含む樹脂組成物を透明樹脂フィルム上に塗布し、樹脂組成物が溶剤を含む場合には、溶剤の乾燥を行い、熱、活性エネルギー線またはその両方のいずれかの適用により硬化させることにより得られる。熱は空気循環式オーブンやIRヒーターなど公知の手段を用いることができるがこれらの方法に限定されない。活性エネルギー線の例としては紫外線、電子線、ガンマ線などがあるが特に限定されない。
硬化樹脂層は、上記の材料を用いて、ウェットコーティング法(塗工法)等により製膜できる。例えば、透明導電膜として酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)を形成する場合、下地層である硬化樹脂層の表面が平滑であると、透明導電膜の結晶化時間を短縮することもできる。かかる観点から、硬化樹脂層はウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。
硬化樹脂層の厚みは、好ましくは0.5μm〜5μmであり、より好ましくは0.7μm〜3μmであり、最も好ましくは0.8μm〜2μmである。硬化樹脂層の厚みが前記範囲にあると、傷付防止や硬化樹脂層の硬化収縮におけるフィルムシワを防止でき、タッチパネル等の視認性が悪化することを防ぐことができる。
(透明導電膜)
透明導電膜は、透明樹脂フィルム上に設けることができるが、透明樹脂フィルムの一方の第1主面側に設けられた第1の硬化樹脂層上に設けられることが好ましい。透明導電膜の構成材料は、無機物を含む限り特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。酸化スズを含有する酸化インジウムを用いる場合、酸化スズの含有量は、透明導電膜中において1〜20重量%が好ましく、3〜15重量%がより好ましい。
透明導電膜の厚みは、特に制限されないが、その表面抵抗を1×10Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚みを10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。透明導電膜の厚みが、10nm未満であると膜表面の電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、透明導電膜の厚みが、35nmを超えると透明性の低下などをきたす場合がある。
透明導電膜の形成方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。なお、第1の硬化樹脂層上に透明導電膜を形成する場合、透明導電膜がスパッタリング法等のドライプロセスによって形成されれば、透明導電膜の表面は、その下地層である第1の硬化樹脂層表面形状をほぼ維持する。そのため、第1の硬化樹脂層に隆起が存在する場合には、透明導電膜表面にも耐ブロッキング性及び易滑性を好適に付与することができる。
透明導電膜は、必要に応じて加熱アニール処理(例えば、大気雰囲気下、80〜150℃で30〜90分間程度)を施して結晶化することができる。透明導電膜を結晶化することで、透明導電膜が低抵抗化されることに加えて、透明性及び耐久性が向上する。非晶質の透明導電膜を結晶質に転化させる手段は、特に限定されないが、空気循環式オーブンやIRヒーターなどが用いられる。
「結晶質」の定義については、透明樹脂フィルム上に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムを、20℃、濃度5重量%の塩酸に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm間の端子間抵抗をテスタにて測定を行い、端子間抵抗が10kΩを超えない場合、ITO膜の結晶質への転化が完了したものとする。
また、透明導電膜は、エッチング等によりパターン化してもよい。透明導電膜のパターン化に関しては、従来公知のフォトリソグラフィの技術を用いて行うことができる。エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液があげられる。例えば、静電容量方式のタッチパネルやマトリックス式の抵抗膜方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルム積層体においては、透明導電膜がストライプ状にパターン化されることが好ましい。なお、エッチングにより透明導電膜をパターン化する場合、先に透明導電膜の結晶化を行うと、エッチングによるパターン化が困難となる場合がある。そのため、透明導電膜のアニール処理は、透明導電膜をパターン化した後に行うことが好ましい。
透明導電膜は、後述のキャリアフィルムを積層する際に非晶質であっても結晶質であってもよい。例えば、透明導電膜が非晶質の状態の透明導電性フィルムに粘着剤層を介して保護フィルムを貼り合せた後に、アニール処理をして結晶質に転化することが可能である。
前記透明導電膜は、金属ナノワイヤを含むことができる。金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された透明導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、少量の金属ナノワイヤであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電性フィルム積層体を得ることができる。さらに、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成して、光透過率の高い透明導電性フィルム積層体を得ることができる。
