JP2017066184A - ポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜、及びその製造方法 - Google Patents

ポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長期間安定して高い機能を有する微多孔膜、特に、高温かつ高濃度の酸性、又はアルカリ性環境下での耐加水分解性が高く、かつ高い分離能(ガス遮断性)とイオン透過性とを両立した微多孔膜、並びにアルカリ水電解用隔膜を提供する。【解決手段】平均孔径が0.1〜1μm、空隙率が30〜80%であって、式(1)で表される繰り返し単位を有するポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜3。(R1〜R4は各々独立にH、フェニル、ベンゾイル等)【選択図】図1

Description

本発明は、ポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜、それを用いたアルカリ水電解用隔膜及びポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜の製造方法に関する。
多孔膜は濃縮、精製、濾過、透析など様々な分野で利用されており、その素材、孔径、厚みなどを最適化する為、開発が盛んに行われている。また、近年は目的ごとにさらなる高性能化や機能特化を目指して、特に、燃料電池や再生可能エネルギーなどの新エネルギー分野やリチウムイオン二次電池等の蓄電池分野では、安全性と性能とを両立する多孔膜の需要が日に日に高まっている。とりわけ広い温度、圧力、pHの範囲でも使用できる多孔膜の開発要求は非常に高い。
水素は、石油精製、化学合成材料、金属精製、定置用燃料電池等、工業的に広く利用されている。近年は、燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションやスマートコミュニティ、水素発電所等における利用の可能性も広がっている。さらに、再生可能エネルギーの導入が進むにつれて、電力網の需給バランスを維持する必要が出てきたため、大容量の電力を長期間貯められる水素ストレージのニーズも高まっている。かかる観点から、高純度の水素の製造技術に注目が集まっている。
水素の工業的な製造方法の一つとして、水の電気分解がある。この方法は、化石燃料を改質する水素の製造方法に比べ、高純度の水素が得られるという利点がある。水の電気分解では、導電性を高めるために、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の電解質を添加した水溶液を、電解液として用いることが一般的である。この電解液に、陰極及び陽極によって直流電流を印加することで、水を電気分解する。
電気分解(以下、単に「電解」という場合がある。)を行うための電解槽は、隔膜を介して陽極室と陰極室とに仕切られている。陽極室では酸素ガスが生成し、陰極室では水素ガスが生成する。隔膜には、この酸素ガスと水素ガスとが混合しないように、ガス遮断性が求められる。
水の電気分解において電気(電子)を運ぶ媒体はイオンである。そのため、電気分解を効率よく行うために、隔膜には、高いイオン透過性が求められる。かかる観点から、特許文献1では高いイオン透過性を発現する隔膜として、多孔膜構造を有する隔膜が提案されている。
加えて、電気分解を長期間効率よく安定して行うために、電解槽を構成する陽極、陰極、及び隔膜には物理的、及び化学的安定性が求められる。かかる観点から、隔膜は耐久性に優れた材料を用いて、ガス遮断性と高いイオン透過性とを両立する事が求められる。
国際公開第2013/183584号
しかしながら、上記した技術は未だ改善すべき点もある。例えば、微多孔膜として汎用的に使用されているポリエーテルスルホンやポリスルホンは繰り返し単位中にエーテル結合を有する為、酸性あるいはアルカリ性環境下で徐々に加水分解される。加水分解が進行すると、孔径や空隙率が変化し多孔膜としての機能の低下や機械強度の低下を引き起こす恐れがある。特に高温、高濃度の酸性、アルカリ性環境下では、加水分解速度は増加し、この問題は一層顕著になる。
一方、イオンの透過効率は導電率で表され、電解液の濃度及び温度と密接に関係している。例えば、80℃以上の高温域では水酸化カリウム水溶液の導電率は濃度約30質量%が最大となる。そのため、イオンの透過効率の向上を目的に、導電率の高い条件で微多孔膜を使用することは、前記加水分解速度の問題を顕在化させる恐れがある。
加えて、微多孔膜のイオン透過効率を最適化する上で、微多孔膜の多孔質構造を制御することが非常に重要となる。特に水の電気分解の隔膜として使用する上では、高いイオン透過性と共に、高いガス遮断性を両立しなければならない。その為、耐加水分解性が高い材料で、かつ高い電解効率が得られる最適な微多孔膜が求められている。
本発明は、上記した問題に鑑みなされたものであり、長期間安定して高い機能を有する微多孔膜を得ることを目的とする。特に、高温かつ高濃度の酸性、又はアルカリ性環境下での耐加水分解性が高く、かつ高い分離能(ガス遮断性)とイオン透過性とを両立した微多孔膜、並びにアルカリ水電解用隔膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、適切な平均孔径、最大孔径、及び空隙率を有する微多孔膜を、ポリフェニレン共重合体を含む材料で実現する事により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
平均孔径が0.1μm以上1μm以下、かつ最大孔径が0.2μm以上2μm以下であり、空隙率が30%以上80%以下であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜。
Figure 2017066184
(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、フェニル基、ベンゾイル基又は炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる置換基であり、nは10〜2000の整数を示す。)
[2]
前記繰り返し単位が、R1〜R4が全て水素原子である1,3−フェニレン及びR1〜R4の1つ以上がベンゾイル基である1,4−フェニレンを含む、請求項1に記載の微多孔膜。
[3]
親水性無機粒子を含有する、[1]又は[2]に記載の微多孔膜。
[4]
微多孔膜中に含まれるポリフェニレン共重合体に対する親水性無機粒子の重量比が1.0以上10以下である、[3]に記載の微多孔膜。
[5]
前記親水性無機粒子が酸化ジルコニウムである、[3]に記載の微多孔膜。
[6]
前記親水性無機粒子のモード粒径が1μm以上10μm以下である、[3]に記載の微多孔膜。
[7]
厚みが100μm以上1mm以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の微多孔膜。
[8]
シート状である、[1]〜[7]のいずれかに記載の微多孔膜。
[9]
[8]に記載の微多孔膜を構成要素として含むアルカリ水電解用隔膜。
[10]
ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる一種以上を構成成分とする支持基材を、構成要素としてさらに含む、[9]に記載のアルカリ水電解用隔膜。
[11]
[10]に記載のアルカリ水電解用隔膜を構成要素として含むアルカリ水電解用電解装置。
[12]
(A)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を、得られる分散溶液の相分離温度よりも高い温度で混合して均一な分散溶液を得る工程と、
(B)前記分散溶液を分散溶液の相分離温度よりも高い温度で押出して成形して押出成形物を得る工程と、
(C)前記(B)工程で得た押出成形物を分散溶液の相分離温度以下に冷却して凝固させる工程と、
(D)前記(C)工程で得た押出成形物から溶媒を抽出する工程と、を有する、微多孔膜の製造方法。
[13]
前記(A)の分散溶液を得る工程におけるポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒との重量比(ポリフェニレン共重合体:溶媒)が5:95から50:50の範囲である、[12]に記載の微多孔膜の製造方法。
[14]
前記(C)の凝固させる工程が、前記工程(B)直後の前記押出成形物を0℃以上かつ前記分散溶液の相分離温度以下の前記ポリフェニレン共重合体の非溶媒を含む溶液へ浸漬して冷却する工程である、[12]又は[13]に記載の微多孔膜の製造方法。
[15]
(E)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を、得られる分散溶液の相分離温度よりも高い温度で混合して均一な分散溶液を得る工程と、
(F)前記分散溶液を分散溶液の相分離温度よりも高い温度で押出して成形して押出成形物を得る工程と、
(G)前記(F)工程で得た押出成形物を分散溶液の相分離温度以下に冷却して凝固させる工程と、
(H)前記(G)工程で得た押出成形物から溶媒を抽出して微多孔膜を得る工程と、
支持基材と前記(G)工程で得た押出成形物または前記(H)工程で得た微多孔膜とを一体化させる工程と、を含む、アルカリ水電解用隔膜の製造方法。
[16]
前記工程(E)におけるポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒との重量比(ポリフェニレン共重合体:溶媒)が5:95から50:50の範囲である、[15]のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
[17]
前記工程(G)が、前記工程(F)直後の押出成形物を0℃以上かつ前記分散溶液の相分離温度以下の前記ポリフェニレン共重合体の非溶媒を含む溶液へ浸漬して冷却する工程である、[15]又は[16]に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
[18]
(I)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を混合して均一な分散溶液を得る工程と、
(J)前記分散溶液を支持基材の片面、又は両面に塗工して塗工膜を得る工程と、
(K)前記塗工膜をポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気に暴露する工程と、
(L)前記暴露後にポリフェニレン共重合体の貧溶媒を含む凝固浴に浸漬して塗工膜を凝固させる工程と、
(M)前記凝固した塗工膜から溶媒を抽出して微多孔膜を得る工程と、を含む、
アルカリ水電解用隔膜の製造方法。
[19]
前記工程(I)において、分散溶液中のポリフェニレン共重合体の割合が5質量%以上25質量%以下である、[18]に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
[20]
前記工程(I)における分散溶液に、ポリフェニレン共重合体に対する重量比が0.1以上1以下の添加剤をさらに含ませる、[18]又は[19]に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
本発明によれば、ガス遮断性及びイオン透過性が良好であり、耐久性が高く長期間の電解においても電解効率の高い微多孔膜、並びにアルカリ水電解用隔膜を提供することができる。
アルカリ水電解装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(微多孔膜)
本実施形態の微多孔膜は、平均孔径が0.1μm以上1μm以下かつ最大孔径が0.2μm以上2μm以下であり、空隙率が30%以上80%以下であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリフェニレン共重合体を含む。
Figure 2017066184
