JP6808924B2 - 光学用ポリエステルフィルム及びそれを用いた偏光板、透明導電性フィルム - Google Patents
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Description
(1) 進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれにおいて、破断伸度が10%以上180%以下であるポリエステルフィルムであって、面内位相差が3000nm以上30000nm以下であることを特徴とする、光学用ポリエステルフィルム。
(2) 進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれにおいて、引裂伝播抵抗が2.0N/mm以上50N/mm以下である、(1)に記載の光学用ポリエステルフィルム。
(3) 進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれにおける破断伸度のうち、高い値をL1、低い値をL2としたときに、L1、L2が(I)式を満たす、(1)または(2)に記載の光学用ポリエステルフィルム。
1.03≦L1/L2≦6・・・(I)
(4) フィルムを構成するポリエステルが、ジカルボン酸成分とジオール成分からなり、ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量を100モル%としたときに、ジカルボン酸成分のうち最も多い成分とジオール成分のうち最も多い成分の合計が、85モル%を超えて98モル%未満である、(1)〜(3)のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
(5) フィルムを構成するポリエステルが、ジカルボン酸成分とジオール成分からなり、最も多いジカルボン酸成分がテレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸であり、最も多いジオール成分がエチレングリコールである、(1)〜(4)のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
(6) 少なくとも2層以上の構成であって、融点がTa(℃)であるポリエステルA層の少なくとも片面に、融点がTb(℃)であるポリエステルB層が積層されており、Tb>Taである、(1)〜(5)のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
(7) 偏光子保護用である、(1)〜(5)のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
(8) 偏光子の両面に偏光子保護用フィルムを有してなる偏光板であって、少なくとも一方の偏光子保護フィルムが、(7)に記載の光学用ポリエステルフィルムである偏光板。
(9) (1)〜(6)のいずれかに記載のポリエステルフィルムを有する、透明導電性フィルム。
ここで、進相軸方向とは、フィルムの面内の屈折率が最小になる方向であり、遅相軸方向とは、フィルムの面内の屈折率が最大になる方向である。屈折率はフィルムを構成するポリマーの配向の指標であり機械特性とも相関があることから、進相軸方向と遅相軸方向は機械特性の差が最も大きいと考えることが可能である。そのため、進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれにおいて破断伸度が特定の範囲であれば、フィルムの面内の全方向においても破断伸度が同様の範囲内であると考えられることから、進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれの機械特性を特定の範囲とすることは、フィルム全方向の物性を確認する指標として有効である。
進相軸方向、遅相軸方向それぞれの破断伸度を10%以上180%以下とするための具体的な方法としては、適度に結晶性を有するポリエステルを選定し、押出機で溶融したポリエステルを、回転中のキャストドラムで冷却して得られたポリエステルシートを、面内の垂直2方向のそれぞれの方向に対して1.2倍以上延伸し、フィルムを構成するポリマーを進相軸、遅相軸それぞれに配向させる方法などが挙げられる。また、面内の垂直2方向に延伸する際に、フィルムの進相軸方向の延伸時間をフィルムの遅相軸方向の延伸時間よりも短くする方法も、進相軸方向に形成された弱い配向を崩さずに維持しながら、遅相軸方向にもゆっくりと配向させて両方向の配向を維持できることから好ましい方法として挙げられる。進相軸方向の延伸時間は、遅相軸方向の延伸時間より0.5倍以下が好ましく、0.3倍以下とがより好ましく、0.1倍以下が特に好ましい。また、フィルムロールとした際の幅方向の厚み斑抑制の観点から、進相軸方向の延伸時間は、遅相軸の延伸時間よりも0.001倍以上が好ましい。
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、面内位相差が3000nm以上30000nm以下であることが重要である。面内位相差を3000nm以上とすることで、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した場合に干渉色を抑制することができる。また、干渉色抑制の観点からは、面内位相差は高いほど好ましいが、進相軸と遅相軸の機械特性のバランスを良好としたり、フィルムが過剰に厚くならないようにする観点からは、30000nm以下とすることが重要である。
ここで、面内位相差は、複屈折(面内二軸方向の屈折率差)と厚みの積のことを指し、アッベ屈折計を用いて、フィルムの任意の一方向の屈折率(na)、該方向に直交する方向の屈折率(nb)を測定し、下記式から算出することができる。
面内位相差=|na−nb|×フィルム厚み(nm)・・・(II)