前記金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。前記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。なかでも好ましくは、導電性の観点から、銀、銅または金であり、より好ましくは銀である。
(光学調整層)
本発明では、第一透明樹脂フィルム又は第1の硬化樹脂層と透明導電膜との間に、1層以上の光学調整層をさらに含むことができる。光学調整層は、透明導電性フィルム積層体の透過率の上昇や、透明導電膜がパターン化される場合には、パターンが残るパターン部とパターンが残らない開口部の間で透過率差や反射率差を低減でき、視認性に優れた透明導電性フィルム積層体を得るために用いられる。
光学調整層の屈折率は、1.5〜1.8であることが好ましく、1.51〜1.78であることがより好ましく、1.52〜1.75であることが更に好ましい。これにより、透過率差や反射率差を低減でき、視認性に優れた透明導電性フィルム積層体を得ることができる。
光学調整層は、無機物、有機物、あるいは無機物と有機物との混合物により形成される。光学調整層を形成する材料としては、NaF、NaAlF、LiF、MgF、CaF2、SiO、LaF、CeF、Al、TiO、Ta、ZrO、ZnO、ZnS、SiO(xは1.5以上2未満)などの無機物や、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機物が挙げられる。特に、有機物として、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用することが好ましい。光学調整層は、上記の材料を用いて、ウエット法、グラビアコート法やバーコート法などの塗工法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより形成できる。
光学調整層は、平均粒径が1nm〜500nmのナノ微粒子を有していてもよい。光学調整層中のナノ微粒子の含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。光学調整層に用いられるナノ微粒子の平均粒径は、上述のように1nm〜500nmの範囲であることが好ましく、5nm〜300nmであることがより好ましい。また、光学調整層中のナノ微粒子の含有量は10重量%〜80重量%であることがより好ましく、20重量%〜70重量%であることがさらに好ましい。光学調整層中にナノ微粒子を含有することによって、光学調整層自体の屈折率の調整を容易に行うことができる。
ナノ微粒子を形成する無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、中空ナノシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブの微粒子が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光学調整層の厚みは、10nm〜200nmであることが好ましく、20nm〜150nmであることがより好ましく、30nm〜130nmであることがさらに好ましい。光学調整層の厚みが過度に小さいと連続被膜となりにくい。また、光学調整層の厚みが過度に大きいと、透明導電性フィルム積層体の透明性が低下したり、クラックが生じ易くなったりする傾向がある。
(金属層、金属配線)
本発明では、透明導電膜上に金属層又は金属配線を設けることも可能である。金属配線は、金属層を透明導電膜上に形成した後、エッチングにより形成することも可能であるが、以下のように感光性金属ペーストを用いて形成するのが好ましい。即ち、金属配線は、透明導電膜がパターン化された後に、後述の感光性導電ペーストを前記透明樹脂フィルム上または前記透明導電膜上に塗布し、感光性金属ペースト層を形成し、フォトマスクを積層または近接させフォトマスクを介して感光性金属ペースト層に露光を行い、次いで現像を行い、パターン形成した後、乾燥工程を経て得られる。つまり、公知のフォトリソグラフィ法等により、金属配線のパターン形成が可能である。
前記感光性導電ペーストは、金属粉末などの導電性粒子と感光性有機成分とを含むことが好ましい。金属粉末の導電性粒子の材料としては、Ag、Au、Pd、Ni、Cu、AlおよびPtの群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましく、より好ましくはAgである。金属粉末の導電性粒子の体積平均粒子径は0.1μm〜2.5μmであることが好ましい。
金属粉末以外の導電性粒子としては、樹脂粒子表面を金属で被覆した金属被覆樹脂粒子でもよい。樹脂粒子の材料としては、前述のような粒子が含まれるが、アクリル系樹脂が好ましい。金属被覆樹脂粒子は樹脂粒子の表面にシランカップリング剤を反応させ、さらにその表面に金属で被覆することにより得られる。シランカップリング剤を用いることにより、樹脂成分の分散が安定化して、均一な金属被覆樹脂粒子を形成することができる。
感光性導電ペーストはさらにガラスフリットを含んでいてもよい。ガラスフリットは、体積平均粒子径が0.1μm〜1.4μmであることが好ましく、90%粒子径が1〜2μmおよびトップサイズが4.5μm以下であることが好ましい。ガラスフリットの組成としては、特に限定されないが、Biが全体に対して30重量%〜70重量%の範囲で配合されることが好ましい。Bi以外に含んでいてよい酸化物としては、SiO、B、ZrO、Alを含んでよい。NaO、KO、LiOは実質的に含まないアルカリフリーのガラスフリットであることが好ましい。