式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、フェニル基、ベンゾイル基又は炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる置換基であり、nは10〜2000の整数を示す。式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素、フェニル基又はベンゾイル基であることが好ましい。R1〜R4がこのような置換基であると、得られる微多孔膜は、高温、高濃度のアルカリ溶液に対する耐性が一層向上する。
(ポリフェニレン共重合体)
本実施形態において、微多孔膜とは、ポリフェニレン共重合体を含む多孔質膜である。ポリフェニレン共重合体とは、上記一般式(1)で表される単環式の芳香族を繰返し単位とする共重合体である。ポリフェニレン共重合体の繰り返し単位としては、特に限定されないが、例えば、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、4−ベンゾイル−1,3−フェニレン、5−ベンゾイル−1,3−フェニレン、2−ベンゾイル−1,4−フェニレン、2−フェニル−1,3−フェニレン、4−フェニル−1,3−フェニレン、5−フェニル−1,3−フェニレン、2−フェニル−1,4−フェニレン、2,4−トルエンジイル、2,5−キシレンジイル等が挙げられる。これらの中でも、上記一般式中のR1〜R4が全て水素原子である1,3−フェニレンと、R1〜R4の1つ以上がベンゾイル基である1,4−フェニレンとを含むポリフェニレン共重合体が好ましく、上記1,3−フェニレンと、上記1,4−フェニレンとのモル共重合比(上記1,3−フェニレン:上記1,4−フェニレン)が、45:55から55:45である事がより好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。また、ポリフェニレン共重合体は、式(1)で表される単環式の芳香族を繰返し単位以外に、さらに1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、5,8−キノリンジイル、5,8−キノリンジイル等のアリーレン類や、5−アミノ−1,3−フェニレン等のアミノ類、2−カルボキシメチル−1,4−フェニレン、4−カルボキシメチル−1,3−フェニレン、5−カルボキシメチル−1,3−フェニレン等のカルボキシル類、2,4−ピリジンジイル、3,5−ピリジンジイル、3,6−ピリジンジイル等のピリジンジイル類、2−フェノキシ−1,4−フェニレン、5−フェノキシ−1,3−フェニレン等のフェニレン類を繰り返し単位として共重合させてもよい。
上記したポリフェニレン共重合体の具体的な例としては、特に限定されないが、例えば、SOLVAY社の「プリモスパイア SRP(商標、以下同様)」が挙げられる。また、このようなポリフェニレン共重合体は、公知の方法で製造することができ、例えば特許第5179387号に記載の方法などが挙げられる。
ポリフェニレン共重合体として、上記1,3−フェニレンと、上記1,4−フェニレンとを含むポリフェニレン共重合体を用いることで、ポリフェニレン共重合体の溶媒への可溶性が向上するだけでなく、ポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜は、高温、高濃度のアルカリ溶液に対する耐性が一層向上する。また、例えば、非溶媒誘起相分離法等の方法を用いることで、比較的容易に本実施形態の微多孔膜を製膜することができる。特に上記1,3−フェニレンと、上記1,4−フェニレンとを繰り返し単位として有するポリフェニレン共重合体は、アルカリ耐性と高度な孔径制御とを両立することが可能な点で好ましい。
上記1,3−フェニレンと、上記1,4−フェニレンとを繰り返し単位として有するポリフェニレン共重合体は、主鎖骨格内に分解され易いエステルやアミド等を有していない為、化学的な安定性を発揮し、広いpH範囲で耐性を示すだけでなく、側鎖に溶媒への可溶性を高めるベンゾイル基を有し、かつ1,3−フェニレンによる立体的な捻れが生じる為、結晶性が低く保て、微多孔膜への加工が容易な点で好ましい。
本実施形態に用いるポリフェニレン共重合体の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量として、4万以上20万以下であることが好ましい。ポリフェニレン共重合体の重量平均分子量が4万以上であれば、広い温度範囲で機械強度を担保でき、微多孔膜の機能を安定して発現することが出来る。ポリフェニレン共重合体の重量平均分子量が20万以下であれば、溶解性が良好で、かつ溶液の粘性を低く保てる為、製膜時の孔径が制御し易くなる。
ポリフェニレン共重合体は架橋処理が施されていてもよい。架橋処理の方法は、特に限定されないが、例えば、電子線やγ線等の放射線照射による架橋や架橋剤による熱架橋等が挙げられる。これらの架橋処理は、多孔質構造を付与した後に施すことがより好ましい。
(耐加水分解性)
本実施形態の微多孔膜は、長期間安定した性能を得る観点から、高い耐加水分解性を有する事が好ましい。例えば、微多孔膜をアルカリ水電解の隔膜として使用した場合、電解中は常に高温高濃度のアルカリ溶液に浸漬される為、微多孔膜が徐々に劣化して脆くなる。脆くなった微多孔膜は、循環する電解液や発生するガスによって浸食され、孔が大きくなり、空隙率も大きくなる。その結果、ガス遮断性が低下し、両電極から発生するガスが混合してガス純度が低下しやすくなる。
本実施形態の微多孔膜には、さらなる機能の付与を目的として、微多孔膜の機能を阻害しない範囲で、ポリフェニレン共重合体以外の物質が含まれていてもよい。例えば、酸化防止剤、熱安定化剤等の添加剤を含有してもよいし、フッ素系樹脂等のコーティングを施してもよい。
(微多孔膜の孔径)
本実施形態の微多孔膜は、分離能、強度など適切な膜物性を得る為に孔径を制御しなければならない。また、アルカリ水電解に用いる場合、陽極から発生する酸素ガス及び陰極から発生する水素ガスの混合を防止し、かつ電解における電圧損失低減する観点から、微多孔膜の孔径を制御しなければならない。
微多孔膜の平均孔径が大きい程、単位面積あたりの微多孔膜透過量は大きくなり、特に、電解においては微多孔膜のイオン透過性が良好となり、電圧損失を低減しやすくなる傾向にある。また、微多孔膜の平均孔径が大きい程、アルカリ水との接触表面積が小さくなるので、ポリマーの劣化が抑制される傾向にある。
一方、微多孔膜の平均孔径が小さい程、微多孔膜の分離精度高くなり、電解においては微多孔膜のガス遮断性が良好となる傾向にあり、さらに、後述する粒径の小さな親水性無機粒子を微多孔膜に担持した場合、欠落せずしっかりと保持することができる。これにより、親水性無機粒子の高い保持能力を付与でき、長期に亘ってその効果を維持することができる。
また、微多孔膜の最大孔径は微多孔膜の分離精度を高める為、制御されなければならない。具体的には、平均孔径と最大孔径との差が小さい程、微多孔膜の分離性能は高くなる傾向にある。特に、電解においては、微多孔膜内の孔径のばらつきを小さく保てる為、ピンホールが発生して両電極室から発生するガスの純度が低下する可能性を低く出来る。
かかる観点から本実施形態の微多孔膜においては、平均孔径は、0.1μm以上1μm以下、かつ最大孔径は0.2μm以上2μm以下の範囲でなければならない。微多孔膜は、孔径がこの範囲であれば、優れたガス遮断性と高イオン透過性との両立も達成できる。また、微多孔膜の孔径は実際に使用する温度域において制御されることが好ましい。従って、例えば90℃の環境下での電解用隔膜として使用する場合は、90℃で上記の孔径の範囲を満足させることが好ましい。また、本実施形態の微多孔膜は、アルカリ水電解用隔膜として、より優れたガス遮断性と高いイオン透過性とを発現できる範囲として、平均孔径が0.1μm以上0.5μm以下、かつ最大孔径が0.5μm以上1.8um以下であることがより好ましい。
微多孔膜の孔径を制御する方法としては、例えば、後述の微多孔膜の製造方法が挙げられる。
微多孔膜の孔径は、微多孔膜の中心から両表面へと厚み方向に向かって略対称に制御することが好ましい。微多孔膜の孔径分布が対称であると、例えば微多孔膜を電解槽に組み込む際に表裏どちらでも同様の機能が発現でき、ハンドリング性も向上する。また、電解中に異物が微多孔膜内部に詰まりにくくなる。さらに、微多孔膜の孔径は、微多孔膜の表面から厚み方向に内部に向かって、徐々に小さくなることがより好ましい。孔径が内部に向かって徐々に小さくなると、例えば使用中に微多孔膜の表面に異物による傷がついた場合であっても、高い分離能を維持することが出来る。
微多孔膜の平均孔径と最大孔径とは、以下の方法で測定することが出来る。
微多孔膜の平均孔径とは、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP−Plus」)を使用して以下の方法で測定した平均透水孔径をいう。まず、微多孔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとする。このサンプルを任意の耐圧容器にセットして、容器内を純水で満たす。次に、耐圧容器を所定温度に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が所定温度になってから測定を開始する。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から純水が透過してくる際の圧力及び透過流量の数値を記録する。平均透水孔径は、圧力が10kPaから30kPaの間の圧力と透水流量との勾配を使い、以下のハーゲンポアズイユの式から求めることが出来る。
平均透水孔径(m)=32ηLμ0/(εP)
ここで、ηは水の粘度(Pa・s)、Lは微多孔膜の厚み(m)、μ0は見かけの流速でありμ0(m/s)=流量(m3/s)/流路面積(m2)である。また、εは空隙率、Pは圧力(Pa)である。
微多孔膜の最大孔径は、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP−Plus」)を使用して以下の方法で測定することが出来る。まず、微多孔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとする。このサンプルを純水で濡らし、多孔膜の孔内に純水を含浸させ、これを測定用の耐圧容器にセットする。次に、耐圧容器を所定温度に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が所定温度になってから測定を開始する。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から気泡が連続して発生してくるときの窒素圧力を、バブルポイント圧力とする。最大孔径はヤング−ラプラスの式を変形させた下記バブルポイント式から求めることが出来る。
最大孔径(m)=4γcosθ/P
ここで、γは水の表面張力(N/m)、cosθは微多孔膜表面と水の接触角(rad)、Pはバブルポイント圧力(Pa)である。
(微多孔膜の空隙率)
適切な分離能の発現や目詰まりによる寿命の短縮防止の観点から、微多孔膜の空隙率を制御しなければならない。また、微多孔膜を電解に使用した場合はガス遮断性、親水性の維持、気泡の付着によるイオン透過性低下の防止、さらには長時間安定した電解性能(低電圧損失等)が得られるといった観点から、微多孔膜の空隙率を制御しなければならない。微多孔膜の空隙率は、平均孔径及び最大孔径が上記範囲にある孔が、微多孔膜に占める割合と関連するものともいえる。微多孔膜の高い機能、特にアルカリ水電解用隔膜におけるガス遮断性や低電圧損失の両立性を発現させるために、本実施形態の微多孔膜の空隙率の下限は30%以上であり、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。また、本実施形態の微多孔膜の空隙率の上限は80%以下であり、70%以下であることがより好ましい。微多孔膜は、空隙率が上記上限値以下であれば、多孔構造を保持することが出来る。
微多孔膜の空隙率を制御する方法としては、例えば、無水シリカなどの無機物を内部に一定量含有した微多孔膜から、水酸化ナトリウムを用いて無機物を溶出させる方法が挙げられる。
微多孔膜の空隙率とは、アルキメデス法により求めた開空隙率をいい、比重測定装置を使って以下の式により求めることができる。