また、王子計測機器(株)製「KOBRA」シリーズなどの位相差測定装置を用いて測定することも可能である。本発明の面内位相差は上記(II)式より算出した。
本発明において、面内位相差は、製膜時の延伸方式、延伸倍率、延伸及び熱処理の温度調整による複屈折制御と、厚み設定により3000nm以上30000nm以下とすることできる。
面内位相差を3000nm以上30000nm以下にするための具体的な方法としては、適度に結晶性を有するポリエステルを選定し、押出機で溶融したポリエステルを、回転中のキャストドラムで冷却して得られたポリエステルシートを、面内の垂直2方向に延伸し、2方向の延伸倍率の比を2倍以上に設定することで、1方向にポリマーを多く配向させ、1方向の屈折率をもう片方の屈折率よりも大きくする方向などが上げられる。
また、本発明において、破断伸度、面内位相差を個別に達成すること自体は難しくはないものの、たとえば、進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれにおいて破断伸度を達成しようとして面内の垂直2方向の両方をバランスよく延伸させると、ポリマーの配向が等方的となり、面内位相差が低くなってしまう場合がある。そのため、破断伸度と面内位相差を両立させることは通常は困難であることから、必要に応じてポリマーの結晶性の制御、異なる性質を持つポリマーの積層構成、延伸倍率や延伸温度などの製造条件などを組み合わせることにより、破断伸度と面内位相差を両立することが可能となる。
1.03≦L1/L2≦6・・・(I)
L1/L2が6を超えると、フィルムの機械特性のバランスが悪く、加工時に一方向のみに変形しやすくなる場合があり、L1/L2が1.03未満になると、面内位相差が低くなり、表示装置に搭載した際の干渉色抑制が困難になる。加工時の変形、および干渉色の抑制の観点からは、L1/L2は1.1以上5以下がより好ましく、1.3以上4以下が特に好ましい。
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量を100モル%としたときに、ジカルボン酸成分のうち最も多い成分とジオール成分のうち最も多い成分の合計は、偏光板や透明導電性フィルム製造時の加工性と干渉色抑制を両立させる観点から、88モル%を超えて97モル%未満がより好ましく、90モル%を超えて96モル%未満が特に好ましい。
本発明の光学用ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルのうち、ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、および、各種芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸とのエステル誘導体などが好ましく用いられる。これらの中でも、機械特性や光学特性、生産性の観点からは、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸(1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸など)がより好ましい。
本発明の光学用ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルのうち、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でも、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルベート、スピログリコールが好ましく用いられる。これらの中でも、機械特性や光学特性、生産性の観点からは、エチレングリコールがより好ましい。
加工性、干渉色抑制の観点から、TbはTaより5℃高いことが好ましい。一方で、A層とB層の共延伸性の観点からは、TbはTaより15℃以下高いことが好ましい。
Tb>Taとするための具体的な方法としては、A層を構成するポリエステルについて、B層を構成するポリエステルよりも、ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量を100モル%としたときに、ジカルボン酸成分のうち最も多い成分とジオール成分のうち最も多い成分の合計を少なくすることで、ポリエステルの結晶性を低下させ、融点を下げる方法などが挙げられる。
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、層構成は特に限定されないが、フィルムのカールを抑制し、偏光子に貼り合わせる際の反り低減と干渉色抑制を両立する観点からは、B層/A層/B層、B層/A層/B層/A層/B層、といったように、フィルムが厚み方向に対して対称であることが好ましい。偏光子に貼り合わせる際の反り低減がより重要な用途においては、積層する層数が3〜9層であると好ましく、5〜7層が特に好ましい。積層する層数が3層未満であると、偏光子に貼り合わせる際の反り低減が不十分な場合があり、積層する総数が9層を超えると、製膜時の積層性が低くなり、フローマーク等が発生し、フィルムの品位が低下する場合がある。
反射防止性、低反射性とは、光の干渉効果により表面での反射率を低減することで、視認性を向上させる機能である。その機能としては反射率分光測定により、好ましくは反射率が2%以下、特に好ましくは1%以下である。
電子線又は紫外線硬化型樹脂の場合には、前述の樹脂中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチラウムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。上記光重合開始剤の添加量は、電子線紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