感光性有機成分は、感光性ポリマーおよび/または感光性モノマーを含むことが好ましい。感光性ポリマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の炭素−炭素二重結合有する化合物から選択された成分の重合体やこれらの共重合体からなるアクリル樹脂の側鎖または分子末端に光反応性基を付加したもの等が好適に用いられる。好ましい光反応性基としてはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などのエチレン性不飽和基が挙げられる。感光性ポリマーの含有量は、1〜30重量%、2〜30重量%であることが好ましい。
感光性モノマーとしては、メタクリルアクリレート、エチルアクリレートなどの(メタ)アクリレート系モノマーや、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられ、1種または2種以上を使用することができる。
感光性導電ペーストにおいては、感光性有機成分が金属粉末100重量部に対して、5〜40重量%含むことが光の感度の点で好ましく、より好ましくは10重量部〜30重量部である。また、本発明の感光性導電ペーストは必要により光重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、有機溶媒を用いることが好ましい。
金属層の厚みは、特に制限されない。例えば、金属層の面内の一部をエッチング等により除去してパターン配線を形成する場合は、形成後のパターン配線が所望の抵抗値を有するように金属層の厚みが適宜に設定される。そのため、金属層の厚みは、0.01〜200μmであることが好ましく、0.05〜100μmであることがより好ましい。金属層の厚みが上記範囲であると、パターン配線の抵抗が高くなりすぎず、デバイスの消費電力が大きくならない。また、金属層の成膜の生産効率が上がり、成膜時の積算熱量が小さくなり、フィルムに熱シワが生じにくくなる。
透明導電性フィルム積層体がディスプレイと組合せて使用するタッチパネル用の透明導電性フィルム積層体である場合、表示部分に対応した部分はパターン化された透明導電膜により形成され、感光性導電ペーストから作製された金属配線は非表示部(例えば周縁部)の配線部分に用いられる。透明導電膜は非表示部でも用いられてよく、その場合は金属配線が透明導電膜上に形成されていてもよい。
<キャリアフィルム>
本発明では、透明導電性フィルム積層体がキャリアフィルムを有していてもよい。キャリアフィルムは、保護フィルムの少なくとも一方の面側に粘着剤層を有する。キャリアフィルムは、粘着剤層を介して剥離可能な透明導電性フィルム積層体と、透明導電性フィルム積層体の第2主面側を貼りあわせて、透明導電性フィルム積層体を形成する。キャリアフィルムを透明導電性フィルム積層体から剥離する際は、粘着剤層は保護フィルムとともに剥離されてもよいし、保護フィルムのみが剥離されてもよい。
(保護フィルム)
保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。保護フィルムとしては、結晶性樹脂又は非晶性樹脂からなるフィルムが使用できる。
結晶性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられるが、ポリエステル系樹脂が好ましい。
非晶性樹脂としては、シクロオレフィン系樹脂やポリカーボネート系樹脂などがあげられるが、優れた光透過性、耐傷性、耐水性を持ち、良好な機械的性質の観点から、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。ポリカーボネート系樹脂には、例えば、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。
保護フィルムは、透明樹脂フィルムと同様に、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り(易接着層)処理を施して、保護フィルム上の粘着剤層等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、粘着剤層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、保護フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
保護フィルムの厚みは、作業性等を向上する観点から、20〜150μmが好ましく、30〜100μmがより好ましく、40〜80μmが更に好ましい。
(粘着剤層)
粘着剤層としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
粘着剤層の形成方法は特に制限されず、剥離ライナーに粘着剤組成物を塗布し、乾燥後、基材フィルムに転写する方法(転写法)、保護フィルムに、直接、粘着剤組成物を塗布、乾燥する方法(直写法)や共押出しによる方法等があげられる。なお粘着剤には、必要に応じて粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を適宜に使用することもできる。粘着剤層の好ましい厚みは5μm〜100μmであり、より好ましくは10μm〜50μmであり、より好ましくは15μmから35μmである。
<タッチパネル>
透明導電性フィルム積層体からキャリアフィルム又は保護フィルムを剥離した透明導電性フィルム積層体は、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどの電子機器の透明電極として好適に適用できる。