空隙率P(%)=ρ/(1+ρ)×100
ここで、ρ=(W3−W1)/(W3−W2)であり、W1は微多孔膜の乾燥重量(g)、W2は微多孔膜の水中重量(g)、W3は微多孔膜の飽水重量(g)である。水中重量とは、水中で測定した重量を表す。また、飽水重量とは、孔内に水を含んだ状態のサンプルを空気中で測定した重量を表す。
空隙率の測定方法としては、以下のとおりである。まず、純水で洗浄した微多孔膜を3cm×3cmの大きさで3枚に切出して、測定サンプルとする。次に、これらを純水中に24時間浸し、余分な水分を取り除いて空中皿でW3を測定する。続いて、サンプルを液中に入れ、液中皿でW2を測定する。さらに、取り出したサンプルを50℃に設定された乾燥機で12時間以上静置して乾燥させて、空中皿でW1を測定する。そして、W1、W2、W3の値から空隙率を求める。3枚のサンプルについて空隙率を求め、それらの算術平均値を空隙率Pとする。
そして、微多孔膜の空隙率と膜表面の開口度とは相関性がある。例えば、空隙率が大きい程、開口度が高くなる傾向にある。また、開口度が高い程、後述する親水性無機粒子の効果を受けやすく、親水性無機粒子を含む微多孔膜は、より高い親水性を維持する傾向にある。これらの理由から本実施形態の微多孔膜の開口度は、前記した孔径の範囲に多孔構造を制御した上で制御する事が好ましい。本実施形態の微多孔膜は、高い親水性を維持する観点から、開口度が20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましい。一方で本実施形態の微多孔膜は、親水性無機粒子の担持や微多孔膜表面の強度を維持する為、開口度が80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更に好ましい。
本実施形態の微多孔膜の開口度は以下の方法で求めることが出来る。まず、微多孔膜表面画像をSEMで取り込む。次に、この画像を画像解析ソフト(三谷商事社製、「WinROOF」)で2値化し、孔と孔以外の部分とを分ける。続いて、得られた2値化像を分析し画像全体に対する孔の割合を求め、これを開口度とする。開口度はそれぞれ観察箇所の違う3枚以上のSEM画像から得られた開口度の平均値を用いる。
上記のような孔径と空隙率とを有する微多孔膜をポリフェニレン共重合体でなす事により、他のポリマーに比べて機械強度が高く丈夫で、高い機能を有する微多孔膜構造を実現することが出来る。その上、広い温度、圧力、pHの範囲でも長期に亘って上記微多孔膜が安定して機能を発現する。
(微多孔膜の形態)
本実施形態の微多孔膜の形態は、微多孔膜の処理能力や使用形態に応じて適宜選択する事が好ましい。例えば中空糸はモジュール化した際に、単位体積当たりの処理面積を大きくできる為、大容量の処理に向いている。一方で、シート状の微多孔膜は中空糸に比べて膜厚が大きくできる為、丈夫な膜にすることが出来る。また、本実施形態の微多孔膜は、電解に使用する場合、電極を含めた電解槽の構成上、シート状である事が好ましい。
(微多孔膜の厚み)
本実施形態の微多孔膜の厚みは、特に限定されないが、100μm以上1mm以下であることが好ましい。微多孔膜の厚みが、100μm以上であれば、一層安定した分離能が得られ、また、衝撃に対する微多孔膜の強度が一層向上する。この観点より、本実施形態の微多孔膜の厚みの下限は、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが更に好ましい。
一方で、本実施形態の微多孔膜の厚みが、1mm以下であれば、製膜時に厚み斑を少なくでき、孔径の制御がしやすくなる。また、微多孔膜を電解に使用した場合、孔内に含まれる電解液の抵抗によりイオンの透過性を阻害されにくく、一層優れたイオン透過性を維持することができる。かかる観点から、本実施形態の微多孔膜の厚みの上限は、800μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが更に好ましい。
なお、本実施形態において、微多孔膜の厚みは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(親水性無機粒子)
本実施形態の微多孔膜には、親水性を付与することや、多孔内の表面形状を制御する目的で、親水性無機粒子を含有する事も好ましい。この場合、親水性無機粒子は、微多孔膜あるいは微多孔膜の空孔の表面に付着していてもよい。また、微多孔膜から親水性無機粒子が欠落すると、上記の機能が損なわれる可能性がある為、親水性無機粒子は、その一部がポリフェニレン共重合体に埋没する形で含有されていることがより好ましい。
親水性無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物又は水酸化物;周期律表第IV族元素の酸化物;周期律表第IV族元素の窒化物、及び周期律表第IV族元素の炭化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物が挙げられる。これらの中でも、化学的安定性の観点から、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物、周期律表第IV族元素の酸化物がより好ましく、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物が更に好ましく、酸化ジルコニウムがより更に好ましい。親水性無機粒子の粒子表面は、極性を帯びている。水溶液である電解液内における、極性の小さな酸素分子や水素分子と、極性の大きな水分子との親和性等を踏まえると、極性の大きな水分子の方が親水性無機粒子と吸着し易いとと考えられる。よって、このような親水性無機粒子が膜表面に存在することで、膜表面には水分子が優先的に吸着し、疎水性物質の分離能を向上させることができる。例えば水の電気分解では、酸素分子や水素分子等の気泡の膜表面への吸着を抑制することができる。その結果、微多孔膜の表面への気泡の付着を効果的に抑制することができる(但し、本実施形態の作用効果はこれらに限定されない。)。
親水性無機粒子の形態は、ポリフェニレン共重合体との混合容易性の観点から微粒子形状であることが好ましい。微多孔膜を作製する際に、含有させる親水性無機粒子のモード粒径を、1μm以上10μm以下にすることが好ましい。親水性無機粒子のモード粒径が、1μm以上であると、例えば、非溶媒誘起相分離法で微多孔膜を作製する際、親水性無機粒子を含むポリフェニレン共重合体溶液の粘度が高くなり過ぎず、塗工の際に斑の発生を効果的に抑制できるので、均一な微多孔膜を作製しやすい傾向にある。また、非溶媒誘起相分離法で親水性無機粒子が微多孔膜孔内に取り込まれた際、そこで凝集して形成される二次粒子の粒径が微多孔膜の孔径より大きくなるため、微多孔膜から親水性無機粒子が欠落することを一層抑制できる。この観点から、親水性無機粒子のモード粒径は2μm以上であることがより好ましい。
一方で、親水性無機粒子のモード粒径が10μm以下であれば、親水性無機粒子の大きさに対して、親水性無機粒子と孔内以外の微多孔膜との結着面積が小さくなり過ぎることを防止できるとともに、親水性無機粒子が微多孔膜から欠落することを一層抑制できる。さらに、親水性無機粒子によって微多孔膜が損傷されること等も一層防止できる(但し、本実施形態の作用効果はこれらに限定されない。)。この観点から、親水性無機粒子のモード粒径は8μm以下である事がより好ましい。
親水性無機粒子のモード粒径は、親水性無機粒子が微多孔膜孔内に存在しているときの二次粒子の状態の粒径であり、粒子径分布の極大値の粒子径である。
親水性無機粒子のモード粒径を制御する方法としては、例えば、焼結法であれば焼結温度を変える方法が挙げられる。
親水性無機粒子のモード粒径は、以下の方法によって測定できる。ポリフェニレン共重合体を溶解可能な溶媒を用いて、微多孔膜からポリフェニレン共重合体を溶解除去する。その後に残った親水性無機粒子を、親水性無機粒子の重量の1000倍以上の量の当該溶媒を用いて、3回以上繰り返し洗浄する。洗浄した親水性無機粒子を測定試料として、レーザー回折・散乱法により、体積分布からモード粒径を計測する。親水性無機粒子のモード粒径は、例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、「LA−950」)によって測定することができる。
本実施形態において、微多孔膜中に含まれるポリフェニレン共重合体に対する親水性無機粒子の重量比は1.0以上10以下である事が好ましく、2〜7であることがより好ましく、2〜5であることが更に好ましい。ポリフェニレン共重合体に対する親水性無機粒子の重量比が前記下限値以上であると、例えば電解中も微多孔膜内部の親水性をより高くでき、発生するガスが微多孔膜を通って反対側の電極室に抜けるのを防ぎやすい。さらに、電解液が微多孔膜内に浸透する事が出来る為、微多孔膜の電圧損失をより低く保つ事が出来る。一方で、ポリフェニレン共重合体に対する親水性無機粒子の重量比が前記上限値以下であると、微多孔膜の空隙率をより高く制御し易い。
(アルカリ水電解用隔膜)
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、上述の微多孔膜を構成要素として含む。本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、上述の微多孔膜を構成要素として含むことで、高いガス遮断性と高イオン透過性とを両立できる。さらに、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、高いアルカリ耐久性を有する為、長期にわたって安定した電解性能を維持することが出来る。また、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、さらに支持基材を構成要素として含むことで、機械強度を向上させることが出来る。加えて、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、容易に複極式電解セルに組み込むことが出来、大量の水素を製造できる大型の電解槽を工業的に提供する事ができる。
(支持基材)
本実施形態に係るアルカリ水電解用隔膜は、支持基材を含んでいてもよい。本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、好ましくは上述の微多孔膜が支持基材の片面に積層された構造であり、より好ましくは上述の微多孔膜が支持基材の両面に対象に積層した構造であり、さらに好ましくは上述の微多孔膜に支持基材が内在した構造である。また、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、支持基材の両面に、非対称に上述の微多孔膜を積層した構造であってもよい。
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、支持基材を含むことにより、強度を一層向上することができる。例えば、機械的なストレスによる、微多孔膜の切れや破れや伸び等といった不具合を防止できる。また、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、支持基材の両面に微多孔膜が積層されている構造では、支持基材の片面に傷や穴(ピンホール等)が生じた場合でも、支持基材の他方に積層された微多孔膜によりガス遮断性を担保することができる。本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、支持基材の両面に、対称に微多孔膜が積層される構造では、膜のカール等を効果的に防止でき、運搬時や膜設置時等における取り扱い性が一層向上する。
支持基材の材質は、特に限定されないが、微多孔膜における電解液のイオン透過性を実質的に低減させない材質であることが好ましい。支持基材の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる一種以上であることが好ましく、ポリフェニレンサルファイドを含むことがより好ましい。