偏光子としては、例えばポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性材料を含むものが挙げられる。偏光子保護フィルムは偏光子と直接または接着剤層を介して貼り合わされるが、接着性向上の点からは接着剤を介して貼り合わすことが好ましい。本発明のポリエステルフィルムを接着させるのに好ましい偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性材料を染色・吸着させ、ホウ酸水溶液中で一軸延伸し、延伸状態を保ったまま洗浄・乾燥を行うことにより得られる偏光子が挙げられる。一軸延伸の延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。ポリビニルアルコール系フィルムとしてはポリビニルアルコールが好適であり、「クラレビニロン」((株)クラレ製)、「トーセロビニロン」(東セロ(株)製)、「日合ビニロン」(日本合成化学(株)製)などの市販品を利用することができる。二色性材料としてはヨウ素、ジスアゾ化合物、ポリメチン染料などが挙げられる。
本発明の透明導電性フィルムは、本発明の光学用ポリエステルフィルム上に、直接、または易接着層を介して透明導電層を積層したフィルムである。透明導電層は、透明な導電性の膜を形成できれば特に限定されず、例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、CNT、銀、銅などの薄膜が挙げられる。これらの化合物は、適切な生成条件を選択することにより、透明性と導電性を両立できる。
ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、1H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取して評価した。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルム厚みおよびポリエステル層の厚みを求めた。
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K−7121−1987、JIS K−7122−1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステルフィルムを5mg、サンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。なお、積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の融点を測定した。(2)の断面観察において積層構成が確認された場合は、各層をカッターで削り取ってそれぞれの層の融点を測定し融点の低い層をポリエステルA層、高い層をポリエステルB層とした。なお、融点が観測されない場合は、表に「ND」と表記している。
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いてフィルムの面内方向の屈折率を測定した。
フィルムの任意の点において100mm×100mmの寸法でサンプルを切り出し、KSシステムズ製(現王子計測機器)のマイクロ波分子配向計MOA−2001A(周波数4GHz)を用い、ポリエステルフィルムの面内の主配向軸を求め、Y方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とした。本発明において、X方向を進相軸とする。その後、ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、25℃にてアッベ屈折計を用いてX方向、Y方向、Z方向(厚み方向)の屈折率(各々、nx、ny、nz)を求め、下記(III)式より面内位相差を算出した。
面内位相差=|nx−ny|×フィルム厚み(nm)・・・(III)
(6)破断伸度
(5)の方法で進相軸、遅相軸を求めた後、150mm×10mm(進相軸×遅相軸)の矩形に切り出してサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離を50mm(L0)とし、引張速度を300mm/分として引張試験を行い、サンプルが破断した際のチャック間距離(L)を求めた。(L−L0)/L0×100の計算式で求めた値について、10回の測定の平均値を進相軸における破断伸度とした。150mm×10mm(遅相軸×進相軸)の矩形に切り出してサンプルを作製し、遅相軸における破断伸度も同様に求めた。
(5)の方法で進相軸、遅相軸を求めた後、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとして、63mm×76mm(進相軸×遅相軸)の矩形に切り出してサンプルとした。軽荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて、JIS K-7128-2-1998に沿って測定した。サンプルの76mmの辺の中央部の位置に端から20mmの深さの切れ込みを入れ、残り43mmを引き裂いたときの指示値を読みとって、進相軸における引裂伝播抵抗を求めた。なお、測定は各方向に10回ずつ行い、その平均値を求めた。63mm×76mm(遅相軸×進相軸)の矩形に切り出してサンプルを作製し、遅相軸における引裂伝播抵抗も同様に求めた。
PVA中にヨウ素を吸着・配向させて作成した偏光度99.9%の偏光子の一方の面に、10cm四方のフィルムを貼り合わせてテストピースとした。なお、貼り合わせには、85℃に設定したラミネーターロールを使用した。作成したテストピースとフィルムを貼り付けていない偏光板とをクロスニコルの配置にて重ね合わせLED光源(トライテック製A3−101)上においた場合の、テストピース平面の法線方向に対して50°の角度からの視認性を確認した。また、同様にして30cm四方のフィルムを貼り合せたテストピースも作製し、同様の評価を行った。