タッチパネルの形成に際しては、前述した透明導電性フィルム積層体の一方または両方の主面に透明な粘着剤層を介して、ガラスや高分子フィルム等の他の基材等を貼り合わせることができる。例えば、透明導電性フィルム積層体の透明導電膜が形成されていない側の面に透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わせられた積層体を形成してもよい。透明基体は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(例えば透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。また、透明導電性フィルム積層体に貼り合わせる透明基体の外表面にハードコート層を設けることもできる。透明導電性フィルム積層体と基材との貼り合わせに用いられる粘着剤層としては、前述の通り、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。
本発明の透明導電性フィルム積層体をタッチパネルの形成に用いた場合、低位相差のポリエステルを基材として使用することで、十分な材料強度を有し、材料費が安価で生産性も良好で、しかも斜め方向から観察した場合でも、外光の反射によって生じる虹ムラを十分抑制できるタッチパネルを提供できる。タッチパネル用途以外であれば、電子機器から発せられる電磁波やノイズをシールドするシールド用途に用いることができる。
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例等における物性等は次のようにして測定した。
(位相差)
偏光・位相差測定システム(Axometrics製 製品名「AxoScan」)を用い、23℃の環境下にて、測定波長590nmで透明樹脂フィルムの面内位相差の測定を行った。また、同様にして、遅相軸に対して方位角45°の方向に法線方向から極角30°で傾斜させた方向における位相差を測定した。同様にして、遅相軸方向および進相軸方向を回転中心としてフィルムを40°傾斜した際の位相差を測定した。なお、位相差の測定値の次数は、予め求めた透明樹脂フィルムの位相差の波長分散と一致するように決定した。これらの測定値から、透明樹脂フィルムの面内位相差値(R0)と厚み方向位相差値(Rth)と斜め方向の位相差値(R30)を算出した。
(厚みの測定)
厚みは、1μm以上の厚みを有するものに関しては、マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて測定を行った。また、1μm未満の厚みや光学調整層の厚みは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製 MCPD2000)で測定した。ITO膜等の厚みのようにナノサイズの厚みは、FB−2000A(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて断面観察用サンプルを作製し、断面TEM観察はHF−2000(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて膜厚を測定した。評価した結果を表1に示す。
(虹ムラの評価)
虹ムラの評価方法としては、黙視による評価(○〜×)を行った。高輝度バックライトの上に市販の偏光板を配置したものを使用した。この第一の偏光板の吸収軸に対して、第二透明樹脂フィルムの遅相軸(即ち、配向軸)の方向が45°になるように透明導電性フィルムを載置し、さらに前記透明導電性フィルムの上に第一の偏光板の吸収軸に対して、吸収軸が直交するようにさらに第二の偏光板を載置し、全方位(極角0°〜80°、方位角0°〜360°)から色相の変化を観察した。その際、蛍光灯を用いて光を当てて、外光の反射によって生じる色相の変化についても観察した。
黙視による評価は、×:外光の反射によって生じる色相の変化が、全方位で生じる、○:外光の反射によって生じる色相の変化が、何れの角度でもほとんど確認されない、とした。
[実施例1〜4]
二軸延伸の条件を変えることで、表1に示すような面内位相差値(R0)と厚み方向位相差値(Rth)と厚みを有する種々のポリエチレンテレフタレート(PET)を、第一透明樹脂フィルムとして準備した。
これを基材として、その片面に、光学調整層として屈折率1.62のジルコニア粒子含有紫外線硬化型組成物(JSR社製、商品名「オプスタ―Z7412」を塗布し、塗布層を形成した。次いで、塗布層が形成された側から塗布層に紫外線を照射して、厚みが100nmとなるように光学調整層を形成した。
次に、光学調整層が形成された第一透明樹脂フィルムを、巻き取り式スパッタ装置に投入し、光学調整層の表面に、厚みが27nmの非晶質のインジウム・スズ酸化物層(組成:SnO:10wt%)を形成して、透明導電膜を形成した。このようにして透明導電性フィルムを作製した。
一方、第二透明樹脂フィルムとして、二軸延伸の条件を変えることで、表1に示すような面内位相差値(R0)と斜め方向の位相差値(R30)と厚みを有する種々のポリエチレンテレフタレート(PET)を準備した。
通常の溶液重合により、ブチルアクリレート/アクリル酸=100/6(重量比)にて重量平均分子量60万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマー100重量部に対し、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学製、商品名「テトラッドC(登録商標)」)6重量部を加えてアクリル系粘着剤を準備した。
前記の第二透明樹脂フィルムに、前記アクリル系粘着剤を片面に塗工し、150℃で90秒間加熱して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したPET剥離ライナー(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、50℃で2日間保存して、剥離ライナー付き第二透明樹脂フィルムを作製した。