支持基材の構成成分として、ポリフェニレンサルファイドを用いることで、高温、高濃度のアルカリ溶液に対しても優れた耐性を示し、また、水の電気分解時に陽極から発生する活性酸素に対しても化学的に優れた安定性を示す。さらに、織布や不織布等のような様々に形態に加工し易いので、使用目的や使用環境に即して好適に調節することができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
支持基材の態様としては、特に限定されないが、例えば、メッシュ、多孔質膜、不織布、織布、不織布及びこの不織布に内在する織布とを含む複合布等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。支持基材のより好適な態様としては、例えば、ポリフェニレンサルファイドのモノフィラメントで構成されるメッシュ支持基材、又は不織布及び該不織布内に内在する織布とを含む複合布等が挙げられる。
支持基材が、メッシュであれば、支持基材が十分な開口度を有するため、微多孔膜の機能を阻害することがない。また、機械的強度が高いため、微多孔膜の破断や寸法の変化を一層効果的に抑制できる(機械的強度、寸法安定性)。さらに、アンカー効果によって微多孔膜から支持基材が剥離することも効果的に抑制できる。モノフィラメントである場合の繊維径は、特に限定されないが、50μm以上300μm以下であることが好ましい。モノフィラメントの繊維径の下限が、50μm以上であれば、十分な機械的強度が得られ、微多孔膜が一層破れにくくなる。また、繊維径の上限が300μm以下であれば、メッシュ表面の凸凹をより一層抑制でき、微多孔膜表面の平滑性を一層向上させることができる。
支持基材が、不織布及びこの不織布に内在する織布を含む複合布であれば、平滑な支持基材のため、支持基材の上に微多孔膜を斑なく積層しやすい。さらに、支持基材が十分な開口度を有するため、微多孔膜のイオン透過性をより高いレベルで維持できる。また、機械的強度が高いため、微多孔膜の破断や寸法の変化を一層効果的に抑制できる(機械的強度、寸法安定性)。またさらに、アンカー効果によって微多孔膜から支持基材が剥離することも効果的に抑制できる。不織布は、その作製時に繊維の方向がMD方向又はTD方向に配向するため、一方向の引張破断強度、引張破断伸度、引き裂き強度が不十分となることがある。このような場合、不織布の中に織布を内在させることで、MD方向、TD方向共に引張破断強度、引張破断伸度、引き裂き強度を増加させることができ、芯材として、十分な強度を有することができる。また不織布に内在させるものは、織布でなくても、例えば、MD方向、TD方向の一方に繊維が配向している不織布を、その配向の方向が直交するように重ね、それを不織布に内在させるものでもよい。なお、本明細書において、特に断りがない限り、MD(Machine Direction)方向とは製膜時の流れ方向であり、TD(Transverse Direction)方向とはMD方向と直交する方向である。
支持基材を含む場合、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜の破断のし易さを示す指標の1つとして、支持基材の引張破断強度が挙げられる。支持基材の引張破断強度は、JIS K 7161に準じた方法により測定することができる。支持基材の引張破断強度が高ければ、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜を電解槽に設置して水の電気分解を行った場合、電解槽内の圧力変化等に対する強度が一層向上し、破断を一層効果的に抑制できる。支持基材の引張破断強度は、特に限定されないが、30N以上200N以下であることが好ましく、50N以上150N以下であることがより好ましい。支持基材の引張破断強度が上記下限値以上であると、微多孔膜に十分な強度を付与でき、破断を効果的に抑制できる。とりわけ、支持基材の引張破断強度が50N以上であれば、長期の電解運転時においても、微多孔膜に一層十分な強度を長期にわたって付与でき、破断を一層効果的に抑制できる。
支持基材の引張破断強度が上記上限値以下であれば、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜が剛直になり過ぎず、適度な柔軟性を維持し、優れた形状追従性を有するので、電解槽への設置時にガスケットとの間に隙間ができず、電解液の漏れが生じにくい。とりわけ、支持基材の引張破断強度が150N以下であれば、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜をより容易に曲げることが可能となり、輸送時や設置時等の取り扱い性を一層向上させることができる。なお、ここで支持基材の引張破断強度は、MD方向、TD方向のそれぞれにおける其々の引張破断強度である。
支持基材を含む場合、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜の取り扱い性を示す指標の1つとして、支持基材の引張破断伸度が挙げられる。支持基材の引張破断伸度は、JIS K 7161に準じた方法で測定することができる。支持基材の引張破断伸度が高ければ、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜の可撓性が一層向上し一層優れた柔軟性を付与でき、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜を電解槽に設置する際や運搬時等に切れたり、ひびが入る不具合を一層抑制でき、さらには取り扱い性も一層向上する。支持基材の引張破断伸度は、特に限定されないが、取り扱い性の観点から、5%以上60%以下であることが好ましく、10%以上50%以下であることがより好ましい。支持基材の引張破断伸度が5%以上であれば、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜は、運搬時や電解槽への設置時における破損を一層効果的に抑制でき、支持基材の引張破断伸度が60%以下であれば、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜は、容易に変形せず、芯材としての形状を維持し易い。さらに、支持基材の引張破断伸度が10%以上であれば、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜は、長期に高温条件下で電解運転した後でも十分な可撓性を維持し易く、支持基材の引張破断伸度が50%以下であれば、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜は、長期に高温条件下に曝された場合であっても容易に変形せず、より高い寸法安定性を維持できる。なお、ここで支持基材の引張破断伸度は、MD方向、TD方向それぞれにおける其々の引張破断伸度である。
支持基材を含む場合、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜にノッチやピンホールが生じた際、それらを起点とする破断のし易さを示す指標の1つとして、支持基材の引き裂き強度が挙げられる。支持基材の引き裂き強度は、JIS L 1096に準じた方法で測定することができる。支持基材の引き裂き強度が高ければ、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜を電解槽に設置した後に、例えば、電極との接触によりノッチやピンホールが生じた場合であっても、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜が自重で破断するといった不具合を一層効果的に抑制できる。支持基材の引き裂き強度は、特に限定されないが、10N以上100N以下であることが好ましい。支持基材の引き裂き強度が10N以上であれば、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜にノッチやピンホール等が生じた場合であっても、そこから傷口が大きくなることを一層効果的に抑制できる。支持基材の引き裂き強度が100N以下であれば、支持基材が分厚いものや、密で孔がほとんどない様なものになりにくく、支持基材を含むアルカリ水電解用隔膜のイオン透過性は一層高いレベルで維持できる。ここで支持基材の引き裂き強度は、MD方向、TD方向それぞれにおける其々の引き裂き強度である。
(ガス遮断性評価)
本実施形態の微多孔膜のガス遮断性の評価指標の1つとして、微多孔膜のバブルポイントの評価が挙げられる。本評価方法におけるバブルポイントは、微多孔膜を純水で十分に濡らして、孔内を純水で満たした後、微多孔膜の片側面を窒素で加圧し、微多孔膜の反対側面から、150mL/分の割合で気泡が連続して発生してくるときの圧力とする。微多孔膜のガス遮断性が低いほど、バブルポイントの値は小さくなり、微多孔膜のガス遮断性が高いほど、ガスが通過し難いため、バブルポイントの値は大きくなる。
本実施形態の微多孔膜のバブルポイントは、特に限定されないが、10kPa以上であることが好ましい。本実施形態の微多孔膜は、バブルポイントが10kPa以上であれば、0.2μm以上のピンホールが無い為、分離能を担保できる。また、本実施形態の微多孔膜を電解に使用した場合、バブルポイントが10kPa以上であれば、陰極室と陽極室とに差圧がついた場合であっても、発生したガスが容易に微多孔膜を透過できないため、酸素と水素との混合を効果的に抑制できる。かかる観点から、本実施形態の微多孔膜のバブルポイントは100kPa以上であることがより好ましい。
(イオン透過性評価)
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜を用いて電解を行う際のセル電圧の評価指標の1つとして、微多孔膜のイオン透過性が挙げられる。微多孔膜のイオン透過性が高ければ、電解時の電気抵抗を低減でき、これに伴ってアルカリ水電解用隔膜に起因する電圧損失も低減できる。この点、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は高いイオン透過性を維持できるので、これを用いることで、電解時のセル電圧を小さくできる。
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜を用いて電解を行う際のセル電圧は、例えば、以下の方法によって評価することができる。ニッケル電極の間に隔膜を設置し、隔膜によって隔てられた両電極室を90℃、30質量%のKOH水溶液で満たす。両電極間に電流密度0.60A/cm2の直流電流を印加し、長時間電解する。電解開始後24時間の両電極間の電位差を測定し、この両電極間の電位差をセル電圧とする。なお、電解中はKOH水溶液中の水が、電解により消費されるため、KOH濃度が一定になるように純水を定期的に添加させる。また電解セル内に電極から発生した、酸素、水素が滞留しない様に、ポンプで両電極室内の電解液を循環させる。かかる条件で運転した場合、本実施形態の微多孔膜を使用した場合のセル電圧は、特に限定されるものではないが、好適な一例を挙げるならば、電流密度0.60A/cm2時に1.80V以下とすることができ、さらには1.75V以下とすることができ、運転条件によって一層セル電圧を低下させることができる。隔膜における電圧損失を低減することができるならば、少ない電力量で効率的に水の電気分解が行える。さらには、長期に高電流密度で運転した場合も、電圧損失による発熱で電解槽内の電解液を加熱し過ぎるといったリスクや、電解槽や電極等の材質の劣化を早めるといったリスク等を軽減することができる。
(微多孔膜の製造方法)
本実施形態の微多孔膜は非溶媒誘起相分離法を利用して作製することが出来、少なくとも以下の工程を備えることが好ましい。
ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子とを混合して均一な分散溶液を得る工程、
分散溶液を支持基材に塗工し、支持基材上に塗膜を形成する工程、
支持基材を含む塗膜の両面を、このポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気を含む気体に晒す工程、
支持基材上の塗膜を、このポリフェニレン共重合体の貧溶媒を含む凝固浴に浸漬させ、微多孔膜を形成する工程。