S:10cm四方、30cm四方のいずれの評価とも、干渉色はみられない。
A:10cm四方の評価においては、干渉色はみられない。30cm四方の評価において、干渉色がわずかに見られるが実用上は問題ない。
B:10cm四方、30cm四方の評価とも、わずかに干渉色が見られるが、許容できる程度である。
C: 10cm四方の評価においては、わずかに干渉色が見られるが、許容できる程度である。30cm四方のいずれの評価では干渉色が見られるため、大画面のディスプレイ用途には適さない。
D:10cm四方、30cm四方のいずれかの評価において、干渉色がはっきり見られるため、ディスプレイ用途には適さない。
S〜Cが合格レベルである。
300mm幅、200m長(6インチ、350mm長コア巻)のフィルムを準備し、下記条件で、3インチ、350mm長コアに巻返しを行い、搬送速度、張力を変増加しながら下記の基準で評価を行った。
A:速度10m/分、搬送張力70N/mで巻き返しても破れが発生しなかった。
C:速度4m/分、搬送張力40N/mで巻き返しても破れが発生しなかったが、速度7m/分、搬送張力60N/mで巻き返すと破れが発生した。
D:速度4m/分、搬送張力40N/mで巻き返すと破れが発生した。
(10)取り扱い性評価(ii)
300mm幅、200m長(6インチ、350mm長コア巻)のフィルムを準備した。フィルムをコアから1m両手で繰り出した後に、幅方向にフィルムを張った状態でフィルムをつかんでいる箇所を90°捻った。その後、フィルムをつかんでいる箇所を元の位置に戻し、今度は逆方向に90°捻った。これを1セットとして、計10セットの捻り評価を行った。その後、1mの長さを繰り出したフィルムの端部を目視で確認し、以下の基準で評価を行った。
A:フィルムの端部に白化、割れは見られない。
B:フィルムの端部に割れは見られないものの、わずかに白化が見られる。
C:フィルムの端部に割れが見られた。
D:フィルムが破断した。
フィルムを製造する際に、延伸前のフィルムに油性ペンで印を記入し、縦延伸開始位置から縦延伸完了位置を通過する時間(縦延伸の延伸時間(秒))について、縦延伸工程の縦延伸開始位置、縦延伸完了位置それぞれにビデオカメラを設置して撮影して測定した。横延伸についても、延伸ゾーンの長さ(m)を横延伸ゾーンのライン速度(m/秒)で除することで、横延伸ゾーンを通過する時間(横延伸の延伸時間(秒))を求めた。得られたフィルムについて、(5)の方法にて進相軸、遅相軸を求めて進相軸方向、遅相軸方向と縦延伸方向、横延伸方向の対応を確認した後、伸相軸方向の延伸時間を遅相軸方向の延伸時間で除することで、進相軸方向と遅相軸方向の延伸時間比を求めた。
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が42モル%とイソフタル酸が8モル%、グリコール成分としてエチレングリコールが50モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が48モル%とイソフタル酸が2モル%、グリコール成分としてエチレングリコールが50モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が45モル%とイソフタル酸が5モル%、グリコール成分としてエチレングリコールが50モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が49モル%とイソフタル酸が1モル%、グリコール成分としてエチレングリコールが50モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
(ポリエステルE)
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が50モル%、グリコール成分としてエチレングリコールが35モル%、シクロヘキサンジメタノールが15モル%であるシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
(ポリエステルF)
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が50モル%、グリコール成分としてエチレングリコールが34モル%、シクロヘキサンジメタノールが16モル%であるシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
(ポリエステルG)
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸が50モル%、グリコール成分としてエチレングリコールが50モル%であるポリエチレンナフタレート樹脂(固有粘度0.83)。
(ポリエステルH)
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が50モル%、グリコール成分としてエチレングリコールが50モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
(ポリエステルI)
ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量100モル%に対し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が50モル%、グリコール成分として1,4−ブタンジオールが50モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
ポリエステルA中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有し粒子マスター。
ポリエステルB中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有し粒子マスター。