この剥離ライナー付き第二透明樹脂フィルムを、剥離ライナーを剥離してから、前記光学調整層を形成した第一透明樹脂フィルムと貼り合わせて、透明導電性フィルム積層体を作製した。なお、貼り合わせは、第一透明樹脂フィルムの遅相軸と第二透明樹脂フィルムの遅相軸とが角度30°となるように行った。
[比較例1〜5]
実施例1において、表1に示すような面内位相差値(R0)と厚み方向位相差値(Rth)と厚みを有する種々のポリエチレンテレフタレート(PET)を、第一透明樹脂フィルムとして使用したこと以外は、実施例1と全く同じ条件で、透明導電性フィルム積層体を作製した。
以上の透明導電性フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
Figure 2017105069
表1の結果が示すように、実施例1〜4の透明導電性フィルム積層体は、各位相差値R0、R0、R30が全て適切な範囲であるため、斜め方向から観察した場合でも、外光の反射によって生じる虹ムラを十分抑制できた。このことは、ディスプレイを偏光サングラスを通してみた時の虹ムラが抑えられることを意味する。これに対して、各位相差値R0、R0、R30の何れかが適切な範囲でない比較例1〜5では、斜め方向から観察した場合、外光の反射によって生じる虹ムラを抑制する効果が不十分であった。
[実施例4]
実施例1において、次のようにして第一透明樹脂フィルムに硬化樹脂層を形成したものを用いたこと以外は、実施例1と全く同じ条件で、透明導電性フィルム積層体を作製した。
まず、紫外線硬化性樹脂組成物(DIC社製 商品名「UNIDIC(登録商標)RS29−120」)を100重量部と、最頻粒子径が1.9μmであるアクリル系球状粒子(綜研化学社製、商品名「MX−180TA」)を0.2重量部とを含む、球状粒子入り硬化性樹脂組成物を準備した。
準備した球状粒子入り硬化性樹脂組成物を厚みが50μmでPET基材(第一透明樹脂フィルム)の一方の面に塗布し、塗布層を形成した。次いで、塗布層が形成された側から塗布層に紫外線を照射して、厚みが1.0μmとなる様に第2の硬化樹脂層を形成した。PET基材の他方の面に、上記とは球状粒子を添加しない以外は同様の方法で、厚みが1.0μmとなる様に第1の硬化樹脂層を形成した。なお、光学調整層と透明導電膜の形成は、第1の硬化樹脂層の表面に行った。
得られた透明導電性フィルム積層体の虹ムラの評価を行った結果、実施例1と同様に十分な虹ムラ抑制が可能であった。
[実施例5]
実施例1において、粘着剤の代わりに、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いたこと以外は、実施例1と全く同じ条件で、透明導電性フィルム積層体を作製した。
ヒドロキシエチルアクリルアミド50重量部、メチルアクリレート30重量部、アロニックスM−220(東亞合成社製)40重量部、IRGACURE907(チバ・ジャパン社製)1.5重量部を混合して50℃で1時間撹拌し活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。
第一透明樹脂フィルムに上記活性エネルギー線硬化型接着剤をMCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、接着剤層の厚みが1μmになるように塗布した。次いで、前記活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、第二透明樹脂フィルムを貼り合わせた。その後、第一透明樹脂フィルムに側から、高圧水銀ランプの紫外線(波長365nm)を照射して、接着剤を硬化させて、透明導電性フィルム積層体を得た。
得られた透明導電性フィルム積層体の虹ムラの評価を行った結果、実施例1と同様に、十分な虹ムラ抑制が可能であった。
1 保護フィルム
2 粘着剤層
3 第2の硬化樹脂層(アンチブロッキング層)
4 第一透明樹脂フィルム
5 第1の硬化樹脂層(ハードコート層)
6 透明導電膜
7 光学調整層
8 接着剤層
9 第二透明樹脂フィルム
10 キャリアフィルム
11 第3の硬化樹脂層(ハードコート層)
12 第4の硬化樹脂層(ハードコート層)

Claims (6)

  1. 透明導電膜と第一透明樹脂フィルムと接着剤層と第二透明樹脂フィルムとをこの順で有する透明導電性フィルム積層体であって、
    前記第一透明樹脂フィルムは、面内位相差値R0が150nm以下であり、
    前記第二透明樹脂フィルムは、面内位相差値R0が10000nm以上、遅相軸に対して方位角45°の方向に法線方向から極角30°で傾斜させた方向における位相差値R30が10000nm以上である、
    透明導電性フィルム積層体。
  2. 前記第一透明樹脂フィルムは、厚み方向位相差値Rthが2000nm以下である請求項1に記載の透明導電性フィルム積層体。
  3. 前記第二透明樹脂フィルムは、長尺体又は矩形状の枚葉体であり、長辺又は短辺に対して配向軸が10〜45°の角度を有する請求項1又は2に記載の透明導電性フィルム。
  4. 前記第一透明樹脂フィルムと前記透明導電膜との間には、少なくとも1層の光学調整層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム積層体。
  5. 前記第一透明樹脂フィルム又は前記第二透明樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に、硬化樹脂層を有する請求項1〜4いずれか1項に記載の透明導電性フィルム積層体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム積層体を含むタッチパネル。
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