本実施形態の作用効果が得られる範囲であれば、上記各工程はこの順に行うことに限定されるものではなく、必要に応じて同時に行ってもよいし、連続的に行ってもよい。
(アルカリ水電解用隔膜の製造方法)
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、
(I)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を混合して均一な分散溶液を得る工程と、
(J)前記分散溶液を支持基材の片面、又は両面に塗工して塗工膜を得る工程と、
(K)前記塗工膜をポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気に暴露する工程と、
(L)前記暴露後にポリフェニレン共重合体の貧溶媒を含む凝固浴に浸漬して塗工膜を凝固させる工程と、
(M)前記凝固した塗工膜から溶媒を抽出して微多孔膜を得る工程と、を含む。
前記工程(I)において、分散溶液中のポリフェニレン共重合体の割合が5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
また、前記工程(I)における分散溶液に、ポリフェニレン共重合体に対する重量比が0.1以上1以下の添加剤をさらに含ませることがより好ましい。
(溶媒)
本実施形態においてポリフェニレン共重合体の溶媒は、ポリフェニレン共重合体を溶解する性質を有するものであれば特に限定されないが、使用するポリフェニレン共重合体について高い溶解性を有する良溶媒であることが好ましい。このポリフェニレン共重合体の溶媒は、使用するポリフェニレン共重合体の種類等に応じて適宜選択することができる。かかるポリフェニレン共重合体の溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中で、種々の樹脂に対する溶解性、不揮発性、及び溶媒の管理の容易性等の観点から、N−メチル−2−ピロリドンがより好ましい。
本実施形態においてポリフェニレン共重合体の貧溶媒は、ポリフェニレン共重合体を実質的に溶解しない溶媒であり、全く溶かさない非溶媒であることが好ましい。ポリフェニレン共重合体の貧溶媒は、使用するポリフェニレン共重合体の種類に応じて適宜選択することができる。ポリフェニレン共重合体の貧溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール等が挙げられる。
微多孔膜の孔径を制御する上で、支持基材上の塗膜を、ポリフェニレン共重合体の貧溶媒を含む凝固浴に浸漬させ、微多孔膜を形成する工程の前に、塗膜の支持基材とは反対側の表面を、ポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気を含む気体に晒す工程を行うことが好ましい。
支持基材に塗工した塗膜がポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気を含む気体に晒されると、蒸気に晒されている表面から、微量な貧溶媒が塗膜表面内に浸透する。ポリフェニレン共重合体の貧溶媒が浸透したところは非溶媒誘起相分離が始まり、凝固浴に浸漬されるまでの間に相分離が十分に進行する。塗膜を、ポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気を含む気体に晒すことなく、ポリフェニレン共重合体の貧溶媒を含む凝固浴に浸漬させると、塗膜表面の相分離がほとんど進行していない状態で、塗膜表面が固化するため、表面の孔径は非常に小さなものとなり易い。一方、塗膜内部のポリフェニレン共重合体の溶媒とポリフェニレン共重合体の貧溶媒との置換は、塗膜表面に形成された小さな孔から行われるため、内部が固化するまでの置換に長い時間を有することとなる。これにより、塗膜内部の相分離時間は非常に長いものとなり、膜内部に大きなボイドが形成され易くなる。膜内部に大きなボイドが形成されると、膜のガス遮断性が失われたり、膜が脆くなったりする問題が生じる場合がある。この点、塗膜表面にポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気を含む気体を晒し、塗膜表面にポリフェニレン共重合体の貧溶媒を浸透させる工程を有することで、微多孔膜の表面の平均孔径を上記下限値以上に制御しやすいという観点等から好ましい。また、微多孔膜表面の孔径は、塗膜に浸透させる蒸気量等を調整することで制御できる。
蒸気の発生方法としては、例えば、塗工した溶液を浸漬する凝固浴の温度上げて蒸気を発生させてもよいし、凝固浴とは別に蒸気を発生させるための蒸気発生浴を用いてもよい。蒸気発生の温度は、特に限定されないが、30℃以上100℃以下であることが好ましい。蒸気発生の温度が30℃以上であれば、塗工した溶液に浸透して相分離を進行できる量の蒸気を発生させ易い。
塗膜表面を貧溶媒の蒸気を含む気体に晒す時間は、特に限定されないが、3秒以上60秒以下であることが好ましい。塗膜表面を貧溶媒の蒸気を含む気体に晒す時間は、塗膜の組成、蒸気発生浴の温度等によって適宜好適な条件を選択できる。通常、3秒以上であれば、微多孔膜表面の孔径が小さくなり過ぎず、微多孔膜の表面の平均孔径を上記下限値以上に制御しやすくなるという観点等から好ましい。これにより微多孔膜のイオン透過性が良好で、運転時の電圧損失の増大を一層効果的に抑制できる。また、微多孔膜内部に大きなボイドが形成されにくく、高いガス遮断性を維持できる。60秒以下であれば、蒸気発生浴の温度が高い場合でも、ポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気を含む気体により膜が固化しづらく、また微多孔膜表面の孔径が大きくなり過ぎず、微多孔膜の表面の平均孔径を上記上限値以下に制御しやすくなるという観点等から好ましい。これにより微多孔膜の孔内等からの親水性無機粒子の欠落を一層効果的に抑制できる。
微多孔膜の孔径を制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、親水性無機粒子とポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒とを含有する分散溶液に、孔径を制御するための添加剤を加える方法等が挙げられる。これにより該分散溶液がポリフェニレン共重合体の貧溶媒を含む凝固浴に接触した際に生じる非溶媒誘起相分離の速度を変化させることができる。あるいは、ポリフェニレン共重合体を凝固させた後に、添加剤を溶出させることにより、微多孔膜における孔径を制御することができる。微多孔膜の孔径を制御するための添加剤としては、特に限定されないが、例えば、以下の有機化合物や無機化合物等が挙げられる。
有機化合物としては、上述したポリフェニレン共重合体の溶媒とポリフェニレン共重合体の貧溶媒との両方に溶解するものを用いることが好ましい。有機化合物は、使用する溶媒や貧溶媒の種類等を踏まえて適宜好適なものを選択することができるが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、デキストラン等が好ましい。これらの中で、特にポリフェニレン共重合体の溶媒との相溶性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン等がより好ましい。さらに、少量の添加量であっても相分離速度を大幅に変化させること等が可能といった観点から、重量平均分子量が1万〜5万のポリエチレングリコール、重量平均分子量が5万〜30万のポリエチレンオキサイド、重量平均分子量が3万〜100万のポリビニルピロリドン等が更に好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機化合物としては、上述したポリフェニレン共重合体の溶媒及びポリフェニレン共重合体の貧溶媒との両方に溶解するものを用いることが好ましい。無機化合物は、使用する溶媒や貧溶媒の種類等を踏まえて適宜好適なものを選択することができるが、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硫酸バリウム等が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、添加剤を用いずに、凝固浴における貧溶媒の種類、濃度及び温度によって相分離速度を制御し、微多孔膜表面の孔径を制御することも可能である。一般的には、相分離速度が速いと微多孔膜の平均孔径が小さくなり、相分離速度が遅いと微多孔膜の平均孔径が大きくなる傾向にある。また、ポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒とを含有する分散溶液に、ポリフェニレン共重合体の貧溶媒を添加することも、相分離速度を変化させて、微多孔膜における平均孔径を制御することに有効である。
ポリフェニレン共重合体、親水性無機粒子、及びポリフェニレン共重合体の溶媒を含有する分散溶液におけるポリフェニレン共重合体の含有量は、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、10質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。ポリフェニレン共重合体の含有量を上記上限値以下とすることで、微多孔膜の機械的強度が一層向上する。ポリフェニレン共重合体の含有量を上記下限値以上とすることで、分散溶液の高粘度化を抑制でき、製膜性が一層向上するので、微多孔膜の厚みを一層均一なものとすることができる。
分散溶液における親水性無機粒子の含有量は、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。親水性無機粒子の含有量を上記上限値以下とすることで、分散溶液の高粘度化を抑制でき、製膜性が一層向上するので、微多孔膜の厚みを一層均一なものにできる。親水性無機粒子の含有量を上記下限値以上とすることで、微多孔膜の親水性が一層向上する。
分散溶液におけるポリフェニレン共重合体の溶媒の含有量は、30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、45質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。ポリフェニレン共重合体の溶媒の含有量を上記上限値以下とすることで、分散溶液の高粘度化を抑制でき、塗工時のむらや斑も一層抑制できる。ポリフェニレン共重合体の溶媒の含有量を上記下限値以上とすることで、ポリフェニレン共重合体をより溶解させることができるとともに、親水性無機粒子を溶液中に一層分散させることができる。
分散溶液を調製する方法は、特に限定されていないが、例えば次の様な方法を用いることができる。ボールミルのポット内にポリフェニレン共重合体の溶媒と親水性無機粒子とを投入した後、ボールミルのポットを撹拌し、親水性無機粒子をポリフェニレン共重合体の溶媒に細分化しながら分散させる。その後、得られた液からボールを濾過により分離する。その後、親水性無機粒子を分散した溶液を撹拌翼で撹拌しながら、ポリフェニレン共重合体を少量ずつ添加して溶解させ、分散溶液(製膜溶液)を調節する。また必要があれば添加剤を添加して分散溶液を調製することもできる。この他、分散溶液の調節は、例えば、ボールミルのポット内にポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒と親水性無機粒子と添加剤とを一緒に投入した後、ボールミルのポットを撹拌することや、ポリフェニレン共重合体の溶媒に添加剤を溶解させることでも可能である。
ポリフェニレン共重合体、親水性無機粒子、及びポリフェニレン共重合体の溶媒を含有する分散溶液を支持基材に塗工する方法は、特に限定されないが、例えば支持基材上に分散溶液を供給した後、コーターを用いて、目的とした塗工量以外の部分を掻き取る方法、分散溶液に支持基材を浸漬させた後、目的とした塗工量以外の部分をロールで絞り取る方法、分散溶液に支持基材を浸漬させた後、目的とした塗工量以外の部分をコーターで掻き取る方法、Tダイにより分散溶液(塗工液)を支持基材にフィードして塗工する方法等が挙げられる。また、微多孔膜の厚みの調節としては、特に限定されるものではないが、例えば分散溶液を塗工するコーターと支持基材の間隔を調節する方法や、Tダイにより塗工される液量を調節する方法が用いられる。