ポリエステルC中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有し粒子マスター。
ポリエステルD中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有し粒子マスター。
ポリエステルE中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有し粒子マスター。
ポリエステF中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有し粒子マスター。
ポリエステルG中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有し粒子マスター。
ポリエステルH中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有し粒子マスター。
(実施例1)
組成を表の通りとして、原料を酸素濃度を0.2体積%としたベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を280℃に設定して原料を溶融し、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への予熱温度85℃で1.5秒間予熱を行い、長手方向に1.4倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度95℃で1.5秒予熱を行い、幅方向に4.5倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理温度を180℃で15秒間熱処理を行い、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、厚み85μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。なお、得られたフィルムを評価したところ、進相軸は縦延伸方向、遅相軸は横延伸方向であり、進相軸方向と遅相軸方向の延伸時間比は、0.5であった。
(実施例2〜11)
原料組成、製造条件を表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(実施例12)
原料組成、製造条件を表の通りに変更し、押出機シリンダー温度を300℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(実施例13)
組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機、B層押出機ともシリンダー温度を280℃、に設定して原料を溶融し、フィードブロック内でB層/A層/B層の3層構成になるよう合流させ、合流後の短管温度、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その後は、表の製造条件にて、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(実施例14、15、16)
原料組成、製造条件を表の通りに変更した以外は、実施例13と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(比較例1,2、3)
原料組成、製造条件を表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
進相軸方向と遅相軸方向の延伸時間比を1,1とした以外は、実施例2と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
Claims (6)
- 進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれにおいて、破断伸度が10%以上180%以下であるポリエステルフィルムであって、フィルムを構成するポリエステルが、ジカルボン酸成分とジオール成分からなり、ジカルボン酸成分とジオール成分の合計量を100モル%としたときに、ジカルボン酸成分のうち最も多い成分とジオール成分のうち最も多い成分の合計が、85モル%を超えて98モル%未満であって、最も多いジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、最も多いジオール成分がエチレングリコールである面内位相差が3000nm以上30000nm以下である進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれにおいて、引裂伝播抵抗が10N/mm以上40N/mm以下であることを特徴とする、光学用ポリエステルフィルム。
- 進相軸方向、遅相軸方向のそれぞれにおける破断伸度のうち、高い値をL1、低い値をL2としたときに、L1、L2が(I)式を満たす、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
1.03≦L1/L2≦6・・・(I) - 少なくとも2層以上の構成であって、融点がTa(℃)であるポリエステルA層の少なくとも片面に、融点がTb(℃)であるポリエステルB層が積層されており、Tb>Taである、請求項1または2に記載の光学用ポリエステルフィルム。
- 偏光子保護用である、請求項1または2に記載の光学用ポリエステルフィルム。
- 偏光子の両面に偏光子保護用フィルムを有してなる偏光板であって、少なくとも一方の偏光子保護フィルムが、請求項4に記載の光学用ポリエステルフィルムである偏光板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルムを有する、透明導電性フィルム。
Priority Applications (1)
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