凝固浴はポリフェニレン共重合体の貧溶媒以外に、上記したポリフェニレン共重合体の溶媒を加えることにより、相分離速度を制御して、微多孔膜における孔径を制御することができる。ポリフェニレン共重合体の溶媒を凝固浴に加えることにより、塗膜内のポリフェニレン共重合体の溶媒と凝固浴内のポリフェニレン共重合体の貧溶媒との置換速度を遅くすることができ、これにより固化するまでの相分離時間を長くすることができ、得られる微多孔膜の孔径を大きくすることができる。ポリフェニレン共重合体の溶媒としては、上記したものを使用することができる。ポリフェニレン共重合体の貧溶媒は凝固浴内に30体積%以上あれば、非溶媒誘起相分離を問題なく進行させることができるが、それ以下の量になると、ポリフェニレン共重合体の固化が不十分となる場合がある。よって、凝固浴中に含まれるポリフェニレン共重合体の貧溶媒の割合は30体積%以上が好ましい。
また、微多孔膜は支持基材の孔内に一部入り込み、一体となっていることが好ましい。これらが一体となっていれば、いわゆるアンカー効果により、微多孔膜から支持基材の剥離を一層効果的に抑制できる。
微多孔膜を製膜した後に、更に熱処理を施してもよい。熱処理を行うと、ポリフェニレン共重合体の高分子鎖を結晶化又は固定化させて、微多孔膜の構造を一層安定化することができる。熱処理の方法としては、微多孔膜を湯浴に浸漬させる方法;高温の金属板で微多孔膜を挟み、プレスする方法;高温のロールで微多孔膜を挟み、プレスする方法等が挙げられる。熱処理温度は、特に限定されないが、80℃以上210℃以下であることが好ましく、180℃以上210℃以下であることがより好ましい。熱処理温度が80℃以上であれば、水電解における使用温度より高い温度となるため、微多孔膜とした際に、ポリフェニレン共重合体の高分子鎖が再び動き始めて微多孔膜の構造が不安定となるといった不具合を効果的に抑制できる。熱処理温度が210℃以下であれば、高分子の熱劣化を効果的に抑制できる。熱処理温度が180℃以上であれば、通常汎用されるポリフェニレン共重合体のガラス転移点温度以上の温度であるため、高分子鎖を結晶化又は固定化して、より優れた耐熱性を有する微多孔膜とすることができる。
一方で、本実施形態の微多孔膜は熱誘起相分離法を利用して作製することも出来、少なくとも以下の工程を備えることが好ましい。
(A)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を、得られる分散溶液の相分離温度よりも高い温度で混合して均一な分散溶液を得る工程、
(B)前記分散溶液を分散溶液の相分離温度よりも高い温度で押出して成形して押出成形物を得る工程、
(C)前記(B)工程で得た押出成形物を分散溶液の相分離温度以下に冷却して凝固させる工程、
(D)前記(C)工程で得た押出成形物から溶媒を抽出する工程。
本実施形態の作用効果が得られる範囲であれば、上記各工程はこの順に行うことに限定されるものではなく、必要に応じて同時に行ってもよいし、連続的に行ってもよい。
また、前記(A)の分散溶液を得る工程におけるポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒との重量比(ポリフェニレン共重合体:溶媒)は、5:95から50:50の範囲であることが好ましい。ポリフェニレン共重合体の重量比が5質量%以上であると微多孔膜の強度を十分に確保できる。一方でポリフェニレン共重合体の重量比が50質量%以下であると、相分離過程においてポリフェニレン共重合体とその溶媒との共連続構造を形成する為、均一な孔径に制御することが出来る。さらにアルカリ水電解に最適な孔径に制御する為、ポリフェニレン共重合体とその溶媒との重量比(ポリフェニレン共重合体:溶媒)は、10:90から30:70の範囲であることがより好ましい。また、上記のようなポリフェニレン共重合体とその溶媒に加えて、ポリフェニレン共重合体の可塑剤を加えてもよい。
また、前記(C)の凝固させる工程は、前記工程(B)直後の前記押出成形物を0℃以上かつ前記分散溶液の相分離温度以下の前記ポリフェニレン共重合体の非溶媒を含む溶液へ浸漬して冷却する工程であることが好ましい。
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、以下の工程を備えることが好ましい。
(E)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を、得られる分散溶液の相分離温度よりも高い温度で混合して均一な分散溶液を得る工程。
(F)前記分散溶液を分散溶液の相分離温度よりも高い温度で押出して成形して押出成形物を得る工程。
(G)前記(F)工程で得た押出成形物を分散溶液の相分離温度以下に冷却して凝固させる工程。
(H)前記(G)工程で得た押出成形物から溶媒を抽出して微多孔膜を得る工程。
支持基材と前記(G)工程で得た押出成形物または前記(H)工程で得た微多孔膜とを一体化させる工程。
また、前記工程(E)におけるポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒との重量比(ポリフェニレン共重合体:溶媒)は5:95から50:50の範囲であることが好ましい。
さらに、前記工程(G)は、前記工程(F)直後の押出成形物を0℃以上かつ前記分散溶液の相分離温度以下の前記ポリフェニレン共重合体の非溶媒を含む溶液へ浸漬して冷却する工程であることがより好ましい。
微多孔膜の孔径を制御する方法として、例えば、ポリフェニレン共重合体の溶媒として、可塑剤を使用する事が好ましい。可塑剤とは常温では溶解性を示さないが、高温で溶解性を発現するものであり、可塑剤の混合比を増やす事で分散溶液の相分離温度を低下させることができる。微多孔膜の孔径は相分離温度と冷却温度との差によって制御することが出来る為、ポリフェニレン共重合体とその可塑剤との混合比を制御する事により、微多孔膜の孔径を制御する事ができる。
ポリフェニレン共重合体の可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミドや、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)等のフタル酸エステル類;セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸エステル類;アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル類;トリメット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル類;メチルベンゾエイト、エチルベンゾエイト等の安息香酸エステル類;リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル等のリン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、シクロヘキサンノン、アセトフェノン、イソホロン等のケトン類;プロピレングリコールジカプレート、プロピレングリコールジオレエート等のグリセリンエステル類;流動パラフィン等のパラフィン類;ギ酸オクチル、ギ酸2−エチルヘキシル等のギ酸エステル類;酢酸オクチル、酢酸ヘプチル等の酢酸エステル類;プロピオン酸ヘプチル、プロピオン酸ヘキシル等のプロピオン酸エステル類;酪酸ヘキシル、酪酸ブチル等の酪酸エステル類;イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル等のイソ酪酸エステル類;吉草酸ブチル、吉草酸プロピル等の吉草酸エステル類;イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸メチル等のイソ吉草酸エステル類;ヘキサン酸ブチル、ヘキサン酸プロピル等のヘキサン酸エステル類;ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル等のヘプタン酸エステル類;オクタン酸メチル、オクタン酸エチル等のオクタン酸エステル類;シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル等のシクロヘキサンカルボン酸エステル類;トリフルオロ酢酸オクチル、トリフルオロ酢酸ヘプチル、等のトリフルオロ酢酸エステル類;ジフルオロ酢酸エチル、ジフルオロ酢酸メチル、ジフルオロ酢酸エチル等のジフルオロ酢酸エステル類;ペルフルオロプロピオン酸メチル、ペルフルオロプロピオン酸エチル等のペルフルオロプロピオン酸エステル類;ペルフルオロブタン酸メチル、ペルフルオロブタン酸エチル等のペルフルオロブタン酸エステル類;ペルフルオロペンタン酸メチル、ペルフルオロペンタン酸エチル等のペルフルオロペンタン酸エステル類;デカンニトリル、ノナンニトリル等のニトリル類;ペンタフルオロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル等のベンゾニトリル類、ペンタフルオロ安息香酸エチル、ペンタフルオロ安息香酸メチル等のペンタフルオロ安息香酸類;7,7,8,8,8−ペンタフルオロ−1−オクタノール、7,8,8,8−テトラフルオロ−7−(トリフルオロメチル)−1−オクタノール等のアルコール類及びこれらの混合物を挙げることが出来る。
ポリフェニレン共重合体とその可塑剤の混合物の重量比(ポリフェニレン共重合体:可塑剤)は、特に限定されるものではないが、10:90から50:50で間あることが好ましい。ポリフェニレン共重合体の重量比が10質量%以上であると微多孔膜の強度を十分に確保できる。一方でポリフェニレン共重合体の重量比が50質量%以下であると、相分離過程においてポリフェニレン共重合体と可塑剤との共連続構造を形成する為、均一な孔径に制御することが出来る。さらにアルカリ水電解に最適な孔径に制御する為、ポリフェニレン共重合体とその可塑剤との混合の重量比(ポリフェニレン共重合体:可塑剤)は、20:80から40:60の範囲であることがより好ましい。また、上記のようなポリフェニレン共重合体とその可塑剤に加えて、ポリフェニレン共重合体の溶媒を加えてもよい。
微多孔膜の孔径を制御する別の方法として、例えば、ポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒とを含有する分散溶液に、孔径を制御するための添加剤を加える方法が挙げられる。これにより該分散溶液が押出して成形した後に冷却される際に生じる熱誘起相分離の速度を変化させる、あるいは、ポリフェニレン共重合体を凝固させた後に、添加剤を溶出させることにより、微多孔膜における孔径を制御することができる。孔径を制御するための添加剤としては、特に限定されないが、例えば、以下の有機化合物や無機化合物等が挙げられる。
有機化合物としては、上述したポリフェニレン共重合体の溶媒に溶解するものを用いることが好ましい。有機化合物は、使用する溶媒の種類等を踏まえて適宜好適なものを選択することができるが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、デキストラン等が好ましい。これらの中で、特にポリフェニレン共重合体の溶媒との相溶性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン等がより好ましい。さらに、少量の添加量であっても分散溶液の相分離速度を大幅に変化させること等が可能といった観点から、重量平均分子量が1万〜5万のポリエチレングリコール、重量平均分子量が5万〜30万のポリエチレンオキサイド、重量平均分子量が3万〜100万のポリビニルピロリドン等が更に好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機化合物としては、上述したポリフェニレン共重合体の溶媒に溶解するものを用いてもよいし、アルカリ溶液で溶解できることが好ましい。無機化合物は、使用する溶媒の種類等を踏まえて適宜好適なものを選択することができるが、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硫酸バリウム、シリカ等が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、添加剤を用いずに、濃度及び温度によって分散溶液の相分離速度を制御し、微多孔膜表面の孔径を制御することも可能である。一般的には、相分離速度が速いと平均孔径が小さくなり、相分離速度が遅いと平均孔径が大きくなる傾向にある。また、ポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒を含有する分散溶液に、ポリフェニレン共重合体の貧溶媒を添加することも、分散溶液の相分離速度を変化させて、微多孔膜における平均孔径を制御することに有効である。
本実施形態においてポリフェニレン共重合体の貧溶媒は、ポリフェニレン共重合体を実質的に溶解しない溶媒であり、全く溶かさない非溶媒であることが好ましい。ポリフェニレン共重合体の貧溶媒は、使用するポリフェニレン共重合体の種類に応じて適宜選択することができる。ポリフェニレン共重合体の貧溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール等が挙げられる。
ポリフェニレン共重合体、親水性無機粒子、及びポリフェニレン共重合体の溶媒を含有する分散溶液におけるポリフェニレン共重合体の含有量は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。ポリフェニレン共重合体の含有量を上記上限値以下とすることで、微多孔膜の機械的強度が一層向上する。ポリフェニレン共重合体の含有量を上記下限値以上とすることで、分散溶液の高粘度化を抑制でき、製膜性が一層向上するので、微多孔膜の厚みを一層均一なものとすることができる。
分散溶液における親水性無機粒子の含有量は、0質量%より多く40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。親水性無機粒子の含有量を上記上限値以下とすることで、分散溶液の高粘度化を抑制でき、製膜性が一層向上するので、微多孔膜の厚みを一層均一なものにできる。親水性無機粒子の含有量を上記下限値以上とすることで、微多孔膜の親水性が一層向上する。
分散溶液におけるポリフェニレン共重合体の溶媒の含有量は、35質量%以上90質量%以下であることが好ましく、45質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。ポリフェニレン共重合体の溶媒の含有量を上記上限値以下とすることで、分散溶液の高粘度化を抑制でき、塗工時のむらや斑も一層抑制できる。ポリフェニレン共重合体の溶媒の含有量を上記下限値以上とすることで、ポリフェニレン共重合体をより溶解させることができるとともに、親水性無機粒子を溶液中に一層分散させることができる。
分散溶液を調製する方法は、特に限定されていないが、例えば次の様な方法を用いることができる。プラストミルの内にポリフェニレン共重合体と親水性無機粒子とを投入して混練し、親水性無機粒子をポリフェニレン共重合体内に均一に分散させる。その後、得られた混合物とポリフェニレン共重合体の溶媒とを押出機に投入し、混練しながら押出し成形する。その後、塩化メチレンを使って溶媒を抽出して微多孔膜を得ることが出来る。また必要があれば添加剤を添加して混練する事も出来る。この他、混合物の調節は、例えば、プラストミルの内にポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒、親水性無機粒子、添加剤を一緒に投入した後混練する事も可能である。
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜においてポリフェニレン共重合体を含む上述の微多孔膜は支持基材と積層されていることが好ましい。積層させる方法は、特に限定されないが、例えば支持基材上に微多孔膜を供給した後、熱プレスによって圧着する方法、Tダイにより分散溶液を支持基材上に押出して一体化する方法などが挙げられる。また、微多孔膜の厚みの調節としては、特に限定されるものではないが、例えば分散溶液の温度を調整する方法や、Tダイにより塗工される液量を調節する方法が用いられる。
また、微多孔膜は支持基材の孔内に一部入り込み、一体となっていることが好ましい。これらが一体となっていれば、いわゆるアンカー効果により、微多孔膜から支持基材の剥離を一層効果的に抑制できる。
微多孔膜を製膜した後に、更に熱処理を施してもよい。熱処理を行うと、ポリフェニレン共重合体の高分子鎖を結晶化又は固定化させて、微多孔膜の構造を一層安定化することができる。熱処理の方法としては、微多孔膜を湯浴に浸漬させる方法;高温の金属板で微多孔膜を挟み、プレスする方法;高温のロールで微多孔膜を挟み、プレスする方法等が挙げられる。熱処理温度は、特に限定されないが、120℃以上160℃以下であることが好ましく、120℃以上140℃以下であることがより好ましい。熱処理温度が120℃以上であれば、水電解における使用温度より高い温度となるため、隔膜とした際に、ポリフェニレン共重合体の高分子鎖が再び動き始めて微多孔膜の構造が不安定となるといった不具合を効果的に抑制できる。熱処理温度が170℃以下であれば、高分子の熱劣化を効果的に抑制できる。熱処理温度が120℃以上であれば、通常汎用されるポリフェニレン共重合体のガラス転移点温度以上の温度であるため、高分子鎖を結晶化又は固定化して、より優れた耐熱性を有する微多孔膜とすることができる。
(電解装置)
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、アルカリ水電解装置の部材として用いることができる。アルカリ水電解装置としては、例えば、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に配置されたこの隔膜とを備えたものが挙げられる。より具体的な例として、アルカリ水電解装置の内部は、隔膜を介して、陽極が備えられている陽極室と、陰極が備えられている陰極室に仕切られ、それぞれの電極で発生した酸素ガスと水素ガスとが混合しないよう構成されているもの等が挙げられる。また、本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、容易に複極式電解セルに組み込むことができ、大量の水素を製造できる大型の電解槽を工業的に提供する事ができる。本実施形態のアルカリ水電解装置は、上記した隔膜を構成要素として備えるものであれば、その装置構成は特に限定されるものではない。例えば、公知の電極や電解槽を適宜採用することもできる。
(電解方法)
アルカリ水電解装置を使用して行う電解の方法や条件等は、特に限定されず、公知の方法や条件を採用することができる。例えば、アルカリ水電解装置の内部をアルカリ溶液で満たし、陽極と陰極との間に直流電流を印加して行うものとする。電解液としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液が用いられる。電解液の濃度は、特に限定されないが、15質量%以上40質量%以下であることが好ましい。電解液の濃度が上記範囲であれば、溶液のイオン伝導性が十分発現され、溶液による電圧の損失を軽減し易い。
また、電解を行うときの温度は、特に限定されるものではないが、60℃以上100℃以下であることが好ましい。かかる温度範囲であれば、溶液のイオン伝導性が一層向上し、溶液による電圧損失を一層軽減できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた評価方法及び測定方法は、以下のとおりである。
(1)平均孔径測定
微多孔膜の平均孔径は、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP−Plus」)を使用して以下の方法の測定で得られる平均透水孔径とした。まず、微多孔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとした。このサンプルを測定用の耐圧容器(透過部面積12.57cm2)にセットして、容器内を150mLの純水で満たした。次に、耐圧容器を90℃に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が90℃になってから測定を開始した。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から純水が透過してくるので、圧力及び透過流量の数値を記録した。平均透水孔径は、圧力が10kPaから30kPaの間の圧力と透水流量との勾配を使い、以下のハーゲンポアズイユの式から求めた。
平均透水孔径(m)=32ηLμ0/(εP)
ここで、ηは水の粘度(Pa・s)、Lは微多孔膜の厚み(m)、μ0は見かけの流速でありμ0(m/s)=流量(m3/s)/流路面積(m2)である。また、εは空隙率、Pは圧力(Pa)である。
(2)最大孔径測定
微多孔膜の最大孔径は、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP−Plus」)を使用して以下の方法で測定した。まず、微多孔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとした。このサンプルを純水で濡らし、多孔膜の孔内に純水を含浸させ、これを測定用の耐圧容器にセットした。次に、耐圧容器を所定温度に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が所定温度になってから測定を開始した。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から150mL/分の割合で気泡が連続して発生してくるときの窒素圧力を、バブルポイント圧力とした。最大孔径はヤング−ラプラスの式を変形させた下記バブルポイント式から求めた。
最大孔径(m)=4γ×cosθ/P
ここで、γは水の表面張力(N/m)、cosθは微多孔膜表面と水との接触角(rad)、Pはバブルポイント圧力(Pa)である。
(3)ガス遮断性評価
微多孔膜のガス遮断性は、上記(2)で測定した微多孔膜のバブルポイントで評価した。当該バブルポイントの値が小さいほど、微多孔膜のガス遮断性は低く、当該バブルポイントの値が大きいほど、ガスが通過し難く、微多孔膜のガス遮断性は高いと評価した。
(4)イオン透過性評価
微多孔膜のイオン透過性は、以下のとおり測定したセル電圧により評価した。
まず、ニッケル電極の間に隔膜を設置し、隔膜によって隔てられた両電極室を90℃、30質量%のKOH水溶液で満たした。両電極間に電流密度0.60A/cm2の直流電流を印加し、長時間電解した。電解開始後24時間の両電極間の電位差を測定し、この両電極間の電位差をセル電圧とした。当該セル電圧が低いほど、イオン透過性は高いと評価した。なお、電解中はKOH水溶液中の水が、電解により消費されるため、KOH濃度が一定になるように純水を定期的に添加させた。また電解セル内に電極から発生した、酸素、水素が滞留しない様に、ポンプで両電極室内の電解液を循環させた。
(5)耐久性評価
微多孔膜の耐久性は、自作設備とGPCとを使用して以下の方法で測定した。まず、フッ素樹脂でコーティングされた耐圧容器内に30質量%のKOHと微多孔膜とを入れて蓋をした。その後、内部を酸素で置換した後140℃に昇温し、スターラーで撹拌しながら保持した。定期的に取り出した微多孔膜は、水洗後乾燥させ、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法(東ソー社製、「高速GPC装置HLC−8320GPC EcoSEC(商標))により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwを算出した。本耐久性評価における耐久性は下記式で評価した。
耐久性(%)=Mw_x/Mw_0×100
ここで、Mw_0は未処理の微多孔膜の重量平均分子量、Mw_xはx日間処理した微多孔膜の重量平均分子量である。
(6)膜厚評価
塗工厚みとは、基材上に塗工された塗工液の厚みを示す。塗工厚みは基材とコンマコータ間の間隙により調節した。具体的には、基材とコンマコータとの間に隙間ゲージを挿入し、コンマコータの位置を動かすことにより調整した。膜厚は、高分子多孔膜の厚みであり、ダイヤルゲージを用いて測定した。測定対象の高分子多孔膜について、MD方向及びTD方向のそれぞれの方向に沿って10cm間隔で測定を行い、その相加平均を膜厚とした。
(7)空隙率測定
微多孔膜の空隙率測定は、電子天秤精密比重計(島津製作所社製、「AUX120+SMK−401」)を用いて行った。アルキメデス法により求めた多孔膜の開空隙率を微多孔膜の空隙率とし、以下の式により求めた。まず、微多孔膜を3cm×3cmの大きさで3枚に切出して、測定サンプルとした。次に、これらを純水中に24時間浸し、余分な水分を取り除いて空中皿でW3を測定した。続いて、サンプルを液中に入れ、液中皿でW2を測定した。さらに、取り出したサンプルを50℃に設定された乾燥機で12時間以上静置して乾燥させて、空中皿でW1を測定した。そして、W1、W2、W3の値から空隙率を求めた。3枚のサンプルについて空隙率Pを求め、それらの算術平均値を空隙率とした。
空隙率P(%)=ρ/(1+ρ)×100
式中、ρ=(W3−W1)/(W3−W2)であり、W1は微多孔膜の乾燥重量(g)、W2は微多孔膜の水中重量(g)、W3は微多孔膜の飽水重量(g)である。
[実施例1]
酸化ジルコニウム(「EP酸化ジルコニウム」、第一稀元素化学工業社製、モード粒径:5.4μm、以下ZrO2)135gとN−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業社製、以下NMP)210gとを、粒径0.5mmのSUSボールが1kg入った容量1000mLのボールミルポットに投入した。これらを回転数70rpmで25℃雰囲気下において3時間攪拌して、分散させて混合物を得た。得られた混合物を、ステンレス製のざる(網目30メッシュ)により濾過し、混合物からボールを分離した。ボールを分離した混合物に、ポリフェニレンA(R1〜R4が全て水素原子である1,3−フェニレンと、ベンゾイル基を有する1,4−フェニレンとを含むポリフェニレン共重合体(重量平均分子量(Mw)72000))45g及びポリビニルピロリドン(重量平均分子量(Mw)900000、和光純薬工業社製、以下PVP)18gを加え、スリーワンモータを用いて60℃で12時間攪拌して溶解させ、以下の成分組成の塗工液を得た。
ポリフェニレンA :15質量部
PVP : 6質量部
NMP :70質量部
ZrO2 :45質量部
この塗工液を、支持基材であるポリフェニレンサルファイドメッシュ(くればぁ社製、膜厚280μm、目開き358μm、糸径150μm、以下PPSメッシュ)の両表面に対して、コンマコータを用いて塗工厚みが各面150μmとなるよう塗工した。塗工後直ちに、塗工液を塗工した支持基材を、40℃の純水/NMP混合液(純水/NMP=50/50(v/v))を溜めた凝固浴の蒸気下へ2分間暴露した。その後直ちに、塗工液を塗工した支持基材を、凝固浴中へ3分間浸漬した。そして、ポリフェニレンAを凝固させることで支持基材表面に塗膜を形成させた。その後、純水で塗膜を十分洗浄して厚み600μm、空隙率37.5%のSRP微多孔膜を得た。
得られたポリフェニレンA微多孔膜は、平均孔径が0.2μm、最大孔径が1.2μmであった。また、得られたSRP微多孔膜を使用した場合のセル電圧は、電流密度0.60A/cm2時に1.75Vであった。そして、耐久性評価を実施したところ、30日後のポリフェニレンA微多孔膜は、耐久性(Mw_30/Mw_0×100)が、93%であり、平均孔径が0.2μm、最大孔径が1.4μmであった。また、耐久性評価後のポリフェニレンA微多孔膜のバブルポイントは、160kPaであった。
[比較例1]
ポリフェニレンAをポリエーテルスルホン(「Ultrason E7020」(商標)、BASF社製、以下PES)に変更した以外は、実施例1と同様の組成及び手順で塗工液を得た。
PES :15質量部
PVP : 6質量部
NMP :70質量部
ZrO2 :45質量部
この塗工液を実施例1と同様の手順でPPSメッシュの両表面に塗工し、凝固及び洗浄工程を経て厚み530μm、空隙率43.6%のPES微多孔膜を得た。
得られたPES微多孔膜は、平均孔径が0.4μm、最大孔径が1.6μmであった。また、得られたPES微多孔膜を使用した場合のセル電圧は、電流密度0.60A/cm2時に1.80Vであった。そして、耐久性評価を実施したところ、PES多孔膜は原型を留めておらず、分子量の測定やバブルポイントの測定が出来なかった。従って、得られたPES微多孔膜の耐久性は無しとした。
[比較例2]
ポリフェニレンAをポリフェニルスルホン(「Ultrason P3010」(商標)、BASF社製、以下PPSU)に変更した以外は、実施例1と同様の組成及び手順で塗工液を得た。
PPSU :15質量部
PVP : 6質量部
NMP :70質量部
ZrO2 :45質量部
この塗工液を実施例1と同様の手順でPPSメッシュの両表面に塗工し、凝固及び洗浄工程を経て厚み480μm、空隙率39.0%のPPSU微多孔膜を得た。
得られたPPSU微多孔膜は、平均孔径が0.4μm、最大孔径が1.4μmであった。また、得られたPPSU微多孔膜を使用した場合のセル電圧は、電流密度0.60A/cm2時に1.78Vであった。そして、耐久性評価を実施したところ、30日後のPPSU微多孔膜は、耐久性(Mw_30/Mw_0×100)が、31%であり、平均孔径が1.1μm、最大孔径が3.5μmであった。また、耐久性評価後のPPSU微多孔膜のバブルポイントは、10kPa未満であった。
実施例及び比較例の結果から、ポリフェニレンA微多孔膜はアルカリ耐久性が高く、多孔構造を長期に亘り維持できることが判明した。また、ポリフェニレンA微多孔膜をアルカリ水電解用隔膜として使用した場合、高いガス遮断性とイオン透過性とを長時間維持できることが判明した。
本発明によれば、高温かつ高濃度の酸性、又はアルカリ性環境下での耐加水分解性が高く、かつ高い分離能とイオン透過性とを両立した微多孔膜、並びにアルカリ水電解用隔膜を提供することができる。また、本発明によれば、微多孔膜の製造方法を提供することができ、本発明は、水の電気分解等に工業的に利用することができる。
1:陰極室、2:陽極室、3:隔膜、10:電解セル、11:陰極、12:水素分離タンク、21:陽極、22:酸素分離タンク、30:電解液循環ライン、40:循環ポンプ

Claims (20)

  1. 平均孔径が0.1μm以上1μm以下、かつ最大孔径が0.2μm以上2μm以下であり、空隙率が30%以上80%以下であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜。
    Figure 2017066184
    (式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、フェニル基、ベンゾイル基又は炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる置換基であり、nは10〜2000の整数を示す。)
  2. 前記繰り返し単位が、R1〜R4が全て水素原子である1,3−フェニレン及びR1〜R4の1つ以上がベンゾイル基である1,4−フェニレンを含む、請求項1に記載の微多孔膜。
  3. 親水性無機粒子を含有する、請求項1又は2に記載の微多孔膜。
  4. 微多孔膜中に含まれるポリフェニレン共重合体に対する親水性無機粒子の重量比が1.0以上10以下である、請求項3に記載の微多孔膜。
  5. 前記親水性無機粒子が酸化ジルコニウムである、請求項3に記載の微多孔膜。
  6. 前記親水性無機粒子のモード粒径が1μm以上10μm以下である、請求項3に記載の微多孔膜。
  7. 厚みが100μm以上1mm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微多孔膜。
  8. シート状である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の微多孔膜。
  9. 請求項8に記載の微多孔膜を構成要素として含むアルカリ水電解用隔膜。
  10. ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる一種以上を構成成分とする支持基材を、構成要素としてさらに含む、請求項9に記載のアルカリ水電解用隔膜。
  11. 請求項10に記載のアルカリ水電解用隔膜を構成要素として含むアルカリ水電解用電解装置。
  12. (A)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を、得られる分散溶液の相分離温度よりも高い温度で混合して均一な分散溶液を得る工程と、
    (B)前記分散溶液を分散溶液の相分離温度よりも高い温度で押出して成形して押出成形物を得る工程と、
    (C)前記(B)工程で得た押出成形物を分散溶液の相分離温度以下に冷却して凝固させる工程と、
    (D)前記(C)工程で得た押出成形物から溶媒を抽出する工程と、を有する、微多孔膜の製造方法。
  13. 前記(A)の分散溶液を得る工程におけるポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒との重量比(ポリフェニレン共重合体:溶媒)が5:95から50:50の範囲である、請求項12に記載の微多孔膜の製造方法。
  14. 前記(C)の凝固させる工程が、前記工程(B)直後の前記押出成形物を0℃以上かつ前記分散溶液の相分離温度以下の前記ポリフェニレン共重合体の非溶媒を含む溶液へ浸漬して冷却する工程である、請求項12又は13に記載の微多孔膜の製造方法。
  15. (E)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を、得られる分散溶液の相分離温度よりも高い温度で混合して均一な分散溶液を得る工程と、
    (F)前記分散溶液を分散溶液の相分離温度よりも高い温度で押出して成形して押出成形物を得る工程と、
    (G)前記(F)工程で得た押出成形物を分散溶液の相分離温度以下に冷却して凝固させる工程と、
    (H)前記(G)工程で得た押出成形物から溶媒を抽出して微多孔膜を得る工程と、
    支持基材と前記(G)工程で得た押出成形物または前記(H)工程で得た微多孔膜とを一体化させる工程と、を含む、アルカリ水電解用隔膜の製造方法。
  16. 前記工程(E)におけるポリフェニレン共重合体とポリフェニレン共重合体の溶媒との重量比(ポリフェニレン共重合体:溶媒)が5:95から50:50の範囲である、請求項15に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
  17. 前記工程(G)が、前記工程(F)直後の押出成形物を0℃以上かつ前記分散溶液の相分離温度以下の前記ポリフェニレン共重合体の非溶媒を含む溶液へ浸漬して冷却する工程である、請求項15又は16に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
  18. (I)ポリフェニレン共重合体と、ポリフェニレン共重合体の溶媒と、親水性無機粒子と、を混合して均一な分散溶液を得る工程と、
    (J)前記分散溶液を支持基材の片面、又は両面に塗工して塗工膜を得る工程と、
    (K)前記塗工膜をポリフェニレン共重合体の貧溶媒の蒸気に暴露する工程と、
    (L)前記暴露後にポリフェニレン共重合体の貧溶媒を含む凝固浴に浸漬して塗工膜を凝固させる工程と、
    (M)前記凝固した塗工膜から溶媒を抽出して微多孔膜を得る工程と、を含む、
    アルカリ水電解用隔膜の製造方法。
  19. 前記工程(I)において、分散溶液中のポリフェニレン共重合体の割合が5質量%以上25質量%以下である、請求項18に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
  20. 前記工程(I)における分散溶液に、ポリフェニレン共重合体に対する重量比が0.1以上1以下の添加剤をさらに含ませる、請求項18又は19に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
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